(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023130984
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】マルチ荷電粒子ビーム描画装置及びマルチ荷電粒子ビーム描画方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
H01L21/30 541W
H01L21/30 541N
H01L21/30 541D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022035611
(22)【出願日】2022-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 靖雄
(72)【発明者】
【氏名】川名 亮
【テーマコード(参考)】
5F056
【Fターム(参考)】
5F056AA07
5F056BB03
5F056CA28
5F056CA30
5F056EA02
5F056EA03
5F056EA04
5F056EA06
5F056EA14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】マルチビーム描画において、欠陥ビームによる過剰ドーズの補正を多重描画の描画パス間を跨いで行う場合に不要な欠陥補正を回避可能な装置の提供。
【解決手段】処理領域毎に、マルチビームのうちドーズ量が過剰になる欠陥ビームが照射される予定の欠陥位置を含む近傍領域にゼロではないドーズ量の位置を判定するドーズ判定部と、ゼロではないドーズ量が定義される場合に、欠陥位置に欠陥用ドーズ量が定義された欠陥位置ドーズデータ作成部と、試料面上の単位領域毎に、照射予定の各位置のドーズデータを用い、パターン有無を判定するパターン有無判定部と、描画する際に、パターン有無判定部により無と判定された単位領域をスキップして次のパターン有と判定された単位領域へと描画処理を行う単位領域を移動させ、多重描画の複数の描画パスのいずれかにおける欠陥ビームに起因する過剰ドーズを他の描画パスで減らすように補正する描画機構と、を備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチ荷電粒子ビームを形成するビーム形成機構と、
試料面上の描画領域が分割された複数の処理領域の処理領域毎に、当該処理領域内の各位置の個別のドーズ量が定義されたドーズデータを作成するドーズデータ作成部と、
前記処理領域毎に、前記マルチ荷電粒子ビームのうちドーズ量が過剰になる欠陥ビームが照射される予定の欠陥位置を含む近傍の領域にゼロではない値のドーズ量が定義された位置が存在するかどうかを判定するドーズ判定部と、
前記近傍の領域にゼロではない値のドーズ量が定義される場合に、前記欠陥位置に欠陥用ドーズ量が定義された欠陥用ドーズデータを作成する欠陥位置ドーズデータ作成部と、
前記マルチ荷電粒子ビームの照射領域が設定される前記試料面上の単位領域毎に、当該単位領域での照射予定の各位置のドーズデータを用いて、当該単位領域内のパターンの有無を判定するパターン有無判定部と、
前記マルチ荷電粒子ビームを用いて、前記試料にパターンを描画する際に、前記パターン有無判定部によりパターン無と判定された単位領域をスキップして次のパターン有と判定された単位領域へと、描画処理を行う単位領域を移動させ、多重描画の複数の描画パスのいずれかの描画パスにおける前記欠陥ビームに起因する過剰ドーズを他の描画パスで減らすように補正する描画機構と、
を備えたマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項2】
前記試料を載置する移動可能なステージと、
前記マルチ荷電粒子ビームの照射領域が前記ステージの移動に追従するように前記マルチ荷電粒子ビームのトラッキング偏向を行うトラッキング偏向器と、
をさらに備え、
前記単位領域は、前記トラッキング偏向によるトラッキング制御ごとに設定される請求項1記載のマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項3】
前記パターン有無判定部は、各単位領域においてパターン有と判定する請求項1又は2記載のマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項4】
前記単位領域毎のパターンの有無の判定結果を格納する記憶装置をさらに備え、
前記多重描画の複数の描画パスの2回目以降の描画パスでは、先行するパスでの単位領域毎のパターンの有無の判定結果に基づいて、当該パスで、前記欠陥ビームに起因する過剰ドーズの補正の要否を決定する請求項1又は2記載のマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項5】
前記単位領域毎のパターンの有無の判定は、描画処理を開始する前の前処理として実施される請求項1~4のいずれかに記載のマルチ荷電粒子ビーム描画装置。
【請求項6】
マルチ荷電粒子ビームを形成する工程と、
試料面上の描画領域が分割された複数の処理領域の処理領域毎に、当該処理領域内の各位置の個別のドーズ量が定義されたドーズデータを作成する工程と、
前記処理領域毎に、前記マルチ荷電粒子ビームのうちドーズ量が過剰になる欠陥ビームが照射される予定の欠陥位置を含む近傍の領域にゼロではない値のドーズ量が定義された位置が存在するかどうかを判定する工程と、
前記近傍の領域にゼロではない値のドーズ量が定義される場合に、前記欠陥位置に欠陥用ドーズ量が定義された欠陥用ドーズデータを作成する工程と、
前記マルチ荷電粒子ビームの照射領域が設定される前記試料面上の単位領域毎に、当該単位領域での照射予定の各位置のドーズデータを用いて、当該単位領域内のパターンの有無を判定する工程と、
前記マルチ荷電粒子ビームを用いて、前記試料にパターンを描画し、前記描画を行う場合に、パターン無と判定された単位領域をスキップして次のパターン有と判定された単位領域へと描画処理を行う単位領域を移動させ、多重描画の複数の描画パスのいずれかの描画パスにおける前記欠陥ビームに起因する過剰ドーズを他の描画パスで減らすように補正する工程と、
を備えたマルチ荷電粒子ビーム描画方法。
【請求項7】
前記マルチ荷電粒子ビームの照射領域が前記試料を載置する移動可能なステージの移動に追従するように前記マルチ荷電粒子ビームのトラッキング偏向を行う工程をさらに備え、
前記単位領域は、前記トラッキング偏向によるトラッキング制御ごとに設定される請求項6記載のマルチ荷電粒子ビーム描画方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、マルチ荷電粒子ビーム描画装置及びマルチ荷電粒子ビーム描画方法に係り、例えば、マルチビーム描画によるパターンの寸法ずれを低減する手法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。ここで、電子線(電子ビーム)描画技術は本質的に優れた解像性を有しており、マスクブランクスへ電子線を使ってマスクパターンを描画することが行われている。
【0003】
例えば、マルチビームを使った描画装置がある。1本の電子ビームで描画する場合に比べて、マルチビームを用いることで一度に多くのビームを照射できるのでスループットを大幅に向上させることができる。かかるマルチビーム方式の描画装置では、例えば、電子銃から放出された電子ビームを複数の穴を持ったマスクに通してマルチビームを形成し、各々、ブランキング制御され、遮蔽されなかった各ビームが光学系で縮小されることによりマスク像が縮小されて、偏向器で偏向されることにより試料上の所望の位置へと照射される。
【0004】
マルチビーム描画では、各ビームから照射されるドーズ量を照射時間によって制御している。しかしながら、ブランキング制御機構の故障等により照射時間制御が困難となり、ビームが過剰に照射されてしまう欠陥ビームが発生し得る。必要なドーズが試料に照射されない場合、試料上に形成されるパターンの形状誤差が生じてしまうといった問題があった。かかる問題に対して、周辺の複数のビームに過剰ドーズを分担させることで補正するといった技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
まだ公知にはなっていないと思われるが、欠陥ビームの照射による過剰ドーズを多重描画の描画パス間を跨いで補正するといった技術が検討されている。一方、マルチビーム描画では、例えば試料の描画領域上においてマルチビームで照射される矩形領域をずらしながら描画を進めていく。この場合に、パターンが存在しない矩形領域については、描画時間の短縮を図るためにもかかる矩形領域の描画処理をスキップしたい。
【0007】
しかしながら、欠陥ビームによる過剰ドーズの補正を多重描画の描画パス間を跨いで行う場合、一部の描画パスにおいて欠陥ビームが照射される位置を含む矩形領域がパターン無しの場合が起こり得る。描画パス間では、ドーズ量データは独立して生成される。この場合、例えば、1回目の描画パスにおいて、2回目の描画パスで欠陥ビームが照射される位置について欠陥補正を行うことを前提にデータ生成が行われる。しかし、2回目の描画パスにおいて欠陥ビームが照射される位置を含む矩形領域がパターン無しの領域になる場合が起こり得る。この場合、パターン無しの領域の描画処理がスキップされてしまうと、2回目の描画パスで照射されるはずだった欠陥ビームが照射されず、1回目の描画パスでの補正の前提が崩れてしまう。結果的に、不要な欠陥補正が実施されてしまうといった問題があった。
【0008】
本発明の一態様は、マルチビーム描画において、欠陥ビームによる過剰ドーズの補正を多重描画の描画パス間を跨いで行う場合に不要な欠陥補正を回避可能な装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様のマルチ荷電粒子ビーム描画装置は、
マルチ荷電粒子ビームを形成するビーム形成機構と、
試料面上の描画領域が分割された複数の処理領域の処理領域毎に、当該処理領域内の各位置の個別のドーズ量が定義されたドーズデータを作成するドーズデータ作成部と、
処理領域毎に、マルチ荷電粒子ビームのうちドーズ量が過剰になる欠陥ビームが照射される予定の欠陥位置を含む近傍の領域にゼロではない値のドーズ量が定義された位置が存在するかどうかを判定するドーズ判定部と、
近傍の領域にゼロではない値のドーズ量が定義される場合に、欠陥位置に欠陥用ドーズ量が定義された欠陥用ドーズデータを作成する欠陥位置ドーズデータ作成部と、
マルチ荷電粒子ビームの照射領域が設定される試料面上の単位領域毎に、当該単位領域での照射予定の各位置のドーズデータを用いて、当該単位領域内のパターンの有無を判定するパターン有無判定部と、
マルチ荷電粒子ビームを用いて、試料にパターンを描画する際に、パターン有無判定部によりパターン無と判定された単位領域をスキップして次のパターン有と判定された単位領域へと描画処理を行う単位領域を移動させ、多重描画の複数の描画パスのいずれかの描画パスにおける欠陥ビームに起因する過剰ドーズを他の描画パスで減らすように補正する描画機構と、
を備えた。
【0010】
また、試料を載置する移動可能なステージと、
マルチ荷電粒子ビームの照射領域がステージの移動に追従するようにマルチ荷電粒子ビームのトラッキング偏向を行うトラッキング偏向器と、
をさらに備え、
単位領域は、トラッキング偏向によるトラッキング制御ごとに設定されると好適である。
【0011】
また、パターン有無判定部は、各単位領域においてパターン有と判定すると好適である。
【0012】
或いは、単位領域毎のパターンの有無の判定結果を格納する記憶装置をさらに備え、
多重描画の複数の描画パスの2回目以降の描画パスでは、先行するパスでの単位領域毎のパターンの有無の判定結果に基づいて、当該パスで、欠陥ビームに起因する過剰ドーズの補正の要否を決定すると好適である。
【0013】
また、単位領域毎のパターンの有無の判定は、描画処理を開始する前の前処理として実施されると好適である。
【0014】
本発明の一態様のマルチ荷電粒子ビーム描画方法は、
マルチ荷電粒子ビームを形成する工程と、
試料面上の描画領域が分割された複数の処理領域の処理領域毎に、当該処理領域内の各位置の個別のドーズ量が定義されたドーズデータを作成する工程と、
処理領域毎に、マルチ荷電粒子ビームのうちドーズ量が過剰になる欠陥ビームが照射される予定の欠陥位置を含む近傍の領域にゼロではない値のドーズ量が定義された位置が存在するかどうかを判定する工程と、
近傍の領域にゼロではない値のドーズ量が定義される場合に、欠陥位置に欠陥用ドーズ量が定義された欠陥用ドーズデータを作成する工程と、
マルチ荷電粒子ビームの照射領域が設定される試料面上の単位領域毎に、当該単位領域での照射予定の各位置のドーズデータを用いて、当該単位領域内のパターンの有無を判定する工程と、
マルチ荷電粒子ビームを用いて、試料にパターンを描画し、描画を行う場合に、パターン無と判定された単位領域をスキップして次のパターン有と判定された単位領域へと描画処理を行う単位領域を移動させ、多重描画の複数の描画パスのいずれかの描画パスにおける欠陥ビームに起因する過剰ドーズを他の描画パスで減らすように補正する工程と、
を備えた。
【0015】
また、マルチ荷電粒子ビームの照射領域が試料を載置する移動可能なステージの移動に追従するようにマルチ荷電粒子ビームのトラッキング偏向を行う工程をさらに備え、
単位領域は、トラッキング偏向によるトラッキング制御ごとに設定されると好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、マルチビーム描画において、欠陥ビームによる過剰ドーズの補正を多重描画の描画パス間を跨いで行う場合に不要な欠陥補正を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
【
図2】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
【
図3】実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構の構成を示す断面図である。
【
図4】実施の形態1における描画動作の一例を説明するための概念図である。
【
図5】実施の形態1におけるマルチビームの照射領域と描画対象画素との一例を示す図である。
【
図6】実施の形態1におけるマルチビームの描画方法の一例を説明するための図である。
【
図7】実施の形態1における各描画パスでのパターン有無の一例を示す図である。
【
図8】実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
【
図9】実施の形態1におけるビームの位置ずれと位置ずれ周期性とを説明するための図である。
【
図10】実施の形態1における位置ずれ補正方法の一例を説明するための図である。
【
図11】実施の形態1における欠陥ビーム補正の一例を示す図である。
【
図12】実施の形態1における欠陥ビーム補正の他の一例を示す図である。
【
図13】実施の形態1の比較例における処理領域内のパターン有無と、主偏向領域毎のパターン有無との一例を示す図である。
【
図14】実施の形態1における処理領域内のパターン有無と、主偏向領域毎のパターン有無との一例を示す図である。
【
図15】実施の形態3における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
【
図16】実施の形態4における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
【
図17】実施の形態5における描画装置の構成を示す概念図である。
【
図18】実施の形態5における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。
【0019】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、描画機構150と制御系回路160を備えている。描画装置100は、マルチ荷電粒子ビーム描画装置の一例である。描画機構150は、電子鏡筒102(マルチ電子ビームカラム)と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、ブランキングアパーチャアレイ機構204、縮小レンズ205、一括ブランキング偏向器212、制限アパーチャ基板206、対物レンズ207、偏向器208、及び偏向器209が配置されている。描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時には描画対象基板となるレジストが塗布されたマスクブランクス等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスク、或いは、半導体デバイスが製造される半導体基板(シリコンウェハ)等が含まれる。XYステージ105上には、さらに、XYステージ105の位置測定用のミラー210が配置される。XYステージ105上には、さらに、ファラディーカップ106が配置される。
【0020】
制御系回路160は、制御計算機110、メモリ112、偏向制御回路130、デジタル・アナログ変換(DAC)アンプユニット132,134,136、ステージ位置検出器139及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142,144を有している。制御計算機110、メモリ112、偏向制御回路130、DACアンプユニット132,134,136、ステージ位置検出器139及び記憶装置140,142,144は、図示しないバスを介して互いに接続されている。偏向制御回路130には、DACアンプユニット132,134,136及びブランキングアパーチャアレイ機構204が接続されている。DACアンプユニット132の出力は、偏向器209に接続される。DACアンプユニット134の出力は、偏向器208に接続される。DACアンプユニット136の出力は、一括ブランキング偏向器212に接続される。偏向器208は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ134を介して偏向制御回路130により制御される。偏向器209は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ132を介して偏向制御回路130により制御される。一括ブランキング偏向器212は、2極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ136を介して偏向制御回路130により制御される。
【0021】
ステージ位置検出器139は、レーザ光をXYステージ105上のミラー210に照射し、ミラー210からの反射光を受光する。そして、かかる反射光の情報を使ったレーザ干渉の原理を利用してXYステージ105の位置を測定する。
【0022】
制御計算機110内には、ラスタライズ部50、ドーズデータ作成部52、ビーム位置ずれマップ作成部54、位置ずれ補正部56、検出部57、特定部58、欠陥補正部60、有限ドーズ判定部62、欠陥ドーズデータ作成部64、照射時間演算部66、データ加工部67、NULL判定部68、及び描画制御部74が配置されている。ラスタライズ部50、ドーズデータ作成部52、ビーム位置ずれマップ作成部54、位置ずれ補正部56、検出部57、特定部58、欠陥補正部60、有限ドーズ判定部62、欠陥ドーズデータ作成部64、照射時間演算部66、データ加工部67、NULL判定部68、及び描画制御部74といった各「~部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。ラスタライズ部50、ドーズデータ作成部52、ビーム位置ずれマップ作成部54、位置ずれ補正部56、検出部57、特定部58、欠陥補正部60、有限ドーズ判定部62、欠陥ドーズデータ作成部64、照射時間演算部66、データ加工部67、NULL判定部68、及び描画制御部74に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。
【0023】
また、描画装置100の外部から描画データが入力され、記憶装置140に格納される。描画データには、通常、描画するための複数の図形パターンの情報が定義される。具体的には、図形パターン毎に、図形コード、座標、及びサイズ等が定義される。
【0024】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0025】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、縦(y方向)p列×横(x方向)q列(p,q≧2)の穴(開口部)22が所定の配列ピッチでマトリクス状に形成されている。
図2では、例えば、縦横(x,y方向)に512×512列の穴22が形成される。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ直径の円形であっても構わない。成形アパーチャアレイ基板203(ビーム形成機構)は、マルチビーム20を形成する。具体的には、これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチビーム20が形成されることになる。また、穴22の配列の仕方は、
図2のように、縦横が格子状に配置される場合に限るものではない。例えば、縦方向(y方向)k段目の列と、k+1段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法aだけずれて配置されてもよい。同様に、縦方向(y方向)k+1段目の列と、k+2段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法bだけずれて配置されてもよい。
【0026】
図3は、実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構の構成を示す断面図である。ブランキングアパーチャアレイ機構204は、
図3に示すように、支持台33上にシリコン等からなる半導体基板31が配置される。基板31の中央部は、例えば裏面側から削られ、薄い膜厚hのメンブレン領域330(第1の領域)に加工されている。メンブレン領域330を取り囲む周囲は、厚い膜厚Hの外周領域332(第2の領域)となる。メンブレン領域330の上面と外周領域332の上面とは、同じ高さ位置、或いは、実質的に同じ高さ位置になるように形成される。基板31は、外周領域332の裏面で支持台33上に保持される。支持台33の中央部は開口しており、メンブレン領域330の位置は、支持台33の開口した領域に位置している。
【0027】
メンブレン領域330には、
図2に示した成形アパーチャアレイ基板203の各穴22に対応する位置にマルチビーム20のそれぞれのビームの通過用の通過孔25(開口部)が開口される。言い換えれば、基板31のメンブレン領域330には、電子線を用いたマルチビーム20のそれぞれ対応するビームが通過する複数の通過孔25がアレイ状に形成される。そして、基板31のメンブレン領域330上であって、各通過孔25を挟んで対向する位置に2つの電極を有する複数の電極対がそれぞれ配置される。具体的には、メンブレン領域330上に、
図3に示すように、各通過孔25の近傍位置に該当する通過孔25を挟んでブランキング偏向用の制御電極24と対向電極26の組(ブランカー:ブランキング偏向器:第1の偏向器)がそれぞれ配置される。また、基板31内部であってメンブレン領域330上の各通過孔25の近傍には、各通過孔25用の制御電極24に偏向電圧を印加する制御回路41(ロジック回路)が配置される。各ビーム用の対向電極26は、グランド接続される。
【0028】
制御回路41内には、図示しないアンプ(スイッチング回路の一例)が配置される。アンプの一例として、CMOS(Complementary MOS)インバータ回路が配置される。そして、CMOSインバータ回路は正の電位(Vdd:ブランキング電位:第1の電位)(例えば、5V)(第1の電位)とグランド電位(GND:第2の電位)に接続される。CMOSインバータ回路の出力線(OUT)は制御電極24に接続される。一方、対向電極26は、グランド電位が印加される。そして、ブランキング電位とグランド電位とが切り替え可能に印加される複数の制御電極24が、基板31上であって、複数の通過孔25のそれぞれ対応する通過孔25を挟んで複数の対向電極26のそれぞれ対応する対向電極26と対向する位置に配置される。
【0029】
CMOSインバータ回路の入力(IN)には、閾値電圧よりも低くなるL(low)電位(例えばグランド電位)と、閾値電圧以上となるH(high)電位(例えば、1.5V)とのいずれかが制御信号として印加される。実施の形態1では、CMOSインバータ回路の入力(IN)にL電位が印加される状態では、CMOSインバータ回路の出力(OUT)は正電位(Vdd)となり、対向電極26のグランド電位との電位差による電界によりマルチビーム20中の対応する1本を偏向し、制限アパーチャ基板206で遮蔽することでビームOFFになるように制御する。一方、CMOSインバータ回路の入力(IN)にH電位が印加される状態(アクティブ状態)では、CMOSインバータ回路の出力(OUT)はグランド電位となり、対向電極26のグランド電位との電位差が無くなりマルチビーム20中の対応する1本を偏向しないので制限アパーチャ基板206を通過することでビームONになるように制御する。
【0030】
各通過孔を通過するマルチビーム20中の対応する1本の電子ビームは、それぞれ独立に対となる2つの制御電極24と対向電極26に印加される電圧によって偏向される。かかる偏向によってブランキング制御される。具体的には、制御電極24と対向電極26の組は、それぞれ対応するスイッチング回路となるCMOSインバータ回路によって切り替えられる電位によってマルチビーム20の対応ビームをそれぞれ個別にブランキング偏向する。このように、複数のブランカーが、成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22(開口部)を通過したマルチビーム20のうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行う。
【0031】
図4は、実施の形態1における描画動作の一例を説明するための概念図である。
図4に示すように、試料101の描画領域30(太線)は、例えば、y方向に向かって所定の幅で短冊状の複数のストライプ領域32に仮想分割される。
【0032】
また、
図4の例では、描画領域30を分割した複数のストライプ領域32で構成される第1のストライプレイヤを設定する。また、第1のストライプレイヤに対してy方向にストライプ領域32の幅の1/2のサイズで位置をずらした複数のストライプ領域32で構成される第2のストライプレイヤを設定する。このように、
図4の例では、第1のストライプレイヤと第2のストライプレイヤとの2つのストライプレイヤが設定される。よって、第1のストライプレイヤと第2のストライプレイヤとを組み合わせることで、y方向に一部が重複しながら並ぶ複数のストライプ領域32が設定される。
図4の例では、y方向に隣接するストライプ領域32同士が1/2の領域ずつ互いに重複する場合を示している。また、第2のストライプレイヤにおいては描画領域30の端部から-y方向に1つ余分にストライプ領域32を設定すると好適である。次に、描画動作の一例を説明する。
【0033】
まず、XYステージ105を移動させて、第2のストライプレイヤの第1番目のストライプ領域32の左端、或いはさらに左側の位置にマルチビーム20の照射領域34が位置するように調整する。そして、第2のストライプレイヤの第1番目のストライプ領域32の描画が行われる。第2のストライプレイヤの第1番目のストライプ領域32を描画する際には、XYステージ105を例えば-x方向に移動させることにより、相対的にx方向へと描画を進めていく。XYステージ105は例えば等速で連続移動させる。第2のストライプレイヤの第1番目のストライプ領域32の描画終了後、ステージ位置を-y方向にストライプ領域32の幅の1/2サイズのずらし量だけ移動させる。
【0034】
そして、次に、第1のストライプレイヤの第1番目のストライプ領域32の右端、或いはさらに右側の位置にマルチビーム20の照射領域34が位置するように調整する。そして、XYステージ105を例えばx方向に移動させることにより、相対的に-x方向へと描画を進めていく。これにより、第1のストライプレイヤの第1番目のストライプ領域32の描画が行われる。第1のストライプレイヤの第1番目のストライプ領域32の描画が終了後、第2のストライプレイヤの第2番目のストライプ領域32の描画が行われる。第1のストライプレイヤと第2のストライプレイヤとを交互に描画することで、各位置では多重描画が行われる。また、上述した例では交互に向きを変えながら描画する場合を示したが、これに限らず、各ストライプ領域32を描画する際、同じ方向に向かって描画を進めるようにしても構わない。
【0035】
図5は、実施の形態1におけるマルチビームの照射領域と描画対象画素との一例を示す図である。
図5において、ストライプ領域32には、例えば、試料101面上におけるマルチビーム20のビームサイズピッチで格子状に配列される複数の制御グリッド27(設計グリッド)が設定される。この制御グリッド27は、例えば、10nm程度の配列ピッチにすると好適である。かかる複数の制御グリッド27が、マルチビーム20の設計上の照射位置となる。制御グリッド27の配列ピッチはビームサイズに限定されるものではなく、ビームサイズとは関係なく偏向器209の偏向位置として制御可能な任意の大きさで構成されるものでも構わない。そして、各制御グリッド27を中心とした、制御グリッド27の配列ピッチと同サイズでメッシュ状に仮想分割された複数の画素36が設定される。各画素36は、マルチビームの1つのビームあたりの照射単位領域となる。
図5の例では、試料101の描画領域が、例えばy方向に、1回のマルチビーム20(ビームアレイ)の照射で照射可能な照射領域34(描画フィールド)のサイズと実質同じ幅サイズで複数のストライプ領域32に分割された場合を示している。照射領域34のx方向サイズは、マルチビーム20のx方向のビーム間ピッチにx方向のビーム数を乗じた値で定義できる。照射領域34のy方向サイズは、マルチビーム20のy方向のビーム間ピッチにy方向のビーム数を乗じた値で定義できる。なお、ストライプ領域32の幅は、これに限るものではない。照射領域34のn倍(nは1以上の整数)のサイズであると好適である。
図5の例では、例えば512×512列のマルチビームの図示を8×8列のマルチビームに省略して示している。そして、照射領域34内に、1回のマルチビーム20のショットで照射可能な複数の画素28(ビームの描画位置)が示されている。言い換えれば、隣り合う画素28間のピッチが設計上のマルチビームの各ビーム間のピッチとなる。
図5の例では、ビーム間ピッチで囲まれる領域で1つのサブ照射領域29を構成する。
図5の例では、各サブ照射領域29は、4×4画素で構成される場合を示している。
【0036】
図6は、実施の形態1におけるマルチビームの描画方法の一例を説明するための図である。
図6では、
図5で示したストライプ領域32を描画するマルチビームのうち、y方向k段目の座標(1,3),(2,3),(3,3),・・・,(512,3)の各ビームで描画するサブ照射領域29の一部を示している。
図6の例では、例えば、XYステージ105が8ビームピッチ分の距離を移動する間に4つの画素を描画(露光)する場合を示している。かかる4つの画素を描画(露光)する間、照射領域34がXYステージ105の移動によって試料101との相対位置がずれないように、偏向器208によってマルチビーム20全体を一括偏向する。これによって、照射領域34をXYステージ105の移動に追従させる。言い換えれば、トラッキング制御が行われる。偏向器208がトラッキング偏向器として、マルチビーム20の照射領域34がステージの移動に追従するようにマルチビーム20のトラッキング偏向を行う。
図6の例では、8ビームピッチ分の距離を移動する間に4つの画素を描画(露光)することで1回のトラッキングサイクルを実施する場合を示している。
【0037】
具体的には、各ショットにおいて、設定された最大描画時間内のそれぞれの制御グリッド27に対応する描画時間(照射時間、或いは露光時間)ビームを照射する。具体的には、各制御グリッド27にマルチビーム20のうちONビームのそれぞれ対応するビームを照射する。そして、最大描画時間にDACアンプの整定時間を加算したショットサイクル時間Ttr毎に、偏向器209による一括偏向により各ビームの照射位置を次のショット位置へと移動する。
【0038】
そして、
図6の例では4ショット終了した時点で、DACアンプユニット134は、トラッキング制御用のビーム偏向をリセットする。これにより、トラッキング位置をトラッキング制御が開始されたトラッキング開始位置に戻す。
【0039】
なお、各サブ照射領域29の右から1番目の画素列の描画は終了している。よって、トラッキングリセットした後に、次回のトラッキングサイクルにおいてまず偏向器209は、各サブ照射領域29の下から1段目かつ右から2番目の画素の制御グリッド27にそれぞれ対応するビームの描画位置を合わせる(シフトする)ように偏向する。かかる動作を繰り返すことで、すべての画素の描画が行われる。サブ照射領域29がn×n画素で構成される場合に、n回のトラッキング動作でそれぞれ異なるビームによってn画素ずつ描画される。これにより、1つのn×n画素の領域内のすべての画素が描画される。マルチビームの照射領域内の他のn×n画素の領域についても同時期に同様の動作が実施され、同様に描画される。
【0040】
かかる動作により、
図4の照射領域34a~34oで示すように、1回のトラッキング制御でのステージ移動量である例えば8ビームピッチずつ照射領域34がストライプ領域32上でシフトしながら描画処理を進めることになる。
【0041】
次に描画装置100における描画機構150の動作について説明する。電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202により成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、矩形の複数の穴22(開口部)が形成される。そして、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過する。これによって、例えば矩形形状の複数の電子ビーム(マルチビーム20)が形成される。かかるマルチビーム20は、ブランキングアパーチャアレイ機構204のそれぞれ対応するブランカー(第1の偏向器)内を通過する。かかるブランカーは、それぞれ、個別に通過する電子ビームを偏向する(ブランキング偏向を行う)。
【0042】
ブランキングアパーチャアレイ機構204を通過したマルチビーム20は、縮小レンズ205によって、縮小され、制限アパーチャ基板206に形成された中心の穴に向かって進む。ここで、マルチビーム20のうち、ブランキングアパーチャアレイ機構204のブランカーによって偏向された電子ビームは、制限アパーチャ基板206の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板206によって遮蔽される。一方、ブランキングアパーチャアレイ機構204のブランカーによって偏向されなかった電子ビームは、
図1に示すように制限アパーチャ基板206の中心の穴を通過する。かかるブランカーのON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが制御される。このように、制限アパーチャ基板206は、ブランカーによってビームOFFの状態になるように偏向された各ビームを遮蔽する。そして、ビーム毎に、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板206を通過したビームにより、1回分のショットのビームが形成される。制限アパーチャ基板206を通過したマルチビーム20は、対物レンズ207により焦点が合わされ、所望の縮小率のパターン像となり、偏向器208,209によって、制限アパーチャ基板206を通過した各ビーム(通過したマルチビーム20全体)が同方向に一括して偏向され、各ビームの試料101上のそれぞれの照射位置に照射される。一度に照射されるマルチビーム20は、理想的には成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22の配列ピッチに上述した所望の縮小率を乗じたピッチで並ぶことになる。
【0043】
上述したように、マルチビームには欠陥ビームが生じ得る。欠陥ビームには、ビームのドーズ量制御ができず照射されるドーズ量が過剰になるドーズ過剰欠陥ビームと、ビームのドーズ量制御ができず照射されるドーズ量が不足になるドーズ不足欠陥ビームと、があげられる。ドーズ過剰欠陥ビームの中には、常時ONとなるON欠陥ビームと照射時間制御が不良な制御不良欠陥ビームの一部とが含まれる。ドーズ不足欠陥ビームの中には、常時OFFとなるOFF欠陥ビームと制御不良欠陥ビームの残部とが含まれる。
【0044】
欠陥ビームによって予定されるドーズ量よりも過剰なドーズ量が試料に照射される場合、試料上に形成されるパターンの形状誤差が生じてしまうといった問題があった。かかる問題に対して、過剰ドーズ量を相殺する欠陥補正が行われる。実施の形態1では、複数回の描画パスで描画処理を実施する多重描画を行う。そこで、かかる欠陥補正を欠陥ビームが照射される描画パスとは異なる描画パスにて実施する。一方、マルチビーム描画では、例えば試料101の描画領域上においてマルチビーム20で照射される矩形領域(単位領域の一例)をずらしながら進めていく。ここでの矩形領域(ビームアレイ領域)は、マルチビーム20の各ビームが隣接する他の複数のビームとの間で囲まれる各サブ照射領域29(小領域)を組み合わせたマルチビームの照射領域34となる。なお、単位領域は矩形に限るものではない。マルチビームの配列形状に合わせて単位領域の形状は他の形状であっても構わない。
図4の例では、照射領域34がトラッキングサイクル毎に例えば8ビームピッチずつシフトするので、ストライプ領域32上ではマルチビーム20で照射される矩形領域が8ビームピッチずつずれながら重なり合うことになる。例えば、照射領域34aに対応する矩形領域では、各サブ照射領域29の右から1番目の画素列が照射対象となる。例えば、照射領域34bに対応する矩形領域では、各サブ照射領域29の右から2番目の画素列が照射対象となる。例えば、照射領域34cに対応する矩形領域では、各サブ照射領域29の右から3番目の画素列が照射対象となる。例えば、照射領域34dに対応する矩形領域では、各サブ照射領域29の右から4番目の画素列が照射対象となる。以降の矩形領域においても照射対象画素が同様にずれていく。この場合に、照射対象画素にパターンが存在しない矩形領域については、描画時間の短縮を図るためにもかかる矩形領域の描画処理をスキップしたい。
【0045】
なお、矩形領域の描画処理をスキップする場合、スキップ動作の間、一括ブランキング偏向器212によりマルチビーム20全体を一括偏向することで欠陥ビーム11を含めたマルチビーム20全体を制限アパーチャ基板206で遮蔽すればよい。
【0046】
図7は、実施の形態1における各描画パスでのパターン有無の一例を示す図である。
図7において、1回目の描画パス(1パス目)においてあるトラッキング制御が行われる矩形領域13内にはパターン12が配置される。かかる矩形領域13内には2回目の描画パス(2パス目)で欠陥ビーム11が照射される位置が含まれる。1パス目での欠陥ビーム11が照射される位置については図示を省略している。
【0047】
そして、かかる1パス目の矩形領域13を照射するためのドーズデータを作成する際に、2パス目で欠陥ビーム11が照射されることによる過剰ドーズを補正する欠陥補正を行うことを前提にデータ生成が行われる。また、2パス目において欠陥ビーム11が照射される位置は、あるトラッキング制御が行われる矩形領域13に含まれることになる。ここで、2パス目において欠陥ビーム11が照射される位置を含む矩形領域13が
図7に示すようにパターン無しの領域になる場合が起こり得る。このように、欠陥ビームによる過剰ドーズの補正を多重描画の描画パス間を跨いで行う場合、一部の描画パスにおいて欠陥ビームが照射される位置を含む矩形領域13がパターン無しの場合が起こり得る。描画パス間では、ドーズ量データは独立して生成される。この場合、2回目の描画パスにおいてパターン無しの矩形領域13の描画処理がスキップされてしまうと欠陥ビーム11が照射されず1回目の描画パスでの補正の前提が崩れてしまう。結果的に、不要な欠陥補正が実施されてしまうといった問題があった。
【0048】
逆に、2パス目の矩形領域13に1パス目で欠陥ビームが照射される位置が含まれる場合もあり得る。2パス目の矩形領域13を照射するためのドーズデータを作成する際に、1パス目で欠陥ビームが照射されることによる過剰ドーズを補正する欠陥補正を行うことを前提にデータ生成が行われる。しかしながら、1パス目において欠陥ビームが照射される位置を含む矩形領域がパターン無しの領域になる場合が起こり得る。1回目の描画パスにおいてパターン無しの矩形領域の描画処理がスキップされてしまうと欠陥ビームが照射されず2回目の描画パスでの補正の前提が崩れてしまう。結果的に、不要な欠陥補正が実施されてしまうといった問題があった。
【0049】
そこで、実施の形態1では、欠陥ビームが照射される位置周辺に設計上のゼロではない値(有限値)のドーズ量が定義される画素が存在する場合には、トラッキング制御が行われる矩形領域13がパターン無しであってもあえてスキップしないように制御する。
【0050】
なお、例えば1パス目の描画処理にて欠陥ビームが照射された場合に、2パス目において1パス目で欠陥ビームが照射された位置を照射対象とする矩形領域13がパターン無しの領域になる場合がある。欠陥ビームの周囲にそもそも設計上のパターンが存在しなければ欠陥ビームに起因するパターンの形状誤差は生じない。よって、かかる場合には欠陥ビームを無視できるので描画処理はスキップされても構わない。
【0051】
図8は、実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図8において、実施の形態1における描画方法は、ビーム位置ずれ量測定工程(S102)と、欠陥ビーム検出工程(S104)と、ドーズ量演算工程(S110)と、パス毎の位置ずれ補正工程(S112)と、パス毎の欠陥ビーム位置特定工程(S120)と、欠陥ビーム補正工程(S122)と、欠陥近傍有限ドーズ判定工程(S130)と、欠陥ドーズデータ作成工程(S132)と、照射時間演算工程(S142)と、データ加工工程(S144)と、主偏向データNULL判定工程(S146)と、描画工程(S150)と、いう一連の工程を実施する。
【0052】
欠陥ビーム補正工程(S122)と、欠陥近傍有限ドーズ判定工程(S130)と、欠陥ドーズデータ作成工程(S132)と、照射時間演算工程(S142)と、データ加工工程(S144)と、主偏向データNULL判定工程(S146)と、描画工程(S150)と、の各工程は、描画パス毎に実施される。
【0053】
ビーム位置ずれ量測定工程(S102)として、描画装置100は、マルチビーム20の各ビームの試料101面上の照射位置が、対応する制御グリッド27からずれる位置ずれ量を測定する。
【0054】
図9は、実施の形態1におけるビームの位置ずれと位置ずれ周期性とを説明するための図である。マルチビーム20では、
図9(a)に示すように、光学系の特性上、露光フィールドに歪が生じ、かかる歪等によって、個々のビームの実際の照射位置39が理想グリッドに照射される場合の照射位置37からずれてしまう。そこで、実施の形態1では、かかる個々のビームの実際の照射位置39の位置ずれ量を測定する。具体的には、レジストが塗布された評価基板に、マルチビーム20を照射し、評価基板を現像することで生成されるレジストパターンの位置を位置測定器で測定する。これにより、ビーム毎の位置ずれ量を測定する。各ビームのショットサイズでは、各ビームの照射位置におけるレジストパターンのサイズを位置測定器で測定困難であれば、各ビームで、位置測定器で測定可能なサイズの図形パターン(例えば矩形パターン)を描画する。そして、図形パターン(レジストパターン)の両側のエッジ位置を測定して、両エッジ間の中間位置と設計上の図形パターンの中間位置との差分から対象ビームの位置ずれ量を測定すればよい。そして、得られた各ビームの照射位置の位置ずれ量データは、描画装置100に入力され、記憶装置144に格納される。また、マルチビーム描画では、ストライプ領域32内において照射領域34をずらしながら描画を進めていくため、例えば、
図6において説明した描画シーケンスでは、
図4の下段に示すように、ストライプ領域32の描画中、照射領域34a~34oといった具合に順次照射領域34の位置が移動する。そして、照射領域34の移動毎に、各ビームの位置ずれに周期性が生じることになる。或いは、各ビームが、それぞれ対応するサブ照射領域29内のすべての画素36を照射する描画シーケンスの場合であれば、
図9(b)に示すように、少なくとも照射領域34と同じサイズの単位領域35毎(35a、35b、・・・)に各ビームの位置ずれに周期性が生じることになる。よって、ビームアレイの照射領域34分の各ビームの位置ずれ量を測定すれば、測定結果を流用できる。言い換えれば、各ビームについて、対応するサブ照射領域29内の各画素36での位置ずれ量を測定できれば良い。
【0055】
そして、ビーム位置ずれマップ作成部54は、まず、ビームアレイ単位、言い換えれば、照射領域34に対応する試料面上の1つの矩形単位領域35内の各画素36の各ビームの位置ずれ量を定義するビーム位置ずれ量マップ(1)を作成する。具体的には、ビーム位置ずれマップ作成部54は、記憶装置144から各ビームの照射位置の位置ずれ量データを読み出し、かかるデータをマップ値としてビーム位置ずれ量マップ(1)を作成すればよい。マルチビーム20全体の照射領域34に対応する試料面上の1つの矩形単位領域35内の各画素36の制御グリッド27をどのビームが照射するのかは、例えば
図6において説明したように、描画シーケンスによって決まる。よって、ビーム位置ずれマップ作成部54は、描画シーケンスに応じて1つの単位領域35内の各画素36の制御グリッド27毎に当該制御グリッド27への照射を担当するビームを特定して、当該ビームの位置ずれ量を演算する。作成されたビーム位置ずれ量マップ(1)は、記憶装置144に格納しておく。
【0056】
欠陥ビーム検出工程(S104)として、検出部57は、マルチビーム20の中から欠陥ビームを検出する。常時ONとなるON欠陥ビームでは、制御ドーズ量に関わらず、常に、1回のショットにおける最大照射時間のビームを照射する。或いは、さらに画素間の移動時も照射し続ける。また、常時OFFとなるOFF欠陥ビームでは、制御ドーズ量に関わらず、常に、ビームOFFとなる。具体的には、描画制御部74による制御のもと、描画機構150は、マルチビーム20を1本ずつブランキングアパーチャアレイ機構204でビームONになるように制御すると共に、残りはすべてビームOFFになるように制御する。かかる状態で、ファラディーカップ106で電流が検出されなかったビームは、OFF欠陥ビームとして検出される。逆に、かかる状態から検出対象ビームをビームOFFになるように制御を切り替える。その際、ビームONからビームOFFに切り替えたのにもかかわらず、ファラディーカップ106で常時電流が検出されたビームは、ON欠陥ビームとして検出される。ビームONからビームOFFに切り替えたのち、ファラディーカップ106で所定の期間だけ電流が検出されたビームは、制御不良欠陥ビームとして検出される。マルチビーム20のすべてのビームについて同じ方法で順に確認すれば、欠陥ビームの有無、種類及び欠陥ビームがどの位置のビームなのかを検出できる。ここでは、ON欠陥ビーム以外の欠陥ビームについても検出する場合を説明しているが、常時ONとなるON欠陥ビームを検出するだけでも構わない。検出された欠陥ビームの情報は記憶装置144に格納される。
【0057】
ドーズ量演算工程(S110)として、ドーズデータ作成部52(ドーズ量演算部)は、試料101面上の描画領域が分割された複数の処理領域の処理領域毎に、当該処理領域内の各位置の個別のドーズ量が定義されたドーズデータを作成する。具体的には、以下のように動作する。まず、ラスタライズ部50は、記憶装置140から描画データを読み出し、画素36毎に、当該画素36内のパターン面積密度ρ’を演算する。かかる処理は、例えば、ストライプ領域32毎に実行する。
【0058】
次に、ドーズデータ作成部52は、まず、描画領域(ここでは、例えばストライプ領域32)を所定のサイズでメッシュ状に複数の近接メッシュ領域(近接効果補正計算用メッシュ領域)に仮想分割する。近接メッシュ領域のサイズは、近接効果の影響範囲の1/10程度、例えば、1μm程度に設定すると好適である。ドーズマップ作成部62は、記憶装置140から描画データを読み出し、近接メッシュ領域毎に、当該近接メッシュ領域内に配置されるパターンのパターン面積密度ρを演算する。
【0059】
次に、ドーズデータ作成部52は、近接メッシュ領域毎に、近接効果を補正するための近接効果補正照射係数Dp(x)(補正照射量)を演算する。未知の近接効果補正照射係数Dp(x)は、後方散乱係数η、しきい値モデルの照射量閾値Dth、パターン面積密度ρ、及び分布関数g(x)を用いた、従来手法と同様の近接効果補正用のしきい値モデルによって定義できる。
【0060】
次に、ドーズデータ作成部52は、画素36毎に、当該画素36に照射するための入射照射量D(x)(ドーズ量)を演算する。入射照射量D(x)は、例えば、予め設定された基準照射量Dbaseに近接効果補正照射係数Dpとパターン面積密度ρ’とを乗じた値として演算すればよい。基準照射量Dbaseは、例えば、Dth/(1/2+η)で定義できる。以上により、描画データに定義される複数の図形パターンのレイアウトに基づいた、近接効果が補正された本来の所望する入射照射量D(x)を得ることができる。
【0061】
ドーズデータ作成部52は、上述した処理をストライプ領域32が分割された処理領域毎に実施する。処理領域として、例えば、照射領域34と同じサイズとなる矩形単位領域35が用いられる。そして、ドーズデータ作成部52は、処理領域単位で画素36毎の入射照射量D(x)を定義したドーズマップを作成する。かかる画素36毎の入射照射量D(x)は、設計上、当該画素36の制御グリッド27に照射される予定の入射照射量D(x)となる。作成されたドーズマップは、例えば、記憶装置144に格納される。
【0062】
パス毎に位置ずれ補正工程(S112)として、位置ずれ補正部56は、描画パス毎に、マルチビーム20の各照射位置の個別の位置ずれを補正したドーズマップを作成する。
【0063】
まず、描画パス毎の各画素のドーズ量を定義する。具体的には以下のように動作する。位置ずれ補正部56は、例えば、記憶装置144からドーズマップを読み出し、各画素に定義されるドーズ量を描画パス数で割った描画パス毎のドーズ量を算出する。次に、描画パス毎に、各画素を照射するビームの位置ずれ補正を行う。パス毎にどのビームがどの画素を照射するのかは描画シーケンスによって決定される。
【0064】
図10は、実施の形態1における位置ずれ補正方法の一例を説明するための図である。
図10(a)の例では、座標(x,y)の画素に照射されたビームa’が-x,-y側に位置ずれを起こした場合を示している。かかる位置ずれが生じているビームa’によって形成されるパターンの位置ずれを
図10(b)のように座標(x,y)の画素に合う位置に補正するには、ずれた分の照射量を、ずれた周囲の画素の方向とは反対側の画素に分配することで補正できる。
図10(a)の例では、座標(x,y-1)の画素にずれた分の照射量は、座標(x,y+1)の画素に分配されればよい。座標(x-1,y)の画素にずれた分の照射量は、座標(x+1,y)の画素に分配されればよい。座標(x-1,y-1)の画素にずれた分の照射量は、座標(x+1,y+1)の画素に分配されればよい。
【0065】
実施の形態1では、ビームの位置ずれ量に比例して周囲の少なくとも1つの画素用のビームに照射量を分配する位置ずれ補正分配量を演算する。位置ずれ補正データ作成部52は、当該画素へのビームの位置ずれによりずれた面積の比率に応じて、当該画素へのビームの変調率と当該画素の周囲の少なくとも1つの画素へのビームの変調率とを演算する。具体的には、ビームが注目画素からずれて、ビームの一部が重なった周囲の画素毎に、ずれた分の面積(重なったビーム部分の面積)をビーム面積で割った割合を、重なった画素とは注目画素に対して反対側に位置する画素への分配量(ビームの変調率)として演算する。
【0066】
図10(a)の例において、座標(x,y-1)の画素へとずれた面積比は、(x方向ビームサイズ-(-x)方向ずれ量)×y方向ずれ量/(x方向ビームサイズ×y方向ビームサイズ)で演算できる。よって、補正のために座標(x,y+1)の画素へと分配するための分配量(ビームの変調率)Vは、(x方向ビームサイズ-(-x)方向ずれ量)×y方向ずれ量/(x方向ビームサイズ×y方向ビームサイズ)で演算できる。
【0067】
図10(a)の例において、座標(x-1,y-1)の画素へとずれた面積比は、-x方向ずれ量×-y方向ずれ量/(x方向ビームサイズ×y方向ビームサイズ)で演算できる。よって、補正のために座標(x+1,y+1)の画素へと分配するための分配量(ビームの変調率)Wは、-x方向ずれ量×-y方向ずれ量/(x方向ビームサイズ×y方向ビームサイズ)で演算できる。
【0068】
図10(a)の例において、座標(x-1,y)の画素へとずれた面積比は、-x方向ずれ量×(y方向ビームサイズ-(-y)方向ずれ量)/(x方向ビームサイズ×y方向ビームサイズ)で演算できる。よって、補正のために座標(x+1,y)の画素へと分配するための分配量(ビームの変調率)Zは、-x方向ずれ量×(y方向ビームサイズ-(-y)方向ずれ量)/(x方向ビームサイズ×y方向ビームサイズ)で演算できる。
【0069】
この結果、分配されずに残った分となる、座標(x,y)の画素のビームの変調率Uは、1-V-W-Zの演算で求めることができる。
【0070】
以上のようにして、ビームアレイ単位、言い換えれば、照射領域34に対応する試料面上の1つの矩形単位領域35内の各画素36について、当該画素へのビームの変調率と、分配先となる少なくとも1つの周囲の画素へのビームの変調率とを演算する。
【0071】
そして、位置ずれ補正部56は、描画パス毎に、各画素36について、当該画素に定義されるドーズ量に当該画素へのビームの変調率を乗じた値を算出する。また、位置ずれ補正部56は、描画パス毎に、各画素36について、当該画素に定義されるドーズ量に分配先となる少なくとも1つの周囲の画素へのビームの変調率を乗じた値を算出する。そして、算出された値を分配先の画素へと分配する。位置ずれ補正部56は、描画パス毎に、各画素36について、当該画素に定義されるドーズ量に当該画素へのビームの変調率を乗じた値と、他の画素から分配された値とを合算したドーズ量を算出する。これにより、位置ずれが補正された描画パス毎のドーズマップ(パス毎の位置ずれ補正後のドーズマップ)が作成できる。作成されたパス毎の位置ずれ補正後のドーズマップは記憶装置144に格納される。
【0072】
パス毎の欠陥ビーム位置特定工程(S120)として、特定部55は、描画パス毎にビームアレイ単位、言い換えれば、照射領域34に対応する試料面上の1つの矩形単位領域35内の各画素36について、常時ON欠陥ビームを含む過剰ドーズ欠陥ビームが照射する画素を特定する。矩形単位領域35内の各画素36の制御グリッド27をどのビームが照射するのかは、上述したように、描画シーケンスによって決まる。
【0073】
欠陥ビーム補正工程(S122)として、欠陥補正部60は、描画パス毎に、他の描画パスにて欠陥ビームが照射されることにより過剰となった過剰ドーズを減らすように補正する。
【0074】
図11は、実施の形態1における欠陥ビーム補正の一例を示す図である。
図11(a)において、例えば、4パスの多重描画(多重度=4)を行う場合を示している。かかる場合、欠陥ビームが照射されない画素では、例えば、各描画パスでのドーズ量は、各画素に照射されるドーズ量T(x)を描画パス数pass(ここでは4)で割った値T(x)/passが定義される。しかしながら、欠陥ビームが照射される画素では、このままでは過剰ドーズになってしまう。そこで、欠陥ビームが照射される描画パスでのドーズ量は制御できないので、他の描画パスで過剰ドーズ量Δを差し引いたドーズ量に補正する。
図11(b)の例では、4パスのうち1回の描画パスで欠陥ビームが照射される。かかる場合、まず、T(x)/passに対する過剰分Δを算出する。そして、正常ビームが照射される残りの3回の描画パスについて、それぞれのドーズ量T(x)/passからΔ/3を差し引いたドーズ量に補正する。
【0075】
図12は、実施の形態1における欠陥ビーム補正の他の一例を示す図である。欠陥ビームが照射される位置における設計上のドーズ量が過剰ドーズ量Δよりも小さい場合があり得る。その場合、当該画素だけでは過剰ドーズ量Δを補正することは困難である。かかる場合、過剰ドーズ量Δ、或いは欠陥ビームが照射された画素で補正しきれなかった過剰分を周辺のビームへと分配する。そこで、欠陥補正部60は、描画パス毎に、他の描画パスにて欠陥ビームが照射されることにより過剰となった過剰ドーズを周辺のビームへと分配することで補正する。
図12に示すように、欠陥ビーム11の照射位置の周囲に位置する例えば3つの照射位置39a,39c,39gに補正しきれなかった過剰分を分配する。各分配量の重心が欠陥ビーム11の照射位置になるように各分配量を算出する。算出された分配ドーズ量は、対象となる照射位置のビームのドーズ量から差し引かれることで欠陥ビームを補正できる。
【0076】
図13は、実施の形態1の比較例における処理領域内のパターン有無と、主偏向領域毎のパターン有無との一例を示す図である。
図13(a)では、多重描画の複数の描画パスのうち、1つの描画パスでの処理領域内のパターンの有無を示している。ここでは、処理領域として矩形単位領域35を用いた場合を示している。
図13(a)の例では、矩形単位領域35内に設計上のパターン12が配置される。また、当該描画パスではパターン12の近傍に欠陥ビーム11が照射される。かかる矩形単位領域35を描画する場合、上述したように、トラッキング制御毎に、主偏向領域となる矩形領域13が設定される。
図13(b)には、例えば、1回目のトラッキング制御の主偏向領域となる矩形領域13aが示されている。矩形領域13aでは、例えば、各サブ照射領域29の右から1番目の画素列が描画対象となる。
図13(b)の例では、欠陥ビーム11がかかる対象画素となる場合を示している。
図13(c)には、例えば、2回目のトラッキング制御の主偏向領域となる矩形領域13bが示されている。矩形領域13bでは、例えば、各サブ照射領域29の右から2番目の画素列が描画対象となる。
図13(c)の例では、パターン12の一部である部分パターン9aがかかる対象画素となる場合を示している。
図13(d)には、例えば、3回目のトラッキング制御の主偏向領域となる矩形領域13cが示されている。矩形領域13cでは、例えば、各サブ照射領域29の右から3番目の画素列が描画対象となる。
図13(d)の例では、パターン12の他の一部である部分パターン9bがかかる対象画素となる場合を示している。
これらの主偏向領域のうち、矩形領域13aでは、パターンが配置されない。よって、矩形領域13aの描画処理はスキップされてしまう。この場合、欠陥ビーム11が照射されないので、他の描画パスで欠陥補正を行った場合、不要な補正となってしまう。そこで、実施の形態1では、ある条件の下、かかる矩形領域13aの描画処理がスキップされないように制御する。
【0077】
欠陥近傍有限ドーズ判定工程(S130)として、有限ドーズ判定部62(ドーズ判定部)は、描画パス毎に、かつ処理領域毎に、マルチビーム20のうちドーズ量が過剰になる欠陥ビームが照射される予定の欠陥位置を含む近傍の領域にゼロではない値(有限値)のドーズ量が定義された位置が存在するかどうかを判定する。
【0078】
図14は、実施の形態1における処理領域内のパターン有無と、主偏向領域毎のパターン有無との一例を示す図である。
図14(a)では、多重描画の複数の描画パスのうち、1つの描画パスでの処理領域A内のパターンの有無を示している。ここでは、処理領域Aとして矩形単位領域35を用いた場合を示している。
図14(a)の例では、
図13(a)と同様、矩形単位領域35内に設計上のパターン12が配置される。また、当該描画パスではパターン12の近傍に欠陥ビーム11が照射される。ここで、有限ドーズ判定部62は、欠陥ビーム11が照射される予定の欠陥位置(欠陥画素)を含む近傍の領域Cにゼロではない値(有限値)のドーズ量が定義された位置(画素)が存在するかどうかを判定する。近傍の領域Cとして、欠陥ビームの照射予定画素の位置ずれを補正する補正領域を想定すると好適である。例えば、欠陥ビームの照射予定画素を中心とした半径数画素の範囲内の画素領域を想定すると好適である。或いは、欠陥ビームの照射予定画素を中心とした半径1~2ビームサイズピッチの範囲内の画素領域を想定すると好適である。ここでは近傍の領域Cとして矩形領域が示されているが、これに限るものではない。例えば円形の領域であっても好適である。また、処理領域Aの周囲に隣接する処理領域の欠陥ビームを考慮するためのマージン領域Bを設定する。マージン幅として、例えば、数画素から1~2ビームピッチに設定すると好適である。
【0079】
有限ドーズ判定部62は、欠陥ビーム11が処理領域A内にあり、かつ近傍の領域C内に設計上のゼロではない値(有限値)のドーズ量が定義される画素があるかどうかを判定する。この場合、近傍の領域C内のゼロではない値(有限値)のドーズ量が定義される画素が、マージン領域Bを超えないことが前提となる。
図14(a)の例では、欠陥ビーム11が処理領域A内にあり、かつ近傍の領域C内にパターン12の一部が配置されるので、近傍の領域C内に設計上のゼロではない値(有限値)のドーズ量が定義される画素があると判定する。近傍の領域C内のゼロではない値(有限値)のドーズ量が定義される画素が、マージン領域Bを超えないので前提も問題ない。
よって、有限ドーズ判定部62は、ゼロではない値(有限値)のドーズ量が定義される画素があると判定する。各画素のドーズ量は、記憶装置144に格納されたドーズマップに定義される値を用いる。ここで、ドーズマップとして、パス毎の位置ずれ補正後のドーズマップを用いると好適である。
【0080】
欠陥ドーズデータ作成工程(S132)として、欠陥ドーズデータ作成部64(欠陥位置ドーズデータ作成部)は、近傍の領域Cにゼロではない値(有限値)のドーズ量が定義される場合に、欠陥位置に欠陥用ドーズ量が定義された欠陥用ドーズデータを作成する。
図14(a)の例では、欠陥ビーム11が照射される位置に欠陥用ドーズデータを作成する。欠陥用ドーズ量として、例えば、各描画パスでの最大ドーズ量を設定する。各描画パスでの最大ドーズ量は、ドーズマップ(パス毎の位置ずれ補正後のドーズマップ)に定義された各画素のドーズ量の最大ドーズ量を用いれば良い。
【0081】
照射時間演算工程(S142)として、照射時間演算部66は、各画素のドーズ量に対応する照射時間tを演算する。照射時間tは、ドーズ量Dを電流密度Jで割ることで演算できる。各画素36(制御グリッド27)の照射時間tは、マルチビーム20の1ショットで照射可能な最大照射時間Ttr内の値として演算される。各画素36(制御グリッド27)の照射時間tは、最大照射時間Ttrを例えば1023階調(10ビット)とする0~1023階調の階調値データに変換する。階調化された照射時間データは記憶装置142に格納される。
【0082】
データ加工工程(S144)として、データ加工部67は、描画パス毎に、画素毎の照射時間データを主偏向領域順、かつショット順に並び替える。主偏向領域となる矩形領域13は、トラッキング偏向によるトラッキング制御ごとに設定される。
図14(a)の例を主偏向領域順に並べる場合の一部を説明する。
図14(b)には、例えば、1回目のトラッキング制御の主偏向領域となる矩形領域13aが示されている。矩形領域13aでは、例えば、各サブ照射領域29の右から1番目の画素列が描画対象となる。
図14(b)の例では、欠陥ビーム11がかかる対象画素となる場合を示している。欠陥ビーム11の位置に欠陥用ドーズデータが定義されていれば、
図14(b)に示すように欠陥用パターン17が定義された状態と同じ状態となる。
図14(c)には、
図13(c)と同様、例えば、2回目のトラッキング制御の主偏向領域となる矩形領域13bが示されている。矩形領域13bでは、例えば、各サブ照射領域29の右から2番目の画素列が描画対象となる。
図14(c)の例では、
図13(c)と同様、パターン12の一部である部分パターン9aがかかる対象画素となる場合を示している。
図14(d)には、
図13(d)と同様、例えば、3回目のトラッキング制御の主偏向領域となる矩形領域13cが示されている。矩形領域13cでは、例えば、各サブ照射領域29の右から3番目の画素列が描画対象となる。
図14(d)の例では、
図13(d)と同様、パターン12の他の一部である部分パターン9bがかかる対象画素となる場合を示している。
これらの主偏向領域のうち、矩形領域13aでは、
図13(b)に示すようにパターンが配置されない状態から、
図14(b)に示すように欠陥用パターン17が配置された状態に変更されたことになる。
【0083】
以上のように、主偏向領域毎にショット用のデータが分かれることになる。
【0084】
主偏向データNULL判定工程(S146)として、NULL判定部68(パターン有無判定部)は、マルチビーム20の照射領域34が設定される試料101面上の矩形領域13毎に、当該矩形領域13での照射予定の各位置のドーズデータを用いて、当該矩形領域13内のパターンの有無を判定する。主偏向領域となる矩形領域13の照射時間データが主偏向データとなる。主偏向データが無い状態、すなわちパターンが無い状態ではNULL(パターン無し)と判定されることになる。
図14(b)から
図14(d)では、いずれもnon-NULL(パターン有)と判定されることになる。特に、欠陥ビーム11が照射される矩形領域13aでは、設計上のパターンが無い場合でも、欠陥用ドーズデータが定義されるので描画処理はスキップされないことになる。
【0085】
描画工程(S150)として、描画機構150は、パターン無と判定された矩形領域13の描画処理をスキップして次のパターン有の矩形領域13へと描画処理を行う矩形領域13を移動させると共に、多重描画の複数の描画パスのいずれかの描画パスにおける欠陥ビーム11に起因する過剰ドーズを他の描画パスで補正しながら、マルチビーム20を用いて、試料101にパターンを描画する。
図14の例では、例えば、1回目の描画パスにおいて、欠陥ビーム11が2回目の描画パスで照射されることを前提に欠陥補正を行った場合でも、2回目の描画パスにおいて、スキップされずに欠陥ビーム11が照射される。よって、1回目の描画パスでの欠陥補正を有効に機能させることができる。同様に、例えば、2回目の描画パスにおいて、欠陥ビーム11が1回目の描画パスで照射されることを前提に欠陥補正を行った場合でも、1回目の描画パスにおいて、スキップされずに欠陥ビーム11が照射される。よって、2回目の描画パスでの欠陥補正を有効に機能させることができる。
【0086】
以上のように、実施の形態1によれば、マルチビーム描画において、欠陥ビーム11による過剰ドーズの補正を多重描画の描画パス間を跨いで行う場合に不要な欠陥補正を回避できる。
【0087】
実施の形態2.
実施の形態1では、欠陥ビームの照射位置に欠陥用ドーズデータを作成することにより、主偏向データNULL判定工程(S146)にて、パターンが無い矩形領域13においてもパターン有と判定させる場合を説明した。実施の形態2では、その他の構成について説明する。実施の形態2における描画装置の構成は
図1と同様である。実施の形態2における描画方法の要部工程を示しフローチャート図は、
図8と同様である。以下、特に説明の無い点は実施の形態1と同様である。
【0088】
実施の形態2における主偏向データNULL判定工程(S146)では、NULL判定部68(パターン有無判定部)は、パターン有無にかかわらず、各矩形領域13においてnon-NULL(パターン有)と判定する。その他の点は実施の形態1と同様である。
【0089】
実施の形態2では、欠陥近傍有限ドーズ判定工程(S130)と、欠陥ドーズデータ作成工程(S132)と、を省略しても構わない。かかる場合、有限ドーズ判定部62、及び欠陥ドーズデータ作成部64を省略しても構わない。
【0090】
これにより、スキップされる矩形領域13は無くなるものの、欠陥ビーム11が照射されない状態を回避できる。よって、すべての欠陥補正を有効に機能させることができる。
【0091】
実施の形態3.
図15は、実施の形態3における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図15において、主偏向データNULL判定工程(S146)での判定結果が記憶装置に格納される点、及び主偏向データNULL判定工程(S146)での判定結果がフィードバックされる点、以外は、
図8と同様である。
【0092】
また、実施の形態3における描画装置の構成は
図1と同様である。但し、実施の形態3では、有限ドーズ判定部62、及び欠陥ドーズデータ作成部64を省略しても構わない。以下、特に説明の無い点は実施の形態1と同様である。
【0093】
実施の形態3では、主偏向データNULL判定工程(S146)での判定結果が記憶装置144に格納される。
【0094】
よって、欠陥ビーム補正工程(S122)において、欠陥補正部60は、多重描画の複数の描画パスの2回目以降の描画パスでは、先行するパスでの矩形領域毎の主偏向データNULL判定工程(S146)でのパターンの有無の判定結果に基づいて、当該パスで、欠陥ビーム11に起因する過剰ドーズを補正するかどうかを決定する。例えば、1回目の描画パスで欠陥ビームが照射されたかどうかは、主偏向データNULL判定工程(S146)でのパターンの有無の判定結果でわかる。よって、例えば、2回目の描画パスでは、かかる判定結果に基づいて、1回目の描画パスで欠陥ビームが照射された場合には欠陥補正を行い、欠陥ビームが照射されていない場合には欠陥補正を行わない。これにより、不要な欠陥補正を回避できる。
【0095】
実施の形態4.
図16は、実施の形態4における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図16において、ビーム位置ずれ量測定工程(S102)から主偏向データNULL判定工程(S146)までのすべての描画パスでの各工程を、1回目の描画パスの描画処理を開始する前の前処理として行う点以外は、
図15と同様である。よって、主偏向データNULL判定工程(S146)での判定結果が記憶装置144に格納される点、及び主偏向データNULL判定工程(S146)での判定結果がフィードバックされる点は、実施の形態3と同様である。
【0096】
また、実施の形態4における描画装置の構成は
図1と同様である。但し、実施の形態4では、有限ドーズ判定部62、及び欠陥ドーズデータ作成部64を省略しても構わない。以下、特に説明の無い点は実施の形態1と同様である。
【0097】
実施の形態4では、1回目の描画パスの描画処理を開始する前の前処理として、ビーム位置ずれ量測定工程(S102)から主偏向データNULL判定工程(S146)までのすべての描画パスでの各工程を実施する。よって、矩形領域13毎のパターンの有無の判定は、描画処理を開始する前の前処理として実施される。
【0098】
これにより、欠陥ビーム補正工程(S122)において、欠陥補正部60は、描画パス毎に、他の描画パスで欠陥ビームが照射されたか否かが、主偏向データNULL判定工程(S146)でのパターンの有無の判定結果でわかる。よって、欠陥補正部60は、主偏向データNULL判定工程(S146)でのパターンの有無の判定結果を用いて、当該パスで、欠陥ビーム11に起因する過剰ドーズを補正するかどうかを決定する。実施の形態4では、1回目の描画パスの描画処理を開始する前に全描画パスでの主偏向データNULL判定工程(S146)でのパターンの有無の判定結果が揃う。よって、実施の形態4では、さらに、後に行う描画パスで欠陥ビームが照射されるか否かも判断できる。そのため、例えば、1回目の描画パスにおいて、2回目の描画パスで照射される予定の欠陥ビームの補正を行うかどうかを決定できる。
【0099】
実施の形態5.
図17は、実施の形態5における描画装置の構成を示す概念図である。
図17において、制御計算機110内に、さらに、判定部61が追加された点以外は
図1と同様である。ラスタライズ部50、ドーズデータ作成部52、ビーム位置ずれマップ作成部54、位置ずれ補正部56、検出部57、特定部58、欠陥補正部60、判定部61、有限ドーズ判定部62、欠陥ドーズデータ作成部64、照射時間演算部66、データ加工部67、NULL判定部68、及び描画制御部74といった各「~部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。ラスタライズ部50、ドーズデータ作成部52、ビーム位置ずれマップ作成部54、位置ずれ補正部56、検出部57、特定部58、欠陥補正部60、判定部61、有限ドーズ判定部62、欠陥ドーズデータ作成部64、照射時間演算部66、データ加工部67、NULL判定部68、及び描画制御部74に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。
【0100】
図18は、実施の形態5における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図17において、欠陥近傍有限ドーズ判定工程(S130)の前に判定工程(S128)を追加した点以外は、
図8と同様である。
【0101】
また、以下、特に説明する点以外の内容は実施の形態1と同様である。
【0102】
ビーム位置ずれ量測定工程(S102)と、欠陥ビーム検出工程(S104)と、ドーズ量演算工程(S110)と、パス毎の位置ずれ補正工程(S112)と、パス毎の欠陥ビーム位置特定工程(S120)と、欠陥ビーム補正工程(S122)と、の各工程の内容は実施の形態1と同様である。
【0103】
判定工程(S128)として、判定部61は、ゼロのドーズ量のみが定義される領域の大きさが閾値以下かどうかを判定する。具体的には、判定部61は、パス毎の位置ずれ補正後ドーズデータを参照して、ゼロのドーズ量のみが定義される領域の大きさが、矩形領域の1/n或いはn倍以下かどうかを判定する。nは自然数である。ゼロのドーズ量のみが定義される領域の大きさが閾値以下でなければ欠陥近傍有限ドーズ判定工程(S130)に進む。ゼロのドーズ量のみが定義される領域の大きさが閾値以下であれば、欠陥近傍有限ドーズ判定工程(S130)と欠陥ドーズデータ作成工程(S132)とをスキップして、照射時間演算工程(S142)に進む。言い換えれば、ある程度の大きさのパターンの無の領域についてだけ欠陥近傍有限ドーズ判定工程(S130)と欠陥ドーズデータ作成工程(S132)とを行う。
【0104】
欠陥近傍有限ドーズ判定工程(S130)以降の各工程の内容は実施の形態1と同様である。なお、欠陥近傍有限ドーズ判定工程(S130)と欠陥ドーズデータ作成工程(S132)とをスキップする場合には、主偏向データNULL判定工程(S146)において、常にnon-NULL(パターン有)と判定するように構成すると好適である。
【0105】
以上のように、パターンの無の領域のうち、小さい領域についてはスキップすることで、描画処理時間の短縮に繋げることができる。
【0106】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。上述した例では、1ショット分の最大照射時間Ttr内で、マルチビーム20の各ビームが照射時間をビーム毎に個別に制御する場合について説明した。しかし、これに限るものではない。例えば、1ショット分の最大照射時間Ttrを照射時間の異なる複数のサブショットに分割する。そして、各ビームに対して、それぞれ複数のサブショットの中から1ショット分の照射時間になるようにサブショットの組合せを選択する。そして、選択されたサブショットの組合せが同じ画素に対して連続して同じビームで照射されることにより、ビーム毎に1ショット分の照射時間を制御するようにしても好適である。
【0107】
また、上述した例では、各制御回路41の制御用に10ビットの制御信号が入力される場合を示したが、ビット数は、適宜設定すればよい。例えば、2ビット、或いは3ビット~9ビットの制御信号を用いてもよい。なお、11ビット以上の制御信号を用いてもよい。
【0108】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0109】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマルチ荷電粒子ビーム描画装置及びマルチ荷電粒子ビーム描画方法は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0110】
9 部分パターン
11 欠陥ビーム
12 パターン
13 矩形領域
20 マルチビーム
22 穴
24 制御電極
25 通過孔
26 対向電極
27 制御グリッド
28 画素
29 サブ照射領域
30 描画領域
32 ストライプ領域
31 基板
33 支持台
34 照射領域
35 矩形単位領域
36 画素
39 照射位置
41 制御回路
50 ラスタライズ部
52 ドーズデータ作成部
54 ビーム位置ずれマップ作成部
56 位置ずれ補正部
57 検出部
58 特定部
60 欠陥補正部
61 判定部
62 有限ドーズ判定部
64 欠陥ドーズデータ作成部
66 照射時間演算部
67 データ加工部
68 NULL判定部
74 描画制御部
100 描画装置
101 試料
102 電子鏡筒
103 描画室
105 XYステージ
106 ファラディーカップ
110 制御計算機
112 メモリ
130 偏向制御回路
132,134,136 DACアンプユニット
139 ステージ位置検出器
140,142,144 記憶装置
150 描画機構
160 制御系回路
200 電子ビーム
201 電子銃
202 照明レンズ
203 成形アパーチャアレイ基板
204 ブランキングアパーチャアレイ機構
205 縮小レンズ
206 制限アパーチャ基板
207 対物レンズ
208,209 偏向器
210 ミラー
212 一括ブランキング偏向器
330 メンブレン領域
332 外周領域