(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130298
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】位置決め調整機構及び位置決め調整システム
(51)【国際特許分類】
B62D 55/06 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
B62D55/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001295
(22)【出願日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】P 2022034668
(32)【優先日】2022-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰史
(72)【発明者】
【氏名】北原 拓
(72)【発明者】
【氏名】岡本 寛
(72)【発明者】
【氏名】笹本 哲朗
(57)【要約】
【課題】走行装置の位置決め精度を向上する。
【解決手段】位置決め調整機構120は、走行装置1の所定の停止位置(充電可能位置C)への接近中に、一対の走行体10a、10bの側部と当接することにより、走行装置1の左右方向の位置と姿勢の調整を行う第1ガイド部材121と、走行装置1が停止位置に達した際に、一対の走行体10a、10bの前部と突き当たることにより走行装置1の前後方向の位置と姿勢の調整を行う第2ガイド部材125と、を備える。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、前記本体の両側に、走行面と接地して駆動する一対の走行体とを有する走行装置の位置決め調整機構であって、
前記走行装置の所定の停止位置への接近中に、前記一対の走行体の側部と接触する第1接触部材と、
前記走行装置が前記停止位置に達した際に、前記一対の走行体の前部と接触する第2接触部材と、
を備える、
位置決め調整機構。
【請求項2】
前記第1接触部材は、前記一対の走行体のうち前記本体の側の側部と当接可能に配置される、
請求項1に記載の位置決め調整機構。
【請求項3】
前記第2接触部材は、前記走行装置の前記一対の走行体の配列方向に沿って延在するよう形成され、
前記第1接触部材は、
前記第2接触部材の延在方向と直交する方向に延在し、基端部が前記第2接触部材と連結する一対の直線部と、
前記一対の直線部の先端部とそれぞれ連結し、前記直線部の延在方向に対して所定角度の方向に延在する一対の傾斜部と、を有し、
前記一対の傾斜部は、前記直線部との連結部分から離れる程、両者の幅が狭くなるよう形成される、
請求項2に記載の位置決め調整機構。
【請求項4】
前記第1接触部材は、前記一対の傾斜部の先端部分を連結し、前記配列方向に沿って延在する前端部を有する、
請求項3に記載の位置決め調整機構。
【請求項5】
前記走行装置が前記停止位置に達した際に、前記一対の走行体の後部と当接することにより前記走行装置の前後方向の位置と姿勢の調整を行う第3接触部材を備える、
請求項1に記載の位置決め調整機構。
【請求項6】
前記走行装置が前記停止位置にあるときに、前記一対の走行体の左右方向の外側に配置される壁部を備える、
請求項1に記載の位置決め調整機構。
【請求項7】
前記第2接触部材は、前記一対の走行体の前部に対して段差形状に形成される、
請求項1に記載の位置決め調整機構。
【請求項8】
前記走行装置は、前記一対の走行体のそれぞれに速度差を付けることによって進行方向を変更するよう構成される、
請求項1に記載の位置決め調整機構。
【請求項9】
前記一対の走行体が、履帯式走行体である、
請求項8に記載の位置決め調整機構。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の位置決め調整機構と、
前記走行装置の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
第1に、前記走行装置が前記第1接触部材及び前記第2接触部材と離間すると共に、前記第2接触部材と対向し、かつ、前記第1接触部材に沿って直進可能な方向を向く第1設定位置まで前記走行装置を移動させ、
第2に、前記走行装置の前記一対の走行体が前記第2接触部材と当接可能な第2設定位置まで前記走行装置を直進移動させて、
前記走行装置を前記停止位置に位置決めする、
位置決め調整システム。
【請求項11】
前記制御装置は、GPS信号を利用して前記走行装置の位置を検出して、前記走行装置を前記第1設定位置に移動する制御を行う、
請求項10に記載の位置決め調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置決め調整機構及び位置決め調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な使用環境や用途において、従来の人手で行われていた作業の支援や人が対応できない環境での作業を行うための自律移動型のロボット(走行装置)が活用されている。
【0003】
例えば特許文献1には、このような自律移動型の走行装置の一例として、走行時の安定性を高めるため、履帯式(クローラ式)の走行体を備えた走行装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1には、目標位置により正確に停止するための機構が記載されておらず、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、走行装置の位置決め精度を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の一観点に係る位置決め調整機構は、本体と、前記本体の両側に、走行面と接地して駆動する一対の走行体とを有する走行装置の位置決め調整機構であって、前記走行装置の所定の停止位置への接近中に、前記一対の走行体の側部と接触する第1接触部材と、前記走行装置が前記停止位置に達した際に、前記一対の走行体の前部と接触する第2接触部材と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
走行装置の位置決め精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態で適用される走行装置の概略構成を示す斜視図
【
図4】本実施形態における充電タスクの仕組みを説明する図
【
図5】実施形態に係る位置決め調整システムの概略構成図
【
図7】本実施形態に係る位置決め調整機構の概略構成を示す斜視図
【
図8】走行装置が位置決め調整機構により位置決めされた状態の斜視図
【
図9】位置決め調整機構による調整過程の第1段階を示す平面図
【
図10】位置決め調整機構による調整過程の第2段階を示す側面図
【
図11】位置決め調整機構による調整過程の第3段階を示す側面図
【
図12】位置決め調整機構の第1、第2、第3変形例を示す平面図
【
図13】位置決め調整機構の第4変形例を示す平面図
【
図14】位置決め調整機構の第5変形例を示す平面図
【
図15】本実施形態に係る位置決め調整システムの適用例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0010】
実施形態に係る位置決め調整システム100は、走行装置1を所定の停止位置に位置決めさせるためのシステムである。本実施形態では、走行装置の一例として、履帯式(クローラ式)の走行体10a、10bを備える走行装置1を例示して説明する。また、本実施形態では、走行装置1を位置決めするタスクの一例として、充電装置110の充電可能位置Cに位置決めする充電タスクを例示して説明する。
【0011】
<走行装置の構成>
まず
図1~
図3を参照して、履帯式走行体10a、10bを備える走行装置1の構成について説明する。
図1は、実施形態で適用される走行装置1の概略構成を示す斜視図である。
図2は、
図1中の履帯式走行体10の側面図である。なお、
図2では、一対の履帯式走行体10a、10bは構成が同一であるため、纏めて符号10として図示している。
【0012】
なお、
図1、
図2の説明において、x1方向、y1方向、z1方向は互いに垂直な方向である。x1方向及びy1方向は水平方向であり、z1方向は鉛直方向である。x1方向は走行装置1の前後方向である。y1方向は、走行装置1の左右方向である。また、以下では説明の便宜上、z1正方向側を上側、z1負方向側を下側とも表現する場合がある。
【0013】
図1に示すように、走行装置1は、y1方向の中央に本体50を有し、本体50のy1方向両側に、走行面と接地して駆動する一対の走行体を有する。一対の走行体は、履帯式走行体10a、10bである。走行装置1は、一対の履帯式走行体10a、10bのそれぞれに速度差を付けることによって進行方向を変更するよう構成される。
【0014】
図1、
図2に示すように、走行装置1は、姿勢を安定させて走行させるために、インホイールモータを内蔵した駆動輪と二つの転輪によって形成される三角形の履帯式の走行体10を用いる。このように履帯式走行体10を有する走行装置1は、高い走行性能を持ち、凹凸のある不整地を安定して走行することができる。その一方で車輪による走行装置1に比べて細かい位置調整の難易度が高く、狙いの位置に高精度に移動することが難しい。さらに停止時に左右および上下方向に傾いた状態で停止しやすく、停止時の姿勢が安定しないという課題がある。
【0015】
この様な履帯式走行体10は、充電を行う際や、搬送物の接続/切り離しを行う際などに停止する際に、狙いの位置に対して±数十mm程度の高精度な位置決めや、±数度程度
に姿勢維持することが求められる。
【0016】
走行装置1の各部の構成をさらに説明する。履帯式走行体10a、10bは、走行装置1の移動手段となるユニットである。また、履帯式走行体10a、10bは、金属またはゴム製のベルトを用いた履帯式(クローラ式)の走行体である。履帯式の走行体は、自動車のようなタイヤで走行する走行体と比較して接地面積が広く、例えば、足場の悪い環境においても、安定した走行を行うことができる。また、タイヤで走行する走行体は、回転動作を行う際に旋回スペースを必要とするのに対して、履帯式の走行体を備えた走行装置は、いわゆる超信地旋回を行うことができるため、限られたスペースでも回転動作をスムーズに行うことができる。
【0017】
本体50は、履帯式走行体10a、10bを走行可能な状態で支持する支持体であるとともに、走行装置1を駆動させるための制御を行う制御装置を搭載する。また、本体50は、履帯式走行体10a、10bを駆動させるための電力を供給する、後述のバッテリ530を搭載する。
【0018】
図1に示すように、走行装置1の本体50は、非常停止ボタン31、状態表示ランプ33、接触充電部35を備える。非常停止ボタン31は、走行装置1の周辺にいる人が、走行中の走行装置1を停止させる際に押下する操作手段である。
【0019】
状態表示ランプ33は、走行装置1の状態を通知するための通知手段である。状態表示ランプ33は、例えば、バッテリ残量の低下等の走行装置1の状態が変化した場合、周囲の人に、走行装置1の状態変化を知らせるために点灯する。また、状態表示ランプ33は、例えば、走行装置1の走行を妨げる障害物の存在等が検知された場合等、異常発生のおそれがある場合に点灯する。なお、
図1は、走行装置1に状態表示ランプ33が二つ備えられている例を示すが、状態表示ランプ33の数は、一つであってもよく、三つ以上であってもよい。また、通知手段は、状態表示ランプ33のみならず、スピーカから発せられる警告音等によって走行装置1の状態を通知する構成であってもよい。
【0020】
接触充電部35は、充電タスクの際に充電装置110と接触することにより、充電装置110からの電力を本体50内部のバッテリへ供給する要素である。本実施形態では、本体50の外形は略直方体形状で形成され、x1方向を法線方向とする前面50Aが最も前方に配置される。接触充電部35は、この前面50Aに設置される。接触充電部35は、例えば樹脂製の矩形状の枠体35Cの前面に、2つの金属製の接触面35A、35Bが設けられる。2つの接触面35A、35Bは、y1方向を長手または長辺とする略長方形状の略同一形状で形成され、平行に配列される。
【0021】
図2に示すように、履帯式走行体10は、駆動輪13と二つの転輪15a,15bによって形成された三角形の形状を有する。三角形の形状の履帯式走行体10は、例えば、走行体の前後のサイズに制約がある場合、前後の限られたサイズの中で接地面積を大きくすることができるので、走行時の安定性を向上させることができる。一方で、下側(転輪側)よりも上側(駆動輪側)の方が長い、いわゆる戦車タイプのクローラでは、前後のサイズの制約がある場合には全体的に接地面積が小さくなって不安定になる。このように、履帯式走行体10は、比較的に小型の走行装置1の走行性を高める場合に有効である。
【0022】
履帯式走行体10は、履帯11、駆動輪13、インホイールモータ14、転輪15a,15b、アイドラ18a,18b、リンク19、側板20a,20bおよびテンショナ25を備える。
【0023】
履帯11は、クローラとも呼ばれて、金属またはゴムで形成されている。履帯11は、駆動輪13と転輪15a,15bに掛け回される。履帯11は、駆動輪13の回転方向に従って移動しながら、転輪15a,15bを従動させることによって、履帯式走行体10を回転させる。また、履帯11の表面には、複数の突起部11a,11bが設けられている。履帯11の外側の突起部11aは、例えば、路面上の石等の小さな障害物を安定して乗り越えて走行するために設けられている。また、内側の突起部11bは、例えば、駆動輪13または転輪15a,15bからの脱輪を防止するために設けられている。
【0024】
駆動輪13は、履帯11に対して、履帯式走行体10を回転させるための駆動力を伝達する。履帯式走行体10は、インホイールモータ14が駆動輪13に伝達した駆動力(回転力)を、履帯11を介して、転輪15a,15bに伝達する。
【0025】
インホイールモータ14は、駆動輪13の内部に内蔵されており、駆動輪13に回転力を伝達する。インホイールモータ14は、駆動軸となるモータ軸141を中心にして回転駆動する。インホイールモータ14の回転軸(モータ軸141)は、駆動輪13の回転軸(駆動軸)となり、インホイールモータ14の回転力によって駆動輪13が回転する。そして、インホイールモータ14の回転力は、駆動力として履帯11に伝達される。具体的には、インホイールモータ14は、駆動輪13に対して、走行装置1を前進させる正方向の回転、または走行装置1を後退させる負方向の回転を与える。
【0026】
また、インホイールモータ14は、駆動輪13に内蔵されることで構造を簡略化することができ、例えば、駆動チェーンまたはギア等の部品を用いないことで、それらの部品に起因する故障等のリスクを低減することができる。さらに、インホイールモータ14は、駆動輪13に内蔵させることで、履帯式走行体10の外周付近で駆動力を出すことができるため、トルクを大きくすることができる。
【0027】
転輪15a,15bは、履帯式走行体10に回転自在に取り付けられている。転輪15a,15bは、履帯11を介して駆動輪13から伝達された駆動力(回転力)によって、転輪軸151a,151bを回転軸として回転する。
【0028】
ここで、駆動輪13と転輪15aと転輪15bは、側面視において、三角形を形成する。履帯11は、駆動輪13と転輪15aと転輪15bとに掛け回されて、転輪15aと転輪15bの間の範囲が接地する。すなわち、インホイールモータ14が内蔵された駆動輪13は、路面に接地しない。よって、履帯式走行体10は、例えば、水溜まりを走行した場合であってもインホイールモータ14が浸水することはないため、インホイールモータ14に対して特別な防水機構を設置する必要はない。
【0029】
また、駆動輪13と転輪15a,15bの径は異なる。走行体は、要求されるサイズの制限や走行性等の要因を踏まえてレイアウト設計する必要がある。一般的に、モータは径が小さいほどモータの厚み(幅)における単位幅当たりのトルクが下がる傾向にある。そのため、インホイールモータを内蔵した駆動輪は、要求されるトルク性能に対応できるようなモータ径以上の径を有する必要がある。したがって、履帯式走行体10は、走行装置1または履帯式走行体10のサイズ制限を満たすとともに、要求される走行性能を満たすようなレイアウトとして、上方に設置された駆動輪13の径を、転輪15a,15bの径よりも大きくなるように設計する。なお、サイズが制限される中で転輪の径も大きくすると、接地面積が小さくなり走行安定性が損なわれる。そのため、駆動輪13の径を踏まえて比較的小さい径の転輪15a,15bを採用する利点もある。
【0030】
アイドラ18a,18bは、二つの転輪15a,15bの間に設けられ、履帯11に従動して回転する補助輪である。アイドラ18a,18bは、アイドラ軸181a,181bを回転軸としてそれぞれ回転する。また、リンク19は、アイドラ18aおよびアイドラ18bを支持する支持体である。
【0031】
側板20aは、履帯式走行体10において、駆動輪13、転輪15a,15b、およびアイドラ18a,18bを支持する。側板20aは、履帯式走行体10のy1正方向側の側面に設置される。また、側板20aの反対側、履帯式走行体10のy1負方向側の側面には側板20aと同一形状の側板20bが設定される。履帯式走行体10は、二つの側板20a,20bを用いて、駆動輪13および転輪15a,15b等を支持する両持ち構造になっている。側板20a,20bは、モータ軸141を用いて、駆動輪13を支持する。また、側板20a,20bは、転輪軸151a,151bを用いて、転輪15a,15bをそれぞれ支持する。さらに、側板20a,20bは、アイドラ18a,18bを支持するリンク19のリンク軸191を介して、アイドラ18a,18bを支持する。
【0032】
テンショナ25は、バネ等の弾性部材で形成されており、インホイールモータ14および駆動輪13の回転軸であるモータ軸141に接続される。テンショナ25は、駆動輪13が履帯11の内側に押し当たるように設置されて、履帯11にテンションを与える。テンショナ25は、走行時に、駆動輪13から履帯11に与えるテンションを調整する役割を担う。テンショナ25は、例えば、履帯式走行体10の静止時のテンションを基準として、基準となるテンションを走行時に略一定に保つための役割を担う。また、履帯式走行体10は、テンショナ25によって履帯11のたるみが調整されることによって、履帯11による正常な駆動力の伝達を維持する。また、履帯式走行体10は、テンショナ25によって履帯11にテンションを与えることで、履帯11の脱輪を防止することができる。
【0033】
ここで、
図1および
図2に示されているように、履帯式走行体10は、駆動輪13を中心に、走行方向の前後に略対称の構造を有する。より詳細には、履帯式走行体10は、
図1および
図2に示されているようなy1軸方向から見た側面視において、二つの転輪15a,15bの転輪軸を結ぶ直線に対するインホイールモータ14のモータ軸141からの垂線に対しておおよそ線対称の構造である。
【0034】
例えば、オフィスの廊下などの狭いスペースで走行する走行装置は、前進後進や超信地旋回を頻繁に行う必要がある。この場合、走行装置は、履帯の形状、または駆動輪、転輪もしくはテンショナ等の配置が前後に非対称だと、前進後進で駆動特性が変わったり、超信地旋回時に中心回転できなかったりする場合がある。そこで、履帯式走行体10は、レイアウト(構造)を前後に略対称にすることによって、走行装置1の走行時の安定性の向上や制御の簡略化を図ることができる。また、履帯式走行体10は、走行装置1の左右を意識せずに取り付けることができるため、部品点数の削減等を図ることができる。
【0035】
図3は、走行装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。走行装置1は、
図1に示されているように、走行装置1の処理または動作を制御する本体50を備える。本体50は、ラジコン受信部501、CPU(Central Processing Unit)502、メモリ503、通信I/F(Interface)506、バッテリ530、走行制御用モータドライバ540、姿勢制御用モータドライバ550、および姿勢制御用モータ555a,555bを備える。また、ラジコン受信部501、CPU502、メモリ503、通信I/F506、バッテリ530、走行制御用モータドライバ540、および姿勢制御用モータドライバ550は、システムバス510を介して接続している。システムバス510は、上記各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等であり、アドレス信号、データ信号、および各種制御信号等を伝送する。
【0036】
ラジコン受信部501は、走行装置1の操作者が使用するPC等の送信機から送信される動作指示信号を受信する。
【0037】
CPU502は、走行装置1全体の制御を行う。CPU502は、メモリ503に格納された、プログラムP1または走行装置1を動作させるのに必要な各種データを読み出し、処理を実行することで、走行装置1の各機能を実現する演算装置である。
【0038】
メモリ503は、CPU502が実行するプログラムP1をはじめ、走行装置1を動作させるのに必要な各種データを記憶する。プログラムP1は、メモリ503に予め組み込まれて提供される。
【0039】
また、プログラムP1は、インストール可能な形式、または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-RまたはDVD(Digital Versatile Disc)等のCPU502(コンピュータ)で読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。さらに、プログラムP1は、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由で走行装置1にダウンロードさせることにより提供されるように構成してもよい。また、プログラムP1は、インターネット等のネットワーク経由で提供または配布されるように構成してもよい。プログラムP1が外部から提供される場合、CPU502は、通信I/F506を介してプログラムP1を読み込む。なお、走行装置1は、CPU502をプログラムP1に従って動作させる代わりに、プログラムP1が実行するのと同じ演算機能および制御機能を有する専用のASIC(Application Specific Integrated Circuit)を実装することによって、ハードウェア的に動作させてもよい。
【0040】
通信I/F506は、通信ネットワークを経由して、他の機器または装置との通信(接続)を行う通信インターフェースである。通信I/F506は、例えば、有線または無線LAN(Local Area Network)等の通信インターフェースである。なお、通信I/F506は、3G(3rd Generation)、LTE(Long Term Evolution)、4G(4th Generation)、5G(5th Generation)、Wi-Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、Zigbee(登録商標)、またはミリ波無線通信等の通信インターフェースを備えてもよい。また、走行装置1は、NFC(Near Field communication)またはBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を行うための通信回路を備えていてもよい。
【0041】
バッテリ530は、走行装置1の処理または動作に必要な電力を供給する電力供給ユニットである。バッテリ530は、例えば、インホイールモータ14a,14bおよび姿勢制御用モータ555a,555bに対して電力を供給する。バッテリ530は、接触充電部35と電気的に接続され、充電タスクの際には接触充電部35を介して充電装置110から電力が供給されて充電が行われる。
【0042】
走行制御用モータドライバ540は、インホイールモータ14a,14bに対して、モータ駆動信号をそれぞれ供給することによって、インホイールモータ14a,14bを駆動させる。
【0043】
インホイールモータ14a,14bは、履帯式走行体10aの駆動輪13a、履帯式走行体10bの駆動輪13bの内部にそれぞれ設置されており、駆動輪13a,13bに回転力を伝達する。インホイールモータ14a,14bは、駆動輪13a,13bに対して、走行装置1を前進させる正方向の回転、または走行装置1を後退させる負方向の回転を与える。さらに、インホイールモータ14a,14bは、一方の駆動輪13a(または13b)のみを正方向または負方向に回転させて、他方の駆動輪13b(または13a)を停止させることによって、走行装置1を信地旋回させる。また、インホイールモータ14a,14bは、一方の駆動輪13a(または13b)を正方向に回転させて、他方の駆動輪13b(または13a)を負方向に回転させることによって、走行装置1を超信地旋回させる。
【0044】
姿勢制御用モータドライバ550は、姿勢制御用モータ555a,555bに対して、モータ駆動信号をそれぞれ供給することによって、姿勢制御用モータ555a,555bを駆動させる。姿勢制御用モータ555a,555bは、例えば、姿勢制御用モータドライバ550からの制御信号に応じて、リンク19の高さを上下に変更することで、アイドラ18a,18bの高さを調整する。また、姿勢制御用モータ555a,555bは、例えば、本体50の姿勢を制御することによって、走行装置1の転倒を防止する。
【0045】
なお、走行装置1は、ラジコン受信部501に受信された動作指示に応じて走行する構成に限られず、自律走行またはライントレース等の技術を用いて走行する構成であってもよい。また、走行装置1は、通信ネットワークを介して送信された動作指示信号を通信I/F506で受信することで、遠隔地にいるユーザから遠隔操作によって走行する構成であってもよい。また、走行装置1は、操作者の手動遠隔操作の他に、サーバなどの上位システムによって自動的に走行や各種タスクなどの操作を自動的に行う構成とすることもできる。この場合、走行装置1は、ラジコン受信部501や通信I/F506を介して、上位システムからの動作指示信号を受信することができる。
【0046】
図1~
図3に例示した走行装置1の寸法は、例えば前後方向の長さ、左右方向の幅、高さ、共に1メートル程度である。
【0047】
なお、本実施形態の位置決め調整システム100が対象とする走行装置は、
図1~
図3に例示した履帯式走行体10を有す走行装置1に限定されない。つまり、テンショナ25がインホイールモータ14の回転軸141上に配置される構成の履帯式走行体10には限定されない。他の構成のクローラ式の走行装置でも同様に位置決めの微調整が難しいという課題があるためである。
【0048】
自律移動型の走行装置は、劣悪な路面環境や限られたスペースでの作業にも対応できるように、目標位置に対する高い位置決め精度が求められる。従来の自律移動型の走行装置では、このような位置決め精度の点で改善の余地がある。特に、例えば特許文献1に開示される履帯式走行体のように、一対の走行体のそれぞれに速度差を付けることによって進行方向を変更する構造では、細かい位置調整が困難であるのでこの問題が顕著である。
【0049】
<充電タスクの概要>
走行装置1を位置決めする構成の一例として、充電装置110の充電可能位置Cに位置決めする充電タスクの構成を例示して説明する。
図4は、本実施形態における充電タスクの仕組みを説明する図である。
【0050】
接触充電部35の一例は、樹脂状の枠体35Cがあって、その中に金属製の2つの接触面35A、35Bが設置される。2つの接触面35A,35Bは、横長の長方形状で略同一形状であり、上下に併設されている。
【0051】
充電装置110の端子部114は、充電装置本体111に対して伸縮可能な基部112と、基部112の先端に配置される2つの接触端子113A,113Bを有する。接触端子113A,113Bの根元にはバネなどの弾性要素が連結されており、接触充電部35に突き当たると基部112に対して接触端子113A,113Bが凹むよう構成される。充電装置110は、例えばこのような接触端子113A,113Bの動作を検知することによって、端子部114と走行装置1の接触充電部35との接触状態の有無を判定できる。2つの接触端子113A,113Bは、走行装置1の2つの接触面35A,35Bと同様に上下方向に併設される。なお、接触端子113A,113Bと、接触面35A,35Bの配列方向は、それぞれ対応する1つずつが接触可能に平行に配列される方向であればよく、例えば左右方向(幅方向、y1方向)など上下方向(z1方向)以外の方向でもよい。
【0052】
充電タスクでは、
図4に示すように、まず、走行装置1を充電装置110に対して所定距離をとる停止位置(
図5などに示す充電可能位置Cに対応)まで移動させる。この停止位置では、走行装置1の接触充電部35が、充電装置110の端子部114と正対する。次に、
図4に矢印で示すように、充電装置110の端子部114の基部112が走行装置1側に伸びて、基部112の先端の接触端子113A,113Bが走行装置1の接触充電部35に接触する。その後、充電装置110から端子部114及び接触充電部35を介して走行装置1のバッテリの充電が行われる。
【0053】
上述のように、接触充電部35の各接触面35A,35Bの形状は、y1方向を長径とする略長方形状であるので、各接触端子113A,113Bとの間に水平方向の位置ずれが生じても、位置ずれ量が接触面35A,35Bの長径の範囲内であれば接触端子113A,113Bを接触面35A,35Bに接触させやすくできる。接触充電部35の各接触面35A、35Bの大きさは、例えば水平方向が60ミリ程度なので、水平方向の位置ずれは±30ミリ程度は担保できる。すなわち端子部114の接触端子113A,113Bが接触可能となる。上下方向も30ミリ程度あるので多少のずれは担保できるが、2つの接触面35A,35Bが同一平面上に配置されるので、前傾や後傾で姿勢のずれが大きいと、2つの接触端子113A,113Bの一方が接触できないような問題が起こり得る。
【0054】
なお、
図4に示す充電タスクの構造は一例であって、
図4に示す接触充電式に限られず、非接触充電などの他の手法を用いてもよい。いずれにしても、走行装置1が充電可能な位置まで充電装置110に接近させる必要がある。
【0055】
このように、充電タスクのために必要な精度は、走行装置1の進行方向に対して、左右が±数十mm程度である。またこの際に走行装置1が充電装置110に対して左右と上下に傾いた状態であっても、充電に支障が生じる。このために走行装置1は±数度程度とする必要がある。
【0056】
またこの走行装置1を運搬ロボットとして運用する場合に、省人化の観点から運搬物を自律的に接続および切り離しをすることが望ましい。この場合には前述したように充電タスク時と同レベルの停止位置精度と姿勢の安定化が求められる。
【0057】
<位置決め調整システム>
図5~
図11を参照して本実施形態に係る位置決め調整システム100について説明する。
図5は、実施形態に係る位置決め調整システム100の概略構成図である。
図5では、走行装置1を位置決めする構成の一例として、充電装置110の充電可能位置Cに位置決めする充電タスクの構成を例示して説明する。
【0058】
なお、
図5以降の説明において、x2方向、y2方向、z2方向は互いに垂直な方向である。x2方向及びy2方向は水平方向であり、z2方向は鉛直方向である。x2方向は充電装置110と位置決め調整機構120との配列方向であり、地点A、B、Cの配列方向であり、位置決め調整機構120の奥行方向である。y2方向は、位置決め調整機構120の幅方向である。また、以下では説明の便宜上、z2正方向側を上側、z2負方向側を下側とも表現する場合がある。
【0059】
図5に示すように、位置決め調整システム100は、走行装置1と、位置決め調整機構120とを備える。また、位置決め調整システム100は、走行装置1の動作を制御する制御装置を備えるが、本実施形態では走行装置1の本体50の内部のCPU502や走行制御用モータドライバ540などの要素がこの制御装置として機能する。すなわち制御装置は走行装置1の本体50に内蔵されている。
【0060】
位置決め調整機構120は、所定の停止位置に走行装置1を誘導して、位置と姿勢を調整して停止させるための要素である。本実施形態では、「所定の停止位置」とは、走行装置1が充電装置110からの充電を可能となる充電可能位置Cである。充電可能位置Cは、走行装置1の接触充電部35が、
図4に示した充電装置110の端子部114と接触可能な位置であり、充電装置110のx2負方向側の位置である。位置決め調整機構120はこの充電可能位置Cにて走行装置1が充電装置110と正対するように、充電装置110のx2負方向側に隣接して設置される。
【0061】
位置決め調整機構120は、例えば平面上において複数の角材を連結して形成される部材である。位置決め調整機構120の構成の詳細は
図7などを参照して後述する。
【0062】
図5に示す充電タスクでは、走行装置1が充電装置110から離れた場所を初期位置(図中左上の位置)Pとして、走行装置1がこの初期位置Pから充電装置110との充電可能位置C(第2設定位置)まで移動する。この充電可能位置Cに、本実施形態に係る位置決め調整機構120が配置されている。
【0063】
また、位置決め調整機構120のx2負方向側の端部よりさらにx2負方向側の位置に、地点B(第1設定位置)が設定される。地点Bは、例えば位置決め調整機構120のx2負方向側の端部位置から1m程度離れた位置である。さらに、地点Bよりx2負方向側の位置に、地点Aが設定される。地点Aは、例えば位置決め調整機構120のx2負方向側の端部位置から5m程度離れた位置である。つまり、地点A、地点B、及び充電可能位置Cは、x2方向に沿って一直線状に配置される。
【0064】
なお、
図5の例では、走行装置1の初期位置Pは地点Aからy2正方向側の方向に設定されるが、初期位置Pの配置はこれに限られない。初期位置Pは、少なくとも地点Aに走行装置1を誘導可能な位置であればよい。
【0065】
【0066】
ステップS1では、走行装置1の制御装置によって、走行装置1が初期位置Pから地点Aまで移動し、地点Aにてx2正方向側に走行装置1の前面50Aが向くように旋回する。つまり走行装置1は、地点Aにおいて、地点B、充電可能位置Cの方向を前進方向となるように位置決めされる。
【0067】
ステップS2では、走行装置1の制御装置によって、走行装置1は地点Aから地点Bまで移動する。
【0068】
なお、
図5に矢印Aで示す、初期位置Pから地点B(第1設定位置)に達するまでの走行装置1の移動動作、すなわちステップS1、S2の処理は、例えばGPSによる自律移動を行うのが好ましい。この場合、走行装置1の制御装置は、GPS信号を利用して走行装置1の位置を検出して、走行装置1を初期位置Pから地点Aを経由して地点Bまで移動する制御を行う。これにより、初期位置Pを任意の場所にしても最終的に地点B(第1設定位置)まで許容範囲の精度で走行装置1を移動させることが可能となり、初期位置Pの設定の自由度を向上できる。
【0069】
なお、ステップS1、S2の初期位置Pから地点Bまでの移動制御は、少なくとも走行装置1を許容範囲の精度で地点Bまで移動させることができればよく、例えばライダ(LiDAR:light detection and ranging)センサを用いる自己位置検出手法など、GPS信号以外の情報を利用する構成でもよい。「許容範囲の精度」とは、例えば本実施形態に係る位置決め調整機構120によって調整可能な範囲である。
【0070】
なお、
図5の例では、地点Aから地点Bまで距離は4m程度であるが、上記の移動制御によって、この4m程度の地点Aから地点Bまでの移動によって、走行装置1が位置決め調整機構120に進入できるレベルに左右の位置と角度が制御できることが実験的にわかっている。
【0071】
ステップS3では、走行装置1の制御装置によって、走行装置1は地点Bから充電可能位置Cまで移動する。ステップS3の移動制御は、ステップS1,S2とは異なり、GPS信号などを利用せずに走行装置1が自律的に直進する。例えば、ステップS2において走行装置1が地点Bに到達すると、制御装置は充電装置110と無線通信などによって通信可能な状態となるように構成される。この構成により、走行装置1の制御装置は例えば充電装置110から何らかの情報を受信したことをトリガとして、走行装置1が所定の第1設定位置(地点B)に到達したことを認識できる。この認識後に、制御装置は走行装置1を所定距離だけ前進させて、充電可能位置Cに移動させることができる。なお、ステップS3の前進距離は、位置決め調整機構120のx2方向の寸法に依存し、例えば50cm~1m程度である。
【0072】
ステップS3において、走行装置1は充電可能位置Cに到達するまでに、本実施形態に係る位置決め調整機構120による位置と姿勢の調整が行われて、狙いの停止位置に達することになる。なお、ステップS3において地点Bから充電可能位置Cまで直進する際には、走行装置1を低速で移動させるのが好ましい。このときの速度の低下の度合いは、例えば地点Bまでの走行速度より低い速度を設定できる。これにより加減速による前後の揺れを抑制できる。また、このときの速度は等速であるのがさらに好ましい。これにより、加減速による前後の揺れをさらに抑制できる。
【0073】
ここで、
図7~
図11を参照して、ステップS3における位置決め調整機構120による走行装置1の位置と姿勢の調整の仕組みについて説明する。
【0074】
図7は、本実施形態に係る位置決め調整機構120の概略構成を示す斜視図である。
図7に示すように、位置決め調整機構120は、第1ガイド部材121(第1接触部材)と、第2ガイド部材125(第2接触部材)と、第3ガイド部材126(第3接触部材)と、壁部127A、127Bとを備える。
【0075】
第1ガイド部材121は、走行装置1の所定の停止位置(充電可能位置C)への接近中に、一対の履帯式走行体10a、10bの側部、本実施形態では特に履帯11の側部と接触する。第1ガイド部材121は、一対の履帯式走行体10a、10bの側部と当接することにより、走行装置1の左右方向の位置と姿勢の調整を行う。また、本実施形態では、第1ガイド部材121は、一対の履帯式走行体10a、10bのうち本体50の側(内側)の側部と当接可能に配置される。
【0076】
第2ガイド部材125は、走行装置1が停止位置に達した際に、一対の履帯式走行体10a、10bの前部(転輪15aの側)、本実施形態では特に履帯11の前部と接触する
。第2ガイド部材125は、一対の履帯式走行体10a、10bの前部と突き当たることにより、走行装置1の前後方向の位置と姿勢の調整を行う。本実施形態では、第2ガイド部材125は、走行装置1の一対の履帯式走行体10a、10bの配列方向(y2方向)に沿って延在するよう形成される。
【0077】
第1ガイド部材121は、一対の直線部122A、122Bと、一対の傾斜部123A、123Bとを有する。一対の直線部122A、122Bは、第2ガイド部材125の延在方向と直交する方向(x2方向)に沿って平行に延在し、x2正方向側の基端部が第2ガイド部材125と連結する。一対の傾斜部123A、123Bは、一対の直線部122A、122Bのx2負方向側の先端部とそれぞれ連結し、直線部122A、122Bの延在方向に対して所定角度θの方向に延在する。一対の傾斜部123A、123Bは、直線部122A、122Bとの連結部分から離れる程、すなわちx2負方向側に進むほど、両者の幅が狭くなるよう形成される。言い換えると、傾斜部123A、123Bは、直線部122A、122Bの延在方向に対してx2、y2面内で所定角度θ傾斜している、とも表現できる。傾斜部123A、123Bと直線部122A、122Bは互いに傾斜している。また、傾斜部123A、123Bは、本実施形態では略直線状に延在している。
【0078】
また、第1ガイド部材121は、一対の傾斜部123A、123Bの先端部分を連結し、走行装置1の一対の履帯式走行体10a、10bの配列方向(y2方向)に沿って延在する前端部124を有する。
【0079】
すなわち、第1ガイド部材121は、x2負方向側の部分が、一対の傾斜部123A、123Bと前端部124とによって略台形状に形成されている。一対の傾斜部123A、123Bのx2正方向側の基端部におけるy2方向の幅W1が、x2負方向側の先端部における幅W2、すなわち前端部124の長さより大きい。
【0080】
第3ガイド部材126は、走行装置1が停止位置(充電可能位置C)に達した際に、一対の履帯式走行体10a、10bの後部(転輪15bの側)、本実施形態では特に履帯11の後部と当接することにより、走行装置1の前後方向の位置と姿勢の調整を行う。本実施形態では、第3ガイド部材126は、第2ガイド部材125と同様の方向(y2方向)に延在し、かつ、第1ガイド部材121の直線部122A、122Bと傾斜部123A、123Bとの連結部分を通る位置に配置される。
【0081】
一対の壁部127A、127Bは、走行装置1が停止位置(充電可能位置C)にあるときに、一対の履帯式走行体10a、10bの左右方向の外側に配置される。本実施形態では、一対の壁部127A、127Bは、x2正方向側の端部がそれぞれ第2ガイド部材125の両端と連結され、x2負方向側の端部がそれぞれ第3ガイド部材126の両端と連結される。
【0082】
第1ガイド部材121と、第3ガイド部材126の高さは略同一である。これらの高さ寸法は、少なくとも履帯式走行体10の履帯11の厚みより大きく設定されるのが好ましく、例えば30mm程度で形成される。また、一対の壁部127A、127Bの高さ寸法は、第1ガイド部材121及び第3ガイド部材126の高さより大きく、例えば2倍程度に設定され、例えば60mm程度で形成される。
【0083】
第2ガイド部材125は、一対の履帯式走行体10の前部に対して段差形状に形成される。つまり、x2正方向側に高い段125Bがあるように段差形状をとる。なお、
図7の例では段差は2段であるが、3段以上でもよい。第2ガイド部材125の段差形状は、各125A、125B段のx2負方向側の角部が、走行装置1の接近時に履帯式走行体10とほぼ同時に接触するように、
図11などに示す側面視において、履帯式走行体10の前方部分の転輪15aに沿った履帯11の曲線形状と対応するよう配置されるのが好ましい。
【0084】
第2ガイド部材125は、
図7に示す二段形状の場合には、x2負方向側の低段125Aの高さ寸法が第1ガイド部材121及び第3ガイド部材126の高さと略同一であり、x2正方向側の高段125Bの高さ寸法が一対の壁部127A、127Bの高さと略同一であるのが好ましい。
【0085】
これにより、第1ガイド部材121と履帯式走行体10の履帯11の側部とをより確実に接触させることができ、第2ガイド部材125と履帯式走行体10の履帯11の前部とをより確実に接触させることができ、第3ガイド部材126と履帯式走行体10の履帯11の後部とをより確実に接触させることができる。この結果、各ガイド部材121,125、126による履帯式走行体10の位置と姿勢の誘導をより確実にできる。
【0086】
図8は、走行装置1が位置決め調整機構120により位置決めされた状態の斜視図である。
図7,
図8に示すように、位置決め調整機構120では、第1ガイド部材121の直線部122Aと、第2ガイド部材125と、第3ガイド部材126と、壁部127Aとによって、履帯式走行体10aが篏合する略矩形状の凹部128Aが形成される。同様に、第1ガイド部材121の直線部122Bと、第2ガイド部材125と、第3ガイド部材126と、壁部127Bとによって、履帯式走行体10bが篏合する略矩形状の凹部128Bが形成される。
【0087】
図8に示すように、走行装置1が最終的に充電可能位置Cに到達するとき、走行装置1の一対の履帯式走行体10a、10bが、それぞれ位置決め調整機構120の凹部128A、128Bに篏合して位置決めされた状態となる。
【0088】
このとき、走行装置1の履帯11は前側を第2ガイド部材125に突き当てると同時に、後ろ側も第3ガイド部材126に接した状態となる。これにより、走行装置1全体の上下方向の傾きを規制し、角度を安定化させることができる。また、このとき、他のガイド部材より高い一対の壁部127A、127Bが履帯11の外側に配置されることにより、位置決め調整機構120の凹部128A、128Bから走行装置1が飛び出すことを抑制できる。さらに、一対の壁部127A、127Bは、ガイド時に左右方向に傾いた走行装置1を戻す機能も有する。
【0089】
凹部128A、128Bは、走行装置1が充電可能位置Cにあるときに、平面視において走行装置1の履帯式走行体10a、10bの下部の外形が内部に収まるように配置される(
図9の二点鎖線の10a3、10b3参照)。このような凹部128A、128Bを形成するために、第2ガイド部材125の長手方向(y2方向)の長さは、走行装置1の幅方向の寸法より大きく設定される。また、第1ガイド部材121の一対の直線部122A、122Bは、両者のy2方向外側同士の距離W1が走行装置1の本体50の幅方向の寸法より小さくなるように、それぞれの第2ガイド部材125との接続位置が設定される。一対の直線部122A、122Bの長手方向(x2方向)の長さは、走行装置1の履帯式走行体10a、10bの下部の前後方向の長さと同等に設定される。
【0090】
図9は、位置決め調整機構120による調整過程の第1段階を示す平面図である。
図9に示すように、走行装置1が位置決め調整機構120に進入したときに、第1ガイド部材121の先端の台形部分、すなわち一対の傾斜部123A、123Bと前端部124により形成される部分が、走行装置1の履帯式走行体10a、10bの間に入る。このとき、走行装置1の左右方向の位置が充電可能位置Cからy2方向にずれている場合、各走行体10a、10bの下部の内側(本体50側)の側面にこの台形部分が接触し、これにより、履帯式走行体10に横方向に力を与えることで、走行装置1が前進する際に左右方向の位置調整を行うことができる。この構成であれば、走行装置1側に部品を追加することなく履帯式走行体10をガイドすることで左右方向の位置調整が可能となる。
【0091】
例えば
図9に点線で示すように、走行装置1が右側(y2負方向側)にずれている場合には、左側の履帯式走行体10a1が、第1ガイド部材121の左側の傾斜部123Aと接触する。この状態で走行装置1がx2方向に引き続き前進することによって、履帯式走行体10a1が傾斜部123Aを押圧し、傾斜部123Aから反力を受ける。この結果、矢印A1で示すように走行装置1は左前方に移動して、実線で示す履帯式走行体10a、10bのように、左右方向の正しい位置に調整される。その後は、矢印A3で示すように、直線部122A、122Bによって幅方向内側から履帯式走行体がガイドされつつ、x2方向に直進して最終的に
図9に二点鎖線で示すように、各履帯式走行体10a3、10b3が凹部128A、128Bに篏合して停止する。
【0092】
同様に、
図9に一点鎖線で示すように、走行装置1が左側(y2正方向側)にずれている場合には、右側の履帯式走行体10b2が、第1ガイド部材121の右側の傾斜部123Bと接触する。この状態で走行装置1がx2方向に引き続き前進することによって、履帯式走行体10b2が傾斜部123Bを押圧し、傾斜部123Bから反力を受ける。この結果、矢印A2で示すように走行装置1は右前方に移動して、実線で示す履帯式走行体10a、10bのように、左右方向の正しい位置に調整される。その後は、矢印A3で示すように、x2方向に直進して最終的に二点鎖線で示すように、各履帯式走行体10a3、10b3が凹部128A、128Bに篏合して停止する。
【0093】
なお、第1ガイド部材121の台形部分は、最終的に走行装置1が入り込む幅W1を履帯式走行体10の内側の間隔に若干の余裕分(例えば20~30mm程度)を付けて設定するのが好ましい。また、台形部分の先端の幅W2は、進入時の余裕度を高めるためにできるだけ小さいことが望ましい。一方、第1ガイド部材121の傾斜部123A、123Bの長さLは、短いほど機構全体が小型化する。この時の角度θは、W1、W2、Lによって決定されるが、一定以上になるとガイドできなくなる虞がある。今回の実験ではθが16度程度より小さければガイド可能であることを確認しており、この範囲内での運用するのが好ましい。実際の評価時はW1=360mm、W2=160mm、L=300mm、θ=15.7degにてガイドによる調整を行った。この場合であれば(W1-W2)/2=100であるため、狙いの位置から左右が±100mmの範囲であればガイド可能である。つまり、位置決め調整機構120によるガイド可能な範囲を、GPSの誤差の範囲に収めることができる。
【0094】
上記のθの条件を満たした上で、Lは長いほど左右調整の機能が向上する。理想的には傾斜部123A、123Bが三角形状を形成するのが好ましい。ただし、Lが長すぎると第1ガイド部材121の前後方向寸法が増えて、位置決め調整機構120の体格が大型化する。そこで、本実施形態では、調整機能と大型化抑制を両立できるように、第1ガイド部材121の前端に幅W2を持たせる台形状にして、θを担保しつつ小型化を図る。
【0095】
充電タスクでは、充電装置110を屋外に設置することが想定される。この場合、充電装置110と、この充電装置110と接続する際に走行装置1が停止する充電可能位置Cの上方には、雨等が装置内へ浸入することを防ぐために屋根が設けられると考えられる。このため、例えば上述のように第1ガイド部材121の傾斜部123の寸法Lを増やすなど、位置決め調整機構120が大型化すると、充電装置110に設ける屋根も大きくする必要ある。このため、できるだけ位置決め調整機構120を小型化しつつ、ガイド機能も充分に発揮させることが望ましい。本実施形態の位置決め調整機構120の構造では、上述のように第1ガイド部材121の前部を台形状にするので、機構の小型化とガイド機能の担保を両立できる。
【0096】
図10は、位置決め調整機構120による調整過程の第2段階を示す側面図である。
図10では、位置決め調整機構120の一部が断面図で図示されている。
図10に示すように、走行装置1は、第1ガイド部材121によって左右方向の調整が行われた後、履帯式走行体10a、10bが第3ガイド部材126を乗り越えて凹部128A、128Bに進入する。
【0097】
図11は、位置決め調整機構120による調整過程の第3段階を示す側面図である。
図11でも、位置決め調整機構120の一部が断面図で図示されている。
図11に示すように、走行装置1は、等速で前進を続けて、最終的に履帯式走行体10a、10bの前部が第2ガイド部材125の各段125A、125Bの角部に突き当たって、走行装置1が停止し、狙いの位置に停止させることが可能となる。さらに、このとき、履帯式走行体10a、10bの後部が第3ガイド部材126のx2正方向側の角部とも接触した状態となる。この結果、履帯式走行体10a、10bは位置決め調整機構120の凹部128A、128Bにそれぞれ篏合されて、前後方向と左右方向が位置決めされた状態となる。また、第2ガイド部材125と第3ガイド部材126と走行体10の前後とが接触することにより、走行装置1の姿勢も水平方向を向く状態となる。
【0098】
図6に戻り、ステップS4では、充電装置110の端子部114の基部112が走行装置側に伸び、接触端子113A、113Bが走行装置1の接触充電部35の接触面35A、35Bにそれぞれ接触する。すなわち、
図4を参照して説明した状態となる。
【0099】
ステップS5では、充電装置110が充電を実行する。充電装置110は、例えば端子部114の接触端子113A、113Bの両方が接触充電部35の接触面35A、35Bに突き当たって反力を受け、この反力を検知できたときに、接触充電部35との接続が完了したと判断して、充電制御を開始することができる。
【0100】
このように、本実施形態の位置決め調整システム100では、走行装置1の制御装置は、第1に、走行装置1が第1ガイド部材121及び第2ガイド部材125と離間すると共に、第2ガイド部材と対向し、かつ、前記第1ガイド部材に沿って直進可能な方向を向く第1設定位置(地点B)まで走行装置1を移動させる(ステップS1、S2)。第2に、走行装置1の一対の履帯式走行体10a、10bが第2ガイド部材125と当接可能な第2設定位置(充電可能位置C)まで走行装置1を直進移動させる(ステップS3)。これにより、走行装置1を所定の停止位置に位置決めする。また、ステップS1,S2では、制御装置は、GPS信号を利用して走行装置1の位置を検出して、走行装置1を第1設定位置に移動する制御を行う。
【0101】
この構成により、GPSでおおまかな位置まで移動させて(±数十センチから1メートルくらいの精度)、あとは位置決め調整機構120を用いて、直進させるだけで簡易に精度良く位置決めさせることが可能となる。
【0102】
また、本実施形態の位置決め調整機構120は、走行装置1の所定の停止位置(充電可能位置C)への接近中に、一対の走行体10a、10bの側部と当接することにより、走行装置1の左右方向の位置と姿勢の調整を行う第1ガイド部材121と、走行装置1が停止位置に達した際に、一対の走行体10a、10bの前部と突き当たることにより走行装置1の前後方向の位置と姿勢の調整を行う第2ガイド部材125と、を備える。
【0103】
この構成により、走行装置1を位置決め調整機構120に進入させる動作だけで、まず第1ガイド部材121による走行装置1の充電可能位置Cに対する左右方向の位置と姿勢の調整を行い、その次に第2ガイド部材125による前後方向の位置と姿勢の調整を行う。つまり、走行装置1を位置決め調整機構120に進入させる動作だけで、走行装置1の前後方向と左右方向の位置と姿勢の調整を簡易かつ高精度に行うことができる。この結果、本実施形態の位置決め調整機構120は、走行装置1の位置決め精度を向上することができる。
【0104】
また、本実施形態の位置決め調整機構120では、第1ガイド部材121は、一対の走行体10a、10bのうち本体50の側(内側)の側部と当接可能に配置される。この構成により、第1ガイド部材121の幅方向の寸法を短くできるので、位置決め調整機構120をコンパクトにできる。
【0105】
また、本実施形態の位置決め調整機構120では、第2ガイド部材125は、走行装置1の一対の走行体10a、10bの配列方向(y2方向)に沿って延在するよう形成される。第1ガイド部材121は、第2ガイド部材125の延在方向と直交する方向(x2方向)に延在し、基端部が第2ガイド部材125と連結する一対の直線部122A、122Bと、一対の直線部122A、122Bの先端部とそれぞれ連結し、直線部122A、122Bの延在方向に対して所定角度θの方向に延在する一対の傾斜部123A、123Bと、を有する。一対の傾斜部123A、123Bは、直線部122A、122Bとの連結部分から離れる程、両者の幅が狭くなるよう形成される。
【0106】
この構成により、走行装置1が位置決め調整機構120に進入する際に、まず一対の傾斜部123A、123Bに沿って走行装置1を前進させることによって、走行装置1の走行体10a、10bが直線部122A、122Bの位置と合うように左右方向の位置調整を行い、その後、一対の直線部122A、122Bに沿って走行装置1を前進させることによって、走行装置1の左右方向の傾きがないように姿勢調整を行うことができる。これにより、走行装置1の充電可能位置Cに対する左右方向の位置と姿勢の調整をより確実に行うことができる。
【0107】
また、本実施形態の位置決め調整機構120では、第1ガイド部材121は、一対の傾斜部123A、123Bの先端部分を連結し、一対の走行体10a、10bの配列方向(y2方向)に沿って延在する前端部124を有する。この構成により、一対の傾斜部123A、123Bの前後方向の寸法を短縮できるので、位置決め調整機構120をさらに小型化できる。
【0108】
また、本実施形態の位置決め調整機構120は、走行装置1が停止位置(充電可能位置C)に達した際に、一対の走行体10a、10bの後部と当接することにより走行装置1の前後方向の位置と姿勢の調整を行う第3ガイド部材126を備える。この構成により、第2ガイド部材125による走行体10a、10bの前方位置の位置決めに加えて、さらに第3ガイド部材126による走行体10a、10bの後方位置の位置決めも同時に行うことが可能となるので、走行装置1の位置と姿勢をさらに高精度に調整することができる。
【0109】
走行装置1の一対の走行体がクローラ式であると、左右方向の微調整が難しく、また、前後の細かい位置調整も難しい。クローラが障害物を乗り越える機能のため、姿勢が前傾や後傾したりして姿勢も変動しやすい。前傾や後傾の姿勢で充電位置にとまると、充電装置110の端子部114が、走行装置1の接触充電部35の充電可能な範囲に接触できない虞がある。このように、停止位置での走行装置1の姿勢の決め方も重要な要素となる。本実施形態では、第2ガイド部材125により走行体の前方を位置決めし、かつ、第3ガイド部材126により走行体の後方を位置決めする構成であるので、走行装置1の姿勢も水平に決めやすくできる。
【0110】
また、クローラ式の走行装置1の場合、
図2の側面図では下面中央が設置しているが、これは静止時の場合であって、加速時には前端の部分が上がって若干後傾姿勢になるし、減速時や停止時には前方に慣性力がかかって若干前傾姿勢になる。したがって、所定の停止位置に加速して接近したり、走行体の減速によって停止しようとすると、走行装置1が前傾や後傾の状態で静止する虞がある。本実施形態では、ステップS3において地点Bから充電可能位置Cまで直進する際には、走行装置1を等速で移動させ、第2ガイド部材125に突き当たることによって静止させる。これにより、走行装置1が充電可能位置Cに到達したときに、姿勢が前傾したり後傾したりするのを抑制でき、停止時の姿勢を安定化することが可能となり、位置だけでなく姿勢も適切に調整できる。本実施形態の位置決め調整機構で「姿勢を位置決めする」とは、例えば
図2の側面図のような静止時の姿勢となるように調整することを意味する。
【0111】
また、本実施形態の位置決め調整機構120は、走行装置1が停止位置(充電可能位置C)にあるときに、一対の走行体10a、10bの左右方向の外側に配置される壁部127A、127Bを備える。この構成により、走行装置1が停止位置に達する際に、ガイド範囲内から左右方向外側に飛び出すことを抑制できる。
【0112】
このように、本実施形態に係る位置決め調整機構120を用いる位置決め調整システム100によれば、所定の停止位置で、走行装置1を所望の位置、方向、姿勢で簡便に精度良く位置決めすることができる。そして、本実施形態では、位置決めの対象となる走行装置1が一対の履帯式走行体10a、10bを有するクローラ式の走行装置であると、上述のとおり細かな位置調整が難しく、また、加減速による姿勢の変化が大きいため、上記の効果を顕著に発揮でき、特に有効である。
【0113】
<位置決め調整機構の変形例>
図12~
図14を参照して、上記実施形態に係る位置決め調整機構の変形例について説明する。
図12は、位置決め調整機構の第1、第2、第3変形例120A、120B、120Cを示す平面図である。
【0114】
図12(A)に示す第1変形例120Aのように、第1ガイド部材121と第2ガイド部材125のみを有する構成でもよい。すなわち、上記実施形態の構成から、第3ガイド部材126と、一対の壁部127A、127Bとを除外した構成でもよい。
【0115】
図12(B)に示す第2変形例120Bのように、第1ガイド部材121と、第2ガイド部材125と、一対の壁部127A、127Bと、を有する構成でもよい。すなわち、上記実施形態の構成から、第3ガイド部材126を除外した構成でもよい。
【0116】
図12(C)に示す第3変形例120Aのように、第1ガイド部材121と、第2ガイド部材125と、第3ガイド部材126とを有する構成でもよい。すなわち、上記実施形態の構成から、一対の壁部127A、127Bを除外した構成でもよい。
【0117】
図12(A)、(B)、(C)に示す各変形例120A,120B,120Cでも、上記実施形態と同様に、第1ガイド部材121による左右方向の調整と、第2ガイド部材125による前後方向の調整とが可能であるので、上記実施形態の機構120と同様の効果を奏することができる。
【0118】
なお、第1変形例120A、第2変形例120Bのように、第3ガイド部材126を設けない構成の場合、第2ガイド部材125の高さを上記実施形態より大きく形成するのが好ましい。これにより、停止時に履帯式走行体10の後方がガイド部材と接触しない構成であっても、所定の停止位置において、より確実に適切な位置と姿勢で停止させることが可能となる。また、この場合、地点Bから充電可能位置Cまでの移動速度を上記実施形態より小さくすることによっても、適切な位置と姿勢で停止させることが可能である。
【0119】
図13は、位置決め調整機構の第4変形例120Dを示す平面図である。
図13に示す第4変形例120Dのように、第1ガイド部材221が履帯式走行体10の左右方向外側に配置される構成でもよい。
【0120】
この構成では、第1ガイド部材221は、一対の直線部222A、222Bと、一対の傾斜部223A、223Bとを有する。一対の直線部222A、222Bは、それぞれの基端部が第2ガイド部材125の両端と連結する。一対の傾斜部223A、223Bは、一対の直線部222A、222Bの先端部とそれぞれ連結し、直線部222A、222Bとの連結部分から離れる程、すなわちx2負方向側に進むほど、両者の幅が大きくなるよう形成される。
【0121】
図13に示すように、走行装置1が位置決め調整機構120Dに進入したときに、第1ガイド部材221の一対の傾斜部223A、223Bの間に、走行装置1の履帯式走行体10a、10bが入る。このとき、走行装置1の左右方向の位置が充電可能位置Cからy2方向にずれている場合、各走行体10a、10bの下部の外側(本体50と反対側)の側面に傾斜部223A、223Bが接触し、これにより、履帯式走行体10に横方向に力を与えることで、走行装置1が前進する際に左右方向の位置調整を行うことができる。この構成であれば、走行装置1側に部品を追加することなく履帯式走行体10をガイドすることで左右方向の位置調整が可能となる。
【0122】
例えば
図13に点線で示すように、走行装置1が右側(y2負方向側)にずれている場合には、右側の履帯式走行体10b1が、第1ガイド部材221の右側の傾斜部223Bと接触する。この状態で走行装置1がx2方向に引き続き前進することによって、履帯式走行体10b1が傾斜部123Bを押圧し、傾斜部223Bから反力を受ける。この結果、矢印B1で示すように走行装置1は右前方に移動して、実線で示す履帯式走行体10a、10bのように、左右方向の正しい位置に調整される。その後は、矢印B3で示すように、直線部222A、222Bによって幅方向外側から履帯式走行体がガイドされつつ、x2方向に直進して最終的に
図13に二点鎖線で示すように、各履帯式走行体10a3、10b3が第2ガイド部材125に突き当たって停止する。
【0123】
同様に、
図13に一点鎖線で示すように、走行装置1が左側(y2正方向側)にずれている場合には、左側の履帯式走行体10a2が、第1ガイド部材221の左側の傾斜部223Aと接触する。この状態で走行装置1がx2方向に引き続き前進することによって、履帯式走行体10a2が傾斜部223Aを押圧し、傾斜部223Aから反力を受ける。この結果、矢印B2で示すように走行装置1は左前方に移動して、実線で示す履帯式走行体10a、10bのように、左右方向の正しい位置に調整される。その後は、矢印B3で示すように、直線部222A、222Bによって幅方向外側から履帯式走行体がガイドされつつ、x2方向に直進して最終的に
図13に二点鎖線で示すように、各履帯式走行体10a3、10b3が第2ガイド部材125に突き当たって停止する。
【0124】
図13に示す第4変形例120Dでも、上記実施形態と同様に、第1ガイド部材221による左右方向の調整と、第2ガイド部材125による前後方向の調整とが可能であるので、上記実施形態の機構120と同様の効果を奏することができる。さらに、一対の傾斜部223A、223Bの先端部の幅が、一対の直線部222A、222Bの幅、すなわち走行装置1の幅より大きくとれるので、走行装置1が位置決め調整機構120Dに進入する際に、左右方向の位置がGPSの誤差(±100mm程度)より大きくずれていても、一対の傾斜部223A、223Bによる位置調整が可能となり、左右方向の位置調整の有効範囲を上記実施形態よりも広くできる。
【0125】
図14は、位置決め調整機構の第5変形例120Eを示す平面図である。
図14に示す第5変形例120Eのように、第1ガイド部材321の先端部分が、上記実施形態のような台形状ではなく、x2負方向側にさらに延びた三角形状であってもよい。
【0126】
この構成では、第1ガイド部材321は、一対の直線部122A、122Bと、一対の傾斜部323A、323Bとを有する。一対の傾斜部323A、323Bは、一対の直線部122A、122Bの先端部とそれぞれ連結し、直線部122A、122Bとの連結部分から離れる程、すなわちx2負方向側に進むほど、両者の幅が狭くなり、x2負方向側の先端部で連結するよう形成される。すなわち、第1ガイド部材321は、x2負方向側の部分が、一対の傾斜部323A、323Bによって略三角形状に形成されている。
【0127】
なお、一対の傾斜部323A、323Bの直線部122A、122Bの延在方向に対する傾斜角度は、上記実施形態の傾斜部123A、123Bの角度θと同等であるのが好ましい。これにより、上記実施形態と比較して、一対の傾斜部323A、323Bの長さを増え、一対の直線部122A、122Bとの連結部分からx2負方向側の先端部までの長さも増える。このため、走行装置1が位置決め調整機構120Eに進入する際に、左右方向の位置がGPSの誤差(±100mm程度)より大きくずれていても、一対の傾斜部323A、323Bによる位置調整が可能となり、左右方向の位置調整の有効範囲を上記実施形態よりも広くできる。
【0128】
<位置決め調整システムの適用例>
本実施形態に係る位置決め調整システム100は、上記の充電タスク以外にも適用できる。
図15を参照して充電タスク以外の適用例について説明する。
【0129】
図15は、本実施形態に係る位置決め調整システム100の適用例を示す図である。
図15では、対象拠点に二台のロボット1A、1Bが設置された状態を示す。これらのロボット1A,1Bは、上記実施形態の走行装置1に対応する。
【0130】
図15は、例えば、対象拠点として、プラント工場等の敷地面積の広い屋外の拠点の例を示す。
図15に示されている対象拠点には、日常点検または定期点検等の保守管理を必要とする複数の対象物X1、X2、X3、X4が存在する。点検対象物は、例えば、対象拠点がプラント工場である場合、貯蔵タンクの計測メータ、貯蔵タンク等に輸液作業を行うタンカー等である。
【0131】
ロボット1A、1Bは、それぞれ上位システムによって割り当てられた点検タスクを実行するために、対象拠点内を自律走行によって移動し、所定の位置で点検タスクを実行する。なお、ロボット1A、1Bは、対象拠点内をライントレース等の技術または通信端末70からの遠隔操作を用いて移動してもよい。また、対象拠点には、ロボット1A、1Bのバッテリに対する充電を行うための充電ステーションが、拠点位置P0に設けられている。この拠点位置P0の充電ステーションは、上記実施形態の充電装置110と対応する。したがって、ロボット1A、1Bが充電を行うために拠点位置P0に停止する位置に、上記実施形態に係る位置決め調整機構120を設置することができる。
【0132】
図15の例では、ロボット1A、1Bは、対象物X1に対する点検タスクを実行するために、拠点位置A1まで移動し、対象物X1に対する点検タスクを実行する。また、ロボット1A、1Bは、拠点位置A2まで移動し、対象物X2に対する点検タスクを実行する。さらに、ロボット1A、1Bは、拠点位置A3まで移動し、対象物X3に対する点検タスクを実行する。また、ロボット1A、1Bは、位置A4まで移動し、対象物X4に対する点検タスクを実行する。
【0133】
ロボット1A、1Bが点検タスクを行うために拠点位置A1、A2、A3、A4に停止する位置にも、上記実施形態に係る位置決め調整機構120を設置することができる。これにより、各拠点位置A1、A2、A3、A4においてロボット1A、1Bの位置と姿勢を複数回のタスクを実行するたびに一定に保つことが可能となり、定点位置での点検タスクの信頼度を向上できる。
【0134】
ここで、ロボット1A、1Bが各拠点位置で実施する点検タスクとは、例えば、ロボットや対象物X1、X2、X3、X4の周囲の気圧、温度、光度、ガス濃度、臭気などの計測作業や、対象物X1、X2、X3、X4を撮像装置で撮像して動画や静止画などの撮像画像を取得するような撮像作業など、定点位置での定期的な作業であって、位置決め精度が求められるタスクが含まれる。
【0135】
ここで、点検タスクは、ロボット1に実行させるタスクの一例であり、ロボット1に実行させるタスクは、点検作業に限られない。また、ロボット1が設置される対象拠点は、プラント工場に限られず、例えば、事業所、建設現場、変電所またはその他の屋外の施設等であってもよい。例えば、敷地面積の広い拠点における点検作業を作業者が行うとすると、全ての点検作業が終わるまでに時間が掛かったり、複数の作業者で点検作業を分担したりする必要がある。そこで、対象拠点に設置されたロボット1は、従来人手で行われていた作業(タスク)を作業者に変わって行うことで、作業効率を向上させることができる。なお、対象拠点は、屋外に限られず、屋内のオフィス、学校、工場、倉庫、商業施設またはその他の施設等であってもよく、従来人手で行われていた作業をロボット1に担わせたいニーズが存在する拠点であればよい。
【0136】
以上、具体例を参照しつつ本実施形態について説明した。しかし、本開示はこれらの具体例に限定されるものではない。これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本開示の特徴を備えている限り、本開示の範囲に包含される。前述した各具体例が備える各要素およびその配置、条件、形状などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。前述した各具体例が備える各要素は、技術的な矛盾が生じない限り、適宜組み合わせを変えることができる。
【0137】
上記実施形態では、本実施形態の位置決め調整システム100が対象とする走行装置として、クローラ式の走行装置1を例示したが、これ以外でも、AGVなど他のタイプの走行装置やロボットも適用可能である。また、一対の走行体10a、10bのそれぞれに速度差を付けることによって進行方向を変更するタイプの走行装置1の場合、左右の微調整などの位置決めが難しいので本実施形態の位置決め調整システム100の適用が特に効果的であるが、操舵輪タイプの車両などの他のタイプの走行装置にも適用できる。
【0138】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 本体と、前記本体の両側に、走行面と接地して駆動する一対の走行体とを有する走行装置の位置決め調整機構であって、
前記走行装置の所定の停止位置への接近中に、前記一対の走行体の側部と接触する第1接触部材と、
前記走行装置が前記停止位置に達した際に、前記一対の走行体の前部と接触する第2接触部材と、
を備える、
位置決め調整機構。
<2> 前記第1接触部材は、前記一対の走行体のうち前記本体の側の側部と当接可能に配置される、
前記<1>に記載の位置決め調整機構。
<3> 前記第2接触部材は、前記走行装置の前記一対の走行体の配列方向に沿って延在するよう形成され、
前記第1接触部材は、
前記第2接触部材の延在方向と直交する方向に延在し、基端部が前記第2接触部材と連結する一対の直線部と、
前記一対の直線部の先端部とそれぞれ連結し、前記直線部の延在方向に対して所定角度の方向に延在する一対の傾斜部と、を有し、
前記一対の傾斜部は、前記直線部との連結部分から離れる程、両者の幅が狭くなるよう形成される、
前記<2>に記載の位置決め調整機構。
<4> 前記第1接触部材は、前記一対の傾斜部の先端部分を連結し、前記配列方向に沿って延在する前端部を有する、
前記<3>に記載の位置決め調整機構。
<5> 前記走行装置が前記停止位置に達した際に、前記一対の走行体の後部と当接することにより前記走行装置の前後方向の位置と姿勢の調整を行う第3接触部材を備える、
前記<1>~<4>のいずれか一項に記載の位置決め調整機構。
<6> 前記走行装置が前記停止位置にあるときに、前記一対の走行体の左右方向の外側に配置される壁部を備える、
前記<1>~<5>のいずれか一項に記載の位置決め調整機構。
<7> 前記第2接触部材は、前記一対の走行体の前部に対して段差形状に形成される、
前記<1>~<6>のいずれか一項に記載の位置決め調整機構。
<8> 前記走行装置は、前記一対の走行体のそれぞれに速度差を付けることによって進行方向を変更するよう構成される、
前記<1>~<7>のいずれか一項に記載の位置決め調整機構。
<9> 前記一対の走行体が、履帯式走行体である、
前記<8>に記載の位置決め調整機構。
<10>
前記<1>~<9>のいずれか一項に記載の位置決め調整機構と、
前記走行装置の動作を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
第1に、前記走行装置が前記第1接触部材及び前記第2接触部材と離間すると共に、前記第2接触部材と対向し、かつ、前記第1接触部材に沿って直進可能な方向を向く第1設定位置まで前記走行装置を移動させ、
第2に、前記走行装置の前記一対の走行体が前記第2接触部材と当接可能な第2設定位置まで前記走行装置を直進移動させて、
前記走行装置を前記停止位置に位置決めする、
位置決め調整システム。
<11> 前記制御装置は、GPS信号を利用して前記走行装置の位置を検出して、前記走行装置を前記第1設定位置に移動する制御を行う、
前記<10>に記載の位置決め調整システム。
【符号の説明】
【0139】
1 走行装置
50 本体
10、10a、10b 履帯式走行体(走行体)
540 走行制御用モータドライバ(制御装置)
100 位置決め調整システム
110 充電装置
120、120A、120B、120C、120D、120E 位置決め調整機構
121 第1ガイド部材 (第1接触部材)
122A、122B 直線部
123A、123B 傾斜部
124 前端部
125 第2ガイド部材(第2接触部材)
126 第3ガイド部材(第3接触部材)
127A、127B 壁部
B 地点(第1設定位置)
C 充電可能位置(第2設定位置、所定の停止位置)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0140】