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特開2023-130856水処理システムの異常診断方法及び装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130856
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】水処理システムの異常診断方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 21/00 20060101AFI20230913BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20230913BHJP
   C02F 1/42 20230101ALI20230913BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20230913BHJP
   B01D 65/10 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
G01D21/00 Q
C02F1/44 A
C02F1/42 A
C02F1/00 V
B01D65/10
G01D21/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035395
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】野村 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】森田 圭一
【テーマコード(参考)】
2F076
4D006
4D025
【Fターム(参考)】
2F076BA05
2F076BD07
2F076BD11
2F076BD13
2F076BD14
2F076BD16
2F076BE06
2F076BE07
2F076BE08
4D006GA03
4D006KE02P
4D006KE04P
4D006KE22Q
4D006KE23Q
4D006LA06
4D006PB02
4D025CA01
4D025CA10
(57)【要約】
【課題】計器やバルブ等の異常を正確に検出することができる水処理システムの異常診断方法及び装置を提供する。
【解決手段】水処理システムに設置された計器の異常診断方法であって、システム内の入口から出口までの全体又は一部の系内を同じ液質の液で満たし、もしくは同じ液量、圧力で通液し、該系内に設置された複数の同一もしくは同種計器の測定値の偏差を求め、偏差が所定範囲を超える場合に計器の異常と診断する、水処理システムの異常診断方法及び装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水処理システムに設置された計器の異常診断方法であって、
該水処理システム内の入口から出口までの全体又は一部の系内を同じ液質の液で満たし、もしくは同じ液量、圧力で通液し、
該系内に設置された複数の同一もしくは同種計器の測定値の偏差を求め、偏差が所定範囲を超える場合に計器の異常と診断する、水処理システムの異常診断方法。
【請求項2】
前記系内に設置された同一もしくは同種計器の測定値の変化量を求め、少なくともいずれかの測定値が変化し続ける場合に、リークが発生していると診断することを特徴する請求項1の水処理システムの異常診断方法。
【請求項3】
前記計器は、前記系の水流れ方向に設置位置を異ならせて設置されていることを特徴とする請求項1又は2の水処理システムの異常診断方法。
【請求項4】
前記系は、並列配置された流路を備えており、
前記計器は別々の該流路に設置されていることを特徴とする請求項1又は2の水処理システムの異常診断方法。
【請求項5】
前記計器が液浸型の計器であることを特徴とする請求項1~4のいずれかの水処理システムの異常診断方法。
【請求項6】
系内に診断用の水又は水溶液を供給することを特徴とする請求項1~5のいずれかの水処理システムの異常診断方法。
【請求項7】
前記系は、検水を採取するための分岐配管を有しており、前記計器は該分岐配管に設置されている請求項1~6のいずれかの水処理システムの異常診断方法。
【請求項8】
前記系内に設置された同一、同種の複数の計器の測定環境を略同一とすることを特徴とする請求項1~7のいずれかの水処理システムの異常診断方法。
【請求項9】
前記計器は流量計であり、系内の上流側に設けられた一または複数の計器の合計もしくは平均と下流側に設けられた複数の計器の合計もしくは平均とを比較することを特徴とする請求項1の水処理システムの異常診断方法。
【請求項10】
前記水処理システムは、原水槽と、該原水槽からの原水が順次に通水されるか又は原水槽に対し並列に接続された第1pH調整槽及び第2pH調整槽とを備えており、
各pH調整槽に前記計器としてのpH計と、酸又はアルカリを添加する薬注装置とが設けられていることを特徴とする請求項1の水処理システムの異常診断方法。
【請求項11】
前記薬注装置からの薬注を停止した状態で第1pH調整槽及び第2pH調整槽に原水又は診断水を流通させ、各pH調整槽の検出pHを比較してpH計、薬注装置のバルブ又は原水槽への給水バルブの異常診断を行う請求項10の水処理システムの異常診断方法。
【請求項12】
前記水処理システムは、水処理装置を備えており、該水処理装置の給水流量と水処理装置からの流出流量とをそれぞれの流量計で検出し、
各流量計の検出流量を比較して流量計の異常診断を行うことを特徴とする請求項1の水処理システムの異常診断方法。
【請求項13】
前記水処理装置は、イオン交換装置、又は透過水流路のバルブを閉とした膜分離装置であることを特徴とする請求項12の水処理システムの異常診断方法。
【請求項14】
水処理システムに設置された計器の異常診断装置であって、
システム内の入口から出口までの全体又は一部の系内に設置された複数の同一もしくは同種計器と、
各計器の測定値の偏差を求め、偏差が所定範囲を超える場合に計器の異常と診断する診断手段と
を有する水処理システムの異常診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システムにおける計器やバルブ等の異常を診断する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動運転を前提とした水処理装置もしくは溶液処理装置において、装置が安定的に稼働しているかを判断するため、要所に計器を設置している。この計器の測定値にて、装置に異常がないかを常時監視しており、異常の早期発見や装置故障・破損の未然防止を行っている。また、万が一、装置故障・破損が発生した場合は,発生原因の早期究明、再発防止策の立案のために、計器の測定記録が重要な情報源となる。
【0003】
しかし、計器自体が故障した場合、計器の異常に気が付くことができない。計器の中には、故障信号を出力することができる機種も存在するが、故障要因を100%網羅していないことが多い(故障要因によっては、故障信号を出力できない)。
【0004】
計器の故障に気づかずに装置の運転を継続すると、重大なトラブルに繋がる恐れがある。そのため、現状では計器を冗長化(同じ測定点に同機種の計器を複数台設置)し、計器間の偏差にて、計器の異常を検知したり、運転員によるポータブル計や分析試薬等によるクロスチェックにて、計器の異常を確認することが一般的な装置運用となっている(例えば、特許文献1のように計器の二重化、三重化の課題が存在する。)。
【0005】
しかし、上述の運用は装置のイニシャルコストの増加、運転員の作業量の増加につながっており、省コスト化、省人化の観点で課題となっている。
【0006】
また、計器の異常を検出する方法として、特許文献2には、水質計器に異常が発生した場合には異常の生じた水質計器の計測値のみが変化し、水質が変化したときには2個以上の水質計器の計測値が同時に変化することを着目して計器の異常を検出すること、特許文献3には、複数のアナログ計器の相関性に基づき、その偏差に基づいて計器の異常を検出すること、特許文献4には、貯水設備の水位を計測する複数異種の水位計を設け、前記各水位計の計測結果に偏差が生じた場合に、他点に設置された同種のセンサの情報と比較することによって、いずれの水位計に異常が発生したかを判定する制御手段を備えることが記載されている。
【0007】
しかし、特許文献2、3の方法は、複数異種の計器の偏差を利用するものであるため、測定誤差が大きく、また、特許文献4の方法は水質を計測するものではない上に、同一箇所に複数の計測機器を設置せねばならず、コストがかかる。また、水処理プロセスの異なる箇所に同一の計器を設置した場合であっても、それぞれの計器が置かれた環境(水質や圧力、流量)等が異なるため、計器異常を正確に検出することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-73180号公報
【特許文献2】特開平9-113504号公報
【特許文献3】特開2000-18983号公報
【特許文献4】特開2008-132461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、計器やバルブ等の異常を正確に検出することができる水処理システムの異常診断方法及び装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、次を要旨とするものである。
【0011】
[1] 水処理システムに設置された計器の異常診断方法であって、
該水処理システム内の入口から出口までの全体又は一部の系内を同じ液質の液で満たし、もしくは同じ液量、圧力で通液し、
該系内に設置された複数の同一もしくは同種計器の測定値の偏差を求め、偏差が所定範囲を超える場合に計器の異常と診断する、水処理システムの異常診断方法。
【0012】
[2] 前記系内に設置された同一もしくは同種計器の測定値の変化量を求め、少なくともいずれかの測定値が変化し続ける場合に、リークが発生していると診断することを特徴する[1]の水処理システムの異常診断方法。
【0013】
[3] 前記計器は、前記系の水流れ方向に設置位置を異ならせて設置されていることを特徴とする[1]又は[2]の水処理システムの異常診断方法。
【0014】
[4] 前記系は、並列配置された流路を備えており、
前記計器は別々の該流路に設置されていることを特徴とする[1]又は[2]の水処理システムの異常診断方法。
【0015】
[5] 前記計器が液浸型の計器であることを特徴とする[1]~[4]のいずれかの水処理システムの異常診断方法。
【0016】
[6] 系内に診断用の水又は水溶液を供給することを特徴とする[1]~[5]のいずれかの水処理システムの異常診断方法。
【0017】
[7] 前記系は、検水を採取するための分岐配管を有しており、前記計器は該分岐配管に設置されている[1]~[6]のいずれかの水処理システムの異常診断方法。
【0018】
[8] 前記系内に設置された同一、同種の複数の計器の測定環境を略同一とすることを特徴とする[1]~[7]のいずれかの水処理システムの異常診断方法。
【0019】
[9] 前記計器は流量計であり、系内の上流側に設けられた一または複数の計器の合計もしくは平均と下流側に設けられた複数の計器の合計もしくは平均とを比較することを特徴とする[1]の水処理システムの異常診断方法。
【0020】
[10] 前記水処理システムは、原水槽と、該原水槽からの原水が順次に通水されるか又は原水槽に対し並列に接続された第1pH調整槽及び第2pH調整槽とを備えており、
各pH調整槽に前記計器としてのpH計と、酸又はアルカリを添加する薬注装置とが設けられていることを特徴とする[1]の水処理システムの異常診断方法。
【0021】
[11] 前記薬注装置からの薬注を停止した状態で第1pH調整槽及び第2pH調整槽に原水又は診断水を流通させ、各pH調整槽の検出pHを比較してpH計、薬注装置のバルブ又は原水槽への給水バルブの異常診断を行う[10]の水処理システムの異常診断方法。
【0022】
[12] 前記水処理システムは、水処理装置を備えており、該水処理装置の給水流量と水処理装置からの流出流量とをそれぞれの流量計で検出し、
各流量計の検出流量を比較して流量計の異常診断を行うことを特徴とする[1]の水処理システムの異常診断方法。
【0023】
[13] 前記水処理装置は、イオン交換装置、又は透過水流路のバルブを閉とした膜分離装置であることを特徴とする[12]の水処理システムの異常診断方法。
【0024】
[14] 水処理システムに設置された計器の異常診断装置であって、
システム内の入口から出口までの全体又は一部の系内に設置された複数の同一もしくは同種計器と、
各計器の測定値の偏差を求め、偏差が所定範囲を超える場合に計器の異常と診断する診断手段と
を有する水処理システムの異常診断装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明では、水処理システムの全体又は一部を同じ液質で満たし、もしくは同じ液量、圧力で通液させ、該システムに設置された計器の各測定値の偏差より、計器やバルブなどの異常を自動で検知する。
【0026】
本発明では、配置位置が異なる2台以上の計器で水質や圧力、流量等の測定を行う。本発明では、計器の数が少なくても計器異常を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】実施の形態に係る水処理システムの異常診断方法が適用される水処理システムの構成図である。
図2】実施の形態に係る水処理システムの異常診断方法が適用される水処理システムの構成図である。
図3】実施の形態に係る水処理システムの異常診断方法が適用される水処理システムの構成図である。
図4】実施の形態に係る水処理システムの異常診断方法が適用される水処理システムの構成図である。
図5】実施の形態に係る水処理システムの異常診断方法が適用される水処理システムの構成図である。
図6】実施の形態に係る水処理システムの異常診断方法が適用される水処理システムの構成図である。
図7】実施の形態に係る水処理システムの異常診断方法が適用される水処理システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において、太実線は水又は液の流れを示している。
【0029】
図1は第1の実施の形態が適用される水処理システムの構成図である。
【0030】
原水槽1に原水と診断用水又は診断用溶液(以下、診断水という。)が配管1a,1bによってそれぞれ導入可能とされている。診断水としては、ここでは、河川水、地下水、水道水、工業用水、生物処理水、純水、超純水などを用いている。なお、診断水としては、設置されている計器によって適宜選択すればよく、例えば、計器として一般用pH計が設置されている場合は、河川水、地下水、水道水、工業用水、生物処理水を選択できる。また、純水用pH計が設置されている場合は純水、超純水等を診断水として用いれば良い。
【0031】
通常運転時は、(a)図の通り、原水が原水槽1に導入されて貯留されている。この原水は、原水ポンプ1p及び配管2を介して第1pH調整槽3に導入され、酸又はアルカリが添加手段3bから添加され、pH調整される。第1pH調整槽3内の液は、移流配管(符号略)を介して第2pH調整槽4に移流し、酸又はアルカリの添加手段4bから酸又はアルカリが添加されてpH調整される。
【0032】
なお、pH調整槽3,4にはpH計3a,4aが設けられており、各pH計3a,4aの検出pHが目標pHとなるように、添加手段3b,4bのバルブ3c,4cが制御される。
【0033】
第2pH調整槽4でpH調整された液は、配管5を介して水槽又は使用点(ユースポイント)に送水される。配管5にはバルブ5aが設けられている。(a)図ではバルブ5aは開とされている。
【0034】
配管5のバルブ5aよりも上流側から配管6が分岐している。配管6は排出用配管7と返送用配管8に分岐し、各配管7,8にバルブ7a,8aが設けられている。配管8は原水槽1に送液するように設けられている。(a)図では、通常運転時にはバルブ7a,8aは閉とされている。
【0035】
(b)図はpH計3a,4aの診断方法の一例を示している。
【0036】
(b)図では、バルブ5a,8aを閉とし、バルブ7aを開としている。酸又はアルカリの添加手段3b,4bのバルブ3c,4cは閉とし、酸、アルカリの添加を行わない。
【0037】
原水を原水槽1に導入しておき、原水ポンプ1pを作動させ、配管2、第1pH調整槽3、第2pH調整槽4、配管5,6,7の順に流す。
【0038】
pH調整槽3,4で酸、アルカリを添加しないので、所定時間が経過してpH調整槽3,4内が同水質の原水で満たされるようになると、pH計3a,4aの検出pHは実質的に同一になるので、pH計3a,4aに異常がないことが確認される。仮にpH計3a,4aの検出pHの差が所定値(好ましくは0.1~2.0、特に1.0~2.0の間から選んで設定した値)以上であるときには、少なくとも一方のpH計に異常があるものと診断される。
【0039】
(b)図では原水を流してpH計3a,4aの診断を行っているが、診断水を原水槽1に供給し、pH計3a,4aで診断水のpHを測定して診断を行うようにしてもよい。
【0040】
(c)図はpH計3a,4aの診断方法の別の一例を示している。
【0041】
(c)図では、バルブ5a,7aを閉とし、バルブ8aを開としている。酸又はアルカリの添加手段3b,4bのバルブ3c,4cは閉とし、酸、アルカリの添加を行わない。
【0042】
この状態で原水又は診断水を原水槽1に導入し、原水ポンプ1pを作動させ、配管2、第1pH調整槽3、第2pH調整槽4、配管5,6,8、原水槽1の順に循環させる。
【0043】
pH調整槽3,4で酸、アルカリを添加しないので、所定時間が経過してpH調整槽3,4内が同水質の水で満たされるようになると、pH計3a,4aの検出pHは実質的に同一になるので、pH計3a,4aに異常がないことが確認される。仮にpH計3a,4aの検出pHの差が所定値(好ましくは0.1~2.0、特に1.0~2.0の間から選んで設定した値)以上であるときには、少なくとも一方のpH計に異常があるものと診断される。
【0044】
図2は第2の実施の形態に係る水処理システムの異常診断方法が適用される水処理システムの構成図である。
【0045】
原水槽11に原水又は診断水が配管11a,11bによって導入可能とされている。
【0046】
通常運転時は、(a)図の通り、原水が原水槽11に導入されて貯留されている。この原水は、原水ポンプ11c,11d及び配管12,14を介して第1及び第2pH調整槽13,15にそれぞれ導入され、酸又はアルカリが添加手段13b,15bから添加され、pH調整される。
【0047】
pH調整槽13,15にはpH計13a,15aが設けられており、各pH計13a,15aの検出pHが目標pHとなるように、添加手段13b,15bのバルブ13c,15cが制御される。
【0048】
各pH調整槽13,15でpH調整された液は、配管16a,16b及び合流配管17を介して水槽又は使用点(ユースポイント)に送水される。配管17にはバルブ17aが設けられている。(a)図ではバルブ17aは開とされている。
【0049】
配管17のバルブ17aよりも上流側から配管18が分岐している。配管18は排出用配管20と返送用配管19に分岐し、各配管19,20にバルブ19a,20aが設けられている。配管19は原水槽11に送液するように設けられている。(a)図の通常運転時にはバルブ19a,20aは閉とされている。
【0050】
(b)図はpH計13a,15aの診断方法の一例を示している。
【0051】
(b)図では、バルブ17a,19aを閉とし、バルブ20aを開としている。酸又はアルカリの添加手段13b,15bのバルブ13c,15cは閉とし、酸、アルカリの添加を行わない。
【0052】
原水を原水槽11に導入しておき、原水ポンプ11c,11dを作動させ、原水を配管12、第1pH調整槽13、配管16aの順、及び配管14、第2pH調整槽15、配管16bの順に流す。配管16a,16bから配管17にて合流した液は、配管18,20を通って排出される。
【0053】
この実施の形態でも、pH調整槽13,15で酸、アルカリを添加しないので、所定時間が経過してpH調整槽13,15内が同水質の原水で満たされるようになると、pH計13a,15aの検出pHは実質的に同一になるので、pH計13a,15aに異常がないことが確認される。仮にpH計13a,15aの検出pHの差が所定値(好ましくは0.1~2.0、特に1.0~2.0の間から選んで設定した値)以上であるときには、少なくとも一方のpH計に異常があるものと診断される。
【0054】
(b)図では原水を流してpH計13a,15aの診断を行っているが、診断水を原水槽11に供給し、pH計13a,15aで診断水のpHを測定して診断を行うようにしてもよい。
【0055】
(c)図はpH計13a,15aの診断方法の別の一例を示している。
【0056】
(c)図では、バルブ17a,20aを閉とし、バルブ19aを開としている。酸又はアルカリの添加手段13b,15bのバルブ13c,15cは閉とし、酸、アルカリの添加を行わない。
【0057】
この状態で原水又は診断水を原水槽11に導入し、原水ポンプ11c,11dを作動させ、第1pH調整槽13、第2pH調整槽15の流出水を配管17~19を介して原水槽11に循環させる。
【0058】
pH調整槽13,15で酸、アルカリを添加しないので、所定時間が経過してpH調整槽13,15内が同水質の水で満たされるようになると、pH計13a,15aの検出pHは実質的に同一になるので、pH計13a,15aに異常がないことが確認される。仮にpH計13a,15aの検出pHの差が所定値(好ましくは0.1~2.0、特に1.0~2.0の間から選んで設定した値)以上であるときには、少なくとも一方のpH計に異常があるものと診断される。
【0059】
図2では、pH調整槽13,15から配管16a,16bに流出した液を合流配管17で合流させていたが、図3のように、配管16a,16bを合流させることなくそれぞれの水槽又は使用点に送水するようにしてもよい。
【0060】
なお、図3では各配管16a,16bにバルブ16c,16dが設けられている。
【0061】
配管16a,16bのバルブ16c,16dよりも上流側からそれぞれ配管18,18Aが分岐している。配管18は配管19,20に分岐し、配管19,20にバルブ19a,20aが設けられている。配管18Aは配管19A,20Aに分岐し、配管18A,19Aにバルブ19b,20bが設けられている。
【0062】
配管19Aは、バルブ19aよりも下流側(原水槽11側)において配管19に合流している。
【0063】
図3のその他の構成は図2と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0064】
図3においても、バルブ16c,16dを開とし、バルブ19a,19b,20a,20bを閉とすることにより図2(a)と同様の通常運転が行われる。また、バルブ16c,16d,19a,19bを閉とし、バルブ20a,20bを開とすることにより、図2(b)と同様の診断運転が行われる。また、バルブ16c,16d,20a,20bを閉とし、バルブ19a,19bを開とすることにより、図2(c)と同様の診断運転が行われる。
【0065】
図1~3ではpH調整槽において酸又はアルカリ添加してpH調整槽内のpHを測定するようにしているが、少なくとも1個のpH調整槽の代わりに、酸又はアルカリのライン添加手段を設け、ライン添加手段の下流側でpH測定するようにしてもよい。その一例を図4に示す。
【0066】
図4(a)では、配管21に酸又はアルカリを添加する薬注装置22が設置されている。配管21の該薬注装置22の薬注点よりも下流側から配管23が分岐し、配管23にpH計24が設置されている。pH計24の検出pHが所定値となるように薬注装置22のバルブ22aが制御される。
【0067】
図4(a)では、分岐配管23に分流された水は排出するものとしているが、図4(b)のように配管23を配管21に合流させてもよい。図4(b)のその他の構成は図4(a)と同一である。
【0068】
図5は膜分離装置を有した水処理システムの流量計の診断を行う実施の形態を示している。なお、この実施の形態では膜分離装置としてRO装置が用いられているが、これに限定されない。
【0069】
原水槽31内の原水は、ポンプ32、配管33を介して膜分離装置34の1次側に供給され、透過水と濃縮水とに分離される。透過水は配管35を介して取り出され、水槽又は使用点に送水される。配管35にバルブ35aが設けられている。
【0070】
膜分離装置34の濃縮水は、配管36に流出する。配管36は配管37,38に分岐しており、各配管37,38にバルブ37a,38aが設けられている。配管37は排出用であり、配管38は濃縮水の原水槽31への返送用である。配管33,36に流量計39,40が設けられている。
【0071】
通常運転時には、(a)図の通り、バルブ35a,37aを開、バルブ38aを閉とし、ポンプ32を作動させる。これにより、透過水が配管35から取り出され、濃縮水が配管37から取り出される。
【0072】
流量計39,40の診断を行うときには、(b)図の通り、バルブ35a,37aを閉とし、バルブ38aを開とし、ポンプ32を作動させる。これにより、原水槽31内の原水が配管33、膜分離装置34、配管36,38を循環する。バルブ35aを閉としているので、配管33,36の流量は同一である。従って、流量計39,40の検出流量が実質的に同一であれば、流量計39,40に異常はないと診断される。流量計39,40の検出流量の差が所定値以上(この所定値は、例えばいずれか一方の流量又は双方の平均値の3.0~5.0%の間から選定される。)であれば、流量計に異常があるものと診断される。
【0073】
なお、図5(b)では、配管36からの水を原水槽31に返送しているが、バルブ38aを閉、バルブ37aを開とし、配管37から排出してもよい。
【0074】
図6はイオン交換装置を有した水処理システムの流量計の診断を行う実施の形態を示している。
【0075】
原水槽41内の原水は、ポンプ42、配管43を介してイオン交換装置44に供給され、脱塩水となる。脱塩水は配管45を介して取り出され、水槽又は使用点に送水される。配管45にバルブ45aが設けられている。
【0076】
配管45から配管46が分岐しており、配管46は配管47,48に分岐しており、各配管47,48にバルブ47a,48aが設けられている。配管47は排出用であり、配管48は原水槽41への返送用である。配管43,46に流量計49,50が設けられている。
【0077】
通常運転時には、(a)図の通り、バルブ45aを開、バルブ47a,48aを閉とし、ポンプ42を作動させる。これにより、脱塩水が配管45から取り出される。
【0078】
流量計49,50の診断を行うときには、(b)図の通り、バルブ45a,47aを閉とし、バルブ48aを開とし、ポンプ42を作動させる。これにより、原水槽41内の原水が配管43、膜分離装置44、配管46,48を循環する。バルブ45a,47aを閉としているので、配管43,46の流量は同一である。従って、流量計49,50の検出流量が実質的に同一であれば、流量計49,50に異常はないと診断される。流量計49,50の検出流量の差が所定値以上(この所定値は、例えば流量の多い方の値の3.0~5.0%の間から選定される。)であれば、流量計に異常があるものと診断される。
【0079】
なお、図6(b)では、配管46からの水を原水槽41に返送しているが、バルブ48aを閉、バルブ47aを開とし、配管47から排出してもよい。
【0080】
図7は、並列に設置した水処理装置(この実施の形態ではイオン交換装置55a~55d)の各ラインに流量計を設け、合流ラインにも流量計を設けた場合の診断方法を示している。
【0081】
原水槽51内の原水は、ポンプ52、配管53、及び分岐配管54a,54b,54c,54dを介して各イオン交換装置55a,55b,55c,55dに供給される。各イオン交換装置55a~55dの脱塩水が配管56a,56b,56c,56d及び合流配管57を介して取り出される。
【0082】
各配管56a~56dに流量計58a,58b,58c,58dが設けられ、合流配管57に流量計59が設けられている。
【0083】
各流量計58a~58dの合計流量と、流量計59の検出流量とが実質的に同一であれば(例えば、合計流量と流量計59の検出流量との差が、いずれか一方又は平均値の3.0~5.0%以内)であれば、各流量計に異常はないと診断される。合計流量と流量計59の検出流量との差が上記範囲よりも大きいときには、いずれかの流量計に異常があると診断される。
【0084】
なお、図7ではイオン交換装置を用いているが、膜分離装置であってもよい。膜分離装置の場合、透過水取り出しラインを配管56a~56dとすればよい。
【0085】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の構成とされてもよい。
【0086】
本発明では、pH計や流量計のほか、導電率計、比抵抗計、水温計、濁度計、pH計、TOC計、シリカ計、微粒子計、溶存酸素計、溶存水素計、ORP計、COD計、残留塩素計、フッ素計、ホウ素計、硫酸濃度計、全窒素計、リン計、アンモニア計、硝酸計、UV計、MLSS計、SS濃度計、カルシウム濃度計、銅計、硬度計、シアン計、イオン濃度計、オゾン計、SDI計、圧力計など各種の計器の診断に適用できる。また、計器としては流通式タイプと浸漬式タイプが存在するが、センサー部を液に浸漬するタイプ(液浸型)の計器の診断に好適に適用できる。
[バルブの異常診断]
上記実施の形態は、計器の異常を診断するものであるが、本発明はバルブの異常診断を行うこともできる。
【0087】
なお、以下のバルブ診断は、pH計に異常がないことが確認されている状態を前提としている。
【0088】
図1の水処理システムにおいて、バルブ3c,3dのリーク異常を診断するには、図1(c)のように原水又は診断水を循環させ、pH調整装置3b,4bを作動させる。
【0089】
所定時間(この所定時間は、系内全体でpHが均一になるまでの時間として経験的に定められる。)が経過すると、pH調整槽3,4内はいずれも目標pHとなっているので、pH調整装置3b,4bからの薬注はなされず、pH計3a,4aの検出pH値は経時的に一定になる。
【0090】
ところが、該所定時間が経過してもpH計3a,4aの検出pHが経時的に連続して上昇するか又は低下する場合は、バルブ3c又は4cから薬品がリークしている可能性があり、バルブ3c又は4cに異常があると診断される。
【0091】
なお、図1の水処理システムにおいて、図示は省略するが、原水配管11a、診断水配管11bにそれぞれバルブが設けられていることがある。
【0092】
この場合、上記のように所定時間循環運転してもpH計3a,4aの検出pHが一定値とならず、変化し続ける場合には、原水又は診断水がリークして原水槽1に混入し続けている可能性がある。
【0093】
従って、原水配管バルブ又は診断水配管バルブに異常の可能性があると診断される。
【0094】
図2の水処理システムの場合は、図2(c)のように循環運転している場合、pH調整槽13,15内に流入する水は同一水質のものであるから、薬注種及び薬注量は同一であり、検出pHも同一になるはずである。そして、薬注量も次第に減少し、所定時間後には系内が均一に目標pHとなって、薬注は停止するはずである。
【0095】
仮に、一方のpH計の検出pHが変化し続ける場合、バルブ13c又は15cに異常の可能性があると診断される。
【0096】
また、図2(c)の循環運転を開始してから上記所定時間が経過してもpH計13a,15aの検出pHが変化し続ける場合には、原水又は診断水が原水槽11にリーク(混入)している可能性があるので、原水配管バルブ又は診断水配管バルブに異常の可能性ありと診断される。
【0097】
上記説明はpH調整槽を用いた水処理システムにおけるバルブ異常診断であるが、ライン薬注を行う場合も同様にしてバルブの診断を行うことができる。また、原水槽11を用いずに原水又は診断水を送水するように構成することもできる。
【0098】
このように、本発明では、系内の異なる箇所に設置された計器同士の偏差を求めることで、計器の異常を診断することができる。
【符号の説明】
【0099】
1,11,31,41,51 原水槽
3,4,13,15 pH調整槽
34 膜分離装置
44,55a~55d イオン交換装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7