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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130230
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】AR表示装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20230912BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230912BHJP
   G06F 3/0484 20220101ALI20230912BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G06T19/00 600
G06T7/00 350C
G06F3/0484
G06F3/01 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034782
(22)【出願日】2022-03-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】田中 大
(72)【発明者】
【氏名】川喜田 裕之
(72)【発明者】
【氏名】澤畠 康仁
【テーマコード(参考)】
5B050
5E555
5L096
【Fターム(参考)】
5B050AA00
5B050BA06
5B050BA09
5B050BA11
5B050BA12
5B050BA13
5B050CA01
5B050DA01
5B050EA19
5B050EA26
5B050FA02
5E555AA25
5E555AA26
5E555AA63
5E555BA02
5E555BA04
5E555BA38
5E555BB02
5E555BB04
5E555BB38
5E555BC04
5E555BE17
5E555CA10
5E555CA42
5E555CA44
5E555CB21
5E555CB56
5E555DA08
5E555DA09
5E555DC09
5E555DC23
5E555FA00
5L096FA02
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】日常生活の邪魔にならず、かつ視界に認識できる領域にバーチャルオブジェクトを表示させる。
【解決手段】AR表示装置1は、外界映像のサリエンシーマップを生成し、サリエンシーマップに基づいて、非注視の確率分布を示す非注視分布を決定する非注視分布決定部211と、前時刻のAR表示領域から時間的に連続する確率分布を示す時間連続分布を決定する時間連続分布決定部213と、非注視分布及び時間連続分布の積を、表示候補分布として計算する表示候補分布計算部214と、表示候補分布に基づいて、AR表示領域の中心座標を決定する中心座標決定部22と、AR表示領域の中心が中心座標に位置するように制御する投影制御部23と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外界映像に応じて、AR映像の表示領域であるAR表示領域を変更するAR表示装置であって、
外界映像のサリエンシーマップを生成し、該サリエンシーマップに基づいて、非注視の確率分布を示す非注視分布を決定する非注視分布決定部と、
外界映像において前時刻の前記AR表示領域から時間的に連続する確率分布を示す時間連続分布を決定する時間連続分布決定部と、
前記非注視分布及び前記時間連続分布の積を、表示候補分布として計算する表示候補分布計算部と、
前記表示候補分布に基づいて、前記AR表示領域の中心座標を決定する中心座標決定部と、
前記AR表示領域の中心が前記中心座標に位置するように制御する投影制御部と、
を備える、AR表示装置。
【請求項2】
前記時間連続分布決定部は、1時刻前のAR表示領域の中心座標、及び前記時間連続分布の範囲を指定する探索範囲パラメータに基づいて前記時間連続分布を決定し、該探索範囲パラメータはユーザの指示に基づいて変更可能である、請求項1に記載のAR表示装置。
【請求項3】
外界映像において低視聴負荷の確率分布を示す低負荷分布を決定する低負荷分布決定部を更に備え、
前記表示候補分布計算部は、前記非注視分布、前記時間連続分布、及び前記低負荷分布の積を、前記表示候補分布として計算する、請求項1又は2に記載のAR表示装置。
【請求項4】
前記低負荷分布決定部は、前記低負荷分布の範囲を指定する低負荷分布パラメータに基づいて前記低負荷分布を決定し、該低負荷分布パラメータはユーザの指示に基づいて変更可能である、請求項3に記載のAR表示装置。
【請求項5】
前記投影制御部は、傾きセンサにより計測された当該AR表示装置の傾きを用いて、前記AR映像が地面に対して水平を保つように制御する、請求項1から4のいずれか一項に記載のAR表示装置。
【請求項6】
前記中心座標決定部は、第2AR映像の中心座標である第2中心座標に基づいて、前記AR表示領域が前記第2AR映像の表示領域と重ならないように前記中心座標を決定する、請求項1から5のいずれか一項に記載のAR表示装置。
【請求項7】
コンピュータを、請求項1から6のいずれか一項に記載のAR表示装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、AR(Augmented Reality;拡張現実)表示装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、メガネ型デバイスが開発・販売され、ウェアラブルデバイスとしての需要が高まっている。メガネ型デバイスには多様な種類が存在し、AR機能を有するものがある(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
ARグラスのようなAR表示装置が十分に普及した状況では、常時着用も想定される。AR表示装置を着用することで、日常生活の中にバーチャルオブジェクトが表示され、多様な情報に対してシームレスにアクセスすることが可能になる。スマートフォンやTVといったハードウェア型ディスプレイの情報提示デバイスと比べ、AR表示装置によるディスプレイは枠が表示されないことも特徴となる。また、スマートフォンに比べ、視野に対してより広い空間に情報を提示できることも特徴である。
【0004】
AR表示装置で映像視聴を行う場合、現実には存在しないバーチャルなディスプレイにより映像を視聴することができる。AR表示装置によるオブジェクトの表示方法は、以下の3つの方法が主流である。第1の方法は、空間の任意の場所に配置し、ユーザが動いても物体の座標がその位置に固定されるものである。これはSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)アルゴリズムにより外界を認識し、実際のオブジェクトと同じようにその場所に存在し続けるものである。第2の方法は、頭部座標系に対して固定し、視野のある特定の領域に表示し続ける方法である。これは外部の情報を必要としない、最も簡易な方法である。第3の方法は、Tagalongと呼ばれるアルゴリズムで、表示領域外にオブジェクトが出た場合に表示領域に入るように動くものである(例えば、非特許文献2参照)。
【0005】
一方、人が注視する確率の高い領域はサリエンシーマップ(顕著性マップ)と称され、サリエンシーマップを推定する方法が開示されている(例えば、非特許文献3及び4参照)。また、サリエンシーマップを用いて情報提示領域の導出を試みる研究も行われている(例えば、非特許文献5及び特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-42759号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Microsoft、「Hololens 2」、[online]、[2022年1月28日検索]、インターネット<https://www.microsoft.com/ja-jp/hololens/hardware>
【非特許文献2】Microsoft、「Billboard と tag-along」、[2022年1月28日検索]、インターネット<URL:https://docs.microsoft.com/ja-jp/windows/mixed-reality/design/billboarding-and-tag-along>
【非特許文献3】Laurent Itti, Christof Koch, and Ernst Niebur, “A model of saliency-based visual attention for rapid scene analysis,” IEEE Transactions on pattern analysis and machine intelligence, Vol. 20, No. 11, pp. 1254-1259, 1998
【非特許文献4】Ting Zhao and Xiangqian Wu, “Pyramid feature attention network for saliency detection,” In Proceedings of the IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition, pp. 3085-3094, 2019
【非特許文献5】Takayuki Abe, Sho Takahashi, and Toru Hagiwara, “A calculation method of degree of data indication regions in first-person view videos for improvement transportation,” In 2019 IEEE 8th Global Conference on Consumer Electronics (GCCE), pp. 558-559. IEEE, 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記のAR表示の第1の方法では、自分が移動する際、又は顔が異なる方向を向いた際に、視界からオブジェクトが無くなる。そのため、映像視聴のように連続性があり、なるべくユーザにオブジェクトを提示する時間を延ばしたい場合には適さない。また、上記第2の方法では、日常生活においてリアルのオブジェクトを視認する際に、邪魔になってしまうおそれがある。また、第3の方法では、リアルのオブジェクトの認識をインタラプトしてしまうという問題がある。なお、これらの議論については下記参考文献1に詳しい。
[参考文献1]川喜田裕之、外3名、「3D空間における2D動画の形態に関する検討」、In HCG2018-I-1-1. HCG シンポジウム 2018、2018年
【0009】
また、従来の、サリエンシーマップを用いて情報提示領域を導出する方法は、ARグラス中の映像を対象とした一人称視点の移動に関して考慮できていないという問題があった。
【0010】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、日常生活の邪魔にならず、かつ視界に認識できる領域にバーチャルオブジェクトを表示させることが可能なAR表示装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、一実施形態に係るAR表示装置は、外界映像に応じて、AR映像の表示領域であるAR表示領域を変更するAR表示装置であって、外界映像のサリエンシーマップを生成し、該サリエンシーマップに基づいて、非注視の確率分布を示す非注視分布を決定する非注視分布決定部と、前時刻の前記AR表示領域から時間的に連続する確率分布を示す時間連続分布を決定する時間連続分布決定部と、前記非注視分布及び前記時間連続分布の積を、表示候補分布として計算する表示候補分布計算部と、前記表示候補分布に基づいて、前記AR表示分布の中心座標を決定する中心座標決定部と、前記AR表示領域の中心が前記中心座標に位置するように制御する投影制御部と、を備える。
【0012】
さらに、一実施形態において、前記時間連続分布決定部は、外界映像において1時刻前のAR表示領域の中心座標、及び前記時間連続分布の範囲を指定する探索範囲パラメータに基づいて前記時間連続分布を決定し、該探索範囲パラメータはユーザの指示に基づいて変更可能であってもよい。
【0013】
さらに、一実施形態において、外界映像において低視聴負荷の確率分布を示す低負荷分布を決定する低負荷分布決定部を更に備え、前記表示候補分布計算部は、前記非注視分布、前記時間連続分布、及び前記低負荷分布の積を、前記表示候補分布として計算してもよい。
【0014】
さらに、一実施形態において、前記低負荷分布決定部は、前記低負荷分布の範囲を指定する低負荷分布パラメータに基づいて前記低負荷分布を決定し、該低負荷分布パラメータはユーザの指示に基づいて変更可能であってもよい。
【0015】
さらに、一実施形態において、前記投影制御部は、傾きセンサにより計測された当該AR表示装置の傾きを用いて、前記AR映像が地面に対して水平を保つように制御してもよい。
【0016】
さらに、一実施形態において、前記中心座標決定部は、第2AR映像の中心座標である第2中心座標に基づいて、前記AR表示領域が前記第2AR映像の表示領域と重ならないように前記中心座標を決定してもよい。
【0017】
また、一実施形態係るプログラムは、コンピュータを、上記AR表示装置として機能させる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、生活の邪魔にならず、かつ視界に認識できる領域にバーチャルオブジェクトを表示させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態に係るAR表示装置の構成例を示すブロック図である。
図2】第1の実施形態に係るAR表示装置における表示候補分布決定部の構成例を示すブロック図である。
図3】第1の実施形態に係るAR表示装置における非注視分布決定部によるサリエンシーマップ推定の一例を示す模式図である。
図4】第1の実施形態に係るAR表示装置における低負荷分布決定部が決定する低負荷分布の一例を示す模式図である。
図5】第1の実施形態に係るAR表示装置における時間連続分布決定部が決定する時間連続分布の一例を示す模式図である。
図6】第1の実施形態に係るAR表示装置における表示候補分布計算部の処理を説明する図である。
図7】第1の実施形態に係るAR表示装置の着用時の動作を説明するフローチャートである。
図8】第1の実施形態に係るAR表示装置を着用したユーザから見たAR映像の挙動を示す図である。
図9】第2の実施形態に係るAR表示装置の構成例を示すブロック図である。
図10】第2の実施形態に係るAR表示装置におけるパラメータ変更部と表示候補分布決定部の構成例を示すブロック図である。
図11】第2の実施形態に係るAR表示装置の着用時の動作を説明するフローチャートである。
図12】第3の実施形態に係るAR表示装置の構成例を示すブロック図である。
図13】第3の実施形態に係るAR表示装置の着用時の動作を説明するフローチャートである。
図14】第4の実施形態に係るAR表示装置の構成例を示すブロック図である。
図15】第4の実施形態に係るAR表示装置における表示候補分布決定部の構成例を示すブロック図である。
図16】第4の実施形態に係るAR表示装置の着用時の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書では特に、カメラを搭載して外界の状態に応じてバーチャルオブジェクト(AR映像)を表示するAR機能を有する、メガネ型のAR表示装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係るAR表示装置について、以下に説明する。図1に、第1の実施形態に係るAR表示装置の構成例を示す。図1に示すAR表示装置1は、外界映像取得部10と、制御部20と、記憶部30と、表示部40と、を備え、外界映像に応じて、AR映像の表示領域(以下、「AR表示領域」という。)を変更する。
【0022】
外界映像取得部10は、AR表示装置1の外部を撮像して外界映像を取得する撮像装置(小型カメラ)である。外界映像取得部10は、外界映像を制御部20に出力する。
【0023】
制御部20は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの専用のハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサによって構成されてもよいし、双方を含んで構成されてもよい。制御部20は、表示候補分布決定部21と、中心座標決定部22と、投影制御部23と、を備える。
【0024】
表示候補分布決定部21は、AR映像を表示させる候補となる表示候補領域の確率分布を決定し、中心座標決定部22に出力する。AR表示装置1は、AR映像を、人物・文字といった人間が注視する確率の高い領域を避け、かつ映像視聴をしやすい位置に表示する。具体的には、AR映像を、(ア)ユーザが注視する確率が閾値以下の非注視領域、(イ)ユーザの視野内における視聴負荷が閾値以下の(すなわち、見やすい)低負荷領域、(ウ)前時刻のAR表示領域から連続する時間連続領域、という3つの要件を同時に満たす領域に表示する。
【0025】
図2は、表示候補分布決定部21の構成例を示すブロック図である。図2に示す表示候補分布決定部21は、非注視分布決定部211と、低負荷分布決定部212と、時間連続分布決定部213と、表示候補分布計算部214と、を備える。表示候補分布決定部21は、低負荷分布決定部212及び時間連続分布決定部213のいずれか一方のみを備えていてもよい。
【0026】
非注視分布決定部211は、外界映像取得部10によって取得された外界映像のサリエンシーマップを生成し、サリエンシーマップに基づいて、非注視の確率分布を示す非注視分布を決定し、表示候補分布計算部214に出力する。
【0027】
図3は、畳み込みニューラルネットワークを用いたサリエンシーマップ推定の一例を示す模式図である。斜線で示す領域はサリエンシーが高いと推定された領域である。この模式図では、サリエンシーが高いほど斜線の間隔を狭くしている。つまり、目の前に人Mがいる場合はその人Mを注視する可能性が高いことを示している。サリエンシーの高さは、各画素に対して定義される。非注視分布決定部211は、各画素に対して推定されたサリエンシーの値を最大値から引くことで、非注視の確率分布として利用する。以下では、ある時刻tにおけるAR表示領域の中心座標をXとし、非注視分布をp(X|S ̄)と表記する。
【0028】
低負荷分布決定部212は、目線の高さを基準にして、外界映像(ユーザの視野内)における低視聴負荷の確率分布を示す低負荷分布を決定し、表示候補分布計算部214に出力する。確率分布は、例えば2次元の一様分布又は正規分布とすることができる。
【0029】
図4は、低負荷分布の一例を示す模式図である。低負荷分布は、人間工学によりモデリングが可能である。PCモニタの場合、下記参考文献2に開示されているように、モニタの上部の高さと目線の高さが一致することが作業上好ましいという知見がある。このようなPCモニタ配置ガイドラインを利用し、低負荷分布決定部212は、目線の高さを基準に低負荷分布を定義する。デバイス毎に表示可能な領域幅は異なり、また人によっても変動するため、低負荷分布は可変な確率分布である。そのため、低負荷分布決定部212は、外部から低負荷分布の範囲を指定する低負荷分布パラメータを取得し、低負荷分布パラメータに基づいて低負荷分布を決定してもよい。低負荷分布パラメータは、例えば目線の高さを基準とした下方向の角度である。図4に示す例では、ユーザの見下ろす角度が所定の範囲内となる低負荷分布の範囲Lを示している。以下では、低負荷分布をp(X|H)と表記する。
[参考文献2]Microsoft、「作業環境の調整」、[2022年1月14日検索]、インターネット<URL:https://support.microsoft.com/ja-jp/topic/%E4%BD%9C%E6%A5%AD%E7%92%B0%E5%A2%83%E3%81%AE%E8%AA%BF%E6%95%B4-e9f3fc2c-e6fa-d27f-78c4-274b3669c425>
【0030】
時間連続分布決定部213は、外界映像において前時刻のAR表示領域から時間的に連続する確率分布を示す時間連続分布を決定し、表示候補分布計算部214に出力する。時間連続分布は、例えば2次元の一様分布又は正規分布とすることができる。
【0031】
図5は、時間連続分布の一例を示す模式図である。時間連続分布決定部213は、記憶部30から1時刻前(すなわち、直前)のAR表示領域の中心座標Xt-1を取得し、中心座標Xt-1の周囲の領域を時間連続分布の範囲として決定する。なお、初期状態の場合には、時間連続分布決定部213は、記憶部30から中心座標の初期値を取得して時間連続分布を決定する。時間連続分布決定部213は、外部から時間連続分布の範囲を指定する探索範囲パラメータを取得し、中心座標Xt-1及び探索範囲パラメータに基づいて時間連続分布を決定してもよい。探索範囲パラメータは、例えば円の半径である。図5に示す例では、中心座標Xt-1を中心とし、半径を探索範囲パラメータで指定される値とする円を時間連続分布の範囲Cとして示している。以下では、時間連続分布をp(X|Xt-1)と表記する。
【0032】
表示候補分布計算部214は、非注視分布決定部211により決定された非注視分布p(X|S ̄)、低負荷分布決定部212により決定された低負荷分布p(X|H)、及び時間連続分布決定部213により決定された時間連続分布p(X|Xt-1)の積を表示候補分布として計算する。
【0033】
図6は、表示候補分布計算部214による処理を説明する図である。3つの条件により与えられる中心座標Xの確率分布p(X|S ̄,H,Xt-1)は、ベイズの定理を用いて式(1)に示すように、3つの確率分布の積に比例する。ここで、∝は比例を表す記号であり、中心座標Xの事前分布は一様分布とする。つまり、表示候補分布計算部214は、3つそれぞれの確率分布の積を各画素に対して計算することで、3つの条件を満たす表示候補分布を求める。
【0034】
【数1】
【0035】
中心座標決定部22は、表示候補分布決定部21により算出された表示候補分布に基づいて、AR表示領域の中心座標Xを決定し、投影制御部23及び記憶部30に出力する。表示候補領域が分布として与えられるため、中心座標決定部22は、期待値計算により最適な座標を計算することができる。中心座標決定部22は、表示候補分布の重み付き平均として期待値を求める場合、時刻tにおけるAR表示領域の中心座標X^tを式(2)により求める。なお、式(2)では3つの分布の積を求めた後に画素単位で重み付けを行っているが、3つの確率分布についてそれぞれ重み付けを行うことも可能である。
【0036】
【数2】
【0037】
また、中心座標決定部22は、同様に表示候補分布の最大値を用いる場合は、中心座標X^tを式(3)により求める。中心座標決定部22は、式(2)又は式(3)を用いて中心座標X^tを計算し、この座標を投影制御部23及び記憶部30へ出力する。なお、中心座標X^tの算出式は、式(2)又は式(3)に限定されるものではない。
【0038】
【数3】
【0039】
投影制御部23は、外部からAR映像を取得し、AR表示領域の中心が中心座標決定部22により決定された中心座標に位置するように制御する。そして、投影制御部23は、AR映像を表示部40に出力する。
【0040】
記憶部30は、中心座標決定部22により決定された中心座標のほか、AR表示装置1の動作に用いられる任意の情報を記憶する。記憶部30は、1つ以上のメモリを含み、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、光メモリなどを含んでもよい。
【0041】
表示部40は、光学系及びディスプレイを備える。表示部40は、投影制御部23から入力したAR映像を光信号に変換しディスプレイ(眼鏡)に表示する。表示部40は、光学シースルー方式、ビデオシースルー方式など、任意の方式によりAR映像を表示する。
【0042】
次に、図7を参照して、AR表示装置1の着用時の動作を説明する。
【0043】
ステップS101では、AR表示装置1がアルゴリズムを開始し、中心座標の初期値を記憶部30に反映する。
【0044】
ステップS102では、外界映像取得部10により外界映像を取得する。
【0045】
ステップS103では、表示候補分布決定部21により表示候補分布を決定する。
【0046】
ステップS104では、中心座標決定部22によりAR映像の中心座標を決定する。
【0047】
ステップS105では、投影制御部23により中心座標に基づいてAR映像の表示位置を変更する。
【0048】
ステップS106では、記憶部30により中心座標を記憶し、次のループに入る。この流れにより、AR表示領域はリアルタイムに更新され続ける。
【0049】
図8に、AR表示装置1を着用したユーザから見たAR映像の挙動を示す。また、非注視分布決定部211により外界映像のうちサリエンシーが高いと推定された部分(人M及びその周囲)に、斜線を付している。図8(a)では、人Mと重ならないようにAR映像Pを表示している。その後、図8(b)から図8(f)にかけて人Mが移動すると、人Mを避ける方向(サリエンシーマップの値が低い領域)へAR映像Pが移動する様子を示している。また、ユーザが見ている方向の変化に伴い、サリエンシーマップも変化している。このように、AR表示装置1は、ユーザが意識を向けたい対象(図8では人M)を避けて、AR映像を表示することができる。
【0050】
図8からも理解できるように、AR表示装置1によれば、AR映像を動的に邪魔にならない場所に表示することが可能となる。したがって、既存の表示方法と比較して、日常生活の中で使用した場合に快適な映像視聴環境を作ることが可能となる。例えば、調理中やPC操作中であっても、並行してAR映像を視聴することが可能となる。
【0051】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係るAR表示装置について説明する。図9は、第2の実施形態に係るAR表示装置の構成例を示すブロック図である。図9に示すAR表示装置2は、外界映像取得部10と、制御部20aと、記憶部30と、表示部40と、を備える。第2の実施形態のAR表示装置2は、第1の実施形態のAR表示装置1と比較して、制御部20を制御部20aに変更した点が相違する。その他の構成については第1の実施形態と同一であるため、同一の参照番号を付して適宜説明を省略する。
【0052】
制御部20aは、表示候補分布決定部21と、中心座標決定部22と、投影制御部23と、パラメータ変更部24と、を備える。
【0053】
図10は、第2の実施形態に係るパラメータ変更部24と表示候補分布決定部21の構成例を示すブロック図である。パラメータ変更部24は、低負荷分布パラメータ及び探索範囲パラメータを、ユーザの指示に基づいて独立して変更する。そして、パラメータ変更部24は、変更後の低負荷分布パラメータを低負荷分布決定部212に出力し、変更後の探索範囲パラメータを時間連続分布決定部213に出力する。
【0054】
次に、図11を参照して、AR表示装置2の着用時の動作を説明する。
【0055】
ステップS201では、パラメータ変更部24によりパラメータを変更する。ステップS201の処理は、任意のタイミングで行うことができる。ステップS101からステップS106は第1の実施形態と同じであるため、説明を省略する。ただし、ステップS103では、ステップS201により変更されたパラメータを用いて表示候補分布を決定する。
【0056】
確率分布p(X|H)と確率分布p(X|Xt-1)はユーザにより好まれる分布が異なることが考えられるが、本実施形態では、低負荷分布パラメータを変更することにより分布p(X|H)を変更し、探索範囲パラメータを変更することにより分布p(X|Xt-1)を変更することができる。すなわち、AR表示装置2はパラメータ変更部24を設けることで、ユーザの指示によりパラメータを変更してパーソナライズ化することが可能となる。
【0057】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るAR表示装置について説明する。図12は、第3の実施形態に係るAR表示装置の構成例を示すブロック図である。図12に示すAR表示装置3は、外界映像取得部10と、制御部20bと、記憶部30と、表示部40と、傾きセンサ50と、を備える。第3の実施形態のAR表示装置3は、第1の実施形態のAR表示装置1と比較して、傾きセンサ50を更に備え、制御部20を制御部20bに変更した点が相違する。その他の構成については第1の実施形態と同一であるため、同一の参照番号を付して適宜説明を省略する。
【0058】
制御部20bは、表示候補分布決定部21と、中心座標決定部22と、投影制御部23aと、を備える。
【0059】
傾きセンサ50は、例えば加速度センサ又はジャイロセンサであり、AR表示装置3の傾きを計測する。そして、傾きセンサ50は、計測した傾きを投影制御部23aに出力する。
【0060】
投影制御部23aは、外部から取得したAR映像の中心が中心座標決定部22により決定された中心座標に位置するように制御し、更に傾きセンサ50により計測された傾きを用いて、AR映像が地面に対して水平を保つように制御する。また、投影制御部23aは、傾きセンサ50により計測された傾きが閾値を超えた場合には、AR映像を90度回転させて地面に対して水平を保つように制御してもよい。
【0061】
次に、図13を参照して、AR表示装置3の着用時の動作を説明する。
【0062】
ステップS301では、傾きセンサ50によりAR表示装置3の傾きを計測する。ステップS101からステップS106は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。ただし、ステップS105では、ステップS301により計測された傾きも用いてAR映像の表示位置を変更する。
【0063】
AR表示装置は着用時にユーザの頭部に固定されるため、従来のAR表示装置が投影する映像は、ユーザの姿勢が傾いても頭部に対して変化しない。その点、AR表示装置3は傾きセンサ50を備えることで、ユーザの姿勢が傾いた場合でも、AR映像を地面に対して水平に保ち表示することが可能となる。
【0064】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態に係るAR表示装置について説明する。図14は、第4の実施形態に係るAR表示装置の構成例を示すブロック図である。図14に示すAR表示装置4は、外界映像取得部10と、制御部20cと、記憶部30と、表示部40と、を備える。第4の実施形態のAR表示装置4は、第1の実施形態のAR表示装置1と比較して、制御部20を制御部20cに変更した点が相違する。その他の構成については第1の実施形態と同一であるため、同一の参照番号を付して適宜説明を省略する。
【0065】
AR表示装置1,2,3において、複数の映像表示領域を用いて複数のAR映像を表示することができる。しかし、上記のアルゴリズムを用いて複数のAR映像を単純に表示すると、それぞれ重なって表示されてしまうことがある。そのため、AR表示装置4では、複数の表示領域を排斥するように分布を作成する。以下の説明において、AR表示装置4は、第1AR映像及び第2AR映像を表示部40に表示するものとする。
【0066】
制御部20cは、表示候補分布決定部21aと、中心座標決定部22aと、投影制御部23bと、第2中心座標決定部25と、を備える。
【0067】
第2中心座標決定部25は、所定のアルゴリズムに従って第2AR映像の中心座標(以下、「第2中心座標」という。)を決定し、表示候補分布決定部21a及び投影制御部23bに出力する。第2中心座標を決定する方法は、AR表示装置1,2,3において中心座標を求める方法と同じであってもよい。また、第2中心座標決定部25は、第2AR映像の表示領域に関するパラメータを有する場合には、該パラメータも合わせて表示候補分布決定部21a及び投影制御部23bに出力する。
【0068】
図15は、表示候補分布決定部21aの構成例を示すブロック図である。図15に示す表示候補分布決定部21aは、非注視分布決定部211と、低負荷分布決定部212と、時間連続分布決定部213と、表示候補分布計算部214aと、を備える。上述したように、非注視分布決定部211は非注視分布p(X|S ̄)を決定し、低負荷分布決定部212は低負荷分布p(X|H)を決定し、時間連続分布決定部213は時間連続分布p(X|Xt-1)を決定する。
【0069】
表示候補分布計算部214aは、第2中心座標決定部25から取得した第2中心座標に基づいて、第2AR映像の非表示分布p(X|Yt-1 ̄)を決定する。そして、表示候補分布計算部214aは、式(4)に示すように4つそれぞれの確率分布の積を各画素に対して計算することで、4つの条件を満たす表示候補分布を求める。
【0070】
【数4】
【0071】
中心座標決定部22aは、第2中心座標に基づいて、AR表示領域が第2AR映像の表示領域と重ならないように中心座標を決定し、投影制御部23b及び記憶部30に出力する。例えば、中心座標決定部22は、表示候補分布の重み付き平均による期待値、又は最大値を中心座標とする。
【0072】
投影制御部23bは、外部から第1AR映像及び第2AR映像を取得し、中心座標決定部22aから第1中心座標を取得し、第2中心座標決定部25から第2中心座標を取得する。そして、投影制御部23bは、第1AR映像の中心が第1中心座標に位置するように制御し、第2AR映像の中心が第2中心座標に位置するように制御する。
【0073】
次に、図16を参照して、AR表示装置4の着用時の動作を説明する。
【0074】
ステップS401では、第2中心座標決定部25により第2中心座標を決定する。ステップS101からステップS106は第1の実施形態と同様であるため、説明を省略する。ただし、ステップS103では、ステップS401により決定された第2中心座標も用いて表示候補分布を決定する。
【0075】
以上説明したように、本実施形態ではAR表示領域が前記第2AR映像の表示領域と重ならないように中心座標を決定する。かかる構成により、本実施形態によれば、複数のAR映像を表示する場合であっても、お互いに重ならないように表示することが可能となる。
【0076】
(プログラム)
上述したAR表示装置1,2,3,4として機能させるために、それぞれプログラム命令を実行可能なコンピュータを用いることも可能である。ここで、コンピュータは、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、ワークステーション、PC(Personal Computer)、電子ノートパッドなどであってもよい。プログラム命令は、必要なタスクを実行するためのプログラムコード、コードセグメントなどであってもよい。
【0077】
コンピュータは、プロセッサと、記憶部と、入力部と、出力部と、通信インターフェースとを備える。プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、SoC(System on a Chip)などであり、同種又は異種の複数のプロセッサにより構成されてもよい。プロセッサは、記憶部からプログラムを読み出して実行することで、上記各構成の制御及び各種の演算処理を行う。なお、これらの処理内容の少なくとも一部をハードウェアで実現することとしてもよい。
【0078】
プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録されていてもよい。このような記録媒体を用いれば、プログラムをコンピュータにインストールすることが可能である。ここで、プログラムが記録された記録媒体は、非一過性(non-transitory)の記録媒体であってもよい。非一過性の記録媒体は、特に限定されるものではないが、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、USB(Universal Serial Bus)メモリなどであってもよい。また、このプログラムは、ネットワークを介して外部装置からダウンロードされる形態としてもよい。
【0079】
例えば、AR表示装置1として機能させるためのプログラムは、外界映像のサリエンシーマップを生成し、サリエンシーマップに基づいて、非注視の確率分布を示す非注視分布を決定するステップと、前時刻の前記AR表示領域から時間的に連続する確率分布を示す時間連続分布を決定するステップと、非注視分布及び時間連続分布の積を、表示候補分布として計算するステップと、表示候補分布に基づいて、AR表示領域の中心座標を決定するステップと、AR表示領域の中心が中心座標に位置するように制御するステップと、をコンピュータに実行させる。
【0080】
また、上述したAR表示装置1,2,3,4は、1つ又は複数の半導体チップにより構成されてもよい。この半導体チップは、AR表示装置1,2,3,4の各機能を実現する処理内容を記述したプログラムを実行するCPUを搭載してもよい。
【0081】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形又は変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを統合したり、1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。また、実施形態のフローチャートに記載の複数のステップを1つに統合したり、1つのステップを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0082】
1,2,3,4 AR表示装置
10 外界映像取得部
20,20a,20b,20c 制御部
21,21a 表示候補分布決定部
22,22a 中心座標決定部
23,23a,23b 投影制御部
24 パラメータ変更部
25 第2中心座標決定部
30 記憶部
40 表示部
50 傾きセンサ
211 非注視分布決定部
212 低負荷分布決定部
213 時間連続分布決定部
214,214a 表示候補分布計算部
図1
図2
図3
図4
図5
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図16