(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130950
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
B60L 58/26 20190101AFI20230913BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20230913BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20230913BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20230913BHJP
F25B 5/02 20060101ALI20230913BHJP
F25B 39/02 20060101ALI20230913BHJP
F25B 47/02 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
B60L58/26
B60H1/22 671
B60H1/32 624H
B60H1/22 651C
B60H1/22 651A
F25B1/00 321L
F25B5/02 530Z
F25B39/02 Z
F25B47/02 510E
F25B47/02 550C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035562
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】張 莉
(72)【発明者】
【氏名】東 朋寛
(72)【発明者】
【氏名】斉川 路之
【テーマコード(参考)】
3L211
5H125
【Fターム(参考)】
3L211AA10
3L211AA11
3L211BA02
3L211BA23
3L211BA27
3L211BA42
3L211CA14
3L211EA86
3L211FA38
3L211GA26
3L211GA41
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC19
5H125CD08
5H125FF24
(57)【要約】
【課題】バッテリの電力を用いることなく(バッテリの電力を消費することなく)バッテリの冷却を行う。
【解決手段】車室用蒸発器6が蒸発器として動作された際の凝縮水を利用して外気を冷やし、電力を用いずに(バッテリファン14の動力は除く)、冷やされた外気SAbによりバッテリ11を冷却し、ヒートポンプシステム(ヒートポンプサイクル)で得られる副産物(凝縮水)を有効に利用してバッテリ11の温度管理(冷却)を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内熱交換器、車室外熱交換器、車室用蒸発器を有し、圧縮手段、経路切換え手段、膨張手段を介して所望の状態にされた冷媒が循環されるヒートポンプサイクルと、
車両の動力を得るための電力が貯められるバッテリとを備えた電動車両において、
冷却源が供給されることで前記バッテリの冷却を行うバッテリ冷却手段と、
前記車室用蒸発器が蒸発器として動作された際に生じる凝縮水を前記冷却源として前記バッテリ冷却手段に反映させる冷却源反映手段とを備えた
ことを特徴とする電動車両。
【請求項2】
請求項1に記載の電動車両において、
前記バッテリ冷却手段は、
前記バッテリに隣接して配される凝縮水保持手段と、前記凝縮水保持手段を通して外気を前記バッテリに送る送給手段とを有し、
前記冷却源反映手段は、
前記凝縮水を前記凝縮水保持手段に送る手段である
ことを特徴とする電動車両。
【請求項3】
請求項2に記載の電動車両において、
前記凝縮水保持手段はバッテリ用熱交換器であり、
前記バッテリ用熱交換器は、
媒体が流通する媒体経路の外側に高分子吸着剤が配され、
前記冷却源反映手段は、
前記凝縮水を前記バッテリ用熱交換器に送ることで、前記高分子吸着剤に前記凝縮水を付着させる手段である
ことを特徴とする電動車両。
【請求項4】
請求項3に記載の電動車両において、
前記車両の車室内に、前記車室内熱交換器、前記車室用蒸発器が配され、
前記車両の車室外に、前記車室外熱交換器、前記バッテリ、前記バッテリ用熱交換器が配され、
前記車室内熱交換器の媒体経路の一方側には、前記圧縮手段で圧縮された媒体を送る経路が接続され、
前記車室内熱交換器の媒体経路の他方側には、前記経路切換え手段が接続され、
前記車室外熱交換器の媒体経路の他方側には、前記経路切換え手段が接続され、
前記車室外熱交換器の媒体経路の一方側には、第1膨張弁を介して前記車室用蒸発器の媒体経路の他方側が接続されると共に、前記車室外熱交換器の媒体経路の一方側には、第2膨張弁を介して前記バッテリ用熱交換器の媒体経路の他方側が接続され、
前記車室用蒸発器の媒体経路の一方側には、第3膨張弁を介して前記経路切換え手段が接続されると共に、前記バッテリ用熱交換器の媒体経路の一方側には前記経路切換え手段が接続され、
前記経路切換え手段には、前記圧縮手段で圧縮された媒体が送られ、
運転モードの指示の情報に基づいて、前記経路切換え手段、前記第1膨張弁、前記第2膨張弁、前記第3膨張弁の動作を制御する制御手段を備えた
ことを特徴とする電動車両。
【請求項5】
請求項4に記載の電動車両において、
前記運転モードは、
圧縮された媒体が前記車室外熱交換器に送られることで前記車室外熱交換器が凝縮器とされ、膨張された媒体が前記車室用蒸発器に送られることで前記車室用蒸発器が蒸発器とされ、前記車室用蒸発器で生じた前記凝縮水が前記バッテリ用熱交換器に反映された状態で、前記バッテリ用熱交換器に外気が通され、蒸発熱で冷やされた外気により前記バッテリを冷却する、冷房・バッテリ冷却モードを含み、
前記制御手段は、
前記冷房・バッテリ冷却モードが選択された場合、
前記圧縮手段で圧縮された媒体を前記車室内熱交換器、前記車室外熱交換器、前記第1膨張弁、前記車室用蒸発器、前記第3膨張弁の順に送り、前記圧縮手段に循環させるように前記経路切換え手段を動作させると共に、前記第1膨張弁を絞り状態に動作させ、前記第2膨張弁を閉じ状態に動作させ、前記第3膨張弁を全開状態に動作させると共に、外気が前記バッテリ用熱交換器を通って前記バッテリに送られるようにする
ことを特徴とする電動車両。
【請求項6】
請求項4もしくは請求項5に記載の電動車両において、
前記運転モードは、
前記車室用蒸発器で生じた前記凝縮水が前記バッテリ用熱交換器に反映された状態で、外気が前記バッテリ用熱交換器を通って前記バッテリに送られるようにするバッテリ冷却モードを含み、
前記制御手段は、
前記バッテリ冷却モードが選択された場合、
外気が前記バッテリ用熱交換器を通って前記バッテリに送られる動作だけが実施されるようにする
ことを特徴とする電動車両。
【請求項7】
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の電動車両において、
前記運転モードは、
圧縮された媒体が前記車室内熱交換器に送られることで前記車室内熱交換器が凝縮器とされると共に、圧縮された媒体が前記車室外熱交換器に送られることで前記車室外熱交換器が凝縮器とされ、膨張された媒体が前記バッテリ用熱交換器に送られることで前記バッテリ用熱交換器が蒸発器とされ、前記バッテリの熱が前記バッテリ用熱交換器で回収されて吸熱源とされる、車室暖房・除霜モードを含み、
前記制御手段は、
前記車室暖房・除霜モードが選択された場合、
前記圧縮手段で圧縮された媒体を前記車室内熱交換器、前記車室外熱交換器、前記第2膨張弁、前記バッテリ用熱交換器、の順に送り、前記圧縮手段に循環させるように前記経路切換え手段を動作させると共に、前記第2膨張弁を絞り状態に動作させると共に、前記第1膨張弁、前記第2膨張弁を閉じ状態に動作させ、前記バッテリ用熱交換器を前記バッテリの熱が吸熱源とされる蒸発器としてヒートポンプサイクルを成立させ、凝縮器とされた前記車室外熱交換器の霜を除去する
ことを特徴とする電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプサイクルの空調装置を備えた電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の省エネと環境問題に伴い、エンジンと電動モータを併用して走行するハイブリッド電気自動車(HV、PHV、PHEV)や、電動モータのみで走行する電気自動車(BEV)等の電動車両が実用化されてきている。電動車両の空調装置としては、エンジンの排熱を十分に利用できないことから、ヒートポンプサイクルを用いた空調装置が提案されている(特許文献1)。
【0003】
電動車両のバッテリは、充放電中の発熱により温度が上昇し、放電容量や電圧が低下する虞があるため、温度が上昇した際には冷却を行って適切な温度に維持する必要がある。バッテリの冷却を行う場合、車室の空調装置にバッテリ冷却用の蒸発器を追加して設け、蒸発器で冷却した空気や水をバッテリに循環させてバッテリの温度上昇を抑制する技術が提案されている(特許文献2)。
【0004】
特許文献2で提案された温度管理の技術を用いることで、バッテリ冷却用の蒸発器により空気や水を冷やし、冷却空気、冷却水としてバッテリの冷却を行うことができる。このため、車室の空調装置を拡張した形で、バッテリを適切な温度に維持することができる。
【0005】
しかし、従来のバッテリの冷却の技術では、空調装置の冷媒の圧力や温度を維持して循環させるための動力や、冷却用の空気や水を循環させるための動力が必要であり、バッテリに蓄えられた電気が動力源となっている。このため、バッテリの温度を管理するための消費電力が嵩み、特に、電動モータのみで走行する電気自動車(BEV)にあっては、走行距離に影響を及ぼす虞があるのが現状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-101180号公報
【特許文献2】特開2008-54379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、ヒートポンプシステムで得られる副産物を有効に利用してバッテリの温度管理(冷却)を行うことができる電動車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の電動車両は、車室内熱交換器、車室外熱交換器、車室用蒸発器を有し、圧縮手段、経路切換え手段、膨張手段を介して所望の状態にされた冷媒が循環されるヒートポンプサイクルと、車両の動力を得るための電力が貯められるバッテリとを備えた電動車両において、冷却源が供給されることで前記バッテリの冷却を行うバッテリ冷却手段と、前記車室用蒸発器が蒸発器として動作された際に生じる凝縮水を前記冷却源として前記バッテリ冷却手段に反映させる冷却源反映手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明では、車室用蒸発器が蒸発器として動作された際に生じる凝縮水が冷却源反映手段によりバッテリ冷却手段に反映され、冷房時の副産物としてのドレン水を冷却用の冷却源として用いられる。これにより、ヒートポンプシステムで得られる副産物を有効に利用してバッテリの温度管理(冷却)を行うことが可能になり、バッテリの電力を用いることなく(バッテリの電力を消費することなく)バッテリの冷却を行うことができる。
【0010】
バッテリ冷却手段としては、バッテリ用熱交換器を用い、冷媒の通路の外側に、水分を吸着させるための高分子吸着剤、デシカント材を設ける構成を適用したり、凝縮水をタンクなどの貯留手段に貯め、貯留された凝縮水をバッテリのケースに循環させる構成を適用したりすることができる。
【0011】
そして、請求項2に係る本発明の電動車両は、請求項1に記載の電動車両において、前記バッテリ冷却手段は、前記バッテリに隣接して配される凝縮水保持手段と、前記凝縮水保持手段を通して外気を前記バッテリに送る送給手段とを有し、前記冷却源反映手段は、前記凝縮水を前記凝縮水保持手段に送る手段であることを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る本発明では、凝縮水が凝縮水保持手段に保持され、外気が凝縮水保持手段に通されることで蒸発熱により外気が冷やされ、冷やされた外気によりバッテリが冷却される。凝縮水保持手段としては、外気に水分が接触できる状態に水分が保持される手段が用いられる。
【0013】
また、請求項3に係る本発明の電動車両は、請求項2に記載の電動車両において、前記凝縮水保持手段はバッテリ用熱交換器であり、前記バッテリ用熱交換器は、媒体が流通する媒体経路(伝熱管)の外側に高分子吸着剤が配され、前記冷却源反映手段は、前記凝縮水を前記バッテリ用熱交換器に送ることで、前記高分子吸着剤に前記凝縮水を付着させる手段であることを特徴とする。
【0014】
請求項3に係る本発明では、バッテリ用熱交換器の媒体経路(伝熱管)の外側に配された高分子吸着剤に凝縮水が送られ、外気が接触できる状態に凝縮水が保持される。バッテリ用熱交換器に圧縮された媒体が送られることで、蒸発器として作動させてバッテリの冷却を行うこともできる。
【0015】
また、請求項4に係る本発明の電動車両は、請求項3に記載の電動車両において、前記車両の車室内に、前記車室内熱交換器、前記車室用蒸発器が配され、前記車両の車室外に、前記車室外熱交換器、前記バッテリ、前記バッテリ用熱交換器が配され、前記車室内熱交換器の媒体経路の一方側には、前記圧縮手段で圧縮された媒体を送る経路が接続され、前記車室内熱交換器の媒体経路の他方側には、前記経路切換え手段が接続され、前記車室外熱交換器の媒体経路の他方側には、前記経路切換え手段が接続され、前記車室外熱交換器の媒体経路の一方側には、第1膨張弁を介して前記車室用蒸発器の媒体経路の他方側が接続されると共に、前記車室外熱交換器の媒体経路の一方側には、第2膨張弁を介して前記バッテリ用熱交換器の媒体経路の他方側が接続され、前記車室用蒸発器の媒体経路の一方側には、第3膨張弁を介して前記経路切換え手段が接続されると共に、前記バッテリ用熱交換器の媒体経路の一方側には前記経路切換え手段が接続され、前記経路切換え手段には、前記圧縮手段で圧縮された媒体が送られ、運転モードの指示の情報に基づいて、前記経路切換え手段、前記第1膨張弁、前記第2膨張弁、前記第3膨張弁の動作を制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る本発明では、車室内熱交換器、車室外熱交換器、車室用蒸発器、バッテリ用熱交換器で構成されるヒートポンプシステムを構築することができる。
【0017】
また、請求項5に係る本発明の電動車両は、請求項4に記載の電動車両において、
前記運転モードは、圧縮された媒体が前記車室外熱交換器に送られることで前記車室外熱交換器が凝縮器とされ、膨張された媒体が前記車室用蒸発器に送られることで前記車室用蒸発器が蒸発器とされ、前記車室用蒸発器で生じた前記凝縮水が前記バッテリ用熱交換器に反映された状態で、前記バッテリ用熱交換器に外気が通され、蒸発熱で冷やされた外気により前記バッテリを冷却する、冷房・バッテリ冷却モードを含み、
前記制御手段は、
前記冷房・バッテリ冷却モードが選択された場合、前記圧縮手段で圧縮された媒体を前記車室内熱交換器、前記車室外熱交換器、前記第1膨張弁、前記車室用蒸発器、前記第3膨張弁の順に送り、前記圧縮手段に循環させるように前記経路切換え手段を動作させると共に、前記第1膨張弁を絞り状態に動作させ、前記第2膨張弁を閉じ状態に動作させ、前記第3膨張弁を全開状態に動作させると共に、外気が前記バッテリ用熱交換器を通って前記バッテリに送られるようにすることを特徴とする。
【0018】
請求項5に係る本発明では、ヒートポンプの構成により車室の冷房を行うと共に、電力を用いることなく凝縮水でバッテリの冷却を行うシステムを構成することができる。
【0019】
また、請求項6に係る本発明の電動車両は、請求項4もしくは請求項5に記載の電動車両において、前記運転モードは、前記車室用蒸発器で生じた前記凝縮水が前記バッテリ用熱交換器に反映された状態で、外気が前記バッテリ用熱交換器を通って前記バッテリに送られるようにするバッテリ冷却モードを含み、前記制御手段は、前記バッテリ冷却モードが選択された場合、外気が前記バッテリ用熱交換器を通って前記バッテリに送られる動作だけが実施されるようにすることを特徴とする。
【0020】
請求項6に係る本発明では、車室冷房・バッテリ冷却モードの制御に加え、もしくは、車室冷房・バッテリ冷却モードの制御の有無によらず、外気がバッテリ用熱交換器を通ってバッテリに送られる動作だけが実施されるバッテリ冷却モードでバッテリを冷却することができる。
【0021】
また、請求項7に係る本発明の電動車両は、請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の電動車両において、
前記運転モードは、
圧縮された媒体が前記車室内熱交換器に送られることで前記車室内熱交換器が凝縮器とされると共に、圧縮された媒体が前記車室外熱交換器に送られることで前記車室外熱交換器が凝縮器とされ、膨張された媒体が前記バッテリ用熱交換器に送られることで前記バッテリ用熱交換器が蒸発器とされ、前記バッテリの熱が前記バッテリ用熱交換器で回収されて吸熱源とされる、車室暖房・除霜モードを含み、
前記制御手段は、
前記車室暖房・除霜モードが選択された場合、前記圧縮手段で圧縮された媒体を前記車室内熱交換器、前記車室外熱交換器、前記第2膨張弁、前記バッテリ用熱交換器、の順に送り、前記圧縮手段に循環させるように前記経路切換え手段を動作させると共に、前記第2膨張弁を絞り状態に動作させると共に、前記第1膨張弁、前記第2膨張弁を閉じ状態に動作させ、前記バッテリ用熱交換器を前記バッテリの熱が吸熱源とされる蒸発器としてヒートポンプサイクルを成立させ、凝縮器とされた前記車室外熱交換器の霜を除去することを特徴とする。
【0022】
請求項7に係る本発明では、車室内熱交換器、及び、車室外熱交換器が、蒸発動作を行う凝縮器とされ、バッテリ用熱交換器がバッテリの熱を吸熱源とした蒸発器とされてヒートポンプサイクルが構築され、凝縮器とされた車室内熱交換器で暖房が行われると共に、凝縮器とされた車室外熱交換器の霜が除去される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の電動車両は、ヒートポンプシステム(ヒートポンプサイクル)で得られる副産物(凝縮水)を有効に利用してバッテリの温度管理(冷却)を行うことが可能になる。この結果、バッテリの電力を用いることなく(バッテリの電力を消費することなく)バッテリの冷却を行うことが可能になり、航行距離を減少させることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の一実施例に係る電動車両における空調装置の全体構成図である。
【
図2】冷房・バッテリ冷却モードにおける空調装置の概略系統図である。
【
図3】冷房モードにおける空調装置の概略系統図である。
【
図4】冷媒を用いないバッテリ冷却モードにおける空調装置の概略系統図である。
【
図5】冷媒を用いたバッテリ冷却モードにおける空調装置の概略系統図である。
【
図6】暖房・バッテリ加熱モードにおける空調装置の概略系統図である。
【
図7】除湿防曇・暖房モードにおける空調装置の概略系統図である。
【
図8】暖房・除霜モードにおける空調装置の概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に基づいて本発明の一実施例に係る電動車両を説明する。
図1には本発明の一実施例に係る電動車両における空調装置の全体を概略的に示した概略系統を示してある。
【0026】
図1に示すように、本実施例の電動車両における空調装置1は、装置ケース2から車室3に空調用の流体が送風されるヒートポンプサイクルの装置とされている。即ち、装置ケース2の中には(車室内には)、媒体が伝熱管を流通する車室内熱交換器5、及び、車室用蒸発器6が配されている。装置ケース2の外には外気との間で熱交換されることで媒体の温度を調整する車室外熱交換器7が配されている。
【0027】
一方、電動車両には、走行用の電力を賄う(全部、もしくは、一部)バッテリ11が搭載され、バッテリ11に隣接してバッテリ冷却手段としてのバッテリ用熱交換器12が配されている。バッテリ用熱交換器12の媒体経路(伝熱管)の外側には、凝縮水保持手段として、水分を吸着させるための高分子吸着剤13が設けられている。
【0028】
バッテリ用熱交換器12の媒体経路(伝熱管)の外側に配された高分子吸着剤13に凝縮水が送られることで、外気が接触できる状態に凝縮水が保持される。つまり、車室用蒸発器6が蒸発器として動作された際に、蒸発器の凝縮水が高分子吸着剤13に送られる(凝縮水が冷却源反映手段によりバッテリ冷却手段に反映される)。
【0029】
尚、バッテリ冷却手段としては、媒体経路(伝熱管)の外側に吸着剤を設けた熱交換器を適用したり、凝縮水をタンクなどの貯留手段に貯め、貯留された凝縮水をバッテリ11のケースに循環させる構成を適用したりすることができる。
【0030】
バッテリ11の近傍には、高分子吸着剤13が設けられたバッテリ用熱交換器12を通して外気をバッテリ11に送る、送給手段としてバッテリファン14が配されている。バッテリファン14の駆動により、凝縮水が保持された高分子吸着剤13を有するバッテリ用熱交換器12を通して、外気がバッテリ11に送られる。バッテリ用熱交換器12では凝縮水の蒸発熱により外気が冷やされ、冷やされた外気がバッテリ11に送られてバッテリ11が冷却される。
【0031】
即ち、車室用蒸発器6が蒸発器として動作された際の副産物(凝縮水)を利用して外気を冷やし、電力を用いずに(バッテリファン14の動力は除く)バッテリ11を冷却することができる。
【0032】
一方、媒体を圧縮する圧縮手段16が備えられ、圧縮手段16で圧縮された媒体(圧縮媒体)は、車室内熱交換器5に送られた後、経路切換え手段17を介して、車室外熱交換器7、もしくは、車室用蒸発器6(バッテリ用熱交換器12)のいずれかに供給が切り換えられる。
【0033】
つまり、車室内熱交換器5の媒体経路の一方側(図中上側)には、圧縮手段16で圧縮された媒体が送られる経路が接続され、車室内熱交換器5の媒体経路の他方側(図中下側)には、経路切換え手段17が接続されている。
【0034】
車室外熱交換器7の媒体経路の他方側(図中上側)には、経路切換え手段17が接続され、車室外熱交換器7の媒体経路の一方側(図中下側)には、第1膨張弁21を介して車室用蒸発器6の媒体経路の他方側(図中下側)が接続されている。また、車室外熱交換器7の媒体経路の一方側(図中下側)には、第2膨張弁22を介してバッテリ用熱交換器12の媒体経路の他方側(図中下側)が接続されている。
【0035】
また、車室用蒸発器6の媒体経路の一方側(図中上側)には、第3膨張弁23を介して経路切換え手段17が接続されると共に、バッテリ用熱交換器12の媒体経路の一方側(図中上側)には経路切換え手段17が接続されている。
【0036】
経路切換え手段17は、車室内熱交換器5の他方側(図中下側)につながる(圧縮手段16の出口側につながる)ポート17a、圧縮手段16の入口側につながるポート17b、車室外熱交換器7の他方側(図中上側)につながるポート17c、車室用蒸発器6(バッテリ用熱交換器12)の一方側(図中上側)につながるポート17dが備えられている。
【0037】
経路切換え手段17には、圧縮手段16で圧縮された媒体が送られ、制御手段25からの運転モードの指示の情報に基づいて、経路切換え手段17、第1膨張弁21、第2膨張弁22、第3膨張弁23の動作が制御される。また、制御手段25からの指示により、室外ファン26、室内ファン27が回転され、ダンパー28の位置がA位置、B位置に動作される(A位置では車室内熱交換器5を流通しない流路が開けられ、B位置では車室内熱交換器5を流通する流路が開けられる)。
【0038】
上記構成により、車室内熱交換器5、車室外熱交換器7、車室用蒸発器6、バッテリ用熱交換器12で構成されるヒートポンプシステムが構築される。
【0039】
図2から
図7に基づいて上記構成の空調装置1の運転モードの主な具体例を説明する。
【0040】
図2には冷房・バッテリ冷却モードにおける空調装置の概略系統、
図3には冷房モードにおける空調装置の概略系統、
図4には冷媒を用いないバッテリ冷却モードにおける空調装置の概略系統、
図5には冷媒を用いたバッテリ冷却モードにおける空調装置の概略系統、
図6には暖房・バッテリ加熱モードにおける空調装置の概略系統、
図7には除湿防曇・暖房モードにおける空調装置の概略系統、
図8には暖房・除霜モードにおける空調装置の概略系統を示してある。
【0041】
図2に基づいて冷房・バッテリ冷却モードを説明する。冷房・バッテリ冷却モードは、長距離にわたり連続して高出力で走行を可能にして車室3を冷房するモードが想定されている。
【0042】
冷房・バッテリ冷却モードが実施される場合、制御手段25により、ポート17aとポート17cがつながり、ポート17bとポート17dがつながるように、経路切換え手段17の動作が制御される。そして、第1膨張弁21が絞り状態に動作され、第2膨張弁22が全閉状態に動作され、第3膨張弁23が全開状態に動作されると共に、バッテリファン14、室外ファン26、室内ファン27が回転され、ダンパー28がA位置に動作される。
【0043】
圧縮手段16で圧縮された媒体が車室内熱交換器5を通過し、経路切換え手段17から車室外熱交換器7、第1膨張弁21、車室用蒸発器6、第3膨張弁23、経路切換え手段17の順に送られ、圧縮手段16に循環される。これにより、車室外熱交換器7が凝縮器として働き、車室用蒸発器6が蒸発器として働く。
【0044】
室内ファン27の駆動により、車室3内の還気RAが車室用蒸発器6で冷却され、車室3への送風SAcとされる。車室用蒸発器6の凝縮水がバッテリ用熱交換器12の高分子吸着剤13に吸着されて保持される。バッテリファン14の駆動により、凝縮水が保持された高分子吸着剤13を有するバッテリ用熱交換器12を通して、外気OAがバッテリ11に送られる。バッテリ用熱交換器12では凝縮水の蒸発熱により外気が冷やされ、冷やされた外気SAbがバッテリ11に送られてバッテリ11が冷却され、排気される(EA)。
【0045】
これにより、車室用蒸発器6が蒸発器として動作された際の副産物(凝縮水)を利用して外気を冷やし、電力を用いずに(バッテリファン14の動力は除く)、冷やされた外気SAbによりバッテリ11を冷却することができる。
【0046】
従って、ヒートポンプシステム(ヒートポンプサイクル)で得られる副産物(凝縮水)を有効に利用してバッテリ11の温度管理(冷却)を行うことが可能になる。この結果、バッテリ11の電力を用いることなく(バッテリ11の電力を消費することなく)バッテリ11の冷却を行うことが可能になり、電動車両の航行距離の減少を抑制することが可能になる。
【0047】
図3に基づいて冷房モードを説明する。冷房モードは、短距離の走行の際(バッテリ11の冷却を行う必要がない)に車室3の冷房を実施するモードが想定されている。
【0048】
冷房モードが実施される場合、制御手段25により、ポート17aとポート17cがつながり、ポート17bとポート17dがつながるように、経路切換え手段17の動作が制御される。そして、第1膨張弁21が絞り状態に動作され、第2膨張弁22が全閉状態に動作され、第3膨張弁23が全開状態に動作されると共に、バッテリファン14が停止され、室外ファン26、室内ファン27が回転され、ダンパー28がA位置に動作される。
【0049】
圧縮手段16で圧縮された媒体が車室内熱交換器5を通過し、経路切換え手段17から車室外熱交換器7、第1膨張弁21、車室用蒸発器6、第3膨張弁23、経路切換え手段17の順に送られ、圧縮手段16に循環される。これにより、車室外熱交換器7が凝縮器として働き、車室用蒸発器6が蒸発器として働く。
【0050】
室内ファン27の駆動により、車室3内の還気RAが車室用蒸発器6で冷却され、車室3への送風SAcとされる。車室用蒸発器6の凝縮水がバッテリ用熱交換器12の高分子吸着剤13に吸着されて保持されて溜められる。この場合、高分子の重さの3倍から4倍の水を溜めることができる。
【0051】
これにより、バッテリ11の冷却の必要が低い走行時に、車室用蒸発器6が蒸発器として動作された際の副産物(凝縮水)を溜めながら、車室3の冷房を行うことができる。
【0052】
図4に基づいて凝縮水によるバッテリ冷却モードを説明する。凝縮水によるバッテリ冷却モードは、凝縮水が溜められている状態で、急速充電など車室3の冷房を必要とせず、バッテリ11の温度が上限を超えて(例えば、40℃から50℃)バッテリ11のみを冷却する場合が想定されている。
【0053】
凝縮水によるバッテリ冷却モードが実施される場合、圧縮手段16、経路切換え手段17、第1膨張弁21、第2膨張弁22、第3膨張弁23の動作が停止され、室外ファン26、室内ファン27の回転が停止され、バッテリファン14だけが回転されて、ダンパー28がA位置に動作される。
【0054】
バッテリファン14の駆動により、凝縮水が保持された高分子吸着剤13を有するバッテリ用熱交換器12を通して、外気OAがバッテリ11に送られる。バッテリ用熱交換器12では凝縮水の蒸発熱により外気が冷やされ、冷やされた外気SAbがバッテリ11に送られてバッテリ11が冷却され、排気される(EA)。
【0055】
これにより、高分子吸着剤13に溜められた凝縮水を利用して外気OAを冷やし、電力を用いずに(バッテリファン14の動力は除く)、冷やされた外気SAbによりバッテリ11を冷却することができる。
【0056】
図5に基づいて冷媒によるバッテリ冷却モードを説明する(バッテリ用熱交換器12を蒸発器として動作させる)。冷媒によるバッテリ冷却モードは、凝縮水が溜められていない状態で、急速充電など車室3の冷房を必要とせず、バッテリ11の温度が上限を超えて(例えば、40℃から50℃)バッテリ11のみを冷却する場合が想定されている。
【0057】
冷媒によるバッテリ冷却モードが実施される場合、制御手段25により、ポート17aとポート17cがつながり、ポート17bとポート17dがつながるように、経路切換え手段17の動作が制御される。そして、第1膨張弁21が全閉状態に動作され、第2膨張弁22が絞り状態に動作され、第3膨張弁23が全閉状態に動作されると共に、バッテリファン14、室外ファン26が回転され、室内ファン27が停止され、ダンパー28がA位置に動作される。
【0058】
圧縮手段16で圧縮された媒体が車室内熱交換器5を通過し、経路切換え手段17から車室外熱交換器7、第2膨張弁22、バッテリ用熱交換器12、経路切換え手段17の順に送られ、圧縮手段16に循環される。これにより、車室外熱交換器7が凝縮器として働き、バッテリ用熱交換器12が蒸発器として働く。
【0059】
バッテリファン14の駆動により、外気OAが蒸発器として働くバッテリ用熱交換器12で冷却され、冷却された外気SAbがバッテリ11に送られてバッテリ11が冷却され、排気される(EA)。
【0060】
これにより、高分子吸着剤13に凝縮水が溜められていない場合に、外気OAをバッテリ用熱交換器12で冷却し、冷却された外気SAbによりバッテリ11を冷却することができる。
【0061】
図6に基づいて暖房・バッテリ加熱モードを説明する。暖房・バッテリ加熱モードは、冬季の走行時や、低温時の起動の際に車室3の暖房を行ったり、バッテリ11を加熱したりする場合が想定されている。
【0062】
暖房・バッテリ加熱モードが実施される場合、制御手段25により、ポート17aとポート17dがつながり、ポート17cとポート17bがつながるように、経路切換え手段17の動作が制御される。そして、第1膨張弁21が全閉状態に動作され、第2膨張弁22が絞り状態に動作され、第3膨張弁23が全閉状態に動作されると共に、バッテリファン14、室外ファン26、室内ファン27が回転され、ダンパー28がB位置に動作される。
【0063】
圧縮手段16で圧縮された媒体が車室内熱交換器5を通り、経路切換え手段17からバッテリ用熱交換器12、第2膨張弁22、車室外熱交換器7、経路切換え手段17の順に送られ、圧縮手段16に循環される。これにより、車室内熱交換器5、及び、バッテリ用熱交換器12が凝縮器として働き、車室外熱交換器7が蒸発器として働く。
【0064】
室内ファン27の駆動により、車室3内の還気RAが車室用蒸発器6を通過して車室内熱交換器5で暖められ、車室3への送風SAcとされる。バッテリファン14の駆動により、外気OAがバッテリ用熱交換器12で暖められ、高温となった外気SAbがバッテリ11に送られてバッテリ11が加熱され、排気される(EA)。
【0065】
尚、室内ファン27、または、バッテリファン14を停止させることにより、バッテリ11の加熱、または、車室3の暖房を単独で行うことができる。
【0066】
図7に基づいて除湿防曇・暖房モードを説明する。除湿防曇・暖房モードは、低温で湿度が高い外気の条件での走行時に、除湿、曇り止め、暖房を行う場合が想定されている。
【0067】
除湿防曇・暖房モードが実施される場合、制御手段25により、ポート17aとポート17dがつながり、ポート17cとポート17bがつながるように、経路切換え手段17の動作が制御される。そして、第1膨張弁21が絞り状態に動作され、第2膨張弁22が全閉状態に動作され、第3膨張弁23が絞り状態に動作されると共に、バッテリファン14が停止され、室外ファン26、室内ファン27が回転され、ダンパー28がB位置に動作される。
【0068】
圧縮手段16で圧縮された媒体が車室内熱交換器5を通り、経路切換え手段17から第3膨張弁23、車室用蒸発器6、第1膨張弁21、車室外熱交換器7、経路切換え手段17の順に送られ、圧縮手段16に循環される。これにより、車室内熱交換器5が凝縮器として働き、車室用蒸発器6、車室外熱交換器7が蒸発器として働く。
【0069】
室内ファン27の駆動により、車室3内の還気RAが車室用蒸発器6で除湿され、車室内熱交換器5で暖められ、暖められて除湿された車室3への送風SAc(暖められて除湿された送風SAc)とされる。暖められて除湿された送風SAcとされることで、車室3が暖房されると共に、除湿された空気となってフロントガラスやウインドウガラスなどの曇りが防止される。
【0070】
図8に基づいてバッテリ蓄熱による暖房・除霜モードを説明する。
【0071】
ヒートポンプシステムにより暖房モードを実施する場合(車室内熱交換器5を凝縮器として動作させる場合)、車室外熱交換器7を凝縮器として動作させ、大気から吸熱を行う必要がある(吸熱源が必要になる)。このため、暖房モードを継続して実施すると、車室外熱交換器7に霜が付着する。大気からの吸熱能力を維持するため、霜を除去する(除霜する)必要がある。
【0072】
バッテリ11の放・充電の繰り返しによりバッテリ11が発熱する。この発熱した熱を所定の範囲(例えば、20℃から40℃)で蓄熱し、暖房モードを実施する場合、バッテリ11の熱を吸熱源として利用し(バッテリ用熱交換器12を蒸発器として動作させ)、車室内熱交換器5、及び、車室外熱交換器7を凝縮器として動作させて車室3の暖房と車室外熱交換器7の霜取り(除霜)を実施している。
【0073】
つまり、暖房モードを実施する際に、車室3の暖房を継続しながら(暖房を停止することなく)車室外熱交換器7の除霜が実施されるようになっている。したがって、暖房モードにおけるヒートポンプシステムを維持した状態で、車室外熱交換器7を凝縮器として動作できるようにし、車室外熱交換器7の除霜を行いながら車室3の暖房を行うことが可能になっている。
【0074】
バッテリ蓄熱による暖房・除霜モードが実施される場合、制御手段25により、ポート17aとポート17cがつながり、ポート17dとポート17bがつながるように、経路切換え手段17の動作が制御される。そして、第1膨張弁21が全閉状態に動作され、第2膨張弁22が絞り状態に動作され、第3膨張弁23が全閉状態に動作されると共に、バッテリファン14が逆向きに回転され、室外ファン26が停止され、室内ファン27が回転され、ダンパー28がB位置に動作される。
【0075】
圧縮手段16で圧縮された媒体が車室内熱交換器5を通り、経路切換え手段17から車室外熱交換器7、第2膨張弁22、バッテリ用熱交換器12、経路切換え手段17の順に送られ、圧縮手段16に循環される。これにより、車室内熱交換器5、車室外熱交換器7が凝縮器として働き、バッテリ用熱交換器12が蒸発器として働く。
【0076】
室内ファン27の駆動により、車室3内の還気RAが車室用蒸発器6を通過して車室内熱交換器5で暖められ、車室3への送風SAcとされ、車室3が暖房される。そして、凝縮器として働く車室外熱交換器7に付着した霜が除去される。一方、バッテリファン14の逆向の回転により、外気OAがバッテリ11の熱により加熱される。ヒートポンプサイクルを維持するために、加熱された外気OAを、蒸発器として働くバッテリ用熱交換器12で放熱させることでバッテリ用熱交換器12の冷媒を蒸発させる。放熱された外気OAは排気される(EA)。
【0077】
このため、車室外熱交換器7の除霜を行いながら、車室3の暖房を継続させることが可能になっている。即ち、車室内熱交換器5、及び、車室外熱交換器7が凝縮器とされ、バッテリ用熱交換器12がバッテリ11の熱を吸熱源とした蒸発器とされてヒートポンプサイクルが構築され、凝縮器とされた車室内熱交換器5で暖房が行われると共に、凝縮器とされた車室外熱交換器7に付着した霜が除去される。
【0078】
尚、バッテリ11の蓄熱の温度を所定の温度範囲に維持するため、温度検出手段を設け、発熱した熱を所定の範囲(例えば、20℃から40℃)に保つように、冷却を行いながら蓄熱することも可能である。
【0079】
上述した電動車両の空調装置1は、車室用蒸発器6が蒸発器として動作された際の副産物(凝縮水)を利用して外気を冷やし、電力を用いずに(バッテリファン14の動力は除く)、冷やされた外気SAbによりバッテリ11を冷却することができる。
【0080】
従って、ヒートポンプシステム(ヒートポンプサイクル)で得られる副産物(凝縮水)を有効に利用してバッテリ11の温度管理(冷却)を行うことが可能になる。この結果、バッテリ11の電力を用いることなく(バッテリ11の電力を消費することなく)バッテリ11の冷却を行うことが可能になり、電動車両の航行距離の減少を抑制することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、ヒートポンプサイクルの空調装置を備えた電動車両の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0082】
1 空調装置
2 装置ケース
3 車室
5 車室内熱交換器
6 車室用蒸発器
7 車室外熱交換器
11 バッテリ
12 バッテリ用熱交換器
13 高分子吸着剤
14 バッテリファン
16 圧縮手段
17 経路切換え手段
21 第1膨張弁
22 第2膨張弁
23 第3膨張弁
25 制御手段
26 室外ファン
27 室内ファン
28 ダンパー