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特開2023-131143新規なオレフィン重合触媒、それを用いたオレフィン重合触媒の製造方法及びオレフィンと極性基含有モノマーとの共重合体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131143
(43)【公開日】2023-09-21
(54)【発明の名称】新規なオレフィン重合触媒、それを用いたオレフィン重合触媒の製造方法及びオレフィンと極性基含有モノマーとの共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/42 20060101AFI20230913BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20230913BHJP
   C08F 210/00 20060101ALI20230913BHJP
   C08F 4/02 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
C08F4/42
C08F10/00 510
C08F210/00
C08F4/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023034430
(22)【出願日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2022035283
(32)【優先日】2022-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】303061270
【氏名又は名称】日本ポリケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】野崎 京子
(72)【発明者】
【氏名】金 雄杰
(72)【発明者】
【氏名】ファルク ウィリアム サイデル
(72)【発明者】
【氏名】米崎 豪
(72)【発明者】
【氏名】田谷野 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】丹那 晃央
【テーマコード(参考)】
4J015
4J100
【Fターム(参考)】
4J015DA09
4J015EA00
4J100AA00P
4J100AA02P
4J100AA03P
4J100AB02Q
4J100AC02Q
4J100AG04Q
4J100AG10Q
4J100AL02Q
4J100AL03Q
4J100AM01Q
4J100AM02Q
4J100FA08
4J100FA19
4J100FA28
4J100GB05
4J100GC26
4J100GC35
4J100GC37
4J100JA15
4J100JA28
4J100JA57
(57)【要約】
【課題】 高い活性、コモノマーの取り込み効率でオレフィンとビニルモノマーの共重合ができる、オレフィン重合触媒と、それを用いたオレフィン共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】 成分(1)として固体担体、及び成分(2)として周期表9族、10族又は11族に属する遷移金属Mを含み、1つ以上の基-Q-Rを有する金属触媒成分(M、Q、Rの定義は、明細書にて示されるとおりである)を含有するオレフィン重合触媒である。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分(1)及び成分(2)を含有するオレフィン重合触媒。
成分(1):固体担体
成分(2):周期表9族、10族又は11族に属する遷移金属Mを含み、1つ以上の基-Q-Rを有する金属触媒成分
ここで、Rは、1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数3~30の芳香族複素環基、1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数2~30の脂肪族複素環基、1つ以上の炭素数1~30の炭化水素基を有していてもよいアミノ基、炭素数1~30のイミノ基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアシルアミノ基、1つ以上の炭素数1~30の炭化水素基を有していてもよいアミノカルボニル基、炭素数1~30のイミド基、シアノ基、ニトロ基又はニトロソ基を表し、
Qは、直接結合又はヘテロ原子を含有してもよい炭素数1~20の二価の炭化水素基である。
【請求項2】
前記成分(2)が、下記一般式(A)又は(B)で表される化合物の少なくとも1種と、前記遷移金属Mを含む遷移金属化合物(C)の少なくとも1種との反応生成物であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合触媒。
【化1】

[一般式(A)又は(B)において、
Zは、水素原子又は脱離基であり、
Yは、カウンターカチオンを表し、
mは、Z又はYの価数を表し、
は、リン原子、砒素原子又はアンチモン原子を表し、
は、酸素原子又は硫黄原子を表し、
及びRは、それぞれ独立に、基-Q-R(ここで、Q及びRは、請求項1に定義したとおりである)であるか、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基を表すか、又はR及びRは、互いに結合して、基-Q-Rを有していてもよくヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~30の2価の炭化水素基であり、
~Rは、それぞれ独立に、基-Q-R、水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基を表し、
は、基-Q-R、水素原子、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基又は炭素数1~30の炭化水素置換基を有していてもよいシリル基を表し、
ただし、R~Rのいずれかは、基-Q-Rであるか基-Q-Rを含む基である。]
【請求項3】
前記Rが、1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数1~30の含窒素芳香族複素環基、1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数1~30の含窒素脂肪族複素環基、1つ以上の炭素数1~30の炭化水素基を有していてもよいアミノ基又は炭素数1~30のイミノ基であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合触媒。
【請求項4】
前記Rが、1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数1~30の含窒素芳香族複素環基又は1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数1~30の含窒素脂肪族複素環基であることを特徴とする請求項3に記載のオレフィン重合触媒。
【請求項5】
前記遷移金属Mが、ニッケル、パラジウム又は白金であることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合触媒。
【請求項6】
前記成分(1)が、金属酸化物又はケイ素酸化物から選ばれることを特徴とする請求項1に記載のオレフィン重合触媒。
【請求項7】
前記R,R及びRの少なくともいずれか1つが基-Q-Rであることを特徴とする請求項2に記載のオレフィン重合触媒。
【請求項8】
成分(1)としての固体担体、及び成分(2)としての、周期表9族、10族又は11族に属する遷移金属Mを含み、1つ以上の基-Q-Rを有する金属触媒成分(ここで、Q、Rは請求項1に定義したとおりである)を接触させる工程を含む、オレフィン重合触媒の製造方法。
【請求項9】
下記一般式(A)又は一般(B)で表される化合物の少なくとも1種と、成分(1)としての少なくとも1種類の固体担体とを接触させた後、さらに周期表9族、10族又は11族に属する遷移金属Mを含む遷移金属化合物(C)を接触させる工程を含むことを特徴とするオレフィン重合触媒の製造方法。
【化2】

[一般式(A)又は(B)において、Z、Y、m、E、X、R~Rは、請求項2に定義したとおりである]
【請求項10】
前記Rが、1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数1~30の含窒素芳香族複素環基、1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数1~30の含窒素脂肪族複素環基、1つ以上の炭素数1~30の炭化水素基を有していてもよいアミノ基又は炭素数1~30のイミノ基であることを特徴とする請求項8に記載のオレフィン重合触媒の製造方法。
【請求項11】
前記Rが、1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数1~30の含窒素芳香族複素環基又は1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数1~30の含窒素脂肪族複素環基であることを特徴とする請求項10に記載のオレフィン重合触媒の製造方法。
【請求項12】
前記遷移金属Mが、ニッケル、パラジウム又は白金であることを特徴とする請求項8に記載のオレフィン重合触媒の製造方法。
【請求項13】
前記成分(1)が、金属酸化物又はケイ素酸化物から選ばれることを特徴とする請求項8に記載のオレフィン重合触媒の製造方法。
【請求項14】
前記R,R及びRの少なくともいずれか1つが基-Q-Rであることを特徴とする,請求項9に記載のオレフィン重合用触媒の製造方法。
【請求項15】
下記成分(3)又は(4)の存在下、オレフィンを重合又は共重合することを特徴とするオレフィン共重合体の製造方法。
成分(3)請求項1~7のいずれか1項に記載のオレフィン重合触媒
成分(4)請求項8~14のいずれか1項に記載の製造方法から得られるオレフィン重合触媒
【請求項16】
オレフィンと極性基含有モノマーとを共重合することを特徴とする、請求項15に記載のオレフィン共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なオレフィン重合触媒,それを用いたオレフィン重合触媒の製造方法及びオレフィンと極性基含有モノマーとの共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非極性モノマーであるエチレンやプロピレンなどのオレフィンと極性基を有するビニルモノマーとの共重合体は、無極性であるポリエチレンやポリプロピレンにはない機能や特性を有する。このような観点からエチレンやプロピレンと極性ビニルモノマーの共重合により、ポリエチレンやポリプロピレンに機能性を付与する研究が盛んに行われている。
エチレン、プロピレンなどのオレフィンモノマーと(メタ)アクリル酸エステルなどの極性基含有ビニルモノマーを共重合することができる遷移金属触媒としては、リン原子と酸素原子を配位原子とする配位子を用いたニッケル錯体を含む、いわゆるSHOP系触媒が報告されており(特許文献1~3)、リン-フェノール配位子を有する錯体触媒は、ポストメタロセン触媒として研究がなされている。
【0003】
リン-フェノール配位子を有するポストメタロセン錯体触媒は、一般的に有機溶媒に可溶であり、均一系錯体触媒として使用されることが多い。その一方で例えば特許文献4、5、6では、錯体触媒を固相担持する技術が開示されている。ここで開示される担持触媒は、得られる(共)重合体のモルフォロジー(粒子性状)を改善し、プラントの生産性を高める目的で利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/050256号
【特許文献2】米国特許第6559326号明細書
【特許文献3】特開2005-307021号公報
【特許文献4】特開2016-017134号公報
【特許文献5】特開2016-029170号公報
【特許文献6】特開2017-200969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
極性基含有モノマーはオレフィンモノマーに比較すると高価であり、極性基含有オレフィン共重合体の製造においては、極性基含有モノマーに由来するコモノマー含量を向上させる技術が望まれているが、いまだ充分ではない。共重合性の向上によってオレフィンよりも高価な極性基含有モノマーの効率的な使用が可能となり、極性基含有オレフィン共重合体の製造コストの低減につながる。そのため、本発明で解決しようとする課題は、オレフィンと極性基含有モノマーとの共重合性の向上をもたらす触媒の提供、及び、それを用いた高効率での極性基含有ポリオレフィン共重合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の置換基を有する配位子を用いた金属錯体を固体担体に担持した触媒により、極性基含有モノマーの取り込み効率が高い水準にあるオレフィン系重合用触媒を見出し、本発明に至った。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の成分(1)及び成分(2)を含有するオレフィン重合触媒が提供される。
成分(1):固体担体
成分(2):周期表9族、10族又は11族に属する遷移金属Mを含み、1つ以上の基-Q-Rを有する金属触媒成分
ここで、Rは、1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数3~30の芳香族複素環基、1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数2~30の脂肪族複素環基、1つ以上の炭素数1~30の炭化水素基を有していてもよいアミノ基、炭素数1~30のイミノ基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアシルアミノ基、1つ以上の炭素数1~30の炭化水素基を有していてもよいアミノカルボニル基、炭素数1~30のイミド基、シアノ基、ニトロ基又はニトロソ基を表し、
Qは、直接結合又はヘテロ原子を含有してもよい炭素数1~20の二価の炭化水素基である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オレフィンと極性基含有モノマーとの共重合性の向上をもたらす触媒、及び、それを用いた高効率での極性基含有ポリオレフィン共重合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一つの態様は、成分(1)として固体担体、及び、成分(2)として周期表9族、10族又は11族に属する遷移金属Mを含み、1つ以上の基-Q-Rを有する金属触媒成分(ここでQ、Rは、上記定義のとおりである)を含有するオレフィン重合触媒である。
【0010】
以下、重合触媒、重合触媒の製造方法、重合方法、共重合体の製造方法等について詳細に説明する。なお、以下の説明において、「重合」とは、モノマーが20量体以上のポリマーを形成する反応のことをいう。「重合」という用語は、1種類のモノマーの単独重合と複数種のモノマーの共重合を総称するものであり、特に両者を区別する必要がない場合には、総称して単に「重合」と記載する。「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタアクリル酸(メタクリル酸)を意味する。また、本発明はポリマーの製造方法にも関連するものであるが、ポリマーそのものは、一般に化学式などによってその構造を一義的に決定することができない。よって、本明細書において、ポリマーに関する記載を行うにあたっては、必要に応じ、ポリマーをその製造方法を用いることで記載する。
【0011】
以下、具体的な置換基において、炭化水素基というときは、通常は炭素数1~30、好ましくは炭素数1~20の、直鎖状、分岐鎖状又は環状の基を表す。炭化水素基の価数は文脈において理解されるが、1価の基は「イル(-yl)」、2価の基は「レン(-ene)」が語尾につくことによって表現される。炭化水素基は、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基である。
【0012】
アルキル基やシクロアルキル基の例は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、トリシクロヘキシルメチル基、1,1-ジメチル-2-フェニルエチル基、1,1-ジメチルプロピル基、1,1,2-トリメチルプロピル基、1,1-ジエチルプロピル基、1-フェニル-2-プロピル基、1,1-ジメチルブチル基、2-ペンチル基、3-ペンチル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、4-ヘプチル基、2-プロピルヘプチル基、2-オクチル基、3-ノニル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基、エキソ-ノルボルニル基、エンド-ノルボルニル基、2-ビシクロ[2.2.2]オクチル基、ノピニル基、デカヒドロナフチル基、メンチル基、ネオメンチル基、ネオペンチル基、及び5-デシル基等が挙げられる。
【0013】
アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、ブテニル基、シンナミル基、スチリル基が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオレニル基が挙げられ、これらのアリール基は、芳香環上に置換基を有していてもよく、存在しうる置換基の例としては、アルキル基、アリール基、融合アリール基、フェニルシクロヘキシル基、フェニルブテニル基、トリル基、キシリル基、p-エチルフェニル基等である。
【0014】
本発明のオレフィン重合触媒は、モノマーをエチレンやプロピレン、α-オレフィンとした単独重合又は共重合や、エチレンやプロピレン、α-オレフィンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合の際に好適に使用される。
【0015】
成分(1):固体担体
本発明の触媒に用いられる固体担体は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上であって、通常5mm以下、好ましくは2mm以下の粒径を有する固体である。使用可能な担体としては、本発明の主旨を損なわない限りにおいて、任意の固体担体を用いることができるが、酸性を示す物質が豊富に存在する無機化合物を使用することが好ましい。酸性を示す無機化合物としては、ヘテロポリ酸類、粘土鉱物類、ケイ素酸化物類、金属酸化物類等が例示される。固体担体については、上記範囲の粒径を有するものであれば、粒径分布、細孔容積、比表面積等に特に制限はなく、任意のものが使用可能である。
【0016】
ヘテロポリ酸類としては、例えばホスホタングステン酸、タングステン酸ジルコニウム等が好適に用いられる。
【0017】
粘土鉱物類としては、アロフェン等のアロフェン族、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、アノーキサイト等のカオリン族、メタハロイサイト、ハロイサイト等のハロイサイト族、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト等のスメクタイト、バーミキュライト等のバーミキュライト鉱物、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母鉱物、アタパルジャイト、セピオライト、パイゴルスカイト、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、ヒシンゲル石、パイロフィライト、リョクデイ石群等が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。人工合成物としては、合成雲母、合成ヘクトライト、合成サポナイト、合成テニオライト等が挙げられる。カオリン、モンモリロナイト、バイデライト、ハイドロサイト、ハイドロキシアパタイト等が好適に用いられる。
【0018】
ケイ素酸化物類としては、例えばシリカゲルのような二酸化ケイ素材料、ゼオライトのようなアルミノケイ酸塩類等が好適に用いられる。
【0019】
金属酸化物類としては、例えばAl、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、HfO、Y、CeO、SnO、In、Ga、YbO、Nb、ThO等の金属酸化物、SiO-Al、SiO-V、SiO-TiO、SiO-MgO、SiO-Cr等の混合酸化物、無機ケイ酸塩又はこれらの混合物が挙げられる。アルミナ、チタニア、ジルコニア、ニオビア等が好適に用いられる。これらの固体担体は単一で用いてもよいし、複数種が混合ないし複合粒子を形成しているものを用いてもよい。
【0020】
これらのうち、強酸と言われる固体担体を用いることが好ましい。具体的には、タングステン酸ジルコニウム、シリカゲル、ゼオライト等が挙げられる。
【0021】
これらの固体担体は、そのまま用いてもよいが、塩酸、硝酸、硫酸等による酸処理及び/又はLiCl、NaCl、KCl、CaCl、MgCl、LiSO、MgSO、ZnSO、Ti(SO、Zr(SO、Al(SO等の塩類処理を行ってもよい。該処理において、対応する酸と塩基を混合して反応系内で塩を生成させて処理を行ってもよい。また粉砕や造粒等の形状制御処理や乾燥処理を行ってもよい。
【0022】
成分(2):金属触媒成分
成分(2)は、周期表9族、10族又は11族に属する遷移金属Mと、基-Q-Rとを有する。金属触媒成分(2)は、基-Q-Rを有する化合物の少なくとも1種と、遷移金属Mを含む遷移金属化合物(C)の少なくとも1種との反応生成物であることができる。
【0023】
<金属種>
成分(2)において、遷移金属Mは、周期表の9族、10族又は11族に属する金属元素であるが、好ましくは、10族のニッケル、パラジウム、白金、9族のコバルト、ロジウム、11族の銅であり、更に好ましくは、10族のニッケル、パラジウム又は白金であり、最も好ましくは10族のニッケル又はパラジウムである。
遷移金属化合物(C)については、後述する一般式(A)、(B)等で示される化合物と反応して、重合能を有する錯体を形成可能なものが使用される。これらは、プリカーサー、前駆体とも呼ばれることがある。
例えば、ニッケルを含む遷移金属化合物(C)としては、Ni(COD)(COD:1,5-シクロオクタジエン)、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル(II)、一般式(CHCR17CHNi、Ni(CHSiR17 、NiR17 又はNiR17 で表される錯体等を使用することができる。ここでR17は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基、OR、又はCOであり、Lはニッケルに配位したリガンドであり、Rは水素原子又は炭素数1~20の炭化水素基である。
また、9族、10族又は11族の遷移金属Mを含む遷移金属化合物(C)については、一般式:MR17 (ここで、Mは、周期表9族、10族又は11族の遷移金属であり、R17及びLは、先に定義した通りであり、p及びqは、0または1以上の整数であり、遷移金属錯体が16電子又は18電子であるように選択される)を使用することができる。
【0024】
これらの遷移金属化合物(C)のうち、好ましく用いられるものは、Ni(COD)(0)、一般式:(CHCR17CHNiで表される錯体、一般式:Ni(CHSiR17 で表される錯体、一般式:NiR17 で表される錯体(これらの式中、R17、Lは、先に定義した通りである)、Pd(dba)、Pd(dba)、Pd(dba)(ここで、dbaは、ジベンジリデンアセトンを表す)、Pd(OCOCH、(COD)Pd(メチル)(クロリド)、Ni(4-F-Ph)(ブロモ)(Tmeda)(以下、Phはフェニルを表し、Tmedaはテトラメチルエチレンジアミンを表す)である。特に好ましくは、Ni(COD)(0)、(CHCHCHNi、(CHCMeCHNi、Ni(CHSiMe(Py)(以下Pyは、ピリジンを表す)、Ni(CHSiMe(Lut)(以下Lutは、2,6-ルチジンを表す)、NiPh(Py)、Ni(Ph)(Lut)、Pd(dba)、Pd(dba)、Pd(dba)、Pd(OCOCH、(COD)Pd(メチル)(クロリド)である。
【0025】
<置換基-Q-R
金属触媒成分(2)は、その少なくとも一部に-Q-Rで表される置換基を有する。-Q-Rは固体担体との反応性を有している基であり、塩基性のものが選ばれる。具体的には、Rは、1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数3~30の芳香族複素環基、1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数2~30の脂肪族複素環基、1つ以上の炭素数1~30の炭化水素基を有していてもよいアミノ基、炭素数1~30のイミノ基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアシルアミノ基、1つ以上の炭素数1~30の炭化水素基を有していてもよいアミノカルボニル基、炭素数1~30のイミド基、シアノ基、ニトロ基又はニトロソ基を表す。中でも芳香族複素環基及び脂肪族複素環基が好ましく、特に含窒素芳香族複素環基及び含窒素脂肪族複素環基が好ましい。
【0026】
の具体的な例としては、脂肪族複素環基としてピロリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、イミダゾリル、芳香族複素環基としてピリジル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、アクリジニル、フェナントロリル等、又はこれらに任意の置換基が結合した誘導体が挙げられる。
【0027】
は、配位子の主たる構造部分に直接結合していてもよく、2価のスペーサー基を介して結合していてもよい。したがって、金属触媒成分(2)は、その少なくとも一部に基-Q-Rで表される置換基を有することができる。Qは、直接結合又はヘテロ原子を含有してもよい炭素数1~20の二価の炭化水素基である。Rの立体的な嵩高さを金属部分に影響しやすくする観点からは、Qは直接結合であることが好ましいが、直接結合以外のQの例を具体的に挙げると、炭化水素基として-CH-、-CHCH-、-(CH-が挙げられる。
ヘテロ原子として挙げられるものとして、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が挙げられ、酸素原子を含有してもよい炭化水素基として-CH-O-CH-、-CH-(O-CH-、-CH-(O-CH-、-CH-O-CHCH-、-CH-(O-CHCH-、-CH-O-CHCHCH-、-CHCH-O-CH-、-CHCH-O-CHCH-、-CHCH-O-CHCHCH-が挙げられる。
硫黄原子を含有してもよい炭化水素基として-CH-S-CHCH-、-CH-(S-CHCH-、-CHCH-S-CHCH-、-CH-S-CHCHCH-が挙げられる。
窒素原子を含有してもよい炭化水素基として-CH-N(CH)-CHCH-、-CH-(N(CH)-CHCH-、-CHCH-N(CH)-CHCH-、-CH-N(CH)-CHCHCH-が挙げられる。
【0028】
配位子又は錯体成分の合成上の観点から更に好ましいQとしては、-CHCH-、-(CH-の炭化水素基、-CH-O-CHCH-、-CH-O-CHCHCH-が挙げられる。硫黄原子を含有してもよい炭化水素基として-CH-S-CHCH-、-CHCH-S-CHCH-が挙げられる。窒素原子を含有してもよい炭化水素基として-CH-N(CH)-CHCH-が挙げられる。
【0029】
好ましい-Q-Rとしては、上記の好ましいRと具体例で挙げたQの組み合わせ及びRが配位子の主たる構造部分に直接結合したものが挙げられる。
【0030】
成分(2)に含まれる-Q-Rを有する成分は、具体的な構造として、下記一般式(A)又は(B):
【化1】

[一般式(A)又は(B)において、
Zは、水素原子又は脱離基である。
Yは、カウンターカチオンである。
mはZ又はYの価数を表す。
は、リン原子、砒素原子又はアンチモン原子を表す。
は、酸素原子又は硫黄原子を表す。
及びRは、それぞれ独立に、基-Q-R(ここで、Q及びRは、上記定義のとおりである)であるか、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基を表すか、又はR及びRは、互いに結合して、基-Q-Rを有していてもよくヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~30の2価の炭化水素基である。
~Rは、それぞれ独立に、上記基-Q-R、水素原子、ハロゲン原子、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基、を表す。
は、上記基-Q-R、水素原子、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基又は炭素数1~30の炭化水素置換基を有していてもよいシリル基を表す。
ただし、R~Rのいずれか少なくとも1つは、基-Q-Rであるか基-Q-Rを含む基である。]
で示される化合物又はアニオン種が挙げられる。
【0031】
一般式(A)において、Zは、水素原子又は脱離基である。
【0032】
一般式(B)において、Yはカウンターカチオンである。具体的には、アンモニウム(NH )、4級アンモニウム(R15 )又はホスホニウム(R16 )(ここで、R15及びR16は、炭素数1~20の炭化水素基であり、各々のR15及びR16は、同じであっても異なっていてもよい)、周期表1族~14族の金属イオンを挙げることができる。これらのうち好ましくは、NH 、R15 、R16 、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、Al3+であり、更に好ましくは、R15 、Li、Na、Kである。
【0033】
一般式(A)又は(B)において、Xは、酸素原子又は硫黄原子である。これらのうち、酸素原子が好ましい。Eは、リン原子、砒素原子又はアンチモン原子である。これらのうち、リン原子が好ましい。したがって好ましい一態様において、一般式(A)又は(B)で示される化合物又はアニオン種は、リンフェノレートの誘導体である。
【0034】
及びRは、それぞれ独立に、基-Q-Rであるか、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基を表すか、又はR及びRは、互いに結合して、基-Q-Rを有していてもよくヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~30の2価の炭化水素基である(ここで、Q及びRは、先に定義したとおりである)。ここで、「ヘテロ原子を含有していてもよい」とは、炭化水素骨格中にヘテロ原子を含んでいること及びヘテロ原子を含む置換基を有していることの少なくともいずれかを意味し、以下、このような基をヘテロ原子含有基ともいう。上記一般式(A)又は(B)が後述する遷移金属化合物(C)と反応すると、R及びRは、遷移金属Mの近傍にあって、立体的及び/又は電子的に遷移金属Mに相互作用を及ぼすと考えられる。こうした効果を及ぼすためには、R及びRは、嵩高い置換基である方が好ましい。R及びRの好ましい炭素数は3~30、更に好ましくは6~30である。
【0035】
及びRのより具体的な構造は、それぞれ独立に、上記基-Q-R又はヘテロ原子を含有していてもよい直鎖状炭化水素基、ヘテロ原子を含有していてもよい分岐鎖状炭化水素基、ヘテロ原子を含有していてもよい脂肪環式炭化水素基、ヘテロ原子を含有していてもよいアリール基が挙げられる。前に述べたように、R及びRは、嵩高い方が好ましいので、ヘテロ原子を含有していてもよい脂環式炭化水素基、又は、ヘテロ原子を含有していてもよいアリール基が好ましく、ヘテロ原子を含有していてもよいアリール基が最も好ましい。こうしたアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスラセニル基等を挙げることができる。これらの中で、フェニル基やナフチル基が好ましく、フェニル基が特に好ましい。また、含有していてもよいヘテロ原子は複数あってもよい。
【0036】
及びRにおいて、ヘテロ原子含有基中に含まれるヘテロ原子としては、酸素、窒素、リン、硫黄、セレン、ケイ素、フッ素、ホウ素が挙げられる。ヘテロ原子含有基に含まれるヘテロ原子としては、遷移金属に配位可能なものが好ましい。また、ヘテロ原子含有基は、複数あってもよい。こうした遷移金属に配位可能なヘテロ原子を含むヘテロ原子含有基の具体的な例としては、以下のようなものが挙げられる。
【0037】
すなわち、酸素含有基として、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、p-メチルフェノキシ基、p-メトキシフェノキシ基等のアリーロキシ基、アセチル基、ベンゾイル基等のアシル基、アセトキシ基、エチルカルボキシレート基、t-ブチルカルボキシレート基、フェニルカルボキシレート基等のカルボキシレート基等を挙げることができる。
【0038】
窒素含有基としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等のジアルキルアミノ基等を挙げることができる。
硫黄含有基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオ-n-プロポキシ基、チオイソプロポキシ基、チオ-n-ブトキシ基、チオ-t-ブトキシ基、チオフェノキシ基等のチオアルコキシ基、p-メチルチオフェノキシ基、p-メトキシチオフェノキシ基等のチオアリーロキシ基等を挙げることができる。
【0039】
リン含有置換基としては、ジメチルホスフィノ基、ジエチルホスフィノ基、ジ-n-プロピルホスフィノ基、シクロヘキシルホスフィノ基等のジアルキルホスフィノ基等を挙げることができる。
セレン含有基としては、メチルセレニル基、エチルセレニル基、n-プロピルセレニル基、n-ブチルセレニル基、t-ブチルセレニル基、フェニルセレニル基等のセレニル基を挙げることができる。
【0040】
これらの中で、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、p-メチルフェノキシ基、p-メトキシフェノキシ基等のアリーロキシ基や、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ-n-プロピルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等のジアルキルアミノ基や、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオ-n-プロポキシ基、チオイソプロポキシ基、チオ-n-ブトキシ基、チオ-t-ブトキシ基、チオフェノキシ基等のチオアルコキシ基、p-メチルチオフェノキシ基、p-メトキシチオフェノキシ基等のチオアリーロキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基、p-メチルフェノキシ基、p-メトキシフェノキシ基等のアリーロキシ基が更に好ましい。
【0041】
又はRがヘテロ原子を含有していてもよいアリール基であり、アリール基の芳香族骨格に前記ヘテロ原子含有基が結合する場合、結合様式としては、ヘテロ原子含有基が芳香族骨格に直接結合してもよいし、アルキレン基のようなスペーサーを介して芳香族骨格に結合してもよい。なお、アルキレン基を介してヘテロ原子含有基が芳香族骨格に結合する場合、炭素数は1個であること、すなわちメチレン基であることが好ましい。また、置換位置としては、R又はRの芳香族骨格のうち、Eに結合した炭素に対してオルト位であることが好ましい。このようにすることによって、R又はRのヘテロ原子が遷移金属Mと相互作用を持つように空間的配置をとることができる。
【0042】
好ましいR及びRの具体的な例示として、2,6-ジメトキシフェニル基、2,4,6-トリメトキシフェニル基、4-メチル-2,6-ジメトキシフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジメトキシフェニル基、1,3-ジメトキシ-2-ナフチル基、2,6-ジエトキシフェニル基、2,4,6-トリエトキシフェニル基、4-メチル-2,6-ジエトキシフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジエトキシフェニル基、1,3-ジエトキシ-2-ナフチル基、2,6-ジイソプロポキシフェニル基、2,4,6-トリイソプロポキシフェニル基、4-メチル-2,6-ジイソプロポキシフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジイソプロポキシフェニル基、1,3-ジイソプロポキシ-2-ナフチル基、2,6-ジフェノキシフェニル基、2,4,6-トリフェノキシフェニル基、4-メチル-2,6-ジフェノキシフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジフェノキシフェニル基、1,3-ジフェノキシ-2-ナフチル基、2,6-ジ(メトキシメチル)フェニル基、2,4,6-トリ(メトキシメチル)フェニル基、4-メチル-2,6-ジ(メトキシメチル)フェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジ(メトキシメチル)フェニル基、1,3-ジ(メトキシメチル)-2-ナフチル基、2,6-ジ(エトキシメチル)フェニル基、2,4,6-トリ(エトキシメチル)フェニル基、4-メチル-2,6-ジ(エトキシメチル)フェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジ(エトキシメチル)フェニル基、1,3-ジ(エトキシメチル)-2-ナフチル基、2,6-ジ(イソプロポキシメチル)フェニル基、2,4,6-トリ(イソプロポキシメチル)フェニル基、4-メチル-2,6-ジ(イソプロポキシメチル)フェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジ(イソプロポキシメチル)フェニル基、1,3-ジ(イソプロポキシメチル)-2-ナフチル基、2,6-ジ(フェノキシメチル)フェニル基、2,4,6-トリ(フェノキシメチル)フェニル基、4-メチル-2,6-ジ(フェノキシメチル)フェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジ(フェノキシメチル)フェニル基、1,3-ジ(フェノキシメチル)-2-ナフチル基等を挙げることができる。
【0043】
また、好ましいR及びRの具体的な例示として、2-ピリジル基、3-メチル-2-ピリジル基、4-メチル-2-ピリジル基、5-メチル-2-ピリジル基、6-メチル-2-ピリジル基、3-フェニル-2-ピリジル基、4-フェニル-2-ピリジル基、5-フェニル-2-ピリジル基、6-フェニル-2-ピリジル基、3-メトキシ-2-ピリジル基、4-メトキシ-2-ピリジル基、5-メトキシ-2-ピリジル基、6-メトキシ-2-ピリジル基、3-メトキシメチル-2-ピリジル基、4-メトキシメチル-2-ピリジル基、5-メトキシメチル-2-ピリジル基、6-メトキシメチル-2-ピリジル基、3-ピリジル基、2-メチル-3-ピリジル基、4-メチル-3-ピリジル基、5-メチル-3-ピリジル基、6-メチル-3-ピリジル基、2-フェニル-3-ピリジル基、4-フェニル-3-ピリジル基、5-フェニル-3-ピリジル基、6-フェニル-3-ピリジル基、2-メトキシ-3-ピリジル基、4-メトキシ-3-ピリジル基、5-メトキシ-3-ピリジル基、6-メトキシ-3-ピリジル基、2-メトキシメチル-3-ピリジル基、4-メトキシメチル-3-ピリジル基、5-メトキシメチル-3-ピリジル基、6-メトキシメチル-3-ピリジル基、4-ピリジル基、2-メチル-4-ピリジル基、3-メチル-4-ピリジル基、2-フェニル-4-ピリジル基、3-フェニル-4-ピリジル基、2-メトキシ-4-ピリジル基、3-メトキシ-4-ピリジル基、2-メトキシメチル-4-ピリジル基、3-メトキシメチル-4-ピリジル基、2-ピリミジニル基、4-メチル-2-ピリミジニル基、5-メチル-2-ピリミジニル基、4-フェニル-2-ピリミジニル基、5-フェニル-2-ピリミジニル基、4-メトキシ-2-ピリミジニル基、5-メトキシ-2-ピリミジニル基、4-メトキシメチル-2-ピリミジニル基、5-メトキシメチル-2-ピリミジニル基、4-ピリミジニル基、2-メチル-4-ピリミジニル基、5-メチル-4-ピリミジニル基、6-メチル-4-ピリミジニル基、2-フェニル-4-ピリミジニル基、5-フェニル-4-ピリミジニル基、6-フェニル-4-ピリミジニル基、2-メトキシ-4-ピリミジニル基、5-メトキシ-4-ピリミジニル基、6-メトキシ-4-ピリミジニル基、2-メトキシメチル-4-ピリミジニル基、5-メトキシメチル-4-ピリミジニル基、6-メトキシメチル-4-ピリミジニル基、5-ピリミジニル基、2-メチル-5-ピリミジニル基、4-メチル-5-ピリミジニル基、2-フェニル-5-ピリミジニル基、4-フェニル-5-ピリミジニル基、2-メトキシ-5-ピリミジニル基、4-メトキシ-5-ピリミジニル基、2-メトキシメチル-5-ピリミジニル基、4-メトキシメチル-5-ピリミジニル基、3-ピリダジニル基、4-ピリダジニル基、2-オキサゾリル基、4-オキサゾリル基、5-オキサゾリル基、2-ベンゾイミダゾリル基、4-ベンゾイミダゾリル基、5-ベンゾイミダゾリル基、6-ベンゾイミダゾリル基、7-ベンゾイミダゾリル基、1-アクリジニル基、2-アクリジニル基、3-アクリジニル基、4-アクリジニル基、5-アクリジニル基、6-アクリジニル基、7-アクリジニル基、8-アクリジニル基、9-アクリジニル基、2-フェナントロリル基、3-フェナントロリル基、4-フェナントロリル基、5-フェナントロリル基、6-フェナントロリル基、7-フェナントロリル基、8-フェナントロリル基、9-フェナントロリル基、2-ピロリジニル基、3-ピロリジニル基、2-ピペラジニル基、3-ピペラジニル基、4-ピペラジニル基、2-モルホリニル基、3-モルホリニル基、2-チオモルホリニル基、3-チオモルホリニル基、2-イミダゾリル基、4-イミダゾリル基、5-イミダゾリル基も挙げることができる。
【0044】
これらのうち、好ましいものとしては、2,6-ジメトキシフェニル基、2,4,6-トリメトキシフェニル基、4-メチル-2,6-ジメトキシフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジメトキシフェニル基、2,6-ジエトキシフェニル基、2,4,6-トリエトキシフェニル基、4-メチル-2,6-ジエトキシフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジエトキシフェニル基、2,6-ジイソプロポキシフェニル基、2,4,6-トリイソプロポキシフェニル基、4-メチル-2,6-ジイソプロポキシフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジイソプロポキシフェニル基、2,6-ジフェノキシフェニル基、2,4,6-トリフェノキシフェニル基、4-メチル-2,6-ジフェノキシフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジフェノキシフェニル基、2,6-ジ(メトキシメチル)フェニル基、2,4,6-トリ(メトキシメチル)フェニル基、4-メチル-2,6-ジ(メトキシメチル)フェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジ(メトキシメチル)フェニル基、2,6-ジ(エトキシメチル)フェニル基、2,4,6-トリ(エトキシメチル)フェニル基、4-メチル-2,6-ジ(エトキシメチル)フェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジ(エトキシメチル)フェニル基、2,6-ジ(イソプロポキシメチル)フェニル基、2,4,6-トリ(イソプロポキシメチル)フェニル基、4-メチル-2,6-ジ(イソプロポキシメチル)フェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジ(イソプロポキシメチル)フェニル基、2,6-ジ(フェノキシメチル)フェニル基、2,4,6-トリ(フェノキシメチル)フェニル基、4-メチル-2,6-ジ(フェノキシメチル)フェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジ(フェノキシメチル)フェニル基が挙げられる。特に好ましいものとしては、2,6-ジメトキシフェニル基、2,4,6-トリメトキシフェニル基、4-メチル-2,6-ジメトキシフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジメトキシフェニル基、2,6-ジエトキシフェニル基、2,4,6-トリエトキシフェニル基、4-メチル-2,6-ジエトキシフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジエトキシフェニル基、2,6-ジイソプロポキシフェニル基、2,4,6-トリイソプロポキシフェニル基、4-メチル-2,6-ジイソプロポキシフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジイソプロポキシフェニル基、2,6-ジフェノキシフェニル基、2,4,6-トリフェノキシフェニル基、4-メチル-2,6-ジフェノキシフェニル基、4-t-ブチル-2,6-ジフェノキシフェニル基、2-ピリジル基、3-メチル-2-ピリジル基、4-メチル-2-ピリジル基、5-メチル-2-ピリジル基、6-メチル-2-ピリジル基、3-フェニル-2-ピリジル基、4-フェニル-2-ピリジル基、5-フェニル-2-ピリジル基、6-フェニル-2-ピリジル基、3-メトキシ-2-ピリジル基、4-メトキシ-2-ピリジル基、5-メトキシ-2-ピリジル基、6-メトキシ-2-ピリジル基、3-メトキシメチル-2-ピリジル基、4-メトキシメチル-2-ピリジル基、5-メトキシメチル-2-ピリジル基、6-メトキシメチル-2-ピリジル基、3-ピリジル基、2-メチル-3-ピリジル基、4-メチル-3-ピリジル基、5-メチル-3-ピリジル基、6-メチル-3-ピリジル基、2-フェニル-3-ピリジル基、4-フェニル-3-ピリジル基、5-フェニル-3-ピリジル基、6-フェニル-3-ピリジル基、2-メトキシ-3-ピリジル基、4-メトキシ-3-ピリジル基、5-メトキシ-3-ピリジル基、6-メトキシ-3-ピリジル基、2-メトキシメチル-3-ピリジル基、4-メトキシメチル-3-ピリジル基、5-メトキシメチル-3-ピリジル基、6-メトキシメチル-3-ピリジル基、4-ピリジル基、2-メチル-4-ピリジル基、3-メチル-4-ピリジル基、2-フェニル-4-ピリジル基、3-フェニル-4-ピリジル基、2-メトキシ-4-ピリジル基、3-メトキシ-4-ピリジル基、2-メトキシメチル-4-ピリジル基、3-メトキシメチル-4-ピリジル基が挙げられる。
【0045】
また、R及びRは、互いに結合して、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~30の2価の炭化水素基であってもよい。このとき、R及びRは、Eを含んで5~8員環を形成する。また、このときの環構造の一部に、基-Q-Rを有していてもよい。
【0046】
、R及びRは、それぞれ独立に、基-Q-R、水素原子、ハロゲン原子又はヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基を表す(ここで、Q及びRは、先に定義したとおりである)。R、R及びRにおいて、ヘテロ原子含有基中に含まれるヘテロ原子としては、酸素、ケイ素、フッ素が挙げられる。
これらのうち、R、R及びRとして好ましいものは、水素原子、フッ素原子、クロロ原子、ブロモ原子のハロゲン原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基等のアルキル基、フェニル基等のアリール基、トリフルオロメチル基等のパーフルオロアルキル基、ペンタフルオロフェニル基等のパーフルオロアリール基、トリメチルシリル基等のトリアルキルシリル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリーロキシ基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。特に好ましいものとしては、水素原子、フッ素原子、メチル基、フェニル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、トリメチルシリル基、シアノ基、ニトロ基等が挙げられる。
【0047】
は、基-Q-R、水素原子、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基又は炭素数1~30の炭化水素置換基を有していてもよいシリル基を表す(ここで、Q及びRは、先に定義したとおりである)。Rについては、嵩高い方が高分子量の重合体を与える傾向にあるので、嵩高い置換基が好ましい。このため、Rの炭素数は3~30であることが好ましい。Rの例を具体的に挙げると、炭化水素基として、イソプロピル基、イソブチル基、t-ブチル基、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アンスラセニル基、2-アンスラセニル基、9-アンスラセニル基、4-t-ブチルフェニル基、2,4-ジ-t-ブチルフェニル基、9-フルオレニル基、シクロヘキシル基等を挙げることができ、ヘテロ原子含有炭化水素基として、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-n-プロピルシリル基、トリフェニルシリル基、2,6-ジフルオロフェニル基、2,4,6-トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、カルバゾール基等を挙げることができ、基-Q-Rとしては、Qは直接結合又はCH-であり、Rはピリジル基、ピリジルメチル基、ピリジルフェニル基、ピリミジニル基、ピリミジニルメチル基、ピリミジニルフェニル基、ピリダジニル基、ピリダジニルメチル基、ピリダジニルフェニル基、オキサゾリル基、オキサゾリルメチル基、オキサゾリルフェニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾイミダゾリルメチル基、ベンゾイミダゾリルフェニル基、アクリジニル基、アクリジニルメチル基、アクリジニルフェニル基、フェナントロリル基、フェナントロリルメチル基、フェナントロリルフェニル基、ピロリジニル基、ピロリジニルメチル基、ピロリジニルフェニル基、ピペラジニル基、ピペラジニルメチル基、ピペラジニルフェニル基、モルホリニル基、モルホリニルメチル基、モルホリニルフェニル基、チオモルホリニル基、チオモルホリニルメチル基、チオモルホリニルフェニル基、イミダゾリル基、イミダゾリルメチル基、イミダゾリルフェニル基等を挙げることができる。
これらのうち、好ましいRとして、t-ブチル基、フェニル基、1-アンスラセニル基、2-アンスラセニル基、9-アンスラセニル基、4-t-ブチルフェニル基、2,4-ジ-t-ブチルフェニル基、9-フルオレニル基、シクロヘキシル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリ-n-プロピルシリル基、トリフェニルシリル基、2,6-ジフルオロフェニル基、2,4,6-トリフルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、カルバゾール基、ピリジル基、ピリジルメチル基、ピリジルフェニル基、ピリミジニル基、ピリミジニルメチル基、ピリミジニルフェニル基、ピリダジニル基、ピリダジニルメチル基、ピリダジニルフェニル基、オキサゾリル基、オキサゾリルメチル基、オキサゾリルフェニル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾイミダゾリルメチル基、ベンゾイミダゾリルフェニル基、アクリジニル基、アクリジニルメチル基、アクリジニルフェニル基、フェナントロリル基、フェナントロリルメチル基、フェナントロリルフェニル基、イミダゾリル基、イミダゾリルメチル基、イミダゾリルフェニル基が挙げられる。更に、特に好ましいものは、t-ブチル基、9-アンスラセニル基、トリメチルシリル基、ペンタフルオロフェニル基、カルバゾール基、ピリジル基、ピリミジル基、ピリダジニル基、ベンゾイミダゾリル基、イミダゾリル基、アクリジニル基、フェナントロリル基が挙げられる。
【0048】
一般式(A)又は(B)において、R、R、R、R、R及びRのうちの少なくとも1つは、基-Q-Rである。配位子の立体的な嵩高さ、基-Q-Rに含まれる塩基性部位の電子的な相互作用により触媒としての機能が向上しやすいため、前記R、R及びRの少なくともいずれか1つが基-Q-Rであることが好ましい。
【0049】
一般式(A)又は(B)において、基-Q-Rの位置は特に限定されないが、基-Q-RはR若しくはR、又はRとして配置されることが好ましく、R若しくはRに配置されることが特に好ましい。
【0050】
一般式(A)で示される化合物の具体例を以下に示すが、下記例示に限定されるものではない。一般式(B)で示されるものの例は、下記例示化合物のアニオンである。また、tBuは、ターシャリーブチル基を意味する。
【化2】
【0051】
金属触媒成分(2)には、前記一般式(A)又は(B)で表される化合物のほか、又はこれらに加えて、下記一般式(E)、(F)、(G)で表される化合物を用いてもよい。これらは例示であり、これらに限定されない。
【化3】
【0052】
上記一般式(E)、(F)、(G)において、R20~R26は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基、シアノ基、ニトロ基又は基-Q-Rを表す。ただし、R20~R26のいずれか少なくとも1つは、基-Q-Rである。Q及びRは、先に定義したとおりである。
【0053】
20~R26において、ハロゲン原子の好ましい具体例は、フッ素、塩素、臭素である。これらの中で、更に好ましいハロゲン原子は、塩素である。
【0054】
20~R26において、炭素数1~30の炭化水素基に含まれていてもよいヘテロ原子としては、酸素、窒素、リン、硫黄、セレン、ケイ素、フッ素、ホウ素が挙げられる。これらのうち、酸素、窒素、硫黄、ケイ素が好ましい。また、これらのヘテロ原子を含むヘテロ原子含有基としては、酸素含有基として、アルコキシ基、アリーロキシ基、アシル基、アロイル基、カルボキシレート基が挙げられる。窒素含有基としては、アミノ基、アミド基が挙げられる。硫黄含有基としては、チオアルコキシ基やチオアリーロキシ基が挙げられる。リン含有置換基としては、ホスフィノ基が挙げられる。セレン含有基としては、セレニル基が挙げられる。ケイ素含有基としては、トリアルキルシリル基、ジアルキルアリールシリル基、アルキルジアリールシリル基が挙げられ、フッ素含有基としては、フルオロアルキル基、フルオロアリール基が挙げられる。ホウ素含有基としては、アルキルホウ素基、アリールホウ素基が挙げられる。
ヘテロ原子含有基の具体例としては、R及びRで例示したものが挙げられる。
20~R26において、炭素数1~30の炭化水素基としては、先に例示した基を挙げることができるが、それらに限定されないのは自明である。
【0055】
[金属錯体]
成分(2)における、金属触媒成分又は前記一般式(A)又は(B)で表される化合物の少なくとも1種と、前記遷移金属Mを含む遷移金属化合物(C)の少なくとも1種との反応生成物として、下記一般式(D):
【化4】

[式中、E、X、R、R、R、R、R、R及びMは、先に定義したとおりであり、Lは、Mに配位することができるリガンドであり、Rは、水素原子又はヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~20の炭化水素基であり、RとLが互いに結合して環を形成してもよい]で示される金属錯体が含まれることが好ましい。一般式(D)で示される金属錯体は、例えば、一般式(A)又は(B)で表される化合物と遷移金属Mを含む遷移金属化合物(C)との接触により得ることができる。したがって本発明の一態様は、前記一般式(A)又は一般(B)で表される化合物の少なくとも1種と、成分(1)としての固体担体とを接触させた後、さらに周期表9族、10族又は11族に属する遷移金属Mを含む遷移金属化合物(C)を接触させる工程を含むことを特徴とする、オレフィン重合触媒の製造方法に関する。なお、本発明において「接触」、固体担体と「接触する」という語は、対象化合物同士の少なくとも一部が相互作用を形成することを意味する。相互作用の実態は物理吸着、静電気的な作用、共有結合の形成、配位結合等があり、特に制限されない。上記一般式(D)で表される金属錯体について具体的にいうと、上記一般式(A)又は(B)で表される化合物のEが、上記遷移金属Mを含む遷移金属化合物(C)の遷移金属Mと配位結合を形成でき、かつ/又は、上記一般式(A)又は(B)で表される化合物中のXが、上記遷移金属Mを含む遷移金属化合物(C)の遷移金属Mと単結合を形成できるように、前記一般式(A)又は(B)で表される化合物と、上記遷移金属Mを含む遷移金属化合物(C)とが十分近傍に存在することを意味する。そして、上記一般式(A)又は(B)で表される化合物と、上記遷移金属Mを含む遷移金属化合物(C)との接触とは、これらの化合物を充分近傍に存在させ、上記2種類の結合の少なくともいずれか一方が形成できるように、これらの化合物を混合することを意味する。
【0056】
Mは、周期表の9族、10族又は11族に属する遷移金属であるが、好ましくは、10族のニッケル、パラジウム、白金及び9族のコバルト、ロジウム及び11族の銅であり、更に好ましくは、10族のニッケル、パラジウム、白金であり、最も好ましくは10族のニッケル又はパラジウムである。
【0057】
Mの価数については2価が好ましい。ここでMの価数とは、有機金属化学で用いられる形式酸化数(formal oxidation number)を意味する。すなわち、ある元素が関与する結合中の電子対を電気陰性度の大きい元素に割り当てたとき、その元素の原子上に残る電荷の数を指す。例えば、一般式(D)において、Eがリン、Xが酸素、Mがニッケル、Rがフェニル基、Lがピリジンであり、ニッケルがリン、酸素、フェニル基の炭素、ピリジンの窒素と結合を形成している場合、ニッケルの形式酸化数、すなわちニッケルの価数は2価となる。上述の定義に基づき、これらの結合において、電子対は、ニッケルよりも電気陰性度の大きいリン、酸素、炭素、窒素に割り当てられ、電荷は、リンが0、酸素が-1、フェニル基が-1、ピリジンが0で、錯体は、全体として電気的に中性であるため、ニッケル上に残る電荷は+2となるからである。2価の遷移金属としては、例えば、ニッケル(II)、パラジウム(II)、白金(II)、コバルト(II)が好ましく、2価以外では、銅(I)又はロジウム(III)も好ましく用いることができる。
【0058】
は、水素原子又は炭素数1~20のヘテロ原子を含有していてもよい炭化水素基を表す。重合又は共重合反応は、MとRの結合にα-オレフィン成分又は(メタ)アクリル酸エステル成分が挿入することによって、開始されると考えられる。したがって、Rの炭素数が過度に多いと、この開始反応が阻害される傾向にある。このため、好ましいRとしては、炭素数1~16、更に好ましくは炭素数1~10である。
の具体的な例としては、ヒドリド基、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェニル基、p-メチルフェニル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基等を挙げることができる。
【0059】
は、Mに配位したリガンドを表す。リガンドLは、配位結合可能な原子として、酸素、窒素、硫黄を有する炭素数1~20の化合物である。また、Lとして、遷移金属に配位可能な炭素-炭素不飽和結合を有する炭化水素(ヘテロ原子を含有していてもよい)も使用することができる。Lの炭化水素部分の構造は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、ヘテロ原子を含む環を形成していてもよい。好ましくは、Lの炭素数は1~16であり、更に好ましくは1~10である。また一般式(D)中のMと配位結合するLとしては、電荷を持たない化合物が好ましい。
【0060】
好ましいLとしては、ホスフィン類、ピリジン類、ピペリジン類、アルキルエーテル類、アリールエーテル類、アルキルアリールエーテル類、環状エーテル類、アルキルニトリル誘導体、アリールニトリル誘導体、アルコール類、アミド類、脂肪族エステル類、芳香族エステル類、アミン類、環状不飽和炭化水素類等を挙げることができる。更に好ましいLとしては、ピリジン類、環状エーテル類、脂肪族エステル類、芳香族エステル類、環状オレフィン類が挙げられ、特に好ましいLとして、トリアルキルホスフィン、ピリジン、ルチジン(ジメチルピリジン)、ピコリン(メチルピリジン)、RCO(R及びRは、先に定義したとおりである)を挙げることができる。なお、RとLが互いに結合して環を形成してもよい。そのような例として、シクロオクタ-1-エニル基を挙げることができ、これもまた好ましい態様である。
【0061】
[重合触媒]
本発明の重合触媒は、上記の固体担体(1)と金属触媒成分である成分(2)を含む。中でも、成分(2)に固体担体(1)を接触させて得られる重合触媒が好ましい。また、成分(2)を構成する基-Q-Rを有する化合物と周期表9、10、11族の遷移金属を含む化合物とを接触させた混合物に、固体担体(1)を接触させて得られる重合触媒が好ましく、また、成分(2)を構成する基-Q-Rを有する化合物と固体担体(1)とを接触させた混合物に、周期表の9、10、11族の遷移金属を含む化合物を接触させて得られる重合触媒が好ましい。上記の基-Q-Rを有する化合物として、一般式(A)又は(B)で表される化合物であることがより好ましい。
【0062】
本発明において、固体担体(1)はM 及びB(OR 3-nで処理されていてもよい。ここで、Mは、アルミニウム又はホウ素を表し、R及びRは、それぞれ独立に、炭素数1~20の炭化水素基を表し、nは、1~3の整数を表す。金属Mは、アルミニウムであることが好ましい。R及びRは、炭素数1~8の炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ブチル基、フェニル基であることがより好ましい。
【0063】
好ましいM の具体例としては、トリメチルアルミニウム(AlMe、TMA)、トリエチルアルミニウム(AlEt:TEAL)、トリイソブチルアルミニウム(AlBu:TIBA)、トリn-オクチルアルミニウム(TNOA)等が挙げられる。入手の容易性等の観点から、トリエチルアルミニウム又はトリイソブチルアルミニウムがより好ましい。
【0064】
好ましいB(OR 3-nの具体例としては、BMeBHT、BMeBHT、BEtBHT、BEtBHT、BPrBHT、BPrBHT、BBuBHT、BBuBHT、BEt(OEt)、BEt(OEt)、BEt(OPr)、BEt(OPr)、BBu(OEt)、BBu(OEt)、BBu(OPr)、BBu(OPr)、B(OMe)、B(OEt)、B(OBu)等が挙げられる。ここで、Meはメチル基、Etはエチル基、Prはイソプロピル基、Buはブチル基(n-ブチル基、イソブチル基)、BHTは2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノレート基を表す。入手の容易性等の観点から、B(OEt)がより好ましい。
【0065】
固体担体(1)を前記M 及びB(OR 3-nで処理する工程は、固体担体(1)を金属触媒成分(2)で処理する工程の前、工程と同時、工程の後いずれの時点で行われていてもよい。また、基-Q-Rを有する配位性化合物と遷移金属化合物(C)とを接触させて一般式(D)で表される金属錯体を単離した後、M 及びB(OR 3-nと接触させてもよい。
【0066】
触媒各成分の接触時、又は接触後にオレフィン重合体、シリカ、アルミナ等の無機酸化物の固体を共存させるか、もしくは接触させてもよい。更に、触媒各成分の接触時、又は接触後に、後述するルイス塩基を共存させるか、もしくは接触させてもよい。各接触圧力及び時間に特に制限はなく、加圧から減圧下、1秒~24時間で重合触媒を得ることが出来る。
【0067】
接触は窒素等の不活性ガス中で行ってもよいし、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素溶媒中で行ってもよい。これらの溶媒は、水や硫黄化合物等の被毒物質を除去する操作を施したものを使用するのが好ましい。接触温度は、-20℃ないし使用する溶媒の沸点の間で行い、特には、室温から使用する溶媒の沸点の間で行うのが好ましい。
触媒各成分の使用比に特に制限はないが、固体担体として、ケイ酸塩を除くイオン交換性層状化合物、又は無機ケイ酸塩を用いる場合は、固体担体1gあたり、遷移金属化合物が0.0001mmol~10mmol、好ましくは0.001mmol~5mmolとなるように設定することにより、重合活性等の点で好適な結果が得られる。ルイス塩基の量としては、触媒成分中の遷移金属Mに対して、0.0001当量~1000当量、好ましくは0.1当量~100当量、更に好ましくは0.3当量~30当量である。
【0068】
このようにして得られた触媒は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素溶媒で洗浄して使用してもよいし、洗浄せずに用いてもよい。洗浄の際に、必要に応じて、新たに上述のM 及びB(OR 3-nを組合せて用いてもよい。この際に用いられるM 及びB(OR 3-nの量は、遷移金属化合物(C)中の遷移金属Mに対するホウ素及びアルミニウム比がモル比で1:0.1~100になるようにするのが好ましい。
【0069】
また、得られた触媒をオレフィンで予備重合して得られるオレフィン予備重合触媒を経て、オレフィン重合体を製造してもよい。すなわち、得られた触媒が、オレフィンで予備的に重合されることでオレフィン予備重合触媒が得られる。該予備重合触媒は、必要に応じて洗浄してもよい。この予備重合は窒素等の不活性ガス中、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素溶媒中で行ってもよい。また用いるオレフィンは分子量が小さいものが好ましく、具体的には、エチレン、プロピレンが好ましい。更に、オレフィン重合触媒を予備重合する際、後述するルイス塩基を含有させて、ルイス塩基の存在下にオレフィンで予備的に重合してもよい。得られた予備重合触媒は、必要に応じて洗浄してオレフィン重合体の製造に供することができる。
即ち、更に別の本発明の一態様では、更に、前記方法で得られたオレフィン重合触媒を、オレフィンで予備重合する工程を含む、オレフィン予備重合触媒の製造方法に関する。また別の一態様では、本発明は、前記予備重合がルイス塩基の存在下で行われる、オレフィン予備重合触媒の製造方法に関する。更に別の一態様では、本発明は、オレフィンがエチレン又はプロピレンである、オレフィン予備重合触媒の製造方法に関する。
【0070】
なお、予備重合後のオレフィン予備重合触媒の構造は、予備重合前と比較して予備重合によって生成したポリマーが触媒成分の一部として含まれたものとなるが、その構造を一義的に定義することは困難である。重合触媒又は重合触媒成分は、含まれる金属成分や予備重合によって生成したポリマー種等、その構成成分としてマクロに分析できる。一方で、予備重合前触媒のどのような部位や部分構造で選択的に予備重合が進行し、その結果予備重合ポリマーがどのような触媒部位に偏在して存在しているか等、ミクロな構造については種々の形態をとり得ることができ、それらミクロ構造の形態を具体的に定義することは、現時点での分析技術を用いては困難である。
【0071】
本発明の重合触媒は、例えば、上記一般式(A)又は(B)で表される化合物と上記遷移金属化合物(C)とを、((A)+(B)):(C)=1:99~99:1(モル比)の量で、0℃~100℃のトルエンやベンゼン等の有機溶媒中で、減圧~加圧下で1秒~86400秒間接触させることにより、得ることができる。上記遷移金属化合物(C)として、Ni(COD)のトルエン又はベンゼン溶液を用いる場合には、溶液の色が黄色から、例えば赤色に変化することにより、反応生成物の生成が確認できる。
反応後、上記遷移金属化合物(C)を構成している成分であって、上記遷移金属化合物(C)の遷移金属以外の成分は、上記一般式(A)で表される成分のZを除いた部分や上記一般式(B)で表される成分によって置換されて、上記一般式(D)で表される金属錯体が生成すると考えている。
この置換反応は、定量的に進行するほうが好ましいが、場合によっては完全に進行しなくてもよい。反応終了後、上記一般式(D)で表される金属錯体以外に、出発物質由来の他の成分が共存するが、重合反応又は共重合反応を行う際に、これらの他の成分は、除去してもよいし、除去しなくてもよい。一般的には、これらの他の成分は、除去した方が、高活性が得られるので好ましい。
【0072】
反応を行う際に、遷移金属Mに配位したリガンドLを共存させてもよい。遷移金属Mとして、ニッケルやパラジウムを用いた場合には、ルイス塩基性のLを系内に共存させることによって、上記一般式(D)で表される金属錯体の安定性が増す場合があり、このような場合には、Lが重合反応又は共重合反応を阻害しない限りにおいて、Lを共存させることが好ましい。
【0073】
上記一般式(D)で表される金属錯体を調製する反応を、オレフィンの重合やオレフィンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合に使用する反応器とは別の容器で予め行ったうえで、得られた一般式(D)で表される金属錯体をオレフィンの重合やオレフィンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合に供してもよいし、反応をこれらのモノマーの存在下に行ってもよい。また、上記一般式(D)で表される金属錯体を調製する反応を、オレフィンの重合やオレフィンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合に使用する反応器の中で行ってもよい。この際に、これらのモノマーは存在していてもよいし、存在していなくてもよい。また、上記一般式(A)又は(B)で表される化合物については、それぞれ単独で用いてもよいし、それぞれ複数種の化合物を併用してもよい。特に、分子量分布やコモノマー含量分布を広げる目的には、こうした複数種の併用が有用である。
【0074】
[オレフィン重合]
本発明の一態様は、上記オレフィン重合触媒を用いた、オレフィン重合体の製造方法に関する。すなわち、成分(3)としての、固体担体及び周期表9族、10族又は11族に属する遷移金属Mを含み、1つ以上の基-Q-Rを有する金属触媒成分を含有するオレフィン重合触媒、又は、成分(4)としての、前記一般式(A)又は一般(B)で表される化合物の少なくとも1種と、固体担体とを接触させた後、さらに周期表9族、10族又は11族に属する遷移金属Mを含む遷移金属化合物(C)を接触させる工程を含む方法で得られるオレフィン重合触媒の存在下、オレフィンから選ばれるモノマーを単独重合又は共重合することを特徴とするオレフィン重合体の製造方法に関する。
重合されるオレフィンは、複数種のモノマーの共重合に付されることができる。したがって、本発明の一つの態様は、前記成分成分(3)又は(4)の存在下、オレフィンから選ばれる少なくとも1種のモノマーと少なくとも1種の極性基含有モノマーを共重合することを特徴とする極性基含有オレフィン共重合体の製造方法に関する。
【0075】
<重合体の構成モノマー>
本発明において重合反応に付されるモノマーは、炭素-炭素二重結合を有する直鎖状、分岐鎖状又は脂環式炭化水素である。特に、エチレン、プロピレン及びα-オレフィンが例示される。α-オレフィンは炭素鎖末端に炭素-炭素二重結合を有する分子である。α-オレフィンの構造としては炭素数4~20のものが好ましく、分岐、環及び/又は末端以外に不飽和結合を有していてもよい。炭素数が20より大きいと、十分な重合活性が発現しないことがある。このため、エチレン、プロピレン、炭素数4~10のα-オレフィンがより好ましい。さらに好ましいモノマーとしては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、3-メチル-1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、ビニルシクロヘキセン、スチレン等が挙げられる。モノマーとしては、1種類のみを用いてもよく、2種類以上のα-オレフィンを同時に用いてもよい。
【0076】
本発明において重合反応に付されるモノマーは、α-オレフィン以外の例として、末端以外に炭素-炭素二重結合を有するアルケン、極性基含有モノマーもしくは非極性環状オレフィンが挙げられる。本発明の方法では、オレフィンを単独で用いてもよく、又は、オレフィンと極性基含有モノマーもしくは非極性環状オレフィンとを同時に用いてもよい。
【0077】
末端以外に炭素-炭素二重結合を有するアルケンの例としては、2-ブテン、2-ペンテン、2-ヘキセンなどが挙げられる。これらモノマーは単一の成分を使用してもよいし、複数種を併用してもよい。
【0078】
非極性環状オレフィンの例としては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、ノルボルネン、ノルボルナジエンなどが挙げられる。これらモノマーは単一の成分を使用してもよいし、複数種を併用してもよい。
【0079】
共重合に供される極性基含有モノマーとしては、エチレン、プロピレン、α-オレフィン、末端以外に炭素-炭素二重結合を有するアルケン又は非極性環状オレフィンに、極性を有する官能基を導入したモノマーが挙げられる。エチレン、プロピレン、α-オレフィンに、極性を有する官能基を導入したモノマーの例としては、一般式:CH=C(R10)(R11)で表される極性基含有モノマーが挙げられる。極性基含有モノマーの好ましい例は、(メタ)アクリル酸エステルである。ここで、R10は、水素原子又は炭素数1~10の炭化水素基を表し、R11は、-COOR12(ここでR12は炭素原子数1~20の炭化水素基を表す)、-CON(-R12’(ここでR12’は各々独立して水素原子又は炭素原子数1~20の炭化水素基を表す)、シアノ基、又は置換されていてもよいアリール基を表す。より十分な重合活性を発現させることができるため、R10は、好ましくは水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基である。より好ましくは、R10は水素原子又はメチル基である。R11としては、前記置換基であれば特に制限はないが、共重合体としたときの用途が広く存在することから、-COOR12又はアリール基であることが好ましい。このとき、R12の炭素数が20を超えると、重合活性が低下する傾向がある。よって、R12は、好ましくは炭素数1~12の炭化水素基であり、さらに好ましくは炭素数1~8の炭化水素基である。
また、R12としては炭素原子及び水素原子で構成されるものが好ましいが、R12内には、酸素原子、硫黄原子、セレン原子、リン原子、窒素原子、ケイ素原子、フッ素原子、ホウ素原子等のヘテロ原子が含まれていてもよい。これらのヘテロ原子のうち、酸素原子、ケイ素原子、フッ素原子が好ましく、酸素原子がさらに好ましい。水素原子でない場合のR12’の好ましい範囲・例示についても、R12と同様である。
【0080】
末端以外に炭素-炭素二重結合を有するアルケン、非極性環状オレフィンに極性を有する官能基を導入したモノマーとしては、これらアルケン又は環状オレフィンの例示化合物に、前記R11で表される置換基を任意の箇所に導入した化合物が挙げられる。
【0081】
極性基含有モノマーとしてさらに好ましい例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸-2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸-2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチル、(メタ)アクリル酸-3,3,3-トリフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロエチル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルジメチルアミド、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、アクリロニトリル、スチレン、酢酸アリル、ビニルアニソール、5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸t-ブチル、5-ノルボルネン-2-メタノール、5-ノルボルネン-2-メチルアミン、5-ノルボルネン-2-メチルピバルアミド、酢酸5-ノルボルネン-2イル等が挙げられる。より好ましくは、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸t-ブチル、アクリロニトリル、スチレン、4-アセトキシスチレン、4-ニトロスチレン、酢酸アリル、ビニルアニソール、5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸t-ブチル、5-ノルボルネン-2-メチルピバルアミド、酢酸5-ノルボルネン-2イルから選ばれる少なくとも1種である。これらモノマーは単一の種類を使用してもよいし、複数種類を併用してもよい。
【0082】
以上のモノマーの種類は、得られる重合体に要求される物性に合わせて適宜選択することができる。また、場合により、2種類以上のモノマーの組成物を共重合させることも可能であり、2種類以上の極性基含有モノマーからなる組成物を共重合させることも可能である。配合されるモノマーの量、各モノマー間の量比は、得られる共重合体に要求される物性に合わせて適宜設定することができる。
【0083】
<重合反応>
本発明の触媒の存在下で行われる重合反応は、その重合形式に特に制限はない。媒体中で少なくとも一部の生成重合体がスラリーとなるスラリー重合、液化したモノマー自身を媒体とするバルク重合、気化したモノマー中で行う気相重合、又は、高温高圧で液化したモノマーに生成重合体の少なくとも一部が溶解する高圧イオン重合等が好ましく用いられる。また、バッチ重合、セミバッチ重合、連続重合のいずれの形式でもよい。また、リビング重合であってもよいし、連鎖移動を併発しながら重合を行ってもよい。更に、いわゆるchain transfer agent(CTA)を併用し、chain shuttlingや、coordinative chain transfer polymerization(CCTP)を行ってもよい。
重合反応は、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の炭化水素溶媒や液化α-オレフィン等の液体、また、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、酢酸エチル、安息香酸メチル、アセトン、メチルエチルケトン、ホルムアミド、アセトニトリル、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール等のような極性溶媒の存在下あるいは非存在下に行ってもよい。また、ここで記載した液体化合物の混合物を溶媒として使用してもよい。更に、イオン液体も溶媒として使用可能である。なお、高い重合活性や高い分子量を得る観点からは、上述の炭化水素溶媒やイオン液体がより好ましい。
【0084】
公知の添加剤の存在下又は非存在下で重合反応を行うことができる。添加剤としては、ラジカル重合を禁止する重合禁止剤や、生成共重合体を安定化する作用を有する添加剤が好ましい。例えば、キノン誘導体やヒンダードフェノール誘導体等が好ましい添加剤の例として挙げられる。具体的には、モノメチルエーテルハイドロキノンや、2,6-ジ-t-ブチル4-メチルフェノール(BHT)、トリメチルアルミニウムとBHTとの反応生成物、4価チタンのアルコキサイドとBHTとの反応生成物等が使用可能である。また、添加剤として、無機及び又は有機フィラーを使用し、これらのフィラーの存在下で重合を行ってもよい。
【0085】
好ましい添加剤として、ルイス酸も挙げられる。適切なルイス酸を選択することにより、活性、分子量、アクリル酸エステルの共重合性を改良することができる。ルイス酸の量としては、重合系内に存在する触媒成分中の遷移金属Mに対して、0.0001当量~100当量、好ましくは0.1当量~50当量、更に好ましくは、0.3当量~30当量である。ルイス酸を重合系に添加する方法については、特に制限はなく、任意の手法を用いることができる。例えば、本発明の触媒成分と混合して添加してもよいし、モノマーと混合して添加してもよいし、触媒成分やモノマーとは独立に重合系に添加してもよいし、モノマーと混合して添加してもよい。また、複数のルイス酸を併用してもよい。
【0086】
添加するルイス酸は、モノマーやルイス塩基と混合することによって生成する変性ルイス酸を用いてもよいが、その混合の順序に特に制限はなく、ルイス酸にモノマーやルイス塩基を添加してもよいし、モノマーやルイス塩基にルイス酸を添加してもよい。
変性ルイス酸の調製条件、例えば接触圧力及び時間に特に制限はなく、加圧から減圧下、1秒~24時間で変性ルイス酸を得ることが出来る。接触は窒素等の不活性ガス中で行ってもよいし、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素溶媒中で行ってもよい。これらの溶媒は、水や硫黄化合物等の被毒物質を除去する操作を施したものを使用するのが好ましい。接触温度は、-20℃ないし使用する溶媒の沸点の間で行い、特には、室温から使用する溶媒の沸点の間で行うのが好ましい。
【0087】
ルイス酸とモノマーやルイス塩基の使用比に特に制限はないが、ルイス酸とモノマーやルイス塩基とのモル比が1:0.5~10,000、好ましくは1:0.8~1,000となるように制御することが、重合活性等の点で好ましい。
具体的なルイス酸として、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリn-ペンチルアルミニウム、トリn-オクチルアルミニウム、トリn-デシルアルミニウムが挙げられる。
【0088】
未反応モノマーや媒体は、生成共重合体から分離し、リサイクルして使用してもよい。リサイクルの際、これらのモノマーや媒体は、精製して再使用してもよいし、精製せずに再使用してもよい。生成共重合体と未反応モノマー及び媒体との分離には、従来公知の方法が使用できる。例えば、濾過、遠心分離、溶媒抽出、貧溶媒を使用した再沈等の方法が使用できる。
【0089】
重合温度、重合圧力及び重合時間に、特に制限はないが、通常は、以下の範囲から生産性やプロセスの能力を考慮して、最適な設定を行うことができる。すなわち、重合温度は、通常-20℃~290℃、好ましくは0℃~250℃、共重合圧力は、0.1MPa~300MPa、好ましくは、0.3MPa~250MPa、重合時間は、0.1分~10時間、好ましくは、0.5分~7時間、更に好ましくは1分~6時間の範囲から選ぶことができる。重合は、一般に不活性ガス雰囲気下で行われる。例えば、窒素、アルゴン、二酸化炭素雰囲気が使用でき、窒素雰囲気が好ましく使用される。なお、少量の酸素や空気の混入があってもよい。
【0090】
重合反応器への触媒とモノマーの供給に関しても特に制限はなく、目的に応じてさまざまな供給法をとることができる。たとえばバッチ重合の場合、あらかじめ所定量のモノマーを重合反応器に供給しておき、そこに触媒を供給する手法をとることが可能である。この場合、追加のモノマーや追加の触媒を重合反応器に供給してもよい。また、連続重合の場合、所定量のモノマーと触媒を重合反応器に連続的に、又は間歇的に供給し、重合反応を連続的に行う手法をとることができる。
共重合体の組成の制御に関しては、複数のモノマーを反応器に供給し、その供給比率を変えることによって制御する方法を一般に用いることができる。その他、触媒の構造の違いによるモノマー反応性比の違いを利用して共重合組成を制御する方法や、モノマー反応性比の重合温度依存性を利用して共重合組成を制御する方法が挙げられる。
【0091】
重合体の分子量制御には、従来公知の方法を使用することができる。すなわち、重合温度を制御する方法、モノマー濃度を制御する方法、連鎖移動剤を使用する方法、遷移金属錯体中のリガンド構造の制御による方法等が挙げられる。連鎖移動剤を使用する場合には、従来公知の連鎖移動剤を用いることができる。例えば、水素、メタルアルキル等を使用することができる。
【0092】
また、(メタ)アクリル酸エステル成分自身が一種の連鎖移動剤となる場合には、(メタ)アクリル酸エステル成分の濃度やオレフィン成分に対する比率を制御することによっても、分子量調節が可能である。遷移金属錯体中のリガンド構造を制御して、分子量調節を行う場合には、前記R、R中のヘテロ原子含有基の種類、数、配置を制御したり、遷移金属Mのまわりに嵩高い置換基を配置したり、前記したR中にヘテロ原子を導入したりすることによって、一般に分子量が向上する傾向を利用することができる。なお、遷移金属Mに対して、アリール基やヘテロ原子含有置換基等の電子供与性基が相互作用可能となるように電子供与性基を配置することが好ましい。こうした電子供与性基が金属Mと相互作用可能であるかどうかは、一般に、分子模型や分子軌道計算で電子供与性基と金属Mとの距離を測定することによって判断できる。
【0093】
本発明の触媒組成物は、高い活性、分子量、コモノマーの取り込み効率でα-オレフィンと極性基含有ビニルモノマーの共重合体を提供することができるため、様々な特性を備えた重合体を提供するための方法として利用可能である。本発明の共重合体は、極性基を有するモノマー単位を多く含むため、共重合体の極性基にもとづく効果により、良好な塗装性、印刷性、帯電防止性、無機フィラー分散性、他樹脂との接着性、他樹脂との相溶化能等がより強く発現する。こうした性質を利用して、本発明の共重合体は、さまざまな用途に使用することができる。例えば、フィルム、シート、接着性樹脂、バインダー、相溶化剤、ワックス等として使用可能である。
【実施例0094】
次に本開示を実施例によって具体的に説明するが、本開示はその要旨を逸脱しない限りこれらの実施例によって制約を受けるものではない。なお、極性基含有オレフィン共重合体等の物性等は、以下の方法で測定した。
[極性基含有オレフィン共重合体の構造]
極性基含有オレフィン共重合体の構造は、BRUKER(株)製Ascend500又はBRUKER(株)製AVANCE400を用いたH-NMR及び13C-NMR解析により決定した。
極性基含有オレフィン共重合体が水酸基を持つと予想される場合は、サンプルの前処理として、当該共重合体をトルエン溶液中で無水酢酸と90℃4時間の反応を行い、水酸基をすべてアセトキシ化してからNMR測定に供した。
NMR測定は、溶媒として1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2を用い、H-NMR測定の重合体濃度は5質量%、13C-NMRの重合体濃度は15質量%として、120℃で行った。又は、NMR測定の一部は、約150mgの極性基含有オレフィン共重合体を1,2-ジクロロベンゼン:ブロモベンゼン-d=1:2の混合溶媒2.4mLに加熱溶解して均一な溶液として120℃で行った。
13C-NMRは緩和試薬としてクロム(III)アセチルアセトナートを用い、逆ゲート付きデカップリング法を用いて測定(9.0マイクロ秒の90°パルス、スペクトル幅:31kHz、緩和時間:10秒、取り込み時間:10秒、FIDの積算回数5,000~10,000回)し、定量分析を行った。又は、13C-NMRの一部は逆ゲート付きデカップリング法を用いて測定(15.8マイクロ秒の90°パルス、スペクトル幅:25kHz、緩和時間:50秒、取り込み時間:1.5秒、FIDの積算回数1,024回)し、定量分析を行った。
[数平均分子量及び重量平均分子量]
数平均分子量及び重量平均分子量は、東ソー(株)製、TSKgel GMHHR-H(S)HTカラム(7.8mmI.D.×30cmを2本直列)を備えた東ソー(株)製高温GPC装置、HLC-8321GPC/HTを用い、ポリスチレンを分子量の標準物質とするサイズ排除クロマトグラフィー(溶媒:1,2-ジクロロベンゼン、温度:145℃)、又は、昭和電工(株)製、AT-806MSカラム(8.0mmI.D.×25cmを3本直列)を備えたWaters(株)製高温GPC装置、ALC/GPC 150Cを用い、ポリスチレンを分子量の標準物質とするサイズ排除クロマトフラフィー(溶媒:1,2-ジクロロベンゼン、温度;140℃)により算出した。
以下は略称名。
t-Bu(tBu):ターシャリーブチル
n-Bu(nBu):ノルマルブチル
OMOM:メトキシメトキシ
THF:テトラヒドロフラン
EtO:ジエチルエーテル
tmeda:テトラメチルエチレンジアミン
Et:エチル
【0095】
[遷移金属錯体の合成]
(合成例1)
以下に示す合成ルートで、配位子1a(化合物4)を合成した。
【化5】
【0096】
(1)化合物2の合成
250mLシュレンク管に、窒素雰囲気中で、NaH(2.3g、0.094mol)、溶媒としてのTHF(50mL)を加え、t-Buフェノール(9.6mL、0.063mol)を0℃にて滴下し、室温で1時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を0℃に冷却し、クロロメチルメチルエーテル(5.7mL、0.075mol)を加え、室温で20時間撹拌した。KOH水溶液(KOH 5.5g,水 46mL)を加え、酢酸エチル(30mL×3)から抽出を行った。NaSOで乾燥させ、濾過、溶離液としてヘキサンを用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製を行った。さらにCaHでの乾燥、セライトパッドでの濾過、減圧乾燥により化合物2を得た。(8.4g、69%yield)
【0097】
(2)化合物3の合成
250mLシュレンク管に、窒素雰囲気中で、上記(1)で得られた化合物2(8.4g、43.2mmol)、溶媒としてのTHF(40mL)を加え、ヘキサン溶媒中1.56MのnBuLi(27.7mL,43.2mmol)を0℃にて滴下し、室温で2時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を-78℃に冷却し、40mLのTHFに溶解させたtBuPCl(6.9g、43.2mmol)を加え、室温で12時間撹拌した。反応終了後、セライトパッドでの濾過、減圧乾燥により化合物3を得た。(13.5g、99%yield)
【0098】
(3)配位子1a(化合物4)の合成
250mLシュレンク管に、窒素雰囲気中で、ヘキサン溶媒中2.64MのnBuLi(3.6mL、9.5mmol)、溶媒としてのEtO(25mL)を加えた。-100℃にて、20mLのEtOに溶解させた3-ブロモピリジン(923.6μL、9.5mmol)をゆっくりと滴下し、1時間撹拌した。6mLのEtOに溶解した上記(2)で得られた化合物3(1.0g、3.2mmol)をゆっくりと滴下し、1時間撹拌した。反応終了後、窒素で脱気した水を-40℃にて6.0mL加え、減圧乾燥を行った。続いて、窒素により脱気した160mLの水と10MのHCl(1.6mL、15mmol)を加え50℃にて22時間撹拌した。反応終了後、窒素で脱気した1MのNH水溶液(18mL、18mmol)を加え2時間撹拌した。窒素雰囲気下にて30mLのジクロロメタンで3回抽出を行い、NaSOで乾燥させ、上澄み液を回収した。アルゴン雰囲気下のグローブボックス中で4mLのEtOに溶解させ、ゆっくりと溶媒を蒸発させることで再結晶によって配位子1a(化合物4)を得た。(220mg,22%yield)
【0099】
(合成例2)
以下に示す合成ルートで金属錯体1b(化合物5)を合成した。
【化6】

15mLバイアル中、アルゴン雰囲気下で、溶媒としてのEtO(5.0mL)、上記合成例1で得られた配位子1a(76mg,0.24mmol)、KH(19mg、0.48mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。続いて、Ni(4-FC)Br(tmeda)(84mg、0.24mmol)を加え、室温で24時間撹拌した。反応終了後、セライトパッドで濾過を行い、ピリジン(97μL,1.2mmol)を加え、2時間撹拌した。減圧乾燥により金属錯体1b(化合物5)を得た。
【0100】
(合成例3)
以下に示す合成ルートで、配位子1c(化合物9)を合成した。
【化7】
【0101】
(1)化合物6の合成
80mLシュレンク管に、窒素雰囲気中で、1-ブロモ-3,5-ジ-tert-ブチルベンゼン(5.0g、19mmol)、溶媒としてのTHF(30mL)を加えた。-78℃にて、ヘキサン溶媒中2.64MのnBuLi(7.1mL、19mmol)をゆっくりと滴下し、1時間撹拌した。6mLのTHFに溶解したギ酸メチル(570μL、9.3mmol)をゆっくりと滴下し、1時間撹拌した。反応終了後、飽和NHCl水溶液(25mL)を加え15分間撹拌した。30mLのジクロロメタンで3回抽出を行い、NaSOで乾燥させ、濾過を行い、減圧乾燥を行った。溶離液としてヘキサン、ジクロロメタンを1:1で用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製、減圧乾燥を行った。生成した化合物を2mLのジクロロメタンに溶解させ、6mLのヘキサンを加え、0℃にて8日間再結晶を行った。上澄み液を除き、アルゴン雰囲気下のグローブボックス中で減圧乾燥を行い、化合物6を得た。(900mg,24%yield)
【0102】
(2)化合物7の合成
80mLシュレンク管に、窒素雰囲気中で、化合物6(0.84g、2.1mmol)、溶媒としてのEtOH(18mL)、酢酸(2mL)、10wt%Pd/C(84mg、79mmol)を加えた。液体窒素を用いて減圧を行った。Hガスを加え、室温に戻した後、17時間撹拌した。Hガスを放出し、セライトパッドを用いて濾過を行った後、50mLのジクロロメタンで抽出を3回行い、減圧乾燥を行った。溶離液としてヘキサン、ジクロロメタンを1:1で用いたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製、減圧乾燥を行い、化合物7を得た。(270mg、0.68mmol、33% yield)
【0103】
(3)化合物9の合成
15mLバイアル中に、アルゴン雰囲気下で、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン(113mg、800μmol)、2.64MのnBuLi(303μL、800μmol)、溶媒としてのTHF(2mL)を加え、45分間撹拌した。化合物7(130mg、320μmol)を加え、3時間撹拌した。続いて、化合物3(100mg、320μmol)を加え30分間撹拌した。反応終了後、80mLシュレンク管に、アルゴン雰囲気下で、Nで脱気した10MのHCl水溶液(0.32mL,3.2mmol)、溶媒としてのTHF(5mL)を加え、50℃にて12時間撹拌した。反応終了後、脱気した28wt%NH水溶液(60μL、3.2mmol)を加え1時間撹拌した。窒素雰囲気下5mLのジクロロメタンで抽出を行い、NaSOを含む別の80mLシュレンク管に移した。上澄み液を再び別の80mLシュレンク管に移した後、減圧蒸留を行い、セライトパッドを用いて濾過を行った後、減圧乾燥を行い、配位子1c(化合物9)を得た。(160mg、250μmol、72% yield)
【0104】
(実施例1)
50mLオートクレーブに、窒素雰囲気中で、溶媒としてトルエン(10mL)、合成例2から得られた金属錯体1b(8.2mg、0.015mmol)、固体担体としてWO/ZrO(3.73mmol、532.6mg)、モノマー(B)として酢酸アリル(1mL、8.5mmol)を順次加えた。当該オートクレーブをモノマー(A)としてエチレン(3.0MPa)で加圧しつつ、反応温度50℃で24時間撹拌した。当該オートクレーブを室温に戻し、メタノール(20mL)を加え、減圧乾燥した。析出した固体を、加熱したトルエンに溶解させ、シリカゲルを用いた濾過により濾液を回収し、減圧乾燥した。さらに100℃で4時間減圧乾燥を行った。得られた極性基含有オレフィン共重合体(重合体1)は3.1mgであった。重合体1の各種分析結果を表1に示した。
【0105】
(比較例1)
固体担体を用いなかった点以外は全て実施例1と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン共重合体(重合体4)は48.6mgであった。重合体4の各種分析結果を表1に示した。
【0106】
(実施例2)
50mLオートクレーブに、窒素雰囲気中で、溶媒としてトルエン(10mL)、配位子として配位子1a(4.7mg、0.015mmol)、遷移金属化合物としてトリス(トランススチルベン)ニッケル(9.0mg、0.015mmol)、固体担体としてWO/ZrO(4.5mmol、642.5mg)、モノマー(B)として酢酸アリル(0.1mL、0.85mmol)を順次加えた。当該オートクレーブをモノマー(A)としてエチレン(3.0MPa)で加圧しつつ、反応温度50℃で24時間撹拌した。当該オートクレーブを室温に戻し、メタノール(20mL)を加え、減圧乾燥した。析出した固体を加熱したトルエンに溶解させ、シリカゲルを用いた濾過により濾液を回収し、減圧乾燥した。さらに100℃で4時間減圧乾燥を行った。得られた極性基含有オレフィン共重合体(重合体2)は5.4mgであった。重合体2の各種分析結果を表1に示した。なお、重合活性は、化合物1aと遷移金属化合物が1:1で反応したとして算出した。
【0107】
(実施例3)
固体担体をシリカゲル(フラッシュクロマトグラフィー用40-50ミクロン球状、関東化学製)(4.5mmol、270.4mg)、モノマー(B)を酢酸アリル(0.1mL、0.85mmol)とした以外は全て実施例2と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン共重合体(重合体3)は0.9mgであった。重合体3の各種分析結果を表1に示した。なお、重合活性は、化合物1aと遷移金属化合物が1:1で反応したとして算出した。
【0108】
(比較例2)
固体担体を用いなかった点以外は全て実施例2と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン共重合体(重合体5)は1.1mgであった。重合体5の各種分析結果を表1に示した。なお、重合活性は、化合物1aと遷移金属化合物が1:1で反応したとして算出した。
【0109】
(実施例4)
モノマー(B)をアクリル酸メチル(0.1mL、1.1mmol)とした以外は全て実施例2と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン重合体4は9.3mgであった。当該極性基含有オレフィン重合体4の各種分析結果を表2に示した。
【0110】
(実施例5)
モノマー(B)を4-ペンテンニトリル(0.1mL、1.0mmol)とした以外は全て実施例2と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン重合体5は4.3mgであった。当該極性基含有オレフィン重合体5の各種分析結果を表2に示した。
【0111】
(実施例6)
モノマー(B)を塩化アリル(0.1mL、1.2mmol)とした以外は全て実施例2と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン重合体6は8.6mgであった。当該極性基含有オレフィン重合体6の各種分析結果を表2に示した。
【0112】
(実施例7)
モノマー(B)を4-クロロ-1-ブテン(0.1mL、1.0mmol)とした以外は全て実施例2と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン重合体8は104mgであった。当該極性基含有オレフィン重合体7の各種分析結果を表2に示した。
【0113】
(比較例3)
配位子として1c(9.4mg、15μmol)を用いた点以外は全て実施例3と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン共重合体3cは6.5mgであった。当該極性基含有オレフィン重合体3cの各種分析結果を表2に示した。
【0114】
(比較例4)
固体担体を用いなかった点以外は全て比較例3と同様に実施した。得られた極性基含有オレフィン共重合体4cは3.0mgであった。当該極性基含有オレフィン重合体4cは触媒残渣の影響により分析を実施できなかった。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
表1の結果が示すように、金属触媒成分を固体担体に担持した触媒組成物は、共重合体に組み込まれた極性基含有モノマーの量が多く、極性基含有オレフィンを高い効率で導入することができた。固体担体及び錯体がルイス酸・塩基の作用により担持されて安定な重合触媒になること,かつ酸性の固体担体が塩基性の極性基含有モノマーを吸着して極性基含有モノマー濃度を局所的に高め、共重合性を高めることができたと推測される。一方で、固体担体を含まない触媒では活性が十分ではなく(比較例1、2)、それに伴いコモノマーの量も高くはならなかった(比較例1、2)。またRに相当する基を有さない配位子を用いた比較例3では、コモノマー含量が十分ではなかった。さらに、Rに相当する基を有さない配位子を用い固体担体を使用しなかった比較例4は、低活性のため触媒残渣の影響により、得られた重合体からはNMR測定による定量には至れなかった。
【0118】
本発明は、以下の各項記載の触媒又はその製造方法に関する。
[1]下記の成分(1)及び成分(2)を含有するオレフィン重合触媒。
成分(1):固体担体
成分(2):周期表9族、10族又は11族に属する遷移金属Mを含み、1つ以上の基-Q-Rを有する金属触媒成分
ここで、Rは、1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数3~30の芳香族複素環基、1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数2~30の脂肪族複素環基、1つ以上の炭素数1~30の炭化水素基を有していてもよいアミノ基、炭素数1~30のイミノ基、置換基を有していてもよい炭素数1~30のアシルアミノ基、1つ以上の炭素数1~30の炭化水素基を有していてもよいアミノカルボニル基、炭素数1~30のイミド基、シアノ基、ニトロ基又はニトロソ基を表し、
Qは、直接結合又はヘテロ原子を含有してもよい炭素数1~20の二価の炭化水素基である。
[2]前記成分(2)が、下記一般式(A)又は(B)で表される化合物の少なくとも1種と、前記遷移金属Mを含む遷移金属化合物(C)の少なくとも1種との反応生成物であることを特徴とする、前記[1]に記載のオレフィン重合触媒。
【化8】

[一般式(A)又は(B)において、
Zは、水素原子又は脱離基であり、
Yは、カウンターカチオンを表し、
mは、Z又はYの価数を表し、
は、リン原子、砒素原子又はアンチモン原子を表し、
は、酸素原子又は硫黄原子を表し、
及びRは、それぞれ独立に、基-Q-R(ここで、Q及びRは、上記定義のとおりである)であるか、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基を表すか、又はR及びRは、互いに結合して、基-Q-Rを有していてもよくヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~30の2価の炭化水素基であり、
~Rは、それぞれ独立に、基-Q-R、水素原子、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基を表し、
は、基-Q-R、水素原子、ヘテロ原子を含有していてもよい炭素数1~30の炭化水素基又は炭素数1~30の炭化水素置換基を有していてもよいシリル基を表し、
ただし、R~Rのいずれかは、基-Q-Rであるか基-Q-Rを含む基である。]
[3]前記Rが、1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数1~30の含窒素芳香族複素環基、1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数1~30の含窒素脂肪族複素環基、1つ以上の炭素数1~30の炭化水素基を有していてもよいアミノ基又は炭素数1~30のイミノ基であることを特徴とする、前記[1]又は[2]のオレフィン重合触媒。
[4]前記Rが、1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数1~30の含窒素芳香族複素環基又は1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数1~30の含窒素脂肪族複素環基であることを特徴とする、前記[3]のオレフィン重合触媒。
[5]前記遷移金属Mが、ニッケル、パラジウム又は白金であることを特徴とする、前記[1]~[4]のいずれか記載のオレフィン重合触媒。
[6]前記成分(1)が、金属酸化物又はケイ素酸化物から選ばれることを特徴とする、前記[1]~[5]のいずれか記載のオレフィン重合触媒。
[7]前記R,R及びRの少なくともいずれか1つが基-Q-Rであることを特徴とする、前記[2]~[6]のいずれか記載のオレフィン重合触媒。
[8]成分(1)としての固体担体、及び成分(2)としての、周期表9族、10族又は11族に属する遷移金属Mを含み、1つ以上の基-Q-Rを有する金属触媒成分(ここで、Q、Rは[1]において定義したとおりである)を接触させる工程を含む、オレフィン重合触媒の製造方法。
[9]下記一般式(A)又は一般(B)で表される化合物の少なくとも1種と、成分(1)としての少なくとも1種類の固体担体とを接触させた後、さらに周期表9族、10族又は11族に属する遷移金属Mを含む遷移金属化合物(C)を接触させる工程を含むことを特徴とするオレフィン重合触媒の製造方法。
【化9】

[一般式(A)又は(B)において、Z、Y、m、E、X、R~Rは、[2]において定義したとおりである]
[10]前記Rが、1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数1~30の含窒素芳香族複素環基、1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数1~30の含窒素脂肪族複素環基、1つ以上の炭素数1~30の炭化水素基を有していてもよいアミノ基又は炭素数1~30のイミノ基であることを特徴とする、前記[8]又は[9]のオレフィン重合触媒の製造方法。
[11]前記Rが、1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数1~30の含窒素芳香族複素環基又は1つ以上の置換基を有していてもよい炭素数1~30の含窒素脂肪族複素環基であることを特徴とする、前記[10]のオレフィン重合触媒の製造方法。
[12]前記遷移金属Mが、ニッケル、パラジウム又は白金であることを特徴とする、前記[8]~[11]のいずれか記載のオレフィン重合触媒の製造方法。
[13]前記成分(1)が、金属酸化物又はケイ素酸化物から選ばれることを特徴とする、前記[8]~[12]のいずれか記載のオレフィン重合触媒の製造方法。
[14]前記R,R及びRの少なくともいずれか1つが基-Q-Rであることを特徴とする、前記[9]記載のオレフィン重合用触媒の製造方法。
[15]下記成分(3)又は(4)の存在下、オレフィンを重合又は共重合することを特徴とするオレフィン共重合体の製造方法。
成分(3)前記[1]~[7]のいずれか記載のオレフィン重合触媒
成分(4)前記[8]~[14]のいずれか記載の製造方法から得られるオレフィン重合触媒
[16]オレフィンと極性基含有モノマーとを共重合することを特徴とする、前記[15]記載のオレフィン共重合体の製造方法。