(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130639
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】ハーネス外装材及びその取付方法
(51)【国際特許分類】
H02G 3/04 20060101AFI20230913BHJP
B60R 16/02 20060101ALN20230913BHJP
【FI】
H02G3/04 062
B60R16/02 623Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035049
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】橋本 玲遠
(72)【発明者】
【氏名】辻 憲二郎
(72)【発明者】
【氏名】保田 大地
(72)【発明者】
【氏名】山崎 晴美
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】岡 大智
(72)【発明者】
【氏名】大矢 博子
【テーマコード(参考)】
5G357
【Fターム(参考)】
5G357DA06
5G357DB03
5G357DC12
5G357DD01
5G357DD05
5G357DD14
(57)【要約】
【課題】作業に必要なスペースが小さく、かつ、作業が容易かつ短時間で完了できるハーネス外装材を提供する。
【解決手段】ハーネス外装材10aは、ワイヤハーネス50を保護する。ハーネス外装材は、巻付部材20を備える。巻付部材20は、巻き癖が付いたシート状の部材であり、反らせることで広がった状態を維持し、反りを解消することで巻かれた状態に変化する。巻付部材20の巻付き力によりハーネス外装材がワイヤハーネス50に巻き付けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスを保護するハーネス外装材において、
巻き癖が付いたシート状の部材であり、反らせることで広がった状態を維持し、反りを解消することで巻かれた状態に変化する巻付部材を備え、
前記巻付部材の巻付き力により前記ワイヤハーネスに巻き付けられることを特徴とするハーネス外装材。
【請求項2】
請求項1に記載のハーネス外装材であって、
可撓性を有しているシート状の保護部材を備え、
前記巻付部材の端部に前記保護部材が取り付けられており、
前記保護部材は、前記巻付部材の巻付き力により前記ワイヤハーネスに巻き付けられることを特徴とするハーネス外装材。
【請求項3】
請求項2に記載のハーネス外装材であって、
前記保護部材の両端部に前記巻付部材が取り付けられることを特徴とするハーネス外装材。
【請求項4】
請求項3に記載のハーネス外装材であって、
前記保護部材は、
巻付けの軸方向において2つの前記巻付部材で挟まれる位置に配置される主保護部材と、
巻付けの軸方向において前記巻付部材を挟んで前記主保護部材の反対側に配置される端部保護部材と、
を備えることを特徴とするハーネス外装材。
【請求項5】
請求項2から4までの何れか一項に記載のハーネス外装材であって、
前記保護部材に取り付けられ、前記保護部材が前記ワイヤハーネスに巻き付いた後に当該保護部材を巻き締めるための紐と、
前記保護部材に取り付けられ、前記紐を保持する紐保持部と、
を備えることを特徴とするハーネス外装材。
【請求項6】
請求項5に記載のハーネス外装材であって、
前記紐は、前記保護部材の表面と裏面に交互に現れるように当該保護部材に取り付けられており、前記紐を引っ張ることにより当該紐が前記保護部材を巻き締めることを特徴とするハーネス外装材。
【請求項7】
ワイヤハーネスの外周にハーネス外装材を取り付ける取付方法において、
前記ハーネス外装材が備える巻付部材は、巻き癖が付いたシート状であり、反らせることで広がった状態を維持し、反りを解消することで巻かれた状態に変化し、
前記ハーネス外装材を前記ワイヤハーネスに押し当てて前記巻付部材の反りを解消することで、前記ハーネス外装材を前記ワイヤハーネスに巻き付けることを特徴とする取付方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、ワイヤハーネスを保護するハーネス外装材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、バンドクランプ等を用いて車体に取り付けられるワイヤハーネスを開示する。特許文献1では、ワイヤハーネスの外周にテープを巻き付けることにより、ワイヤハーネスを保護する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ワイヤハーネスにテープを巻き付ける作業を行うためには、ワイヤハーネスの周囲に大きなスペースが必要になることがあるため、大きなスペースが必要となる。その結果、例えば車体等の構造物に取り付けられたワイヤハーネスにテープを巻き付ける作業が困難になることがある。更に、ワイヤハーネスにテープを巻き付ける作業に時間が掛かることがある。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、作業に必要なスペースが小さく、かつ、作業が容易かつ短時間で完了できるハーネス外装材を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のワイヤハーネスを保護するハーネス外装材が提供される。即ち、ハーネス外装材は巻付部材を備える。巻付部材は、巻き癖が付いたシート状の部材であり、反らせることで広がった状態を維持し、反りを解消することで巻かれた状態に変化する。前記巻付部材の巻付き力により前記ワイヤハーネスに巻き付けられる。
【0008】
これにより、テープを巻き付けてワイヤハーネスを保護する方法と比較して、作業に必要なスペースが小さく、かつ、作業が容易になり、かつ短時間で作業を完了させることができる。
【0009】
前記のハーネス外装材においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、ハーネス外装材は、可撓性を有しているシート状の保護部材を備える。前記巻付部材の端部に前記保護部材が取り付けられている。前記保護部材は、前記巻付部材の巻付き力により前記ワイヤハーネスに巻き付けられる。
【0010】
巻付部材は巻き癖が付く材料に限定される一方で、保護部材は可撓性があれば様々な材料で実現できる。そのため、要求に応じた保護性能を有する保護部材を用いてワイヤハーネスを保護できる。
【0011】
前記のハーネス外装材においては、前記保護部材の両端部に前記巻付部材が取り付けられることが好ましい。
【0012】
ワイヤハーネスへの巻付け後に保護部材がワイヤハーネスから剥がれにくい。
【0013】
前記のハーネス外装材においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記保護部材は、主保護部材と、端部保護部材と、を備える。前記主保護部材は、巻付けの軸方向において2つの前記巻付部材で挟まれる位置に配置される。前記端部保護部材は、巻付けの軸方向において前記巻付部材を挟んで前記主保護部材の反対側に配置される。
【0014】
ハーネス外装材の端部に端部保護部材が配置されるので、巻付部材とワイヤハーネスの接触を抑制できる。そのため、ワイヤハーネスを損傷しにくくすることができる。
【0015】
前記のハーネス外装材においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、ハーネス外装材は、紐と、紐保持部と、を備える。前記紐は、前記保護部材に取り付けられ、前記保護部材が前記ワイヤハーネスに巻き付いた後に当該保護部材を巻き締める。前記紐保持部は、前記保護部材に取り付けられ、前記紐を保持する。
【0016】
ハーネス外装材をワイヤハーネスに強固に取り付けることができる。
【0017】
前記のハーネス外装材においては、前記紐は、前記保護部材の表面と裏面に交互に現れるように当該保護部材に取り付けられており、前記紐を引っ張ることにより当該紐が前記保護部材を巻き締めることが好ましい。
【0018】
簡単な作業でハーネス外装材をワイヤハーネスに強固に取り付けることができる。また、紐が保護部材から外れにくい。
【0019】
本発明の第2の観点によれば、以下の取付方法が提供される。即ち、取付方法では、ワイヤハーネスの外周にハーネス外装材を取り付ける。前取付方法では、前記ハーネス外装材が備える巻付部材は、巻き癖が付いたシート状であり、反らせることで広がった状態を維持し、反りを解消することで巻かれた状態に変化する。前記ハーネス外装材を前記ワイヤハーネスに押し当てて前記巻付部材の反りを解消することで、前記ハーネス外装材を前記ワイヤハーネスに巻き付ける。
【0020】
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】車体パネル、クランプ部材、及びハーネスの斜視図。
【
図2】ワイヤハーネスにハーネス外装材を取り付ける様子を示す斜視図。
【
図3】巻付部材のみで構成されるハーネス外装材を示す図。
【
図4】保護部材が主保護部材と端部保護部材を含む構成のハーネス外装材を示す図。
【
図5】紐を巻き締めてワイヤハーネスにハーネス外装材を固定する様子を示す斜視図。
【
図6】紐を引っ張ってワイヤハーネスにハーネス外装材を固定する様子を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0023】
図1に示すワイヤハーネス50は、自動車の車体等に配索される。ワイヤハーネス50は、複数の電線を束ねた部品である。また、ワイヤハーネス50は電線に接続される図略のコネクタを備える。ワイヤハーネス50のコネクタは、別の電線又は電気部品等に接続される。
【0024】
図1に示す車体パネル61は、自動車の車体に固定されるパネルである。車体パネル61には、パネル孔61aが形成されている。一方、ワイヤハーネス50は、クランプ部材62により束ねられている。クランプ部材62には、取付突起62aが形成されている。取付突起62aはパネル孔61aに嵌合可能である。取付突起62aをパネル孔61aに嵌合することにより、ワイヤハーネス50が車体パネル61に取り付けられる。
【0025】
また、ワイヤハーネス50を車体パネル61に取り付けた後に、ハーネス外装材10aがワイヤハーネス50に取り付けられる。ハーネス外装材10aは、ワイヤハーネス50の外周(特に、2つのクランプ部材62で挟まれる領域)を覆うことで、ワイヤハーネス50を保護する。
【0026】
従来は、ハーネスを保護するコルゲートチューブ等をテープで取り付けることがあった。しかし、ワイヤハーネス50を車体パネル61に取り付けた後においては、ワイヤハーネス50と車体パネル61の隙間が小さい。そのため、この隙間にテープ芯を通すことができないため、テープを巻き付ける作業が困難になることがあった。
【0027】
この点、本実施形態のハーネス外装材10aは、テープを用いることなくワイヤハーネス50に取付可能である。以下、具体的に説明する。
図2に示すように、ハーネス外装材10aは、巻付部材20と、保護部材30と、を備える。
【0028】
巻付部材20は、例えば金属製又はシリコン製のシート状の部材である。巻付部材20には巻き癖が付けられている。巻き癖とは、巻き方向の力に抵抗する別の力(言い換えれば、巻付きに抗する力)が掛かっていない状態において、所定方向に自然に巻かれて丸まる性質である。巻付部材20は、例えば、巻き癖が付き易い材料を棒状体に巻き付けることにより、製造される。また、巻付部材20が巻かれる際の中心となる方向を軸方向と称する(
図2)。
【0029】
また、ハーネス外装材10aをワイヤハーネス50に取り付ける前の段階において、巻付部材20には、反りが形成されている(
図2の上図)。巻付部材20を反らせることにより、巻付部材20が巻かれることを抑制できるので、巻付部材20が広がった状態を維持できる。詳細には、軸方向及び厚み方向の両方に垂直な前後方向から見たときに、巻付部材20は、凸形状又は凹形状となるように変形している。
【0030】
また、巻付部材20に形成された反りを解消することにより、巻付きに抗する力がなくなるため、巻き癖に起因する巻付き力により、巻付部材20が軸方向を中心として巻かれる(
図2の上図から下図)。詳細には、反りにより形成された凸部分が内側になるようにして巻付部材20が巻かれる。巻付部材20は、巻き癖に起因して巻かれるため、作業者が巻付部材20を手作業で巻く必要はない。
【0031】
保護部材30は可撓性を有するシート状の部材である。保護部材30は、例えばビニルシートであるが、ポリエステル繊維シートであってもよいし、その他の材料であってもよい。保護部材30の材料は、ワイヤハーネス50に要求される耐摩耗性又は防水性等に応じて適宜選択可能である。
【0032】
保護部材30の軸方向の両端には、それぞれ巻付部材20が取り付けられている。巻付部材20と保護部材30は、例えば接着剤を用いて取り付けられている。巻付部材20と保護部材30の端面同士を接着してもよいし、巻付部材20と保護部材30を重ねて接着してもよい。また、接着剤以外を用いて巻付部材20と保護部材30を取り付けてもよいし、別の部材を介して巻付部材20と保護部材30を取り付けてもよい。
【0033】
ワイヤハーネス50が車体パネル61に取り付けられた後において、作業者はハーネス外装材10aを準備する。次に、作業者は、ワイヤハーネス50と車体パネル61の隙間にハーネス外装材10aを差し込む。このとき、巻付部材20の凸部分がワイヤハーネス50側になるようにする。
【0034】
次に、作業者は、
図2の上図の太矢印で示すように、ハーネス外装材10aをワイヤハーネス50に押し付ける。これにより、巻付部材20の反りが解消するため、巻付部材20が軸方向を中心として巻かれる。その結果、巻付部材20をワイヤハーネス50に巻き付かせることができる。巻付部材20には巻き癖が付けられているため、巻付部材20はワイヤハーネス50に巻き付いた状態を維持する。また、保護部材30は可撓性を有しているため、巻付部材20の巻付き力により、巻付部材20と保護部材30が一体的にワイヤハーネス50に巻かれる。以上により、ハーネス外装材10aをワイヤハーネス50に取り付けることができる。
【0035】
ハーネス外装材10aはシート状の部材を組み合わせた構成であるため、厚み方向のサイズは小さい。巻付部材20に反りを形成することにより厚み方向のサイズが若干大きくなるが、巻付部材20を大きく反らせる必要はなく、また反りの大きさは適宜調整可能である。従って、ハーネス外装材10aの厚み方向のサイズは、テープ芯と比較して大幅に小さい。そのため、ワイヤハーネス50と車体パネル61の間に形成される隙間が小さい場合であっても、ハーネス外装材10aをワイヤハーネス50に巻き付ける作業を行うことができる。
【0036】
また、テープを用いる場合、この隙間にテープ芯を通す作業を複数回行う必要がある。これに対し、本実施形態のハーネス外装材10aでは、ハーネス外装材10aを隙間に差し込んで上方向に押圧するだけでよい。従って、テープを用いる場合と比較して、作業の手間を小さくすることができる。また、ハーネス外装材10aをワイヤハーネス50に巻き付ける作業を短時間で完了させることができる。
【0037】
また、ハーネス外装材10aの軸方向の長さは、クランプ部材62同士の間隔に相当することが好ましい。そのため、ワイヤハーネス50の位置に応じて、必要となるハーネス外装材10aのサイズが異なる。クランプ部材62同士の間隔は様々であるため、様々なサイズのハーネス外装材10aが必要となる。従って、例えば軸方向の長さが異なる複数種類の保護部材30を製造し、それに巻付部材20を接着してハーネス外装材10aを製造することが好ましい。このとき、巻付部材20を共通して用いることで、製造コストを低減できる。また、前後方向に長いハーネス外装材10aを製造し、前後方向の必要なサイズに応じてハーネス外装材10aを軸方向に沿って切断してもよい。
【0038】
次に、
図3を参照して、上記実施形態の第1変形例を説明する。
図3は、巻付部材20のみで構成されるハーネス外装材10bを示す図である。なお、以後の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。また、
図3以降では、ワイヤハーネス50、車体パネル61、及びクランプ部材62の表示を簡略化又は省略する。
【0039】
上記実施形態のハーネス外装材10aは、巻付部材20と保護部材30で構成される。これに対し、第1変形例のハーネス外装材10bは、巻付部材20のみで構成され、保護部材30を含まない。第1変形例の巻付部材20の構造は上記実施形態と同じである。ただし、第1変形例の巻付部材20の軸方向の長さは、ワイヤハーネス50の保護対象部分と同じ又は近似する長さにする必要がある。
【0040】
第1変形例のハーネス外装材10bは、上記実施形態のハーネス外装材10aと比較して構造がシンプルである。また、第1変形例のハーネス外装材10bは接合部分が存在しないので、仮に過剰な力がハーネス外装材10bに掛かっても破断しにくい。
【0041】
次に、
図4を参照して、上記実施形態の第2変形例を説明する。
図4は、保護部材30が主保護部材31と端部保護部材32を含む構成のハーネス外装材10cを示す図である。
【0042】
第2変形例の保護部材30は、主保護部材31と、2つの端部保護部材32と、を備える。主保護部材31及び2つの端部保護部材32は、上記実施形態の保護部材30と同じ構成及び材料である。また、主保護部材31の軸方向の長さは、1つの端部保護部材32の軸方向の長さよりも長い。
【0043】
主保護部材31は、ハーネス外装材10cの軸方向の中央に配置されている。主保護部材31は、軸方向において2つの巻付部材20で挟まれている。主保護部材31と巻付部材20は上記実施形態と同様に接着されている。また、主保護部材31の軸方向の長さは、1つの端部保護部材32の軸方向の長さよりも長い。主保護部材31は、ワイヤハーネス50のうち軸方向の中央及びその近傍を保護する。
【0044】
2つの端部保護部材32は、軸方向において、巻付部材20を挟んで主保護部材31の反対側の2箇所にそれぞれ配置されている。従って、端部保護部材32は、ハーネス外装材10cの軸方向の端部に位置している。端部保護部材32と巻付部材20は上記実施形態と同様に接着されている。端部保護部材32は、ワイヤハーネス50のうち軸方向の端部及びその近傍を保護する。
【0045】
主保護部材31及び端部保護部材32は、巻付部材20に接着されている。そのため、巻付部材20の反りが解消されて巻付き力が発生することにより、主保護部材31及び端部保護部材32もワイヤハーネス50に巻き付く。
【0046】
また、端部保護部材32は、更に、以下の機能も有する。即ち、巻付部材20は保護部材30と比較して硬い場合がある。その場合は、ワイヤハーネス50に曲げ方向の力が掛かったときに、巻付部材20の端面とワイヤハーネス50が接触して、ワイヤハーネス50が損傷する可能性がある。この点、第2変形例では、ハーネス外装材10cの軸方向の端部に端部保護部材32が位置している。そのため、ワイヤハーネス50に曲げ方向の力が掛かった場合においてもワイヤハーネス50が損傷しにくい。
【0047】
次に、
図5を参照して、上記実施形態の第3変形例を説明する。
図5は、紐40を巻き締めてワイヤハーネス50にハーネス外装材10dを固定する様子を示す斜視図である。
【0048】
第3変形例では、紐40を用いてハーネス外装材10dを強固にワイヤハーネス50に取り付ける構成を有する。具体的には、第3変形例のハーネス外装材10dは、紐40と、先端部41と、紐保持部42と、を備える。
【0049】
紐40の一端は保護部材30に取り付けられている。詳細には、保護部材30の面のうち、ワイヤハーネス50への巻付き後に外側となる面に紐40の一端が取り付けられている。取付方法は様々であるが、例えば、接着剤による接着、テープ止め、縫い付け等である。
図5に示すように、ハーネス外装材10dをワイヤハーネス50に巻き付けることで、紐40が外表面に位置する。作業者は、例えば紐40を手で持ってハーネス外装材10dを回転させることにより、紐40をハーネス外装材10d(詳細には保護部材30)に巻き締める。なお、ワイヤハーネス50とクランプ部材62の隙間が大きい場合は、この隙間に手を入れて紐40を巻き締めてもよい。
【0050】
紐40の他端には先端部41が形成されている。先端部41は紐40の他の部分と比較してサイズが大きい。先端部41は、紐40とは別の部材を取り付けた構成であってもよいし、紐40を用いて作成した結び目であってもよい。
【0051】
紐保持部42は、保護部材30に取り付けられている。詳細には、保護部材30の面のうち、ワイヤハーネス50への巻付き後に外側となる面に紐保持部42が取り付けられている。紐保持部42は、例えば接着剤又は縫い付け等により取り付けられている。
図5に示すように、ハーネス外装材10dをワイヤハーネス50に巻き付けることで、紐保持部42が外表面に位置する。作業者は、紐40をハーネス外装材10dに巻き締めた後に、先端部41を紐保持部42に保持させる。紐保持部42は、保護部材30から突出するように形成された円板状の部分である。作業者は、紐40を紐保持部42の外周面に巻き付けた後に、先端部41を紐40に引っ掛ける等して紐40を紐保持部42に保持させる。
【0052】
第3変形例の紐保持部42の構成は一例であり、例えば以下のように変更できる。紐保持部42は円板状ではなく、断面T字状であってもよい。具体的には、小径の円柱の上部に大径の円板が形成された形状であってもよい。この場合、大径の円板と保護部材30の間に隙間ができるので、この隙間に紐40を巻き付けたり紐40を挟み込んだりして保持できる。また、この断面T字状の紐保持部42は、小径の円柱が保護部材30を貫通していてもよい。この場合、小径の円柱を裏側から保持することができる。
【0053】
また、第3変形例では、紐40の一端が保護部材30に取り付けられているが、紐40の一端が紐保持部42に取り付けられていてもよい。また、紐保持部42は保護部材30とは別体に限られず、保護部材30の一部を用いて紐保持部42が構成されていてもよい。例えば、保護部材30に矩形状又はT字状の切り込みを入れて剥がすことにより、紐保持部42を形成できる。
【0054】
次に、
図6を参照して、上記実施形態の第4変形例を説明する。
図6は、紐40を引っ張ってワイヤハーネス50にハーネス外装材10eを固定する様子を示す斜視図である。
【0055】
第4変形例では、紐40が保護部材30に縫い付けてある点において、第3変形例とは異なる。具体的には、紐40は、保護部材30の表面と裏面に交互に現れるように、なみ縫いにより縫い付けられている。紐40の他端は第3変形例と同様に保護部材30に固定されている。ただし、紐40の中途部は保護部材30を通っているだけであり、保護部材30に固定されていない。
【0056】
図6に示すように、保護部材30を固定しつつ紐40を引っ張ることにより、保護部材30に皺ができて径が小さくなり、その結果、ハーネス外装材10eをワイヤハーネス50に密着させることができる。特に、第4変形例の紐40は保護部材30の内側を含む部分に配置されており、かつ、保護部材30から外れたり位置がズレたりすることは生じにくい。そのため、ハーネス外装材をワイヤハーネスに強固に取り付けることができる。更に、紐40を巻き付ける方法と比較して、作業者の作業の手間を軽減できる。
【0057】
以上に説明したように、本実施形態のハーネス外装材10a,10b,10c,10d,10eは、ワイヤハーネス50を保護する。ハーネス外装材は、巻付部材20を備える。巻付部材20は、巻き癖が付いたシート状の部材であり、反らせることで広がった状態を維持し、反りを解消することで巻かれた状態に変化する。巻付部材20の巻付き力によりハーネス外装材がワイヤハーネス50に巻き付けられる。
【0058】
これにより、テープを巻き付けてワイヤハーネス50を保護する方法と比較して、作業に必要なスペースが小さく、かつ、作業が容易になり、かつ短時間で作業を完了させることができる。
【0059】
本実施形態のハーネス外装材10a,10b,10c,10d,10eは、可撓性を有しているシート状の保護部材30を備える。巻付部材20の端部に保護部材30が取り付けられている。保護部材30は、巻付部材20の巻付き力によりワイヤハーネス50に巻き付けられる。
【0060】
巻付部材20は巻き癖が付く材料に限定される一方で、保護部材30は可撓性があれば様々な材料で実現できる。そのため、要求に応じた保護性能を有する保護部材30を用いてワイヤハーネス50を保護できる。
【0061】
本実施形態のハーネス外装材10a,10c,10d,10eでは、保護部材30の両端部に巻付部材20が取り付けられる。
【0062】
ワイヤハーネス50への巻付け後に保護部材30がワイヤハーネス50から剥がれにくい。
【0063】
本実施形態のハーネス外装材10cにおいて、保護部材30は、主保護部材31と、端部保護部材32と、を備える。主保護部材31は、巻付けの軸方向において2つの巻付部材20で挟まれる位置に配置される。端部保護部材32は、巻付けの軸方向において巻付部材20を挟んで主保護部材31の反対側に配置される。
【0064】
ハーネス外装材10cの端部に端部保護部材32が配置されるので、巻付部材20とワイヤハーネス50の接触を抑制できる。そのため、ワイヤハーネス50を損傷しにくくすることができる。
【0065】
本実施形態のハーネス外装材10dは、紐40と、紐保持部42と、を備える。紐40は、保護部材30に取り付けられ、保護部材30がワイヤハーネス50に巻き付いた後に保護部材30を巻き締める。紐保持部42は、保護部材30に取り付けられ、紐40を保持する。
【0066】
ハーネス外装材10dをワイヤハーネス50に強固に取り付けることができる。
【0067】
本実施形態のハーネス外装材10eにおいて、紐40は、保護部材30の表面と裏面に交互に現れるように保護部材30に取り付けられており、紐40を引っ張ることにより紐40が保護部材30を巻き締める。
【0068】
簡単な作業でハーネス外装材10eをワイヤハーネス50に強固に取り付けることができる。また、紐40が保護部材30から外れにくい。
【0069】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0070】
上記実施形態では保護部材30の軸方向の両端部に巻付部材20が取り付けられるが、保護部材30の軸方向の一端部のみに巻付部材20が取り付けられてもよい。
【0071】
上記実施形態では車体パネル61とワイヤハーネス50の隙間にハーネス外装材10aを差し込んで上側に押圧するが、これに代えて、以下のようにハーネス外装材10aをワイヤハーネス50に取り付けてもよい。即ち、巻付部材20の凸形状が下向きとなるようにしてワイヤハーネス50の上面にハーネス外装材10aを位置させて、ハーネス外装材10aを押し下げることにより、ハーネス外装材10aをワイヤハーネス50に巻き付かせることができる。
【0072】
上記実施形態では自動車の車体パネル61に取り付けるワイヤハーネス50に本発明を適用する例を示したが、別の物にワイヤハーネス50を取り付ける構成においても本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0073】
10a,10b,10c,10d,10e ハーネス外装材
20 巻付部材
30 保護部材
31 主保護部材
32 端部保護部材
50 ワイヤハーネス
61 車体パネル
62 クランプ部材