(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130880
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】基板処理室内に配置される部材を搬送する装置、基板処理システム及び前記部材を搬送する方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
H01L21/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035438
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 航
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA15
5F131BA19
5F131BB03
5F131BB23
5F131CA35
5F131DA22
5F131DA42
5F131DB02
5F131DB52
5F131DB76
5F131DB82
5F131DD42
5F131DD74
5F131DD76
5F131DD86
5F131EA03
5F131GA14
5F131GA33
5F131HA09
5F131HA12
5F131HA35
(57)【要約】
【課題】基板処理室内に配置される部材を、予め設定された配置位置に搬送する技術を提供する。
【解決手段】互いに隣接して設けられた基板搬送室と基板処理室とを連通させる開口部に対して着脱自在に開口部を塞ぐための弁体を備え、弁体によって開口部を塞いだとき、弁体から基板処理室内に向けて延在するように部材保持部を設ける。部材保持部は、弁体によって開口部を塞いだときに、基板処理室内の予め設定された配置位置まで前記部材を搬送するように構成される。さらに、開口部から取り外された弁体を、基板搬送室内にて移動させる移動機構を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣接して設けられた基板搬送室と基板処理室との間で前記基板処理室内に配置される部材を搬送する装置であって、
前記基板搬送室と基板処理室とを連通させる開口部に対して着脱自在に構成され、前記開口部を塞ぐための弁体と、
前記弁体によって前記開口部を塞いだとき、当該弁体から、前記基板処理室内に向けて延在するように設けられ、当該基板処理室内の予め設定された配置位置まで前記部材を搬送するための部材保持部と、
前記開口部から取り外された前記弁体を、前記基板搬送室内にて移動させる移動機構と、を備えた装置。
【請求項2】
前記移動機構は、
第1の磁石が設けられた前記基板搬送室の床面部と、
前記弁体が取り付けられると共に、前記第1の磁石との間に反発力が働く第2の磁石が設けられ、前記反発力を用いた磁気浮上により、前記基板搬送室内で移動可能に構成された移動体と、を備えた、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記移動体は、前記弁体に対して着脱自在に構成され、前記開口部を塞いだ状態の前記弁体から取り外される、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記部材には、前記基板処理室内で処理される基板が含まれ、
前記部材保持部は、前記基板を保持可能に構成され、処理が行われる位置まで前記基板を搬送するための基板保持部としての機能を備える、請求項1ないし3のいずれか一つに記載の装置。
【請求項5】
前記部材には、前記基板に対してプラズマ処理を行う場合に当該基板の周囲に配置されるフォーカスリング、前記基板の処理に伴う生成物が前記基板処理室の本体に付着することを防止するためのシールド部材、前記基板処理室内の気流の流れを整流するための整流部材、前記基板処理室内にプリコート処理またはクリーニング処理を行う際に、これら処理の非対象面を覆うシャッターからなる部材群から選択される少なくとも1つの部材が含まれる、請求項1ないし4のいずれか一つに記載の装置。
【請求項6】
前記移動機構により、前記基板搬送室内を移動する前記弁体を第1の弁体と呼ぶと、前記第1の弁体が取り外されている期間中に前記開口部を塞ぐ、第2の弁体を備える、請求項1ないし5のいずれか一つに記載の装置。
【請求項7】
基板を処理するシステムであって、
請求項1ないし6のいずれか一つに記載された、前記基板搬送室と、前記基板処理室と、前記部材を搬送する装置と、を備えた基板処理システム。
【請求項8】
互いに隣接して設けられた基板搬送室と基板処理室との間で前記基板処理室内に配置される部材を搬送する方法であって、
前記基板搬送室と基板処理室とを連通させる開口部に対して着脱自在に構成され、前記開口部を塞ぐための弁体と、前記弁体によって前記開口部を塞いだとき、前記弁体から、前記基板処理室内に向けて延在するように当該弁体に設けられた部材保持部と、前記基板搬送室内にて前記弁体を移動させる移動機構と、を用い、
前記弁体により前記開口部を塞ぎ、前記基板処理室内の予め設定された配置位置まで前記部材を搬送する工程と、
前記前記開口部から前記弁体を取り外し、前記基板搬送室内にて移動させる工程と、を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理室内に配置される部材を搬送する装置、基板処理システム及び前記部材を搬送する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板である半導体ウエハ(以下、「ウエハ」ともいう)に対する処理を実施する装置においては、ウエハに対する処理が実行される処理室に、搬送機構によりウエハを搬送して処理が行われる。処理室の内部には、ウエハの処理に対応した種々の構成の部材が設けられており、これらの部材に対しては定期的にメンテナンスやクリーニングが行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、基板が載置される基板載置面と、エッジリングと、カバーリングと、を備えたプラズマ処理装置において、ウエハの搬送装置の支持部により、エッジリングやカバーリングを搬送可能に構成した技術が記載されている。エッジリングは基板載置面に保持された基板を囲む部材であり、カバーリングはエッジリングの外側面を覆うように配置する部材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、互いに隣接して設けられた基板搬送室と基板処理室との間で、基板処理室内に配置される部材を、予め設定された配置位置に搬送する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、
互いに隣接して設けられた基板搬送室と基板処理室との間で前記基板処理室内に配置される部材を搬送する装置であって、
前記基板搬送室と基板処理室とを連通させる開口部に対して着脱自在に構成され、前記開口部を塞ぐための弁体と、
前記弁体によって前記開口部を塞いだとき、当該弁体から、前記基板処理室内に向けて延在するように設けられ、当該基板処理室内の予め設定された配置位置まで前記部材を搬送するための部材保持部と、
前記開口部から取り外された前記弁体を、前記基板搬送室内にて移動させる移動機構と、を備えた装置である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、互いに隣接して設けられた基板搬送室と基板処理室との間で、基板処理室内に配置される部材を、予め設定された配置位置に搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】基板処理システムの構成例を示す平面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る基板処理室を示す平面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る基板搬送室及び基板処理室を示す縦断側面図である。
【
図4】第1の実施形態の一部を拡大して示す縦断側面図である。
【
図5】第1の実施形態に係る移動機構の構成例を示す透視斜視図である。
【
図6A】第1の実施形態の作用を示す第1の縦断側面図である。
【
図6B】第1の実施形態の作用を示す第2の縦断側面図である。
【
図6C】第1の実施形態の作用を示す第3の縦断側面図である。
【
図6D】第1の実施形態の作用を示す第4の縦断側面図である。
【
図7】基板処理室の開口部の構成例を示す縦断側面図である。
【
図8A】第2の実施形態に係る基板搬送室及び基板処理室を示す第1の縦断側面図である。
【
図8B】第2の実施形態を示す第2の縦断側面図である。
【
図9】第3の実施形態に係る基板搬送室及び基板処理室を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<基板処理システム>
以下、
図1を参照しながら、本開示の一実施形態に係る、基板処理室内に配置される部材を搬送する装置の構成について説明する。当該部材を搬送する装置は、基板処理システム1に設けられている。
図1には、ウエハWを処理する基板処理室11を複数備えたマルチチャンバタイプの基板処理システム1を示してある。
図1に示すように、基板処理システム1は、大気搬送室12と、ロードロック室13と、基板搬送室14と、複数の基板処理室11とを備え、これらは大気搬送室12側から水平方向にこの順に配置されている。基板処理システム1では、大気搬送室12の設置位置を手前側とし、手前側から見て前後方向をY方向、左右方向をX方向として説明する。
【0010】
大気搬送室12の手前側には、ロードポート121が設けられている。ロードポート121は、処理対象のウエハWを収容するキャリアCが載置される載置台として構成され、左右方向に例えば4台並べて設置されている。キャリアCとしては、例えばFOUP(Front Opening Unified Pod)などを用いることができる。
大気搬送室12は大気圧(常圧)雰囲気となっており、例えば清浄空気のダウンフローが形成されている。また、大気搬送室12の内部には、例えば多関節アームよりなる大気搬送機構122が設けられており、キャリアCとロードロック室13との間でウエハWの搬送を行うように構成されている。
【0011】
大気搬送室12と基板搬送室14との間には、例えば2つのロードロック室13が左右に並べて設置されている。ロードロック室13は、大気圧雰囲気と真空雰囲気とを切り替えることができるように構成され、ウエハWが載置される受け渡し用のステージ130と、ウエハWを下方から突き上げて保持する昇降ピン131と、を有する。例えば昇降ピン131は、周方向に沿って等間隔に3本設けられ、昇降自在に構成されている。
【0012】
ロードロック室13と大気搬送室14との間、ロードロック室13と基板搬送室14との間は、ウエハWの搬送用の開口部が夫々形成され、これら開口部は夫々ゲートバルブGV1、GV2により開閉自在に構成されている。また、ロードロック室13と基板搬送室14との間に設けられた開口部132は、後述するように、基板処理室11と同様に、弁体22によっても開閉することができる構成となっている。
【0013】
基板搬送室14は、
図1に示すように、前後方向に長い、平面視矩形状の筐体により構成され、不図示の真空排気機構により真空雰囲気に減圧されている。また、基板搬送室14には、不活性ガス(例えば窒素ガス)の供給を行う不図示の不活性ガス供給部を接続し、減圧されている基板搬送室14内に常時、不活性ガスを供給するように構成してもよい。
【0014】
図1に示す例の基板処理システム1において、基板搬送室14の左右に隣接する位置には、各々4基、合計8基の基板処理室11が設けられている。各基板処理室11は、ウエハWに対して真空処理が実施されるように構成されている。ウエハWに対して実施する処理としては、エッチング処理、成膜処理、クリーニング処理、アッシング処理などを例示することができる。
【0015】
<第1の実施形態>
本開示は、互いに隣接する基板処理室11と基板搬送室14との間で、基板処理室11内に配置される部材を搬送する装置に関するものである。以下に、基板処理室11及び基板搬送室14の第1の実施形態について説明する。なお、
図1、
図2等には、各基板処理室11から見て、基板搬送室14が配置されている方向を、Y’軸の基端側に設定した副座標軸を併記してある。各基板処理室11の説明においては、基板搬送室14との接続位置を手前側(前方側)として説明する。
【0016】
図2~
図4に示すように、この例の基板処理室11は、処理容器2と、この処理容器2と基板搬送室14とを接続する連通路21と、を備えており、処理容器2と基板搬送室14との間では、連通路21を介してウエハWが搬送される。
連通路21は、例えば処理容器2や基板搬送室14よりも上下方向の寸法が小さく、ウエハWを含む部材を通過させることが可能な幅寸法を有する搬送路として構成されている。基板搬送室14は、連通路21の一端側の開口部20を介して基板処理室11と連通している。
【0017】
開口部20は弁体(第1の弁体)22により開閉されるように構成されている。この弁体22は開口部20に対して着脱自在に構成され、また後述の移動機構3と接続されることにより、基板搬送室14内を移動することができる。弁体22は、基板処理室11内に配置される部材をその内部に搬送するための部材保持部23を備える。部材保持部23は、弁体22によって開口部20を塞ぐ際に基板処理室11内に挿入され、搬送対象の部材を基板処理室11内の予め設定された配置位置に搬送することが可能な構成となっている。また、弁体22は、開口部20を気密に塞ぐためのOリング221を備えている。さらに、開口部20は、第2の弁体26によっても開閉されるように構成されている。第2の弁体26は、前記第1の弁体が取り外されている期間中に、開口部20を塞ぐ弁体であり、その構成については後述する(
図7)。
【0018】
部材保持部23によって搬送され、基板処理室11内に配置される部材については後に詳述するが、この例においては、「ウエハ」、「フォーカスリング」、「シールド部材の一部」、「整流部材の一部」がこれらの部材に相当する。以下、これらの部材を「配置部材」ともいう。
また、基板処理室11内の予め設定された配置位置とは、基板処理室11内にてウエハWの処理が行われるときに、前記部材が配置されている位置である。以下、「予め設定された配置位置」を「部材配置位置」と記載する場合もある。
【0019】
続いて、基板処理室11の構成例について、ウエハWに対して実施される処理がプラズマエッチング処理である場合を例にして説明する。この基板処理室11における処理容器2は接地されており、排気路24を介して真空排気機構25に接続されている。処理容器2の内部には、載置台41が設けられ、この例の載置台41は、その上面に凸状部42を備えている。例えば凸状部42は、縦断面形状が台形状に構成されており、その上面がウエハWを裏面側から支持する載置面を構成している。載置面は、その周縁部が、ウエハWの外縁よりも内側に位置するように構成されている。ウエハWはこの載置面(凸状部42の上面)に載置された状態で所定の真空処理が実施される。なお、以降では、載置面に載置されているウエハWを載置台41に載置されたウエハWと記載する場合もある。また、載置台41には、図示しない加熱部が埋設されている。
【0020】
処理容器2の天井部には、絶縁部材44を介し、載置台41に載置されたウエハWと対向するようにシャワーヘッド43が設けられている。シャワーヘッド43にはプラズマ生成用の高周波電源45が接続され、上部電極として機能するように構成されている。一方、載置台41は処理容器2を介して接地され、下部電極として機能するものであり、シャワーヘッド43と載置台41との間で、平行平板型のプラズマ形成機構を構成している。なお、プラズマを用いない処理が行われる基板処理室11においては、高周波電源45などのプラズマ形成機構を設けなくてもよい。
【0021】
また、シャワーヘッド43は、その下面に図示しない複数のガス吐出孔を備えており、エッチングガス(処理ガス)の供給源46からシャワーヘッド43を介して処理容器2内にエッチングガスが供給されるように構成されている。
そして、シャワーヘッド43からエッチングガスを供給し、高周波電源45からシャワーヘッド43に高周波電力を印加すると、シャワーヘッド43と載置台41との間で容量結合プラズマが形成される。
【0022】
処理容器2の内部にはシールド部材5が設けられる。シールド部材5は、ウエハWの処理に伴う生成物が、基板処理室11の本体である処理容器2の内壁に付着することを防止するための部材である。この例では、エッチング処理時に生成した副生成物が処理容器2に付着することを防止するために設けられる。シールド部材5は、処理容器2に取り付けられた第1のシールド部材51と、部材保持部23によって搬入される配置部材である第2のシールド部材52と、を組み合わせて構成される。
【0023】
既述のように弁体22は、移動機構3によって基板搬送室14内をすることができる。従って、上述の第2のシールド部材52を含む各配置部材は、弁体22と共に、基板搬送室14内を移動する構成となっている。
この点につき、
図2及び
図3は、配置部材が基板搬送室14内に位置している状態を示している。また、
図4は、弁体(第1の弁体)22により開口部20を塞ぎ、各配置部材を処理容器2内の部材配置位置に配置した状態を示している。なお、
図2~
図4では、第2の弁体26の図示は省略している。
【0024】
この例において、シールド部材5は略円筒状に形成され、シャワーヘッド43の側壁の周囲や、載置台41の側壁の上部側部分の周囲を、隙間を介して囲むように設けられている。
第2のシールド部材52は、円筒状に構成されたシールド部材5のうち、連通路21の基板処理室11側の開口部に対向する領域の側壁部を切り取った構成となっている。そして、シールド部材5の残りの部分が、第1のシールド部材51を構成する。以下、第1のシールド部材51における、第2のシールド部材52が切り取られた領域を「切り欠き領域」という。
【0025】
第2のシールド部材52が切り取られた位置において、第1のシールド部材51の下端部は、部材保持部23に保持された状態で搬入出されるウエハWの搬入出経路と干渉しない高さに位置している。また
図3、
図4に示すように、前記下端部には、第2のシールド部材52の上端と互いに組み合うように段部511が形成されている。
【0026】
載置台41の周囲には、整流部材6が設けられている。整流部材6は処理容器2内の気流の流れを整流するためのものであり、例えば円環状の板部材に複数の孔部60を形成して構成されている。
図2~
図4に示す例においては、整流部材6は、載置台41の側壁とシールド部材5とに挟まれた領域にはめ込まれ、処理容器2の床面と対向するように配置される。第2の整流部材62は、円環状に構成された整流部材6を平面視したとき、既述の第2のシールド部材52と、載置台41の側壁面とに挟まれた領域を切り取った構成となっている。そして、整流部材6の残りの部分が第1の整流部材61を構成する。第1の整流部材61についても、第2の整流部材62が切り取られた領域を「切り欠き領域」という。
【0027】
<基板処理室内に配置される部材>
続いて、基板処理室11内に配置される部材(配置部材)について説明する。この例における配置部材は、既述の第2のシールド部材52、第2の整流部材62に加え、基板処理室11内にて処理されるウエハW、及びフォーカスリング47を含んでいる。
これらの配置部材は、弁体22と接続された部材保持部23によって保持されている。
図4に示すように、部材保持部23は、弁体22によって開口部20を塞いだときに、弁体22から基板処理室11内に向けて延在するように配置される構成となっている。
【0028】
図2~
図4に示すように、部材保持部23は、略水平に延びるように弁体22の前面に取り付けられている。この例では部材保持部23は、上下に互いに並行して設けられた板状部材231を備え、
図4に示すように、上下の板状部材231同士の間には、強度を上昇させるためのトラス材232が設けられている。
【0029】
部材保持部23の先端は、第2のシールド部材52の背面に接続されている。部材保持部23に背面から保持された第2のシールド部材52は、
図4に示す部材配置位置に搬送されたときに、処理容器2側に取り付けられた第1のシールド部材51の切り欠き領域に嵌合する。これら第1のシールド部材51、第2のシールド部材52によりシールド部材5が構成される。また、第2のシールド部材52の上端には、既述の第1のシールド部材51側の段部511と組み合うように段部521が形成されている。
【0030】
第2のシールド部材52の前面の下端位置には第2の整流部材62が接続されている。第2の整流部材62は、
図4に示す部材配置位置に搬送されたときに、処理容器2側に取り付けられた第1の整流部材61の切り欠き領域に嵌合する。これら第1の整流部材61、第2の整流部材62により、環状の整流部材6が構成される。
【0031】
さらに、第2の整流部材6の先端側にはフォーカスリング47が接続されている。フォーカスリング47は、ウエハWに対してプラズマエッチング処理の面内均一性を向上させるためにウエハWの周囲に配置される。
このフォーカスリング47は、
図2に示すように、環状の部材であって、
図4に示す部材配置位置に搬送されたときに、載置台41の凸状部42の周囲に設けられる。また、フォーカスリング47はウエハWの周縁部を保持する段部471を備えている。フォーカスリング47は、この段部471上にウエハWを保持した状態で基板処理室11内に挿入される。
【0032】
例えばフォーカスリング47が部材配置位置に配置された状態において、段部471の上面の高さ位置は、凸状部42の上面(載置面)の高さ位置より低く設定されている。この構成により、ウエハWを保持した状態のフォーカスリング47を下降させると、凸状部42上にウエハWが受け渡される。そしてウエハWの処理中、段部471は、ウエハWよりも下方側の位置に退避した状態となる。
【0033】
なお、
図4以外の図では、図示の便宜上、凸状部42とフォーカスリング47の段部471の高さ位置を揃えて記載している。また、凸状部42と段部471との高さ位置を揃えた構成としてもよいし、段部471の上面が凸状部42の上面より上方側に位置するように構成し、フォーカスリング47にてウエハWを保持した状態で処理を行うようにしてもよい。
【0034】
図4に示すように、第2の整流板62の先端部には、フォーカスリング47を下面側から支持するための支持部材48が設けられている。一方、載置台41には、第2の整流板62及びフォーカスリング47を部材配置位置に配置した際に、支持部材48との干渉を避けるための段部411が形成されている。なお、
図4以外の各図では、載置台41の段部411は図示を省略している。
【0035】
<移動機構>
上述の基板搬送室14においては、磁気浮上式の移動機構3を用いて弁体22を移動させることにより、部材配置位置に配置される各部材(ウエハW、第2のシールド部材52、第2の整流部材62、フォーカスリング47)の搬送が行われる。例えば
図3及び
図5に示すように、移動機構3は、第1の磁石が設けられた基板搬送室14の床面部141と、基板搬送室14内で移動可能に構成された移動体31と、を備えている。
移動体31は平面視矩形状に形成されており、第1の磁石との間に反発力が働く第2の磁石が設けられ、反発力を用いた磁気浮上により、移動可能に構成されている。
【0036】
図5に模式的に示すように、基板搬送室14の床面部141には複数のタイル(移動用タイル)30が設けられている。これらタイル30は、ロードロック室13との間でのウエハWの受け渡し位置から、基板処理室11の手前に至る、移動体31の移動領域に設けられている。
タイル30には、その内部に各々、複数の移動面側コイル32が配列されている。移動面側コイル32は、本開示の第1の磁石に相当し、不図示の電力供給部から電力が供給されることにより磁場を発生するものである。
【0037】
一方、移動体31の内部には、例えば永久磁石により構成される複数のモジュール側磁石33が配列されている。これらモジュール側磁石33は、本開示の第2の磁石に相当するものであり、モジュール側磁石33に対しては、移動面側コイル31によって生成される磁場との間に反発力(磁力)が働く。この作用によりタイル30の上面側の移動面に対して、移動体31を磁気浮上させることができる。なお、モジュール側磁石33は、移動体31内に設けられたバッテリーより電力が供給され、電磁石として機能するコイルによって構成してもよい。また、永久磁石及びコイルの双方を設けてモジュール側磁石33を構成してもよい。
【0038】
タイル30は、複数の移動面側コイル32により、磁場を生成する位置や磁力の強さを調節し、磁界の状態を変化させることができるように構成されている。この磁界の制御により、移動面上で移動体31を所望の方向に移動させることや、移動面からの浮上距離の調節、移動体31の向きの調節を行うことができる。タイル30側の磁界の制御は、電力が供給される移動面側コイル32の選択や、移動面側コイル32に供給される電力の大きさを調節することにより実施される。
【0039】
図3及び
図4に示すように、移動体31には、その先端側の上面に弁体22の下端が取り付けられている。この例では、
図4に示すように、弁体22と移動体31とは第1のネジ機構34により着脱自在に構成されている。例えば弁体22には、その下面から下方に突出可能なネジ341と、このネジ用の駆動機構342が設けられている。一方、移動体31の上面には、ネジ341が螺合するネジ穴343が形成されている。こうして、駆動機構342によりネジ341を締める方向に回転させることにより、ネジ341をネジ穴34に挿入して、弁体22を移動体31に固定する。一方、ネジ341を緩めるように回転させて、その下端部を移動体31の上面から上昇させることにより、弁体22を移動体31から切り離す。
【0040】
また、弁体22は、例えば処理容器2の開口部20の周囲の壁部に対して第2のネジ機構35より着脱自在に構成されている。例えば弁体22には、その前面から前方に向けて突出可能な取り付け用のネジ351と、このネジ351用の駆動機構352が設けられている。一方、処理容器2の弁体22が取り付けられる壁部には、ネジ351が螺合するネジ穴353が形成されている。こうして、駆動機構352によりネジ351を締める方向に回転させることにより、弁体22が処理容器2の壁部に固定され、ネジ351を緩めるように回転させて、前記壁部から離すことにより、弁体22が処理容器2から取り外される。
なお、弁体22と移動体31又は処理容器2の壁部とは、機械的に着脱させる機構であれば、ネジ機構には限られない。移動体31や処理容器2の壁部側に設けたマニピュレータにより、弁体22を把持する構成としてもよい。
【0041】
本開示の部材を搬送する装置は、弁体22によって開口部20を塞いだときに、部材保持部23が開口部20から基板処理室11内に向けて延在するように配置される。そして、部材保持部23により保持された部材、この例では第2のシールド部材52、第2の整流部材62、フォーカスリング47及びウエハWが、基板処理室11内の予め設定された配置位置に搬送される。このように部材保持部23は、真空処理室11内における処理が行われる位置までウエハWを搬送する機能を備えているところ、本開示の基板保持部に相当している。
【0042】
次いで、
図1に示す例のロードロック室13の構成についてさらに説明する。既述のようにロードロック室13と基板搬送室14との間に形成されたウエハWの搬送用の開口部132は、ゲートバルブGV2または弁体22のいずれかにより開閉することができる。また、ウエハWが載置される受け渡し用のステージ130には、例えば載置台41と同様の形状の凸状部が形成されている。
【0043】
そして、弁体22によりロードロック室13の開口部132を塞ぐと、部材保持部23は、弁体22からステージ130に向けて延在するように配置される。この構成により、例えば
図4を用いて説明した基板処理室11側の載置台41とフォーカスリング47との間のウエハWの受け渡し動作と同様に、フォーカスリング47からステージ130にウエハWを受け渡すことができる。
【0044】
なお、ロードロック室13にステージ130を設けず、ロードロック室13内の予め設定された高さ位置にフォーカスリング47を進入させた状態で待機させてもよい。この場合には、フォーカスリング47によるウエハWの保持高さよりも上方側に昇降ピン131を突出させることにより、大気搬送機構122との間でのウエハWの受け渡しを行うことができる。
【0045】
さらに、開口部132の周囲のロードロック室13の壁部には、既述の第2のネジ機構35により弁体22がネジ止めされるネジ穴(図示せず)が形成されている。なお、ゲートバルブGV2は、弁体22による開口部132の開閉動作を行うときに、当該開閉動作を妨げない位置に退避するように構成されている(後述の
図7も参照)。
【0046】
図1に示す例において、平面視矩形状の基板搬送室14の短辺方向の長さは、各々、弁体22を保持した2台の移動体31が、左右に並んだ状態ですれ違うことができる程度の寸法となっている。この例では、基板搬送室14内に設けられた複数台の移動体31を用いて、弁体22及び部材の搬送が行われる。
以上に説明した、弁体22と、部材を保持する部材保持部23と、移動機構3と、を含む装置は、本開示の基板処理室11内に配置される部材を搬送する装置に相当する。
【0047】
<制御部>
基板処理システム1は、制御部100を備えている。制御部100は、CPUと記憶部とを備えたコンピュータにより構成され、基板処理システム1の各部を制御するものである。記憶部には移動体31の移動制御や基板処理室11の動作などを制御するためのステップ(命令)群が組まれたプログラムが記録されている。このプログラムは、例えばハードディスク、コンパクトディスク、マグネットオプティカルディスク、メモリカード、不揮発メモリなどの記憶媒体に格納され、そこからコンピュータにインストールされる。
【0048】
<搬送動作>
次に、上述の構成を備える基板処理システム1におけるウエハWの搬送動作の一例について説明する。初めに、ロードポート121に対し、処理対象のウエハWを収容したキャリアCを載置し、大気搬送室12内の大気搬送機構122によって、キャリアCからウエハWを取り出す。
一方、ロードロック室13では、
図1に示すように、ウエハWの搬送の前に、弁体22により開口部132を塞ぎ、部材保持部23をロードロック室13内に進入させ、フォーカスリング47をステージ130に配置しておく。
【0049】
続いて、大気搬送機構122によりウエハWをロードロック室13に搬入し、昇降ピン131によりウエハWを突き上げて受け取る。次いで、昇降ピン131を下降させ、ステージ130にウエハWを受け渡す。
しかる後、大気搬送機構122がロードロック室13から退避すると、ゲートバルブGV1を閉じ、ロードロック室13内を大気圧雰囲気から真空雰囲気へと切り替える。
【0050】
図1に示す右側のロードロック室13では、ウエハWがステージ130に載置された状態で、ロードロック室13内の圧力の調節を行う様子を示している。この例では、開口部132を塞いでいる弁体22は移動体31から取り外されている。そしてロードロック室13内が真空雰囲気となったら、移動体31を弁体22に取り付ける。この移動体31と弁体22の着脱については後述する。さらに、第2のネジ機構35による開口部132の周囲の壁部への弁体22の結合を解除する。次いで、基板搬送室14内では、タイル30に設けられている移動面側コイル32によって生成した磁場を利用し、磁気浮上により移動体31が上昇する。
【0051】
そして、移動体31を後退させて弁体22を開口部132から取り外すが、このとき、移動体31の上昇に伴ってフォーカスリング47が上昇し、ステージ130フォーカスリング47にウエハWが受け渡される。次いで、ウエハWの処理を実行する基板処理室11まで移動体31を後退移動させると共に、ウエハWを保持した部材保持部23の前端が、開口部20に対向するように移動体31を回転させる。続いて、基板処理室11内にウエハWを搬入するために、移動体31の移動方向を前進に切り替える。
【0052】
こうして、
図6Aに示すように、ウエハWを保持した部材保持部23が基板処理室11の開口部20に正対する状態とする。そして、
図6Bに示すように、載置台41の上方であって、ウエハWの中心が載置台41の中心よりもやや手前側に到達する位置まで移動体31を前進させる。なお、
図6A~
図6D、
図7では、連通路21の基板処理室11側の開口部近傍の第1のシールド部材51、及び第2のシールド部材52を簡略して表示してある。また、その他の領域の第1のシールド部材51、及び第1の整流部材61の記載は省略している。
【0053】
続いて、移動体31を直進させつつ降下させ斜め下方に向けてウエハWを移動させる。この動作により、先ずウエハWが載置台41の凸状部42の上面に接触する。さらに上述の移動体31の移動動作を続行することにより、フォーカスリング47から凸状部42にウエハWが受け渡される(
図6C参照)。次いで、フォーカスリング47が載置台41に接触する部材配置位置まで、移動体31を下降させる。既述のように、図示の便宜上、
図6Cでは、フォーカスリング47の段部471と凸状部42の高さ位置を揃えて描いている。
【0054】
フォーカスリング47が載置台41に接触すると、弁体22により開口部20が塞がれた状態となるように、部材保持部23の長さ寸法が調節されている。また、上述のウエハWの搬入動作に伴って、部材保持部23に保持された各部材(フォーカスリング47、第2のシールド部材52、第2の整流部材62)についても、各々の部材配置位置に搬送される。
以上に記載したように、ウエハWを載置台41に載置するときには、移動体31が斜め下方側に向けて移動する。この移動動作を行うことができるように、連通路21や第1のシールド部材51の形状が設定され、基板搬送室14内において移動体31の高さ位置の制御が行われる。
【0055】
この例では、ウエハWを斜め下方に移動させて、フォーカスリング47から載置台41へのウエハWの受け渡しを行う。この受け渡し動作では、フォーカスリング47はウエハWを載置台41に受け渡した後も斜め方向の下降を続行するため、載置台41に載置されたウエハWの中心と、フォーカスリング47の中心とが僅かにずれるおそれがある。このような場合には、予め両者の中心の位置ずれの方向とずれ量とを把握しておく。そして、ロードロック室13にて前記ずれ方向とは逆向きに、前記ずれ量分だけ予めずらしてフォーカスリング47へのウエハWの受け渡しを行ってもよい。
【0056】
ウエハWを斜め下方に移動させる上述の搬送動作は一例であり、他の搬送経路を通ってウエハWの受け渡しを行ってもよい。例えば移動体31を直進させて互いの中心が揃うようにウエハWを載置台41の上方位置まで搬送する。次いで、移動体31を下降させて、ウエハWを凸状部42に受け渡し、さらに、移動体31を下降させてフォーカスリング47を部材配置位置に配置するようにしてもよい。
続いて、
図6Dに示すように、第2のネジ機構35を用いて弁体22を処理容器2の壁部に取り付けて開口部20を塞ぐ。この後、第1のネジ機構34を駆動して弁体22から移動体31を切り離す。弁体22から切り離された移動体31は、他の弁体22の移動動作に用いられる。
【0057】
こうして、ウエハWが搬入され、弁体22により開口部20が塞がれた基板処理室11では、必要に応じて加熱部によるウエハWの加熱を行って、予め設定された温度に昇温する。また、シャワーヘッド43から処理容器2内に処理ガスであるエッチングガスを供給すると共に、高周波電源45から高周波電力を印加する。これにより、処理容器2内に容量結合プラズマが生成して、エッチングガスの活性種により、ウエハWに対してプラズマエッチング処理を実施する。
【0058】
このとき、フォーカスリング47、第2のシールド部材52、第2の整流部材62は、予め設定された部材配置位置に配置されている。この結果、整流部材6によりエッチングガスの流れを制御しつつ、フォーカスリング47を用いて面内均一性の良好なエッチング処理を進行させ、シールド部材5により処理容器2の内壁への生成物の付着を防止することができる。
【0059】
プラズマエッチング処理が終了すると、弁体22に移動体31を取り付ける。次いで、第2のネジ機構35を駆動して処理容器2の壁部から弁体22を取り外す。この後、移動体31を上昇、移動させて、搬入時とは反対の手順で基板処理室11からウエハWを搬出する。ここで、プラズマエッチング処理の後に、他の処理を実施する場合には、当該処理が行われる基板処理室11にウエハWを搬送する。他の基板処理室11にウエハWを搬送する場合には、
図6A~
図6Dを用いて説明した例と同様の搬入動作を繰り返す。
以上において、弁体(第1の弁体)22を開口部20から取り外している期間は、後述するように第2の弁体26により開口部20を塞いでいる。
【0060】
また、すべての処理を終え、ロードロック室13にウエハWを搬送するときには、搬入先のロードロック室13のゲートバルブGV2を開く。そして、移動体31により弁体22を移動させ、処理後のウエハWをロードロック室13内に搬入する。次いで、弁体22によりロードロック室13の開口部132を閉じて、ウエハWをステージ130に載置する。また、移動体31は弁体22から取り外され、他の弁体22の移動動作に用いられる。この後、ロードロック室13内を大気圧雰囲気に調節し、ゲートバルブGV1を開き、昇降ピン131を介して、大気搬送機構122にウエハWを受け渡す。大気搬送機構122がウエハWを搬出したら、ロードロック室13のゲートバルブGV1を閉じ、ウエハWをキャリアCに収納する。
【0061】
<部材のメンテナンスやクリーニング>
以上に説明したように、本開示の弁体22には、部材保持部23を介してフォーカスリング47、第2のシールド部材52、第2の整流部材62が設けられている。一方、基板処理室11に配置される部材は、定期的にメンテナンスやクリーニングが行われる場合がある。このとき、基板処理室11から対象の部材を取り外してメンテナンスやクリーニングを実施する場合もある。この点、上述の各部材(フォーカスリング47、第2のシールド部材52、第2の整流部材62)は、移動体31を用いて基板処理室11から搬出することができるので、真空雰囲気となっている基板処理室11を解放せずにこれらの部材を取り出すことができる。
【0062】
例えばメンテナンス等を行うときには、対象となる部材を保持した弁体22に移動体31を接続し、部材保持部23により保持された部材をロードロック室13に搬送する。そして、ロードロック室13の開口部132を弁体22により閉じ、ロードロック室13を大気圧雰囲気に戻す。次いで、例えばロードロック室13の天板を解放し、作業者が、部材であるフォーカスリング47、第2のシールド部材52、第2の整流部材62の少なくとも一つの部材を取り出す。そして、これらの部材について、メンテナンスやクリーニング、部品交換を行う。
こうして、部材のメンテナンス等が完了したら、当該部材を部材保持部23に保持された状態に戻す。次いで、解放されていたロードロック室13の天板を閉じ、当該弁体22を用いたウエハWの搬送を再開する。
【0063】
<効果>
この実施形態によれば、弁体22に部材保持部23を介して基板処理室11内に配置される部材を接続している。そして、弁体22によって基板搬送室14と基板処理室11とを連通させる開口部20を塞いだときに、前記部材が基板処理室11内の予め設定された配置位置に搬送される構成となっている。このように、開口部20を塞ぐ弁体22と、基板処理室11内に配置される部材とを一体構造とすることにより、これらの部材を弁体22と共に基板処理室11から搬出することができる。
【0064】
そして、弁体22が、基板処理室11の外部に設けられた移動体31によって移動可能となっていることにより、基板処理室11内にはこれらの部材を配置するための受け渡し用の昇降ピンやその駆動機構を個別に設ける必要がない。従って、基板処理室11内に配置される構成要素を削減することができ、基板処理室11の小型化や製造コストの低減を図ることができる。
さらに、弁体22による開口部20の開閉と、部材の搬送とを同時に行うことによって、これらを個別に行う場合に比べて、工程数が削減される。これにより、基板処理における駆動機構の制御の簡易化や、運転コストの削減を図ることができる。
【0065】
また、基板処理室11内に配置される部材に対して、定期的なメンテナンスやクリーニングを行う場合には、ロードロック室13に前記部材を搬送し、ロードロック室13の開口部132を弁体22により塞いで、必要な処理を行なっている。このように、真空搬送室11とは雰囲気を切り離した状態で、メンテナンス等の作業が実施され、基板処理室11や基板搬送室13内は真空雰囲気に維持できる。
従って、前記部材のメンテナンス等を実施する場合に、基板処理室11や基板搬送室14の真空雰囲気を大気開放する必要がないことから、メンテナンス等の工程数や処理時間、基板処理システムを停止する時間の低減を図ることができる。
【0066】
さらに、定期的なメンテナンス等が必要な部材を、弁体22と共に搬送する構成では、前記部材が一体として搬送され、これら部材のメンテナンス等をまとめて実施することができる。従って、部材のメンテナンス等を個別に実施する場合に比べて、メンテナンス等に要する手間や時間を各段に短縮できる。また、部材保持部23に部材が一体に構成されていることから、これら部材の組立て及び動作確認をまとめて実施することができ、メンテナンス等におけるクオリティチェックに要する工程数を削減することができる。
【0067】
さらにまた、上述の実施形態では、弁体22と移動体31とを着脱自在に構成している。これにより、開口部20を塞いだ状態の弁体22から移動体31を取り外すことができ、複数の弁体22に移動体31を共用することができる。従って、弁体22に比べて移動体31の個数が少なくて済むので、構成部材の低減を図ることができる。また、すべての弁体22に移動体31が固定して設けられている場合に比べて、移動体31の専有面積が少なくて済み、基板搬送室14の小型化を図ることができる。
一方で、弁体22に対して移動体31を取り外し自在に構成することは、必須の要件ではなく、必要に応じてすべて、または一部の弁体22に対して移動体31を固定して設けてもよい。
【0068】
<開口部の開閉機構の構成例>
ここで、開口部の開閉機構の構成例について、
図7を参照して説明する。以降の説明では、共通の構成部分には
図1~
図6Dに付したものと同一の符号を付しており、再度の説明を省略する。この構成例では第2の弁体26について説明する。
図7に示す例において、第2の弁体26は、開口部20を塞ぐ位置と、当該塞ぐ位置の上方側の退避位置との間で昇降自在に構成され、基板搬送室14には、前記退避位置となる弁箱142が形成されている。但し、第2の弁体26の退避位置は、
図7に示す例に限定されるものではなく、例えば開口部20を塞ぐ位置の下方側や側方に設けるようにしてもよい。
【0069】
そして、ウエハWを基板処理室11に搬入したときは、第1の実施形態にて説明したように、弁体(第1の弁体)22にて開口部20を塞ぎ、ウエハWに対して処理を行う。また、
図7に示すように、ウエハWの処理が行われておらず、部材保持部23や各配置部材が基板搬送室14側にあるときは、第2の弁体26により開口部20を塞ぐ。
【0070】
この構成により、ウエハWが基板搬送室14にある場合には、第2の弁体26により前記開口部20が閉じられる。このため、弁体22が取り外されている期間中に、基板処理室11内に生成した反応生成物が基板搬送室14側に流出するおそれを抑制できる。また、基板処理室11内の温度条件や圧力条件が基板搬送室14側に影響を与えるおそれが低減される。
【0071】
<第2の実施形態>
本開示の第2の実施形態について、
図8A及び
図8Bを参照して説明する。この実施形態は、フォーカスリング47とその支持部材48とを切り離すことができるように構成したものである。これらの図の例では、支持部材48の上端には接続ピン491が設けられる共に、フォーカスリング47の下面には、この接続ピン491に対応する形状の凹部492が形成されている。
【0072】
この例では、弁体22と共に配置部材を搬送するときには、支持部材48により下方側からフォーカスリング47を支持することにより接続ピン491を凹部492に嵌合させる。こうして、両者を接続した状態で、第1の実施形態と同様の手法にて、
図8Aに示すように、ウエハWを載置台41に搬送する。そして、ウエハWを載置台41に載置した後、さらに移動体31を下降させることにより、支持部材48の接続ピン491をフォーカスリング47の凹部492から抜き出して、両者を切り離す(
図8B参照)。
【0073】
一方、基板処理室11内にてウエハWに対する処理が終了すると、再び移動体31を上昇させて、支持部材48の接続ピン491をフォーカスリング47の凹部492に挿入し、こうして、部材保持部23にフォーカスリング47及びウエハWを保持させる。この後、第1の実施形態と同様の手法にて、ウエハWを基板処理室11から基板搬送室14へ搬出する。なお、支持部材48とフォーカスリング47との間では、フォーカスリング47側に接続ピン、支持部材48側に凹部を夫々設けるようにしてもよい。この例では、フォーカスリング47と支持部材48を着脱自在に構成すること以外については、第1の実施形態と同様に構成される。
【0074】
この第2の実施形態では、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、ウエハWの処理中はフォーカスリング47を弁体22から切り離しているので、弁体22の接続位置の変化によってフォーカスリング47の位置が変化するおそれがない。弁体22はOリング221を介して処理容器2に接続されており、Oリング221の劣化等の形状変化によって、弁体22が開口部20を塞ぐ位置が僅かに変化し、これがフォーカスリング47の配置に影響を与えることが考えられからである。従って、この例のように、ウエハWの処理中はフォーカスリング47を弁体22から切り離す構成とすることにより、フォーカスリング47の配置位置の精度の向上が期待できる。
【0075】
<第3の実施形態>
本開示の第3の実施形態について、
図9を参照して説明する。この実施形態は、基板処理室に配置される配置部材の他の例を示すものであり、当該配置部材が、基板処理室のプリコート処理を行う際に、これらの処理の非対象面を覆うシャッターである構成例である。非対象面とは、基板処理室内において、プリコート処理が実施されない面である。
図9に示す基板処理室は例えばPVD(Physical Vapor Deposition)によりウエハWに成膜処理を実施するように構成されており、この
図9を参照して、配置部材がプリコート処理のシャッターである例について説明する。
【0076】
先ず、成膜処理について簡単に説明すると、基板処理室11aは開口部20を介して基板搬送室14に連通された処理容器7を備えている。この例では、基板保持部としてウエハWの搬送を行うことが可能な部材保持部23が取り付けられた弁体22と、配置部材であるシャッター8を保持する部材保持部230が取り付けられた弁体220と、を用意する。
そして、ウエハWに対して処理を行うときには、移動体31の移動により弁体22を移動させ、部材保持部23によりウエハWの搬送が行われる点は、
図6A~
図6Dを用いて説明した基板処理室11の例と同様である。
【0077】
ウエハWを処理容器7内に搬入した後、ガス供給ポート73からガスを供給し、排気機構74によって処理容器7内を減圧する。一方、処理容器7内に配置されたターゲット75にホルダ76を介して電圧を印加すると共に、処理容器7の外にてターゲット75に対峙して設けられたカソードマグネット76を駆動する。これにより、プラズマがターゲット75の近傍に集中し、ターゲット75にプラズマ中の正イオンが衝突する。こうして、ターゲット75から構成物質が放出され、ウエハW上に堆積していくことで、ウエハWの成膜処理が進行する。
【0078】
上述の基板処理室11aにおいては、成膜処理を実施する前に、シャッター8を配置して、処理容器7内のプリコート処理を実施する。シャッター8は、
図9に示すように、予め設定された配置位置に搬送されたときに、載置台71の上面及び側面を覆うように形成される。
【0079】
弁体220及び部材支持部230は、夫々、
図1~
図6Dにて説明した弁体22及び部材支持部23と同様に構成される。即ち、弁体220によって開口部20を塞いだときに、部材保持部230は基板処理室11a内に向けて延在するように配置され、シャッター8が部材配置位置に搬送される。また、
図9の例では、配置部材として、部材保持部23にシャッター部材81が設けられており、処理容器7と連通路21との間の開口70の一部又は全部を塞ぐように構成されている。
【0080】
プリコート処理を実施するときには、弁体220により開口部20を塞いで、シャッター8を部材配置位置に搬送し、プリコート処理の非対象面である載置台71の上面及び側面を覆う。そして、例えば排気機構74によって処理容器7内を排気しながら、ガス供給ポート73からプリコートガスを供給し、不図示のプラズマ形成部からプリコートガスに、例えば高周波電力を印加する。これにより、プリコートガスをプラズマ化して、処理容器7内にプリコート膜を形成するプリコート処理を実施する。
【0081】
プリコート膜は、処理容器7内における、シャッター8にて被覆された非対象面以外の全ての面に形成される。そして、このプリコート処理により、スパッタリングの際に使用するプラズマから部材を保護する効果が得られる。
こうして、プリコート処理を実施した後、例えばプリコートガスの供給とプラズマの生成を停止すると共に、不活性ガスの供給を開始して、処理容器7内の雰囲気を不活性ガスにより置換する。この後、弁体220を開口部20から取り外して、開口部20を開き、シャッター8を基板処理室11aから搬出する。
【0082】
さらに、基板処理室に配置される部材は、基板処理室のガスクリーニングや、プラズマクリーニングを行う際に、これらクリーニング処理の非対象面を覆うシャッターであってもよい。クリーニング処理は、基板処理室がウエハWに成膜処理を実施するように構成される場合に、例えば成膜処理を予め設定された回数行った後に、実施される。例えばクリーニング処理用のシャッターは、
図7を用いて説明したプリコート処理用のシャッター8と同様に構成される。この構成では、弁体により開口部を塞いで、予め設定された配置位置に搬送されたときに、シャッターがクリーニング処理の非対象面である載置台の上面及び側面を覆うように形成される。
【0083】
クリーニング処理を実施するときには、弁体により開口部を塞いで、シャッターを部材配置位置に搬送し、載置台の上面及び側面を覆う。そして、クリーニングガスを供給し、必要であればプラズマを形成して、処理容器内のクリーニングを実施する。クリーニング処理を行う間は、載置台の上面及び側面はシャッターにより覆われているので、クリーニングガスやプラズマから保護され、損傷が抑えられる。
【0084】
以上において、配置部材は、ウエハ、フォーカスリング、シールド部材、整流部材、シャッターからなる部材群から選択される少なくとも1つの部材を含むものであればよい。従って、弁体と共に部材保持部(基板保持部)により搬送される部材は、ウエハのみでもよい。また、前記部材群のみならず、基板処理室内に配置され、弁体によって開口部を塞いだとき、弁体から延在する部材保持部にて基板処理内の予め設定された配置位置に搬送される部材であれば、配置部材を構成することができる。さらに、部材保持部の形状は、上述の例には限らず、弁体によって開口部を塞いだときに、弁体から基板処理室内に向けて延在し、部材を部材配置位置に搬送する形状であればよい。
【0085】
さらに、移動機構は、既述した磁気浮上式の移動機構には限らない。弁体及び部材保持部にて保持された部材が、弁体が開口部を塞ぐ位置と、前記部材が基板搬送室を介してロードロック室に搬送される構成であればよい。従って、弁体が取り付けられた移動体がレール上を移動する構成や、移動体に車輪が設けられる構成であってもよい。また、弁体及び部材保持部にて保持された部材が多関節アームを備えた搬送機構により、移動する構成であってもよい。さらに、弁体が移動体に固定され、着脱しない構成としてもよい。
【0086】
さらにまた、基板処理室と基板搬送室は互いに隣接して設けられるものであればよく、上述の実施形態には限られない。上述の実施形態では、基板処理室と基板搬送室との間に連通路を設けたが、この連通路の長さ(
図3中Y’方向の大きさ)は適宜設定可能であり、実質的に設けない構成であってもよい。
また、載置台の構成は上述の例に限らない。既述のウエハ載置用の凸状部を設けず、受け渡し用の昇降ピンによりウエハを載置台に受け渡して載置する構成であってもよい。
【0087】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0088】
W ウエハ
14 基板搬送室
11 基板処理室
20 開口部
22 弁体
23 部材保持部
3 移動機構