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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130289
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】画像形成装置および画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/16 20060101AFI20230912BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G03G15/16
G03G15/00 303
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179246
(22)【出願日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2022034249
(32)【優先日】2022-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】舘 昌志
【テーマコード(参考)】
2H200
2H270
【Fターム(参考)】
2H200GA12
2H200GA23
2H200GA44
2H200JA01
2H200JA08
2H200JA25
2H200JA29
2H200JB10
2H200JC03
2H200JC07
2H200JC12
2H200JC15
2H200MA02
2H200PA14
2H200PA19
2H200PB18
2H200PB39
2H270LA18
2H270LD03
2H270MA26
2H270MB17
(57)【要約】
【課題】転写圧によらず、安定した画像濃度を得ることが可能な画像形成装置を提供する。
【解決手段】
第2の移動体上に転写されるべきトナー像の付着量目標値と、付着量検出手段からの付着量検出値とに基づき、転写圧の変更に伴い変動する前記第2の移動体上の前記トナー像の付着量変動値を算出する算出部と、前記算出部によって算出された前記付着量変動値を前記付着量検出値に反映し、前記付着量検出値を補正する補正部と、前記補正部による補正後の付着量検出値に基づき前記トナー像の作像条件を調整する作像条件調整部とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上にトナー像を形成する作像手段と、
前記像担持体上の前記トナー像が転写される第1の移動体を有する第1転写手段と、
前記第1の移動体上の前記トナー像が転写される第2の移動体を有する第2転写手段と、
前記第1の移動体に対する前記第2の移動体の転写圧を変更する転写圧変更手段と、
前記第2の移動体上に転写された前記トナー像を検出し、付着量検出値を出力する付着量検出手段と、
前記付着量検出値に基づき前記作像手段における前記トナー像の作像条件を設定する制御手段と、
を備える画像形成装置であって、
前記制御手段は、
前記第2の移動体上に転写されるべきトナー像の付着量目標値と、前記付着量検出値とに基づき、前記転写圧の変更に伴い変動する前記第2の移動体上の前記トナー像の付着量変動値を算出する算出部と、
前記算出部によって算出された前記付着量変動値を前記付着量検出値に反映し、前記付着量検出値を補正する補正部と、
前記補正部による補正後の付着量検出値に基づき前記作像条件を調整する作像条件調整部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第2の移動体上に転写された前記トナー像は、前記画像形成装置内で搬送される記録媒体間で前記第2の移動体上に転写されたトナー像であることを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第2の移動体上に転写された前記トナー像は、テストパターン画像であることを特徴とする請求項1または2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記付着量変動値を、前記画像形成装置内の温度および湿度に応じて補正することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
像担持体上にトナー像を形成する作像手段と、
前記像担持体上の前記トナー像が転写される第1の移動体を有する第1転写手段と、
前記第1の移動体上の前記トナー像が転写される第2の移動体を有する第2転写手段と、
前記第1の移動体に対する前記第2の移動体の転写圧を変更する転写圧変更手段と、
前記第2の移動体上に転写された前記トナー像を検出し、付着量検出値を出力する付着量検出手段と、
前記付着量検出値に基づき前記作像手段における前記トナー像の作像条件を設定する制御手段と、
を備える画像形成装置の画像形成方法であって、
前記第2の移動体上に転写されるべきトナー像の付着量目標値と、前記付着量検出値とに基づき、前記転写圧の変更に伴い変動する前記第2の移動体上の前記トナー像の付着量変動値を算出する算出ステップと、
前記算出ステップによって算出された前記付着量変動値を前記付着量検出値に反映し、前記付着量検出値を補正する補正ステップと、
前記補正ステップによる補正後の付着量検出値に基づき前記作像条件を調整する作像条件調整ステップと、
を備えることを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、感光体や現像ユニットなどを具備する作像ユニットと、作像ユニットの現像能力に影響を及ぼす制御パラメータの制御目標値を所定のアルゴリズムによって求めた補正量で補正する目標値補正処理を実施する制御部とを備える画像形成装置において、作像ユニットによって形成された画像の画像濃度を検知する画像濃度センサを設けるとともに、画像濃度検知センサによる画像濃度の検知結果に基づいてアルゴリズムを補正する補正処理を実施するように、制御部を構成した画像形成装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-056124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
記録媒体を高速で搬送する場合、画像形成装置の生産性を低下させないために、先行の記録媒体と後続の記録媒体との間(紙間)で二次転写ニップ部の転写圧を変える必要がある。しかし、特許文献1のような構成では紙間での転写圧の切り替えが間に合わず、後続の記録媒体に対しても、先行の記録媒体の転写圧が付与されてしまうおそれがある。このように、使用する記録媒体の種類に応じて転写圧が変更された場合(特に高速搬送下で変更された場合)に、転写圧の変更に応じて画像形成中に作像条件を最適化することが難しく、画像濃度が安定しないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、像担持体上にトナー像を形成する作像手段と、前記像担持体上の前記トナー像が転写される第1の移動体を有する第1転写手段と、前記第1の移動体上の前記トナー像が転写される第2の移動体を有する第2転写手段と、前記第1の移動体に対する前記第2の移動体の転写圧を変更する転写圧変更手段と、前記第2の移動体上に転写された前記トナー像を検出し、付着量検出値を出力する付着量検出手段と、前記付着量検出値に基づき前記作像手段における前記トナー像の作像条件を設定する制御手段と、を備える画像形成装置であって、前記制御手段は、前記第2の移動体上に転写されるべきトナー像の付着量目標値と、前記付着量検出値とに基づき、前記転写圧の変更に伴い変動する前記第2の移動体上の前記トナー像の付着量変動値を算出する算出部と、前記算出部によって算出された前記付着量変動値を前記付着量検出値に反映し、前記付着量検出値を補正する補正部と、前記補正部による補正後の付着量検出値に基づき前記作像条件を調整する作像条件調整部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、転写圧によらず、安定した画像濃度を得ることが可能な画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図。
図2】二次転写ユニット周辺構成の一例を示す説明図。
図3】濃度センサの一例を示す説明図。
図4】転写圧と検出付着量の関係を示す説明図。
図5】作像条件の調整に係わる部位のブロック図。
図6】制御部のハードウエア構成の一例を示すブロック図。
図7】付着量検出値の補正の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
<画像形成装置の全体構成>
はじめに図1を用いて画像形成装置の全体構成を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。例示した画像形成装置は、電子写真方式を用いて形成したトナー像を、最終的に用紙などの記録媒体に転写、定着させ、印刷物として出力する印刷装置である。
【0010】
印刷装置500は、トナー像形成部1、一次転写ユニット2、シート供給ユニット3、二次転写ユニット4、搬送ベルトユニット5、定着ユニット6、両面搬送ユニット7、シート排出ユニット8、露光ユニット9、およびトナーボトル装着部10を備える。このうち、作像手段の一例であるトナー像形成部1は、複数の感光現像ユニット10a,10b,10c,10dを備える。
【0011】
感光現像ユニット10a~10dは、後述の一次転写ベルト20の移動方向に沿って配置され、例えば、感光現像ユニット10aはイエロー色(Y)のトナー像を形成し、感光現像ユニット10bはマゼンタ色(M)のトナー像を形成し、感光現像ユニット10cはシアン色(C)のトナー像を形成し、感光現像ユニット10dはブラック色(K)のトナー像を形成する。
【0012】
それぞれの感光現像ユニット10a~10dは、像担持体の一例であるドラム状の感光体11a,11b,11c,11dと、感光体11a~11dの表面を帯電させる帯電装置12a,12b,12c,12dと、感光体11a~11dに形成された静電潜像を現像する現像装置13a,13b,13c,13dと、感光体11a~11dの表面を清掃する清掃装置14a,14b,14c,14dなどを備える。
【0013】
第1転写手段の一例である一次転写ユニット2は、トナー像形成部1の下方に配置されており、一次転写ユニット2は、第1の移動体の一例である一次転写ベルト20、一次転写ローラ21a,21b,21c,21d、二次転写対向ローラ22、および一次転写ベルト清掃装置23などを備える。
【0014】
一次転写ベルト20は、PVDF(フッ化ビニルデン)、ETFE(エチレン-四フッ化エチレン共重合体)、PI(ポリイミド)、PC(ポリカーボネート)等を単層または複数層で構成した無端ベルトである。また、一次転写ベルト20は、一次転写ローラ21a~21d、二次転写対向ローラ22および複数の支持ローラに掛け渡した状態で図中時計回り方向(矢印A方向)に移動する。
【0015】
一次転写ローラ21a~21dは、対向する感光体11a~11dとの間に一次転写ベルト20を挟み込んでいる。これにより一次転写ベルト20は、感光体11a~11dと当接し、一次転写部(一次転写ニップ部)を形成する。一次転写部は、感光体11a~11dの表面に形成されたトナー像が一次転写ベルト20に静電移動するように、一次転写ローラ21a~21dと感光体11a~11dとの間に一次転写電界を形成する。一次転写ベルト20は、感光体11a~11dと接する位置において、感光体11a~11dからトナー像を受け取ると、一次転写ベルト20の矢印A方向への移動により、トナー像を二次転写対向ローラ22側へ搬送する。
【0016】
二次転写対向ローラ22は、後述の二次転写ローラ41と共に二次転写部(二次転写ニップ部)を形成する。
【0017】
一次転写ベルト清掃装置23は、二次転写対向ローラ22に対し一次転写ベルト20の移動方向下流側に配置され、二次転写対向ローラ22を通過した一次転写ベルト20の表面を清掃する。
【0018】
シート供給ユニット3は、一次転写ユニット2の下方に配置されており、シート収容部から1枚ずつ分離して送り出された記録媒体を二次転写ユニット4へ搬送するための搬送ローラ30,31などを備える。なお、シート収容部は、シート供給ユニット3のシート搬送路3a,3b,3cに通じるように印刷装置500の本体に接続されるが、ここでは図示を省略している。
【0019】
第2転写手段の一例である二次転写ユニット4は、一次転写ユニット2の下方に配置されており、二次転写ユニット4は、第2の移動体の一例である二次転写ベルト40、および二次転写ローラ41などを備える。
【0020】
二次転写ベルト40は、PVDF(フッ化ビニルデン)、ETFE(エチレン-四フッ化エチレン共重合体)、PI(ポリイミド)、PC(ポリカーボネート)等を単層または複数層で構成した無端ベルトである。二次転写ベルト40は、二次転写ローラ41と複数の支持ローラに掛け渡した状態で図中反時計回り方向に移動する。二次転写ベルト40は、搬送ローラ30より送られる記録媒体を搬送すると共に、二次転写ローラ41と二次転写対向ローラ22との対向位置(二次転写部)において、一次転写ベルト20上のトナー像を記録媒体に転写させる。なお、二次転写ユニット4の詳細は後述する。
【0021】
搬送ベルトユニット5は、一次転写ユニット2の下方に配置されており、二次転写ユニット4を通過した記録媒体を定着ユニット6へ導く。
【0022】
定着ユニット6は、一次転写ユニット2の下方に配置されており、二次転写ユニット4で記録媒体に転写されたトナー像に対して、例えば、熱と圧力を加えることで、トナー像を記録媒体に定着させる。
【0023】
両面搬送ユニット7は、二次転写ユニット4、搬送ベルトユニット5および定着ユニット6などの下方に配置されており、両面印刷を行う場合、定着後の記録媒体は両面搬送ユニット7内を通り、搬送ローラ31側へ戻される。
【0024】
シート排出ユニット8は、定着ユニット6の後段(記録媒体の搬送方向下流側)に配置されており、定着ユニット6から送り出された記録媒体を印刷装置500の機外、または両面搬送ユニット7に向けて搬送する。
【0025】
露光ユニット9は、トナー像形成部1の上方に配置されており、光源が発したレーザー光は、レンズやミラー等の光学部材を介して感光体11a~11dへ導かれ、レーザー光は感光体11a~11dの表面に静電潜像を形成する。
【0026】
トナーボトル装着部10は、露光ユニット9の上方に配置されており、トナーボトル装着部10には、現像装置13a~13dに補給するためのトナーを収容したトナーボトル100a,100b,100c,100dが着脱自在に設けられている。
【0027】
上記の構成において、印刷装置500は、外部のコンピュータ等から画像データを受信した場合、印刷ジョブを開始してトナー像形成部1、一次転写ユニット2、および露光ユニット9などの駆動を開始する。トナー像形成部1では、帯電装置12a~12dが、回転駆動する感光体11a~11dの表面を所定の帯電電位に均一に帯電する。帯電後の感光体11a~11dの表面には、画像データに基づいて露光ユニット9により静電潜像が形成される。感光体11a~11dに形成された静電潜像は、現像装置13a~13dでトナー像として現像された後、一次転写ベルト20上に順に転写される。トナー像転写後の感光体11a~11dの表面は、清掃装置14a~14dによって清掃される。
【0028】
上記のトナー像形成と並行して、シート供給ユニット3は、記録媒体を搬送ローラ30に向けて搬送する。搬送ローラ30は、レジストローラでもあり、記録媒体が搬送ローラ30に突き当たったならば、記録媒体の搬送は一旦停止する。そして、一次転写ベルト20に転写されたトナー像が二次転写ニップ部に到達するタイミングに合わせて搬送ローラ30は記録媒体の搬送を再開する。搬送が再開された記録媒体は、二次転写ニップ部内で一次転写ベルト20上のトナー像と同期して、記録媒体の表面にトナー像が転写される。トナー像が転写された後の記録媒体は、搬送ベルトユニット5によって定着ユニット6へ搬送される。トナー像を載せた記録媒体は、定着ユニット6において熱と圧力が加えられ、トナー像は記録媒体に定着される。
【0029】
定着後の記録媒体はシート排出ユニット8に移動し、シート排出ユニット8では、例えば、方向切替爪の動作により、記録媒体の進路を、印刷装置500の機外または両面搬送ユニット7のいずれかに切り替える。記録媒体は、シート排出ユニット8から両面搬送ユニット7に送られた場合、二次転写ニップ部に再び送られ、二次転写ニップ部で記録媒体の裏面に対するトナー像の形成が行われた後、シート排出ユニット8より排出される。また、二次転写ニップ部を通過した後の一次転写ベルト20の表面は、一次転写ベルト清掃装置23によって清掃され、一次転写ベルト20の表面に残ったトナーなどが除去される。なお、印刷装置500は、本体内の温度および湿度を検出する温湿度センサ200を備えており、温湿度センサ200によって検出される温湿度情報は、後述の作像条件を調整する場合などに用いられる。
【0030】
なお、印刷装置500に搭載する感光現像ユニット10a~10dおよびトナーボトル100a~100d等の数は、印刷装置500で用いるトナーの色の種類や数に応じて適宜増減してよい。
【0031】
また、印刷に使用する記録媒体は、紙に限るものではない。紙以外に、例えば、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど種々材質に適用することが可能である。
【0032】
<二次転写ユニットの構成>
次に、図2を用いて二次転写ユニット周辺の構成を説明する。図2は、二次転写ユニット周辺構成の一例を示す説明図である。
【0033】
二次転写ユニット4は、図1に示した二次転写ベルト40および二次転写ローラ41の他に、複数の支持ローラ42a,42b,42c,42d、付着量検出手段の一例である濃度センサ43、二次転写ベルト清掃装置44、並びにこれら二次転写ベルト40、二次転写ローラ41、支持ローラ42a~42d、濃度センサ43、二次転写ベルト清掃装置44を保持する枠体45を備える。また、二次転写ユニット4は、転写圧変更手段の一例である加圧装置46を備える。
【0034】
二次転写ベルト40は、二次転写ローラ41、および複数の支持ローラ42a~42dに掛け渡した状態で図中反時計回り方向(矢印B方向)に移動する。二次転写ローラ41は、対向する一次転写ベルト20との間に二次転写ベルト40を挟み込み、一次転写ベルト20と二次転写ベルト40との対向部に二次転写部(二次転写ニップ部)Pを形成する。二次転写ニップ部Pは、一次転写ベルト20の表面に転写されたトナー像Tを、搬送されてくる記録媒体Sに静電移動させるための二次転写電界を形成する。また、二次転写部Pは、一次転写ベルト20の表面に転写されたトナー像T´を、二次転写ベルト40に静電移動させるための二次転写電界を形成する。
【0035】
濃度センサ43は、二次転写ベルト40の表面に対向させて配置され、一次転写ベルト20から二次転写ベルト40にトナー像T´を転写させた際に、二次転写ベルト40に付着したトナーの量(トナー付着量)を検出する。濃度センサ43は、赤外線LED(Light Emitting Diode)等から成る発光素子と、反射光を受光してその受光した光の強度に応じた電気信号を出力するフォトトランジスタ等から成る受光素子を備える。なお、濃度センサ43は、トナー付着量を検出できるものであればよく、これに限るものではない。
【0036】
二次転写ベルト清掃装置44は、濃度センサ43に対し二次転写ベルト40の移動方向下流側に配置され、濃度センサ43を通過した二次転写ベルト40の表面を清掃する。
【0037】
加圧装置46は、カム部材47と、このカム部材47の回転に伴い矢印C方向に揺動可能に支持されたアーム部材48とを備える。加圧装置46は、アーム部材48が枠体45の一部と当接可能な位置に設けられており、アーム部材48の位置に応じて枠体45も矢印C方向に変位可能に設けられている。つまり、二次転写ニップ部Pに発生させる圧力(転写圧)は、加圧装置46によって変更可能に構成されている。
【0038】
二次転写ニップ部Pにおいて、一次転写ベルト20からトナー像Tの転写がなされた記録媒体Sは、その後、矢印D方向へ搬送され、上述のトナー像定着等が行われる。一方、トナー像T´は、二次転写ニップ部Pにおいて記録媒体Sには転写させずに、先行の記録媒体と後続の記録媒体との間に設定される記録媒体なし区間(紙間)において二次転写ベルト40に転写される。ここで、トナー像T´は、例えば所定のテストパターン画像であり、トナー像T´は、記録媒体Sへのトナー像Tの転写が所定枚数実行される毎に、二次転写ベルト40に形成され、濃度センサ43によって検出される。
【0039】
ここで、濃度センサ43が二次転写ユニット4に設けられる理由について、図3を用いて説明する。図3は、濃度センサの一例を示す説明図である。
【0040】
濃度センサ43は、赤外線LED等から成る発光素子43aと、反射面Rsに対する入射光の入射角と等しい反射角で反射した、いわゆる正反射光を受光する正反射光受光素子43bと、反射面Rsで乱反射した光を受光する拡散反射光受光素子43cとを備える。この濃度センサ43を、正反射光受光素子43bによって正反射光を検出する正反射光検出方式で使用すると共に、反射面Rsが弾性体である場合を考える。
【0041】
その場合、図3(a)の状態では反射面Rsにトナー像が存在しないため、発光素子43aからの光は弾性体表面の鏡面光沢度に比例して反射し、反射光は正反射光受光素子43bによって検出される。
【0042】
しかし、図3(b)のように反射面Rsにトナー像tが付着した状態では、トナー像tによって光が散乱するため、正反射光はトナーの付着量が多くなるほど減少してしまう。特に、トナー像tが黒色トナーの場合、発光素子43aからの光はトナー表面で散乱、もしくは吸収されてしまい、正反射光の減少は顕著となる。
【0043】
また、正反射光受光素子43bが検出した正反射光に基づきトナー付着量を求める場合、反射面Rsのつるつる具合とトナー像tのざらざら具合との比、すなわち鏡面光沢度の比を用いて求めることができる。しかし、反射面Rsが弾性体の場合、その表面は比較的ざらざらなため、濃度センサ43は反射面Rsからの正反射光を得にくく、トナー付着量を正しく検出することができないという課題がある。
【0044】
本実施形態の印刷装置500において、一次転写ベルト20は少なくとも表面に弾性体層を有する弾性体ベルトによって構成されている。そのため、一次転写ベルト20においてトナー付着量を検出しようとする場合は、トナー付着量を正しく検出できない課題が生じる。これに対して、二次転写ベルト40は、例えばPI(ポリイミド)など光沢度の高い樹脂フィルムによって構成されている。そのため、濃度センサ43は、反射面Rsからの正反射光を得やすくなり、また、反射面Rsとトナー像tとの鏡面光沢度の比を求めやすくなる。こうした理由から本実施形態では、濃度センサ43が二次転写ユニット4に設けられている。
【0045】
ところで、二次転写ユニット4は、様々な種類の記録媒体(例えば、様々な厚さや様々な表面粗さの用紙)に対して印刷を可能にするために、図2に示したような加圧装置46を備えている。二次転写ユニット4は、記録媒体の種類に応じて二次転写ニップ部Pの圧力(転写圧)を加圧装置46によって適切な値に設定し、記録媒体Sにトナー像Tを転写させる。
【0046】
一方で、紙間で形成されるトナー像T´(テストパターン画像)は、二次転写ベルト40に転写されるものであるため、印刷に使用する記録媒体Sの種類によらず一定の転写圧の下で二次転写ベルト40に転写されるべきである。
【0047】
しかし、これまでの印刷装置500では、テストパターン画像T´を二次転写ベルト40に転写させる際も、トナー像Tを記録媒体Sに転写させるときと同じ転写圧で転写が行われていた。つまり、紙間で転写圧を切り替えようとした場合、転写圧の切替動作が印刷速度に間に合わず、印刷物の生産性を低下させてしまう。そのため、記録媒体Sに対するトナー像Tの転写と、二次転写ベルト40に対するテストパターン画像T´の転写は、同じ値の転写圧を用いて実施されていた。
【0048】
これにより、テストパターン画像T´の二次転写ベルト40への転写率は低下し、濃度センサ43の検出値に基づき算出されるトナー付着量も、実際のトナー付着量よりも低い値となってしまう。その結果、作像条件を最適化できないという新たな課題が生じる。つまり、作像条件が最適化できないことで、連続印刷中のトナー像の濃度が安定せず、画像品質が低下するという課題が生じる。
【0049】
そこで、本発明においては、二次転写ニップ部Pの転写圧の変更によって変動したテストパターン画像T´のトナー付着量に対し、付着量の変動値を予想し、この変動値に応じて濃度センサ43の検出値が補正される。そして、補正後の検出値を基に作像条件が調整される。これにより、二次転写ベルト40におけるトナー付着量の検出は、二次転写ニップ部Pの転写圧の変動による影響を受けなくなり、印刷装置500は連続印刷中のトナー像の濃度を安定させることができるようになる。
【0050】
<転写圧と検出付着量について>
以下、図4を用いて、転写圧と検出付着量との関係について説明する。図4は、転写圧と検出付着量の関係を示す説明であり、図4(a)は比較例における説明図、図4(b)は本実施形態における説明図である。なお、図4は、二次転写ニップ部Pにおける転写圧が1~4の4段階で設定可能であり、数字が大きいほど転写圧が高いと仮定する。また、二次転写ベルト40への最適な転写圧設定は1であると仮定する。
【0051】
図4(a)において、転写圧が1以外では、一次転写ベルト20から二次転写ベルト40へのトナー像T´(テストパターン画像)の転写率が低下する。そのため、濃度センサ43の検出値に基づき算出される付着量検出値も破線で示すように低下する。つまり「付着量目標値>付着量検出値」の関係となる。
【0052】
比較例では、この破線で示した値を正しい値とみなし、一次転写ベルト20にトナー像T,T´が形成される。そのため、例えば転写圧4で形成したトナー像の中でも画像濃度にばらつきが生じてしまう。
【0053】
これに対し、本実施形態を図4(b)に示す。各転写圧1~4に対する付着量変動値(Δ2,Δ3,Δ4)は、「付着量変動値(Δn)=付着量目標値-付着量検出値(但し、n=1~4)」で表すことができる。各転写圧1~4での付着量変動値は、補正値(補正量)と考えることができるから、補正後の付着量検出値は、「補正後の付着量検出値=付着量目標値=付着量検出値+付着量変動値」と表すことができる。
【0054】
テストパターン画像T´の付着量目標値をMとする。また、テストパターン画像T´に基づく付着量検出値Mnは、転写圧ごとに異なる。したがって、転写圧1~4の圧力値がT1,T2,T3,T4のときの実際のテストパターン画像T´の二次転写ベルト40での付着量検出値はM1,M2,M3,M4(≠M)となる。また、付着量目標値Mとの差分、すなわち付着量変動値(Δ1,Δ2,Δ3,Δ4)は、転写圧毎にそれぞれΔ1=M-M1,Δ2=M-M2,Δ3=M-M3,Δ4=M-M4と表すことができる。
【0055】
比較例の場合、転写圧1~4の圧力値T1~T4によって変動した付着量検出値M1~M4(≠M)を濃度センサ43により検出し、この付着量検出値を付着量目標値Mに寄せるように作像条件が調整される。本実施形態は、付着量検出値M1~M4に対し付着量変動値Δ1~Δ4を予想し、付着量変動値Δ1~Δ4に応じて補正した付着量目標値M1+Δ1,M2+Δ2,M3+Δ3,M4+Δ4を転写圧1~4毎の付着量検出値とする。そして、付着量変動値を反映した補正後の付着量検出値に寄せるように作像条件は調整される。これにより、転写圧によらず、連続印刷中のテストパターン画像T´の二次転写ベルト40への付着量を一定にすることができる。
【0056】
なお、本実施形態は、転写圧が高くなるほど付着量検出値が低くなる構成に基づいて説明したが、これとは反対に、転写圧が高くなるほど付着量検出値が高くなる構成であってもよい。転写圧と付着量検出値との関係は、一次転写ベルト20と二次転写ベルト40の材質の組み合わせ等によって異なる場合がある。本実施形態では、一次転写ベルト20を弾性体ベルトとし、二次転写ベルト40をPIフィルムとしている。この場合、弾性体ベルトとトナー像との間、およびPIフィルムとトナー像との間で生じる微小ギャップ放電による影響が、転写圧が高いほど大きくなる傾向を示し、転写圧が高くなるほど付着量検出値が低くなると考えられる。
【0057】
<動作および処理について>
以下、図5乃至図7を用いて実施形態における動作および処理の一例について説明する。図5は、作像条件の調整に係わる部位のブロック図、図6は、制御部のハードウエア構成の一例を示すブロック図、図7は、付着量検出値の補正の一例を示すフローチャートである。
【0058】
図5において、制御手段の一例である制御部400は、算出部401、補正部402、および作像条件調整部403を備える。
【0059】
算出部401には、濃度センサ43、および記憶部404が接続される。算出部401は、記憶部404に記憶させた付着量目標値と、濃度センサ43からの付着量検出値とに基づき、転写圧の変更に伴い変動する二次転写ベルト40上のトナー像T´の付着量変動値を算出する。なお、算出部401には、濃度センサ43に加え、印刷装置500の本体内の温湿度を検出する温湿度センサ200を接続してもよい。印刷装置500の本体内の温湿度情報を取得することで、付着量変動値をより適切に算出することが可能になる。
【0060】
補正部402は、算出部401が算出した付着量変動値を、付着量検出値に反映(例えば加算)し、付着量検出値に対して補正を行う。
【0061】
作像条件調整部403は、補正部402によって補正された補正後の付着量検出値に基づき、トナー像形成部1のための作像条件を調整する。
【0062】
記憶部404は、算出部401が付着量変動値の算出に用いる情報を格納している。例えば、付着量目標値の他に記録媒体Sの種類(厚さ、表面粗さ等)に関する情報を格納した補正値テーブルなどを格納する。算出部401に温湿度センサ200が接続される場合、補正値テーブルは、例えば、高温,高湿の環境下では付着量補正値の補正量を常温,常湿時よりも大きくするなど、温湿度情報を加味したテーブルとして構成してもよい。なお、記憶部404は、制御部400の内部に設けてもよい。
【0063】
ここで、図6を参照しながら制御部400のハードウエア構成について説明する。図6に示されているハードウエア構成は、必要に応じて構成要素が追加または削除されてもよい。
【0064】
制御部400は、CPU(Central Processing Unit)4001、ROM(Read Only Memory)4002、RAM(Random Access Memory)4003、HDD(Hard Disk Drive)/SSD(Solid State Drive)4004、I/O(Input/Output)インターフェース4005、通信インターフェース4006、およびバスライン4007を備える。
【0065】
CPU4001は、画像形成装置500全体の制御を行う。CPU4001は、ROM4002に格納された、プログラムもしくはデータをRAM4003上に読み出し、処理を実行することで、画像形成装置500の各機能を実現する演算装置である。
【0066】
ROM4002は、電源を切ってもプログラムまたはデータを保持することができる不揮発性のメモリである。RAM4003は、CPU4001のワークエリア等として用いられる揮発性のメモリである。HDD/SSD4004は、CPU4001の制御にしたがって各種データの読み出し、または書き込みを制御する。なお、上述の記憶部404の機能は、HDD/SSD4004によって実現される。
【0067】
I/Oインターフェース4005は、画像形成装置500に搭載された各種モータ、各種センサ(濃度センサ43、温湿度センサ200等)、定着ユニット6のヒータ等の機器との間で入出力するためのインターフェースである。
【0068】
通信インターフェース4006は、通信ネットワークを経由して、DFE(Digital Front End)など画像形成装置500に入力するためのデータ処理を行う機器との通信(接続)を行うインターフェースである。
【0069】
バスライン4007は、上記各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等であり、アドレス信号、データ信号、および各種制御信号等を伝送する。CPU4001、ROM4002、RAM4003、HDD/SSD4004、I/Oインターフェース4005、および通信インターフェース4006は、バスライン4007を介して相互に接続されている。
【0070】
上記の構成において、トナー像T´(テストパターン画像)に基づき印刷装置500の作像条件を調整する際は、図7に示すように、印刷装置500は、トナー像形成部1などによってトナー像T´を形成する(ステップS1)。
【0071】
ステップS1で形成されたトナー像T´は、一次転写および二次転写を経て二次転写ベルト40に転写され、濃度センサ43の直下を通過する。このとき濃度センサ43は、通過するトナー像T´を検出し(ステップS2)、付着量検出値を算出部401へ出力する。
【0072】
次に、算出部401は、濃度センサ43からの付着量検出値と、その時の転写圧とに基づき付着量変動値を算出する(ステップS3)。例えば、二次転写ベルト40に対して適切な転写圧で二次転写が行なわれなかった場合、付着量目標値と付着量検出値の差分をその転写圧での付着量変動値として算出する。
【0073】
次に、ステップS3で算出した付着量変動値を付着量検出値に反映(本実施形態では加算)し、付着量検出値を補正する(ステップS4)。ステップS4で得られた補正後の付着量検出値は、作像条件調整部403を介してトナー像形成部1などに通知される。トナー像形成部1などは、通知された付着量検出値を正しい値とみなし、作像条件調整部403によって画像濃度が一定になるように作像条件が調整される。
【0074】
上述のように本実施形態は、感光体11a~11d上にトナー像T´を形成するトナー像形成部1と、感光体11a~11d上のトナー像T´が転写される一次転写ベルト20を有する一次転写ユニット2と、一次転写ベルト20上のトナー像T´が転写される二次転写ベルト40を有する二次転写ユニット4と、一次転写ベルト20に対する二次転写ベルト40の転写圧を変更する加圧装置46と、二次転写ベルト40上に転写されたトナー像T´を検出し、付着量検出値を出力する濃度センサ43と、付着量検出値に基づきトナー像形成部1におけるトナー像T´の作像条件を設定する制御部400と、を備える印刷装置500であって、制御部400は、二次転写ベルト40上に転写されるべきトナー像T´の付着量目標値と、上記付着量検出値とに基づき、転写圧の変更に伴い変動する二次転写ベルト40上のトナー像T´の付着量変動値を算出する算出部401と、算出部401によって算出された付着量変動値を上記付着量検出値に反映し、付着量検出値を補正する補正部402と、補正部402による補正後の付着量検出値に基づき、作像条件を調整する作像条件調整部403と、を備える。
【0075】
これにより、転写圧によらず常に一定の値に補正された補正後の付着量検出値に基づき作像条件を調整することができるため、画像濃度を安定させることができる。
【0076】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有する者により、多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 トナー像形成部
2 一次転写ユニット
20 一次転写ベルト
21a,21b,21c,21d 一次転写ローラ
22 二次転写対向ローラ
4 二次転写ユニット
40 二次転写ベルト
41 二次転写ローラ
43 濃度センサ
46 加圧装置
200 温湿度センサ
400 制御部
401 算出部
402 補正部
403 作像条件調整部
404 記憶部
500 印刷装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7