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特開2023-130066導電性ペースト、電子部品、及び、積層セラミックコンデンサ
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  • 特開-導電性ペースト、電子部品、及び、積層セラミックコンデンサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130066
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】導電性ペースト、電子部品、及び、積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/20 20060101AFI20230912BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20230912BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230912BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20230912BHJP
   C08K 3/24 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H01B1/20 A
H01G4/30 516
H01G4/30 201D
C08L101/00
C08K5/17
C08K3/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034514
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】宮内 恭子
(72)【発明者】
【氏名】西川 貴弘
【テーマコード(参考)】
4J002
5E001
5E082
5G301
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AB011
4J002DA086
4J002DE187
4J002EN028
4J002FD116
4J002FD207
4J002FD318
4J002GQ02
4J002HA08
5E001AB03
5E001AC09
5E082AB03
5E082BC39
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE27
5E082EE35
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG46
5E082GG10
5E082PP03
5E082PP09
5G301DA02
5G301DA03
5G301DA05
5G301DA06
5G301DA07
5G301DA10
5G301DA11
5G301DA12
5G301DA15
5G301DA33
5G301DA42
5G301DD01
5G301DE01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】乾燥後の導電膜としての平滑性が高く、経時的な粘度変化が少ない、導電性ペーストを提供する。
【解決手段】導電性粉末、セラミック粉末、分散剤、バインダー樹脂及び有機溶剤を含む導電性ペーストであって、前記分散剤は、下記一般式(1)で示される2級アミン又は3級アミンを1種以上と、アルキルアミンから1種以上の少なくとも2種以上のアミン系分散剤を含み、前記有機溶剤は、3種類以上の有機溶剤からなる、導電性ペースト。

(式中、Rは、H、C数1~7のアルキル基、C数2~7のアルケニル基、C数2~7のアルキニル基、ヒドロキシエチル基等を表し、Rは、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、又は、アミノプロピル基を表し、Rは、H、C数1~7のアルキル基、C数2~7のアルケニル基、C数2~7のアルキニル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基等を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粉末、セラミック粉末、分散剤、バインダー樹脂及び有機溶剤を含む導電性ペーストであって、
前記分散剤は、下記一般式(1)で示される2級アミン又は3級アミンを1種以上と、アルキルアミンから1種以上の少なくとも2種以上のアミン系分散剤を含み、
前記有機溶剤は、3種類以上の有機溶剤からなる、導電性ペースト。
【化1】
(式(1)において、Rは、水素原子、炭素数1~7のアルキル基、炭素数2~7のアルケニル基、炭素数2~7のアルキニル基、ヒドロキシエチル基、又は、ヒドロキシプロピル基を表し、Rは、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、又は、アミノプロピル基を表し、Rは、水素原子、炭素数1~7のアルキル基、炭素数2~7のアルケニル基、炭素数2~7のアルキニル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、又は、アミノプロピル基を表す。)
【請求項2】
前記アミン系分散剤の合計量と前記導電性粉末との質量比は、0.01~4:100であり、
前記導電性粉末の前記導電性ペーストの全体量に対する含有量は40質量%~65質量%である、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記導電性粉末の数平均粒子径が、30nm~100nmである、請求項1又は2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
前記導電性ペーストの全体量に対する前記有機溶剤の含有量が、20質量%~60質量%である、請求項1~3のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項5】
前記有機溶剤は、ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルニルプロピネート、イソボルニルブチレート、イソボルニルイソブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ヘプチルアセテート、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、トリデカン、ノナン、シクロヘキサン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンのいずれかである、請求項1~4のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項6】
前記有機溶剤は、ターピネオール、ジイソブチルケトンおよびシクロヘキサンである、請求項1~5のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項7】
前記ターピネオール、前記ジイソブチルケトンおよび前記シクロヘキサンの質量比は、ターピネオール:ジイソブチルケトン:シクロヘキサン=0.1~5.0:0.1~5.0:23.5~43.3である、請求項6に記載の導電性ペースト。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の導電性ペーストを用いて形成された、電子部品。
【請求項9】
誘電体層と内部電極層とを積層した積層体を少なくとも有し、
前記内部電極層は、請求項1~7のいずれか一項に記載の導電性ペーストを用いて形成された、積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペースト、電子部品、及び、積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やデジタル機器等の電子機器の小型化及び高性能化に伴い、積層セラミックコンデンサ等を含む電子部品についても小型化及び高容量化が望まれている。積層セラミックコンデンサは、複数の誘電体層と複数の内部電極層とが交互に積層した構造を有し、これらの誘電体層及び内部電極層を薄膜化することにより、小型化及び高容量化を図ることができる。
【0003】
積層セラミックコンデンサは、例えば、次のように製造される。まず、チタン酸バリウム(BaTiO)等の誘電体粉末及びバインダー樹脂を含有する誘電体グリーンシートの表面上に、内部電極用の導電性ペーストを所定の電極パターンで印刷し、乾燥して、乾燥膜を形成する。次に、乾燥膜とグリーンシートとが交互に重なるように積層して積層体を得る。次に、この積層体を加熱圧着して一体化し、圧着体を形成する。この圧着体を切断し、酸化性雰囲気又は不活性雰囲気中にて脱バインダー処理を行った後、焼成を行い、焼成チップを得る。次いで、焼成チップの両端部に外部電極用ペーストを塗布し、焼成後、外部電極表面にニッケルメッキ等を施して、積層セラミックコンデンサが得られる。
【0004】
一般的に、内部電極層の形成に用いられる導電性ペーストは、導電性粉末、セラミック粉末、バインダー樹脂及び有機溶剤を含む。また、導電性ペーストは、導電性粉末等の分散性を向上させるために分散剤を含むことがある。近年の内部電極層の薄膜化に伴い、導電性粉末も小粒径化する傾向がある。導電性粉末の粒径が小さい場合、その粒子表面の比表面積が大きくなるため、導電性粉末(金属粉末)の表面活性が高くなり、導電性粉末の分散性の低下や、導電性ペーストの粘度特性の低下が生じる場合がある。
【0005】
そこで、導電性ペーストの経時的な粘度特性の改善の試みがなされている。例えば、特許文献1には、少なくとも金属成分と、酸化物と、分散剤と、バインダー樹脂とを含有する導電性ペーストであって、金属成分は、その表面組成が、特定の組成比を有するNi粉末であり、分散剤の酸点量は、500~2000μmol/gであり、バインダー樹脂の酸点量は、15~100μmol/gである導電性ペーストが記載されている。そして、特許文献1によれば、この導電性ペーストは、良好な分散性と粘度安定性を有するとされている。
【0006】
また、特許文献2には、導電性粉末、樹脂、有機溶剤、TiBaOを主とするセラミックス粉末の共材、及び凝集抑制剤からなる内部電極用導電ペーストであって、前記凝集抑制剤の含有量が0.1重量%以上5重量%以下であり、前記凝集抑制剤が、特定の構造式で示される3級アミン又は2級アミンである内部電極用導電ペーストが記載されている。特許文献2によれば、この内部電極用導電ペーストは、共材成分の凝集を抑制し、長期保管性に優れ、積層セラミックコンデンサの薄膜化を可能とするとされている。
【0007】
一方、内部電極層を薄膜化する際、誘導体グリーンシート表面上に内部電極用の導電性ペーストを印刷して、乾燥させて得られる乾燥膜の密度が高いことが要求される。例えば、特許文献3には、有機溶媒と、界面活性剤と、金属超微粒子とを含有する金属超微粉スラリーであって、前記界面活性剤がオレオイルサルコシンであり、前記金属超微粉スラリー中に、前記金属超微粉を70質量%以上95質量%以下含有し、前記界面活性剤を前記金属超微粉100質量部に対して0.05質量部超2.0質量部未満含有する金属超微粉スラリーが提案されている。特許文献3によれば、超微粒子の凝集を防止することで凝集粒子が存在しない、分散性及び乾燥膜密度に優れる金属超微粉スラリーが得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-216244号公報
【特許文献2】特開2013-149457号公報
【特許文献3】特開2006-063441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、近年の電極パターンの薄膜化に伴い、特に平均粒子径が100nm以下の導電性粉末を使用する導電性ペーストが求められ、さらにこの導電性ペーストには印刷後乾燥して電極パターンを形成した際の平滑性が高く、経時的に粘度特性が維持されることが求められている。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑み、乾燥後の導電膜としての平滑性が高く、経時的な粘度変化が少ない、導電性ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するべく、本発明の導電性ペーストは、導電性粉末、セラミック粉末、分散剤、バインダー樹脂及び有機溶剤を含む導電性ペーストであって、前記分散剤は、下記一般式(1)で示される2級アミン又は3級アミンを1種以上と、アルキルアミンから1種以上の少なくとも2種以上のアミン系分散剤を含み、前記有機溶剤は、3種類以上の有機溶剤からなる、導電性ペーストである。
【0012】
【化1】
【0013】
(式(1)において、Rは、水素原子、炭素数1~7のアルキル基、炭素数2~7のアルケニル基、炭素数2~7のアルキニル基、ヒドロキシエチル基、又は、ヒドロキシプロピル基を表し、Rは、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、又は、アミノプロピル基を表し、Rは、水素原子、炭素数1~7のアルキル基、炭素数2~7のアルケニル基、炭素数2~7のアルキニル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、又は、アミノプロピル基を表す。)
【0014】
前記アミン系分散剤の合計量と前記導電性粉末との質量比は、0.01~4:100であってもよく、前記導電性粉末の前記導電性ペーストの全体量に対する含有量は40質量%~65質量%であってもよい。
【0015】
前記導電性粉末の数平均粒子径が、30nm~100nmであってもよい。
【0016】
前記導電性ペーストの全体量に対する前記有機溶剤の含有量が、20質量%~60質量%であってもよい。
【0017】
前記有機溶剤は、ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルニルプロピネート、イソボルニルブチレート、イソボルニルイソブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ヘプチルアセテート、ターピネオール、ジヒドロターピネオール、トリデカン、ノナン、シクロヘキサン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンのいずれかであってもよい。
【0018】
前記有機溶剤は、ターピネオール、ジイソブチルケトンおよびシクロヘキサンであってもよい。
【0019】
前記ターピネオール、前記ジイソブチルケトンおよび前記シクロヘキサンの質量比は、ターピネオール:ジイソブチルケトン:シクロヘキサン=0.1~5.0:0.1~5.0:23.5~43.3であってもよい。
【0020】
本発明の第2の態様では、上記本発明の導電性ペーストを用いて形成された、電子部品が提供される。
【0021】
本発明の第3の態様では、誘電体層と内部電極層とを積層した積層体を少なくとも有し、内部電極は、上記本発明の導電性ペーストを用いて形成された、積層セラミックコンデンサが提供される。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明によれば、乾燥後の導電膜としての平滑性が高く、経時的な粘度変化が少ない、導電性ペーストを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】積層セラミックコンデンサを示す斜視図及び側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の導電性ペーストの一実施形態について説明する。
【0025】
本実施形態の導電性ペーストは、導電性粉末、セラミック粉末、分散剤、バインダー樹脂及び有機溶剤を含む導電性ペーストであって、前記分散剤として、下記一般式(1)で示される2級アミン又は3級アミンを1種以上と、アルキルアミンから1種以上の少なくとも2種以上のアミン系分散剤を含み、前記有機溶剤は、3種類以上の有機溶剤からなる。以下、本実施形態の導電性ペーストが含む導電性粉末、セラミック粉末、分散剤、バインダー樹脂及び有機溶剤について、詳細に説明する。
【0026】
(導電性粉末)
導電性粉末は、特に限定されず、金属粉末を用いることができ、例えば、Ni、Pd、Pt、Au、Ag、Cu、及びこれらの合金から選ばれる1種以上の金属粉末を用いることができる。これらの中でも、導電性、耐食性及びコストの観点から、Ni、又はNi合金の粉末が好ましい。Ni合金としては、例えば、Mn、Cr、Co、Al、Fe、Cu、Zn、Ag、Au、Pt及びPdからなる群より選択される少なくとも1種以上の元素とNiとの合金(Ni合金)を用いることができる。Ni合金におけるNiの含有量は、例えば、50質量%以上、好ましくは80質量%以上である。また、Ni粉末は、脱バインダー処理の際、バインダー樹脂の部分的な熱分解による急激なガス発生を抑制するために、数百ppm程度のSを含んでもよい。
【0027】
導電性粉末の数平均粒子径は、好ましくは30nm以上100nm以下であり、より好ましくは40nm以上90nm以下である。導電性粉末の平均粒径が上記範囲である場合、薄膜化した積層セラミックコンデンサの内部電極用の導電性ペーストとして好適に用いることができ、乾燥膜の平滑性が向上する。ここで、数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から求められる値であり、SEMで倍率10,000倍にて観察した画像から、複数の粒子一つ一つの粒径を測定して、得られる平均値である。
【0028】
前記導電性粉末の前記導電性ペーストの全体量に対する含有量は、好ましくは40質量%~65質量%であり、より好ましくは45質量%~60質量%である。導電性粉末の含有量が上記範囲である場合、導電性及び分散性に優れる。
【0029】
(セラミック粉末)
セラミック粉末としては、特に限定されず、例えば、積層セラミックコンデンサの内部電極用の導電性ペーストである場合、適用する積層セラミックコンデンサの種類により適宜、公知のセラミック粉末が選択される。セラミック粉末としては、例えば、Ba及びTiを含むペロブスカイト型酸化物が挙げられ、好ましくはチタン酸バリウム(BaTiO)である。
【0030】
セラミック粉末としては、チタン酸バリウムを主成分とし、酸化物を副成分として含むセラミック粉末を用いてもよい。酸化物としては、Mn、Cr、Si、Ca、Ba、Mg、V、W、Ta、Nb及び1種類以上の希土類元素の酸化物が挙げられる。また、セラミック粉末としては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)のBa原子やTi原子を他の原子、例えば、Sn、Pb、Zr等で置換したペロブスカイト型酸化物強誘電体のセラミック粉末を用いてもよい。
【0031】
内部電極用の導電性ペーストにおいては、積層セラミックコンデンサのグリーンシートを構成する誘電体セラミック粉末と同一組成の粉末を、セラミック粉末として用いてもよい。これにより、焼結工程における誘電体層と内部電極層との界面での収縮のミスマッチによるクラック発生が抑制される。このようなセラミック粉末としては、上記以外に、例えば、ZnO、フェライト、PZT、BaO、Al、Bi、R(希土類元素)、TiO等の酸化物が挙げられる。なお、セラミック粉末は、1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0032】
セラミック粉末の数平均粒子径は、例えば、10nm~100nmであり、好ましくは10nm~70nmの範囲である。セラミック粉末の数平均粒子径が上記範囲であることにより、内部電極用の導電性ペーストとして用いた場合、十分に細く薄い均一な内部電極を形成することができる。数平均粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から求められる値であり、SEMで倍率50,000倍にて観察した映像から、複数の粒子一つ一つの粒径を測定して、得られる平均値である。
【0033】
セラミック粉末の含有量は、導電性粉末100質量部に対して、好ましくは1質量部~30質量部であり、より好ましくは3質量部~30質量部である。導電性粉末の含有量が上記範囲である場合、導電性及び分散性に優れる。
【0034】
セラミック粉末の含有量は、導電性ペースト全体に対して、好ましくは1質量%~20質量%であり、より好ましくは3質量%~20質量%以下である。導電性粉末の含有量が上記範囲である場合、導電性及び分散性に優れる。
【0035】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、特に限定されず、公知の樹脂を用いることができる。例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルブチラール等のブチラール樹脂等が挙げられる。中でも、溶剤への溶解性、燃焼分解性の観点等からエチルセルロースを含むことが好ましい。また、内部電極用の導電性ペーストとして用いる場合、グリーンシートとの接着強度を向上させる観点からブチラール樹脂を含む、又は、ブチラール樹脂を単独で使用してもよい。バインダー樹脂は、1種類を用いてもよく、又は、2種類以上を用いてもよい。バインダー樹脂は、例えば、セルロース系樹脂とブチラール樹脂とを用いてもよい。
【0036】
また、バインダー樹脂の重量平均分子量は、例えば、20000~300000程度である。重量平均分子量が20000未満であると、印刷を行うために充分な粘度を得ることが困難になる。このような場合でも、セルロース系樹脂の含有量を多くすることで印刷性を確保することも可能ではあるが、焼成後の残留炭素分が多くなってしまう。重量平均分子量のより好ましい下限は30000である。かかる下限が30000以上であれば残留炭素分の増加を生じることなく、印刷性を充分に確保することができる。一方で、重量平均分子量が300000を超えると、得られる積層セラミックコンデンサ内部電極用ペーストが増粘して印刷性が悪くなる。重量平均分子量が300000以下であれば、セルロース系樹脂との相溶性を確保しつつ、印刷性に優れる積層セラミックコンデンサ内部電極用ペーストを得ることができる。好ましい上限については、セルロース系樹脂との配合比等にもよるが、300000以下とすることで、ブチラール樹脂の配合比を高めることができ、焼成後の残留炭素を低減させることが可能となる。
【0037】
バインダー樹脂の含有量は、導電性粉末100質量部に対して、好ましくは1質量部~10質量部以下であり、より好ましくは1質量部~8質量部である。バインダー樹脂の含有量が上記範囲である場合、導電性及び分散性に優れる。
【0038】
バインダー樹脂の含有量は、導電性ペースト全体に対して、好ましくは0.5質量%~10質量%であり、より好ましくは1質量%~6質量%である。バインダー樹脂の含有量が上記範囲である場合、導電性及び分散性に優れる。
【0039】
(有機溶剤)
有機溶剤としては、特に限定されず、上記バインダー樹脂を溶解することができる公知の有機溶剤を用いることができる。例えば、ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルニルプロピネート、イソボルニルブチレート、イソボルニルイソブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ヘプチルアセテート等のアセテート系溶剤、ターピネオール、ジヒドロターピネオール等のテルペン系溶剤、トリデカン、ノナン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶剤、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。なお、有機溶剤は、3種類以上を用いる。3種類以上の有機溶剤を用いることにより、乾燥後の導電膜としての平滑性が高く、経時的な粘度変化が少ない導電性ペーストが得られ、導電性ペーストとしての粘度を低く維持することができる。
【0040】
有機溶剤の含有量は、導電性粉末100質量部に対して、好ましくは40質量部~100質量部であり、より好ましくは65質量部~95質量部である。有機溶剤の含有量が上記範囲である場合、導電性及び分散性に優れる。
【0041】
有機溶剤の含有量は、導電性ペースト全体に対して、20質量%~60質量%が好ましく、35質量%~55質量%がより好ましい。有機溶剤の含有量が上記範囲である場合、導電性及び分散性に優れる。
【0042】
特に、前記有機溶剤として、ターピネオール、ジイソブチルケトンおよびシクロヘキサンを用いることができる。有機溶剤としてこれらの3種を用いることにより、粘度調整が可能となる。
【0043】
前記有機溶剤としてターピネオール、ジイソブチルケトンおよびシクロヘキサンを用いる場合には、これらの質量比は、ターピネオール:ジイソブチルケトン:シクロヘキサン=0.1~5.0:0.1~5.0:23.5~43.3とすることができる。この質量比とすることにより、例えばせん断速度4s-1における粘度を50Pa・s未満への粘度調整が可能となり、導電性ペーストのスクリーン印刷への使用時に適した粘度とすることができる。
【0044】
(分散剤)
本発明の導電性ペーストが含む分散剤は2種以上のアミン系分散剤であり、以下に説明する2級アミン又は3級アミンを1種以上と、アルキルアミンから1種以上の少なくとも2種以上のアミン系分散剤を含む。このようなアミン系分散剤を含むことにより、導電性ペースト中の導電性粉末の分散状態を維持させ、導電性ペーストの経時的な粘度変化を少なくすることができる。また、乾燥後の導電膜としての平滑性を向上させることができる。
【0045】
アミン系分散剤は、高分子分散剤ではないことが好ましい。高分子分散剤は熱分解温度が高くなると想定され、焼成後の残留炭素分が多くなる。
【0046】
また、アミン系分散剤の1種は、下記の一般式(1)で示される、3級アミン、又は、2級アミンである。
【0047】
【化2】
【0048】
(式(1)において、Rは、水素原子、炭素数1~7のアルキル基、炭素数2~7のアルケニル基、炭素数2~7のアルキニル基、ヒドロキシエチル基、又は、ヒドロキシプロピル基を表し、Rは、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、又は、アミノプロピル基を表し、R3は、水素原子、炭素数1~7のアルキル基、炭素数2~7のアルケニル基、炭素数2~7のアルキニル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、又は、アミノプロピル基を表す。)
【0049】
上記式(1)のアミン系分散剤は、その分子内に、3級アミン又は2級アミンを構成し、官能基としてはアミノ基を構成する窒素原子(すなわち、上記式(1)中のN)のほかに、R、及び、任意にR、Rとして、アルコール系水酸基(ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基)、及び、別のアミノ基(アミノエチル基、アミノプロピル基)のうち少なくとも1つの基を備えてもよい。
【0050】
なお、アミン系分散剤が1級アミンである場合、その分子内に、アルコール系水酸基や、他の1級アミンを構成するアミノ基を備えていても、導電性ペーストの粘度が経時的に変化しやすいので望ましくない。詳細は不明であるが、上記のような2級アミン又は3級アミンであるアミン系分散剤は、備える上記官能基やアルキル基、アルケニル基、アルキニル基による立体障害等が、導電性粉末を構成する金属粒子への吸着へ影響し、その結果、導電性ペーストの粘度の経時的な安定性に影響すると考えられる。
【0051】
上記式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1~7のアルキル基、炭素数2~7のアルケニル基、炭素数2~7のアルキニル基、ヒドロキシエチル基、又は、ヒドロキシプロピル基を表す。Rの炭素数が上記範囲である場合、導電性ペースト中の粉末が十分な分散性を有し、溶剤への溶解度に優れる。なお、Rが炭化水素の場合は、直鎖炭化水素基であることが好ましい。
【0052】
上記式(1)中、Rは、ヒドロキシエチル基(例:COH)、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、又は、アミノプロピル基を表す。
【0053】
上記式(1)中、Rは水素原子、炭素数1~7のアルキル基、炭素数2~7のアルケニル基、炭素数2~7のアルキニル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、又は、アミノプロピル基を表す。
【0054】
上記式(1)中、R、R、及びRのいずれか1以上が、ヒドロキシエチル基、又は、ヒドロキシプロピル基である場合、ヒドロキシエチル基としては、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基が挙げられ、中でも2-ヒドロキシエチル基が好ましく、ヒドロキシプロピル基としては、1-ヒドロキシプロピル基、2-ヒドロキシプロピル基、3-ヒドロキシプロピル基が挙げられ、中でも、3-ヒドロキシプロピル基が好ましい。なお、R1、2、及びRは、それぞれ同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。
【0055】
上記式(1)中、R、Rのいずれか1以上が、アミノエチル基、又は、アミノプロピル基である場合、アミノエチル基としては、1-アミノエチル基、2-アミノエチル基が挙げられ、中でも2-アミノエチル基が好ましく、アミノプロピル基としては、1-アミノプロピル基、2-アミノプロピル基、3-アミノプロピル基が挙げられ、中でも3-アミノプロピル基が好ましい。なお、R2、及びRは、それぞれ同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。
【0056】
また、上記式(1)のRがアルキル基、アルケニル基、アルキニル基である場合、炭素数は3以下が望ましい。Rのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基の炭素数が3以下である場合、立体障害が発生しにくくなり、分散剤の前記金属粒子への吸着へ影響し、その結果、導電性ペーストの粘度の経時的な安定性に繋がる。
【0057】
また、上記式(1)において、R~Rに、アルコール系水酸基又はアミノ基をいくつ備えるかは、導電性粉末の金属粒子の表面の酸化状態等考慮して、適宜選択することができる。アミン系分散剤の分子内に、複数のアミノ基、又は、アミノ基とアルコール系水酸基を備えることで、分散剤の導電性粉末を構成する金属粒子への吸着へ影響し、その結果、導電性ペーストの粘度の経時的な安定性に繋がると考えられる。
【0058】
なお、上記式(1)のR、R、Rが、ヒドロキシブチル基やアミノブチル基のようにアルコール系水酸基やアミノ基を備え4以上の炭素と水素を含む原子団となると、当該原子団による立体障害により、前記金属粒子へのアミン系分散剤の吸着に悪影響し、導電性ペーストの粘度の経時的な安定性を維持しにくくなる。なお、R1、及びRは、それぞれ同一でもよく、又は、異なっていてもよい。例えば、R及びRのうち、いずれか一方の基(R又はR)がアルキル基である場合、導電性ペースト粘度の経時的な安定性をより向上させるという観点から、他方(R又はR)は、水素原子、アルコール系水酸基(ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基)又はアミノ基(アミノエチル基、アミノプロピル基)であることが好ましい。
【0059】
また、さらなるアミン系分散剤の1種は、炭素数が概ね20以下のアルキルアミンであることが好ましい。アミン化合物としては、従来公知のものを特に限定なく用いることができる。具体例としては、例えば、n-ブチルアミン、ペンチルアミン、2-メトキシエチルアミン、2-エトキシエチルアミン、3-メトキシプロピルアミン、3-エトキシプロピルアミン、オクチルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、ミリスチルアミン、ラウリルアミン等の第1級脂肪族アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、メチルブチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルイソプロピルアミン、ジオクチルアミン等の第2級脂肪族アミン;トリメチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリオクチルアミン等の第3級脂肪族アミン;等の炭素数が20以下のアミン化合物が例示される。
【0060】
導電性ペーストに上記アミン系分散剤を用いる場合、導電性粉末を構成する金属粒子への吸着が多くなり、それにより、導電性ペーストに含まれる樹脂成分の当該金属粒子への吸着が抑制されると考えられる。そして、その結果、導電性ペーストの粘度の経時的に増加する変化が抑制されると考えられる。
【0061】
導電性ペーストは、上記アミン系分散剤を、導電性粉末100質量部に対し、0.01質量部~4質量部、好ましくは0.02質量部~3質量部以下含んでもよい。上記アミン系分散剤を上記範囲で含む場合、経時的な粘度変化が抑制され、粘度安定性を向上させることが出来、得られる電極層についてはその平滑性が高い。なお、アミン系分散剤の含有量が4質量部を超える場合、導電性ペーストをグリーンシートに印刷した際、印刷面にメッシュ跡が発生したり、ペーストの粘度が大きく低下したりすることがある。
【0062】
アミン系分散剤は、例えば、市販の製品から、上記特性を満たすものを選択して用いることができる。また、上記アミン系分散剤は、従来公知の製造方法を用いて、上記特性を満たすように製造してもよい。
【0063】
これら2種以上のアミン系分散剤は、前記導電性粉末100質量部に対して、合わせて0.01質量部~4質量部以下、好ましくは0.02質量部~3質量部以下含有される。分散剤の含有量が上記範囲である場合、導電性ペーストの粘度を適切な範囲に調整することができ、また、シートアタックやグリーンシートの剥離不良を抑制することができる。
【0064】
また、これら2種以上のアミン系分散剤は、導電性ペースト全体に対して、好ましくは分散剤の合計で3質量%以下含有される。分散剤の含有量の上限は、好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下である。分散剤の含有量の下限は、特に限定されないが、例えば、0.01質量%以上であり、好ましくは0.05質量%以上である。分散剤の含有量が上記範囲である場合、導電性ペーストの粘度を適切な範囲に調整することができ、また、シートアタックやグリーンシートの剥離不良を抑制することができる。上記アミン系分散剤2種が、上記範囲で含まれることにより、導電性ペーストの粘度の経時的変化を抑制出来、電極層としての平滑性が向上する。
【0065】
なお、導電性ペーストは、上記のアミン系分散剤以外の分散剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で含んでもよい。上記以外の分散剤としては、例えば、高級脂肪酸、高分子界面活性剤等を含む酸系分散剤及びアミノ酸系分散剤、酸系分散剤以外のカチオン系分散剤、ノニオン系分散剤、両性界面活性剤及び高分子系分散剤等を含んでもよい。また、これらの分散剤は、1種又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0066】
(導電性ペースト)
本実施形態に係る導電性ペーストは、上述の成分を含むことにより、導電性ペースト中の導電性粉末の分散状態を維持させ、導電性ペーストの経時的な粘度変化を少なくすることができる。
【0067】
本実施形態の導電性ペーストの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。導電性ペーストは、例えば、上記の各成分を用意し、3本ロールミル、ボールミル、ミキサー等で攪拌・混練することにより製造することができる。その際、導電性粉末表面に予め分散剤を塗布すると、導電性粉末が凝集することなく十分にほぐれて、その表面に分散剤が行きわたるようになり、均一な導電性ペーストを得やすい。また、バインダー樹脂をビヒクル用の有機溶剤に溶解させ、有機ビヒクルを作製し、ペースト用の有機溶剤へ、導電性粉末、セラミック粉末、有機ビヒクル及び分散剤を添加し、ミキサーで攪拌・混練し、導電性ペーストを作製してもよい。
【0068】
導電性ペーストは、積層セラミックコンデンサやバリスタ等の電子部品に好適に用いることができる。積層セラミックコンデンサは、誘電体グリーンシートを用いて形成される誘電体層及び導電性ペーストを用いて形成される内部電極層を有する。
【0069】
積層セラミックコンデンサは、誘電体グリーンシートに含まれる誘電体セラミック粉末と導電性ペーストに含まれるセラミック粉末とが同一組成の粉末であることが好ましい。本実施形態の導電性ペーストを用いて製造される積層セラミックコンデンサは、誘電体グリーンシートの厚さが、例えば2μm以下である場合でも、シートアタックやグリーンシートの剥離不良が抑制される。
【0070】
導電性ペーストは、導電性ペーストの製造24時間経過後の粘度を基準とした場合、その製造後から13日間静置後(製造後14日後)の粘度変化量は、好ましくは-5~+15Pa・s以内である。なお、上記導電性ペーストの粘度は、例えば、実施例に記載した方法((アントンパール社製 レオメータM501)にてフローカーブ測定において回転数4sec-1)の条件で測定する方法)等により測定することができる。
【0071】
また電極層としての導電性ペーストの平滑性は、ガラス板に塗布した導電性ペーストの乾燥膜をレーザー顕微鏡(キーエンス社製)で測定する方法等により測定することができる。
【0072】
[電子部品]
以下、本発明の導電性ペーストを用いて製造することのできる電子部品等の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図面においては、適宜、模式的に表現することや、縮尺を変更して表現することがある。また、部材の位置や方向等を、適宜、図1等に示すXYZ直交座標系を参照して説明する。このXYZ直交座標系において、X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向(上下方向)である。
【0073】
図1A及び図1Bは、実施形態に係る電子部品の一例である、積層セラミックコンデンサ1を示す斜視図及び側面断面図である。積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層12及び内部電極層11を交互に積層したセラミック積層体10と外部電極20とを備える。
【0074】
以下、上記導電性ペーストを使用した積層セラミックコンデンサ1の製造方法について説明する。まず、セラミックグリーンシートからなる誘電体層上に、導電性ペーストを印刷して、乾燥し、乾燥膜を形成する。この乾燥膜を上面に有する複数の誘電体層を、圧着により積層させて積層体を得た後、積層体を焼成して一体化することにより、内部電極層11と誘電体層12とが交互に積層したセラミック積層体10を作製する。その後、セラミック積層体10の両端部に一対の外部電極20を形成することにより積層セラミックコンデンサ1が製造される。以下に、より詳細に説明する。
【0075】
まず、未焼成のセラミックシートであるセラミックグリーンシートを用意する。このセラミックグリーンシートとしては、例えば、チタン酸バリウム等の所定のセラミックの原料粉末に、ポリビニルブチラール等の有機バインダーとターピネオール等の溶剤とを加えて得た誘電体層用ペーストを、PETフィルム等の支持フィルム上にシート状に塗布し、乾燥させて溶剤を除去したもの等が挙げられる。なお、セラミックグリーンシートからなる誘電体層の厚みは、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサの小型化の要請の観点から、0.05μm以上3μm以下が好ましい。
【0076】
次いで、このセラミックグリーンシートの片面に、スクリーン印刷法等の公知の方法によって、上述の導電性ペーストを印刷(塗布)して乾燥し、乾燥膜を形成したものを複数枚、用意する。なお、印刷後の導電性ペースト(乾燥膜)の厚みは、内部電極層11の薄層化の要請の観点から、乾燥後1μm以下とすることが好ましい。
【0077】
次いで、支持フィルムから、セラミックグリーンシートを剥離するとともに、セラミックグリーンシートからなる誘電体層とその片面に形成された乾燥膜とが交互に配置されるように積層した後、加熱・加圧処理により積層体を得る。なお、積層体の両面に、導電性ペーストを塗布していない保護用のセラミックグリーンシートを更に配置する構成としても良い。
【0078】
次いで、積層体を所定サイズに切断してグリーンチップを形成した後、当該グリーンチップに対して脱バインダー処理を施し、還元雰囲気下において焼成することにより、セラミック積層体10を製造する。なお、脱バインダー処理における雰囲気は、大気又はNガス雰囲気にすることが好ましい。脱バインダー処理を行う際の温度は、例えば200℃以上400℃以下である。また、脱バインダー処理を行う際の、上記温度の保持時間を0.5時間以上24時間以下とすることが好ましい。また、焼成は、内部電極層に用いる金属の酸化を抑制するために還元雰囲気で行われ、また、積層体の焼成を行う際の温度は、例えば、1000℃以上1350℃以下であり、焼成を行う際の、温度の保持時間は、例えば、0.5時間以上8時間以下である。
【0079】
グリーンチップの焼成を行うことにより、グリーンシート中の有機バインダーが完全に除去されるとともに、セラミックの原料粉末が焼成されて、セラミック製の誘電体層12が形成される。また乾燥膜中の有機ビヒクルが除去されるとともに、ニッケル粉末又はニッケルを主成分とする合金粉末が焼結もしくは溶融、一体化されて、内部電極が形成され、誘電体層12と内部電極層11とが複数枚、交互に積層された積層セラミック焼成体が形成される。なお、酸素を誘電体層の内部に取り込んで信頼性を高めるとともに、内部電極の再酸化を抑制するとの観点から、焼成後の積層セラミック焼成体に対して、アニール処理を施してもよい。
【0080】
そして、作製した積層セラミック焼成体に対して、一対の外部電極20を設けることにより、積層セラミックコンデンサ1が製造される。例えば、外部電極20は、外部電極層21及びメッキ層22を備える。外部電極層21は、内部電極層11と電気的に接続される。なお、外部電極20の材料としては、例えば、銅やニッケル、又はこれらの合金が好適に使用できる。なお、電子部品は、積層セラミックコンデンサに限定されず、積層セラミックコンデンサ以外の電子部品であってもよい。
【実施例0081】
以下、本発明を実施例と比較例に基づき詳細に説明するが、本発明は実施例によって何ら限定されるものではない。
【0082】
[評価方法]
(導電性ペーストの粘度評価)
導電性ペーストの製造から室温(25℃)で1日静置後、および室温(25℃)で14日間静置後において、それぞれの導電性ペーストの粘度をレオメータ(アントンパール社製 レオメータMCR501)でのフローカーブ測定において回転数4sec-1で測定した。そして、1日間静置後の粘度を基準粘度として、14日間静置後の粘度から基準粘度を減算して、粘度の変化量を算出した。
【0083】
(導電性ペースト乾燥膜の平滑性評価)
アプリケータを用いて、導電性ペーストをwet膜厚10μmとなるようにガラス板へ塗布した後、ガラス板を120℃に設定したオーブンへ入れて、20分乾燥させ、導電性ペーストの乾燥膜を得た。乾燥膜に対して、レーザー顕微鏡(キーエンス社製、VK―X3000)で測定範囲200x250μmの範囲の乾燥膜の平均粗さを測定し、ランダムに5箇所の測定を繰り返した。得られた値の平均値を導電性ペースト乾燥膜の平均粗さとして、平滑性の目安とした。
【0084】
[使用材料]
(導電性粉末)
導電性粉末としては、Ni粉末(数平均粒径60nm)を下記の手法で作製し、使用した。
【0085】
<湿式ニッケル粉末の製造>
[ニッケル塩及びニッケルよりも貴な金属の金属塩の溶液の調製]
塩化ニッケル六水和物(NiCl・6HO、分子量:237.69)を、100gのNi金属が1Lの純水中に存在するように溶解した水溶液(「100g-Ni/L水溶液」とする)と、ニッケルよりも貴な金属の金属塩として塩化パラジウム(II)アンモニウム(別名:テトラクロロパラジウム(II)酸アンモニウム)((NHPdCl、分子量:284.31)を、1.2gのPd金属が1Lの純水中に存在するように溶解した水溶液(「2g-Pd/L水溶液」とする)を調製した。そして、100g-Ni/L水溶液1000mLと1.2g-Pd/L水溶液8.5mL、自己分解抑制補助剤としての硫黄含有化合物として分子内にスルフィド基(-S-)を1個含有するL-メチオニン(CHSCCH(NH)COOH、分子量:149.21)1.27gを、純水881mLに溶解して、主成分としてニッケル塩と、硫黄含有化合物と、ニッケルより貴な金属の金属塩である核剤とを含有する水溶液であるニッケル塩核剤含有溶液を調製した。ここで、ニッケル塩核剤含有溶液において、スルフィド化合物であるL-メチオニンはニッケルに対してモル比で0.005(0.5モル%)と微量で、パラジウム(Pd)はニッケル(Ni)に対し100質量ppm(55.16モルppm)である。
【0086】
[還元剤溶液の調製]
還元剤として抱水ヒドラジン(N・HO、分子量:50.06)を純水で1.67倍に希釈した市販の工業グレードの60%抱水ヒドラジン(エムジーシー大塚ケミカル株式会社製)を207g秤量し、水酸化アルカリを含まず、主成分としてのヒドラジンを含有する水溶液である還元剤溶液を調製した。
【0087】
[水酸化アルカリ溶液]
水酸化アルカリとして、水酸化ナトリウム(NaOH、分子量:40.0)を純水に溶解し、水酸化ナトリウムを382g/Lの濃度で含有する水溶液である水酸化アルカリ溶液を757mL用意した。
【0088】
[アミン化合物溶液]
アミン化合物として、分子内に第1級アミノ基(-NH)を2個含有するアルキレンアミンであるエチレンジアミン(略称:EDA)(HNCNH、分子量:60.1)1.02gを、純水18mLに溶解して、エチレンジアミンを含有する水溶液であるアミン化合物溶液を用意した。なお、上記ニッケル塩核剤含有溶液、還元剤溶液、水酸化アルカリ溶液、及びアミン化合物溶液における使用材料には、60%抱水ヒドラジンを除き、いずれも和光純薬工業株式会社製の試薬を用いた。
【0089】
[晶析工程]
ニッケル塩核剤含有溶液を撹拌羽根付テフロン(登録商標)被覆ステンレス容器内に入れ、液温が85℃になるように撹拌しながら加熱した後、液温27℃の還元剤溶液を、Ni金属と抱水ヒドラジンとのモル比が1:1.46となるように、混合時間10秒で添加混合してニッケル塩・還元剤含有液とした。このニッケル塩・還元剤含有液に液温27℃の水酸化アルカリ溶液を、Ni金属と水酸化ナトリウムとのモル比が1:3.54となるように、混合時間120秒で添加混合し、液温70℃の反応液(塩化ニッケル+パラジウム塩+ヒドラジン+水酸化ナトリウム)を調合し、還元反応(晶析反応)を開始した(反応開始温度70℃)。反応開始後8分後から28分後までの20分間にかけて上記アミン化合物溶液を、Ni金属とエチレンジアミンとのモル比が1:0.01(1.0モル%)となるように、上記反応液に滴下混合し、ヒドラジンの自己分解を抑制しながら還元反応を進めてニッケル晶析粉を反応液中に析出させた。反応開始から60分以内に還元反応は完了し、反応液の上澄み液は透明であることから、反応液中のニッケル成分はすべて金属ニッケルに還元されて、ニッケル晶析粉となったことを確認した。ニッケル晶析粉を含む反応液はスラリー状であり、このニッケル晶析粉含有スラリーにメルカプト酢酸(チオグリコール酸)(HSCHCOOH、分子量:92.12)の水溶液を加えて、ニッケル晶析粉の表面処理(硫黄コート処理)を施した。
【0090】
[湿式解砕工程]
表面処理後、ニッケル晶析粉含有スラリーに対してデカンテーションと純水(導電率1μS/cm)の投入を繰り返してスラリー中の導電率が15μS/cm以下になるまで洗浄し、ニッケル濃度が25質量%のニッケル晶析粉含有スラリーとし湿式解砕を施した。
【0091】
[酸洗浄工程]
湿式解砕工程後のニッケル晶析粉含有スラリーに、1質量%硫酸水溶液(HSO、分子量:98.08)を滴下して中和し、20分間ニッケル晶析粉含有スラリーのpHを4~5に維持した。このときのニッケル晶析粉含有スラリーのニッケル濃度は、5質量%であった。なお、中和の反応式は、Ni(OH)+HSO→NiSO+2HOとなる。
【0092】
[溶媒置換工程、固液分離工程]
酸洗浄工程後、ヌッチェにろ紙をのせ、そこにニッケル晶析粉含有スラリーを投入してろ過し、その後、導電率が1μS/cmの純水をろ紙上のニッケル晶析粉に投入して、ろ過後のろ液の導電率が30μS/cm以下になるまでろ過洗浄した。その後、純度99.9%以上のエタノール(沸点:78.3℃)をヌッチェに投入して通液し、ニッケルスラリー中の溶媒を水からエタノールへ置換した。なお、溶媒置換後のニッケルスラリーの溶媒に含まれるエタノール濃度は、92.4質量%、残りの7.6質量%は水であった。ここで、エタノール濃度は、固液分離工程の最終ろ液(最後の50mL)を回収し、カールフィッシャー水分率(150℃)を測定し、「100-水分率(%)=ろ液中の溶剤濃度(%)」の計算で得られるろ液中の溶剤濃度を、エタノール濃度とした。他の実施例等でも同様に算出した。溶媒置換後、固形分濃度を40質量%以上となるまでろ過を継続して固液分離し、ニッケル粉ケーキを得た。
【0093】
[乾燥工程]
前記ニッケル粉ケーキを、120℃の温度に設定した真空乾燥機中で6時間乾燥して湿式ニッケル粉末を得た。
【0094】
<評価及びその結果>
(数平均粒径)
得られた湿式ニッケル粉末を、走査型電子顕微鏡(SEM、JEOL Ltd.製、JSM-7100F)で観察し、SEM画像を画像処理することにより全体の形状が確認できる100~200個の粒子の面積を測定し、測定した面積から真円換算によりそれぞれの粒子の直径を算出して、さらに算出した直径の平均値を算出し、これを数平均粒径とした。得られたニッケル粉末の数平均粒径は60nmであった。
【0095】
(セラミック粉末)
セラミック粉末としては、チタン酸バリウム(戸田工業株式会社BaTiO、商品名T-BTO-030RF;上記SEM観察による方法で算出される数平均粒径は30nm)を使用した。
【0096】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、エチルセルロース樹脂(日進化成株式会社製、商品名エトセルSTD100をターピネオールに10質量%溶解させたもの、及び、ポリビニルブチラール樹脂(積水化学工業株式会社製、商品名エスレックBM-1)をジイソブチルケトンに10質量%溶解させたビヒクルとして準備したものを用い、質量比1:1で混合した。すなわち、バインダー樹脂は、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ターピネオールおよびジイソブチルケトンが質量比5:5:45:45の割合で混合され、樹脂が溶剤に溶解したものである。
【0097】
(分散剤)
アミン系分散剤(1)として、上記一般式(1)中、R=CH、R=COH、R=COHで示される分散剤a、上記一般式(1)中、R=CH、R=COH、R=Hで示される分散剤b、上記一般式(1)中、R=CH、R=COH、R=CHで示される分散剤c、上記一般式(1)中、R=COH、R=COH、R=COHで示される分散剤d、上記一般式(1)中、R=H、R=COH、R=COHで示される分散剤e、上記一般式(1)中、R=H、R=CNH、R=CNHで示される分散剤fを用いた。
【0098】
また、アミン系分散剤(2)として、オレイルアミンを用いた。
【0099】
(有機溶剤)
有機溶剤としては、溶剤(1)ターピネオール、溶剤(2)ジイソブチルケトン、溶剤(3)シクロヘキサンを使用した。なお、ターピネオールとジイソブチルケトンは樹脂の溶解に用い、シクロヘキサンは導電ペーストの作成の際に加えた。
【0100】
[実施例1]
Ni粉末50質量%、セラミック粉末3.8質量%、エチルセルロース樹脂とポリビニルブチラール樹脂からなるビヒクル中のバインダー樹脂を合計で3質量%、アミン系分散剤(1)として分散剤aを0.5質量%、アミン系分散剤(2)としてオレイルアミンを0.5質量%、残部をシクロヘキサンとし、全体として100質量%となるよう配合し、これらの材料を3本ロールミルで混合して導電性ペーストを作製した。導電性ペーストにおける有機溶剤の質量比は、ターピネオール:ジイソブチルケトン:シクロヘキサン=0.15:0.15:42.2である。
【0101】
得られた導電性ペーストの1日後の粘度は35Pa・s、14日後の粘度は37Pa・sと変化量は-2Pa・sであった。またガラス板上に作製した導電性ペーストの乾燥膜の平均粗さは0.04μmであった。使用した分散剤、製造した導電性ペーストの粘度および乾燥膜の平均粗さの結果を表1に示す。
【0102】
[実施例2~6]
アミン系分散剤(1)を表1に記載したアミン系分散剤に変えた以外は実施例1と同様にして、導電性ペーストを作製し、粘度及び平均粗さを評価した。結果を表1に示す。
【0103】
[比較例1]
アミン系分散剤(2)を用いず、バインダー樹脂中の有機溶剤も含め有機溶剤を全てターピネオールにした以外は、実施例1と同様に導電性ペーストを作製した。粘度及び平均粗さの結果を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1より、アミン系分散剤(1)、(2)と、3種類の有機溶剤を併用することで、導電性ペーストの粘度が20Pa・s以上50Pa・s以下と、ペーストの塗布が容易な粘度の範囲内で粘度を安定化することができ、また、導電性ペーストより得られる乾燥膜の平滑性を高めることができる結果となった。
【0106】
以上より、本発明であれば、乾燥後の導電膜としての平滑性が高く、経時的な粘度変化が少ない、導電性ペーストを提供することができるため、産業上有用である。
【符号の説明】
【0107】
1…積層セラミックコンデンサ
10…セラミック積層体
11…内部電極層
12…誘電体層
20…外部電極
21…外部電極層
22…メッキ層
図1