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  • 特開-画像形成装置及び画像形成方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130829
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】画像形成装置及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/08 20060101AFI20230913BHJP
   G03G 9/09 20060101ALI20230913BHJP
   G03G 9/087 20060101ALI20230913BHJP
   G03G 15/01 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
G03G9/08 391
G03G9/09
G03G9/087
G03G15/01 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035346
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】熊木 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】矢部 謙治
(72)【発明者】
【氏名】澤田 豊志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一己
【テーマコード(参考)】
2H300
2H500
【Fターム(参考)】
2H300EB04
2H300EB07
2H300EB12
2H300EC02
2H300EC05
2H300EF03
2H300EJ10
2H300EJ49
2H300EJ50
2H300FF20
2H300GG02
2H300MM05
2H500AA01
2H500AA06
2H500AA13
2H500AA14
2H500CA05
2H500EA13A
2H500EA13B
2H500EA24A
2H500EA60C
(57)【要約】
【課題】十分な耐久性を有する立体画像を形成することができる画像形成装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る画像形成装置は、静電潜像担持体と、前記静電潜像担持体の上に静電潜像を形成する静電潜像形成部と、前記静電潜像を現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像部と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写部と、前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着部と、を備え、前記現像剤には、接着媒体と発泡性粒子とが用いられる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体の上に静電潜像を形成する静電潜像形成部と、
前記静電潜像を現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像部と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写部と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着部と、を備え、
前記現像剤には、接着媒体と発泡性粒子とが用いられる画像形成装置。
【請求項2】
前記接着媒体と前記発泡性粒子とは、混練されずそれぞれ独立した状態を維持したまま混合されている請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記接着媒体は、前記発泡性粒子と前記記録媒体を接着させる第1トナーである請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1トナーが、白色トナー又は無色トナーである請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1トナーが、無色トナーである請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記無色トナーが、ポリオレフィンを含有し、
前記無色トナーは、示差走査熱量測定による1回目の昇温後の降温時に40℃~70℃の範囲に発熱ピークを有し、
前記ポリオレフィンは、示差走査熱量測定による1回目の昇温後の降温時には発熱ピークがなく、2回目の昇温時に0℃~30℃の範囲に発熱ピークを有する請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記無色トナーが、少なくとも主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィンを含有する請求項5又は6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記接着媒体が含まれる接着媒体層と、前記発泡性粒子とは独立して使用される第2トナーを含む画像層とが、前記記録媒体側から前記接着媒体層及び前記画像層の順に積層する第1の作像順にしたがって前記記録媒体の上に積層される請求項1~7の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記接着媒体が含まれる接着媒体層と、前記発泡性粒子が含まれる発泡性粒子層と、前記発泡性粒子とは独立して使用される第2トナーを含む画像層とが、前記記録媒体側から前記接着媒体層、前記発泡性粒子層及び前記画像層の順に積層する第2の作像順にしたがって前記記録媒体の上に積層される請求項1~7の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記第2トナーが、着色剤を含むカラートナーである請求項8又は9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
静電潜像担持体の上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、
前記静電潜像を現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像工程と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着工程と、を含み、
前記現像剤には、接着媒体と発泡性粒子とが用いられる画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式のカラー画像形成装置が広く普及するに従い、その用途も多種多様に広がり、通常の平面的な画像とは異なり、例えば、基材上に熱発泡性トナー等の発泡剤を含む発泡性トナーを紙面上に定着させた後に発泡剤を膨張(又は発泡)させて、立体的なカラー画像を形成する画像形成装置がある。
【0003】
このような立体的なカラー画像を形成する画像形成装置として、例えば、結着樹脂と、結着樹脂に内添され、溶融温度が結着樹脂より高い180℃以上の内添粒子とを各溶融温度より低い温度で混練することによって形成した現像剤を用いて、立体的な画像を形成する画像形成装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の画像形成装置は、結着樹脂と内添粒子とを混練して形成された現像剤を用いているため、画像の耐久性が十分高められず、カラー画像の色味が薄くなる、という問題があった。
【0005】
本発明の一態様は、十分な耐久性を有する立体画像を形成することができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像形成装置の一態様は、
静電潜像担持体と、
前記静電潜像担持体の上に静電潜像を形成する静電潜像形成部と、
前記静電潜像を現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像部と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写部と、
前記記録媒体に転写された転写像を定着させる定着部と、を備え、
前記現像剤には、前記接着媒体と発泡性粒子とが用いられる。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様は、十分な耐久性を有する立体画像を形成することができる画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
図2】表面粗さの減少率の測定結果を示す図である。
図3】色差の測定結果を示す図である。
図4】表面粗さの減少率の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、実施形態は以下の記述によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本明細書において数値範囲を示す「~」は、別段の断わりがない限り、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0010】
一実施形態に係る画像形成装置について説明するに当たり、一実施形態に係る画像形成装置に用いられるトナー、現像剤及びトナーセットについて説明する。
【0011】
<トナー>
トナーは、結着樹脂(定着用樹脂)としてポリオレフィンを含有する。トナーは、示差走査熱量測定(DSC)による1回目の昇温後の降温時に40℃~70℃の範囲に発熱ピークを有し、ポリオレフィンはDSCによる1回目の昇温後の降温時に発熱ピークがなく、2回目の昇温時に0℃~30℃の範囲に発熱ピークを有することが好ましい。
【0012】
トナーが、ポリオレフィンを含有し、トナーのDSCによる1回目の昇温後の降温時に40℃~70℃の範囲に発熱ピークが出現し、ポリオレフィンのDSCによる1回目の昇温後の降温時には発熱ピークが出現せず、2回目の昇温時に0℃~30℃の範囲に発熱ピークが出現する。これにより、トナーは、低融点となり、結晶化し難くなるため、トナーのプラスチックフィルムへの定着性が高められる。
【0013】
なお、プラスチックフィルムは、紙媒体以外の非紙媒体であり、プラスチックフィルムには、その材質の違いから、ポリエチレン製フィルム、ポリプロピレン製フィルム、ポリエチレンテレフタレート製フィルム、塩化ビニル樹脂製フィルム、ポリスチレン製フィルム、アクリル製フィルム、ポリカーボネート製フィルム、ポリフェニレンサルファイド製フィルム、フッ素樹脂製フィルム、ポリエーテルエーテルケトン製フィルム、ポリエーテルサルフォン製フィルム、アラミド製フィルム、ポリイミド製フィルム、トリアセテート製フィルム等がある。プラスチックフィルムには、その表面を異なる材質で表面コート処理等施したものも含む。
【0014】
トナーは、DSCによる1回目の昇温後の降温時に生じる発熱ピークは、40℃~70℃であり、45℃~70℃であることがより好ましく、50℃~70℃であることがさらに好ましい。トナーの、DSCによる1回目の昇温後の降温時に生じる発熱ピークが40℃未満である場合、トナーの輸送時、及び保管環境での温度変化によりトナーの凝集が発生し易くなる。その結果、トナーボトル中での固化及び現像機内でのトナーの固着が発生し易くなる。また、トナーボトル内でのトナー詰りによる補給不良及び現像機内でのトナー固着による画像異常が発生し易くなる。一方、トナーの、DSCによる1回目の昇温後の降温時に生じる発熱ピークが70℃を超える場合、トナーは、結晶化し易くなる。
【0015】
トナーは、上述の通り、結着樹脂を含み、必要に応じて、着色剤、離型剤等の他の成分を含有してもよい。
【0016】
[結着樹脂]
結着樹脂は、上述の通り、ポリオレフィンを含み、ポリオレフィン以外の結着樹脂を含有してもよい。
【0017】
(ポリオレフィン)
ポリオレフィンは、少なくとも主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィンであることが好ましい。
【0018】
(主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィンの、構造、含有量、融点、重量平均分子量及びマレイン酸変性率について)
主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィンは、主鎖にポリプロピレンブロックを有するポリオレフィンの末端又は側鎖をマレイン酸で変性させたものである。
【0019】
主鎖は、ポリプロピレンブロック、ポリエチレンブロック及びポリブテンブロックのうちの何れか1つ以上を含有するブロック共重合体であることが好ましい。
【0020】
主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィンのトナー中での含有量は、2.1質量%~30.0質量%であることが好ましく、3.0質量%~20.0質量%であることがより好ましく、5.0質量%~10.0質量%であることがさらに好ましい。含有量が2.1質量%以上であれば、トナーのプラスチックフィルム、特に表面が平滑かつ撥水性のプラスチックフィルムに対して十分な定着性を得ることができる。また、含有量が30.0質量%以下であれば、定着時にトナー中への主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィンの微分散が可能であり、表面に露出する量を減らすことができるため、耐熱保存性を維持することができる。前記含有量は、トナーのDSCによる1回目の昇温後の降温時に40℃~70℃の範囲に出現する発熱ピークの発熱量から算出することができる。前記含有量が2.1質量%~30.0質量%であるトナーは、DSC測定による1回目の昇温後の降温時に40℃~70℃の範囲に発熱ピークが検出される。
【0021】
主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィンの融点は、60℃~100℃であることが好ましく、63℃~95℃であることがより好ましく、65℃~90℃であることがさらに好ましい。融点が60℃以上である場合には、トナーで形成される画像同士が熱で接着し難くすることができる。融点が100℃以下である場合には、トナーのプラスチックフィルムへの十分な低温定着性が得られるため、低温で定着させることができる。そのため、定着時にプラスチックフィルムのカールが発生することを抑制することができる。
【0022】
主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィンの重量平均分子量は60000~100000であることが好ましく、65000~90000であることがより好ましく、70000~80000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が60000以上である場合には、プラスチックフィルムへの定着性が得られる。重量平均分子量が100000以下である場合には、融点が低くかつ溶融粘度が低いため、プラスチックフィルムへの十分な定着性が得られる。
【0023】
主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィンのマレイン酸変性率は、0.5質量%~8.0質量%であることが好ましく、1.0質量%~7.0質量%であることがより好ましく、3.0質量%~6.0質量%であることがさらに好ましい。マレイン酸変性率が上記の好ましい範囲内であれば、トナー溶融時に主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィンがフィルムとトナーとの界面に染み出すことができるため、プラスチックフィルムに対して良好な定着性が得られると考えられる。
【0024】
主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィンとして、具体的には、東洋紡株式会社のTOYOTAC-L、TOYOTAC-KE、TOYOTAC-KH、TOYOTAC-T等が挙げられる。
【0025】
(トナーから主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィンを分離する方法)
トナーに含まれる、主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィンの、単離、定性分析及び定量分析は様々な方法で行うことができる。例えば、トナーを、下記のように、スペクトル分析、元素分析、DSC測定、その他の化学分析等の様々な方法により分析することができる。トナー自体では分析が困難な場合には、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン等の結着樹脂を溶解する溶剤でトナーをソックスレー抽出し、ろ液をエバボレーターで濃縮後、主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィンを分離し、所定の分析を行えばよい。さらに、GPCにより分取したサンプル、及び単独の溶媒又は混合した溶媒で分別抽出したサンプルについて分析を行う等、様々な分析方法を用いることが可能である。これらの分析方法は、単独でも用いてもよいし、必要に応じて組み合わせて用いてもよい。
【0026】
(GC-MSによる成分分析)
トナー中の、主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィンの、存在の確認及び定量は、以下の手順、装置及び条件により行うことができる。
【0027】
((試料処理))
トナーをクロロホルム中に分散させ、一昼夜攪拌する。続いて、この分散液を遠心分離し、上澄み液のみを回収する。回収した上澄み液を蒸発乾固したものをガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)により組成分析する。GC-MSによる測定条件の一例を以下に示す。そして、約1mg程度の試料にメチル化剤(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド20%メタノール溶液:TMAH)を約1μL滴下した混合物を試料とする。
【0028】
((測定条件))
・熱分解-ガスクロマトグラフ質量分析(Py-GCMS)計分析装置:島津製作所製QP2010
・加熱炉:フロンティア・ラボ製Py2020D
・加熱温度:320℃
・カラム:Ultra ALLOY-5L=30m、I.D=0.25mm、Film=0.25μm
・カラム温度:50℃(保持時間:1分)~昇温(10℃/分)~340℃(保持時間:7分)
・スプリット比:1:100
・カラム流量:1.0ml/min
・イオン化法:EI法(70eV)
・測定モード:スキャンモード
・検索用データ:NIST 20 MASS SPECTRAL LIB.
【0029】
(NMRによる成分分析)
トナー中の主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィンの存在の確認、定量は、以下の手順・装置・条件により行うことができる。
【0030】
((試料調製))
トナーをクロロホルム中に分散させ一昼夜攪拌する。続いて、この分散液を遠心分離し上澄み液のみを回収する。回収した上澄み液を蒸発乾固したものを1H-NMR用、13C-NMR用の試料にして、GC-MSにより組成分析する。1H-NMR用の試料の準備方法、13C-NMR用の試料の準備方法及び測定条件の一例を以下に示す。
【0031】
(1)1H-NMR用の試料の調製
試料100mgに、1mLのd8-トルエンを加えて、ドライヤーで温めて溶解させ、H-NMRを測定する。
(2)13C-NMR用の試料の調製
試料100mgに、1mLの重水素化1,2-ジクロロトルエンを加えて、ドライヤーで温めて溶解させ、13C-NMRを測定する。
【0032】
((測定条件))
・NMR装置(ECX-500、日本電子製)
・測定核=1H(500MHz)、測定パルスファイル=single pulse dec.jxp(1H)、45℃パルス、積算20000回、Relaxation Delay-4秒、データポイント32K、Offset 100ppm、観測幅=250ppm、測定温度70℃
・測定核=13C(125MHz)、測定パルスファイル=single pulse dec.jxp(13C)、45℃パルス、積算 64回、Relaxation Delay 5秒、データポイント32K、観測幅=15ppm、測定温度65℃
【0033】
(重量平均分子量の測定方法)
トナーの重量平均分子量は、THF溶解分の分子量分布をゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定装置によって測定することで得られる。GPC)測定装置として、例えば、GPC-150C(ウォーターズ社製)等を用いることができる。
【0034】
測定は、カラム(KF801~KF807、ショウデックス社製)を使用し、以下の方法で行うことができる。
【0035】
例えば、40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定させ、この温度におけるカラムに、溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流す。
【0036】
次いで、試料0.05gをTHF5gに十分に溶かした後、前処理用フィルター(例えば、クロマトディスク(孔径0.45μm、クラボウ製))でろ過し、最終的に試料濃度を0.05質量%~0.6質量%に調製する。試料濃度を調製したTHF試料溶液をカラムに50μl~200μl注入して、THF試料溶液に含まれるTHF溶解分を分離した後、検出器で分子量に換算することで、THF試料溶液に含まれるTHF溶解分の重量平均分子量Mwを測定することができる。
【0037】
試料に含まれるTHF溶解分の重量平均分子量の測定は、試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント数との関係から算出する。
【0038】
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、例えば、Pressure Chemical社又は東洋ソーダ工業社製の分子量が、6×102、2.1×102、4×102、1.75×104、5.1×104×105、3.9×105、8.6×105、2×106、4.48×106であるポリスチレンを用いることができ、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。
【0039】
また、検出器には、示差屈折率(RI)検出器を用いることができる。
【0040】
(DSCによる融点等の熱特性の測定法)
DSCによる融点等の熱特性の測定は、自動示差走査熱量計(例えば、DSC-60A Plus、島津製作所製)を用いることができる。例えば、試料5mgをアルミニウムパンに計量しセットし、-20℃まで冷却した後、下記の温度条件で昇温と降温を行いながら測定を行う。なお、融点とは、2回目の昇温における吸熱ピーク温度をさす。
((温度条件))
・1回目の昇温は、昇温速度10℃/分で-20℃から150℃まで昇温
・2回目の降温は、降温速度-10℃/分で150℃から-20℃まで降温
・2回目の昇温は、昇温速度10℃/分で-20℃から150℃まで昇温
【0041】
(ポリエステル樹脂)
結着樹脂は、ポリオレフィン以外に、ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。ポリエステル樹脂は、主成分として含まれることが好ましい。ポリエステル樹脂は、一般的に他の結着樹脂よりも、耐熱保存性を維持したまま低温定着が可能であるため、トナーの結着樹脂として好適に用いることができる。
【0042】
ポリエステル樹脂は、アルコールとカルボン酸との縮重合によって得られる。
【0043】
アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレングリコール、ジエングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、1、4-ビス(ヒドロキシメタ)シクロヘキサン及びビスフェノールA等のエーテル化ビスフェノール類、その他二価のアルコール単量体、三価以上の多価アルコール単量体を挙げることができる。
【0044】
カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、マロン酸等の二価の有機酸単量体、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,2,5-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸等の三価以上の多価カルボン酸単量体を挙げることができる。
【0045】
ポリエステル樹脂のガラス転移点(ガラス転移温度ともいう)Tgとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、50℃~75℃であることが好ましい。なお、ポリエステル樹脂のガラス転移点Tgは、DSCにより測定することができる。
【0046】
(他の結着樹脂)
トナーは、上記のポリエステル樹脂及びポリオレフィン以外の、他の結着樹脂成分を含有することができる。他の結着樹脂として、例えば、スチレン、ポリ-α-スチルスチレン、スチレン-クロロスチレン共重合体、スチレン-プロピレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-塩化ビニル共重合体、スチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体)、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、石油樹脂、ポリウレタン樹脂、ケトン樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂、ポリビニルブチラート樹脂等の公知の結着樹脂が挙げられる。
【0047】
結着樹脂の製造方法は、特に限定されるものではなく、塊状重合、溶液重合、乳化重合、懸濁重合等の公知の製造方法を用いることができる。
【0048】
[その他の成分]
トナーは、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、離型剤、着色剤、帯電制御剤、外添剤、流動性向上剤、クリーニング性向上剤、磁性材料等が挙げられる。
【0049】
(離型剤)
離型剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。離型剤としては、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、天然パラフィン、合成パラフィン、ポリオレフィンワックス及びこれらの、部分酸化物、フッ化物、塩化物等の脂肪族炭化水素;牛脂、魚油等の動物油;やし油、大豆油、菜種油、米ぬかワックス、カルナウバワックス等の植物油;モンタンワックス等の高級脂肪族アルコール・高級脂肪酸、脂肪酸アマイド、脂肪酸ビスアマイド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、ベヘニン酸亜鉛等の金属石鹸;脂肪酸エステル、ポリフッ化ビニリデン等が使用できる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
上記各成分のうち、脂肪酸エステル等のエステルワックスを少なくとも含有することが好ましい。主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィンをトナーに含有させた場合、その含有量が多いと、定着時にトナーと定着ローラ(又は定着ベルト)が分離できずに廃紙ジャムつまりが生じる可能性がある。離型剤として、エステルワックスを加えることで、その不具合を抑制できる。さらに、主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィンは、エステルワックスを微分散させることができる。
【0051】
エステルワックスのトナー中での含有量は、0.1質量%~8.0質量%であることが好ましい。含有量が0.1質量%以上であると、定着時にトナーと定着ローラ(又は定着ベルト)が分離でき、廃紙ジャムつまりが生じることを抑制することができる。また、含有量が8.0質量%以下であると、トナーのプラスチックフィルムへの十分な定着性を得ることができる。
【0052】
(着色剤)
着色剤としては、特に制限はなく、通常使用される着色剤を適宜選択して使用することができる。
【0053】
ブラックトナーとしては、カーボンブラック単独又はカーボンブラックを主成分として銅フタロシアニン等を混合し、色相を及び明度を調整したものが好ましい。
【0054】
シアントナーとしては、ピグメントブルー15:3である銅フタロシアニン、又は銅フタロシアニンにアルミフタロシアニンを混合したものが好ましい。
【0055】
マゼンタトナーとしては、ピグメントレッド53:1、ピグメントレッド81、ピグメントレッド122、ピグメントレッド269等を用いることができる。これらは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。
【0056】
イエロートナーとしては、ピグメントイエロー74、ピグメントイエロー155、ピグメントイエロー180、ピグメントイエロー185等を用いることができる。これらは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよい。これらの中でも、ピグメントイエロー185、又はピグメントイエロー74とピグメントイエロー185との混合物が、彩度及び保存性の面から好ましい。
【0057】
白色顔料としては、二酸化チタンに、ケイ素、ジルコニア、アルミ、ポリオール等の表面処理を施したもの等を用いることができる。
【0058】
グリーントナーとしては、ピグメントグリーン7等を用いることができるが、安全面に留意する必要がある。
【0059】
ブルートナーとしては、ピグメントブルー15:1、ピグメントバイオレット23等を用いることができる。
【0060】
トナーは、上に重ねるトナーの色味を損なわないという観点から、白色又は無色(着色剤含有せず)であることが好ましい。トナーを下地層(最も記録媒体側に画像形成する層)として用い、その上層にカラートナー層である画像層が形成される場合、カラートナーの色味を損なうことを軽減することができる。
【0061】
(帯電制御剤)
帯電制御剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、ホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイド等のジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートの如きジオルガノスズボレート類、有機金属錯体、キレート化合物、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体、第四級アンモニウム塩が挙げられる。他の帯電制御材としては、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールの如きフェノール誘導体類等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
帯電制御剤をトナーに添加する場合、結着樹脂に対して0.1質量部~10質量部添加することが好ましい。 また、帯電制御剤により着色される場合もあるため、ブラックトナーを除いて、できるだけ透明色のものを選定することが好ましい。
【0063】
(外添剤)
外添剤として、無機微粒子等を用いることができる。
【0064】
無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、けい砂、クレー、雲母、けい灰石、珪藻土、酸化クロム、酸化セリウム、べんがら、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化珪素、窒化珪素等を挙げることができる。これらの中でも、シリカ、アルミナ、酸化チタンが好ましい。
【0065】
また、無機微粒子は、疎水化処理剤により表面処理されたものを使用してもよい。疎水化処理剤としては、例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤等が好ましい表面処理剤として挙げられる。また、シリコーンオイルを疎水化処理剤として用いても十分な効果が得られる。
【0066】
また、無機微粒子の一次粒子の平均粒子径は、5nm~500nmであることが好ましく、より好ましくは10nm~200nmである。平均粒子径が5nm以上であれば、無機微粒子の凝集が抑えられ、トナー中で無機微粒子を均一に分散させることができる。平均粒子径が500nm以下であれば、フィラー効果による耐熱保存性の向上が得られる。
【0067】
なお、平均粒子径とは、透過型電子顕微鏡により得られる写真より直接粒子径を求めた値であり、少なくとも100個以上の粒子を観察しその長径の平均値を用いることが好ましい。
【0068】
(流動性向上剤)
流動性向上剤は、表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止可能なものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイル等が挙げられる。シリカ、酸化チタンは、このような流動性向上剤により表面処理行い、疎水性シリカ、疎水性酸化チタンとして使用するのが特に好ましい。
【0069】
(クリーニング性向上剤)
クリーニング性向上剤は、感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するために、トナーに添加されるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。クリーニング性向上剤としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸等の脂肪酸金属塩、ポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子等のソープフリー乳化重合により製造されたポリマー微粒子等が挙げられる。該ポリマー微粒子は、比較的粒度分布が狭いものが好ましく、体積平均粒径が0.01μm~1μmのものが好適である。
【0070】
(磁性材料)
磁性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、鉄粉、マグネタイト、フェライト等が挙げられる。これらの中でも、色調の点で白色のものが好ましい。
【0071】
[トナーの製造方法]
トナーの製造方法の一例について説明する。まず、結着樹脂、着色剤、離径剤、更に必要に応じて帯電制御剤等を、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機により混合して、結着樹脂の混合物を得る(混合工程)。
【0072】
次いで、混合物を、加熱ロール、ニーダ、エクストルーダー等の熱溶融混練機を用いて溶融混練し、混合物の混練物を得る(溶融混練工程)。
【0073】
次いで、混練物を冷却して固化することで、混練物の固形物を得る(固化工程)。冷却方法及び固化方法は、特に限定されず、適宜任意の方法を用いることができる。
【0074】
次いで、固形物を微粉砕して、固形物の粉砕物を得る(微粉砕工程)。固形物は、公知の粉砕方法を用いて粉砕することができる。粉砕方法として、例えば、高速気流中にトナーを包含させ、衝突板にトナーを衝突させた時のエネルギーで固形物を粉砕するジェットミル方式、トナー同士を気流中で衝突させる粒子間衝突方式、高速に回転したローターと狭いギャップ間にトナーを供給して粉砕する機械式粉砕法等を使用することができる。
【0075】
次いで、粉砕物を分級して、所定の体積平均粒径を有する粉砕物を回収する。これにより、トナーを得ることができる(分級工程)。分級方法は、特に限定されず、適宜任意の方法を用いることができる。
【0076】
また、トナーは、溶解懸濁法を用いて製造することができる。溶解懸濁法を用いてトナーを製造する際、結着樹脂、着色剤、離径剤、更に必要に応じて帯電制御剤等のトナー材料を有機溶媒に溶解又は分散させた油相を、水系媒体(水相)中に分散させて、結着樹脂を反応させる。これにより、トナー材料を乳化乃至分散させたプレポリマーを含む分散体(油滴)を含む分散液を得る。その後、分散液から有機溶媒を除去し、ろ過、洗浄及び乾燥を行い、さらに必要に応じて分級等を行うことにより、トナーの母体粒子を製造する。溶解懸濁法を用いて得られた母体粒子を造粒することで、トナーを得ることができる。
【0077】
有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、除去が容易である点で、沸点が150℃未満の有機溶媒が好ましい。
【0078】
沸点が150℃未満の有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0079】
これらの中でも、酢酸エチル、トルエン、キシレン、ベンゼン、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等が好ましく、酢酸エチルがより好ましい。
【0080】
水系媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、水と混和可能な溶媒、これらの混合物等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、水が好ましい。
【0081】
水と混和可能な溶媒としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコール、低級ケトン類、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セロソルブ類等が挙げられる。アルコールとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。低級ケトン類としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0082】
分散液から有機溶媒を除去する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、反応系全体を徐々に昇温させて、油滴中の有機溶媒を蒸発させる方法、分散液を乾燥雰囲気中に噴霧して、油滴中の有機溶媒を除去する方法等が挙げられる。
【0083】
分級は、液中でサイクロン、デカンター、遠心分離等により、微粒子部分を取り除くことにより行ってもよいし、乾燥後に分級操作を行ってもよい。
【0084】
このように、トナーは、ポリオレフィンを含有し、トナーは、DSCによる1回目の昇温後の降温時に40℃~70℃の範囲に発熱ピークを有し、ポリオレフィンは、DSCによる1回目の昇温後の降温時に発熱ピークがなく、2回目の昇温時に0℃~30℃の範囲に発熱ピークを有ることができる。トナーは、低融点であり、結晶化し難くすることができるため、印刷紙、プラスチックフィルム等の被着体に接着させた際、被着体との接着力を高め、被着体に対する定着性を高めることができる。よって、トナーは、被着体に対して優れた定着性及び画像堅牢性を有することができる。
【0085】
また、トナーは、低融点であるため、被着体に定着させる際、被着体が必要以上に高温に加熱されることを抑えることができるため、被着体にカールが発生することを抑制することができる。
【0086】
さらに、トナーは、低融点であり、結晶化し難くすることができるため、優れた耐熱保存安定性を有することができる。なお、耐熱保存安定性は、トナーを高温及び多湿(例えば、40℃、70RH%)の環境下で長期間(例えば、14日間)保管した後にトナー中に生じる凝集体の発生量から評価することができる。
【0087】
トナーを用いれば、被着体に定着した状態を維持することができるため、トナーからなる層を被着体に直接接する下地層として用いることができる。下地層の上にカラートナーで形成された画像層を設けることで、画像層を下地層を介して被着体に良好に定着させることができる。また、トナーを用いて形成した下地層は、適度な可撓性を有することができるため、印刷紙、プラスチックフィルム等の被着体のように、変形し易い媒体でも、下地層が変形して被着体に追従させ易くすることができる。さらに、トナーを用いて形成した下地層が被着体の動きに追従し易くなることで、下地層が被着体から剥離等が生じることを抑制することができる。そのため、下地層の表面に設ける画像層は被着体の表面の色の影響等を受け難くし、画像層が出したい色再現性や発色性が損なわれることを抑制することができる。よって、トナーを用いれば、被着体の表面に発色性が良い画像を形成することができると共に、被着体の表面に形成した画像を安定して維持することができる。
【0088】
トナーは、上記の通り、被着体に対して高い接着性を有するため、被着体と、発泡性粒子又は着色剤を含むカラートナーで形成される画像層とを接着させる接着媒体として好適に用いることができる。
【0089】
また、トナーは、着色剤を含まない場合には無色トナー(透明トナー)として用いることができ、白色顔料の着色剤を含む場合には白色トナーとして用いることができる。
【0090】
<現像剤>
現像剤は、上記のトナーと、発泡性粒子を含み、必要に応じてキャリア等の適宜選択されるその他の成分を含むことができる。これにより、被着体の表面に定着性に優れた下地層として接着媒体層を形成することができる。
【0091】
(発泡性粒子)
発泡性粒子は、発泡性トナーを用いることができる。発泡性トナーとしては、一般的な熱発泡性トナー等を用いることができる。
【0092】
熱発泡性トナーは、結着樹脂と発泡剤と赤外線吸収剤とを含有する微粒子であり、発泡剤がトナー粒子の表面に実質的に露出していないことが好ましい。発泡剤が実質的に表面に露出していない熱発泡性トナーを使用すれば、高い熱膨張性を有すると共に記録媒体に対する接着性及び帯電安定性を良好に維持することができる。
【0093】
発泡性トナーの結着樹脂としては、特に制限されるものではなく、トナー用の結着樹脂として一般に用いられる樹脂が使用できる。具体的には、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ジエン系樹脂、フェノール樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等が挙げられるが、好ましくはポリエステル樹脂である。
【0094】
発泡剤としては、特に制限されるものではなく、熱によって体積膨張するものであれば、どのようなものでも使用できる。また、発泡剤は、常温で固体のものであっても、液体のものであってもよい。さらに、発泡剤は、単一物質からなる材料に限られず、複数の物質からなる材料や、マイクロカプセル粒子等の機能性材料であってもよい。発泡剤の発泡温度は、いかなる装置を使用して立体画像を形成するかによってその好ましい範囲が異なるが、非熱発泡性の有色トナー(後述する第2トナー)等からなるトナー像を形成する通常の画像形成装置により立体画像を形成する場合にはそのトナー像の加熱定着に必要な定着温度以下の温度であることが好ましい。
【0095】
赤外線吸収剤としては、好ましくは、肉眼で見ることのできる波長400nm~700nmまでの可視光領域において光の吸収特性を有さず、波長700nm以上の非可視領域において光の吸収特性を有するものが使用される。その非可視域で光吸収特性を有する赤外線吸収材としては、具体的に、CuOをドープしたガラス粉や、ポリマー中にCuイオンを導入した複合ポリマー等を用いることができる。なお、可視光領域において光の吸収特性を有する赤外線吸収剤を使用した場合には、有色トナー像の発色性が損なわれる不具合があるため、適切ではない。
【0096】
熱発泡性トナーは、例えば、少なくとも結着樹脂と発泡剤と赤外線吸収剤とを溶剤に溶解または分散させた油相を水相に縣濁分散させてその油相からなる粒子を作製する工程と、その粒子から溶剤を除去する工程とを含む製法によって作製される。この他にも、熱発泡性トナーは、少なくとも発泡剤と赤外線吸収剤とを溶解又は分散させた結着樹脂用のモノマーを水相中で縣濁重合する工程を含む製法によって作製してもよい。
【0097】
熱発泡性トナー中における赤外線吸収剤の含有割合は、任意に設定することができるが、例えば、熱発泡性トナー全体に対して、0.5質量%~90質量%の割合とする。
【0098】
発泡性粒子としては、発泡剤を熱可塑性樹脂のシェルに内包した熱膨張性粒子を用いることもできる。熱膨張性粒子のシェルに用いられる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂やアクリロニトリル樹脂等が挙げられる。また、熱膨張性粒子の平均粒径は、発泡前の状態で10μm~50μmであることが好ましく、15μm~35μmであることがより好ましい。発泡性粒子として、具体的には、クレハ社製のダイフォームや積水化学工業社製のアドバンセルEM等を用いることができる。
【0099】
発泡性粒子とトナーを混合する場合、トナーに対して発泡性粒子を0.5質量%~10.0質量%混合するのが好ましく、2質量%~5質量%混合するのがより好ましい。
【0100】
現像剤は、一成分現像剤であってもよいし、二成分現像剤であってもよいが、近年の情報処理速度の向上に対応した高速プリンタ等に使用する場合には、寿命向上の点から、二成分現像剤であることが好ましい。
【0101】
上記のトナーを一成分現像剤として用いる場合、トナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像ローラへのトナーのフィルミングや、トナーを薄層化するブレード等の部材へのトナーの融着が少なく、現像装置における長期の攪拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0102】
現像剤を二成分現像剤に用いる場合には、キャリアと混合して現像剤として用いることができる。トナーを二成分現像剤として用いる場合、長期にわたるトナーの収支が行われても、トナーの粒子径の変動が少なく、現像装置における長期の撹拌においても、良好で安定した現像性及び画像が得られる。
【0103】
二成分現像剤中のキャリアの含有量は、目的に応じて適宜選択することができるが、二成分現像剤100質量部に対して、90質量部~98質量部が好ましく、93質量部~97質量部がより好ましい。
【0104】
現像剤は、磁性一成分現像方法、非磁性一成分現像方法、二成分現像方法等の公知の各種電子写真法による画像形成に好適に用いることができる。
【0105】
[キャリア]
キャリアとして磁性体微粒子を用いることができる。磁性体微粒子としては、マグネタイト、ガンマ酸化鉄等のスピネルフェライト、鉄以外の金属(Mn、Ni、Zn、Mg、Cu等)を一種又は二種以上含有するスピネルフェライト、バリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライト、表面に酸化層を有する鉄や合金の粒子を使用できる。化学的な安定性を考慮すると、マグネタイト、ガンマ酸化鉄を含むスピネルフェライトやバリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライトを用いることが好ましい。具体的には、MFL-35S、MFL-35HS(パウダーテック社製)、DFC-400M、DFC-410M、SM-350NV(同和鉄粉工業社製)等が好適な例として挙げられる。
【0106】
特に、キャリアとして高磁化を要する場合には、キャリアとして鉄等の強磁性体微粒子を用いることが好ましい。
【0107】
キャリアの形状は、粒状、球状、針状のいずれであってもよい。
【0108】
キャリアの種類及び含有量を適宜選択することにより、所望の磁化を有する樹脂キャリアを使用することができる。この時の樹脂キャリアの磁気特性は、1,000エルステッドにおける磁化の強さが30emu/g~150emu/gであることが好ましい。
【0109】
このような樹脂キャリアは、キャリアと絶縁性バインダー樹脂との溶融混練物をスプレードライヤーで噴霧して製造したり、キャリアの存在下に水性媒体中でモノマー又はプレポリマーを反応させて硬化させることで、縮合型バインダー中にキャリアが分散された樹脂キャリアを製造することができる。
【0110】
キャリアの表面には正帯電性又は負帯電性の微粒子又は導電性微粒子を固着させたり、樹脂をコーティングしたりして、帯電性を制御することができる。
【0111】
表面のコート材(樹脂)としては、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂等を用いることができる。さらに正帯電性又は負帯電性の微粒子又は導電性微粒子を含んでコーティングすることができるが、中でも、シリコーン樹脂及びアクリル樹脂が好ましい。
【0112】
現像装置内に収容される現像剤中のキャリアの重量比率は、85質量%~98質量%未満であることが好ましい。重量比率が85wt%以上98質量%未満であれば、現像装置からのトナーの飛散が抑えられ易くなり、不良画像の発生を減らすことができる。また、電子写真現像用トナーの帯電量が過度に上昇したり、電子写真現像用トナーの供給量が不足することを抑えることができるため、画像濃度が低下して不良画像が発生することを低減することができる。
【0113】
<トナーセット>
トナーセットは、上記のトナーと、結着樹脂及び着色剤を含むカラートナーとを有することができる。
【0114】
カラートナーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜公知のカラートナーを選択することができる。結着樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トナーに含まれる結着樹脂と同様のものとすることができる。着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜、上述の着色剤を選択することができる。
【0115】
<画像形成装置>
次に、一実施形態に係る画像形成装置について説明する。一実施形態に係る画像形成装置は、静電潜像担持体と、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成部と、静電潜像担持体に形成された静電潜像をトナー又はトナーを含む現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像部とを有し、更に必要に応じて、その他の構成を有することができる。
【0116】
トナーを含む現像剤では、接着媒体と発泡性粒子とが混練されずそれぞれ独立した状態を維持したまま混合されていることが好ましい。
【0117】
一実施形態に係る画像形成装置は、より好ましくは、上記の、静電潜像担持体、静電潜像形成部及び現像部の他に、トナー像を記録媒体に転写する転写部と、記録媒体の表面に転写された転写像を定着させる定着部とを備える。
【0118】
現像部において、一実施形態に係るトナーが使用される。好ましくは、一実施形態に係るトナーを含有し、更に必要に応じて、キャリア等のその他の成分が含有された現像剤を用いることにより、トナー像を形成してもよい。
【0119】
(静電潜像担持体)
静電潜像担持体(「電子写真感光体」、「感光体」と称することがある)の材質、形状、構造、大きさ等としては、特に制限されず、公知のものの中から適宜選択することができる。静電潜像担持体の材質としては、例えば、アモルファスシリコン、セレン等の無機感光体、ポリシラン、フタロポリメチン等の有機感光体(OPC)等が挙げられる。
【0120】
静電潜像担持体の形状としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、円筒状が好ましい。円筒状の静電潜像担持体の外径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、3mm~100mmが好ましく、5mm~50mmがより好ましく、10mm~30mmが特に好ましい。
【0121】
(静電潜像形成部)
静電潜像形成部としては、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する手段であれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。静電潜像形成部は、例えば、前記静電潜像担持体の表面を一様に帯電させる帯電装置(帯電器)と、前記静電潜像担持体の表面を像様に露光する露光装置(露光器)とを備える。
【0122】
帯電器としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、導電性又は半導電性のロール、ブラシ、フィルム、ゴムブレード等を備えた接触帯電器、コロトロン、スコロトロン等のコロナ放電を利用した非接触帯電器等が挙げられる。
【0123】
帯電器の形状としては、ローラの他にも、磁気ブラシ、ファーブラシ等どのような形態をとってもよく、画像形成装置の仕様や形態にあわせて選択することができる。
【0124】
帯電器としては、静電潜像担持体に接触乃至非接触状態で配置され、直流及び交流電圧を重畳印加することによって静電潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。また、帯電器が、静電潜像担持体にギャップテープを介して非接触に近接配置された帯電ローラであり、帯電ローラに直流並びに交流電圧を重畳印加することによって静電潜像担持体表面を帯電するものが好ましい。
【0125】
帯電器としては、接触式の帯電器に限定されるものではないが、帯電器から発生するオゾンが低減された画像形成装置が得られる点から、接触式の帯電装置を用いることが好ましい。
【0126】
露光器としては、帯電器により帯電された静電潜像担持体の表面に、形成すべき像様に露光を行うことができる限り特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、複写光学系、ロッドレンズアレイ系、レーザ光学系、液晶シャッタ光学系、等の各種露光器が挙げられる。
【0127】
露光器に用いられる光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザ(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般等が挙げられる。
【0128】
また、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
【0129】
なお、静電潜像担持体の裏面側から像様に露光を行う光背面方式を採用してもよい。
【0130】
(現像部)
現像部は、静電潜像担持体に形成された前記静電潜像を現像してトナー像を形成できれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。現像部は、例えば、トナーを収容し、静電潜像にトナーを接触又は非接触的に付与可能な現像器を備えるものを好適に用いることができ、トナー入り容器を備えた現像器等が好ましい。
【0131】
現像器は、単色用現像器であってもよいし、多色用現像器であってもよい。現像器として、例えば、トナーを摩擦攪拌させて帯電させる攪拌器と、内部に固定された磁界発生部とを有し、表面にトナーを含む現像剤を担持して回転可能な現像剤担持体を有する現像装置が好ましい。
【0132】
現像部は、4つ備えることができる。現像部は、上記のトナーからなる第1トナーと、シアン、マゼンタ及びイエローのカラートナーからなる第2トナーとを備える。一実施形態に係るトナーは、無色又は白色であることが好ましく、無色であることよりこより好ましい。また、現像部は、シアン、マゼンタ及びイエローのカラートナーの一部を一実施形態に係るトナーである第1トナーとしてもよい。
【0133】
(転写部)
転写部としては、トナー像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写部と、複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写部とを有する態様が好ましい。なお、中間転写体としては、特に制限されず、目的に応じて公知の転写体の中から適宜選択することができ、例えば、転写ベルト等が好適に挙げられる。
【0134】
転写部(第一次転写手段及び第二次転写部)は、静電潜像担持体(感光体)上に形成されたトナー像を記録媒体側へ剥離帯電させる転写器を少なくとも有することが好ましい。転写部は1つであってもよいし、2以上であってもよい。
【0135】
転写器としては、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラ、圧力転写ローラ、粘着転写器、等が挙げられる。
【0136】
なお、記録媒体としては、代表的には普通紙であるが、現像後の未定着像を転写可能なものなら、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、OHP用のPETベース等も用いることができる。
【0137】
(定着部)
定着部としては、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができるが、公知の加熱加圧部が好適である。加熱加圧部としては、加熱ローラと加圧ローラとの組合せ、加熱ローラと加圧ローラと無端ベルトとの組合せ等が挙げられる。
【0138】
定着部は、発熱体を具備する加熱体と、加熱体と接触するフィルムと、フィルムを介して加熱体と圧接する加圧部材とを有し、フィルムと加圧部材の間に未定着画像を形成させた記録媒体を通過させて加熱定着できる加熱加圧部であることが好ましい。
【0139】
加熱加圧部における加熱は、通常、80℃~200℃が好ましい。
【0140】
加熱加圧部における面圧としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10N/cm~80N/cmであることが好ましい。
【0141】
なお、本実施形態においては、目的に応じて、定着部と共に又はこれに代えて、例えば、公知の光定着器を用いてもよい。
【0142】
(その他)
一次形態に係る画像形成装置は、その他、例えば、除電部、リサイクル部、制御部等を備えることができる。
【0143】
((除電部))
除電部としては、特に制限されず、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加することができればよく、公知の除電器の中から適宜選択することができ、例えば、除電ランプ等が好適に挙げられる。
【0144】
((クリーニング部))
クリーニング部は、静電潜像担持体上に残留するトナーを除去することができればよく、公知のクリーナの中から適宜選択することができる。クリーニング部として、例えば、磁気ブラシクリーナ、静電ブラシクリーナ、磁気ローラクリーナ、ブレードクリーナ、ブラシクリーナ、ウエブクリーナ等が挙げられる。
【0145】
一次形態に係る画像形成装置は、クリーニング部を有することにより、クリーニング性を向上させることができる。すなわち、トナー間付着力を制御することにより、トナーの流動性が制御され、クリーニング性を向上させることができる。また、劣化後のトナーの特性を制御することにより、高寿命化や高温多湿等の過酷な条件下においても、優れたクリーニング品質を維持することができる。さらに、感光体上におけるトナーから外添剤を十分に遊離させることができるため、クリーニングブレードニップ部における外添剤の堆積層(ダム層)を形成することにより、高いクリーニング性を達成することができる。
【0146】
((リサイクル部))
リサイクル部としては、特に制限されず、公知の搬送手段等が挙げられる。
【0147】
((制御部))
制御部は、上記の各部の動きを制御することができる。制御部としては、上記の各部の動きを制御できれば、特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シークエンサー、コンピュータ等の制御機器が挙げられる。
【0148】
一実施形態に係る画像形成装置は、上記の、現像部、転写部及び定着部により、接着媒体である第1トナーが含まれる接着媒体層と、発泡性粒子とは独立して使用されるカラートナーである第2トナーを含む画像層とを、記録媒体側から下記の第1の作像順にしたがって記録媒体の上に積層することが好ましい。
第1の作像順:接着媒体層、画像層の順
【0149】
また、一実施形態に係る画像形成装置は、上記の、現像部、転写部及び定着部により、接着媒体である第1トナーが含まれる接着媒体層と、発泡性粒子が含まれる発泡性粒子層と、発泡性粒子とは独立して使用されるカラートナー第2トナーを含む画像層とを、記録媒体側から、下記の第2の作像順にしたがって記録媒体の上に積層することが好ましい。
第2の作像順:接着媒体層、発泡性粒子層、画像層の順
【0150】
一実施形態に係る画像形成装置は、一実施形態に係るトナーを用いて画像形成を行うことができるため、プラスチックフィルムに対して優れた定着性を有し、消費電力を抑えることができると共に、高画質な画像を安定して提供することができる。
【0151】
<画像形成方法>
一実施形態に係る画像形成方法は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する静電潜像形成工程と、前記静電潜像をトナー又はトナーを含む現像剤を用いて現像してトナー像を形成する現像工程とを含み、更に必要に応じて、その他の工程を含み、現像剤には、接着媒体と発泡性粒子とを用いる。前記画像形成方法は、前記画像形成装置により好適に行うことができ、前記静電潜像形成工程は、前記静電潜像形成部により好適に行うことができ、前記現像工程は、前記現像部により好適に行うことができ、前記その他の工程は、前記その他の部により好適に行うことができる。
【0152】
また、一実施形態に係る画像形成方法は、より好ましくは、上記の、静電潜像形成工程及び現像工程の他に、前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体の表面に転写された転写像を定着する定着工程とを含む。
【0153】
現像工程において、一実施形態に係るトナーが使用される。好ましくは、一実施形態に係るトナーを含有し、更に必要に応じて、キャリア等のその他の成分が含有された現像剤を用いることにより、トナー像を形成してもよい。
【0154】
静電潜像形成工程は、静電潜像担持体上に静電潜像を形成する工程であり、静電潜像担持体表面を帯電させる帯電工程と、帯電された静電潜像担持体表面を露光して静電潜像を形成する露光工程とを含む。帯電は、例えば、帯電器を用いて静電潜像担持体の表面に電圧を印加することにより行うことができる。露光は、例えば、前記露光器を用いて前記静電潜像担持体の表面を像様に露光することにより行うことができる。静電潜像の形成は、例えば、静電潜像担持体の表面を一様に帯電させた後、像様に露光することにより行うことができ、静電潜像形成部により行うことができる。
【0155】
現像工程は、静電潜像を複数色のトナーにより順次現像してトナー像を形成する工程である。トナー像の形成は、例えば、静電潜像を前記トナーを用いて現像することにより行うことができ、現像器により行うことができる。
【0156】
現像器内では、例えば、トナーとキャリアとが混合攪拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラの表面に穂立ち状態で保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラは、静電潜像担持体(感光体)近傍に配置されているため、マグネットローラの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって静電潜像担持体(感光体)の表面に移動する。その結果、静電潜像がトナーにより現像されて静電潜像担持体(感光体)の表面にトナーによるトナー像が形成される。
【0157】
転写工程は、トナー像を記録媒体に転写する工程である。転写工程は、中間転写体を用い、中間転写体上にトナー像を一次転写した後、トナー像を記録媒体上に二次転写する態様が好ましい。転写工程は、二色以上のトナー、好ましくはフルカラートナーを用い、トナー像を中間転写体上に転写して複合転写像を形成する第一次転写工程と、複合転写像を記録媒体上に転写する第二次転写工程とを含む態様がより好ましい。転写は、例えば、トナー像を転写帯電器を用いて静電潜像担持体(感光体)を帯電することにより行うことができ、転写部により行うことができる。
【0158】
定着工程は、記録媒体に転写されたトナー像を定着装置を用いて定着させる工程であり、各色の現像剤に対し記録媒体に転写する毎に行ってもよいし、各色の現像剤に対しこれを積層した状態で一度に同時に行ってもよい。
【0159】
一次形態に係る画像形成方法では、接着媒体である第1トナーが含まれる接着媒体層と、発泡性粒子とは独立して使用されるカラートナーである第2トナーを含む画像層とを、記録媒体側から下記の第1の作像順にしたがって記録媒体の上に積層してよい。
第1の作像順:接着媒体層、画像層の順
【0160】
また、一次形態に係る画像形成方法では、接着媒体である第1トナーが含まれる接着媒体層と、発泡性粒子が含まれる発泡性粒子層と、発泡性粒子とは独立して使用されるカラートナー第2トナーを含む画像層とを、記録媒体側から、下記の第2の作像順にしたがって記録媒体の上に積層してよい。
第2の作像順:接着媒体層、発泡性粒子層、画像層の順
【0161】
一次形態に係る画像形成方法は、更に必要に応じて適宜選択したその他の工程、例えば、除電工程、クリーニング工程、リサイクル工程等を含むことができる。
【0162】
除電工程は、静電潜像担持体に対し除電バイアスを印加して除電を行う工程であり、除電部により好適に行うことができる。
【0163】
クリーニング工程は、静電潜像担持体上に残留する前記トナーを除去する工程であり、クリーニング部により好適に行うことができる。
【0164】
リサイクル工程は、クリーニング工程により除去したトナーを現像部にリサイクルさせる工程であり、リサイクル部により好適に行うことができる。
【0165】
一実施形態に係る画像形成方法は、一実施形態に係るトナーを用いて画像形成を行うことができるため、プラスチックフィルムに対して優れた定着性を有し、消費電力を抑えることができると共に、高画質な画像を安定して提供することができる。
【0166】
[画像形成装置の一態様]
次に、一実施形態に係る画像形成装置の一の態様について、図1を参照しながら説明する。図1では、一実施形態に係る画像形成装置を適用可能な画像形成装置としてのタンデム型カラー複写機の実施形態について説明する。図1は、一実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。なお、図1では、トナーは無色であるが、トナーの現像部及び一次転写ローラは省略する。
【0167】
図1に示すように、タンデム型カラー複写機(以下、複写機500という)は、画像形成装置の本体部としてのプリンタ部100の上方に、原稿読込部4及び原稿搬送部3を備え、プリンタ部100の下方に給紙部7を備える。原稿搬送部3は、原稿読込部4に原稿を搬送し、原稿読込部4は搬送されてきた原稿の画像情報を読み込む。給紙部7は、記録媒体である転写紙Pが収容される給紙カセット26、給紙カセット26内の転写紙Pをプリンタ部100に向けて送り出す給紙ローラ27を備える。なお、図1中の一点鎖線は、複写機500内での転写紙Pの搬送経路を示す。
【0168】
プリンタ部100の上部は、出力画像が形成された転写紙Pが積載される排紙トレイ30となっている。プリンタ部100は、各色(イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk))のトナー像を形成する作像部としての四つの作像ユニット6(6Y、6M、6C、6Bk)と、中間転写ユニット10とを備える。各作像ユニット6(6Y、6M、6C、6Bk)は、各色トナー像が形成される像担持体としてのドラム状の感光体1(1Y、1M、1C、1Bk)、及び各感光体1(1Y、1M、1C、1Bk)の表面上に形成された静電潜像を現像する現像装置5(5Y、5M、5C、5Bk)を備える。
【0169】
中間転写ユニット10は、中間転写ベルト8や一次転写バイアスローラ9(9Y、9M、9C、9Bk)を備える。
【0170】
中間転写ベルト8は、各感光体1(1Y、1M、1C、1Bk)の表面上に形成された各色トナー像が重ねて転写され、表面上で、カラートナー像が形成される中間転写体である。
【0171】
また、一次転写バイアスローラ9(9Y、9M、9C、9Bk)は、各感光体1(1Y、1M、1C、1Bk)の表面上に形成されたカラートナー像を中間転写ベルト8に転写する一次転写手段である。
【0172】
プリンタ部100は、中間転写ベルト8上のカラートナー像を転写紙P上に転写するための二次転写バイアスローラ19を備える。また、給紙ローラ27によって送り出された転写紙Pを中間転写ベルト8と二次転写バイアスローラ19とが対向する二次転写ニップに搬送するタイミングを調整するレジストローラ対28を備える。さらに、プリンタ部100は、二次転写ニップの上方に転写紙P上の未定着トナー像を定着する定着装置20を備える。
【0173】
プリンタ部100内の排紙トレイ30の下方、且つ、中間転写ユニット10の上方には、各色のトナー容器11(11Y、11M、11C、11Bk)が配置されている。各色のトナー容器11(11Y、11M、11C、11Bk)は、各現像装置5(5Y、5M、5C、5Bk)に供給する各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナーを収容する。
【0174】
本実施形態においては、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの作像ユニットに、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックのトナーの代わりに、白色トナー、無色トナー及び発泡粒子性粒子を含むトナー等を投入して、画像を形成することもできる。
【0175】
このように、一実施形態に係る画像形成装置は、電潜像担持体と、静電潜像形成部と、現像部と、転写部と、定着部とを備え、現像剤には、接着媒体及び発泡性粒子が用いられる。接着媒体には上記のトナーからなる第1トナーが用いられる。第1トナー及び発泡性粒子を用いて形成される接着媒体層の上にカラートナーで形成された画像層を形成すると、第1トナーにカラートナーが付着した状態で強固に定着させることができるため、画像層の定着性能を高まることができる。よって、一実施形態に係る画像形成装置は、十分な耐久性を有する立体画像を形成することができる。
【0176】
一実施形態に係る画像形成装置は、現像剤に、接着媒体である第1トナーと発泡性粒子とを、混練されずそれぞれ独立した状態を維持したまま混合させることができる。これにより、一実施形態に係る画像形成装置は、接着媒体である第1トナーと発泡性粒子とをそれぞれ独立した状態、即ち混練されていない状態で、発泡性粒子を含む接着媒体層の上に画像層を形成することで、第1トナーにカラートナーが付着した状態で強固に定着させることができるため、画像層定着性能を向上させることができる。よって、一実施形態に係る画像形成装置は、発泡性粒子を接着媒体である第1トナーに含んでいる場合でも、十分な耐久性を有する立体画像を形成することができる。
【0177】
一実施形態に係る画像形成装置は、接着媒体を、発泡性粒子と記録媒体を接着させる第1トナーとして用いることができる。これにより、一実施形態に係る画像形成装置は、第1トナーを介して発泡性粒子と記録媒体を接着させることができる。
【0178】
一実施形態に係る画像形成装置は、第1トナーとして白色トナー又は無色トナーを用いることができる。白色トナー又は無色トナーは、発泡性粒子の発泡前後での接着媒体層の色味の変化を小さく抑えることができる。よって、一実施形態に係る画像形成装置は、発泡性粒子を発泡させて画像層を立体的に形成しても、接着媒体層の色味の変化を小さく抑えることができるため、画像層の変色を抑えることができる。
【0179】
一実施形態に係る画像形成装置は、第1トナーに無色トナーを用いることができる。無色トナーは、発泡性粒子の発泡前後での接着媒体層の色味の変化をさらに小さく抑えることができる。よって、一実施形態に係る画像形成装置は、発泡性粒子を発泡させて画像層を立体的に形成しても、接着媒体層の色味の変化をさらに小さく抑えることができるため、画像層の変色をより確実に抑えることができる。
【0180】
一実施形態に係る画像形成装置は、無色トナーが、ポリオレフィンを含有し、示差走査熱量測定による1回目の昇温後の降温時に40℃~70℃の範囲に発熱ピークを有し、ポリオレフィンは、示差走査熱量測定による1回目の昇温後の降温時には発熱ピークがなく、2回目の昇温時に0℃~30℃の範囲に発熱ピークを有することができる。無色トナーを含む現像剤を用いて印刷すればトナーの定着性をさらに向上させることができるといえる。即ち、無色トナーは、ポリオレフィンを含むことで、ポリマーに対して濡れ性が高められるため、ポリマーで構成される発泡性粒子の外殻に対する濡れ性を高めることができる。これにより、無色トナーは、被着体に対する接着性を高められるため、無色トナーの表面に設けられる画像層が出したい色再現性や発色性が損なわれることを抑制することができる。よって、一実施形態に係る画像形成装置は、無色トナーの表面に画像層を発色性良く、安定して維持することができる。
【0181】
一実施形態に係る画像形成装置は、無色トナーにマレイン酸変性ポリオレフィンを含有することができる。マレイン酸変性ポリオレフィンを含有する無色トナーを含む現像剤を用いて印刷すればトナーの定着性をさらに向上させることができる。即ち、無色トナーは、主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸ポリオレフィンを含むことで、発泡性粒子の外殻に対する濡れ性をさらに高め、被着体に対する接着性をさらに向上させることができるため、無色トナーの表面に設けられる画像層が出したい色再現性や発色性が損なわれることをさらに抑制することができる。よって、一実施形態に係る画像形成装置は、無色トナーの表面に画像層をさらに発色性良く、安定して維持することができる。
【0182】
一実施形態に係る画像形成装置は、第1の作像順にしたがって記録媒体の上に接着媒体層と画像層とを記録媒体側からこの順に積層することができる。これにより、一実施形態に係る画像形成装置は、画像層を接着媒体層を介して記録媒体に高い定着性を発揮することができる。
【0183】
即ち、発砲性粒子とトナーを混錬して単層で印刷層を形成する場合、発砲性粒子とトナーが混錬して用いられ、発砲性粒子層の上に画像層を設けていなかったため、トナーで発砲性粒子を十分に固定できず定着性能が悪化する。本実施形態では、画像層の積層前では発泡性粒子を含む発泡性粒子層と、接着媒体を含む接着媒体層とをそれぞれ独立して別々に形成しても、接着媒体層の上に画像層を形成することで、画像層の定着性を高めることができる。
【0184】
一実施形態に係る画像形成装置は、第2の作像順にしたがって記録媒体の上に接着媒体層、発泡性粒子層及び画像層を記録媒体側からこの順に積層することができる。これにより、一実施形態に係る画像形成装置は、画像層を接着媒体層及び発泡性粒子層を介して記録媒体に高い定着性を発揮することができる。即ち、一実施形態に係る画像形成装置は、画像層、接着媒体層及び発泡性粒子層の3成分を記録媒体上に現像しても、画像層の記録媒体への定着性を高めることができる。よって、一実施形態に係る画像形成装置は、画像層の積層前では、発泡性粒子を含む発泡性粒子層と、接着媒体を含む接着媒体層とをそれぞれ独立に別々に形成しても、接着媒体層の上に発泡性粒子層を介して画像層が形成することで、画像層の定着性を高めることができる。
【0185】
一実施形態に係る画像形成装置は、画像層を有色画像層とすることができる。これにより、一実施形態に係る画像形成装置は、カラー印刷を行うことができる。
【実施例0186】
以下、実施例及び比較例を示して実施形態を更に具体的に説明するが、実施形態はこれらの実施例及び比較例により限定されるものではない。
【0187】
<白色トナーの作製>
[実施例1]
下記のトナー原材料を、へンシェルミキサー(FM20B、日本コークス工業株式会社製)を用いて予備混合した後、一軸混練機(コニーダ混練機 BUSSコニーダー「MDK46-11D」、Buss社製)で、バレルへの原料供給速度16kg/h、スクリュー温度40℃、混練温度100℃~130℃(ゾーンバレル温度:Z1ゾーン130℃、Z2Z3ゾーン100℃)で溶融、混練した。得られた混練物を室温まで冷却した後、ロートプレックスにて200μm~300μmに粗粉砕した。次いで、カウンタジェットミル(100AFG、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて、質量平均粒径が(6.2±0.3)μmとなるように粉砕エアー圧を適宜調整しながら微粉砕した。その後、微粉砕した混練物を気流分級機(EJ-LABO、株式会社マツボー製)で、質量平均粒径が(7.0±0.2)μm、質量平均粒径/個数平均粒径の比が1.20以下となるようにルーバー開度を適宜調整しながら分級し、トナー母体粒子を得た。次いで、トナー母体粒子100質量部に対し、添加剤(HDK-2000(登録商標)、クラリアント株式会社製)1.0質量部及び添加剤(H05TD(登録商標)、クラリアント株式会社製)1.0質量部をヘンシェルミキサーで撹拌混合した。これにより、白色トナーであるトナー1を作製した。
(トナー原材料)
・ポリエステル樹脂1(EXL-101、三洋化成社製):55質量部
・ポリエステル樹脂2(RN-290、花王社製):20質量部
・エステルワックス(WEP-5、日本油脂社製):5質量部
・主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸変性ポリオレフィン1(TOYOTAC-KH、東洋紡社製、融点80℃、重量平均分子量90000):20質量部
・顔料(酸化チタン(PF-739、石原産業社製)):65質量部
【0188】
マレイン酸変性ポリオレフィン1をDSCした結果、DSCにおける1回目の昇温後の降温時に発熱ピークがなく、2回目の昇温時に0℃~30℃の範囲に発熱ピークを有することが確認された。
【0189】
得られたトナー1をDSCした結果、DSCによる1回目の昇温後の降温時において40℃~70℃の範囲に発熱ピークを有することが確認された。
【0190】
<無色トナーの作製>
[実施例2]
実施例1において、(トナー原材料)から顔料(酸化チタン(PF-739、石原産業社製))を除いたこと以外は実施例1と同様にして無色トナー2を作製した。
【0191】
<二成分現像剤の作製>
[キャリアの作製]
下記のキャリア原材料の混合物をホモミキサーで20分間分散し、コート層形成液を調製した。このコート層形成液を、芯材として質量平均粒径が35μmのMnフェライト粒子を用いて、芯材表面において平均膜厚が0.20μmになるように、流動床型コーティング装置を使用して、流動槽内の温度を各70℃に制御して塗布し、乾燥した。得られたキャリアを電気炉内において180℃で2時間焼成し、キャリアAを得た。
(キャリア原材料)
・シリコーン樹脂(オルガノストレートシリコ-ン):100質量部
・トルエン:100質量部
・γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン:5質量部
・カーボンブラック:10質量部
【0192】
[二成分現像剤の作製]
トナー1、トナー2の何れかと、キャリアAとを、ターブラーミキサー(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製)を用いて48rpmで5分間均一に混合し帯電させ、それぞれ二成分現像剤1、二成分現像剤2を作製した。なお、トナーとキャリアAとの混合比率は、トナー濃度が7質量%となるように混合した。
【0193】
<実施例1-1>
[現像剤の作製]
上記で作製したトナー2に対して、熱発泡性粒子1(ダイフォームH750D、平均粒径:20μm、クレハ社製)が2質量%となるように混合したものを用いた以外は、二成分現像剤2と同様に二成分現像剤3を作製した。
【0194】
[画像形成装置の準備]
画像形成装置(IM C6000、リコー社製)のイエロー、マゼンタ、及びシアン作像ユニットにそれぞれIM C6000用現像剤を投入した。また、ブラック作像ユニットに二成分現像剤3を投入した。
【0195】
[定着性の評価]
準備した画像形成装置(IM C6000、リコー社製)に記録媒体をセットし、記録媒体に画像を印刷した。記録媒体側から、トナー2に発泡性粒子を含んだ層、IM C6000用トナー層の順で画像を形成した。この印刷物に熱を加え画像を発泡させ、立体画像を得た。発泡後の画像上の熱発泡性粒子をプリンタックで剥離し、剥離前後の表面粗さの減少率を下記式(I)に基づいて算出した。表面粗さの減少率が大きいほど粗さが減少していることを意味する。剥離前後の表面粗さの減少率は、約15.2%であった。測定結果を図2に示す。
表面粗さの減少率(%)=((剥離後の表面粗さ-剥離前の表面粗さ)/剥離前の表面粗さ)×100 ・・・(I)
【0196】
[色差の評価]
発泡前画像・発泡後画像における(L,a,b)をそれぞれCMYで分光測色機(X-Rite eXact)により測定し、下記式(II)により、発泡前後のシアン(C)、マゼンダ(M)、イエロー(Y)の色差(ΔEab)を算出した。測定結果を図3に示す。
色差=〔(ΔL+(Δa+(Δb1/2 ・・・(II)
【0197】
<実施例1-2>
実施例1-1において、トナー2をトナー1に変更したこと以外は実施例1-1と同様に現像剤の定着性及び色差を評価した。剥離前後の表面粗さの減少率は、約30.2%であった。表面粗さの減少率の測定結果を図2に示し、色差の測定結果を図3に示す。
【0198】
<実施例1-4>
実施例1-2において、熱発泡性粒子1を熱発泡性粒子2(ダイフォームH850D、平均粒径:35μm、クレハ社製)に変更したこと以外は、実施例1-2と同様に現像剤の定着性を評価した。剥離前後の表面粗さの減少率は、約65.0%であった。測定結果を図2に示す。
【0199】
<実施例1-3>
実施例1-1において、トナー2をIM C6000用トナーに、熱発泡性粒子を熱発泡性粒子2(ダイフォームH850D、平均粒径:35μm、クレハ社製)に変更したこと以外は実施例1-1と同様に現像剤の定着性を評価した。剥離前後の表面粗さの減少率は、約95.9%であった。測定結果を図2に示す。
【0200】
<実施例2-1>
画像形成装置(IM C6000、リコー社製)のシアン及びイエロー作像ユニットにそれぞれ同色のIM C6000用現像剤を投入した。また、マゼンタ作像ユニットに二成分現像剤3を投入した。
【0201】
シアン、イエロー及びマゼンタ作像ユニットを同時に動作させて、記録媒体上に、IM C6000用トナー層、トナー2に発泡性粒子を含んだ層、IM C6000用トナー層の順で画像層を形成した。その後、画像に熱を加え画像を発泡させ、立体画像を得た。画像層の形成後、画像層をプリンタックで剥離し、剥離前後の表面粗さの減少率を上記式(I)に基づいて算出し、定着性を評価した。剥離前後の表面粗さの減少率は、約7.1%であった。測定結果を図4に示す。
【0202】
<実施例2-2>
実施例2-1において、イエロー及びマゼンタ作像ユニットを同時に動作させて、記録媒体上に、トナー2に発泡性粒子を含んだ層、IM C6000用トナー層の順で画像層を形成した。それ以外は、実施例2-1と同様に行った。剥離前後の表面粗さの減少率は、約6.8%であった。測定結果を図4に示す。
【0203】
<実施例2-3>
実施例2-1において、マゼンタ作像ユニットを動作させて、記録媒体上に、トナー2に発泡性粒子を含んだ層の画像層を形成したこと以外は、実施例2-1と同様に行った。剥離前後の表面粗さの減少率は、約15.2%であった。測定結果を図4に示す。
【0204】
図2に示すように、各実施例はトナーが定着していることがわかる。特に、実施例1-1、1-2は、実施例1-3、1-4よりも粗さ減少率が大幅に減少したことから、トナーの定着性がより向上したことが確認された。無色トナー又は白色トナー及び熱発泡性粒子を含む現像剤を用いて印刷すればトナーの定着性が向上し、特に無色トナーを含む現像剤を用いて印刷すればトナーの定着性をさらに向上させることができるといえる。即ち、無色トナー又は白色トナーは、主鎖にポリプロピレンブロックを有するマレイン酸ポリオレフィンを含むことで、ポリマーに対して濡れ性が高まるため、ポリマーで構成される熱発泡性粒子の外殻に対する濡れ性が高められ、熱発泡性粒子同士、熱発泡性粒子と紙面への接着媒体として有効に機能できるといえる。
【0205】
また、図3に示すように、実施例1-1の現像剤を用いて印刷すれば、実施例1-2の現像剤を用いて印刷した場合よりも、色差が向上することが確認された。
【0206】
図4に示すように、実施例2-1、2-2は、実施例2-3よりも粗さ減少率が減少したことから、トナーの定着性が向上したことが確認された。よって、記録媒体とトナー2に発泡性粒子を含んだ層の間に、通常の有色トナー層を設ける、又はトナー2に発泡性粒子を含んだ層上に通常の有色トナー層を設けることで、画像層の定着性が高められるといえる。よって、上記各実施例の画像形成装置は、無色トナー又は白色トナーと熱発泡性粒子を含む現像剤を備えることで、耐久性に優れた、高品質な立体画像を提供できるといえる。
【0207】
以上の通り、実施形態を説明したが、上記実施形態は、例として提示したものであり、上記実施形態により本発明が限定されるものではない。上記実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の組み合わせ、省略、置き換え、変更等を行うことが可能である。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0208】
1、1Y、1M、1C、1A 感光体
5、5Y、5M、5C、5A 現像装置
6、6Y、6M、6C、6A 作像ユニット
8 中間転写ベルト
9、9Y、9M、9C、9A 一次転写バイアスローラ
10 中間転写ユニット
100 プリンタ部
500 タンデム型カラー複写機(複写機)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0209】
【特許文献1】特開2009-75400号公報
図1
図2
図3
図4