(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130342
(43)【公開日】2023-09-20
(54)【発明の名称】シリコン含有複合体、その製造方法、それを利用した炭素複合体、それを含んだ電極、該リチウム電池及び該電子素子
(51)【国際特許分類】
C01B 33/02 20060101AFI20230912BHJP
C01B 32/184 20170101ALI20230912BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20230912BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20230912BHJP
H10N 10/17 20230101ALI20230912BHJP
H10N 10/855 20230101ALI20230912BHJP
H10N 10/857 20230101ALI20230912BHJP
H10N 10/01 20230101ALI20230912BHJP
【FI】
C01B33/02 Z
C01B32/184
H01M4/38 Z
H01M4/36 C
H01M4/36 A
H10N10/17 A
H10N10/855
H10N10/857
H10N10/01
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093540
(22)【出願日】2023-06-06
(62)【分割の表示】P 2018242869の分割
【原出願日】2018-12-26
(31)【優先権主張番号】10-2018-0000905
(32)【優先日】2018-01-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0159039
(32)【優先日】2018-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(74)【代理人】
【識別番号】100210480
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100210170
【弁理士】
【氏名又は名称】光末 竜太
(72)【発明者】
【氏名】孫 寅赫
(72)【発明者】
【氏名】金 美鍾
(72)【発明者】
【氏名】李 柱明
(72)【発明者】
【氏名】林 ▲ミン▼愚
(72)【発明者】
【氏名】崔 正鉉
(72)【発明者】
【氏名】韓 ▲聖▼洙
(57)【要約】 (修正有)
【課題】シリコン含有複合体、その製造方法、それを利用した炭素複合体、電極、リチウム電池及び電子素子を提供する。
【解決手段】多孔性シリコン二次粒子を含む多孔性コア1と、多孔性コアの少なくとも一面上の第2グラフェン10bを含むシェル2とを含むシリコン含有複合体11であり、多孔性シリコン二次粒子は、2以上のシリコン複合体一次粒子10の凝集体を含み、一次粒子は、シリコン、シリコンの少なくとも一面上のシリコンサブオキサイド(SiO
x)(O<x<2)、シリコンサブオキサイドの少なくとも一面上の第1グラフェン10aを含み、シリコンサブオキサイドは、膜、マトリックスのうちの1以上の状態で存在し、第1及び第2グラフェンは、膜、粒子、マトリックスのうちの1以上の状態で存在し、第1及び第2グラフェンのうちの1以上は、窒素、リン、硫黄から選択された1以上の元素を含むシリコン含有複合体である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性シリコン二次粒子を含む多孔性コアと、前記多孔性コアの少なくとも一面上の第2グラフェンを含むシェルと、を含むシリコン含有複合体であり、
前記多孔性シリコン二次粒子は、2以上のシリコン複合体一次粒子の凝集体を含み、
前記シリコン複合体一次粒子は、シリコン、前記シリコンの少なくとも一面上のシリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)、及び前記シリコンサブオキサイドの少なくとも一面上の第1グラフェンを含み、
前記第1グラフェン及び前記第2グラフェンのうちから選択された1以上は、窒素(N)、リン(P)及び硫黄(S)のうちから選択された1以上の元素を含むシリコン含有複合体。
【請求項2】
前記シリコンサブオキサイドは、膜及びマトリックスのうちから選択された1以上の状態で存在し、
前記第1グラフェン及び前記第2グラフェンは、それぞれ膜、粒子、マトリックスのうちから選択された1以上の状態で存在することを特徴とする請求項1に記載のシリコン含有複合体。
【請求項3】
前記第1グラフェンは、シリコンサブオキサイドの表面上に直接に配置され、前記第2グラフェンは、多孔性シリコン二次粒子の表面上に直接に配置されたことを特徴とする請求項1または2に記載のシリコン含有複合体。
【請求項4】
前記シリコン含有複合体に対するXPS(X-ray photoelectron spectroscopy)分析で求められる10nm以下の表面深において、窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上の含量は、0.2原子%以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体。
【請求項5】
前記シリコン含有複合体のXPS(X-ray photoelectron spectroscopy)分析によって求められるシリコン(Si)対炭素(C)の元素比(C/Si)は、100ないし200であり、
前記シリコン含有複合体のXPS分析によって求められるシリコン(Si)に対する炭素(C)の元素比(C/Si)は、窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上を含んでいないシリコン含有複合体のC/Si対比で上昇したことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体。
【請求項6】
前記シリコン含有複合体のラマン分析スペクトルによって求められるGピークに対するDピークの強度比(Id/Ig)は、0.8ないし1.5であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体。
【請求項7】
前記シリコン含有複合体の熱重量分析で求められる20%重量損失温度が、窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上の元素を含んでいないシリコン含有複合体に対する20%重量損失温度を基準にして、7ないし15℃より高いことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体。
【請求項8】
前記コア内の第1グラフェンは、シェルの第2グラフェンと比較し、層数が異なるか、あるいは同一であり、該シェルの第2グラフェンがコアの第1グラフェンに比べて密度が高いことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体。
【請求項9】
前記シリコン含有複合体は、二重コア/シェル構造を有することを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体。
【請求項10】
前記シリコン含有複合体は、前記多孔性コアに比べ、密度が高い外郭層をさらに含むことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体。
【請求項11】
前記第1グラフェン及び前記第2グラフェンの総含量は、シリコン100重量部を基準にして、0.1ないし2,000重量部であることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体。
【請求項12】
前記シリコン複合体一次粒子において、第1グラフェンは、シリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)から10nm以下の距離ほど延長され、1ないし30層のグラフェン層を含み、前記第1グラフェンの総厚は、0.3ないし1,000nmであり、
前記第1グラフェンは、前記シリコンの主軸に対して、0ないし90゜の角に配向されることを特徴とする請求項1に記載のシリコン含有複合体。
【請求項13】
前記多孔性シリコン二次粒子において、第2グラフェンは、シリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)から1,000nm以下の距離ほど延長され、1ないし30層のグラフェン層を含み、前記グラフェンの総厚は、0.6ないし50nmであり、
前記グラフェンは、前記シリコンの主軸に対して、0ないし90゜の角に配向されることを特徴とする請求項1に記載のシリコン含有複合体。
【請求項14】
前記シリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)厚は、30μm以下であることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体。
【請求項15】
前記シリコンは、スフィア、ナノワイヤ、針状、ロッド状、粒子、ナノチューブ、ナノロッド、ウェーハ及びナノリボンのうちから選択された1以上であることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体。
【請求項16】
前記多孔性シリコン二次粒子の平均粒径は、1ないし30μmであり、比表面積は、0.1ないし100m2/gであり、密度は、0.1ないし2.57g/ccであることを特徴とする請求項1から15のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体。
【請求項17】
前記シリコンは、平均粒径が10nmないし30μmである粒子であることを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体。
【請求項18】
前記シリコン含有複合体において、酸素含量が、シリコン含有複合体において、酸素、炭素及びシリコン原子の総含量を基準にして、0.01ないし15原子%であることを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体。
【請求項19】
前記シリコン含有複合体の少なくとも一面上に非晶質炭素を含む炭素コーティング膜を含む炭素コーティング膜を含むことを特徴とする請求項1から18のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体。
【請求項20】
前記炭素コーティング膜が、窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上の元素を含むことを特徴とする請求項19に記載のシリコン含有複合体。
【請求項21】
前記炭素コーティング膜は、結晶質炭素をさらに含むことを特徴とする請求項19または20に記載のシリコン含有複合体。
【請求項22】
前記結晶質炭素は、フラーレン、天然黒鉛及び人造黒鉛、グラフェン及びカーボンナノチューブからなる群から選択された1以上であり、
非晶質炭素は、ピッチカーボン、ソフトカーボン、ハードカーボン、メゾ相ピッチ炭化物、焼成されたコークス及び炭素ファイバからなる群から選択された1以上であることを特徴とする請求項21に記載のシリコン含有複合体。
【請求項23】
前記炭素コーティング膜は、非多孔性連続的なコーティング膜であり、炭素コーティング膜厚は、1ないし5,000nmであることを特徴とする請求項19から22のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体。
【請求項24】
シリコン、及び前記シリコン上に形成されたシリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)を含む構造体、分散剤及び溶媒を含む組成物から多孔性シリコン二次粒子を得る段階と、
前記多孔性シリコン二次粒子に炭素供給源を供給し、熱処理を行う段階と、を含み、
i)窒素前駆体、リン前駆体及び硫黄前駆体のうちから選択された一つ以上を、前記炭素供給源の供給時、同時に供給するか、あるいは
ii)シリコン含有複合体を窒素前駆体、リン前駆体及び硫黄前駆体のうちから選択された1以上と反応し、請求項1ないし23のうちいずれか1項に記載のシリコン含有複合体を製造するシリコン含有複合体の製造方法。
【請求項25】
前記溶媒は、アルコール系溶媒であり、前記組成物から多孔性シリコン二次粒子を得る段階は、組成物を噴霧乾燥させて実施されることを特徴とする請求項24に記載のシリコン含有複合体の製造方法。
【請求項26】
前記分散剤は、ステアリン酸、レゾシノール、ポリビニルアルコール及びカーボンピッチのうちから選択された1以上であることを特徴とする請求項24または25に記載のシリコン含有複合体の製造方法。
【請求項27】
前記窒素前駆体がアンモニアであることを特徴とする請求項24から26のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体の製造方法。
【請求項28】
前記炭素供給源が下記化学式1で表示される化合物、下記化学式2で表示される化合物、及び下記化学式3で表示される酸素含有化合物からなる群から選択された1以上を含むことを特徴とする請求項24から27のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体の製造方法:
(化学式1)
CnH(2n+2-a)[OH]a
前記化学式1で、nは、1ないし20の整数であり、aは0または1であり、
(化学式2)
CnH(2n)
前記化学式2で、nは、2ないし6の整数であり、
(化学式3)
CxHyOz
前記化学式3で、xは、1ないし20の整数であり、yは、0、または1ないし20の整数であり、zは、1または2である。
【請求項29】
前記炭素供給源が、下記化学式3aで表示される第1酸素含有化合物をさらに含み、下記化学式3aで表示される第1酸素含有化合物は、前記化学式3で表示される酸素含有化合物と異なることを特徴とする請求項28に記載のシリコン含有複合体の製造方法:
(化学式3a)
CxHyOz
前記化学式3aで、xは、0、または1ないし20の整数であり、yは、0、または1ないし20の整数であり、zは、1または2である。
【請求項30】
前記炭素供給源が、メタン、エチレン、プロピレン、アセチレン、メタノール、エタノール及びプロパノールからなる群から選択された1以上を含むことを特徴とする請求項24から29のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体の製造方法。
【請求項31】
前記窒素前駆体、硫黄前駆体及びリン前駆体のうちから選択された1以上の含量は、炭素供給源ガス、窒素前駆体、硫黄前駆体及びリン前駆体のうちから選択された1以上の総体積を基準にして、20体積%以下であることを特徴とする請求項24から30のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体の製造方法。
【請求項32】
前記熱処理が、750ないし1,100℃で実施されることを特徴とする請求項24から31のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体の製造方法。
【請求項33】
前記シリコン含有複合体、炭素物質及び溶媒を含む組成物を乾式混合する段階をさらに含み、炭素コーティング膜が形成されたシリコン含有複合体を得ることを特徴とする請求項24から32のいずれか一項に記載のシリコン含有複合体の製造方法。
【請求項34】
前記前記シリコン含有複合体、炭素物質及び溶媒を含む組成物を乾式混合する段階において、窒素前駆体、硫黄前駆体及びリン前駆体のうちから選択された1以上をさらに含むか、あるいは
炭素コーティング膜が形成されたシリコン含有複合体を、窒素前駆体、硫黄前駆体及びリン前駆体のうちから選択された1以上と反応させることを特徴とする請求項33に記載のシリコン含有複合体の製造方法。
【請求項35】
請求項1ないし23のうちいずれか1項に記載のシリコン含有複合体と、炭素系材料とを含む炭素複合体。
【請求項36】
前記炭素系材料の含量は、炭素複合体100重量部を基準にして、0.001ないし99重量部であることを特徴とする請求項35に記載の炭素複合体。
【請求項37】
請求項1ないし23のうちいずれか1項に記載のシリコン含有複合体、または前記シリコン含有複合体と、炭素系材料を含む炭素複合体とを含む電極。
【請求項38】
前記炭素系材料が、グラフェン、黒鉛、フラーレン、炭素ファイバ及びカーボンナノチューブからなる群から選択された1以上であり、前記炭素系材料の含量は、炭素複合体100重量部を基準にして、0.001ないし99.999重量部であることを特徴とする請求項37に記載の電極。
【請求項39】
請求項37に記載の電極を含むリチウム電池。
【請求項40】
請求項1ないし23のうちいずれか1項に記載のシリコン含有複合体、または前記シリコン含有複合体と、炭素系材料を含む炭素複合体とを含む素子。
【請求項41】
前記素子が、電界放出素子、バイオセンサ、半導体素子または熱電素子であることを特徴とする請求項40に記載の素子。
【請求項42】
多孔性シリコン二次粒子を含むコアと、前記コアの上部に配置された第2グラフェンを含むシェルと、を含むシリコン含有複合体であり、
前記多孔性シリコン二次粒子は、2以上のシリコン複合体一次粒子の凝集体を含み、
前記シリコン複合体一次粒子は、i)SiOx(0<x<2)、及びii)SiOx(0<x<2)の熱処理生成物のうちから選択された1以上の酸化シリコンと、前記酸化シリコン上部に配置された第1グラフェンとを含み、前記第1グラフェン及び前記第2グラフェンのうちから選択された1以上は、それぞれ窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上を含むシリコン含有複合体。
【請求項43】
前記SiOx(0<x<2)の熱処理生成物は、i)炭素供給源ガス、あるいはii)炭素供給源ガスと還元性ガスとを含むガス混合物雰囲気において、SiOx(0<x<2)を熱処理して得た生成物であることを特徴とする請求項42に記載のシリコン含有複合体。
【請求項44】
前記SiOx(0<x<2)の熱処理生成物は、シリコンサブオキサイド(SiOy)(0<y≦2)マトリックスに、シリコン(Si)が配置された構造体であることを特徴とする請求項42または43に記載のシリコン含有複合体。
【請求項45】
前記SiOx(0<x<2)の熱処理生成物は、i)シリコン酸化物(SiO2)マトリックスに、シリコン(Si)が配置された構造体、ii)SiO2とSiOy(0<y<2)とを含んだマトリックスに、シリコン(Si)が配置された構造体、あるいはiii)SiOy(0<y<2)マトリックスに、シリコン(Si)が配置された構造体であることを特徴とする請求項42に記載のシリコン含有複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン含有複合体、その製造方法、それを利用した炭素複合体、それを含んだ電極、該リチウム電池及び該電子素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン電池用負極活物質のうちシリコンは、理論容量が4,200mAh/gと非常に高く、価格も低価格であり、負極素材として活用する研究が活発に進められている。ところで、シリコンは、放電時、Li4.4Si合金が生成されながら、体積膨脹を伴い、電極内で電気的に孤立する活物質を発生させ、活物質の比表面積増大による電解質分解反応を促進するというような問題点を抱いている。それを克服するために、シリコンの体積膨脹を低減させ、体積膨脹時、粉砕現象が小さい構造を開発したり、シリコン表面に炭素などからなるコーティング層を形成したりする方法が提案された。
【0003】
ところで、これまで開発されたシリコン材料を利用した場合、体積膨脹低減効果、及び電池の充放電効率が、満足すべきレベルに逹することができなかったのである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、シリコン含有複合体及びその製造方法を提供することである。
本発明が解決しようとする課題は、また、前述のシリコン含有複合体と、炭素系材料を含む炭素複合体とを提供することである。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、また、前述のシリコン含有複合体または前記炭素複合体を含む電極を提供することである。
本発明が解決しようとする課題は、また、前記シリコン含有複合体、または前記シリコン含有複合体と、炭素系材料を含む炭素複合体とを含む電極を含むリチウム電池を提供することである。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、また、前記シリコン含有複合体、または前記シリコン含有複合体と、炭素系材料を含む炭素複合体とを含む電界放出素子を提供することである。
本発明が解決しようとする課題は、また、前記シリコン含有複合体、または前記シリコン含有複合体と、炭素系材料を含む炭素複合体とを含むバイオセンサを提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、前記シリコン含有複合体、または前記シリコン含有複合体と、炭素系材料を含む炭素複合体とを含む半導体素子を提供することである。
本発明が解決しようとする課題は、また、前記シリコン含有複合体、または前記シリコン含有複合体と、炭素系材料を含む炭素複合体とを含む熱電素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面により、
多孔性シリコン二次粒子を含む多孔性コアと、前記多孔性コアの少なくとも一面上の第2グラフェンを含むシェルと、を含むシリコン含有複合体であり、
前記多孔性シリコン二次粒子は、2以上のシリコン複合体一次粒子の凝集体を含み、
前記シリコン複合体一次粒子は、シリコン、前記シリコンの少なくとも一面上のシリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)、及び前記シリコンサブオキサイドの少なくとも一面上の第1グラフェンを含み、
前記第1グラフェン及び前記第2グラフェンのうちから選択された1以上は、窒素(N)、リン(P)及び硫黄(S)のうちから選択された1以上の元素を含むシリコン含有複合体が提供される。
【0009】
前記シリコンサブオキサイドは、膜(film)及びマトリックスのうちから選択された1以上の状態で存在し、
前記第1グラフェン及び前記第2グラフェンは、それぞれ膜、粒子、マトリックスのうちから選択された1以上の状態で存在する。
【0010】
他の一側面により、シリコン、及びシリコン上に形成されたシリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)を含む構造体、分散剤、並びに溶媒を含む組成物から多孔性シリコン二次粒子を得る段階と、
前記多孔性シリコン二次粒子に炭素供給源ガスを供給し、熱処理を行う段階と、を含むシリコン含有複合体の製造方法が提供される。
【0011】
さらに他の側面により、
前述のシリコン含有複合体と、炭素系材料を含む炭素複合体とが提供される。
さらに他の側面により、前述のシリコン含有複合体と、炭素系材料を含む炭素複合体とを含む電極が提供される。
【0012】
さらに他の側面により、前述の電極を含むリチウム電池が提供される。
さらに他の側面は、前記シリコン含有複合体と、炭素系材料を含む炭素複合体とを含む電子素子を提供することである。
前記電子素子は、電界放出素子、バイオセンサ、半導体素子または熱電素子である。
【0013】
さらに他の側面により、多孔性シリコン二次粒子を含むコアと、前記コアの上部に配置された第2グラフェンを含むシェルと、を含むシリコン含有複合体であり、前記多孔性シリコン二次粒子は、2以上のシリコン複合体一次粒子の凝集体を含み、前記シリコン複合体一次粒子は、シリコンサブオキサイドSiOx(0<x<2)と、前記シリコンサブオキサイドに配置された第1グラフェンとを含み、前記第1グラフェン及び前記第2グラフェンのうちから選択された1以上は、それぞれ窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上を含むシリコン含有複合体が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるシリコン含有複合体を利用すれば、シリコン粒子間ネットワーク形成により、充放電時、極板膨脹を低減させることができ、初期効率及び体積エネルギー密度が改善されるだけではなく、伝導度、及び高耐久性シリコン保護層形成による充放電耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】一具現例によるシリコン含有複合体の構造を概略的に示した図面である。
【
図1B】一具現例によるシリコン含有複合体の構造を概略的に示した図面である。
【
図1C】一具現例によるシリコン含有複合体において、シリコンサブオキサイドが表面に形成されたシリコン上に、グラフェンが積層される形態について説明するための図面である。
【
図2】一具現例によるシリコン含有複合体において、窒素のドーピングについて説明するための図面である。
【
図3】一具現例によるシリコン含有複合体の製造方法について説明するための図面である。
【
図4】製造例1のシリコン含有複合体に係わるラマン分析結果を示したグラフである。
【
図5】それぞれ製造例1及び参照製造例1のシリコン含有複合体に対する熱重量分析結果を示したグラフである。
【
図6】製造例1のシリコン含有複合体に対するX線光電子分光分析結果を示したグラフである。
【
図7】製造例1のシリコン含有複合体に対するX線光電子分光分析結果を示したグラフである。
【
図8】製造例1のシリコン含有複合体に対するX線光電子分光分析結果を示したグラフである。
【
図9A】製造例1によって製造されたシリコン含有複合体の電子走査顕微鏡写真である。
【
図9B】製造例1によって製造されたシリコン含有複合体の電子走査顕微鏡写真である。
【
図10A】参照例1によって製造されたシリコン含有複合体の電子走査顕微鏡写真である。
【
図10B】参照例1によって製造されたシリコン含有複合体の電子走査顕微鏡写真である。
【
図11A】製造例1によって製造されたシリコン含有複合体の透過電子顕微鏡写真である。
【
図11B】製造例1によって製造されたシリコン含有複合体の透過電子顕微鏡写真である。
【
図12A】一具現例によるリチウム電池の模式図を示した図面である。
【
図12B】一具現例による熱電モジュールの概略図を示す図面である。
【
図12D】ゼーベック効果による熱電発電を示す概略図である。
【
図12E】一具現例によるバイオセンサの電極の構造を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付された図面を参照しながら、以下、例示的な、1以上のシリコン含有複合体、それを含む電極活物質を含む電極、それを含むリチウム電池、前記複合体を利用した電界放出素子、バイオセンサ、半導体素子についてさらに説明する。
【0017】
多孔性シリコン二次粒子を含む多孔性コアと、前記多孔性コアの少なくとも一面上の第2グラフェンを含むシェルと、を含むシリコン含有複合体であり、
前記多孔性シリコン二次粒子は、2以上のシリコン複合体一次粒子の凝集体を含み、
前記シリコン複合体一次粒子は、シリコン、前記シリコンの少なくとも一面上のシリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)、及び前記シリコンサブオキサイドの少なくとも一面上の第1グラフェンを含み、前記第1グラフェン及び前記第2グラフェンのうちから選択された1以上は、窒素(N)、リン(P)及び硫黄(S)のうちから選択された1以上の元素を含むシリコン含有複合体が提供される。
【0018】
シリコン含有複合体は、多孔性でもある。
シリコンサブオキサイドは、膜(film)及びマトリックスのうちから選択された1以上の状態で存在し、第1グラフェン及び第2グラフェンは、それぞれ膜、粒子、マトリックスのうちから選択された1以上の状態で存在する。
用語「マトリックス」は、三次元的空間を示し、用語「膜(membrane)」は、マトリックスと比較して二次元的空間を示す。
【0019】
第2グラフェンは、多孔性シリコン二次粒子のシリコンサブオキサイド上部にも直成長される。
第1グラフェンは、シリコンサブオキサイドの表面から直成長されたものであり、第2グラフェンは、多孔性シリコン二次粒子の表面から直成長されたものである。
【0020】
本明細書において、用語「マトリックス」は、「膜」が二次元的な空間を示すのに比べ、三次元的な空間を示すことができる。他の一具現例によれば、マトリックスは、構成成分が均一な組成を示すのに比べ、膜は、組成勾配を有する場合を示すことができる。
【0021】
本明細書において、用語「クラスタ」は、少なくとも1以上の一次粒子の凝集体をいい、実質的に、「二次粒子」と同一意味にも解釈される。
【0022】
本明細書において、用語「グラフェン」は、フレーク、ナノシート、膜(または、フィルム)のような構造を有することができる。ここで、ナノシートは、シリコンサブオキサイド上に、不規則的な状態に形成された場合を示しながら、膜は、シリコンサブオキサイド上部に、連続的に均一に形成されたフィルム形態をいう。このように、グラフェンは、複数の層を有することもでき、層区分のない構造を有することもできる。
【0023】
本明細書において、用語「シリコンサブオキサイド」は、SiOx(O<x<2)で現われる単一組成を有することができる。または、シリコンサブオキサイドは、例えば、Si、SiO2のうちから選択された1以上を含み、平均組成がSiOx(O<x<2)で示される場合を指すことができる。
【0024】
一具現例の、1つのシリコン含有複合体において、コアのサイズは、3ないし10μmであり、シェル厚は、10ないし5,000nm、例えば、10ないし1,000nmでもある。ここで、該サイズは、直径または長軸長を意味する。
【0025】
図1Aは、一具現例によるシリコン含有複合体を示したものである。
それを参照すれば、シリコン含有複合体11は、多孔性シリコン二次粒子を含むコア1と、コア1の上部に配置された第2グラフェン10bを含むシェル2と、を含む。
【0026】
多孔性シリコン二次粒子は、2以上のシリコン複合体一次粒子10の凝集体を含み、シリコン複合体一次粒子は、シリコン、シリコン上に配置されたシリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)、及びシリコンサブオキサイド上に配置された第1グラフェン10aを含む。シリコン複合体一次粒子において、第1グラフェンが、シリコンサブオキサイド表面にシェルを形成し、シリコン複合体二次粒子において、第2グラフェンがコア上部にシェルを形成し、シリコン含有複合体は、二重コア/シェル構造を有する。そのような二重コア/シェル構造を有することになれば、体積膨脹が抑制され、電解質との副反応が低減される。
【0027】
コア1の第1グラフェン10aは、シェル2の第2グラフェン10bと比較し、層数は、同一であっても異なっていてもよい。
【0028】
一具現例によれば、シェル2の第2グラフェン10bは、コア1内の第1グラフェン10aに比べ、密度が高い。一具現例によれば、コア1内での第1グラフェン10a層数は、1ないし30層、例えば、5ないし15層、具体的には、10層、前記シェル2での第2グラフェン10bの層数は、1ないし50層、例えば、20ないし30層である。
【0029】
第1グラフェン10a及び第2グラフェン10bには、窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上がドーピングされてもよい。
【0030】
シリコン含有複合体に対するXPS(X-ray photoelectron spectroscopy)分析で求められる10nm以下の表面深(surface depth)において、窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上の含量は、0.2原子%以下、例えば、0.05ないし0.2原子%である。表面深は、例えば、1ないし10nm、例えば、5ないし10nmである。
【0031】
窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上の含量は、2,000ppm以下、例えば、50ないし2,000ppm、例えば、500ないし2,000ppmである。
【0032】
図1Bは、他の一具現例によるシリコン含有複合体を示したものである。
図1Bのシリコン含有複合体は、
図1Aのシリコン含有複合体の表面に、炭素コーティング膜12がさらに配置された構造を有する。炭素コーティング膜12は、非晶質炭素、結晶質炭素、またはその組み合わせ物を含んでもよい。そして、炭素コーティング膜12は、第1グラフェン及び第2グラフェンと同様に、窒素、硫黄及びリンのうちから選択された1以上を含んでもよい。
【0033】
さらに他の一具現例によるシリコン含有複合体において、窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上が、第1グラフェン及び第2グラフェンには含まれていないものの、炭素コーティング膜12にのみ含まれる場合も可能である。
【0034】
図2を参照し、シリコン含有複合体に窒素が含まれた場合の作用効果についてさらに詳細に説明する。
【0035】
グラフェンは、製造過程において、一部欠陥が生成され、それにより、伝導性が落ちる。そのようなグラフェンを利用し、電極素材として利用すれば、SEI(solid electrolyte interface)層がさらに容易に形成される。
図2に図示されているように、窒素が含まれた場合、グラフェンの欠陥領域に窒素が導入されれば、グラフェンの安定性及び品質などがさらに改善される。窒素は、ピリジン型窒素(pyridinic N)、四級窒素、ピロール型窒素(pyrrolic N)の位置に導入され、グラフェンの品質をさらに向上させる効果を得ることができる。
【0036】
また、グラフェンの欠陥サイトに窒素が導入されれば、そのような構造体を電極素材として利用する場合、SEI層の形成が効果的に抑制される。
一具現例によれば、コアに比べて密度が高い外郭層が存在する。そのような外郭層厚は、制限されるものではないが、例えば、20ないし60nmでもある。
【0037】
シリコン含有複合体のラマン分析スペクトルによって求められるGピークに対するDピークの強度比(Id/Ig)は、0.8ないし1.5、例えば、1ないし1.4、例えば、1.1ないし1.3、例えば、約1.2である。
【0038】
シリコン含有複合体の熱重量分析で求められる20%重量損失温度が、窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上の元素を含んでいないシリコン含有複合体に対する20%重量損失温度を基準にして、7ないし15℃より高い。
【0039】
シリコン含有複合体が窒素を含む場合、20%重量損失温度は、例えば、710ないし730℃である。
コア及びシェルは、グラファイトをさらに含んでもよい。
【0040】
多孔性シリコン二次粒子とシリコン含有複合体との直径比は、1:1ないし1:30、例えば、1:1ないし1:25、具体的には、1:21である。多孔性シリコン二次粒子と、シリコン含有複合体クラスタの直径比は、多孔性シリコン二次粒子及びシリコン含有複合体がいずれも球形形状を有するときのサイズ比を示す。もし多孔性シリコン二次粒子及びシリコン含有複合体が非球形である場合には、長軸長の比でもある。
【0041】
他の一具現例によれば、シリコン含有複合体において、コア径は、3ないし10μmであり、シェル厚は、10ないし5,000nm(0.01ないし5μm)、例えば、10ないし1,000nmである。シリコン含有複合体を含むコア径とシェル(炭素コーティング膜)厚は、1:0.001ないし1:1.67、例えば、1:001、1:1.67、1:0.0033、または1:0.5である。
【0042】
シリコン含有複合体において、第1グラフェンと第2グラフェンとの総含量は、シリコン100重量部を基準にして、0.1ないし2,000重量部、例えば、0.1ないし300重量部、例えば、0.1ないし90重量部、具体的には、5ないし30重量部でもある。第1グラフェンと第2グラフェンとの総含量が前記範囲であるとき、シリコン含有複合体のシリコン体積抑制効果にすぐれ、伝導度特性にもすぐれる。
【0043】
複合体一次粒子において、第1グラフェンは、シリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)のシリコンから、10nm以下の距離、例えば、1nm以下、例えば、0.00001ないし1nmほど延長され、少なくとも1ないし30層のグラフェン層を含み、第1グラフェンの総厚は、0.3ないし1,000nm、例えば、0.3ないし50nm、例えば、0.6ないし50nm、例えば、1ないし30nmであり、第1グラフェンは、シリコンの主軸に対して、0ないし90゜の角に配向される。本明細書において、主軸は、Y軸を意味する。
【0044】
第1グラフェン及び第2グラフェンは、
図1Cに図示されているように、シリコンサブオキサイド(SiO
x)(0<x<2)膜表面に形成された板状及び針状のシリコン粒子10の主軸(Y軸)を基準にして、90゜角に配向されてもよい。
【0045】
シリコン含有複合体において、第2グラフェンは、多孔性シリコン二次粒子のシリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)のシリコンから、1,000nm以下の距離、例えば、500nm以下の距離、例えば、10nm以下の距離、例えば、5nm以下、1nm以下、例えば、0.00001ないし1nmほど延長され、少なくとも1ないし30層のグラフェン層を含み、第2グラフェンの総厚は、0.6ないし50nm、例えば、1ないし50nmであり、第2グラフェンは、シリコンの主軸に対して、0ないし90゜の角に配向される。
【0046】
シリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)厚は、30μm以下、例えば、10nmである。
シリコンは、形状が制限されるものではなく、例えば、スフィア(sphere)、ナノワイヤ、針状、ロッド状のうちから選択された1以上である。そして、シリコンの平均粒径は、10nmないし30μmであり、例えば、100nmである。
【0047】
多孔性シリコン二次粒子の平均粒径(D50)は、200nmないし50μm、例えば、1ないし30μm、例えば、1ないし10μm、具体的には、3ないし5μmである。そして、多孔性シリコン二次粒子の比表面積は、0.1ないし100m2/g、例えば、1ないし30m2/gである。そして、多孔性シリコン二次粒子の密度は、0.1ないし2.8g/cc、例えば、0.5ないし2g/ccである。
【0048】
シリコン含有複合体の構造体表面には、非晶質炭素を含む炭素コーティング膜がさらに含まれてもよい。そのように、炭素コーティング膜がさらに形成されれば、初期効率は低下するが、寿命特性が改善されたリチウム電池を製造することができる。
【0049】
炭素コーティング膜には、第1グラフェン及び第2グラフェンと同様に、窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上がさらに含まれてもよい。炭素コーティング膜に、窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上を含む方法は、多様に適用可能である。
【0050】
炭素コーティング膜厚は、例えば、10ないし5,000nmである。非晶質炭素は、例えば、ピッチカーボン、ソフトカーボン、ハードカーボン、メゾ相ピッチ炭化物、焼成されたコークス、及び炭素ファイバからなる群から選択された1以上である。
【0051】
非晶質炭素を含む炭素コーティング膜は、結晶質炭素をさらに含んでもよい。結晶質炭素は、フラーレン、天然黒鉛及び人造黒鉛、グラフェン及びカーボンナノチューブからなる群から選択された1以上である。
【0052】
炭素コーティング膜は、非多孔性連続的なコーティング膜であり、炭素コーティング膜厚は、1ないし5,000nmである。炭素コーティング膜は、例えば、非晶質炭素を含む第1炭素コーティング膜、及び結晶質炭素を含む第2炭素コーティング膜を含んでもよい。
【0053】
シリコン含有複合体の粒度分布特性が狭い。例えば、多孔性シリコンクラスタのD50は、1ないし30μmであり、D10は、0.001ないし10μmであり、D90は、10ないし30μmである。該多孔性シリコンクラスタは、二次粒子で見ることができる。
【0054】
そのように、一具現例によるシリコン含有複合体は、粒度分布が狭い。それに比べ、従来のシリコン複合体一次粒子から得られたシリコン複合体二次粒子は、二次粒子のサイズ分布が不規則であり、最適のセル性能を示す負極活物質の粒子サイズとして制御し難い。シリコン含有複合体において、酸素含量は、0.01ないし15原子%、例えば、3.5ないし5原子%、具体的には、3.5ないし3.8原子%である。そのように、酸素含量が従来のシリコン系物質に比べて少ない理由は、シリコン含有複合体の製造時、ステアリン酸のような分散剤を利用することにより、シリコンの酸化が抑制されたからである。そのような酸素含量が最小化されることにより、シリコン容量が極大化され、初期効率が改善される。
【0055】
従来のグラフェン直成長シリコン一次粒子、及びそれを利用した場合の充放電後の負極の状態について述べれば、次の通りである。グラフェン直成長シリコン一次粒子は、針状シリコン粒子上部に、第1グラフェンが配置された構造を有する。それをグラファイトと混合し、混合物になった負極活物質層を、銅集電体上部に形成し、負極が製造される。
【0056】
負極は、充放電後、シリコンの体積膨脹及び収縮により、活物質であるグラフェン直成長シリコン一次粒子の脱離が起こり、シリコン孤立により、容量が低下する。そして、シリコン一次粒子の表面に、不安定なSEI層が連続的に成長し、それにより、リチウム消耗が大きく、充放電耐久性が低下してしまう。
【0057】
本発明者は、多くの研究の末、前述の問題点を解決するために、二重コア/シェル構造を有するシリコン含有複合体を利用し、均一な充放電ネックワークを形成することにより、充放電時、シリコン体積の膨脹及び収縮による破砕現象を減らすことができ、シリコン含有複合体表面に、安定したSEIが形成されることにより、充放電時、耐久性が改善された負極を製造することができる。
【0058】
また、シリコンとして100nm以上、例えば、150nm以上、例えば、100ないし200nmのサイズを有するシリコンを利用し、1つの製造工程において、シリコン/シリコンサブオキサイド上部に窒素が含まれたグラフェンを含んだシリコン含有複合体を製造することができる。
【0059】
一具現例によるシリコン含有複合体は、容量が600ないし2,000mAh/ccであり、非常に優秀な容量特性を有する。
【0060】
さらに他の側面により、多孔性シリコン二次粒子を含むコアと、前記コアの上部に配置された第2グラフェンを含むシェルと、を含むシリコン含有複合体であり、前記多孔性シリコン二次粒子は、2以上のシリコン複合体一次粒子の凝集体を含み、前記シリコン複合体一次粒子は、i)SiOx(0<x<2)、及びii)SiOx(0<x<2)の熱処理生成物のうちから選択された1以上の酸化シリコンと、前記酸化シリコン上部に配置された第1グラフェンと、を含み、前記第1グラフェン及び前記第2グラフェンのうち少なくとも1以上は、窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上を含むシルリコン含有複合体が提供される。
【0061】
本明細書において、「SiOx(0<x<2)の熱処理生成物」は、SiOx(0<x<2)に対して熱処理を実施して得た生成物を示す。ここで、熱処理は、SiOx(0<x<2)上にグラフェンを成長させるための気相堆積反応のための熱処理を意味する。気相堆積反応時、グラフェンソースとして、炭素供給源ガス、または炭素供給源ガスと還元性ガスとを含むガス混合物を利用することができる。還元性ガスは、例として、水素を挙げることができる。
【0062】
SiOx(0<x<2)の熱処理生成物は、i)炭素供給源ガス、あるいはii)炭素供給源ガスと還元性ガスとを含むガス混合物雰囲気において、SiOx(0<x<2)を熱処理して得た生成物でもある。
【0063】
SiOx(0<x<2)の熱処理生成物は、例えば、シリコンサブオキサイド(SiOy)(0<y≦2)マトリックスに、シリコン(Si)が配置された構造体でもある。
【0064】
一具現例によるSiOx(0<x<2)の熱処理生成物は、例えば、i)シリコン酸化物(SiO2)マトリックスに、シリコン(Si)が配置された構造体、ii)SiO2とSiOy(0<y<2)とを含んだマトリックスに、シリコン(Si)が配置された構造体、あるいはiii)SiOy(0<y<2)マトリックスに、シリコン(Si)が配置された構造体である。
【0065】
前記i)SiOx(0<x<2)、及びii)SiOx(0<x<2)の熱処理生成物のうちから選択された1以上の酸化シリコンと、第1グラフェンとの間に、非晶質炭素層が配置されてもよい。多孔性シリコン二次粒子を含むコアと、第2グラフェンとの間に、非晶質炭素層が配置されてもよい。非晶質炭素層は、グラフェン成長核として作用し、酸化シリコン及びコア上部に、グラフェン成長が良好になされるように一助となる。
【0066】
他の一具現例によれば、シリコンとシリコンサブオキサイドとの間、及び/またはシリコンサブオキサイドとグラフェンとの間に、炭化ケイ素(SiC)のような炭化物が存在しない。そのような炭化物が存在する場合には、SiCがリチウムと反応せずに、電極物質に利用される場合、容量が低下し、SiC上部に、グラフェンを形成するために、高温が要求され、シリコンの結晶性が高くなり、リチウム充放電時、粉砕現象が加速化されてしまう。
【0067】
図3を参照して一具現例によるシリコン含有複合体の製造方法について述べる。
まず、シリコン、及びシリコン上に形成されたシリコンサブオキサイド(SiO
x)(O<x<2)を含む構造体を破砕し、破砕されたシリコン一次粒子を得る。
【0068】
破砕されたシリコン一次粒子、分散剤及び溶媒を混合し、組成物30を得る。組成物30から、多孔性シリコン二次粒子31を得る。
多孔性複合体二次粒子において、気孔度は、例えば、0.1ないし50%であり、気孔のサイズは、10ないし500nmである。
【0069】
前述の組成物から、多孔性シリコン二次粒子を製造する方法は、共浸法、噴霧乾燥(spray drying)法、固相法などを利用して多様に利用され、一具現例によれば、噴霧乾燥法を利用することができる。噴霧乾燥法によって粒子を製造する場合、粒子径は、噴霧形式、加圧ガス供給速度、組成物供給速度、乾燥温度などを選定して制御することができる。
【0070】
噴霧乾燥時、雰囲気温度は、常温(25℃)ないし500℃、例えば、50ないし300℃の温度で実施する。噴霧乾燥時、粒子の出口部分での水分結露による粒子固着・閉塞などの問題が発生する可能性をあらかじめ予防しながら、前述の温度範囲で実施するとき、シリコン複合体二次粒子の気孔度が適切である。
【0071】
噴霧乾燥時、噴霧乾燥の噴霧圧力は、1~5barでもある。
噴霧乾燥前、出発原料を粉砕するような手段により、できる限りシリコン1次粒子31の表面積を大きく増大させる。そのために、破砕されたシリコン一次粒子を出発物質として利用する。
【0072】
例えば、噴霧乾燥を利用する場合、球形の多孔性シリコン二次粒子31を得ることができる。多孔性シリコン二次粒子31の表面には、ステアリン酸のような分散剤が一部存在する。噴霧乾燥時、ノズルサイズは、50ないし1,000μmであり、例えば、150μmである。
【0073】
その後、多孔性シリコン二次粒子31に、炭素供給源ガスと、窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上の前駆体を供給し、熱処理を行う段階を含むシリコン含有複合体を製造することができる。
図3において、参照符号10aは、第1グラフェン、参照符号10bは、第2グラフェン、参照符号1は、コア、参照符号2は、シェルであり、参照符号20は、シリコン複合体一次粒子を示す。そのように、窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上の前駆体は、既存の炭素供給源ガスを利用した製造過程にさらに付加する過程のみを介して、目的物を得ることができる。従って、目的物の製造工程が単純化されて容易である。窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上の前駆体と、炭素供給源ガスとの混合比は、それら各前駆体と炭素供給源ガスとの体積を制御し、目的とするところ通り制御することができる。
【0074】
一具現例によれば、炭素供給源と、窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上の前駆体と、において、窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上の前駆体の含量は、反応ガス総含量を基準にして、20体積%以下、例えば、5ないし20体積%である。窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上の前駆体の含量が前記範囲であるとき、グラフェンの結晶性及び品質にすぐれる。
【0075】
炭素供給源は、まず、多孔性シリコン二次粒子の気孔を充填した後、二次粒子の外部で成長する。
【0076】
溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコールなどを利用する。そのようなアルコール系溶媒を使用して熱処理する段階を経れば、溶媒の除去と共に分散剤が除去され、シリコン含有複合体に残留する含量が最小化される。その結果、酸素含量が最小化されたシリコン含有複合体を得ることができる。
【0077】
分散剤は、シリコン一次粒子を等しく分散させる役割を行う。分散剤は、非制限的な例として、ステアリン酸、レゾシノール、ポリビニルアルコール及びピッチのうちから選択された1以上である。分散剤の含量は、組成物総重量100重量部を基準にして、1ないし15重量部、例えば、5ないし10重量部である。分散剤の含量が前記範囲であるとき、シリコンとグラフェンとが凝集されることなしに、等しく分散される。
【0078】
炭素供給源は、下記化学式1で表示される化合物、下記化学式2で表示される化合物、及び下記化学式3で表示される酸素含有ガスからなる群から選択された1以上である。
(化学式1)
CnH(2n+2-a)[OH]a
前記化学式1で、nは、1ないし20の整数であり、aは0または1であり、
(化学式2)
CnH(2n)
前記化学式2で、nは、2ないし6の整数であり、
(化学式3)
CxHyOz
前記化学式3で、xは、0または1ないし20の整数であり、yは、0、または1ないし20の整数であり、zは、1または2である。
【0079】
炭素供給源は、例えば、メタン、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール及びプロパノールからなる群から選択された1以上である。
【0080】
熱処理は、600ないし1,100℃、例えば、700ないし1,000℃で実施される。そのような熱処理温度で実施されるとき、グラフェンがコア及びシェルで高密度に形成される。
【0081】
シリコン複合体一次粒子は、前述のように、粒子は、シリコン、シリコン上に配置されたシリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)、及びシリコンサブオキサイド上に配置されたグラフェンを含む。シリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)は、シリカ(SiO2)と比較し、酸素が欠乏した不安定な物質であり、炭素供給源ガスのような他の反応性物質と反応し、安定した物質を形成する傾向を有している。そのような点を活用し、シリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)膜を、グラフェンを形成するシード層物質として利用する。
【0082】
シリコン上部に形成されたシリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)は、膜形態を有し、シリコンサブオキサイド膜厚は、グラフェンの形態、構造などに非常に重要な影響を及ぼす。
【0083】
シリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)膜厚は、グラフェンの形成時に利用される製造工程、例えば、グラフェン形成に必要な炭素供給源の組成などを利用し、変化させることができる。そのようなシリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)膜厚は、300μm以下でもある。
【0084】
一具現例によれば、前記複合体が電池に利用されるシリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)膜厚は、10nm以下、0.1ないし10nm、具体的には、0.1ないし5nmである。そのような厚み範囲を有するシリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)膜を有する複合体を利用すれば、電池の容量特性にすぐれる。
【0085】
一具現例により、シリコンのシリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)膜上部にグラフェンを形成する過程は、触媒を使用しない気相炭素堆積反応を利用する。
【0086】
気相炭素堆積反応は、下記化学式1で表示される化合物、下記化学式2で表示される化合物、及び下記化学式3で表示される酸素含有ガスからなる群から選択された1以上と、窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上の前駆体と、を含む混合ガス雰囲気内で、シリコンサブオキサイド(SiOx)に被覆されたシリコンを熱処理する段階を経て進められる。
(化学式1)
CnH(2n+2-a)[OH]a
前記化学式1で、nは、1ないし20の整数、aは0または1であり、
(化学式2)
CnH(2n)
前記化学式2で、nは、2ないし6の整数であり、
(化学式3)
CxHyOz
前記化学式3で、xは、0、または1ないし20の整数であり、yは、0、または1ないし20の整数であり、zは、1または2である。
【0087】
前述の気相炭素堆積反応は、後述する理論に拘束されるものではないが、そのようなコーティングは、ガス混合物内に含まれたシリコンサブオキサイド(SiOx)に被覆されたシリコンに対する、CO2を利用した改質などに係わる。
【0088】
前述の気相炭素堆積反応によれば、シリコンサブオキサイド(SiOx)に被覆されたシリコン上にグラフェンを直接成長させ、シリコンとグラフェンとの密着度が高い。
【0089】
他の一具現例によれば、Si層上部に、SiOx層が存在せずとも、炭素混合ガスと酸素混合ガスとを反応させる過程を経れば、酸素含有混合ガスの反応で、シリコン層上部にSiOx層をまず形成し、その上に炭素混合ガスが反応しながら、グラフェンを形成することができる。シリコンとグラフェンとの密着度は、SiOxのシリコンとグラフェンとの距離を、電子走査顕微鏡を介して評価することができる。
【0090】
シリコン含有複合体を構成するシリコン複合体一次粒子の第1グラフェンは、シリコンにおいて、10nm以下、例えば、0.5ないし10nm、例えば0.5nmないし7.5nm、例えば0.5ないし5nmの距離ほど延長される。他の一具現例によれば、第1グラフェンは、シリコンにおいて、5nm以下、例えば、1nm以下、例えば、0.0001ないし5nm、例えば、0.5ないし1nm距離ほど延長される。そして、第1グラフェンは、シリコンの主軸に対して、0ないし90゜の角に配向される。少なくとも1ないし20層のグラフェン層を含み、第1グラフェンの総厚は、0.6ないし12nmである。そして、第1グラフェンは、シリコンのY軸に対して、0ないし90゜の角に配向される。
【0091】
シリコンは、その形態は、非制限的であり、例えば、シリコンは、スフィア、ナノワイヤ、針状、ロッド状、粒子、ナノチューブ、ナノロッド、ウェーハ及びナノリボンのうちから選択された1以上でもある。
【0092】
一具現例によれば、シリコンは、針状粒子タイプでもある。このとき、針状シリコン粒子は、長さが約100ないし160nm、例えば、108ないし125nm、厚みが約10ないし100nm、例えば、20ないし50nm、具体的には、40nmである。
【0093】
一具現例によれば、針状シリコン上に、シリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)膜が形成され、その上部にグラフェンが形成されてもよい。
【0094】
他の一具現例によれば、シリコン粒子上に、シリコンサブオキサイド(SiOx)(O<x<2)膜が形成され、その上部にグラフェンが形成されてもよい。ここで、シリコン粒子の平均粒径は、40nmないし40μm、例えば、40nmないし100nmである。
【0095】
シリコンがウェーハタイプである場合、シリコンウェーハ厚は、2mm以下であり、例えば、0.001ないし2mmである。
【0096】
グラフェンは、複数個の炭素原子が互いに共有結合で連結され、多環式芳香族分子を形成したものであり、共有結合で連結された炭素原子は、基本反復単位として6員環を形成するが、5員環及び/または7員環をさらに含むことも可能である。その結果、グラフェンは、互いに共有結合された炭素原子(通常、sp2結合)の単一層に見える。グラフェンは、単一層からもなるが、それらがいくつか互いに積層され、複数層を形成することも可能であり、例えば、1層ないし100層または、あるいは2層ないし100層、あるいは3層ないし50層の層数を有することができる。
【0097】
グラフェンは、ナノシート、膜(または、フィルム)、グラフェンナノシート、フレークなどの構造を有することができる。用語「ナノシート」は、シリコンサブオキサイド上に、不規則的な状態に形成された場合を示し、「膜」は、シリコンサブオキサイド上部に、連続的に均一に形成されたフィルム形態をいう。
【0098】
一具現例によるシリコン含有複合体は、金属酸化物をさらに含んでもよい。そのように金属酸化物をさらに含むならば、副反応抑制によるSEI層形成を防止する利点がある。
【0099】
金属酸化物は、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化スズ、酸化ハフニウム、フルオロ化アルミニウム(AlF3)からなる群から選択された1以上を含む。
【0100】
一具現例によるシリコン含有複合体において、グラフェンは、SEI安定化クランピング層(clamping layer)の役割を果たすことができる。そして、シリコン含有複合体は、高い比表面積を有しており、それを利用した電池において、初期効率及び体積エネルギー密度が低下することを防ぐことができる。
【0101】
シリコン含有複合体においてグラフェンは、シリコンのような活物質の破砕及び粉砕を抑制することができ、複合体の伝導度を改善させることができる。グラフェンは、シリコン粒子で起きる粒子の破砕及び粉砕を抑制する役割を行う。グラフェンは、シリコン粒子の分解(disintegration)を防ぐクランピング層の役割を行い、リチウムイオンとSiとの合金化反応(alloying reaction)が進められ、比容量(specific capacity)に非常にすぐれ、粒子間に連続的な導電性経路を提供する。
【0102】
シリコン粒子が膨張すると、グラフェン層が互いにスライディングし、脱リチウム化工程(delitihiation)中には、弛緩された位置(relaxed position)にスライドして戻る。そのような動きは、ファンデルワールス力が、層間摩擦力に比べて大きいためである。
【0103】
前述のグラフェン層のクランピング効果は、約200回ほどのリチウム化/脱リチウム化サイクルを反復的に実施した後にも、グラフェン層がそのまま維持されることを介して、グラフェン層は、シリコン粒子の分解を防ぐクランピング層の役割を果たすことを確認することができる。
【0104】
一具現例によるシリコン含有複合体は、シリコン複合体一次粒子表面に稠密なグラフェンが形成され、粒子間にナノサイズの気孔を形成し、一次粒子及び二次粒子の体積膨脹時、バッファの役割を果たすことができる。そして、熱処理を介して、SEI層を安定して形成することができる。そして、二次粒子表面に存在する何層かのグラフェンは、シリコン体積の膨脹時及び収縮時のグラフェン層間スライディングにより、一次粒子が二次粒子の外に出ないように体積が膨脹され、シリコン複合体一次粒子が電解質と接触することを低減させる。
【0105】
他の側面により、前述のシリコン含有複合体と、炭素系材料を含む炭素複合体とを提供する。一具現例によるシリコン含有複合体は、シリコン複合体一次粒子に比べ、比表面積が低減し、体積密度(比容量)が上昇し、それと炭素系材料との混合時、体積エネルギー密度を向上させることができ、電極の体積膨脹をさらに一層減らすことができる。
【0106】
前述の炭素複合体は、複合体と比較し、初期効率、比容量特性にすぐれ、律速性能及び耐久性がさらに向上する。
【0107】
炭素系材料の含量は、炭素複合体100重量部を基準にして、0.001ないし99重量部、例えば、10ないし97重量部、例えば、50ないし97重量部である。炭素系材料の含量が前記範囲であるとき、容量及び伝導度にすぐれる炭素複合体を得ることができる。
【0108】
炭素系材料は、グラフェン、黒鉛、フラーレン、炭素ファイバ及びカーボンナノチューブからなる群から選択された1以上を含む。炭素複合体は、例えば、黒鉛、及び黒鉛上部に形成されたシリコン含有複合体を含んでもよい。
【0109】
黒鉛としては、例えば、SFG6黒鉛を利用し、例えば、平均粒径が約6μmである。炭素複合体を利用して電極を形成する場合、電極において炭素複合体の含量は、例えば、68ないし87重量部であり、バインダの含量は、例えば、13ないし32重量部である。炭素複合体において黒鉛の含量は、例えば、炭素複合体100重量部を基準にして、1ないし20重量部である。
【0110】
バインダとしては、例えば、リチウムポリアクリレートを使用する。
化学式1で表示される化合物、及び化学式2で表示される化合物が、メタン、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール、プロパノールからなる群から選択された1以上である。
【0111】
化学式3で表示される酸素含有ガスは、例えば、二酸化炭素(CO2)及び一酸化炭素(CO)、水蒸気(H2O)、またはその混合物を含む。
窒素前駆体は、例えば、アンモニアを有することができる。
【0112】
硫黄前駆体は、例えば、硫黄粉末、(NH4)2S04、Li2S04、CoSO4、またはその組み合わせ物でもある。そして、リン前駆体は、リン粉末、(NH4)2HPO4、NH4H2PO4、Li3PO4、P2O5、またはそれらの組み合わせ物でもある。
【0113】
炭素供給源以外に、窒素、ヘリウム、アルゴンからなる群から選択された1以上の不活性ガスをさらに含んでもよい。
酸素含有ガスは、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気からなる群から選択された1以上でもある。
【0114】
炭素供給源として酸素含有ガスを使用する場合、シリコン酸化膜厚を、自然酸化膜であるシリコン酸化膜厚と比較し、厚く形成することができる。例えば、シリコン酸化膜厚を10nm以下、例えば、0.5ないし5nmに制御することができる。そのような厚み範囲を有するシリコン酸化膜を利用すれば、グラフェンの形態と厚みとを調節することができる。それについてさらに具体的に説明すれば、シリコン酸化膜厚を、前述の厚み範囲において、自然酸化膜の場合より厚く形成すれば、その上部に形成されたグラフェンナノシートよりもさらに緻密な構造を有するグラフェン層を得ることができる。ここで、グラフェン層は、例えば、5ないし10層の構造を有する。
【0115】
ガス混合物が水蒸気を含む場合、結果として得た複合体は、さらに高い伝導度を示すことができる。特定理論に拘束されるものではないが、水蒸気存在下において、ガス混合物間の反応により、シリコンサブオキサイドに被覆されたシリコン上に、高い結晶性の炭素が堆積されるために、さらに少量の炭素がコーティングされる場合にも、高い伝導度を示すことができると考えられる。ガス混合物内の水蒸気の含量は、制限されるものではなく、例えば、炭素供給源全体100体積%を基準にして、0.01ないし10体積%を使用する。
【0116】
炭素供給源は、例えば、メタン、メタンと不活性ガスとを含む混合ガス、酸素含有ガス、またはメタンと酸素含有ガスとを含む混合ガスでもある。
【0117】
一具現例による炭素供給源は、CH4:CO2混合ガス、またはCH4:CO2:H2O混合ガスでもある。一具現例によれば、炭素供給源の種類により、グラフェンのモルフォルジーが異なりもする。
【0118】
CH4:CO2混合ガスは、約1:0.20~0.50のモル比でも提供され、具体的には、約1:0.25~0.45のモル比でも提供され、さらに具体的には、約1:0.30~0.40のモル比でも提供される。
【0119】
CH4:CO2:H2O混合ガスは、約1:0.20~0.50:0.01~1.45のモル比でも提供され、具体的には、約1:0.25~0.45:0.10~1.35のモル比でも提供され、さらに具体的には、約1:0.30~0.40:0.50~1.0のモル比でも提供される。
【0120】
他の一具現例による炭素供給源は、一酸化炭素(C0)または二酸化炭素(CO2)でもある。
【0121】
さらに他の一具現例による炭素供給源は、CH4とN2との混合ガスである。
CH4:N2混合ガスは、約1:0.20~0.50のモル比でも提供され、具体的には、約1:0.25~0.45のモル比でも提供され、さらに具体的には、約1:0.30~0.40のモル比でも提供される。一具現例による炭素供給源は、窒素のような不活性ガスを含まない。
【0122】
熱処理は、750ないし1,100℃、例えば、800ないし1,000℃でも実施される。
【0123】
熱処理段階において、圧力も制限されるものではなく、熱処理温度、ガス混合物の組成、及び所望する炭素コーティングの量などを考慮して選択することができる。熱処理時の圧力は、流入されるガス混合物の量と、流出されるガス混合物の量とを調整して制御することができる。例えば、熱処理時圧力は、1atm以上、例えば、2atm以上、3atm以上、4atm以上、5atm以上でもあるが、それらに制限されるものではない。
【0124】
熱処理時間は、特別に制限されるものではなく、熱処理温度、熱処理時の圧力、ガス混合物の組成、及び所望する炭素コーティングの量によって適切に調節することができる。例えば、反応時間は、10分ないし100時間、具体的には、30分ないし90時間、さらに具体的には、50分ないし40時間でもあるが、それらに制限されるものではない。特定理論に拘束されるものではないが、時間が長くなるほど堆積されるグラフェン(炭素)量が多くなり、それにより、複合体の電気的物性が向上することができる。ただし、そのような傾向が、時間に必ずしも正比例するものではない。例えば、所定時間経過後には、それ以上グラフェン堆積が起こらないか、あるいは堆積率が低くなる。
【0125】
前述のシリコン含有複合体の製造方法は、前述の炭素供給源の気相反応を介して、比較的低い温度でも、シリコンサブオキサイド(SiOx)に被覆されたシリコン上に、グラフェンに均一なコーティングを提供することができる。そして、シリコンサブオキサイド(SiOx)膜に被覆されたシリコン上に形成されたグラフェンの脱離反応が、実質的に起こらない。シリコン酸化膜厚を制御すれば、グラフェンの脱離反応をさらに一層抑制することができる。そのように、グラフェンの脱離反応を効率的に抑制することができるシリコン酸化膜厚は、10nm以下、0.1ないし10nm、具体的には、0.1ないし5nmである。
【0126】
また、気相反応を介して、シリコン上にグラフェンをコーティングするので、高い結晶性を有するコーティング膜を形成することができ、そのようなシリコン含有複合体を負極活物質として利用した場合、構造変化なしに、負極活物質の伝導度を高めることができる。
【0127】
一具現例によるシリコン含有複合体を製造するための気相炭素堆積反応時、炭素混合ガスと、水素のような還元性ガスとを含んだガス混合物雰囲気下で実施することができる。
【0128】
シリコン含有複合体を構成するシリコン複合体一次粒子が、i)SiOx(0<x<2)、及びii)SiOx(0<x<2)の熱処理生成物のうちから選択された1以上の酸化シリコンと、酸化シリコン上部に配置された第1グラフェンと、を含む場合、第1グラフェンは、メタンのような炭素供給源ガスと水素とのガス混合物雰囲気下で、熱処理を実施して形成することができる。炭素供給源ガスと水素との混合比は、例えば、1:1ないし1:7、例えば、1:1ないし1:5の比でもある。該比の基準は、モル比または流量比でもある。
【0129】
一具現例によるシリコン含有複合体を利用した炭素複合体の製造過程は、次の通りである。
一具現例によるシリコン含有複合体と炭素系材料とを混合し、それを熱処理する。
【0130】
熱処理は、600ないし1,100℃、例えば、700ないし1,000℃で実施する。熱処理温度が前記範囲であるとき、容量特性にすぐれる炭素複合体を得ることができる。
【0131】
一具現例によるシリコン含有複合体のXPS(X-ray photoelectron spectroscopy)分析によって求められるシリコン(Si)対炭素(C)の元素比(C/Si)は、100ないし200、例えば、140ないし180である。そして、シリコン含有複合体のXPS分析によって求められるシリコン(Si)対炭素(C)の元素比(C/Si)は、窒素、リン及び硫黄のうちから選択された1以上を含んでいないシリコン含有複合体のC/Si対比で増大する。このとき、該増大率は、例えば、300%以上、例えば、490%以上増大する。ここで、シリコン(Si)対炭素(C)の元素比(C/Si)が増大するということは、グラフェンのシリコン/シリコンサブオキサイドの被覆率が高くなるということを意味する。
【0132】
一具現例によるシリコン含有複合体または炭素複合体は、電池、ディスプレイ用発光体、ディスプレイ用電界放出物質、熱電素子、バイオセンサなどにも有用に使用される。
【0133】
さらに他の側面によれば、前述のシリコン含有複合体または炭素複合体を含んだ電極が提供される。前記電極は、リチウム電池用電極でもある。
前記電極は、負極でもある。
【0134】
シリコン含有複合体または炭素複合体は、電極活物質、例えば、負極活物質としても使用される。そのように、負極活物質として使用する場合、シリコン体積膨脹が低減し、粉砕が減ることになる。そして、伝導度が向上し、高率特性が改善される。また、シリコンサブオキサイドが被覆されたシリコン上に、グラフェンを最小限の量にコーティングすることができ、体積当たりエネルギー密度が向上した負極活物質を得ることができる。シリコン含有複合体、またはシリコン含有複合体と、炭素系材料を含む炭素複合体とを含むリチウム電池を提供する。
【0135】
負極は、次のような方法によっても製造される。
負極は、例えば、負極活物質であるシリコン含有複合体または炭素複合体、導電剤、及び結着剤を含む負極活物質組成物が一定形状に成形されるか、あるいは前述の負極活物質組成物が銅箔などの集電体に塗布される方法によっても製造される。前記組成物において、導電剤は、使用しなくてもよい。
【0136】
また、集電体なしに、負極活物質組成物がセパレータ上にフィルム形態に形成されてもよい。
【0137】
具体的には、前述の負極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒が混合された負極活物質組成物が準備される。負極活物質組成物が金属集電体上に直接コーティングされて負極板が製造される。代案として、負極活物質組成物が別途の支持体上にキャスティングされた後、支持体から剥離されたフィルムが金属集電体上にラミネーションされても負極板が製造される。負極は、前述のところで列挙した形態に限定されるものではなく、前記形態以外の形態でもあってもよい。
【0138】
負極活物質組成物は、前述の負極活物質以外に、他の炭素負極活物質を追加して含んでもよい。例えば、炭素負極活物質は、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨脹黒鉛、グラフェン、カーボンブラック、フラーレンスート、炭素ナノチューブ及び炭素ファイバからなる群で選択された1以上でもあるが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で使用されるものであるならば、いずれも可能である。
【0139】
また、導電剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、炭素ファイバ、銅・ニッケル・アルミニウム・銀などの金属粉末、金属ファイバなどを使用することができ、またポリフェニレン誘導体などの導電性材料を、1種または1種以上を混合して使用することができるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野で導電剤として使用されるものであるならば、いずれも使用される。
【0140】
結合剤としては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム系ポリマー、ポリアクリル酸、ポリアミドイミド、ポリイミド、またはそれらの混合物が使用されもするが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野で結合剤として使用されるものであるならば、いずれも使用される。
【0141】
溶媒としては、N-メチルピロリドン、アセトンまたは水などが使用されるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野で使用されるものであるならば、いずれも使用される。
【0142】
前述の負極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒の含量は、リチウム電池で一般的に使用されるレベルである。リチウム電池の用途及び構成により、結合剤及び溶媒のうち1以上が省略されてもよい。
【0143】
さらに他の具現例によるリチウム電池は、前記負極を採用する。リチウム電池は、次のような方法によっても製造される。
まず、前記負極製造方法によって負極が準備される。
【0144】
次に、正極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒が混合された正極活物質組成物が準備される。正極活物質組成物が金属集電体上に直接コーティング及び乾燥され、正極が製造される。代案として、前記正極活物質組成物が別途の支持体上にキャスティングされた後、前記支持体から剥離されたフィルムが金属集電体上にラミネーションされ、正極が製造される。
【0145】
正極活物質として、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物、リチウム鉄リン酸化物及びリチウムマンガン酸化物からなる群のうち選択された1以上を含んでもよいが、必ずしもそれらに限定されるものではなく、当該技術分野で利用可能な全ての正極活物質が使用される。
【0146】
例えば、正極活物質は、リチウム含有金属酸化物として、当業界で一般的に使用されるものであるならば、制限なしにいずれも使用される。例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、及びそれらの組み合わせのうちから選択される金属とリチウムとの複合酸化物のうち1種以上のものを使用することができ、その具体的な例としては、LiaA1-bB’bD2(前記式で、0.90≦a≦1及び0≦b≦0.5である);LiaE1-bB’bO2-cDc(前記式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiE2-bB’bO4-cDc(前記式で、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiaNi1-b-cCobB’cDα(前記式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiaNi1-b-cCobB’cO2-αFα(前記式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cCobB’cO2-αF’2(前記式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbB’cDα(前記式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiaNi1-b-cMnbB’cO2-αF’α(前記式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbB’cO2-αF’2(前記式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiaNibEcGdO2(前記式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である);LiaNibCocMndGeO2(前記式で、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である);LiaNiGbO2(前記式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiaCoGbO2(前記式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiaMnGbO2(前記式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiaMn2GbO4(前記式で、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);QO2;QS2;LiQS2;V2O5;LiV2O5;LiI’O2;LiNiVO4;Li3-fJ2(PO4)3(0≦f≦2);Li3-fFe2(PO4)3(0≦f≦2);LiFePO4の化学式のうちいずれか一つで表現される化合物を使用することができる。
【0147】
前記化学式において、Aは、Ni、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、B’は、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、またはそれらの組み合わせであり、Dは、O、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Eは、Co、Mn、またはそれらの組み合わせであり、F’は、F、S、P、またはそれらの組み合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはそれらの組み合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mn、またはそれらの組み合わせであり、I’は、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはそれらの組み合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはそれらの組み合わせである。
【0148】
ここで、該化合物表面にコーティング層を有するものも使用することができ、または前記化合物と、コーティング層を有する化合物とを混合して使用することもできるということは言うまでもない。コーティング層は、コーティング元素のオキシド、コーティング元素のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシシカーボネートのコーティング元素化合物を含んでもよい。それらコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質でもある。コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、またはそれらの混合物を使用することができる。コーティング層形成工程は、前記化合物にそのような元素を使用し、正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えば、スプレーコーティング法、浸漬法など)によってコーティングすることができるものであれば、いかなるコーティング方法を使用してもよいが、それについては、当該分野の当業者に周知内容であるので、詳細な説明は、省略する。
【0149】
例えば、LiNiO2、LiCoO2、LiMnxO2x(x=1,2)、LiNi1-xMnxO2(0<x<1)、LiNi1-x-yCoxMnyO2(0≦x≦0.5、0≦y≦0.5)、LiFeO2、V2O5、TiS、MoSなどが使用される。
【0150】
正極活物質組成物において、導電剤、結合剤及び溶媒は、負極活物質組成物の場合と同一のものを使用することができる。一方、正極活物質組成物及び/または負極活物質組成物に可塑剤をさらに付加し、電極板内部に気孔を形成することも可能である。
【0151】
正極活物質、導電剤、結合剤及び溶媒の含量は、リチウム電池で一般的に使用するレベルである。リチウム電池の用途及び構成により、導電剤、結合剤及び溶媒のうち1以上が省略されてもよい。
【0152】
次に、正極と負極との間に挿入されるセパレータが準備される。セパレータは、リチウム電池で一般的に使用されるものであるならば、いずれも使用される。電解質のイオン移動に対して、低い抵抗でありながら、電解液含湿能にすぐれるものが使用される。例えば、ガラスファイバ、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、またはそれらの組み合わせ物のうちから選択されたものであり、不織布の形態でも織布の形態でもよい。例えば、リチウムイオン電池には、ポリエチレン、ポリプロピレンのような巻き取り可能なセパレータが使用され、リチウムイオンポリマー電池には、有機電解液含浸能にすぐれるセパレータが使用される。例えば、セパレータは、下記方法によっても製造される。
【0153】
高分子樹脂、充填剤及び溶媒を混合し、セパレータ組成物が準備される。セパレータ組成物が、電極上部に直接コーティング及び乾燥され、セパレータが形成されてもよい。または、セパレータ組成物が、支持体上にキャスティング及び乾燥された後、支持体から剥離させたセパレータフィルムが、電極上部にラミネーションされ、セパレータが形成されてもよい。
【0154】
セパレータ製造に使用される高分子樹脂は、特別に限定されるものではなく、電極板の結合剤に使用される物質であるならば、いずれも使用される。例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、またはそれらの混合物などが使用される。
【0155】
セパレータは、膜の性能を向上させるために、セラミックス成分を含んでもよい。例えば、セパレータに酸化物をコーティングしたり、セパレータの製造時、セラミックス粒子を含めたりして製造することができる。
次に、電解質が準備される。
【0156】
例えば、電解質は、有機電解液でもある。また、電解質は、固体でもある。例えば、ホウ素酸化物、リチウムオキシニトリドなどでもあるが、それらに限定されるものではなく、当該技術分野において、固体電解質として使用されるものであるならば、いずれも使用可能である。固体電解質は、スパッタリングなどの方法により、負極上に形成されてもよい。
【0157】
例えば、有機電解液が準備される。有機電解液は、有機溶媒にリチウム塩が溶解されて製造される。
【0158】
有機溶媒は、当該技術分野において、有機溶媒として使用されるものであるならば、いずれも使用される。例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2-ジメトキシシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジエチレングリコール、ジメチルエーテル、またはそれらの混合物などである。
【0159】
リチウム塩も、当該技術分野でリチウム塩として使用されるものであるならば、いずれも使用される。例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、Li(FSO2)2N、LiC4F9SO3、LiAlO2、LiAlCl4、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(ただし、x、yは、自然数である)、LiCl、LiI、またはそれらの混合物などである。
【0160】
図12Aから分かるように、リチウム電池121は、正極123、負極122及びセパレータ124を含む。前述の正極123、負極122及びセパレータ124が巻き取られたり折り畳まれたりして、電池ケース125に収容される。次に、電池ケース125に有機電解液が注入され、キャップアセンブリ126によって密封され、リチウム電池121が完成される。電池ケース125は、円筒状、角形、薄膜型などでもある。例えば、リチウム電池121は、薄膜型電池でもある。リチウム電池121は、リチウムイオン電池でもある。
【0161】
正極と負極との間にセパレータが配置され、電池構造体が形成されてもよい。電池構造体がバイセル構造に積層された後、有機電解液に含浸され、得られた結果物がポーチに収容されて密封されれば、リチウムイオンポリマー電池が完成される。
【0162】
また、電池構造体は、複数個積層されて電池パックを形成し、そのような電池パックが高容量及び高出力が要求される全ての機器に使用される。例えば、ノート型パソコン、スマートフォン、電気車両(EV:electric vehicle)などにも使用される。
【0163】
前記リチウム電池は、高率特性及び寿命特性にすぐれるので、電気車両(EV)に適する。例えば、プラグインハイブリッド車(PHEV:plug-in hybrid electric vehicle)などのハイブリッド車に適する。
【0164】
さらに他の側面は、前記複合体、または前記複合体と、炭素系材料を含む炭素複合体とを含む電界放出素子を提供するものである。
【0165】
電界放出素子は、電子移動を利用する装置である。通常の電界放出素子は、少なくとも還元極と、エミッタチップと、還元極から離隔された酸化極と、を含む(それぞれの内容は、本出願で援用される米国特許第7,009,331号、第6,976,897号、第6,911,767号及び米国特許出願第2006/0066217号を参照)。還元極と酸化極とに電圧が印加され、電子をエミッタチップから放出させる。電子は、還元極から酸化極の方向に進む。本装置は、次に、制限されないが、超音波真空管装置(例えば、X線チューブ、)、電力増幅器、イオンガン、高エネルギー加速器、自由電子レーザ及び電子顕微鏡、特に、平板ディスプレイのような多様な用途にも使用される。平板ディスプレイは、従来の負極管代替用としても使用される。従って、それら平板ディスプレイは、TV(television)とコンピュータモニタとに適用される。
【0166】
エミッタチップとして、一具現例による複合体、またはそれを利用した炭素複合体が利用されてもよい。
【0167】
従来のエミッタチップは、モリブデンのような金属や、シリコンのような半導体によって製造される。金属エミッタチップ利用に係わる関心事項のうち一つは、放出に要求される制御電圧が、例えば、およそ100Vほどと比較的高いというのである。また、それらエミッタチップが均一性を有さないために、ピクセル間の電流密度が不均一にもなる。
【0168】
前述のシリコン含有複合体または炭素複合体を利用したエミッタチップを利用すれば、電界放出特性にすぐれる。
前述のシリコン含有複合体または炭素複合体は、電子発光素子製造時に利用可能である。
【0169】
さらに他の側面によれば、一具現例によるシリコン含有複合体、または前記シリコン含有複合体と、炭素系材料を含む炭素複合体とを含むバイオセンサが提供される。
一具現例によるシリコン含有複合体または炭素複合体は、バイオセンサ用電極の形成時に利用可能である。
【0170】
図12Eは、一具現例によるバイオセンサの電極構造を示した断面図である。
それを参照すれば、一具現例によるバイオセンサ電極は、基板310、基板310上に形成されるシリコン含有複合体または炭素複合体を含む第1層320、及び第1層上に形成される第2層330を具備する。第2層330には、バイオ物質340が多様な方式で担持されるか、あるいは固定される。
【0171】
基板310は、その上部に、グラフェンが蒸着または形成される全種の板を意味するものであり、具体的には、ガラス、プラスチック、金属、セラミックス及びシリコンからなる群からも選択されるが、基板の種類は、その上部に、グラフェンが蒸着または形成される限り、特別に制限されるものではないということに留意する。
【0172】
バイオ物質340としては、酵素、アプタマー、タンパク質、核酸、微生物、細胞、脂質、ホルモン、DNA、PNA、RNA、及びそれらの混合物から構成された群から選択されるバイオ物質が使用され、本明細書で言及されていない多様なバイオ物質が使用されるということに留意する。
【0173】
図12Eを参照すれば、バイオ物質340として、特定酵素が使用され、第2層330は、そのような特定酵素が担持されるか、あるいは固定された膜が使用されるバイオセンサ用電極を開示する。一方、
図12Eにおいては、特定酵素が膜内部に担持されるか、あるいは固定されたように図示されているが、特定酵素の位置は、それに制限されるものではなく、一部または全部が膜上部に突出していてもよいということに留意する。そのような構成による場合、酵素は、基質特異性にすぐれ、混合物内においても、特定分子だけと選択的に反応する特性を有するために、特定酵素に反応する分析物質(例えば、血糖など)を選択的に感知することができる。
【0174】
さらに他の側面によれば、前記シリコン含有複合体、または前記シリコン含有複合体と、炭素系材料を含む炭素複合体とを含む半導体素子が提供される。
前記シリコン含有複合体または炭素複合体は、半導体素子の電極として利用可能である。
さらに他の側面によれば、前記シリコン含有複合体、または前記シリコン含有複合体と、炭素系材料を含む炭素複合体とを含む熱電材料と、それを含む熱電素子とが提供される。
【0175】
熱電材料は、優秀な電気的特性によって熱電性能が向上する。そのような熱電材料は、熱電素子、熱電モジュールまたは熱電装置に有用に使用される。
【0176】
熱電材料の性能は、無次元性能指数(dimensionless figure of merit)と通称される下記数式1のZT値を使用する。
(数式1)
ZT=(S2σT)/k
前記数式1で、ZTは、性能指数、Sは、ゼーベック係数、σは、電気伝導度、Tは、絶対温度、κは、熱伝導度を示す。
【0177】
前記数式1に示されているように、熱電材料のZT値を増大させるためは、ゼーベック係数及び電気伝導度、すなわち、パワーファクタ(S2σ)は、増加させ、熱伝導度は、低下させなければならない。
【0178】
一具現例によるシリコン含有複合体または炭素複合体は、グラフェンを含んでおり、グラフェンの特性を熱電材料に適用する場合、高い電気伝導度と、低い熱伝導度とを具現することになるので、熱電材料の性能を改善させることになる。
【0179】
一具現例を有するシリコン含有複合体または炭素複合体は、金属性質を有するグラフェンと、半導体性質を有するシリコンとの界面での結晶性及び電子構造が変化し、ゼーベック係数が増大し、電荷粒子の伝送が加速化され、電気伝導度及び電荷移動度の上昇を誘導することができる。また、グラフェンとシリコンとの界面でのフォノン散乱が増大し、熱伝導度の制御が可能になる。
【0180】
前述のように、シリコン含有複合体または炭素複合体は、熱電材料として有用に使用することができる。従って、熱電材料を切断加工などの方法で成形し、熱電素子を製造することができる。熱電素子は、p型熱電素子でもある。そのような熱電素子は、熱電材料を、所定形状、例えば、直方体の形状に形成したものを意味する。
【0181】
一方、熱電素子は、電極と結合され、電流印加によって冷却効果を示すことができ、温度差によって発電効果を示すことができる成分でもある。
【0182】
図12Bは、熱電素子を採用した熱電モジュールの一具現例を示す。
図12Bに図示されているように、上部絶縁基板211及び下部絶縁基板221には、上部電極(第1電極)212及び下部電極(第2電極)222がパターン化されて形成されており、上部電極212と下部電極222とを、p型熱電成分215及びn型熱電成分216が相互接触している。それら電極212,222は、リード電極224により、熱電素子の外部と連結される。p型熱電成分(215)として前述の熱電素子を使用することができる。n型熱電成分216としては、当業界に公知のものであるならば、制限なしに使用することができる。
【0183】
絶縁基板211,221として、ガリウムヒ素(GaAs)、サファイア、シリコン、パイレックス(登録商標)、石英基板などを利用することができる。電極212,222の材質は、銅、アルミニウム、ニッケル、金、チタンなど多様に選択され、その大きさも、多様に選択される。それら電極212,222がパターニングされる方法は、従来公知のパターニング方法を制限なしに使用することができ、例えば、リフトオフ半導体工程、蒸着方法、フォトリソグラフィ法などを使用することができる。
【0184】
熱電モジュールの一具現例において、
図12C及び
図12Dに図示されているように、第1電極及び第2電極のうち一つは、熱供給源に露出される。熱電素子の一具現例において、第1電極及び第2電極のうち一つは、電力供給源に電気的に連結されるか、あるいは熱電モジュールの外部、例えば、電力を消費したり保存したりする電気素子(例えば、電池)に電気的に連結される。
【0185】
熱電モジュールの一具現例として、第1電極及び第2電極のうち一つは、電力供給源に電気的に連結される。
以下、実施例及び比較例を介して、さらに詳細に説明する。ただし、該実施例は、例示のためのものであり、それらだけで、本発明の範囲が限定されるものではない。
【実施例0186】
〔製造例1〕
針状シリコンを粉砕し、シリコンサブオキサイド(SiOx)(0<x<2)膜(厚み:約0.1nm)が表面に形成された長さ(D90)が約150nm、厚みが約40nmである板状及び針状のシリコン粒子を得た。
【0187】
前記板状及び針状のシリコン粒子25重量部、ステアリン酸10重量部及びイソプロピルアルコール65重量部を含む組成物を噴霧乾燥し、それを乾燥させ、約3~6μmの平均粒径を有する多孔性シリコン二次粒子を得た。
【0188】
該噴霧乾燥は、噴霧乾燥機(モデル:MMSD(Micro Mist Spray Dryers),Fujisaki electric)を利用した。N2条件下において、噴霧ノズルサイズを約150μmに制御し、圧力を約0.6MPaに調節し、パウダー噴射雰囲気温度(約200℃)を調節し、イソプロピルアルコールを乾燥させることにより、多孔性シリコン複合粒子二次粒子を製造した。
【0189】
前記多孔性シリコン二次粒子を、反応器内に位置させた。前記反応器内を窒素ガスでパージした後、反応器内に、反応ガスとして、下記表1の組成を有するガス混合物を流し、反応器内に前記ガスからなる雰囲気を醸成した。反応器内において、ガスフローによって発生した圧力は、1atmである。前記ガス雰囲気下において、反応器内部温度を1,000℃(昇温速度:約23℃/min)に上げ、前記ガスを続けて反応器に流しつつ、前記温度で1時間維持して熱処理を行った。次に、前記結果物を3時間ほど放置した。その後、前記ガスの供給を中断し、反応器を室温(25℃)に冷却し、反応器内を窒素でパージし、シリコン含有複合体を得た。
【0190】
前記シリコン含有複合体において、第1グラフェンと第2グラフェンとの含量は、シリコン含有複合体総重量100重量部を基準にして、約25重量部である。
【0191】
〔製造例2~6〕
反応ガスとして、下記表1の組成を有するガス混合物をそれぞれ利用したことを除いては、製造例1と同一に実施し、シリコン含有複合体を得た。
【0192】
〔製造例7〕
シリコンサブオキサイド(SiOx)(0<x<2)膜(厚み:約0.1nm)が表面に形成された長さ(D90)が約150nm、厚みが約40nmである板状及び針状のシリコン粒子の代わりに、シリコンサブオキサイド(SiOx)(0<x<2)膜(厚み:約0.1nm)が表面に形成された長さ(D90)が約200nm、厚みが約40nmである板状及び針状のシリコン粒子を利用したことを除いては、製造例1と同一方法によって実施し、シリコン含有複合体を得た。
【0193】
〔製造例8〕
シリコンサブオキサイド(SiOx)(0<x<2)膜(厚み:約0.1nm)が表面に形成された長さ(D90)が約150nm、厚みが約40nmである板状及び針状のシリコン粒子の代わりに、シリコンサブオキサイド(SiOx)(0<x<2)膜(厚み:約0.1nm)が表面に形成された長さ(D90)が約100nm、厚みが約40nmである板状及び針状のシリコン粒子を利用したことを除いては、製造例1と同一方法によって実施し、シリコン含有複合体を得た。
【0194】
〔参照製造例1〕
シリコンサブオキサイド(SiOx)(0<x<2)膜(厚み:約0.1nm)が表面に形成された長さ(D90)が約150nm、厚みが約40nmである板状及び針状のシリコン粒子の代わりに、シリコンサブオキサイド(SiOx)(0<x<2)膜(厚み:約0.1nm)が表面に形成された長さ(D90)が約200nm、厚みが約40nmである板状及び針状のシリコン粒子を利用し、反応ガスとして、下記表1の組成を有するガス混合物を利用したことを除いては、製造例1と同一方法によって実施し、シリコン含有複合体を得た。
【0195】
下記表1に示されているように、製造例1~8によって製造されたシリコン含有複合体内に含有された第1グラフェンと第2グラフェンは、膜形態及びプレート形態をいずれも示した。第1グラフェンと第2グラフェンは、シリコンサブオキサイドに隣接した領域においては、主に膜形態を有し、隣接した領域で遠い領域において、フレーク形態を有すると分かった。製造例5によって製造されたシリコン含有複合体は、製造例1~4、製造例6~8によって製造されたシリコン含有複合体と比較し、第1グラフェンと第2グラフェンとが膜形態で存在する比率が相対的にさらに高く示された。
【0196】
【0197】
〔比較製造例1〕
粒状形態の10μmサイズのシリコン20重量部、ステアリン酸10重量部、イソプロピルアルコール70重量部を含む組成物を、破砕工程を介して、針状シリコン粒子が含有されたスラリーを製造し、噴霧過程を経ずに乾燥させた。
【0198】
前記結果物を粉砕し、シリコンサブオキサイド(SiOx)(0<x<2)膜(厚み:約0.1nm)が表面に形成された、長さが約125nmである針状シリコン粒子を得た。
【0199】
前記針状シリコン一次粒子を反応器内に位置させた。前記反応器内において、窒素(N2)300sccmのガスを流し、反応器内に、前記ガスからなる雰囲気を醸成した。反応器内において、ガスフローによって発生した圧力は、1atmである。前記ガス雰囲気下において、反応器内部温度を950℃(昇温速度:約23℃/min)に上げ、前記ガスを続けて反応器に流しつつ、前記温度で3時間維持し、熱処理を行った。次に、前記結果物を4時間ほど放置し、多孔性シリコン一次粒子を得た。該シリコン一次粒子の構造は、針状形態を有している。
【0200】
〔比較製造例2〕
反応ガスとして、CH4を使用し、窒素前駆体として、ピリジンを使用したことを除いては、製造例1と同一方法によって実施し、シリコン含有複合体を製造した。
比較製造例2によって実施すれば、シリコン/シリコンサブオキサイドと第1グラフェンとの密着性、及び/または多孔性シリコン二次粒子と第2グラフェンとの密着性がかなり不良であった。
【0201】
〔実施例1:負極及びプルセルの製造〕
製造例1によって製造されたシリコン含有複合体、グラファイト、リチウムポリアクリレート(Li-PAA)及び脱イオン水を混合してスラリーを製造した。前記スラリーにおいて、製造例1によって製造されたシリコン含有複合体とグラファイトとの混合物、リチウムポリアクリレートの固形分混合比は、92:8重量比である。製造例1によって製造されたシリコン含有複合体とグラファイトとの混合物において、シリコン含有複合体とグラファイトとの重量比は、1:12重量比である。
【0202】
前記スラリーを銅ホイル(Cu foil)に塗布した後、ドクターブレードを使用し、塗布厚が40μmになるように除膜した後、120℃で2時間真空乾燥させた後、それを圧延して負極を製造した。
【0203】
正極は、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、デンカブラック(Denka Black)、バインダであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)、及び溶媒であるN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を混合してスラリーを製造した。該スラリーにおいて、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、デンカブラック、及びバインダであるポリフッ化ビニリデン(PVdF)の混合重量比は、93:5:2であった。
【0204】
前記負極と正極とを利用し、コインフルセルを製造した。前記スラリーをアルミニウムホイルに塗布した後、ドクターブレードを使用し、塗布厚みが40μmになるように除膜した後、120℃で2時間真空乾燥させた後、それを圧延して正極を製造した。
【0205】
セパレータとしては、ポリプロピレン膜(Cellgard 3510)を使用し、電解質としては、1.3M LiPF6EC:DEC:FEC(50:25:25体積比)を使用した。ECは、エチレンカーボネート、DECは、ジエチルカーボネート、FECは、フルオロエチレンカーボネートをそれぞれ示す。
【0206】
〔実施例1a:負極及びコインフルセルの製造〕
電解質として、1.3M LiPF6 EC:DEC:FEC(68:25:7体積比)を使用したことを除いては、実施例1と同一方法によって実施し、コインフルセルを作製した。
【0207】
〔実施例2~8:負極及びコインフルセルの製造〕
製造例1によるシリコン含有複合体の代わりに、製造例2~8によるシリコン含有複合体を利用したことを除いては、実施例1と同一方法によって実施し、負極及びコインフルセルを製造した。
【0208】
〔実施例7a〕
電解質として、1.3M LiPF6 EC:DEC:FEC(68:25:7体積比)を使用したことを除いては、実施例7と同一方法によって実施し、コインフルセルを作製した。
【0209】
〔実施例7b〕
電解質として1.3M LiPF6 EC:DEC(75:25体積比)を使用したことを除いては、実施例7と同一方法によって実施し、コインフルセルを作製した。
【0210】
〔実施例8a〕
電解質として1.3M LiPF6 EC:DEC:FEC(68:25:7体積比)を使用したことを除いては、実施例8と同一方法によって実施し、コインフルセルを作製した。
【0211】
〔実施例9:負極及びコインハーフセルの製造〕
製造例1によって製造されたシリコン含有複合体、カーボンブラック(KB600JD)、AST9005(AEKYUNG)、及び溶媒である脱イオン水を混合してスラリーを製造した。前記スラリーにおいて、製造例1によって製造されたシリコン含有複合体、カーボンブラック(KB600JD)、AST9005(AEKYUNG)の固形分混合比は、79:1:20重量比であった。
【0212】
前記スラリーを銅ホイルに塗布した後、ドクターブレードを使用し、塗布厚みが40μmになるように除膜した後、120℃で2時間真空乾燥させた後、それを圧延して負極を製造した。
前記負極、リチウムメタルを対極として利用してコインハーフセルを製造した。
【0213】
セパレータとしては、ポリプロピレン膜(Cellgard 3510)を使用し、電解質としては、1.3M LiPF6 EC(エチレンカーボネート):DEC(ジエチルカーボネート):FEC(フルオロエチレンカーボネート)(2:6:2体積比)を使用した。
【0214】
〔実施例10~16:負極及びコインハーフセルの製造〕
製造例1によるシリコン含有複合体の代わりに、製造例2~8によるシリコン含有複合体を利用したことを除いては、実施例9と同一方法によって実施し、負極及びコインハーフセルを製造した。
【0215】
〔実施例17:負極及びコインフルセルの製造〕
負極の製造時、グラファイトの代わりに、カーボンブラック(KB600JD)を使用したことを除いては、実施例1と同一方法によって実施し、負極及びコインフルセルを製造した。
【0216】
〔実施例18:負極及びコインフルセルの製造〕
製造例1によって製造されたシリコン含有複合体とグラファイトとの混合物において、混合比が1:12重量比の代わりに、1:99重量比に変更されたことを除いては、実施例1と同一方法によって実施し、負極及びコインフルセルを製造した。
【0217】
〔実施例19:負極及びコインフルセルの製造〕
製造例1によって製造されたシリコン含有複合体とグラファイトとの混合物において、混合比が1:12重量比の代わりに、3:97重量比に変更されたことを除いては、実施例1と同一方法によって実施し、負極及びコインフルセルを製造した。
【0218】
〔実施例20:負極及びコインフルセルの製造〕
製造例1によって製造されたシリコン含有複合体とグラファイトとの混合物において、混合比が1:12重量比の代わりに、1:1重量比に変更されたことを除いては、実施例1と同一方法によって実施し、負極及びコインフルセルを製造した。
【0219】
〔比較例1:負極及びコインフルセルの製造〕
製造例1によって製造されたシリコン含有複合体の代わりに、比較製造例1によって製造された物質を使用したことを除いては、実施例1と同一方法によって実施し、負極及びコインフルセルを製造した。
【0220】
〔比較例1a:負極及びコインハーフセルの製造〕
製造例1によって製造されたシリコン含有複合体の代わりに、比較製造例1によって製造された物質を使用したことを除いては、実施例9と同一方法によって実施し、負極及びコインハーフセルを製造した。
【0221】
〔比較例2:負極及びコインフルセルの製造〕
製造例1によって製造されたシリコン含有複合体の代わりに、比較製造例2によって製造された物質を使用したことを除いては、実施例1と同一方法によって実施し、負極及びコインフルセルを製造した。
【0222】
〔比較例2a:負極及びコインハーフセルの製造〕
製造例1によって製造されたシリコン含有複合体の代わりに、比較製造例2によって製造された物質を使用したことを除いては、実施例9と同一方法によって実施し、負極及びコインハーフセルを製造した。
【0223】
〔評価例1:充放電特性〕
(1)初期効率、律速性能、クーロン効率及び放電容量の測定
1)実施例1~8及び比較例1
実施例1~8及び比較例1によって製造されたフルセルを利用し、それぞれのコインセルに対して、下記方法によって充放電特性評価を実施した。
(充電:1.0C/カットオフ:4.2V-0.01C,放電:1.0C/カットオフ:2.8V)
前記充放電特性評価結果は、下記表2に示されている通りである。
【0224】
【0225】
〔2)実施例7a、実施例7b、実施例8a及び比較例1〕
実施例7a,7b,8a及び比較例1によって製造されたコインセルを利用し、それぞれのコインセルに対して、下記方法により、45℃での充放電特性評価を実施した。
(充電:1.0C/カットオフ:4.2V-0.01C、放電:1.0C/カットオフ:2.8V)
前記充放電特性評価結果は、下記表3に示されている通りである。
【0226】
【0227】
〔評価例2:ラマン分析〕
製造例1のシリコン含有複合体に係わるラマン分析を実施した。該ラマン分析は、Raman 2010 Spectra(NT-MDT Development Co.)(laser system:473,633,785nm、lowest Raman shift:~50cm
-1、空間解像度(spatial resolution):約500nm)を利用して実施した。製造例1のシリコン含有複合体に係わるラマン分析結果は、
図4に図示されている通りであり、前記ラマン分析結果に基づいて、Gピーク強度に対するDピーク強度の比を測定し、下記表4に示した。
【0228】
グラフェンは、ラマン分析スペクトルにおいて、1,350cm-1、1,580cm-1,2,700cm-1でピークを示すが、該ピークは、グラフェンの厚み、結晶性及び電荷ドーピング状態に係わる情報を与える。1,580cm-1で示されるピークは、Gモードというピークであり、それは、炭素・炭素結合のストレッチングに該当する振動モードに起因し、Gモードのエネルギーは、グラフェンにドーピングされた余剰電荷の密度によって決定される。そして、2,700cm-1で示されるピークは、2Dモードというピークであり、グラフェン厚を評価するときに有用である。前記1,350cm-1で出るピークは、Dモードというピークであり、SP2結晶構造に欠陥があるときに示されるピークである。そして、前記D/G強度比(Id/Ig)は、グラフェン結晶の無秩序度に係わる情報を与える。
【0229】
【0230】
表4を参照すれば、製造例1によって製造されたシリコン含有複合体は、グラフェンの結晶性と品質とが改善されたということが分かる。
【0231】
〔評価例3:XPS分析(グラフェンの酸素及び炭素の含量)〕
1)製造例1~8によって製造されたシリコン含有複合体に対して、XPS分析を実施し、酸素及び炭素の含量を分析し、その分析結果を下記表5に示した。
XPS分析は、Quantum 2000(Physical Electronics Inc.)(加速電圧:0.5~15keV、300W、エネルギー分解能:約1.0eV、sputter rate:0.1nm/min)を利用した。
【0232】
【0233】
前記表5において、炭素含量は、C1sピークに該当する炭素の含量を示したものであり、酸素含量は、O1sピークに該当する酸素含量を示したものである。
【0234】
〔評価例4:電子走査顕微鏡〕
製造例1によって製造されたシリコン含有複合体に対するSEM(scanning electron microscope)分析を実施した。製造例1によって製造されたシリコン含有複合体のSEM分析結果を、
図9A及び
図9Bに示し、参照製造例1によって得られた生成物のSEM分析結果を、
図10A及び
図10Bに示した。
【0235】
それらを参照すれば、製造例1によって製造されたシリコン含有複合体は、参照例1の生成物と比較し、コアに対するシェルの密着性にすぐれ、小サイズのグラフェン層が均一に形成されるということが分かった。
【0236】
〔評価例5:熱重量分析〕
製造例1及び参照製造例1によって製造されたシリコン含有複合体の熱重量分析を実施した。熱重量分析結果を
図5に示した。
図5を参照すれば、製造例1のシリコン含有複合体は、20重量%損失温度が約720℃であり、参照製造例1の場合(20重量%損失温度:708℃)に対して低下し、熱的安定性が改善され、TGA derivativeピーク位置が高い温度側にシフトされるということが分かった。
【0237】
〔評価例6:DCIR(direct-current internal resistance)特性〕
1)実施例1~8及び比較例1
実施例1及び比較例1によって製造されたフルセルの、最初サイクル後及び100回目サイクル後の抵抗特性を下記方法によって測定した。
【0238】
各フルセルに対して、25℃で0.1C rateの電流で、電圧が4.30V(対Li)に至るまで定電流充電し、次に、定電圧モードで4.30Vを維持しながら、0.05C rateの電流でカットオフ(cut-off)した。次に、放電時、電圧が2.8V(対Li)に至るまで、0.1C rateの定電流で放電した(化成段階、最初サイクル)。そのような充放電過程を2回さらに実施し、化成過程を完了した。
【0239】
各フルセルに対して、25℃で0.1C rate(0.38mA/cm2)の電流で、電圧が4.40V(対Li)に至るまで、定電流充電を実施した後、次に、定電圧モードで4.40Vを維持しながら、0.05C rateの電流でカットオフした(2回目サイクル)。
【0240】
2回目サイクルを経たリチウム電池に対して、25℃で1.0C rateの電流で、電圧が4.3V(対Li)に至るまで定電流充電し、次に、定電圧モードで4.3Vを維持しながら、0.01C rateの電流でカットオフした。次に、放電時、電圧が2.8V(対Li)に至るまで1.0C rateの定電流で放電した(3回目サイクル)、そのようなサイクルを、同一条件で反復的に実施した(100回目サイクル)。
【0241】
前述のように充放電を実施した後、リチウム金属電池のインピーダンスは、インピーダンス分析機(Solartron 1260A Impedance/Gain-Phase Analyzer)を使用し、2プローブ(probe)法により、25℃、106ないし0.1MHz周波数範囲で、10mVの電圧バイアスを与えて抵抗を測定することにより、最初サイクル後の直流内部抵抗(DCIR:direct current internal resistance)を評価した。該DCIR上昇率は、下記数式2によって計算し、その評価結果を表6に示した。
(数式2)
DCIR上昇率={(100回目サイクル後のDCIR)/(最初サイクル後のDCIR)}X100
それを参照すれば、実施例1のフルセルは、比較例1の場合と比較し、DCIR上昇率が低下した。
【0242】
【0243】
表6を参照すれば、実施例1,7及び8によって製造されたフルセルにおいて、DCIR上昇率は、比較例1のフルセルに比べ、低下するということが分かった。
2)実施例7a,7b,8a及び比較例1
実施例7a,7b,8a及び比較例1によって製造されたフルセルの最初サイクル後及び100回目サイクル後の抵抗特性を下記方法によって測定した。
【0244】
各フルセルに対して、25℃で0.1C rateの電流で、電圧が4.30V(対Li)に至るまで定電流充電し、次に、定電圧モードで4.30Vを維持しながら、0.05C rateの電流でカットオフした。次に、放電時、電圧が2.8V(対Li)に至るまで0.1C rateの定電流で放電した(化成段階、最初サイクル)。そのような充放電過程を2回さらに実施して化成過程を完了した。
【0245】
各フルセルに対して、25℃で0.1C rate(0.38mA/cm2)の電流で、電圧が4.40V(対Li)に至るまで、定電流充電を実施した後、次に、定電圧モードで4.40Vを維持しながら、0.05C rateの電流でカットオフした(2回目サイクル)。
【0246】
2回目サイクルを経たリチウム電池に対して、25℃で1.0C rateの電流で、電圧が4.3V(対Li)に至るまで定電流充電し、次に、定電圧モードで4.3Vを維持しながら、0.01C rateの電流でカットオフした。次に、放電時、電圧が2.8V(対Li)に至るまで1.0C rateの定電流で放電した(3回目サイクル)、そのようなサイクルを、同一条件で反復的に実施した(100回目サイクル)。
【0247】
そのように充放電を実施した後、リチウム金属電池のインピーダンスは、インピーダンス分析機(Solartron 1260A Impedance/Gain-Phase Analyzer)を使用し、2プローブ法により、25℃、106ないし0.1MHz周波数範囲で、10mVの電圧バイアスを与えて抵抗を測定することにより、最初サイクル後の直流内部抵抗(DCIR)を評価した。該DCIR上昇率は、下記数式2によって計算し、その評価結果を下記表7に示した。
(数式2)
DCIR上昇率={(100回目サイクル後のDCIR)/(最初サイクル後のDCIR)}X100
それを参照すれば、実施例7a,7b,8aのフルセルは、比較例1の場合と比較し、DCIR上昇率が低下した。
【0248】
【0249】
〔評価例7:律速性能〕
実施例1,7,8及び比較例1によって作製されたフルセルに対して、25℃で0.1C rateの電流で、電圧が4.30V(対Li)に至るまで定電流充電し、次に、定電圧モードで4.30Vを維持しながら、0.05C rateの電流でカットオフした。次に、放電時、電圧が3.0V(対Li)に至るまで0.1C rateの定電流で放電した(最初サイクル、化成サイクル)。
【0250】
最初サイクルを経たリチウム電池に対して、25℃で0.2C rateの電流で、電圧が4.3V(対Li)に至るまで定電流充電し、次に、定電圧モードで4.3Vを維持しながら、0.01C rateの電流でカットオフした。次に、放電時、電圧が3.0V(対Li)に至るまで0.2C rateの定電流で放電した(2回目サイクル)。
【0251】
2回目サイクルを経たリチウム電池に対して、25℃で0.5C rateの電流で、電圧が4.3V(対Li)に至るまで定電流充電し、次に、定電圧モードで4.3Vを維持しながら、0.01C rateの電流でカットオフした。次に、放電時、電圧が3.0V(対Li)に至るまで0C rateの定電流で放電した(3回目サイクル)。
【0252】
3回目サイクルを経たリチウム電池に対して、25℃で1.0C rateの電流で、電圧が4.3V(対Li)に至るまで定電流充電し、次に、定電圧モードで4.3Vを維持しながら、0.01C rateの電流でカットオフした。次に、放電時、電圧が3.0V(対Li)に至るまで1.0C rateの定電流で放電した(4回目サイクル)。
【0253】
前述の全充放電サイクルにおいて、1つの充電/放電サイクル後、10分間の停止時間を置いた。
各フルセルの律速性能(rate capability)は、下記数式3によって定義される。
(数式3)
律速特性[%]=(セルに対して、3回目サイクルで1Cの速度で放電させるときの放電容量)/(セルに対して、2回目サイクルで0.2Cの速度で放電させるときの放電容量)X100
各評価結果を表8に示した。
【0254】
【0255】
それを参照すれば、実施例1,7及び8のフルセルは、比較例1のフルセルと比較し、律速性能が改善された。
【0256】
〔評価例8:XPS分析(C/Si含量)〕
製造例1及び参照製造例1によって製造されたシリコン含有複合体に対して、XPS分析を実施した。
X線光電子分光法(X-ray photo electron spectroscopy)を利用し、各試料の、炭素原子とシリコン原子との定量分析を実施した。一定エネルギーを有する光子(X線)を試料に照射すれば、試料から光電子が放出されるが、該光電子の運動エネルギーを測定すれば、光電子を試料から放出するために必要な結合エネルギー(binding energy)を知ることができる。該結合エネルギーは、原子固有の性質であるために、それを介して、元素分析、及び元素の表面濃度の測定が可能である。それにより、定量分析された炭素原子とシリコン原子との量からC/Si含量を計算する。
【0257】
XPS分析は、Quantum 2000(Physical Electronics Inc.)(加速電圧:0.5~15keV、300W、エネルギー分解能:約1.0eV、最小分析領域:10micro、sputter rate:0.1nm/min)を利用した。
【0258】
各試料を110から12時間真空乾燥させた後、XPSの予備チャンバで、室温、10
-4~10
-5torrの真空内で、1~8時間脱ガス処理を行い、分析チャンバに試料を導入した後、背景の真空が10
-10torrオーダーになった後で測定を行った。
結合エネルギーが98ないし105eVのピークを、Si2pに属するものとし、結合エネルギーが282ないし297eVのピークを、C1sに属するものとする。それらピークの積分値の比としてC/Si含量を計算する。XPS分析結果において、C1s、Si2p、N1sに係わるところは、
図6、
図7及び
図8にそれぞれ示し、下記表9には、C/Si含量及び各元素の含量を示した。
【0259】
【0260】
表9を参照すれば、製造例1のシリコン含有複合体は、参照例1のシリコン含有複合体と比較し、C/Si含量が増加した。そのような結果から、製造例1のシリコン含有複合体は、参照製造例1のシリコン含有複合体と比較し、シリコン/シリコンオキサイドとグラフェンとの密着性にさらにすぐれ、グラフェンのコーティング均一性にさらにすぐれるということが分かった。
【0261】
〔評価例9:TEM分析〕
製造例1のシリコン含有複合体を、透過電子顕微鏡を利用して分析した。前記TEM分析時に分析機として、FEI社のTitan cubed G260-300を利用した。
製造例1のシリコン含有複合体に対するTEM分析写真は、
図11A及び
図11Bに図示されている通りである。
【0262】
それらを参照すれば、製造例1のシリコン含有複合体が、シリコン/シリコンオキサイドとグラフェンとの密着性、及びシリコン/シリコンオキサイド上に対するグラフェンコーティング均一性にすぐれるということが分かった。
【0263】
第1グラフェン及び第2グラフェンは、
図11Aに図示されているように、シリコンサブオキサイド(SiO
x)(0<x<2)膜表面に形成された板状及び針状のシリコン粒子の主軸(Y軸)を基準にして、90゜角に配向されるということを確認することができた。
【0264】
以上では、図面及び実施例を参照し、一具現例について説明したが、それらは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野において当業者であるならば、それらから多様な変形、及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって決められるものである。
本発明の、シリコン含有複合体、その製造方法、それを利用した炭素複合体、それを含んだ電極、該リチウム電池及び該電子素子は、例えば、熱電モジュール関連の技術分野に効果的に適用可能である。