(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130745
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】偽造防止媒体
(51)【国際特許分類】
B42D 25/435 20140101AFI20230913BHJP
B41M 3/14 20060101ALI20230913BHJP
B42D 25/30 20140101ALI20230913BHJP
【FI】
B42D25/435
B41M3/14
B42D25/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035210
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】木村 健一
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
【Fターム(参考)】
2C005HA04
2C005HB01
2C005HB02
2C005HB09
2C005HB10
2C005JA06
2C005LB07
2H113AA06
2H113BA03
2H113BA09
2H113BA22
2H113BB07
2H113BB10
2H113BB22
2H113BC09
2H113CA39
2H113DA03
2H113DA04
2H113DA06
2H113DA35
2H113DA49
2H113DA53
2H113DA57
2H113DA58
2H113FA44
(57)【要約】
【課題】本発明は、繊維パターンを利用することにより複製や偽造が困難な偽造防止媒体を提供する。
【解決手段】本発明は、可視光域又は近赤外線の所定の波長域の光を吸収する特性を有する基材上の少なくとも一部、又は基材上の少なくとも一部に所定の波長域の光を吸収する吸収層を有し、基材上又は吸収層に形成された識別画像部を備え、識別画像部は、所定の波長域のレーザ光の照射による基材又は吸収層の変質又は凹凸のレーザ痕から成る第一の繊維パターンを備えた第一の模様部を有することを特徴とする偽造防止媒体である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可視光域又は近赤外線の所定の波長域の光を吸収する特性を有する基材上の少なくとも一部、又は基材上の少なくとも一部に前記所定の波長域の光を吸収する特性を有する吸収層を有し、前記基材上の少なくとも一部又は前記吸収層に形成された識別画像部を備え、
前記識別画像部は、前記所定の波長域のレーザ光の照射による前記基材又は前記吸収層の変質又は凹凸のレーザ痕から成る第一の繊維パターンを備えた第一の模様部を有することを特徴とする偽造防止媒体。
【請求項2】
前記識別画像部は、前記所定の波長域のレーザ光の照射による前記レーザ痕から成る個人情報を備えた第二の模様部を更に備え、前記第一の模様部と前記第二の模様部が隣接又は近接して形成されたことを特徴とする偽造防止媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維パターンを利用することにより複製や偽造が困難な偽造防止媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
偽造防止効果を必要とする銀行券、パスポ-ト、有価証券、身分証明書、カ-ド、通行券等のセキュリティ印刷物(以下「セキュリティ印刷物」という。)は、それぞれ偽造、変造又は改ざん等を防止する対策(以下「偽造防止対策」という。)が施されている。
【0003】
前述の偽造防止対策として、プラスチック板又は金属板等のベースとなる基材(以下「基材」という。)に対し、何らかの固有の繊維配列や繊維の分布状態である繊維パターン(以下「繊維パターン」という。)を形成し、形成した繊維パターンとあらかじめ登録された真正な繊維パターンを照合して真否を確認する方法が多く提案されている。
【0004】
例えば、前述の繊維パターンを使用した偽造防止対策としては、イメージセンサにより読取可能なランダム模様を有する識別用タグにおいて、透明媒体の中に繊維や金属の繊維パターンによるモアレ縞を生じさせる少なくとも一対の繊維パターン部材を立体的に配したことを特徴とする識別用タグが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、支持体内に赤外域に吸収を有する繊維状又は扁平状細片が、繊維パターンとなるように内添された情報識別シートであり、該情報識別シートに500~1500nmの波長からなる赤外線を照射することにより、支持体内の該細片の繊維パターンを可視情報化して読み取り又は記録するものであり、該繊維パターンの情報を繰り返して同定できることを特徴とする情報識別シートが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-29636号公報
【特許文献2】特開2019-92098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1は、繊維や金属ワイヤー等によるランダムな周期構造を特殊繊維により形成したタグであり、秘匿性に優れているが、タグやシール等として商品に付随させる必要があり、タグの付け外しの手間又はシールの貼り直し(以下「貼り直し等」という。)等の不正を招くおそれがあった。
【0008】
また、特許文献2の技術は、赤外線に応答可能な特殊なインキと繊維を使用することから、秘匿性に優れているが、繊維が特殊であることから、高価であるとともに、繊維パターンを形成するために特殊な装置が必要とされていた。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであり、貼り直し等の不正を防止し、特殊な材料及び装置を使用することなく、簡易な方法で作製可能な偽造防止媒体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、可視光域又は近赤外線の所定の波長域の光を吸収する特性を有する基材上の少なくとも一部に、所定の波長域の光を吸収する吸収層を有し、基材上又は吸収層に形成された識別画像部を備え、識別画像部は、所定の波長域のレーザ光の照射による基材又は吸収層の変質又は凹凸のレーザ痕から成る第一の繊維パターンを備えた第一の模様部を有することを特徴とする偽造防止媒体である。
【0011】
本発明は、識別画像部が所定の波長域のレーザ光の照射によるレーザ痕から成る個人情報を備えた第二の模様部を更に備え、第一の模様部と第二の模様部が組み合わされて成ることを特徴とする偽造防止媒体である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の偽造防止媒体は、繊維パターンと隣接又は近接して個人情報が形成されているため、貼り直し等の偽造を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
【0015】
(偽造防止媒体)
図1に、本発明の偽造防止媒体(A1)を示す。本第一の実施形態は、本発明の偽造防止媒体(A1)をカードとして形成した例である。
図1(a)は、偽造防止媒体(A1)の平面図であり、基材(1)上の一部に識別画像部(2)を備え、識別画像部(2)は、第一の模様部(3)と、第二の模様部(4)を有する。さらに、
図1(b)に示すように、識別画像部(2)は、一部拡大図に示す第一の繊維パターン(5)から成る第一の模様部(3)と個人情報から成る第二の模様部(4)が隣接して形成されて成る。
【0016】
本実施の形態では、第二の模様部(4)の周囲全体に第一の模様部(3)が隣接して形成されているが、第二の模様部(4)の少なくとも一部が第一の模様部(3)に隣接して形成されるか、又は第二の模様部(4)と第一の模様部(3)が近接していてもよい。なお、隣接及び近接とは、二以上の模様部の一端が接しているものを隣接、二以上の模様部の一端が近くに形成されているが、わずかに接していないものを近接という。第二の模様部(4)と第一の模様部(3)を隣接又は近接して形成することによって、貼り直し等の偽造を防止することができる。
【0017】
なお、本実施の形態において、識別画像部(2)は、好ましい形態として第一の模様部(3)と第二の模様部(4)を隣接又は近接して形成しているが、第一の模様部(3)と第二の模様部(4)を離して形成又は第一の模様部(3)のみを形成してもよい。
【0018】
なお、本実施の形態では、第一の模様部(3)が基材(1)の一部に形成されているが、基材(1)全体に形成されていてもよい。
【0019】
次に、第一の模様部(3)について説明する。
図2の一部拡大図に示すように、第一の模様部(3)を構成する第一の繊維パターン(5)は、植物繊維、木材繊維又は樹脂繊維で形成された紙、不織布等の繊維シート(以下「繊維シート」という。)を基材(1)上の少なくとも一部に載置し、繊維シートに対して後述する第二の模様部(4)と隣接又は近接する部分にのみ、可視光領域又は近赤外線領域のレーザ光(以下「所定のレーザ光」という。)を照射し、当該レーザ光による基材(1)又は吸収層に形成した基材の変質(炭化、変色化)からなるレーザ痕又は微小なくぼみからなる凹凸のレーザ痕(以下「レーザ痕」という。)により、第一の繊維パターン(5)の基である繊維シート(6)の基繊維パターン(9)を転写することにより形成される。また、後述する第二の模様部(4)においても、第一の繊維パターン(5)と同様に所定のレーザ光の照射による前述のレーザ痕により個人情報が形成されてなる。なお、第一の繊維パターン(5)は、基材(1)の変質による二次元形状又は凹凸を有する三次元形状として形成することができる。
【0020】
第一の繊維パターン(5)を形成する基となる繊維シート(6)は、第一の波長のレーザ光を透過すればよく、トウモロコシ、アバカ、コムギ、オオムギ、イネ、アサ、ソルガム、サトウキビ、パイナップル、ケナフ、サイザル、ジュート、バナナ、茶の葉等の植物の葉自体、あるいは植物繊維、木材繊維又は樹脂繊維で形成された紙、不織布等の公知の繊維シート(6)を使用することができる。なお、紙、不織布等においては、所定の波長域のレーザ光を吸収又は反射する材質である白土、カオリン又は酸化チタン等を塗布又は添加剤が使用されていないことが好ましく、コート紙等の加工紙は適さない。また、繊維シート(6)の坪量は、14.0g/m2以下であることが好ましく、上限を超えた場合は、所定の波長域におけるレーザ光を透過させる妨げとなり、繊維パターンの転写が不可能となる。
【0021】
次に、第二の模様部(4)について説明する。第二の模様部(4)は、所持人の個人情報を印刷によりインキで形成又は所定のレーザ光により形成することができるが、所定のレーザ光の照射によるレーザ痕(基材又は吸収層の変質を含む)で形成することが好ましい。第一の模様部(3)が所定のレーザ光で形成されるため、生産性が良好であり、印刷により形成された模様と比較して、所定のレーザ光で形成されたレーザ痕による模様は、剥がしによる偽造が困難となる。なお、
図3に示すように、本実施の形態では、個人情報として、
図3(a)に示す顔画像により形成されているが、
図3(b)又は
図3(c)に示す所持人の氏名、生年月日及び個人番号等を用いてもよく、所持人ごとに変化させる画像となることから、改ざんや偽造を防ぐための有効な形態となる。
【0022】
(基材)
基材(1)は、基材(1)自体が可視光領域又は近赤外線領域の波長を吸収する特性を有する材料であれば特に限定されず、公知の材料を使用することができる。例えば、金属であれば、アルミ、銅、ステンレス鋼等の公知の金属材料、樹脂であれば、ポリカーボネート(PC)又はポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG)、ポリビニル塩化物(PVC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)等の公知の熱可塑性樹脂シートが挙げられる。また、基材の少なくとも一部に、前述の波長を吸収する公知の材料を含有するインキにより吸収層を形成してもよい。
【0023】
例えば、可視光吸収材料としては、380nm~750nmの可視光領域に吸収波長域を有する材料を用いることができ、例えば、シアニン系色素、ポリメチン系色素、スクアリリウム系色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、サブフタロシアニン系色素、ローダミン系色素、オキソノール系色素、キノン系色素、アゾ系色素、キサンテン系色素等が用いられている。中でもシアニン系色素、ポルフィリン系色素等の公知の材料を使用することができる。
【0024】
また、赤外線吸収材料としては、700nm~1100nmの近赤外線領域に吸収波長域を有する材料を用いることができ、例えば、カーボン、五酸化二燐(P2 O5 )を主成分とし、酸化鉄、酸化銅のいずれか又は双方を含んだガラス系粉等の公知の材料を使用することができる。
【0025】
前述の可視光吸収材料、赤外線吸収材料の粉末又は顔料をワニス等に分散させたインキをスクリーン印刷、グラビア印刷又は凹版印刷等により金属又は赤外線吸収特性を有さない熱可塑性樹脂シート等に付与して吸収層を形成することができる。
【0026】
(所定の波長域のレーザ光)
所定の波長域のレーザ光は、380nm~750nmの可視波長域の可視光レーザ又は760nm~1100nmの波長域を有する近赤外線レーザ(以下「IRレーザ」という。)である。波長域が紫外線領域、中赤外線領域又は遠赤外線領域のレーザ光は、後述する繊維シート(6)が熱により破壊されるため、使用することはできない。可視光レーザとしては、基板を加工する限りにおいて、アルゴンレーザ、半導体レーザ等の公知の可視レーザを使用することができる。また、IRレーザは、基板を加工する限りにおいて、ファイバーレーザ、YAGレーザ、近赤外レーザ、半導体レーザ等の公知のIRレーザを使用することができる。
【0027】
次に、本発明の偽造防止媒体(A1)の作製方法の一例について説明する。
図4(a)に示すように、基材(1)としては、基材(1)自体又は基材(1)に形成した吸収層が所定の波長域のレーザ光(7)を吸収する特性を有する前述の材料から成る基材(1)を使用する。
【0028】
次に、基材(1)に前述の繊維シート(6)を載置する。繊維シート(6)は、所定の波長域のレーザ光(7)を透過する前述の材料から成る繊維シート(6)を使用する。所定の波長域のレーザ光(7)を透過する繊維シート(6)を選定する理由は、繊維シート(6)を形成する繊維を所定の波長域のレーザ光(7)が透過する際に集光し、レーザ痕として基材(1)に繊維パターン(5)を転写するためである。また、基材(1)と繊維シート(6)の間には、空隙がないことが好ましい。空隙がある場合は、繊維シート(6)の基繊維パターン(9)を正確に基材(1)に形成することが困難となる。したがって、所定の波長域のレーザ光(7)が吸収又は反射等による影響を受けない範囲で、基材(1)と繊維シート(6)を接着剤や粘着剤等を使用して密着させるとよい。
【0029】
次に、
図4(b)に示すように、前述の所定の波長域のレーザ光(7)を、基材(1)に載置した繊維シート(6)に対し、第二の模様部(4)を形成する予定の領域(8)以外の全面又は一部に照射して、第一の模様部(3)を形成する。レーザ光(7)の平均出力P(単位:W)は、繊維シート(6)に影響を与えなければ特に限定されないが、例えば、0.5~30W、好ましくは1~20Wである。また、レーザ光がパルスレーザである場合、その繰り返し周波数は、特に限定されないが、1~400kHz、より好ましくは50~100kHzである。また、レーザ光(7)の照射速度は、繊維シート(6)と基材(1)の種類、生産性及び基材(1)に転写する繊維パターン(5)の凹部の深さ等により、適宜調整すればよい。例えば、レーザ光(7)のスポットの移動速度が0.5~10m/s、好ましくは1~6m/sである。この数値範囲内とすることで、工業的な生産性(描画スピード)が図られるので好ましい。
【0030】
次に、
図4(c)に示すように、第一の模様部(3)を形成した後、繊維シート(6)を除き、第二の模様部(4)を形成する予定の領域(8)に対してレーザ光(7)を照射して、レーザ痕による第二の模様部(4)を第一の模様部(3)と隣接して形成することによって、識別画像部(2)を形成し、偽造防止媒体(A1)を作製する。本実施の形態では、第一の模様部(3)の形成後に第二の模様部(4)を形成しているが、第二の模様部(4)を形成した後に、第一の模様部(3)を形成してもよい。また、レーザ光(7)の平均出力P(単位:W)、照射速度は、第一の模様部(3)と同様に、基材(1)の種類、生産性等により、適宜調整すればよい。
【0031】
図5に示すように、作製された偽造防止媒体(A1)は、繊維シート(6)を形成する基繊維パターン(9)と同一の第一の繊維パターン(5)から成る第一の模様部(3)が形成される。繊維シート(6)を形成する繊維は、所定の波長域のレーザ光(7)を透過する性質があることから、繊維シート(6)に所定の波長域のレーザ光(7)を照射することによって、繊維シート(6)を形成する繊維を透過する際に所定の波長域のレーザ光(7)が集光され、基材(1)が変質又は凹凸によるレーザ痕として繊維シート(6)の形状・分布状態である基繊維パターン(9)が転写される。
【0032】
繊維シート(6)は、紙であれば原料となる植物繊維(セルロース)がその位置関係を制御されることなく不定形に絡み合い、これによってランダムな網目構造をなす平面が厚さ方向に幾層にも積み重なって「紙」として形成される。このとき、植物繊維の作り出すランダムに絡み合った構造は、全く同一のものを故意に作り出すことは不可能である。よって、このパターンは、各々の紙固有の個別情報(人間でいえば指紋等の情報(紙紋ともいう))となるため、同一模様の偽造が困難となることによって、偽造防止対策を向上させることができる。
【0033】
例えば、本発明の偽造防止媒体(A1)は、繊維パターン(5)である第一の模様部(3)と個人情報である第二の模様部(4)と組み合わせて形成することによって、あらかじめデータベースに記録した真正品と比較するか、カード又はパスポートに内蔵したICに繊維パターン(5)と個人情報を記録し、当該記録と比較することにより、真正か否かを判断することができる。更に、第一の模様部(3)と第二の模様部(4)が隣接又は近接して形成されているため、貼り直し等の不正を防止することが可能であり、かつ、特殊な材料及び特殊な装置を使用することなく、公知の繊維シート(6)と装置により作成することができる。
【0034】
なお、本発明の偽造防止媒体(A1)の真正か否かの判定は、第一の模様部(3)の第一の繊維パターン(5)と真正品の繊維パターン(5)を比較するか、第一の模様部(3)と第二の模様部(4)の境界における繊維パターン(5)と真正品の第一の模様部(3)と第二の模様部(4)の境界における繊維パターン(5)とを比較してもよい。比較字には、画像又は繊維の絡み合いによる濃度のデータや、繊維の絡み合いによる特徴点の位置データのいずれか一方又は両方のデータを真正品の特徴量としてあらかじめ記録し、画像データとマッチング又は特徴量とを比較して基準値内であることにより判定する等、公知の判定技術を使用することができる。
【実施例0035】
本発明の実施例について、本実施の形態と同様に
図4及び
図5を用いて説明をする。なお、本発明は、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0036】
図4(a)に示すように、基材(1)は、近赤外線を吸収する材料を含むレーザ発色層を有する白色のポリカーボネートシート(厚さ0.40mm)を使用し、繊維シート(6)は、坪量7.3g/m
2の紙(灰煮典具帳紙)を使用した。また、第一の模様部(3)と第二の模様部(4)のレーザ痕は、レーザ発色層の変色による二次元構造として、基材(1)の表面上に作成することとした。さらに、基材(1)の表面に繊維シート(6)を水道水で希釈した水性系接着剤で貼り付け、自然乾燥させて載置した。
【0037】
次に、
図4(b)に示すように、キーエンス製YVO4レーザマーカにより波長域が近赤外域(波長1064nm)のレーザ光(7)を使用し、繊維シート(6)を貼りつけた基材(1)に対し、繊維シート(6)側から近赤外域(波長1064nm)のレーザ光(7)を第二の模様部(4)を形成する予定の領域(8)以外の領域に照射して第一の模様部(3)を形成した。近赤外域(波長1064nm)のレーザ光(7)の加工条件は、レーザ出力20%、スキャンスピード600mm/s、Qスイッチ周波数60kHz、スキャンピッチ0.042mm、2回照射とした。
【0038】
次に、
図4(c)に示すように、第一の模様部(3)を形成後、基材(1)の表面から繊維シート(6)をはがし、第二の模様部(4)を形成する予定の領域(8)に近赤外域(波長1064nm)のレーザ光を照射して第二の模様部(4)を第一の模様部(3)に隣接して形成し、識別画像部(2)を作成することにより、偽造防止媒体(A1)を作製した。第一の模様部(3)の表面は、
図5の点線の一部拡大図に示すように、繊維シート(6)の繊維形状・分布状態である繊維パターン(5)が転写されていた。
【0039】
次に、作製した偽造防止媒体(A1)の第一の模様部(3)の第一の繊維パターン(5)の画像データと、繊維シート(6)の基繊維パターン(9)の画像データをパターンマッチングにより比較したところ、同一であることから、繊維シート(6)の基繊維パターン(9)が転写できていることを確認した。