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特開2023-130282極端紫外光生成システム及び電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130282
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】極端紫外光生成システム及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20230912BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
H05G2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022128586
(22)【出願日】2022-08-12
(31)【優先権主張番号】P 2022034740
(32)【優先日】2022-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】西村 祐一
(72)【発明者】
【氏名】北阪 翔伍
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197CA10
2H197DC02
2H197DC18
2H197GA01
2H197GA05
2H197GA24
2H197HA03
4C092AA06
4C092AA15
4C092AB10
4C092AB12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エネルギ変換効率のばらつきが小さい極端紫外光生成システムの提供。
【解決手段】ターゲット物質にレーザ光を照射して極端紫外光を生成する極端紫外光生成システムであって、ターゲット物質を出力するノズルと、矩形波の電気信号が入力されることによって駆動され、ノズルから出力されるターゲット物質に振動を与えてターゲット物質のドロップレットを発生させる加振素子と、生成された極端紫外光のエネルギを検出する第1のセンサと、ターゲット物質に照射されるレーザ光のエネルギを検出する第2のセンサと、第1のセンサの出力と第2のセンサの出力とに基づいて算出されるエネルギ変換効率のばらつきが小さくなるように、加振素子を振動させる電気信号のデューティ値を制御するプロセッサと、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット物質にレーザ光を照射して極端紫外光を生成する極端紫外光生成システムであって、
前記ターゲット物質を出力するノズルと、
矩形波の電気信号が入力されることによって駆動され、前記ノズルから出力される前記ターゲット物質に振動を与えて前記ターゲット物質のドロップレットを発生させる加振素子と、
前記生成された前記極端紫外光のエネルギを検出する第1のセンサと、
前記ターゲット物質に照射される前記レーザ光のエネルギを検出する第2のセンサと、
前記第1のセンサの出力と前記第2のセンサの出力とに基づいて算出されるエネルギ変換効率のばらつきが小さくなるように、前記加振素子を振動させる前記電気信号のデューティ値を制御するプロセッサと、
を備える極端紫外光生成システム。
【請求項2】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記エネルギ変換効率は、前記極端紫外光のエネルギを前記レーザ光のエネルギで割った値で表される、
極端紫外光生成システム。
【請求項3】
請求項2に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記エネルギ変換効率のばらつきは、前記エネルギ変換効率の標準偏差の3倍、前記エネルギ変換効率の差分の標準偏差の3倍、又は、前記エネルギ変換効率の差分の異常値発生率のいずれかを指標として評価される、
極端紫外光生成システム。
【請求項4】
請求項3に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記生成される前記極端紫外光のパルス番号を表す整数をk、パルス番号kのエネルギ変換効率をCE(k)とする場合、エネルギ変換効率の差分dCE(k)は、次式、
dCE(k)=CE(k)-CE(k-1)
で表される、
極端紫外光生成システム。
【請求項5】
請求項4に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記エネルギ変換効率の差分の異常値発生率は、前記エネルギ変換効率の差分が許容範囲外に分布したイベント数をサンプリング数で割った値の百分率で表される、
極端紫外光生成システム。
【請求項6】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記デューティ値は、前記指標の勾配に基づいて制御される、
極端紫外光生成システム。
【請求項7】
請求項6に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記勾配は、前記デューティ値を少なくとも3点定義して求められた前記指標の値に基づいて定義される、
極端紫外光生成システム。
【請求項8】
請求項7に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記指標の値が小さくなるように前記デューティ値が制御される、
極端紫外光生成システム。
【請求項9】
請求項6に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、前記勾配の絶対値が閾値を超えた場合に、前記指標の値が小さくなる方向に前記デューティ値を変更して前記指標の値を取得する追加の探索を行い、前記追加の探索により取得された前記指標の値を用いて前記勾配を再定義する、
極端紫外光生成システム。
【請求項10】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記レーザ光は、パルスレーザ光であり、
前記プロセッサは、パルスごとに前記エネルギ変換効率を計測する、
極端紫外光生成システム。
【請求項11】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、さらに、
前記ドロップレットの生成時間間隔を検出する第3のセンサを備え、
前記プロセッサは、前記第3のセンサの検出結果に基づいて、前記デューティ値を制御して前記ドロップレットの生成時間間隔を制御する、
極端紫外光生成システム。
【請求項12】
請求項11に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、
前記デューティ値をスキャンして得られた前記第3のセンサの出力に基づいて、前記ドロップレットの生成時間間隔が正常な前記デューティ値の範囲を1つ以上選定し、前記選定した前記1つ以上の前記正常な前記デューティ値の範囲の中から最も大きい範囲の中心値を選定する、
極端紫外光生成システム。
【請求項13】
請求項11に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記プロセッサは、
前記ターゲット物質に対する前記レーザ光の照射を停止させた状態で、前記第3のセンサの検出結果に基づく前記ドロップレットの生成時間間隔の制御を行う、
極端紫外光生成システム。
【請求項14】
請求項9に記載の極端紫外光生成システムであって、さらに、
前記ドロップレットの生成時間間隔を検出する第3のセンサを備え、
前記プロセッサは、
前記追加の探索を複数回実施しても前記勾配の絶対値が前記閾値を超える場合に、前記極端紫外光の生成を停止させ、前記第3のセンサの検出結果に基づいて、前記デューティ値を制御して前記ドロップレットの生成時間間隔を制御する、
極端紫外光生成システム。
【請求項15】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記ドロップレットの状態である前記ターゲット物質に前記レーザ光が照射される、
極端紫外光生成システム。
【請求項16】
請求項1に記載の極端紫外光生成システムであって、
前記ドロップレットが複数の微粒子状に拡散した状態である前記ターゲット物質に前記レーザ光が照射される、
極端紫外光生成システム。
【請求項17】
電子デバイスの製造方法であって、
ターゲット物質を出力するノズルと、
矩形波の電気信号が入力されることによって駆動され、前記ノズルから出力される前記ターゲット物質に振動を与えて前記ターゲット物質のドロップレットを発生させる加振素子と、
前記ターゲット物質にレーザ光を照射して生成された極端紫外光のエネルギを検出する第1のセンサと、
前記ターゲット物質に照射される前記レーザ光のエネルギを検出する第2のセンサと、
前記第1のセンサの出力と前記第2のセンサの出力とに基づいて算出されるエネルギ変換効率のばらつきが小さくなるように、前記加振素子を振動させる前記電気信号のデューティ値を制御するプロセッサと、
を備える極端紫外光生成システムによって前記極端紫外光を生成し、
前記極端紫外光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記極端紫外光を露光することを含む、
電子デバイスの製造方法。
【請求項18】
電子デバイスの製造方法であって、
ターゲット物質を出力するノズルと、
矩形波の電気信号が入力されることによって駆動され、前記ノズルから出力される前記ターゲット物質に振動を与えて前記ターゲット物質のドロップレットを発生させる加振素子と、
前記ターゲット物質にレーザ光を照射して生成された極端紫外光のエネルギを検出する第1のセンサと、
前記ターゲット物質に照射される前記レーザ光のエネルギを検出する第2のセンサと、
前記第1のセンサの出力と前記第2のセンサの出力とに基づいて算出されるエネルギ変換効率のばらつきが小さくなるように、前記加振素子を振動させる前記電気信号のデューティ値を制御するプロセッサと、
を備える極端紫外光生成システムによって前記極端紫外光を生成し、
前記極端紫外光をレチクルに照射して前記レチクルの欠陥を検査し、
前記検査の結果を用いてレチクルを選定し、
前記選定したレチクルに形成されたパターンを感光基板上に露光転写することを含む、
電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極端紫外光生成システム及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、10nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長約13nmの極端紫外(EUV)光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた半導体露光装置の開発が期待されている。EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLaser Produced Plasma(LPP)式の装置の開発が進んで
いる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10225917号
【特許文献2】米国特許第9000403号
【概要】
【0004】
本開示の1つの観点に係る極端紫外光生成システムは、ターゲット物質にレーザ光を照射して極端紫外光を生成する極端紫外光生成システムであって、ターゲット物質を出力するノズルと、矩形波の電気信号が入力されることによって駆動され、ノズルから出力されるターゲット物質に振動を与えてターゲット物質のドロップレットを発生させる加振素子と、生成された極端紫外光のエネルギを検出する第1のセンサと、ターゲット物質に照射されるレーザ光のエネルギを検出する第2のセンサと、第1のセンサの出力と第2のセンサの出力とに基づいて算出されるエネルギ変換効率のばらつきが小さくなるように、加振素子を振動させる電気信号のデューティ値を制御するプロセッサと、を備える。
【0005】
本開示の他の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、ターゲット物質を出力するノズルと、矩形波の電気信号が入力されることによって駆動され、ノズルから出力されるターゲット物質に振動を与えてターゲット物質のドロップレットを発生させる加振素子と、ターゲット物質にレーザ光を照射して生成された極端紫外光のエネルギを検出する第1のセンサと、ターゲット物質に照射されるレーザ光のエネルギを検出する第2のセンサと、第1のセンサの出力と第2のセンサの出力とに基づいて算出されるエネルギ変換効率のばらつきが小さくなるように、加振素子を振動させる電気信号のデューティ値を制御するプロセッサと、を備える極端紫外光生成システムによって極端紫外光を生成し、極端紫外光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上に極端紫外光を露光することを含む。
【0006】
本開示の他の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、ターゲット物質を出力するノズルと、矩形波の電気信号が入力されることによって駆動され、ノズルから出力されるターゲット物質に振動を与えてターゲット物質のドロップレットを発生させる加振素子と、ターゲット物質にレーザ光を照射して生成された極端紫外光のエネルギを検出する第1のセンサと、ターゲット物質に照射されるレーザ光のエネルギを検出する第2のセンサと、第1のセンサの出力と第2のセンサの出力とに基づいて算出されるエネルギ変換効率のばらつきが小さくなるように、加振素子を振動させる電気信号のデューティ値を制御するプロセッサと、を備える極端紫外光生成システムによって極端紫外光を生成し、極端紫外光をレチクルに照射してレチクルの欠陥を検査し、検査の結果を用いてレチクルを選定し
、選定したレチクルに形成されたパターンを感光基板上に露光転写することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
図1図1は、比較例に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
図2図2は、比較例に係るEUV光生成システムの動作を示すフローチャートである。
図3図3は、実施形態1に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
図4図4は、実施形態1に係るEUV光生成システムの動作を示すフローチャートである。
図5図5は、図2及び図4のステップS13に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。
図6図6は、ドロップレット結合調整において計測されたドロップレット生成時間間隔の異常値発生率の例を示すグラフである。
図7図7は、図4のステップS16に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。
図8図8は、勾配確認と指標の値が改善するデューティの値への変更とを行う処理の説明図である。
図9図9は、勾配の絶対値が閾値よりも大きい場合に実施される追加探索の処理の例を示す説明図である。
図10図10は、ドロップレットの結合不良が発生している場合のエネルギ変換効率(CE)計測値と、CE差分と、CE差分の頻度分布との例を示すグラフである。
図11図11は、ドロップレットの結合が正常である場合のCE計測値と、CE差分と、CE差分の頻度分布との例を示すグラフである。
図12図12は、実施形態2に係るEUV光生成システムの動作の例を示すフローチャートである。
図13図13は、実施形態3に係るEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
図14図14は、二次ターゲットによるEUV光生成の様子を模式的に示す説明図である。
図15図15は、EUV光生成システムに接続された露光装置の構成を概略的に示す。
図16図16は、EUV光生成システムに接続された検査装置の構成を概略的に示す。
【実施形態】
【0008】
-目次-
1.用語の説明
2.比較例に係るEUV光生成システムの概要
2.1 構成
2.2 動作
2.3 課題
3.実施形態1
3.1 構成
3.2 動作
3.3 ドロップレット結合調整の例
3.4 EUV光に基づくドロップレット結合制御の例
3.5 CEの評価方法の例
3.6 作用・効果
4.実施形態2
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用・効果
5.実施形態3
5.1 構成
5.2 動作
5.3 作用・効果
6.電子デバイスの製造方法について
7.その他
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0009】
1.用語の説明
「ターゲット」は、チャンバ内に導入されたレーザ光の被照射物である。レーザ光が照射されたターゲットは、プラズマ化してEUV光を含む光を放射する。
【0010】
「ドロップレット」は、チャンバ内に供給されたターゲットの一形態である。ドロップレットは、溶融したターゲット物質の表面張力によってほぼ球状となった滴状のターゲットを意味し得る。明細書及び図面において「DL」という表記は「ドロップレット」の略語表記である。
【0011】
「プラズマ生成領域」は、チャンバ内の所定領域である。プラズマ生成領域は、チャンバ内に出力されたターゲットに対してレーザ光が照射され、ターゲットがプラズマ化される領域である。
【0012】
「ターゲット軌道」は、チャンバ内に出力されたターゲットが進行する経路である。ターゲット軌道はターゲットの進行軸を含む。ターゲット軌道は、プラズマ生成領域において、チャンバ内に導入されたレーザ光の光路と交差する。光路には、光路軸が含まれる。
【0013】
「光路軸」は、レーザ光の進行方向に沿ってレーザ光のビーム断面の中心を通る軸である。
【0014】
「EUV光」という表記は、「極端紫外光」の略語表記である。「極端紫外光生成システム」は「EUV光生成システム」と表記される。
【0015】
「ピエゾ素子」は、圧電素子と同義である。ピエゾ素子を単に「ピエゾ」と表記する場合がある。ピエゾ素子は、ターゲット物質に振動を与えてドロップレットを生成させる加振素子の一例である。
【0016】
「デューティ」は、矩形波の電気信号において、1パルス周期に占める高電位側電圧時間の割合をいう。本明細書では、ピエゾ素子に印加する駆動電圧波形のデューティを指す。本明細書においてデューティは百分率[%]で表す。
【0017】
2.比較例に係るEUV光生成システムの概要
2.1 構成
図1は、比較例に係るEUV光生成システム10の構成例を概略的に示す。本開示の比
較例とは、出願人のみによって知られていると出願人が認識している形態であって、出願人が自認している公知例ではない。
【0018】
EUV光生成システム10は、ターゲット生成システム20と、チャンバ22と、EUV光生成プロセッサ24と、遅延回路26と、レーザ装置90とを備える。ターゲット生成システム20は、ターゲット制御システム30と、ターゲット供給部32と、不活性ガス供給部34とを備える。ターゲット制御システム30は、ターゲット生成プロセッサ36と、ピエゾ電源37と、ヒータ電源38とを備える。本開示においてプロセッサとは、制御プログラムが記憶された記憶装置と、制御プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)とを含む処理装置である。プロセッサは本開示に含まれる各種処理を実
行するために特別に構成又はプログラムされている。
【0019】
ターゲット供給部32は、溶融したターゲット物質40を出力する孔を備えるノズル42と、ノズル42の上流に配置されるフィルタ43と、ターゲット物質40を貯蔵するタンク44と、ヒータ45と、温度センサ46と、ピエゾ素子47と、圧力調節器48と、を備える。フィルタ43は、ターゲット物質40に含まれる不純物を除去する。ターゲット物質40は、例えば、スズ(Sn)である。
【0020】
ノズル42、ヒータ45、及び温度センサ46はタンク44に固定される。ピエゾ素子47はノズル42に固定される。
【0021】
圧力調節器48は、不活性ガス供給部34とタンク44との間の配管49に配置される。不活性ガス供給部34から供給される不活性ガスは、例えば、Ar又はHeガスなどであってよい。
【0022】
チャンバ22は、ドロップレット検出装置50と、EUVエネルギセンサ52と、レーザ集光光学系54と、XY軸ステージ55と、ターゲット回収部56と、不図示のEUV光集光ミラーとを備える。
【0023】
ドロップレット検出装置50は、光源部61と、受光部62とを備える。光源部61は、光源であるCWレーザ63と、集光レンズである照明光学系64と、ウィンドウ65とを備える。光源部61は、ターゲット供給部32のノズル42とプラズマ生成領域80との間のターゲット軌道上の所定の位置Pのドロップレット82を照明するように配置される。
【0024】
受光部62は、受光素子である光センサ66と、CWレーザ光を光センサ66に導くウィンドウ67と受光光学系68とを備える。受光部62は、光源部61から出力されたCWレーザ光を受光するように配置される。ドロップレット82がCWレーザ光を遮ると光センサ66の出力が変動する。受光部62は、この変動に基づいてドロップレット82が位置Pを通過するタイミングを知らせる通過タイミング信号TSを生成し、通過タイミング信号TSをEUV光生成プロセッサ24に入力する。
【0025】
EUV光生成プロセッサ24は、通過タイミング信号TSに基づいて遅延時間を算出し遅延回路26に遅延時間を設定する。なお、この遅延時間は固定値となる。遅延回路26は、EUV光生成プロセッサ24の一部として構成されてもよい。
【0026】
EUV光生成プロセッサ24から遅延回路26の遅延時間を設定する信号ラインが遅延回路26に接続される。遅延回路26の出力は、発光トリガ信号Trとしてレーザ装置90に入力される。また、遅延回路26の出力は、計測のゲート信号GS1として、EUVエネルギセンサ52に入力される。
【0027】
EUVエネルギセンサ52は、ゲート信号GS1に従って、所望のEUVパルス光を検出する。EUVエネルギセンサ52によって計測されたEUVエネルギ計測値はEUV光生成プロセッサ24に送られる。
【0028】
レーザ装置90は、発光トリガ信号Trに基づきパルスレーザ光を出力する。レーザ装置90は、例えば、COレーザ装置であってもよい。また、レーザ装置90はYVO(イットリウム・バナジウム酸化物)、YLF(イットリウム・リチウムフッ化物)、YAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)のいずれかに不純物をドープした結晶をレーザ媒質とする固体レーザ装置であってもよい。レーザ集光光学系54は、チャンバ22内に導かれたパルスレーザ光をプラズマ生成領域80に集光する光学系である。レーザ集光光学系54は、XY軸ステージ55に支持されている。XY軸ステージ55はレーザ集光光学系54をX軸方向とY軸方向との二軸方向に移動させることができる。XY軸ステージ55によってレーザ集光光学系54の位置を調節することにより、パルスレーザ光の集光位置を調節できる。レーザ集光光学系54の集光位置はプラズマ生成領域80と略一致するように各光学素子が配置される。
【0029】
ターゲット回収部56は、ドロップレット82の軌道上に配置され、パルスレーザ光が照射されなかったドロップレット82を回収する。
【0030】
また、チャンバ22内には、不図示のEUV光集光ミラーが配置されている。EUV光集光ミラーは、回転楕円面形状の反射面を有する。EUV光集光ミラーの反射面には、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成される。EUV光集光ミラーは、第1焦点及び第2焦点を有し、第1焦点がプラズマ生成領域80に位置するように配置される。EUV光集光ミラーは、プラズマ生成領域80において生成されるプラズマから放射された放射光のうちから選択的にEUV光を反射する。EUV光集光ミラーは、選択的に反射されたEUV光を、第2焦点(中間集光点)に集光する。中間集光点には不図示のアパーチャが配置され、アパーチャを通過したEUV光が不図示の露光装置又は検査装置に入射される。
【0031】
2.2 動作
図2は、EUV光生成システム10の動作を示すフローチャートである。ステップS11において、EUV光生成システム10を起動すると、EUV光生成プロセッサ24からターゲット生成プロセッサ36にターゲットの生成信号が入力される。
【0032】
ステップS12において、ターゲット生成プロセッサ36は、ターゲット供給部32内のSnが融点以上の温度、例えば、232℃~300℃の所定の温度になるように、温度センサ46の検出値に基づいてヒータ電源38を制御し、タンク44内に貯蔵されたSnを溶融させる。また、ターゲット生成プロセッサ36は、圧力調節器48によって不活性ガスを所定の圧力、例えば、0.2MPa~40MPaの圧力に制御し、タンク44内部の液体Snをノズル42外部に出力させる。
【0033】
ステップS13において、ターゲット生成プロセッサ36は、ノズル42から出力された液体Snがドロップレット化し、さらに複数のドロップレットが結合して所定径及び所定周期の結合ドロップレットが生成されるよう、ピエゾ素子47にピエゾ電源37を介して所定の周波数、及び所定のデューティ(Duty)の矩形波の電気信号を入力し、ノズル42を所定の振動数で振動させる。以後、本明細書においてドロップレットを生成する、あるいはドロップレットの生成という場合の「ドロップレット」とは、特に明示がない限り、結合ドロップレットを指す。また、本明細書では、ピエゾ素子47に印加する矩形波の電気信号のデューティを「ピエゾ素子47のデューティ」あるいは単に「デューティ
」と表記する。デューティはドロップレットの結合状態を制御するためのパラメータの1つであり、ピエゾ素子47を駆動するために設定されるデューティの値を「デューティ値」という。
【0034】
ステップS13のドロップレット結合調整の工程では、例えば、デューティを1%から99%まで所定のステップ量(例えば、0.1%刻み)で変更して、各デューティ値におけるドロップレット82の生成時間間隔の異常値発生率を計測し、異常値発生率が閾値未満となる連続的なデューティ値の範囲(デューティ幅)が最も広い領域の中心値のデューティ値を採用する。ドロップレット82の生成時間間隔とは、結合ドロップレットが生成される時間間隔をいい、以下「DL生成時間間隔」と表記する。DL生成時間間隔は通過タイミング信号TSから把握することができる。ターゲット生成プロセッサ36は、EUV光生成プロセッサ24からDL生成時間間隔の情報を取得してもよいし、ドロップレット検出装置50の受光部62から又はEUV光生成プロセッサ24を介して通過タイミング信号TSを取得してもよい。ステップS13のドロップレット結合調整の工程に適用されるサブルーチンの具体例については後述する(図5)。
【0035】
ステップS14において、EUV光生成プロセッサ24は、DL生成時間間隔の異常値発生率を制御量として、ピエゾ素子47のデューティを操作してドロップレット82の結合状態を維持する制御を開始する。DL生成時間間隔の異常値発生率は、DL生成時間間隔が許容範囲外に分布したイベント数をサンプリング数で割った値を百分率で表したものと定義することができる。すなわち、DL生成時間間隔が許容範囲外に分布したイベント数をNE、サンプリング数をnとすると、異常値発生率Rは次式で表される。
【0036】
R=(NE/n)*100[%]
ステップS15において、EUV光生成プロセッサ24は、設定された遅延時間を付加させた発光トリガ信号Trをレーザ装置90に入力する。発光トリガ信号Trに同期してレーザ装置90から出力されたパルスレーザ光は、レーザ集光光学系54を介して、プラズマ生成領域80の位置に到達する。パルスレーザ光がドロップレット82に照射されることにより、EUV光が生成される。
【0037】
その後、ステップS19において、EUV光生成プロセッサ24は、EUV光生成を継続するか否かを判定する。ステップS19の判定結果がYes判定である場合、EUV光生成プロセッサ24はステップS15に戻り、EUV光の生成を継続する。ステップS19の判定結果がNo判定である場合、EUV光生成プロセッサ24は、EUV光の生成を終了し、図2のフローチャートを終了する。
【0038】
2.3 課題
上述のように、比較例に係るEUV光生成システム10では、DL生成時間間隔に基づいてピエゾ素子47のデューティを制御している。しかし、DL生成時間間隔は正常であってもドロップレット径が規定の径よりも縮小した状態の結合不良のドロップレット82が生成される場合がある。このような結合不良のドロップレット82にパルスレーザ光が照射されることで、EUVエネルギの安定性が悪化し、デブリ量が増加する。
【0039】
3.実施形態1
3.1 構成
図3は、実施形態1に係るEUV光生成システム11の構成を概略的に示す。図3に示す構成について、図1に示す構成と異なる点を説明する。EUV光生成システム11では、EUVエネルギセンサ52からEUVエネルギ計測値を通知する信号ラインSL1がターゲット生成プロセッサ36に接続される。また、EUV光生成システム11は、図1に示す構成に加えて、ビームスプリッタ102と、レーザエネルギセンサ104とを備える
【0040】
ビームスプリッタ102は、レーザ装置90とレーザ集光光学系54との間のレーザ光の光路上に配置される。ビームスプリッタ102は、入射したレーザ光の一部を透過し、他の一部を反射するように構成される。
【0041】
レーザエネルギセンサ104は、ビームスプリッタ102を透過又は反射した光を受光する位置に配置される。なお、図3に例示するレーザエネルギセンサ104はビームスプリッタ102を透過した光を受光する位置に配置されている。ビームスプリッタ102とレーザエネルギセンサ104との間に、不図示の光学系が配置されてもよい。光学系は、コメリート光学系や集光光学系であってもよい。
【0042】
遅延回路26の出力は、計測のゲート信号GS2としてレーザエネルギセンサ104に入力される。レーザエネルギセンサ104からレーザエネルギ計測値を通知する信号ラインSL2はターゲット生成プロセッサ36に接続される。
【0043】
3.2 動作
レーザエネルギセンサ104は、ゲート信号GS2に従って、パルスレーザ光のパルスエネルギを計測する。レーザエネルギセンサ104によって計測されたレーザエネルギ計測値及びEUVエネルギセンサ52によって計測されたEUVエネルギ計測値はターゲット生成プロセッサ36に送られる。
【0044】
ターゲット生成プロセッサ36は、レーザエネルギ計測値とEUVエネルギ計測値とを基にエネルギ変換効率(Conversion Efficiency:CE)を算出する。CEは、ドライバ
レーザエネルギに対するEUVエネルギの変換効率であり、下式で計算される。
【0045】
CE=(EUVエネルギ/ドライバレーザエネルギ)*100[%]
なお、本実施形態の場合、ドライバレーザエネルギは、レーザ装置90から出力されるパルスレーザ光のエネルギである。
【0046】
ターゲット生成プロセッサ36は、EUV光生成中において、CEなどのEUV性能評価値を制御量として、ピエゾ素子47のデューティを操作することでドロップレット82の結合状態を制御する。EUVエネルギセンサ52は本開示における「第1のセンサ」の一例である。レーザエネルギセンサ104は本開示における「第2のセンサ」の一例である。EUVエネルギ計測値は本開示における「第1のセンサの出力」の一例である。レーザエネルギ計測値は本開示における「第2のセンサの出力」の一例である。EUV光生成プロセッサ24及びターゲット生成プロセッサ36の組み合わせ、又はターゲット生成プロセッサ36は本開示における「プロセッサ」の一例である。
【0047】
図4は、実施形態1に係るEUV光生成システム11の動作を示すフローチャートである。図4について、図2と共通するステップには同一のステップ番号を付す。図4に示すフローチャートは、図2のフローチャートのステップS15とステップS19との間にステップS16が追加されている。
【0048】
すなわち、ステップS15の後、ターゲット生成プロセッサ36は、ステップS16のEUV光に基づくドロップレット結合制御の処理を行う。ステップS16の後、ステップS19に進む。その他のステップは、図2のフローチャートと同様である。
【0049】
3.3 ドロップレット結合調整の例
図5は、図2及び図4のステップS13に適用されるサブルーチンの例を示すフローチ
ャートである。
【0050】
ステップS13のドロップレット結合調整の処理が開始されると、ステップS21において、ターゲット生成プロセッサ36は、ピエゾ素子47のデューティ(Duty)の値を初期値のDLLに設定する。デューティは、下限値DLLから上限値DULまでの数値範囲において、ステップ量dの単位で値を変更することができる。デューティのパラメータ典型値として、例えば、下限値DLLは1%、上限値DULは99%、ステップ量dは0.1%であってよい。
【0051】
ステップS22において、ターゲット生成プロセッサ36は、DL生成時間間隔の異常値発生率Rを計測する。すなわち、ターゲット生成プロセッサ36は、設定したデューティ値の矩形波の電気信号をピエゾ素子47に印加するようにピエゾ電源37を制御し、ピエゾ電源37を介してピエゾ素子47を駆動することによりドロップレット82を生成させ、DL生成時間間隔の異常値発生率Rを計測する。ターゲット生成プロセッサ36は、計測された異常値発生率Rをデューティ値と紐付けして記憶する。
【0052】
ステップS23において、ターゲット生成プロセッサ36は、デューティの設定値が上限値DUL未満であるか否かを判定する。ステップS23の判定結果がYes判定である場合、ターゲット生成プロセッサ36はステップS24に進み、デューティの設定値にステップ量dを加算してデューティの設定値を更新した後、ステップS22に戻る。
【0053】
デューティの設定値が上限値DULに達するまで、ステップS22~S24のループが繰り返される。こうして、デューティを下限値DLLから上限値DULまでステップ量dの刻みで増加させながら、各デューティ値でDL生成時間間隔の異常値発生率Rを計測することで、デューティ値とDL生成時間間隔の異常値発生率Rとの関係を示す特性データ(図6参照)が得られる。
【0054】
ステップS23の判定結果がNo判定である場合、ターゲット生成プロセッサ36は、ステップS25に進む。ステップS25において、ターゲット生成プロセッサ36は、異常値発生率Rが閾値TH1未満となる連続的なデューティ幅が規定幅以上となる領域(デューティ範囲)を使用可能な領域候補とし、使用可能な領域候補のうちデューティ幅が最も大きい領域(デューティ幅最大領域)の中心点となるデューティ値を選定する。
【0055】
ステップS25の後、ターゲット生成プロセッサ36は、図2又は図4のフローチャートに復帰する。
【0056】
図6は、ドロップレット結合調整において計測されたDL生成時間間隔の異常値発生率Rの例を示すグラフである。横軸はデューティ、縦軸は異常値発生率Rを表している。図6は、パルスレーザ光の照射を停止した状態で、デューティを1%から99%まで0.1%の刻みでスキャンすることにより得られたDL生成時間間隔の異常値発生率Rのグラフの例である。
【0057】
図6では、異常値発生率Rの閾値TH1が0.02%に設定されている例を示す。図6において、異常値発生率Rが閾値TH1未満となる連続的なデューティ幅が規定幅以上となる条件を満たす使用可能な領域候補は、デューティ値が3%付近の領域候補CA1と、72%付近の領域候補CA2と、92%付近の領域候補CA3との3つの領域(デューティ範囲)である。これらの領域候補のうちデューティ幅が最も大きい領域(ここでは、領域候補CA3)がデューティ幅最大領域として選定され、領域候補CA3のデューティ範囲の中心のデューティ値がドロップレット82の生成に適したデューティ値として選定される。DL生成時間間隔の検出に用いられるドロップレット検出装置50は本開示におけ
る「第3のセンサ」の一例である。領域候補CA1~CA3のそれぞれは、本開示における「ドロップレットの生成時間間隔が正常なデューティ値の範囲」の一例である。
【0058】
3.4 EUV光に基づくドロップレット結合制御の例
図7は、図4のステップS16に適用されるサブルーチンの例を示すフローチャートである。ステップS16のEUV光に基づくドロップレット結合制御の処理が開始されると、ステップS30において、ターゲット生成プロセッサ36は、初期設定の読み込みを行う。初期設定を行うパラメータには、例えば、EUV性能を評価する指標の値の勾配の閾値TH2、デューティの値を探索する際の探索幅ΔDu、デューティの微小量dm、カウンタの上限値CUL、及び追加探索回数Nなどを含む。ターゲット生成プロセッサ36は、これら各パラメータの初期設定値を読み込む。なお、微小量dmは0<dm≦ΔDuの条件を満たして適宜の値に設定される。例えば、dm=ΔDu/2であってもよい。
【0059】
ステップS32において、ターゲット生成プロセッサ36は、カウンタをリセットする。
【0060】
ステップS32の後、ターゲット生成プロセッサ36は、ループ処理LPに進む。ループ処理LPは、ステップS33~ステップS38を含む。ループ処理LPでは、ターゲット生成プロセッサ36は、指標の値の勾配が閾値TH2以下ならば、デューティの値を改善方向に微小量dm移動させる微調整を行い、終了する。ターゲット生成プロセッサ36は、指標の値の勾配が閾値TH2を超える場合、勾配が閾値TH2以下になるまでループ処理LPを繰り返し、デューティの調整(探索)を続ける。また、ターゲット生成プロセッサ36は、無限ループ回避のため、ループ処理LPの実行回数をカウントするカウンタの値を監視する。なお、カウンタの代わりに、タイマを用いて時間を監視してもよい。ターゲット生成プロセッサ36は、カウンタの値が上限値CULに達した場合は、ループ処理LPを終了する。
【0061】
ステップS33において、ターゲット生成プロセッサ36は、デューティの設定を現在値から現在値±ΔDuに変更し、「現在値」、「現在値-ΔDu」、及び「現在値+ΔDu」の各デューティ値で指標の値を取得する。CEの評価に用いる指標は、例えば、CEの3σ、CE差分の3σ、CEの異常値発生率、又はCE差分の異常値発生率などであってよい。σは標準偏差を表す。
【0062】
CE差分とは、連続する2パルス間のCEの差であり、パルス番号を表す整数をkとして、CE差分dCE(k)は、次式で定義される。
【0063】
dCE(k)=CE(k)-CE(k-1)
CE(k)は、パルス番号kのCEを表す。
【0064】
CE又はCE差分についての異常値発生率は、許容範囲(正常範囲)外のデータ発生率をいい、CE又はCE差分が許容範囲外に分布したイベント数をサンプリング数nで割った値を百分率[%]で表したものと定義することができる。指標の値を求める際のサンプリング数nは、例えば20000パルスなどであってよい。
【0065】
次に、ステップS34において、ターゲット生成プロセッサ36は、指標の値の勾配を確認する。勾配は、3点の指標の値の一次近似の傾きであってよい(図8参照)。
【0066】
ステップS35において、ターゲット生成プロセッサ36は、勾配の絶対値が閾値TH2以下という条件を満たすか否かを判定する。
【0067】
ステップS35の判定結果がOK判定である場合、ターゲット生成プロセッサ36は、ステップS38に進む。ステップS35の判定結果がNOK(NotOK)判定である場合、ターゲット生成プロセッサ36は、ステップS36に進む。ステップS36において、ターゲット生成プロセッサ36は、勾配から把握される改善方向に最大N回の追加探索を行う(図9参照)。追加探索時のDuty変更量は探索幅ΔDuであってよい。
【0068】
ステップS36の後、ターゲット生成プロセッサ36は、ステップS37に進み、カウンタの値をインクリメントして、カウンタの値を更新した後、ステップS38に進む。すなわち、ターゲット生成プロセッサ36は、ステップS35の判定において、デューティ値の変化に対する指標の値の変化の割合を示す勾配が閾値TH2より大きいならば、指標の値が改善する傾向の方向(改善方向)にデューティ値を変更して、追加の4点目の指標の値を取得し、近隣3点での勾配を求める。以後、勾配が閾値TH2以下になるまで最大N回、追加探索により指標の値を取得する。
【0069】
ステップS38において、ターゲット生成プロセッサ36は、勾配が閾値TH2以下になったら、勾配の算出に用いた3点のデューティ値の中央のデューティ値から、改善方向にデューティを微小量dm変更した値に設定する。なお、このとき、dm=ΔDuである場合は、勾配の算出に用いた3点のデューティ値のうち、指標の値が最も小さいデューティ値に設定されることになる。
【0070】
ループ処理LPの終了条件を満たすと、ターゲット生成プロセッサ36は、図7のフローチャートを終了し、図4のフローチャートに復帰する。
【0071】
図8は、勾配確認と指標の値が改善するデューティの値への変更とを行う処理の説明図である。図8には、勾配の絶対値が閾値TH2以下である場合の例が示されている。横軸はデューティ、縦軸は指標の値を表す。図8中の丸印はデューティの設定値を表し、丸印の中の数字は、設定順を表している。例えば、設定順1は「現在値」、設定順2は「現在値-ΔDu」、設定順3は「現在値+ΔDu」に相当している。これら3点から一次近似により、破線で示す近似直線AL1の傾き(勾配)を求めることができる。指標の値の勾配は、少なくとも3点のデータに基づいて定義されることが好ましい。
【0072】
図8の例では、近似直線AL1の傾きが正であり、デューティの「現在値」に対して、デューティの値を小さくする方向が指標の値を改善する方向である。したがって、この場合は、ステップS38の処理として、現在値からマイナス方向(改善方向)に微小量dmだけデューティの値を変更する。
【0073】
図9は、勾配の絶対値が閾値TH2よりも大きい場合に実施される追加探索の処理の例を示す説明図である。図9の記載ルールは図8と同様である。図9の例では、3点の指標の値から求まる近似直線AL2の傾きが正であり、勾配の絶対値が閾値TH2よりも大きい。Dutyの値を小さくする方向が指標の値を改善する方向であり、設定順2のDuty設定値からさらにマイナス方向にΔDuだけデューティの値を変更して追加探索を行う。設定順4のデューティ値は追加探索により設定されたものである。そして、この追加した点を含む近隣3点から指標の値の勾配を再定義する。このような改善方向への追加探索が最大N回実施され得る。
【0074】
3.5 CEの評価方法の例
図8及び図9を用いて詳述したように、実施形態1に係るEUV光生成システム11では、EUVエネルギセンサ52の出力と、レーザエネルギセンサ104の出力とに基づいて算出されるCEのばらつきを評価して、ばらつきの評価値(指標の値)に基づき、ばらつきが小さくなるように、ピエゾ素子47のデューティ値を制御する。CEのばらつきを
評価することは、生成されるEUV光のエネルギの安定性を評価すること、つまり、EUV光の生成性能を評価することに相当している。
【0075】
図10は、ドロップレット82の結合不良が発生している場合のCE計測値と、CE差分と、CE差分の頻度分布との例を示すグラフである。図10の上段に示すグラフG1は、横軸がパルス番号を表し、縦軸は任意単位によるCE計測値を表す。図10の中段に示すグラフG2は、横軸がパルス番号を表し、縦軸は任意単位によるCE差分を表す。図10の下段に示すグラフG3は、CE差分の頻度分布(ヒストグラム)である。なお、グラフG3の縦軸は対数(LOG)表示となっている。
【0076】
また、図11は、ドロップレット82の結合が正常である場合のCE計測値と、CE差分と、CE差分の頻度分布との例を示すグラフである。図11の上段に示すグラフG11はCE計測値、中段に示すグラフG12はCE差分、下段に示すグラフG13はCE差分の頻度分布である。各グラフの横軸及び縦軸は、図10の対応するグラフと同様である。
【0077】
図10図11とを比較すると明らかなように、結合不良発生時には、パルスオーダーで計測されるCE計測値及びCE差分のそれぞれのばらつきが正常時に比べて大きい。図11の例に示す正常時におけるCE計測値の3σは7%である。これに対し、図10の例に示す結合不良発生時におけるCE計測値の3σは11%である。また、図11の例に示す正常時におけるCE差分の3σは0.1%であるのに対し、図10の例に示す結合不良発生時におけるCE差分の3σは0.15%である。
【0078】
図10及び図11の下段に示すように、CE差分の許容範囲(正常範囲)として、例えば、CE差分の絶対値が0.2未満の範囲(-0.2<dCE<0.2)が設定される場合、図11の例に示す正常時におけるCE差分の異常値発生率は0%であるのに対し、図10の例に示す結合不良発生時におけるCE差分の異常値発生率は1.7%である。
【0079】
このように、DL結合状態を反映するCE計測値の3σ、CE差分の3σ、又はCE差分の異常値発生率など、CEのばらつきを評価する指標を用いてピエゾ素子47のデューティを制御することにより、DL生成時間間隔の異常値発生率Rでは検出が困難なDL結合不良状態の発生を抑制し得る。DL生成時間間隔の異常値発生率Rでは検出が困難なDL結合不良状態とは、DL生成時間間隔は許容範囲内に維持したまま、ドロップレット径が縮小した状態となる結合不良の状態を含む。
【0080】
3.6 作用・効果
実施形態1に係るEUV光生成システム11によれば、EUV光の直接的な指標であるパルスオーダー(毎パルス)のCEなどのEUV性能評価値を用いて、ピエゾ素子47のデューティを制御する。これにより、DL生成時間間隔の異常値発生率Rでは検出できないDL結合不良状態を回避することができる。このようなDL結合不良状態を回避することによって、EUV光のエネルギ安定性の向上、及びデブリ低減が期待できる。
【0081】
4.実施形態2
4.1 構成
実施形態2に係るEUV光生成システム11の構成は、図3と同様であってよい。
【0082】
4.2 動作
図12は、実施形態2に係るEUV光生成システム11の動作の例を示すフローチャートである。実施形態2においては、図4のフローチャートに代えて、図12のフローチャートを適用する。
【0083】
図12のフローチャートについて、図4と異なる点を説明する。図12のフローチャートは、図4のステップS16とステップS19との間に、ステップS17及びステップS18が追加されている。すなわち、ステップS16の後、ターゲット生成プロセッサ36は、ステップS17に進む。ステップS17において、ターゲット生成プロセッサ36は、指標の値の勾配が収束したか否かを判定する。図7で説明したEUV光に基づくDL結合制御のサブルーチン内部にて判定している勾配が収束せずに、カウンタの値が上限値CULに達することによってループ処理LPを抜けた場合、ステップS17の判定結果はNo判定となる。
【0084】
ステップS17の判定結果がNo判定である場合、ターゲット生成プロセッサ36はステップS18に進み、EUV光生成を停止する。ステップS18の後、ターゲット生成プロセッサ36はステップS13に戻る。
【0085】
ステップS17の判定結果がYes判定である場合、ターゲット生成プロセッサ36はステップS19に進む。
【0086】
その他の各ステップの処理は、図4のフローチャートと同様である。
【0087】
4.3 作用・効果
実施形態2においては、ステップS16のEUV光に基づくDL結合制御によってDL結合状態が改善されなかった場合(ステップS17:No)、EUV光生成を停止し(ステップS18)、DL結合調整(ステップS13)の処理に戻る。これにより、ドロップレット82の生成に適したデューティの値が大幅に変化した場合でも、DL結合調整(ステップS13)をやり直すことにより、不良結合の少ないDL結合が可能なデューティを再導出し得る。その結果、安定したEUV光生成稼働状態に復帰することができる。また、実施形態2に係るEUV光生成システム11においても、実施形態1と同様に、DL生成時間間隔の異常値発生率Rでは検出できないDL結合不良状態を回避でき、EUVエネルギ安定性の向上、及びデブリ低減が期待できる。
【0088】
5.実施形態3
5.1 構成
図13は、実施形態3に係るEUV光生成システム13の構成を概略的に示す。図13に示す構成について、図3と異なる点を説明する。図13に示すEUV光生成システム13は、図3におけるレーザ装置90としてのメインパルスレーザ装置91を備え、さらに、プリパルスレーザ装置92を備える。また、ビームスプリッタ102とレーザ集光光学系54との間のレーザ光路上にビームコンバイナ106を備える。その他の構成は図3と同様であってよい。
【0089】
プリパルスレーザ装置92は、ピコ秒(1ns未満)のパルス幅のプリパルスレーザ光を出力するレーザ装置であってもよく、ナノ秒のパルス幅のプリパルスレーザ光を出力するレーザ装置であってもよい。プリパルスレーザ装置92は、例えば、Nd:YAGレーザ又はその高調波光を出力する固体レーザ装置であってもよいし、COレーザやエキシマレーザなどのガスレーザ装置であってもよい。
【0090】
ビームコンバイナ106は、プリパルスレーザ光の波長成分が含まれる光を高い反射率で反射し、メインパルスレーザ光の波長成分が含まれる光を高い透過率で透過させる光学素子であり、例えば、ダイクロイックミラーでもよい。ビームコンバイナ106で反射したプリパルスレーザ光と、ビームコンバイナ106を透過したメインパルスレーザ光はプラズマ生成領域80の位置に到達する。また、ビームコンバイナ106は、メインパルスレーザ光の波長成分が含まれる光を高い反射率で反射し、プリパルスレーザ光の波長成分
が含まれる光を高い透過率で透過させる光学素子を用いてもよい。但し、その場合は、反射するレーザ光の光路の上流にメインパルスレーザ装置を配置し、透過するレーザ光の光路の上流にプリパルスレーザ装置を配置する。ビームスプリッタ102はメインパルスレーザ装置とビームコンバイナ106との間のメインパルスレーザ光の光路に配置する。この配置においてもプリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光はプラズマ生成領域80の位置に到達する。
【0091】
5.2 動作
EUV光生成プロセッサ24は、通過タイミング信号TSに基づいて、プリパルスレーザ装置92用の遅延時間と、メインパルスレーザ装置91用の遅延時間とを算出し、これらの遅延時間を遅延回路26に設定する。このとき、プリパルスレーザ装置92用の遅延時間の方が短くなるように設定される。
【0092】
遅延回路26は、プリパルスレーザ装置92用の遅延時間を付加させた発光トリガ信号Tr2をプリパルスレーザ装置92に出力し、メインパルスレーザ装置91用の遅延時間を付加させた発光トリガ信号Tr1をメインパルスレーザ装置91に出力する。
【0093】
プリパルスレーザ装置92は、発光トリガ信号Tr2に従ってプリパルスレーザ光を出力する。メインパルスレーザ装置91は、発光トリガ信号Tr1に従ってメインパルスレーザ光を出力する。このとき、プリパルスレーザ装置92用の遅延時間の方が短く設定されているため、プリパルスレーザ光とメインパルスレーザ光とが、この順で出力される。
【0094】
図14は、二次ターゲットによるEUV光生成の様子を模式的に示す説明図である。図14の上段に示す状態F14Aは、ドロップレット82にプリパルスレーザ光を照射する様子を示している。図14の中段に示す状態F14Bは、二次ターゲットである拡散ターゲットDTにメインパルスレーザ光を照射する様子を示している。図14の下段に示す状態F14Cは、メインパルスレーザ光の照射によって生成されるプラズマPLSの様子を示している。
【0095】
図14の上段に示すように、径D1のドロップレット82にプリパルスレーザ光が照射されると(F14A)、ドロップレット82が複数の微粒子状に破壊されて拡散し、径D1よりも大きい径D2の拡散ターゲットDTが生成される(F14B)。この拡散ターゲットDTにメインパルスレーザ光が照射されることにより、ターゲット物質40が効率よくプラズマ化し、EUV光が生成される(F14C)。ドロップレット82の結合状態の制御方法については、実施形態1又は実施形態2と同様であってよい。
【0096】
5.3 作用・効果
実施形態3に係るEUV光生成システム13によれば、実施形態1又は実施形態2に係るEUV光生成システム11よりも効率よくEUV光を生成することができる。また、実施形態3に係るEUV光生成システム13においても、実施形態1又は実施形態2と同様に、DL生成時間間隔の異常値発生率Rでは検出できないDL結合不良状態を回避でき、EUVエネルギ安定性の向上、及びデブリ低減が期待できる。
【0097】
6.電子デバイスの製造方法について
図15は、EUV光生成システム11に接続された露光装置660の構成を概略的に示す。露光装置660は、マスク照射部668とワークピース照射部669とを含む。マスク照射部668は、EUV光生成システム11から入射したEUV光によって、反射光学系を介してレチクルテーブルMTのレチクルパターンを照明する。ワークピース照射部669は、レチクルテーブルMTによって反射されたEUV光を、反射光学系を介してワークピーステーブルWT上に配置された不図示のワークピース上に結像させる。ワークピー
スはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。
【0098】
露光装置660は、レチクルテーブルMTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、レチクルパターンを反映したEUV光をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで電子デバイスを製造できる。EUV光生成システム11の代わりに、EUV光生成システム13を用いることができる。
【0099】
図16は、EUV光生成システム11に接続された検査装置661の構成を概略的に示す。検査装置661は、照明光学系663と検出光学系666とを含む。照明光学系663は、EUV光生成システム11から入射したEUV光を反射して、レチクルステージ664に配置されたレチクル665を照射する。ここでいうレチクル665はパターンが形成される前のマスクブランクスを含む。検出光学系666は、照明されたレチクル665からのEUV光を反射して検出器667の受光面に結像させる。EUV光を受光した検出器667はレチクル665の画像を取得する。検出器667は例えばTDI(time delay
integration)カメラである。
【0100】
以上のような工程によって取得したレチクル665の画像により、レチクル665の欠陥を検査し、検査の結果を用いて、電子デバイスの製造に適するレチクルを選定する。そして、選定したレチクルに形成されたパターンを、露光装置660を用いて感光基板上に露光転写することで電子デバイスを製造できる。図16に示す構成についても、EUV光生成システム11の代わりに、EUV光生成システム13を用いることができる。
【0101】
7.その他
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
【0102】
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」、「有する」、「備える」、「具備する」などの用語は、「記載されたもの以外の構成要素の存在を除外しない」と解釈されるべきである。また、修飾語「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16