(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130931
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】液体吐出装置、液体吐出方法、及び、プログラム
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20230913BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230913BHJP
B41J 2/04 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
B41J2/165 207
B41J2/01 451
B41J2/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035527
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】深澤 光
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB07
2C056EB15
2C056EB32
2C056EB34
2C056EB38
2C056EC07
2C056EC19
2C056EC32
2C056EC36
2C056EC41
2C056FA02
2C056FA15
2C056FB09
2C056KB03
2C056KB08
2C057AL15
2C057AL16
2C057BF04
(57)【要約】
【課題】 液体付与品質の低下を抑制する。
【解決手段】 液体吐出装置200は、液体吐出ヘッドの複数のノズル孔から液体を吐出し、対象物に付与する液体吐出装置200であって、液体吐出ヘッド10は、対象物への液体の付与開始時において第1領域に対して第1駆動ノズル数の前記ノズル孔から液体を吐出する第1吐出動作と、走査開始時において第2領域に対して第1駆動ノズル数よりも多い第2駆動ノズル数のノズル孔Nから液体を吐出する第2吐出動作と、第1吐出動作の前に液体を吐出する第1空吐出動作と、第2吐出動作の前に液体を吐出する第2空吐出動作と、を実行可能であり、第2空吐出動作における合計の液体の吐出量である第2総空吐出量は、第1空吐出動作における合計の液体の吐出量である第1総空吐出量よりも多い。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドの複数のノズル孔から液体を吐出し、対象物に付与する液体吐出装置であって、
前記液体吐出ヘッドは、
前記対象物への前記液体の付与開始時において第1領域に対して第1駆動ノズル数の前記ノズル孔から液体を吐出する第1吐出動作と、
走査開始時において第2領域に対して第1駆動ノズル数よりも多い第2駆動ノズル数の前記ノズル孔から液体を吐出する第2吐出動作と、
前記第1吐出動作の前に液体を吐出する第1空吐出動作と、
前記第2吐出動作の前に液体を吐出する第2空吐出動作と、を実行可能であり、
前記第2空吐出動作における合計の液体の吐出量である第2総空吐出量は、前記第1空吐出動作における合計の液体の吐出量である第1総空吐出量よりも多いことを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項2】
前記第1空吐出動作では、
前記第1駆動ノズル数より多い数量の前記ノズル孔を使用して空吐出を実施し、
前記第2空吐出動作では、
前記第2駆動ノズル数より多い数量の前記ノズル孔を使用して空吐出を実行することを特徴とする、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記液体吐出ヘッドは、前記ノズル孔を開閉する開閉弁と、
前記開閉弁を駆動させる弁駆動機構と、を備え、
前記第1吐出動作では、前記対象物への前記液体の付与開始時において第1弁開放時間で前記ノズル孔から液体を吐出し、
前記第1空吐出動作では、前記第1弁開放時間よりも長い弁開放時間において空吐出を実施し、
前記第2吐出動作では、前記対象物への前記液体の付与開始時において第2弁開放時間で前記ノズル孔から液体を吐出し、
前記第2空吐出動作では、前記第2弁開放時間よりも長い弁開放時間において空吐出を実施することを特徴とする、請求項1又は2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
液体吐出ヘッドの複数のノズル孔から液体を吐出し、対象物に付与する液体吐出装置であって、
前記液体吐出ヘッドは、前記複数のノズル孔から液体を吐出しない不吐出時間が、予め定められた吐出異常発生時間を超えた場合に空吐出を実施し、
前記対象物への前記液体の付与開始時の駆動ノズル数が少ない場合の前記吐出異常発生時間は、前記対象物への前記液体の付与開始時の駆動ノズル数が多い場合の前記吐出異常発生時間よりも長いことを特徴とする、液体吐出装置。
【請求項5】
前記吐出異常発生時間は、
前記液体のチクソトロピー性に起因する粘度の単位時間当たりの変化量に基づいて決定されることを特徴とする、請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記吐出異常発生時間は、
前記液体の圧力の単位時間当たりの変化量に基づいて決定されることを特徴とする、請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
液体吐出ヘッドの複数のノズル孔から液体を吐出し、対象物に付与する液体吐出方法であって、
前記対象物への前記液体の付与開始時において第1領域に対して第1駆動ノズル数の前記ノズル孔から液体を吐出する第1吐出動作を行うことと、
前記対象物への前記液体の付与開始時において第2領域に対して第1駆動ノズル数よりも多い第2駆動ノズル数の前記ノズル孔から液体を吐出する第2吐出動作を行うことと、
前記第1吐出動作の前に液体を吐出する第1空吐出動作を行うことと、
前記第2吐出動作の前に液体を吐出する第2空吐出動作を行うことと、を含み、
前記第2空吐出動作における合計の液体の吐出量である第2総空吐出量は、前記第1空吐出動作における合計の液体の吐出量である第1総空吐出量よりも多いことを特徴とする、液体吐出方法。
【請求項8】
液体吐出ヘッドの複数のノズル孔から液体を吐出し、対象物に付与する液体吐出方法であって、
前記複数のノズル孔から液体を吐出しない不吐出時間が、予め定められた吐出異常発生時間を超えた場合に、前記液体吐出ヘッドが空吐出を実施することを含み、
前記対象物への前記液体の付与開始時の駆動ノズル数が少ない場合の前記吐出異常発生時間は、前記対象物への前記液体の付与開始時の駆動ノズル数が多い場合の前記吐出異常発生時間よりも長いことを特徴とする、液体吐出方法。
【請求項9】
液体吐出ヘッドの複数のノズル孔から液体を吐出し、対象物に付与させる処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記プログラムは、
前記対象物への前記液体の付与開始時において第1領域に対して第1駆動ノズル数の前記ノズル孔から液体を吐出する第1吐出動作を実行させる処理と、
前記対象物への前記液体の付与開始時において第2領域に対して第1駆動ノズル数よりも多い第2駆動ノズル数の前記ノズル孔から液体を吐出する第2吐出動作を実行させる処理と、
前記第1吐出動作の前に液体を吐出する第1空吐出動作を実行させる処理と、
前記第2吐出動作の前に液体を吐出する第2空吐出動作を実行させる処理と、を前記コンピュータに実行させ、
前記第2空吐出動作における合計の液体の吐出量である第2総空吐出量は、前記第1空吐出動作における合計の液体の吐出量である第1総空吐出量よりも多いことを特徴とする、プログラム。
【請求項10】
液体吐出ヘッドの複数のノズル孔から液体を吐出し、対象物に付与させる処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記プログラムは、
前記複数のノズル孔から液体を吐出しない不吐出時間が、予め定められた吐出異常発生時間を超えた場合に、前記液体吐出ヘッドに空吐出を実施させる処理を、前記コンピュータに実行させ、
前記対象物への前記液体の付与開始時の駆動ノズル数が少ない場合の前記吐出異常発生時間は、走査開始時の駆動ノズル数が多い場合の前記吐出異常発生時間よりも長いことを特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、液体吐出方法、及び、プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体吐出ヘッドから液体を吐出し、対象物に付与する液体吐出装置が知られている。このような液体吐出装置は、対象物の塗装や記録媒体への画像形成等の様々な用途に使用される。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の液体吐出装置は、インクを吐出するノズル孔と、ノズル孔に加圧されたインクを供給するインク室と、インク室内に設けられ、ノズル孔を開閉するニードル弁と、ニードル弁を駆動する駆動機構と、を備える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、液体が有するチクソトロピー性、及び吐出による液圧降下によって、液体の付与開始時において液体付与品質が低下する場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の液体吐出装置は、液体吐出ヘッドの複数のノズル孔から液体を吐出し、対象物に付与する液体吐出装置であって、液体吐出ヘッドは、対象物への液体の付与開始時において第1領域に対して第1駆動ノズル数のノズル孔から液体を吐出する第1吐出動作と、走査開始時において第2領域に対して第1駆動ノズル数よりも多い第2駆動ノズル数のノズル孔から液体を吐出する第2吐出動作と、第1吐出動作の前に液体を吐出する第1空吐出動作と、第2吐出動作の前に液体を吐出する第2空吐出動作と、を実行可能であり、第2空吐出動作における合計の液体の吐出量である第2総空吐出量は、第1空吐出動作における合計の液体の吐出量である第1総空吐出量よりも多いことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、液体付与の開始時における液体付与品質の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る液体吐出装置を搭載した塗装ロボットを示す概略図である。
【
図2】実施形態に係る液体吐出装置を示す概略図である。
【
図3】実施形態に係る液体吐出装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図4】実施形態に係る液体吐出装置の機能ブロック図である。
【
図5】塗装ルート生成処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】液滴の吐出時間と塗料の粘度との関係を示すグラフである。
【
図7】液滴の吐出時間と塗料の液圧との関係を示すグラフである。
【
図8】駆動ノズル数が異なる場合の液滴の吐出時間と塗料の液圧との関係を示すグラフである。
【
図9】塗装時に使用する駆動ノズル数以上のノズル孔Nを用いて空吐出を実行した場合の液滴の吐出時間と塗料の液圧との関係を示すグラフである。
【
図10】デキャップ時間と塗料の粘度との関係を示すグラフである。
【
図11】対象物に含まれる第1領域及び第2領域を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<液体吐出装置の概略>
はじめに
図1を用いて液体吐出装置の概略を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る液体吐出装置の全体概略図である。ここに例示した液体吐出装置は、自動車の車体などを塗装する塗装ロボットである。なお、各図において、互いに交差する3方向であるX軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向を示す矢印を図示する場合がある。X軸方向は、例えば塗装対象物である車体の前後方向に沿う。Y軸方向は車体の幅方向に沿う。Z軸方向は上下方向に沿う。
【0009】
図1に示すように、塗装ロボット1000は、自動車の車体側面などの対象物3000に対向して設置されている。塗装ロボット1000は、ベース100、第1アーム101、第2アーム102、及びヘッドユニット103を備える。第1アーム101は、ベース100に連結されている。第2アーム102は、第1アーム101に連結されている。ヘッドユニット103は、第2アーム102に連結されている。
【0010】
塗装ロボット1000は、第1ジョイント104、第2ジョイント105、及び第3ジョイント106を備える。第1ジョイント104は、ベース100と第1アーム101とを連結する。第2ジョイント105は、第1アーム101と第2アーム102とを連結する。第3ジョイント106は、第2アーム102とヘッドユニット103とを連結する。
【0011】
塗装ロボット1000は、例えば多関節ロボットである。ベース100はZ軸方向に延びる軸を回転軸として、a方向に旋回可能である。ベース100は、第1ジョイント104を介して第1アーム101の一端部を支持する。
【0012】
第1アーム101は、X-Y面に平行な軸を回転軸として、b方向に旋回可能である。第1アーム101の他端部は、第2ジョイント105を介して第2アーム102の一端部に支持する。第2アーム102は、X-Y面に平行な軸を回転軸として、c方向に揺動可能である。また、第2アーム102は、第2アーム102の長手方向に延在する軸を回転軸として、d方向に回転可能である。
【0013】
第2アーム102の他端部は、第3ジョイント106を介してヘッドユニット103を支持する。ヘッドユニット103は、第2アーム102の長手方向と交差する方向に延在する軸を回転軸として、e方向に回転可能である。また、ヘッドユニット103は、ヘッドユニット103と第3ジョイント106とが離間する方向に延在する軸を回転軸として、f方向に回転可能である。
【0014】
塗装ロボット1000は、対象物3000に対してヘッドユニット103を自由に動かすことができる。塗装ロボット1000は、対象物3000に対してヘッドユニット103を正確に配置できる。塗装ロボット1000は、塗装する位置に対して正確にヘッドユニット103を配置できる。塗装ロボット1000は、対象物3000に向けて塗料を吐出し、対象物3000を塗装する。
【0015】
なお、本実施形態では、塗装ロボット1000を、対象物3000を挟んで両側に1台ずつ配置したシステム構成を例示したが、塗装ロボット1000は、対象物3000を挟んで両側に配置されるもの限定されない。塗装ロボット1000の設置台数は、対象物3000に対して1台でもよく、3台以上でもよい。
【0016】
図2は、液体吐出装置200を示す概略図である。塗装ロボット1000は、液体吐出装置200を有する。液体吐出装置200は液体吐出方法を実行できる。液体吐出装置200は、タンク2、吐出ヘッド(液体吐出ヘッド)10、及び制御装置500を備える。液体吐出装置200は、配管1、配管4及び配管8を備える。
【0017】
タンク2は、吐出ヘッド10に供給される液体を貯留する容器である。タンク2は、液体の一例である塗料3を貯留する。タンク2には、配管1が接続されている。配管1は、例えばコンプレッサが接続されている。コンプレッサは、加圧されたエアをタンク2に供給する。コンプレッサは、配管1を介して、タンク2の内部の圧力を昇圧できる。配管1はタンク2内の液体に圧力を供給する圧力供給経路として機能する。
【0018】
配管4は、タンク2と吐出ヘッド10とを接続する流路である。タンク2内の塗料3は、配管4内を流れて、吐出ヘッド10に供給される。配管4は、吐出ヘッド10に塗料3を供給する液体供給流路として機能する。
【0019】
吐出ヘッド10は、ノズル孔N、インク室11及び開閉弁12を有する。吐出ヘッド10は、開閉弁12を駆動するための弁駆動機構13を有する。ノズル孔Nは、インク室11に連通する。インク室11は、タンク2から供給された塗料3を貯留する。開閉弁12は、インク室11内に配置されている。開閉弁12は、ノズル孔Nを開閉する。開閉弁12は例えばニードル弁である。吐出ヘッド10は、インク室11内の塗料3をノズル孔Nから吐出する。吐出ヘッド10は、加圧された塗料3を吐出し、対象物3000に付着させる。弁駆動機構13は、制御装置500から供給された駆動信号に従って、開閉弁12を駆動する。開閉弁12は、ノズル孔Nに接近して、ノズル孔Nを閉状態とする。開閉弁12はノズル孔Nから離間してノズル孔Nを開状態とする。
【0020】
制御装置500及びPC600は、吐出ヘッド10による液体吐出を制御する。制御装置500及びPC600は、開閉弁12を動作させて、塗料3を吐出する。
【0021】
配管8は、吐出ヘッド10に連通する。配管8には、弁9が設けられている。インク室11内に塗料3を充填する際には、弁9が開放されて、インク室11内の圧力が逃がされる。吐出ヘッド10のノズル孔Nから塗料3を吐出する際には、弁9は閉じられる。
【0022】
<ハードウェア構成>
次に、
図3を参照して、第1実施形態に係る液体吐出装置200のハードウェア構成について説明する。
図3は、第1実施形態に係る液体吐出装置200のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3に示すハードウェア構成は、必要に応じて追加の構成要素を含むことができる。ハードウェアは、必要に応じて
図3に示される構成要素を備えていなくてもよい。
【0023】
液体吐出装置200は、制御装置500を備える。制御装置500は、CPU(Center Processing Unit)501、ROM(Read Only Memory)502、RAM(Random Access Memory)503、NVRAM(Random Access Memory)504、及びHDD(Hard Disk Drive)を有する。CPU501は、液体吐出装置200全体の制御を司る。ROM502には、CPU501に液体吐出制御を実行させるための各種プログラムの他、塗装に必要な各種データ等が記憶されている。また、ROM502には、吐出ヘッド10を走査するためのプログラムが記憶されている。
【0024】
RAM503は、吐出ヘッド10の位置データ等を一時的に記憶する。NVRAM504は、不揮発性メモリであり、液体吐出装置200の電源が遮断されている間もデータを保持できる。制御装置500は、主制御部500Aを有し、主制御部500Aは、CPU501、ROM502及びRAM503を含む。
【0025】
制御装置500は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)505を有する。ASIC505は、液体吐出装置200の装置全体を制御するための入出力信号を処理する。また、ASIC505は、画像データに対して各種信号処理を実行できる。ASIC505は、制御装置500に入力された画像データについて画像処理を実行できる。
【0026】
制御装置500は、外部機器であるPC600との間でデータ等の送受信を行うための外部インタフェース(外部I/F)506を備える。PC600は、例えばRIP部601を有する。RIP部601はレタリング部602を含む。
【0027】
PC600には、入力装置603が接続されている。また、PC600には、位置測定装置15が接続されている。
【0028】
ROM502、RAM503、NVRAM504、及びHDD508等のメモリは、コンピュータ600から受信した画像データ、塗装範囲に関するデータを格納する。塗装範囲に関するデータは、塗装対象のサイズ等のデータを含む。
【0029】
また、制御装置500は、センサ類18から出力された検知信号を取り込むための入出力部(I/O)507を含む。センサ類18は、例えば、温度センサ、圧力センサ、粘度センサ等があげられる。
【0030】
制御装置500は、吐出ヘッド10を駆動制御するヘッド制御装置510を含む。ヘッド制御装置510は、吐出ヘッド10の駆動装置を制御できる。ヘッド制御装置510は、吐出ヘッド10の駆動装置を制御して、液体吐出を実行できる。ヘッド制御装置510は、吐出ヘッド10の開閉弁12の駆動制御を実行できる。吐出ヘッド10は、タンク2内の圧力を制御できる。吐出ヘッド10は、弁9の駆動制御を実行できる。ヘッド制御装置510は、吐出ヘッド10に関する各種制御を実行できる。
【0031】
制御装置500は、ロボット制御装置511を含む。ロボット制御装置511は、CPU501からの指令に従い、ロボット駆動機構31を制御する。塗装ロボット1000は、ロボット駆動機構31を備える。ロボット駆動機構31は、例えばモーターを含む。ロボット駆動機構31は、ベース100の回転軸を駆動する。ロボット駆動機構31は、同様に、第1アーム101の回転軸、第2アーム102の回転軸、ヘッドユニット103の回転軸、第1ジョイント104の回転軸、第2ジョイント105の回転軸、第3ジョイント106の回転軸を駆動する。
【0032】
塗装ロボット1000は、エンコーダセンサ32を備える。制御装置500は、I/O507を介して、エンコーダセンサ32から信号を入力する。エンコーダセンサ32は、第1ジョイント104、第2ジョイント105、及び第3ジョイント106に対してそれぞれ設けられている。これらの第1ジョイント104、第2ジョイント105、及び第3ジョイント106には、回転軸とともに回転するスリットが設けられている。エンコーダセンサ32は、スリットを光学的に検出する。エンコーダセンサ32は、第1ジョイント104、第2ジョイント105、及び第3ジョイント106の回転角度を検出する。
【0033】
塗装ロボット1000は、位置測定装置15を備える。位置測定装置15は、吐出ヘッド10の位置を測定する。位置測定装置15は、例えば3Dセンサ又は3Dカメラでもよい。位置測定装置15は、吐出ヘッドの10のXY方向の位置を測定できる。位置測定装置は、吐出ヘッド10の傾きを測定できる。位置測定装置15は、塗装開始位置を検出できる。位置測定装置15は、塗装対象サイズを検出してもよい。
【0034】
位置測定装置15は、レーザ変位計を含んでもよい。位置測定装置15は、対象物3000のZ軸方向における長さを測定できる。位置測定装置15は、対象物3000のルーフの高さ位置を測定してもよい。位置測定装置15は、測定結果をコンピュータ600に出力する。
【0035】
PCは、位置測定装置15から吐出ヘッド10の位置データを取得できる。制御装置500は、PC600を介して、吐出ヘッド10の位置データを入力できる。制御装置500は、I/O507を介して、位置測定装置15からデータを入力してもよい。
【0036】
PC600には、入力装置603が接続されている。入力装置603は、画像データ及び位置データをPC600に入力できる。位置測定装置15は、測定した吐出ヘッド10の位置データをPC600に入力してもよい。
【0037】
PC600は、塗装ロボット1000による塗装ルートを生成する。レタリング部602は、塗装部のデータを走査ごとのデータに分解する。塗装部は、例えば装が施される領域である。レタリング部602は、各走査における駆動ノズル数及び空吐出実施可否を決定する。駆動ノズル数の吐出ヘッド10において液体を吐出するノズル孔Nの数量である。空吐出とは、走査前にノズル孔Nから液体を吐出することを含む。レタリング部602は、空吐出を実施するか否かを決定できる。
【0038】
PC600は、走査時の弁開放時間を決定できる。PC600の弁開放時間制御部131は、予め作成された駆動ノズル数ごとの印字時間に関するデータに従い、走査時の弁開放時間を決定する。駆動ノズル数ごとの印字時間に関するデータは、液体圧力変動に基づいて予め決定されている。「液体圧力変動」とは、例えば吐出ヘッド10内の液体の圧力変動である。
【0039】
コンピュータ600は、RIP(Routing Information Protocol)部601を有する。RIP部601は、カラープロファイルやユーザの設定に応じて画像処理を実行できる。
【0040】
RIP部601は、レタリング部602を含む。レタリング部602は、対象物3000に施す塗装部のデータを走査毎(例えばヘッド300の主走査方向の移動毎)の塗装(画像)データに分解する。対象物3000は、例えば自動車の車体である。「走査毎」は、例えば主走査方向に沿う吐出ヘッド10の移動毎である。「主走査方向」は、例えば、対象物3000の長手方向に沿う方向でもよく、任意の方向でもよい。
【0041】
コンピュータ600には、入力装置603が接続されている。ユーザは、入力装置603を操作して、各種データをコンピュータ600に入力できる。コンピュータ600は、入力装置603を介して、対象物3000において塗装される領域を示す画像データ及び座標データを入力できる。
【0042】
コンピュータ600は、入力装置603から信号を入力し、塗装モードを設定できる。ユーザは、入力装置603を操作して、塗装モードを選択できる。コンピュータ600は、入力装置603から信号を入力し、塗装範囲を設定できる。コンピュータ600は、塗装開始位置及び塗装終了位置を設定できる。コンピュータ600は、塗装の開始タイミングを設定できる。ユーザは、入力装置603を介して、コンピュータ600を操作して、各種設定を変更できる。
【0043】
入力装置603は、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等を含むことができる。また、コンピュータ600は、塗装ロボット1000が備える位置測定装置15から吐出ヘッド10の位置データを取得できる。コンピュータ600は、取得した位置データに基づいて、吐出ヘッド10の塗装ルートを生成できる。塗装ルートは、吐出ヘッド10が移動する移動経路に関する位置データを含む。塗装ルートは、その他のデータを含むことができる。
【0044】
なお、塗装システム2000は、液体吐出システムの一例である。塗装システム2000は、液体吐出装置200及びコンピュータ600を備える。
【0045】
<機能構成>
次に、
図4を参照して、実施形態に係る液体吐出装置200の機能構成について説明する。
図4は、実施形態に係る液体吐出装置200の機能ブロック図である。
図3に示すCPU501は、ROM502等の記憶部に記憶されているプログラムを実行することで、
図4に示すシステム制御部221、弁開放時間制御部231、吐出周期信号生成部232、メモリ生成部233、データ格納部234、及び同期制御部235の各機能を実現する。
【0046】
システム制御部221は、塗装システム2000の全体の動作を制御する。システム制御部221は、コンピュータ600から受信した塗装領域の画像データや指令信号を受信して、塗装システム2000の全体の動作を制御できる。
【0047】
弁開放時間制御部231は、開閉弁12における弁開放時間を制御する。弁開放時間は、開閉弁12が開いた状態であり、液体を吐出可能な時間の長さである。
【0048】
メモリ制御部9013は、ROM502、RAM503、NVRAM504、及びHDD508等のメモリを制御する。
【0049】
同期制御部235は、エンコーダセンサ32から出力された出力信号、及びコンピュータ600から出力された画像データの解像度を示す情報に基づいて、吐出周期信号を生成する。吐出周期信号は、ノズル孔Nから吐出される塗料の吐出周期を示す信号である。
【0050】
同期制御部235は、コンピュータ600から受信した画像データ及び塗装指示信号等に基づいて、複数の塗装ロボット1000の動きと吐出ヘッド10における塗料の吐出動作との整合を行う。
【0051】
ヘッド制御装置510は、吐出周期信号を受信し、受信した吐出周期信号に基づいて吐出ヘッド10の液体吐出動作を制御する。ロボット制御装置511は、同期制御信号を受信し、受信した同期制御信号に基づきロボット駆動機構31を制御する。制御装置500は、ロボット駆動機構31を制御して、第1アーム101、第2アーム102、及びヘッドユニット103を所望の位置に移動する。
【0052】
なお、システム制御部221、弁開放時間制御部231、吐出周期信号生成部232、メモリ生成部233、データ格納部234、及び同期制御部235は、記憶部に記憶されているプログラムにより、ソフトウェアで実現できる。これらのシステム制御部221、弁開放時間制御部231、吐出周期信号生成部232、メモリ生成部233、データ格納部234、及び同期制御部235うち全部又は一部を、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアで実現してもよい。
【0053】
また、プログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイル情報でCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)などのコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録され、このような記録媒体を介して、液体吐出装置200に提供され得る。また、プログラムは、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)、ブルーレイ(登録商標)ディスク、半導体メモリ等のコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録され、このような記録媒体を介して、液体吐出装置200に提供され得る。また、プログラムは、インターネット等のネットワーク経由でインストールする態様で液体吐出装置200に提供されるものでもよい。また、プログラムは、液体吐出装置200内のROM等に予め組み込まれていてもよい。
【0054】
また、制御装置500は、コンピュータ600が実行する機能を実行してもよい。同様にコンピュータ600は、制御装置500が実行する機能を実行してもよい。
【0055】
<塗装ルートの生成>
次に、塗装ルートの生成について説明する。
図5は、塗装ルート生成処理の手順を示すフローチャートである。CPU501は、入力された画像データ及び吐出ヘッド10と対象物3000との相対的な位置関係に基づいて、塗装ルートを生成する。
【0056】
コンピュータ600は、画像データを入力する(ステップS11)。画像データは、例えば、対象物3000を撮像した画像データである。次に、コンピュータ600は、画像データに基づいて、塗装データを作成する(ステップS12)。塗装データは、例えば、塗装が施工される範囲を示す位置データを含む。
【0057】
位置測定装置15は、吐出ヘッド10と対象物3000との相対位置を検出する(ステップS13)。位置測定装置15は、検出した相対位置に関するデータをコンピュータ600に出力する。
【0058】
コンピュータ600は、塗装データを走査データに分解し、塗装ルートを生成する(ステップS14)。塗装ルートは、吐出ヘッド10が移動する移動経路に関する位置情報を含む。コンピュータ600は、生成した塗装ルートに関する情報を制御装置500に出力する。制御装置500は、塗装ルートに従ってロボット駆動機構31を制御する。
【0059】
<従来技術の課題>
次に従来技術の課題について説明する。従来技術に係る液体吐出装置では、塗料が有するチクソトロピー性と吐出による液圧降下によって、塗装初めに塗装品質が低下するという問題があった。
【0060】
塗料は、例えば車体を塗装するための塗料でもよい。「チクソトロピー性」は、塑性固体であるゲルと非ニュートン液体であるゾルの中間的な物質が示す性質である。「チクソトロピー性」とは、液体の粘度が時間経過とともに変化する性質をいう。チクソトロピー性を有する塗料は、吐出開始直後は、せん断応力に対して相対的に高粘度状態となる。チクソトロピー性を有する塗料の粘度は、時間経過とともに徐々に低下する。
【0061】
塗料を加圧して液滴を吐出する液体吐出装置では、吐出後に液圧が降下する。一定時間後に、吐出ヘッド10内の圧力が供給圧力とつりあうことで、圧力降下が安定する。液体吐出装置における塗装開始直後において吐出ヘッド10内の液圧は徐々に減少する。
【0062】
<塗料の粘度及び液圧>
次に、
図6及び
図7を参照して、液滴の吐出時間に対する塗料の粘度及び液圧の関係について説明する。
図6は、液滴の吐出時間と塗料の粘度との関係を示すグラフである。
図7は、液滴の吐出時間と塗料の粘度との関係を示すグラフである。
図6では、横軸に液滴の吐出時間を示し、縦軸に塗料の粘度を示す。
図7では、横軸に液滴の吐出時間を示し、縦軸に塗料の液圧を示す。
【0063】
吐出時間T0は、塗装開始時間である。塗料の粘度及び液圧は、吐出時間T0である吐出開始から徐々に低下する。吐出時間が経過し、吐出量が一定量を超えると、塗料の粘度及び液圧は一定の値となる。吐出時間T1を超えると、塗料の粘度V1は安定する。吐出時間T1を超えると、塗料の液圧P1は安定する。
【0064】
液体吐出装置200では、印字前に空吐出動作を行う。液体吐出装置200では、塗料の粘度及び液圧が安定するまで、空吐出動作を行う。なお、「空吐出動作」とは、対象物3000に対して液滴を吐出する印字前において、吐出ヘッド10から液滴を吐出する動作をいう。「空吐出動作」では、例えば、廃液用の容器に対して、液滴を吐出してもよい。また、「印字」とは、対象物3000に対して液滴を吐出して塗装を行う動作をいう。また、「印字」では、対象物3000に対して液滴を吐出して、付着させればよく、文字を印刷しなくてもよい。
【0065】
例えば、制御装置500のメモリは、吐出時間と塗料の粘度との関係を示すデータを記憶できる。制御装置500のメモリは、吐出時間と塗料の液圧との関係を示すデータを記憶できる。制御装置500のメモリは、空吐出動作の回数、空吐出動作における液滴の吐出量に関するデータを記憶できる。
【0066】
次に、
図8を参照して、駆動ノズル数が異なる場合の液滴の吐出時間と塗料の液圧との関係を示すグラフである。
図8では、横軸に液滴の吐出時間を示し、縦軸に塗料の液圧を示す。
図8は、駆動ノズル数が少ない場合(ケース1)の液圧のプロファイルPA、及び駆動ノズル数が多い場合(ケース2)の液圧のプロファイルPBを示す。「駆動ノズル数」とは、液滴を吐出するノズル孔Nの数量をいう。
【0067】
例えば、インク室11内が飽和に至るまでに必要な時間及び飽和液圧は駆動ノズル数によって異なる。駆動ノズル数が増加すると、空吐出する廃液量は増加する。制御装置500のメモリは、駆動ノズル数ごとの液圧のプロファイルPA,PBを予め記憶している。制御部500は、駆動ノズル数ごとに、圧力降下に基づいて総空吐出量を決定できる。「総空吐出量」とは、例えば、液圧が降下し始めてから液圧が安定するまでに、駆動ノズル数に対応するノズル孔Nから吐出された液滴の流量の合計である。
【0068】
例えば、駆動ノズル数が少ない場合(ケース1)の総空吐出量は、吐出時間T0から吐出時間T1までに、ノズル孔Nから吐出された液滴の流量である。ケース1では、吐出時間T0において、液圧は液圧P0であり、吐出時間T1において、液圧は液圧P1に降下する。ケース1では、吐出時間T1を超えると、液圧は液圧P1で安定する。
【0069】
例えば、駆動ノズル数が多い場合(ケース2)の総空吐出量は、吐出時間T0から吐出時間T2までに、ノズル孔Nから吐出された液滴の流量である。ケース2では、吐出時間T0において、液圧は液圧P0であり、吐出時間T2において、液圧は液圧P2に降下する。ケース2では、吐出時間T2を超えると、液圧は液圧P2で安定する。吐出時間T2は、吐出時間T1よりも大きい値である。液圧P2は液圧P1よりも小さい値である。
【0070】
液体吐出装置200は、液圧の降下に基づいて、駆動ノズル数ごとに総空吐出量を調整できるので、総空吐出量を最小限に抑えつつ、塗料の粘度及び液圧が安定した状態で塗装を実施できる。
【0071】
なお、塗装開始時に使用される駆動ノズル数に基づいた液圧に達していればよいので、空吐出に使用されるノズル数や弁開放時間よりも大きくてもよい。ここでいう「塗装開始時」とは、ケース1では吐出時間T1であり、ケース2では吐出時間T2である。
【0072】
次に、
図9を参照して、塗装時に使用する駆動ノズル数以上のノズル孔Nを用いて空吐出を実行した場合の液滴の吐出時間と塗料の液圧との関係を示すグラフである。
図9は、塗装開始時に使用される駆動ノズル数と、空吐出において使用される駆動ノズル数とが同じ場合(ケース3)の液圧のプロファイルPC、及び塗装開始時に使用される駆動ノズル数以上のノズル孔Nを用いて空吐出を行う場合(ケース4)の液圧のプロファイルPDを示す。なお、塗装開始時の弁開放時間よりも弁開放時間が長い場合の液圧のプロファイルは、
図9に示されるプロファイルPDと同様である。
【0073】
ケース3では、時間T0において、液圧は液圧P0であり、時間T12において、液圧は液圧P11に降下する。ケース3では、時間T12を超えると、液圧は液圧P11で安定する。
【0074】
ケース4では、時間T0において、液圧は液圧P0であり、時間T11において、液圧は液圧P12に降下する。時間T11で空吐出を停止すると、液圧は上昇し、時間T12において、液圧は液圧P12となる。時間T12から塗装を開始すると、液圧は液圧P12で安定する。
【0075】
空吐出を停止すると塗料の粘度及び液圧は、空吐出する前の状態に近づくように変化する。そのため、塗装開始前のデキャップ時間には制限が存在する。「デキャップ時間」とは、開閉弁12が閉じている不吐出状態の時間をいう。
【0076】
次に、
図10を参照して、塗料の粘度が支配的な場合における、空吐出の終了から塗装開始までのデキャップ時間と吐出開始時における塗料の粘度との関係について説明する。
図10は、デキャップ時間と塗料の粘度との関係を示すグラフである。
図10では、横軸にデキャップ時間を示し、縦軸に塗料の粘度を示す。
【0077】
図10は、駆動ノズル数が「小」である場合(ケース5)の粘度のプロファイルPE、駆動ノズル数が「中」である場合(ケース6)の粘度のプロファイルPF、及び駆動ノズル数「大」である場合(ケース7)の粘度のプロファイルPGを示す。
【0078】
ケース5では、時間T20において、粘度は粘度V21であり、時間T23まで粘度は微増する。ケース5において、時間T20から時間T23までの間の粘度の増加分ΔVは、僅かであり、塗装品質に影響を与えない。ケース5では、時間T23を過ぎると、粘度が上昇し、時間T24において、粘度は粘度V20となる。時間T24を過ぎると、粘度は粘度V20で安定する。
【0079】
ケース6では、時間T20において、粘度は粘度V22であり、時間T22まで粘度は微増する。ケース6において、時間T20から時間T22までの間の粘度の増加分ΔVは、僅かであり、塗装品質に影響を与えない。ケース6では、時間T22を過ぎると、粘度が上昇し、時間T24において、粘度は粘度V20となる。時間T24を過ぎると、粘度は粘度V20で安定する。なお、時間T22は、時間T23よりも小さい値である。また、粘度V22は、粘度V21よりも小さい値である。ケース6では、ケース5よりも早く粘度が上昇し始める。
【0080】
ケース7では、時間T20において、粘度は粘度V23であり、時間T21まで粘度は微増する。ケース7において、時間T20から時間T21までの間の粘度の増加分ΔVは、僅かであり、塗装品質に影響を与えない。ケース7では、時間T21を過ぎると、粘度が上昇し、時間T24において、粘度は粘度V20となる。時間T24を過ぎると、粘度は粘度V20で安定する。なお、時間T21は、時間T22よりも小さい値である。また、粘度V23は、粘度V22よりも小さい値である。ケース7では、ケース5及びケース6よりも早く粘度が上昇し始める。
【0081】
粘度は、デキャップ時間が開始して一定時間まで微増する。その後、塗料のチクソトロピー性に起因して、粘度が上昇する。液体吐出装置200は、粘度が安定している時間内に塗装を開始することで、塗装の開始直後において、安定した吐出量及び液滴速度を維持することができる。
【0082】
図10には、吐出異常の発生が予想される時間である吐出異常発生時間TIが示されている。吐出異常発生時間TIは、駆動ノズル数が多いほど短い。吐出異常発生時間TIは、粘度の上昇が吐出異常を生じさせる最短時間でもよい。粘度の増加分ΔVが一定以下である場合には、塗装品質に影響を与えない。粘度の上昇が、閾値となる増加分ΔVを超えると、吐出異常を生じさせるおそれがある。
【0083】
制御装置500のメモリは、
図10に示される駆動ノズル数ごとにおいてデキャップ時間と塗料の粘度との関係を示す情報を記憶することができる。制御装置500のメモリは、吐出異常発生時間TIに関する情報を記憶していてもよい。制御装置500は、吐出異常発生時間TIが経過する前に、ノズル孔Nから液滴を吐出させて、塗装を開始するように制御できる。ノズル孔Nから液滴を吐出していない状態では、駆動ノズル数が少ない場合は、駆動ノズルが多い場合と比較して、吐出異常発生時間TIが長い。
【0084】
制御装置500は、駆動ノズル数に応じて、空吐出終了後から塗装を開始するまでの時間を変更できる。制御装置500は、駆動ノズル数の多い場合に、駆動ノズル数が少ない場合と比較して、空吐出終了後から塗装を開始するまでの時間を短くできる。これにより、液体吐出装置200は、粘度及び液圧が安定している状態において、塗装を開始することができ、安定した塗装品質を実現できる。
【0085】
本実施形態に係る液体吐出装置200の吐出ヘッド10は、走査開始時において第1領域R1に対して第1駆動ノズル数のノズル孔Nから液体を吐出する第1吐出動作と、走査開始時において第2領域R2に対して第1駆動ノズル数よりも多い第2駆動ノズル数のノズル孔Nから液体を吐出する第2吐出動作と、第1吐出動作の前に液体を吐出する第1空吐出動作と、第2吐出動作の前に液体を吐出する第2空吐出動作と、を実行可能である。
【0086】
図11は、対象物3000に含まれる第1領域R1及び第2領域R2を示す平面図である。例えば、第2領域R2は、第1領域R1よりも広い。吐出ヘッド10は、走査開始時において第1領域R1に対して、第1駆動ノズル数のノズル孔Nから液体を吐出して、第1吐出動作を行い、第1領域R1を塗装できる。吐出ヘッド10は、走査開始時において第2領域R2に対して、第2駆動ノズルのノズル孔Nから液体を吐出して、第2吐出動作を行い、第2領域R2を塗装できる。なお、第1領域R1及び第2領域R2の位置、大きさ、及び形状は、特に限定されない。
【0087】
吐出ヘッド10は、第1吐出動作の前に、ノズル孔Nから液体を吐出する第1空吐出動作を実行できる。第1空吐出動作で実行される空吐出は、塗装に寄与しない液体の吐出をいう。吐出ヘッド10は、第2吐出動作の前に、ノズル孔Nから液体を吐出する第2空吐出動作を実行できる。第2空吐出動作で実行される空吐出は、塗装に寄与しない液体の吐出をいう。
【0088】
第2空吐出動作における合計の液体の吐出量である第2総空吐出量は、第1空吐出動作における合計の液体の吐出量である第1総空吐出量よりも多い。吐出ヘッド10は、第1空吐出動作において、第1総空吐出量の液体を空吐出する。吐出ヘッド10は、第2空吐出動作において、第1総空吐出量よりも多い第2総空吐出量の液体を空吐出する。
【0089】
このような液体吐出装置200によれば、第1空吐出動作における第1総空吐出量及び第2空吐出動作における第2総吐出量を調整することで、第1総空吐出量及び第2総空吐出量を抑えつつ、塗装開始時における液圧降下及び粘度降下を抑制でき、塗装品質の低下を抑制できる。液体吐出装置200では、塗装品質の向上を図ることができる。
【0090】
液体吐出装置200は、第1空吐出動作において、第1駆動ノズル数より多い数量のノズル孔Nを使用して空吐出を実施できる。制御装置500は、走査開始時の第1吐出動作における第1駆動ノズル数を基準として設定し、第1空吐出動作において、第1駆動ノズル数よりも多い数量のノズル孔から液体を吐出するように第1空吐出動作を制御できる。吐出ヘッド10は、第1空吐出動作において、第1吐出動作における第1駆動ノズル数よりも多い数量のノズル孔を使用して第1空吐出動作を実行できる。これにより、液体吐出装置200では、第1空吐出動作の時間を短縮できる。なお、液体吐出装置200は、第1空吐出動作において、第1駆動ノズル数と同じ数量のノズル孔Nを使用して空吐出を実施できる。
【0091】
液体吐出装置200は、第2空吐出動作において、第2駆動ノズル数より多い数量のノズル孔Nを使用して空吐出を実施できる。制御装置500は、走査開始時の第2吐出動作における第2駆動ノズル数を基準として設定し、第2空吐出動作において、第2駆動ノズル数よりも多い数量のノズル孔から液体を吐出するように第2空吐出動作を制御できる。吐出ヘッド10は、第2空吐出動作において、第2吐出動作における第2駆動ノズル数よりも多い数量のノズル孔を使用して第2空吐出動作を実行できる。これにより、液体吐出装置200では、第2空吐出動作の時間を短縮できる。なお、液体吐出装置200は、第2空吐出動作において、第2駆動ノズル数と同じ数量のノズル孔Nを使用して空吐出を実施できる。
【0092】
また、液体吐出装置200は、第1吐出動作では、走査開始時において第1弁開放時間分、ノズル孔Nから液体を吐出できる。第1弁開放時間は、例えば1回の吐出における弁の開放時間の長さである。液体吐出装置200は、第1空吐出動作では、第1弁開放時間よりも長い弁開放時間において空吐出を実施できる。液体吐出装置200は、第1空吐出動作における弁開放時間を、第1吐出動作における第1弁開放時間よりも長くできる。これにより、液体吐出装置200は、第1空吐出動作の時間を短縮できる。なお、液体吐出装置200は、第1空吐出動作において、弁開放時間を第1開放時間と同じ長さとして、空吐出を実施できる。
【0093】
また、液体吐出装置200は、第2吐出動作では、走査開始時において第2弁開放時間分、ノズル孔Nから液体を吐出できる。第2弁開放時間は、例えば1回の吐出における弁の開放時間の長さである。液体吐出装置200は、第2空吐出動作では、第2弁開放時間よりも長い弁開放時間において空吐出を実施できる。液体吐出装置200は、第2空吐出動作における弁開放時間を、第2吐出動作における第2弁開放時間よりも長くできる。これにより、液体吐出装置200は、第2空吐出動作の時間を短縮できる。なお、第1部材200は、第2空吐出動作において、弁開放時間を第2開放時間と同じ長さとして、空吐出を実施できる。
【0094】
本実施形態の液体吐出装置200によれば、複数のノズル孔から液体を吐出しない不吐出時間が、予め定められた吐出異常発生時間TIを超えた場合に、吐出ヘッド10は空吐出を実施できる。制御装置500は、不吐出時間を計測し、不足吐時間が吐出異常発生時間TIを超えた場合に、吐出ヘッド10に空吐出を実施させる制御を行う。
【0095】
制御装置500は、走査開始時の駆動ノズル数において、吐出異常発生時間TIを変更できる。制御装置500は、走査開始時の駆動ノズル数が少ない場合の吐出異常発生時間を、走査開始時の駆動ノズル数が多い場合と比較して長くすることができる。
【0096】
制御装置500は、液体のチクソトロピー性に起因する粘度の単位時間当たりの変化量に基づいて吐出異常発生時間TIを決定してもよい。例えば、予め実験等を行うことにより、液体のチクソトロピー性に起因する粘度の単位時間当たりの変化量に関するデータを取得してもよい。制御装置500のメモリは、液体のチクソトロピー性に起因する粘度の単位時間当たりの変化量と、吐出異常発生時間TIとの関係を示すデータを記憶することができる。制御装置500は、メモリに記憶されているデータに基づいて、吐出異常発生時間TIを決定できる。
【0097】
制御装置500は、液体の圧力の単位時間当たりの変化量に基づいて吐出異常発生時間TIを決定してもよい。制御装置500のメモリは、吐出ヘッド10内の液体の圧力の単位時間当たりの変化量と、吐出異常発生時間TIとの関係を示すデータを記憶することができる。制御装置500は、メモリに記憶されているデータに基づいて、吐出異常発生時間TIを決定することができる。
【0098】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱あるいは変更しない範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0099】
200 液体吐出装置
10 吐出ヘッド(液体吐出ヘッド)
12 開閉弁
13 弁駆動機構
500 制御装置(制御部)
N ノズル孔
【先行技術文献】
【特許文献】
【0100】