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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131124
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】表面形状計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/25 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
G01B11/25 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026518
(22)【出願日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2022035741
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】511100693
【氏名又は名称】株式会社三松
(71)【出願人】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100166545
【弁理士】
【氏名又は名称】折坂 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】田名部 徹朗
(72)【発明者】
【氏名】西尾 昭
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 俊幸
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA53
2F065AA54
2F065BB16
2F065FF04
2F065HH05
2F065MM04
2F065PP13
2F065PP25
2F065QQ25
2F065QQ31
2F065RR08
(57)【要約】
【課題】いわゆる回転体または略回転体からなる被計測物の表面形状を速やかにかつ正確に計測可能とする。
【解決手段】本発明の表面形状計測装置は、回転体または略回転体からなる被計測物における計測面の三次元形状を光切断法により計測する表面形状計測装置であって、載置された被計測物を円周方向に回転させる回転テーブルと、回転テーブルの回転角に応じた信号を順次出力するエンコーダと、計測面に帯状光またはライン状光を照射し、回転テーブルが回転することで計測面を移動する、帯状光またはライン状光による光切断線を、エンコーダからの信号の出力をトリガに順次撮像して、複数の光切断線画像データを取得する光切断センサと、それぞれの光切断線画像データを、対応する回転角に従い順次配列することで、計測面の表面形状を示す画像を生成する画像処理部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体からなる被計測物における計測面の三次元表面形状を光切断法により計測する表面形状計測装置であって、
載置された前記被計測物を円周方向に回転させる回転テーブルと、
前記回転テーブルの回転角に応じた信号を順次出力するエンコーダと、
前記計測面に帯状光またはライン状光を照射し、前記回転テーブルが回転することで前記計測面を移動する、前記帯状光またはライン状光により生じた光切断線を、前記エンコーダからの前記信号の出力をトリガに順次撮像して、前記回転角ごとの光切断線画像データを取得する光切断センサと、
それぞれの前記光切断線画像データを、対応する前記回転角に従い順次配列することで、前記計測面の表面形状を示す三次元画像を生成する画像処理部と、
を備える表面形状計測装置。
【請求項2】
前記光切断センサは、前記計測面が底面のときには前記被計測物の径方向の帯状光またはライン状光を前記底面に照射することを特徴とする請求項1に記載の表面形状計測装置。
【請求項3】
前記光切断センサは、前記計測面が側面のときには前記被計測物の高さ方向の帯状光またはライン状光を前記側面に照射することを特徴とする請求項1に記載の表面形状計測装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、それぞれの前記光切断線画像データを、対応する前記回転角に従い順次配列するに際し、前記回転テーブルの回転中心と前記被計測物の中心軸とのずれに基づく規則性に従い補正して配列することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表面形状計測装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、前記計測面が底面である前記回転角ごとの光切断線画像データと、前記計測面が側面である前記回転角ごとの光切断線画像データと、から前記底面の表面形状と前記側面の表面形状とが連続的に表現された前記被計測物の立体画像を生成することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表面形状計測装置。
【請求項6】
多関節アームを有し、その先端に前記光切断センサが装着されるロボットと、
指示入力により、前記ロボットに前記光切断センサを前記光切断線画像データの取得位置に移動させる制御部と、
を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表面形状計測装置。
【請求項7】
前記ロボットにより前記光切断センサを移動させて、2以上の前記取得位置における前記回転角ごとの光切断線画像データを、共通の座標系で取得することを特徴とする請求項6に記載の表面形状計測装置。
【請求項8】
前記画像処理部は、計測した前記被計測物の計測面の三次元表面形状から所定の基準形状を差し引くことにより、前記被計測物の計測面に設けられた凹凸を抽出し、抽出した前記凹凸により描かれた文字および/または図形を認識することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表面形状計測装置。
【請求項9】
前記画像処理部は、
計測した前記被計測物の計測面の三次元表面形状から、被計測物を前記回転テーブルの上方から見た平面画像を生成し、
生成した前記平面画像について、前記被計測物の中央部から周縁部に向かう半径方向ついて、所定の中心角刻みで全周に亘りエッジを検出し、
隣接するエッジ間の距離の総和を算出して、当該総和を前記被計測物におけるエッジが検出された部分の周長とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表面形状計測装置。
【請求項10】
前記画像処理部は、
計測した前記被計測物の計測面の三次元表面形状から、円筒座標系の周方向の所定ステップ毎に、被計測物の中心を通る複数の断面プロファイルを取得し、
取得した前記断面プロファイルのそれぞれについて着目する高さ範囲における径方向の最小値および/または最大値を求め、
全ての前記断面プロファイルにおける最小値の中で最小のものを着目する外径または内径における最小値とし、
全ての前記断面プロファイルにおける最大値の中で最大のものを着目する外径または内径における最大値とすることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の表面形状計測装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円柱形、ドーナツ形等、回転軸を中心に平面図形を回転させてできる立体形状、いわゆる回転体または略回転体からなる被計測物の表面形状を計測する表面形状計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、タイヤなどの表面形状を計測する様々な装置が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-104913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の計測装置は、ポイントレーザを使用しているため、主走査と副走査を繰り返す必要があり計測に時間を要する。
【0005】
本発明の目的は、円柱形、ドーナツ形等、回転軸を中心に平面図形を回転させてできる立体形状、いわゆる回転体または略回転体からなる被計測物の表面形状を速やかにかつ正確に計測可能な表面形状計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の少なくとも幾つかの実施形態に係る表面形状計測装置は、回転体または略回転体からなる被計測物における計測面の三次元形状を光切断法により計測する表面形状計測装置であって、載置された被計測物を円周方向に回転させる回転テーブルと、回転テーブルの回転角に応じた信号を順次出力するエンコーダと、計測面に帯状光またはライン状光を照射し、回転テーブルが回転することで計測面を移動する、帯状光またはライン状光により生じた光切断線を、エンコーダからの信号の出力をトリガに順次撮像して、回転角ごとの光切断線画像データを取得する光切断センサと、それぞれの光切断線画像データを、対応する回転角に従い順次配列することで、計測面の表面形状を示す画像を生成する画像処理部と、を備える。なお、本願において、回転体とは、回転軸を中心に平面図形を回転させてできる立体形状を意味する。また、略回転体とは、概ね回転体と見なせる程度に回転体に近似した立体形状を意味する。
【0007】
このように構成した表面形状計測装置によれば、帯状光またはライン状光により計測面を走査しつつ光切断法による計測を行うため、速やかにかつ正確に表面形状を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の表面形状計測装置100の構成を示す図である。
図2】本発明の表面形状計測装置100の機能ブロック図である。
図3】回転テーブル110の中心を制御部160に認識させる方法を説明する図である。
図4】底面Wbを計測面とするときの被計測物Wに対する光切断センサ130の配置状態の一例を示す図である。
図5】側面Wsを計測面とするときの被計測物Wに対する光切断センサ130の配置状態の一例を示す図である。
図6】複数の光切断線画像B及びこれらに基づき生成された計測面の表面形状を示す画像の一例を示す図である。
図7】底面の光切断線画像データと側面の光切断線画像データに基づき生成された立体画像の一例を示す図である。
図8】計測した被計測物Wの立体形状から被計測物Wの表面の凹凸のデータを抽出する手法を模式的に示す図である。
図9】凹凸データから文字や図形を認識する手順の一例を示すフローチャートである。
図10】回転テーブル110上への被計測物Wの一例を示す模式図である。
図11】画像処理部140が生成した平面画像IMGの一例を示す図である。
図12】内径や外径が高さに応じて変化する被計測物Wの一例を示す図である。図12(a)は斜視図であり、図12(b)は被計測物Wの中心を通る断面図である。
図13】内径および/または外径の最大値および/または最小値を計測する手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明及び図面では、同一の機能部には同一の符号を付し、一度説明した機能部については説明を省略するか、必要な範囲で説明する。
【0010】
本発明の表面形状計測装置100の構成を図1に、機能ブロック図を図2に、それぞれ示す。
【0011】
表面形状計測装置100は、回転テーブル110、エンコーダ120、光切断センサ130、及び画像処理部140を備える。
【0012】
回転テーブル110は、載置された被計測物Wを、円周方向に回転させるテーブルである。被計測物Wは、円柱形、ドーナツ形等、回転軸を中心に平面図形を回転させてできる立体形状である、いわゆる回転体または略回転体からなる。載置される被計測物Wは、2つの底面のいずれかを接触面として回転テーブル110に載置される。具体的には、計測面がいずれか一方の底面であるとき、他方の底面を接触面として載置され、計測面が側面であるとき、任意の底面を接触面として載置される。
【0013】
回転テーブル110を回転可能とする構成は、載置された被計測物Wを円周方向に回転させることができれば任意である。例えば図1に示すように、下部にキャスターが付いた回転テーブル110を台座111上に載置して、台座111上で回転させる構成としてもよい。回転の動力は、モータ112により与えてもよいし、人力により与えてもよい。モータ112を採用する場合、正確な位置決めの観点から、例えばサーボモータを採用してもよい。
【0014】
エンコーダ120は、例えばロータリーエンコーダであり、回転テーブル110の回転角に応じ、例えば0.1度の回転につき1パルス、1回転で3600パルスを発生する構成としてもよい。
【0015】
光切断センサ130は、計測面が底面のときには被計測物Wの径方向の帯状光またはライン状光を底面に照射し、計測面が側面のときには被計測物の高さ方向の帯状光またはライン状光を側面に照射する。帯状光またはライン状光を照射することで計測面には帯方向に光切断線が生じ、光切断線は回転テーブル110が回転することで計測面を相対的に移動する。光切断センサ130は、この光切断線を、エンコーダ120からの信号の出力をトリガに順次撮像して、回転角ごとの光切断線画像データを取得する。光切断線画像データは、光切断線の範囲における被計測物Wの断面形状を示す複数の点データからなり、それぞれの点データは、光切断線方向の点位置における断面の高さの情報を有する。すなわち、光切断線画像データは二次元点群データである。
【0016】
光切断センサ130は、帯状のレーザー光を放射する光源と、帯状光またはライン状光により計測面に生じた光切断線を撮像する受光素子と、を備え、三角測距の原理で生成された計測面の形状プロファイルを光切断線画像データとして取得する。このように光切断法による計測方式を採用することで、例えばタイヤのように単色であるが故に二次元カメラでは判別し難い、欠陥を示す凹凸と文字や模様等の意図的に形成した凸部との判別が可能となる。
【0017】
光切断センサ130を、任意の大きさの被計測物Wにおける、任意の計測面の光切断線画像の取得位置に配置するため、例えば、多関節アームを有するロボット150の多関節アームの先端に光切断センサ130を装着してもよい。ロボット150としては、正確な位置制御の観点から、例えば産業用ロボットを採用してもよい。
【0018】
ロボット150に装着された光切断センサ130の使用に際しては、ロボット150を制御する制御部160に、回転テーブル110の位置を予め認識させておく。例えば、回転テーブル110の中心を交点に直交するX軸とY軸が予め特定されているとき、まず図3(a)に示すように、光源から放射される帯状光またはライン状光がY軸上に照射される位置に光切断センサ130を移動させることでX=0の位置を制御部160に認識させ、続いて図3(b)に示すように、光源から放射される帯状光またはライン状光がX軸上に照射される位置に光切断センサ130を移動させることでY=0の位置を、制御部160に認識させる。これにより、回転テーブル110の中心を基準に、指定した位置に光切断センサ130を容易にかつ正確に移動させることができる。そのため、制御部160に、被計測物Wの任意の計測面の光切断線画像データの取得位置を移動先として指示入力することで、光切断センサ130を、光切断線画像データの取得位置に容易にかつ正確に移動させ、配置することができる。なお、制御部160に特定の位置を指示入力することなく、ロボット150をマニュアル動作させて光切断センサ130を任意の位置に移動させてもよい。この場合、移動位置は、回転テーブル110の中心を基準として制御部160が認識可能であるため、画像処理部140などにおいて必要に応じ取得して利用することが可能である。
【0019】
図4は、被計測物Wの底面Wbを計測面とするときの被計測物Wに対する光切断センサ130の配置状態の一例を示す図である。被計測物Wがタイヤの場合、底面Wbはサイドウォール面にあたる。また、図5は、被計測物Wの側面Wsを計測面とするときの被計測物Wに対する光切断センサ130の配置状態の一例を示す図である。被計測物Wがタイヤの場合、側面Wsはトレッド面にあたる。光切断センサ130をロボット150に装着することで、このような任意の配置状態を容易にかつ正確に形成することができる。そして、このように光切断センサ130を配置した上で、光切断センサ130を起動し、回転テーブル110を回転させることで、エンコーダ120から信号が入力される都度、計測面の光切断線画像データを順次取得することができる。取得されるそれぞれの光切断線画像データは、帯状の範囲における凹凸の情報を含んでいる。
【0020】
画像処理部140は、光切断センサ130において取得された、それぞれの光切断線画像データを収集し、対応する回転角に従い順次配列することで、計測面の表面形状を示す画像を生成する。また、画像処理部140は生成した画像をもとに、画像内に写る被計測物Wの各部の寸法を算出する等の処理を行ってもよい。
【0021】
光切断センサ130において回転角ごとに順次取得された光切断線画像データをそれぞれ画像化すると、図6(a)に示すように、回転角ごとの複数の光切断線画像Bが得られる。計測面が底面の場合、このような回転角ごとの光切断線画像Bを同一の径位置に一周分配列することで、底面の表面形状を示す三次元画像を生成することができる。また、計測面が側面の場合、高さ方向に帯状の光切断線画像Bを、半径が被計測物Wの円周に沿って一周分配列することで、側面の表面形状を示す三次元画像を生成することができる。
【0022】
計測面の表面形状を示す三次元画像は、実際には次のように生成する。光切断センサ130により取得されるそれぞれの光切断線画像データは被計測物Wの断面形状を示す二次元点群データであるが、画像処理部140において、エンコーダ120から回転角に応じ出力される信号をトリガに取得された光切断線画像データに当該トリガとなった信号に対応する回転角の情報を三次元目の情報として付加することで、三次元点群データとすることができる。このように三次元点群データ化したそれぞれの光切断線画像データを三次元配列することで、被計測物Wの計測面の表面形状を示す三次元画像を生成することができる。
【0023】
計測面が底面の場合、光切断センサ130により取得されるそれぞれの光切断線画像データである点群データは、光切断線方向である被計測物Wの径方向の点位置の座標rと、座標rにおける断面の高さを示す被計測物Wの高さ方向の座標zと、を要素とする二次元点群データであり、これにそれぞれの光切断線画像データに対応する回転角θを座標rの回転角として付加することで、三次元点群データとすることができる。また、計測面が側面の場合、光切断センサ130により取得されるそれぞれの光切断線画像データである点群データは、光切断線方向である被計測物Wの高さ方向の点位置の座標zと、座標zにおける断面の高さを示す、被計測物Wの径方向の座標rと、からなる二次元点群データであり、これにそれぞれの光切断線画像データに対応する回転角θを座標rの回転角として付加することで、三次元点群データとすることができる。
【0024】
計測面の表面形状を示す三次元画像において、計測面の凹凸の表現方法は任意であり、例えば、立体的に表現してもよいし、色の相違や濃淡などにより表現してもよい。図6(b)は、タイヤの側面の表面形状を示す三次元画像の一例である。
【0025】
画像処理部140は、底面の回転角ごとの光切断線画像データと側面の回転角ごとの光切断線画像データの双方が取得されている場合に、両データから底面の表面形状と側面の表面形状とが連続的に表現された被計測物Wの立体画像を生成してもよい。
【0026】
底面の回転角ごとの光切断線画像データに基づく底面の三次元点群データと、側面の回転角ごとの光切断線画像データに基づく側面の三次元点群データの、それぞれを構成する各点データはいずれも、被計測物Wの径方向の座標r、座標rの回転角θ及び被計測物Wの高さ方向の座標zを要素とする。そのため、底面の三次元点群データの座標系と、側面の三次元点群データの座標系を合わせることで、底面の表面形状と側面の表面形状とが連続的に表現された被計測物Wの立体画像を生成することができる。底面のデータと側面のデータを異なる座標系で取得し、換算などにより座標系を合わせてもよいが、同じ座標系で取得した方が、速やかにかつ精度よく立体画像を生成することができる。例えば、アームの先端に光切断センサ130が装着されたロボット150を用い、既述のように回転テーブル110の中心を基準として設定された座標系の下で、底面の回転角ごとの光切断線画像データと側面の回転角ごとの光切断線画像データをそれぞれ取得することで、座標系が合ったデータを容易に得ることができる。
【0027】
生成された立体画像の一例を図7(a)に示す。図7(b)に示すように回転させて観察することも可能である。このように立体画像を生成することで、被計測物Wの表面形状を設計時のCAD図面における表面形状と速やかに照合することが可能となる。
【0028】
画像処理部140は、立体画像を生成する場合以外、例えば、被計測物Wの底面の半径、又は被計測物Wの高さが、光切断線の幅より広い場合においても、光切断センサ130の位置を2以上の箇所に移動させ、それぞれの箇所において光切断センサ130を静止させた状態で回転角ごとの光切断線画像データに基づく三次元点群データを取得してもよい。光切断センサ130の2以上の静止箇所のそれぞれにおいて収集した三次元点群データの座標系を合わせることで、例えば、サイズが大きい被計測物Wの計測面の表面形状を連続的に表現することができる。それぞれの箇所におけるデータを異なる座標系で取得し、換算などにより座標系を合わせてもよいが、同じ座標系で取得した方が、速やかにかつ精度よく立体画像を生成することができる。例えば、アームの先端に光切断センサ130が装着されたロボット150を用い、既述のように回転テーブル110の中心を基準として設定された座標系の下で、光切断センサ130の2以上の静止箇所のそれぞれにおいて、回転角ごとの光切断線画像データを取得することで、座標系が合ったデータを容易に得ることができる。
【0029】
なお、光切断センサ130における光切断線画像データの取得に際し、回転テーブル110の回転中心と載置された被計測物Wの中心軸とが僅かでもずれていると、計測面が底面のときには、回転テーブル110が一周する間に光切断センサ130が計測面上を相対的に移動する軌道が、半径方向に正弦的にずれることになる。しかし、ずれた軌道においても、光切断センサ130の検出範囲内であれば、それぞれの回転角における光切断線画像データは取得できる。ただし、非接触センサである光切断センサ130の受光部においてはレンズが使用され、レンズは中央部分の歪みが最も少なく、周辺に向かって歪みが大きくなる。そのため、できるだけセンサによる検出範囲の中央に二次元プロファイルの像が来るように光切断センサ130の位置を調整すると共に被測定物Wの中心軸が回転テーブル110の回転中心とできるだけ一致するように被測定物Wの載置された位置を調整することで、最も精度のよい画像が得られる。
【0030】
回転テーブル110の回転中心と載置された被計測物Wの中心軸とのずれによる軌道のずれは、回転角に応じ規則的(正弦的)に変化する。そこで、画像処理部140で、それぞれの光切断線画像データを対応する回転角に従い順次配列するに際し、回転角に応じたこのような変化の規則性に従い、それぞれの光切断線画像データを補正した上で配列してもよい。これにより、被計測物Wの3D設計データと中心軸を一致させて設計値照合を行い、形状評価が容易にできるようになる。
【0031】
なお、補正の契機となる回転テーブル110の回転中心と載置された被計測物Wの中心軸との間のずれの発生は、画像処理部140で一旦画像を生成してオペレータが確認することにより認識してもよいし、画像処理部140が取得した回転角ごとの光切断線画像データに基づき自動的に認識してもよい。ずれの発生が認識された場合、補正はオペレータが指示入力することにより実行してもよいし、画像処理部140が最小二乗法等によりずれ量を算出して自動的に実行してもよい。
【0032】
画像処理部140と制御部160は、それぞれ専用の機能部を設けてもよいが、コンピュータ170により実現してもよい。コンピュータ170は、記憶部171、入力部172、CPU173、図示しない表示部及び図示しない外部インタフェースを少なくとも備えるコンピュータであり、例えばパーソナルコンピュータが挙げられる。
【0033】
コンピュータ170は、任意の外部インタフェースを介して、モータ112、エンコーダ120、光切断センサ130及びロボット150と通信可能に接続される。
【0034】
記憶部171は、画像処理部140の機能が記述されたプログラム及び制御部160の機能が記述されたプログラムが予め記憶されるとともに、光切断センサ130で取得された光切断線画像データや画像処理部140における処理結果などが記憶される任意の記憶媒体である。記憶部171はコンピュータ170の外部に設けて、外部インタフェースを介して通信可能に接続してもよい。
【0035】
入力部172は、オペレータからの指示等の入力を受け付けるマウスやキーボードなどの入力インタフェースである。オペレータが入力部172からプログラムの起動指示を入力することで、記憶部171からプログラムが演算処理装置であるCPU173に読み込まれ、プログラムが実行される。オペレータが、プログラムの実行により表示部に表示された画面インタフェースを介して指示内容等を入力し、入力内容に従ったプログラム内容がCPU173で実行されることで、画像処理部140や制御部160の機能が実現される。
【0036】
なお、コンピュータ170により更にモータ112やエンコーダ120を制御可能に構成してもよい。
【0037】
以上説明した表面形状計測装置100によれば、帯状光またはライン状光により計測面を走査しつつ光切断法による計測を行うため、速やかにかつ正確に表面形状を計測することができる。また、三次元の計測データからコンピュータ内部に被計測物Wの三次元モデルを構築して、この三次元モデルに基づいて画面に3Dのコンピュータグラフィックにより計測を表示することで、画面上で素早く見る方向を変えたり、拡大表示したり、特定の位置を指定して寸法を表示させて確認したりすることが可能となる。これにより、目視で行っていた寸法確認や、表面形状および表面性状の検査の効率を向上することができる。
【0038】
続いて、上記のようにして得た被計測物Wの表面形状データおよび立体画像に対する処理について説明する。以下で説明する処理は、例えばコンピュータ170により(より具体的には、画像処理部140により)実施するとよい。
【0039】
(文字・図形の認識・照合)
被計測物Wの表面に凸部(エンボス)あるいは凹部(デボス・刻印)として文字や図形が描かれることがある。これらの文字や図形は、被計測物Wの装飾として設けられる他、品番、製造番号等の製造情報の表示として設けられることもある。被計測物Wにおいては、被計測物Wの識別、良否判定等の目的で、凹部および/または凸部(以下、単に、凹凸という)として描かれた文字や図形を抽出し認識することが求められることがある。
【0040】
図8に模式的に示すように、被計測物Wの表面の凹凸は、計測した立体形状と、被計測物Wに凹凸が設けられない場合の形状(以下基準形状という)との差分として抽出することができる。このようにして凹凸を抽出して生成した画像に対して文字や画像を認識する処理を実施する。
【0041】
例えば、被計測物Wがタイヤであり、タイヤのサイドウォール(つまり、円柱形の被計測物Wにおける底面)に凸部として描かれた文字・図形を認識する場面を想定する。この場合、サイドウォールに凸部が設けられない(滑らかな表面の)タイヤの形状が基準形状となる。計測した被計測物Wの立体形状から差し引く基準形状の座標データ(以下、基準形状データという)は、計測した被計測物Wの立体形状のデータに対してフィルタ、点群最適化、曲率変換等の処理を行うことにより、凹凸を除去したデータを自点群から出力するようにするとよい。あるいは、被計測物Wの設計データ等に基づいて基準形状データを予め準備してもよい。基準形状データは、計測によって得られる三次元点群データと同様、円筒座標系(r,θ,z)で表すとよい。
【0042】
計測して得た被計測物Wの立体形状と基準形状データとを位置合わせした上で、r-θ平面(回転テーブルの載置面と平行な面)における各座標位置での被計測物Wの計測で得た座標zと基準形状データの座標zとの差分を求めることで、被計測物Wの底面に設けられた凸部を抽出することができる。以下ではこのようにして抽出したデータを凹凸データと呼ぶ。なお、文字や図形が凹部として形成されている場合にも、同様の手法により凹部を抽出することができることは言うまでもない。
【0043】
なお、被計測物Wにおいて凹凸が回転テーブルの載置面と平行となる面とは異なる部分に形成される場合には、凹凸が突出または陥没する方向についての差分を求めることで凹凸を抽出するとよい。例えば、被計測物Wにおいて凹凸が円柱形の側面に形成される場合には、座標r(すなわち被計測物Wの表面の径方向の座標)についての差分を求めることで凹凸を抽出することができる。
【0044】
立体画像を取得したときの被計測物Wは、設計時に想定した形状と比べ変形している場合がある。例えば、被計測物Wがタイヤである場合、設計時に想定されるタイヤの立体形状はホイールに装着され所定の内圧が加わった状態の形状である。これに対し、ホイールに装着されておらず内圧も加わっていない状態でタイヤの計測を行うと、タイヤのビード部(ホイールのリムと接する部分)やタイヤウォールは、自重等によって変形していることがある。被計測物Wの凹凸を抽出するために用いる基準形状データを設計データ等に基づいて予め準備する場合には、計測時の被計測物Wの変形を加味して、同様に変形させた形状のデータを基準形状データとすることが好ましい。
【0045】
凹凸データから文字や図形を認識する手法は任意である。以下、図9に示すフローチャートを参照しつつ、その一例を説明する。
初めに、基準形状の表面を基準とする凹凸量を示している凹凸データを、凹凸量に応じた画素値を有する凹凸二次元画像に変換する(S01)。この凹凸二次元画像には、被計測物Wに凹凸として描かれている文字や図形が含まれているが、画像内に写る角度は計測時に被計測物Wを回転テーブル110に配置したときの角度に依存しており一定ではない。そこで、凹凸二次元画像に写る被計測物Wの中から、所定の基準形状を認識する(S02)。続いて、凹凸二次元画像に写る被計測物Wの中で基準形状が所定の位置に位置するように、凹凸二次元画像を回転させる(S03)。このように凹凸二次元画像を回転させることで、凹凸二次元画像に写る被計測物Wの向き(角度)を、基準となる向き(角度)に揃えることができる。続いて、基準となる角度となるよう回転させた凹凸二次元画像に対し、任意の手法により文字認識や図形照合を実施する(S04)。
【0046】
例えば、文字認識は、OCR(光学的文字認識、Optical Character Recognition)により行うことができる。OCRによる処理の効率を高めるべく、基準となる角度となるよう回転させた凹凸二次元画像において、OCRを行う範囲、当該範囲において文字が表記される角度、文字のサイズ等を予め指定することが好ましい。認識された文字列は、例えば、予め定められた文字列と比較・照合する、記憶部171に記憶された被計測物Wの計測データに紐づける等、後段の処理において利用することができる。
【0047】
あるいは、被計測物Wの設計データや版下のデータに対応した基準画像との照合により、所望の文字や図形が描かれているかを判定してもよい。基準画像は、上述の基準形状データと同様、計測時の被計測物Wの変形に対応して変形させたものとすることが好ましい。図形を用いた照合により、被計測物Wの良否判定や、正しい金型を用いて被計測物Wが製造されたか否かの確認等を行うことができる。
【0048】
(内周長・外周長の計測)
略円形の外周や内周を有する被計測物Wについて、外周長や内周長を計測することを求められることがある。被計測物Wが変形しやすいものである場合(例えば、円形のゴムパッキン等)、被計測物Wの立体形状の外周や内周を円に近似して内周長や外周長を計算により求めても、変形の影響により高い精度を期待することはできない。
【0049】
本実施形態における表面形状計測装置100では、被計測物Wを回転テーブル110に配置して表面形状の計測を実施する。このとき、被計測物Wは、図10に示したように、着目する内周および/または外周が、回転テーブル110を回転させたときに光切断センサ130の検出範囲D内に収まるように回転テーブル110に配置しさえすればよく、被計測物Wを理想的な円形状(円環形状)とすべく変形を厳しく抑制する必要はない。
【0050】
そして、計測により得られたデータ(すなわち、全ての回転角での光切断線画像データ)から、画像処理部140によって被計測物Wを、回転テーブル110の上方から見た平面画像IMGを生成する。続いて、平面画像について、被計測物Wの中央部から周縁部に向かう半径方向ついて、所定の中心角刻みで(例えば0.1度毎に)全周に亘りエッジを検出する。図11は、画像処理部140が生成した平面画像IMG中に、検出された被計測物Wの外周に対応するエッジを×印で表示した例である。そして、このようにして検出された1周(360度)分のエッジ群について、隣接するエッジ間の距離の総和を算出して、当該総和を前記被計測物におけるエッジが検出された部分の周長(内周長または外周長)とする。
【0051】
上記の方法によれば、変形しやすい被計測物Wについて、容易に内周長や外周長を計測することが可能となる。
【0052】
なお、上記の例ではエッジの検出を平面画像に対して実施したが、平面画像を形成する前の、計測により得られる各回転角での光切断線画像データに対してエッジ検出を実施し、光切断線画像データから平面画像を生成する際に、当該平面画像内にエッジ位置を示す情報を付加するようにしてもよい。
【0053】
(内径・外径の計測)
略円形の外周や内周を有する被計測物Wにおける所定の高さ範囲について、内径および/または外径の最大値および/または最小値を計測することを求められることがある。被計測物Wの内径や外径が高さに応じて変化するものである場合(図12にその一例を示す)、上方からカメラ等で撮影した光学画像では、着目する高さ(例えば図12において符号Hで示された範囲)における内径・外径を測定できない場合がある。また、このような被計測物Wの表面形状をタッチプローブを用いて計測し、内径や外径を求めることも考えられるが、内径や外径の最大値・最小値を求めるには、着目する高さ範囲の全域について外周や内周の全周に渡り計測を行う必要があり、測定に長時間を要することとなる。
【0054】
本実施形態における表面形状計測装置100では、図13のフローチャートに示されるように、以下の手順にて、内径および/または外径の最大値および/または最小値を計測することができる。処理に先立ち、既述のように、回転テーブル110に配置した被計測物Wを光切断センサ130を用いて(必要に応じて複数の角度から)表面形状の計測を実施する。続いて、内径や外径の最大値・最小値を求める高さの範囲の入力を受け付ける(ステップS11)。そして、得られた被計測物Wの表面形状(立体形状)について、円筒座標系(r,θ,z)における周方向θの所定ステップΔθ毎に、外周や内周を成す円形の中心を通る断面プロファイルを抽出する(ステップS12)。続いて、各断面プロファイルについて着目する高さ範囲における径方向の最小値および/または最大値を求める(ステップS13)。そして、全ての断面プロファイルの最小値の中で最小のものを着目する外径または内径における最小値とし、全てのプロファイルの最大値の中で最大のものが着目する外径または内径における最大値とする(ステップS14)。
【0055】
上記の方法により、内径や外径が高さに応じて変化する被計測物Wであっても、比較的短時間で、所望の高さ範囲における内径および/または外径の最大値および/または最小値を計測することが可能となる。また、ロボット150に光切断センサ130を装着した構成の表面形状計測装置100によれば、回転体または略回転体からなる被計測物Wについて、内側、外側、任意の高さ、任意の角度で測定をすることができるので、例えば、タイヤのような内側に空洞を有する被計測物Wについて、空洞の内部に光切断センサ130を入れて被計測物Wの内側を測定し、さらに外側からも被計測物Wを測定して、得られたデータを合成することで、被計測物Wの立体形状のデータを得ることができる。そしてこのようにして得た被計測物Wの立体形状について、その断面プロファイルから被計測物Wの肉厚を計測することも可能となる。
【0056】
本発明は、上記の実施形態及び変形例に限定されるものではない。上記の実施形態及び変形例は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。すなわち、本発明において表現されている技術的思想の範囲内で適宜変更が可能であり、その様な変更や改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含む。
【符号の説明】
【0057】
100…表面形状計測装置
110…回転テーブル
111…台座
112…モータ
120…エンコーダ
130…光切断センサ
140…画像処理部
150…ロボット
160…制御部
170…コンピュータ
171…記憶部
172…入力部
173…CPU
B…光切断線画像
W…被計測物
Wb…底面
Ws…側面
図1
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図13