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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131473
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】昆虫用の給餌装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/033 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
A01K67/033 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036258
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】504261077
【氏名又は名称】大学共同利用機関法人自然科学研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】左倉 和喜
(72)【発明者】
【氏名】佐治 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】小長谷 達郎
(57)【要約】
【課題】様々な昆虫に対して液餌を与えることができ、液餌の補給が自動で行われるなどのメンテナンスが容易な昆虫用の給餌装置を提供する。
【解決手段】給餌装置100は、液餌を収容可能な収容ボトル1と、収容ボトル1における液餌の出入口11を塞ぐ栓部材2と、出入口11が下を向く倒立状態で収容ボトル1を上方に保持するとともに、液餌を貯留可能な給餌容器4と、栓部材2の貫通孔20に上端30側の一部分が嵌入されかつ液餌が内部を流通可能でありかつ下端31から給餌容器4に液餌を供給可能な供給管3であって、下端31が給餌容器4に貯留された液餌の液面と接触可能に配置された供給管3と、供給管3の内部を通って供給管3の下端31から突き出るとともに、給餌容器4に貯留された液餌に下端51側の一部分が浸漬する少なくとも一つの表面張力低減部材5と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液餌を収容可能な収容ボトルと、
前記収容ボトルにおける液餌の出入口を塞ぐ栓部材と、
前記出入口が下を向く倒立状態で前記収容ボトルを上方に保持するとともに、液餌を貯留可能である給餌容器と、
前記栓部材の貫通孔に上端側の一部分が嵌入されかつ液餌が内部を流通可能でありかつ下端から前記給餌容器に液餌を供給可能な供給管であって、前記下端が前記給餌容器に貯留された液餌の液面と接触可能に配置された供給管と、
前記供給管の内部を通って前記供給管の前記下端から突き出るとともに、前記給餌容器に貯留された液餌に下端側の一部分が浸漬する少なくとも一つの表面張力低減部材と、
を備える、昆虫用の給餌装置。
【請求項2】
前記給餌容器は、液餌を貯留可能な凹部と、上面が平坦な平面部と、を備え、
前記平面部は、前記凹部に隣接している、請求項1に記載の給餌装置。
【請求項3】
前記平面部は、前記凹部の上端において前記凹部に隣接している、請求項2に記載の給餌装置。
【請求項4】
前記供給管の前記他端は、前記凹部の上端と同じ高さに位置する、請求項2又は3に記載の給餌装置。
【請求項5】
前記給餌容器は、前記供給管を上下方向にスライド可能に支持する支持部材を前記凹部の上方に備える、請求項2から4のいずれか一項に記載の給餌装置。
【請求項6】
前記表面張力低減部材は、複数の線材をより合わせた撚り線からなる、請求項1から5のいずれか一項に記載の給餌装置。
【請求項7】
前記給餌容器は、着色されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の給餌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、昆虫に液餌を与えるために使用する給餌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
昆虫を対象とした研究分野、鑑賞目的の昆虫を販売するペット業界、昆虫食をはじめとする昆虫ビジネスなどにおいては、多数かつ多種の昆虫を飼育しているため、様々な昆虫に対応した給餌装置が求められている。
【0003】
例えば特許文献1には、天敵害虫を飼育するための給餌装置が開示されている。特許文献1の給餌装置は、液餌を貯留する容器と、繊維、紙、スポンジなどからなる棒状の吸液芯材と、容器の上部開口を閉じる蓋とを備えている。吸液芯材は、下端側の一部分(下端部)が液餌に浸漬し、上端側の一部分(上端部)が蓋を貫通して容器の上方に突き出ており、容器内の液餌を毛細管現象により下端部から上端部に吸い上げる。特許文献1の給餌装置は、昆虫が吸液芯材の上端部に吸い上げられた液餌を採餌することで、昆虫に液餌を与えることができる。
【0004】
また特許文献2には、昆虫類の給餌構造が開示されている。特許文献2の給餌構造は、カットされた自然木と、自然木内に設けられた液餌の貯留部とを備えている。自然木の外周面には、貯留部に連通した給餌穴が形成されており、貯留部の液餌は、給餌穴を通じて自然木の外周面に浸潤する。特許文献1の給餌装置は、昆虫が自然木を這い上がるなどして自然木の外周面に湿潤した液餌を採餌することで、昆虫に液餌を与えることができる。
【0005】
また特許文献3には、固定式昆虫用餌皿付きのぼり木が開示されている。特許文献3ののぼり木は、アーチ形を呈しており、のぼり木の頂上部にエサ皿が取り付けられている。エサ皿にはゼリー状の餌が収容されている。特許文献3ののぼり木は、昆虫がのぼり木を這い上がるなどしてエサ皿に収容された餌を採餌することで、昆虫に餌を与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-149256号公報
【特許文献2】特開平07-255324号公報
【特許文献3】特開2012-080860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の給餌装置は、長期間使用すると、吸液芯材で吸い上げた液餌が蒸発するなどにより結晶化し、メンテナンスが不向きである。加えて、特許文献1の給餌装置は、その設計上、例えばチョウ類などの液餌しか採餌できない昆虫に対して餌を与えることが困難である。そのうえ、液餌を吸液芯材で吸い上げて昆虫に供給するので、大型昆虫に対して十分な量の餌を与えることが困難である。また、特許文献2の給餌構造は、自然木内の貯留部に貯留できる液餌の量に限りがあり、液餌の補給頻度が高いため、長期間の昆虫の飼育には向かない。また、特許文献3ののぼり木は、餌がゼリー状であるため、液餌しか採餌できない昆虫に対して餌を与えることが困難であるうえ、エサ皿に収容できる餌の量に限りがあり、餌の補給頻度が高いため、長期間の昆虫の飼育には向かない。
【0008】
本開示は、上述した課題の解決のため、様々な昆虫に対して液餌を与えることができ、液餌の補給が自動で行われるなどのメンテナンスが容易な給餌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、昆虫に液餌を与えるために使用する給餌装置に関する。なお、液餌は、昆虫が食する液状の餌であって、飲み水を含む。
【0010】
本開示の昆虫用給餌装置は、液餌を収容可能な収容ボトルと、前記収容ボトルにおける液餌の出入口を塞ぐ栓部材と、前記出入口が下を向く倒立状態で前記収容ボトルを上方に保持するとともに、液餌を貯留可能である給餌容器と、前記栓部材の貫通孔に上端側の一部分が嵌入されかつ液餌が内部を流通可能でありかつ下端から前記給餌容器に液餌を供給可能な供給管であって、前記下端が前記給餌容器に貯留された液餌の液面と接触可能に配置された供給管と、前記供給管の内部を通って前記供給管の前記下端から突き出るとともに、前記給餌容器に貯留された液餌に下端側の一部分が浸漬する少なくとも一つの表面張力低減部材と、を備える、ことを特徴とする。
【0011】
本開示の昆虫用給餌装置において好ましくは、前記給餌容器は、液餌を貯留可能な凹部と、上面が平坦な平面部と、を備え、前記平面部は、前記凹部に隣接している、ことを特徴とするように構成することができる。
【0012】
また、本開示の昆虫用給餌装置において好ましくは、前記平面部は、前記凹部の上端において前記凹部に隣接している、ことを特徴とするように構成することができる。
【0013】
また、本開示の昆虫用給餌装置において好ましくは、前記供給管の前記他端は、前記凹部の上端と同じ高さに位置する、ことを特徴とするように構成することができる。
【0014】
また、本開示の昆虫用給餌装置において好ましくは、前記表面張力低減部材は、複数の線材をより合わせた撚り線からなる、ことを特徴とするように構成することができる。
【0015】
また、本開示の昆虫用給餌装置において好ましくは、前記給餌容器は、着色されている、ことを特徴とするように構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の昆虫用の給餌装置によれば、液餌は収容ボトルから供給管内を流れて給餌容器に液餌が供給され、これにより給餌容器に貯留された液餌を昆虫に与えるとともに、給餌容器において昆虫による液餌の採餌や液餌の蒸発によって減量した分の液餌は、密閉された収容ボトルから液餌の液面が供給管の下端に接触するまで自動的に補給される。そのため、給餌装置を昆虫の飼育ゲージなどに設置するだけで、十分な量の液餌を昆虫に与えて昆虫を飼育できるうえ、随時の液餌の補充を削減して昆虫を飼育することができる。なお、容量の異なる複数種の収容ボトルの中から給餌対象の昆虫に応じて適切な容量の収容ボトルを給餌装置にセットすることで、収容ボトルの交換頻度も少なく昆虫を飼育することができる。
【0017】
以上より、本開示の昆虫用の給餌装置は、メンテナンスを軽減できるため、コストや手間の低減を可能にする。
【0018】
また本開示の昆虫用の給餌装置によれば、表面張力低減部材が供給管内を供給管の下端から突き出て給餌容器に貯留された液餌に浸漬しており、これにより液餌の表面張力を低減している。そのため、給餌容器に貯留された液餌が減量した際に、減量した分の液餌を供給管の下端から吐き出して給餌容器に円滑に補給でき、給餌容器に貯留された液餌の液面の変動を小さく抑えることができる。よって、小型昆虫であっても容易に液餌を採餌することができる。
【0019】
また本開示の昆虫用の給餌装置によれば、収容ボトルと給餌容器との間に供給管が介在しており、収容ボトルは給餌容器の上方に一定の距離をあけて配置されている。そのため、大型昆虫が給餌容器に貯留された液餌を採餌する際に、上方に位置する収容ボトルが邪魔になるおそれが少ない。よって、大型昆虫であっても容易に液餌を採餌することができる。
【0020】
また本開示の昆虫用の給餌装置によれば、液餌は、収容ボトルから供給管を通して給餌容器に供給され、先行技術のように吸液芯材で液餌を吸い上げない。そのため、液餌の蒸発により液餌が結晶化して、チョウ類などの液餌しか採餌できない昆虫に対して餌を与えることが困難になる可能性がほとんどない。
【0021】
以上より、本開示の昆虫用の給餌装置は、様々な昆虫に対して液餌を与えることを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本開示の一実施形態の給餌装置の斜視図である。
図2図1に示す給餌装置の分解斜視図である。
図3図1のA-A断面図(縦断面図)である。
図4図1に示す給餌装置の動作を示す縦断面図である。
図5図1に示す給餌装置の動作を示す縦断面図である。
図6図1に示す給餌装置において、給餌容器に貯留された液餌の液面の高さを変更した状態を示す縦断面図である。
図7図1に示す給餌装置の使用状態を示す斜視図である。
図8】本開示の他の実施形態の給餌装置の使用状態を示す一部拡大斜視図である。
図9図8に示す給餌装置の縦断面図である。
図10】比較例の給餌装置の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示の給餌装置の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、本開示の給餌装置は、使用状態における高さ方向を上下方向とする。
【0024】
給餌装置
図1から図3は、本開示の一実施形態に係る給餌装置100を示す。給餌装置100は、例えば食用、飼料用、観賞用、研究ないし実験用、害虫天敵用などの昆虫を飼育する際に昆虫に液餌を与えるために使用される。給餌対象の昆虫の種類は、液餌を食べ物とする昆虫であれば、特に限定されるものではない。液餌は、昆虫が飲食する液状の餌であり、本開示では飲み水も液餌に含まれる。
【0025】
給餌装置100は、液餌を収容可能な収容ボトル1と、収容ボトル1における液餌の出入口11を塞ぐ栓部材2と、栓部材2を貫通する供給管3と、収容ボトル1から供給管3を介して送られる液餌を貯留して昆虫に液餌を与える給餌容器4と、供給管3内から給餌容器4に貯留された液餌中に突き出る表面張力低減部材5とを備える。
【0026】
収容ボトル
図1から図3に示すように、収容ボトル1は、液餌の収容空間10及び液餌の出入口11を有する容器である。収容ボトル1は、一部分又は全体を透明又は半透明とすることが好ましく、これにより、収容ボトル1の外部から収容ボトル1内の液餌の残量を確認することができる。収容ボトル1の素材としては、特に限定されるものではないが、例えば合成樹脂、ガラス、金属もしくは合金などを挙げることができ、この中でも、収容ボトル1を軽量化できるとの観点から、合成樹脂を好ましく挙げることができる。
【0027】
収容ボトル1は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、中空かつ有底の胴部12と、上下両端が開口した筒状の口部13と、胴部12及び口部13を繋ぐ肩部14とを備え、これらが一体に形成されている。本実施形態では、胴部12は横断面視の外形が略矩形状であり、口部13は横断面視の外形が円形状であるが、これらの形状には限定されない。
【0028】
胴部12は、底部15と、底部15の外周縁に連接される周壁部16とを備える。胴部12の内部空間が液餌の収容空間10である。口部13は、胴部12の周壁部16よりも横断面視の外形が一回り小さく形成されており、胴部12の底部15の中央の下方に位置する。口部13の下端開口が液餌の出入口11である。肩部14は、胴部12の周壁部16の下端縁と口部13の上端縁とに連接される。収容ボトル1は、栓部材2を取り外して底部15を下に向けた状態において、出入口11から口部13内を通して胴部12内に液餌を注入可能である。
【0029】
なお、収容ボトル1は、中空かつ有底の胴部12のみの構造であり、周壁部16の底部15と反対側の開口が液餌の出入口11であってもよい。
【0030】
栓部材
図1から図3に示すように、栓部材2は、収容ボトル1の出入口11を塞ぐように、収容ボトル1に装着される。これにより、栓部材2は、収容ボトル1をほぼ密閉している。栓部材2は、収容ボトル1に対して取り外し可能であることが好ましい。栓部材2は、弾力性を有していればその素材は特に限定されず、例えばゴム、熱可塑性エラストマー、コルクなどを挙げることができる。
【0031】
栓部材2は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、収容ボトル1の口部13の内側に上下方向の一部分又は全体が嵌め込まれる中栓の形態である。栓部材2は、横断面視の外形が、収容ボトル1の口部13の内径と等しい又は僅かに大きい外径の円形状を呈している。なお、栓部材2は、必ずしも中栓の形態ではなく、例えば収容ボトル1の口部13を外側から覆って出入口11を塞ぐキャップの形態であってもよい。
【0032】
栓部材2には、上下方向に延びる貫通孔20が形成されている。貫通孔20は、横断面視で栓部材2の中央に位置しており、貫通孔20には、供給管3の上端30側の一部分が嵌入される。
【0033】
供給管
図1から図3に示すように、供給管3は、上端30及び下端31を備える中空の上下に細長い形状を呈しており、両端が開口し、真っすぐ伸びる内部空間を液餌が流通可能である。供給管3は、給餌容器4側の下端31の端面が供給管3の長手軸と垂直に交わる水平面であるのに対し、収容ボトル1側の上端30の端面は供給管3の長手軸と垂直に交わる水平面であってもよいし、供給管3の長手軸と垂直に交わらない傾斜面であってもよい。供給管3は、本実施形態では横断面視の外形が円形状であるが、円形状には限定されない。供給管3の素材としては、特に限定されるものではないが、例えば合成樹脂、ガラス、金属もしくは合金などの比較的硬い素材を挙げることができ、この中でもさびにくいとの観点からはステンレスを好ましく挙げることができる。
【0034】
供給管3は、その外径が栓部材2の貫通孔20の直径と等しい又は僅かに大きく、上端30側の一部分が栓部材2の貫通孔20に嵌め込まれている。これにより、供給管3は、栓部材2との間に隙間がない気密状態で栓部材2に支持されている。また、供給管3は、栓部材2に対して取り外し可能である。
【0035】
供給管3の上端30は、栓部材2から突き出て収容ボトル1内で露出している。収容ボトル1内の液餌は、供給管3の上端30の開口から供給管3内を流れて供給管3の下端31の開口から吐き出され、給餌容器4に供給される。供給管3の内径は、液餌の粘度や液餌の供給スピードに応じて設定され、特に限定されるものではないが、5mm以上12mm以下であることが好ましく、8.5mm以上10.5mm以下であることがより好ましい。なお、供給管3の肉厚は、特に限定されるものではないが、0.5mm程度が好ましい。
【0036】
供給管3の長さは、特に限定されるものではないが、収容ボトル1と給餌容器4との間の距離(間隔)を50mm以上100mm以下とできる長さであることが好ましい。これにより、収容ボトル1と給餌容器4との間の距離(間隔)を大きく確保することができ、大型昆虫やカブトムシなどの角の長い昆虫が給餌容器4に貯留された液餌を採餌するのに、上方に位置する収容ボトル1が邪魔になるおそれが少ない。
【0037】
給餌容器
図1から図3に示すように、給餌容器4は、供給管3の下端31から流れ出る液餌を貯留して昆虫に液餌を与える。また、給餌容器4は、収容ボトル1を出入口11が下を向く倒立状態で上方に保持する役割も果たす。
【0038】
給餌容器4は、液餌を貯留するための貯留部40と、収容ボトル1又は供給管3を支持して倒立状態の収容ボトル1を給餌容器4の上方で保持するための支持部41とを備える。
【0039】
貯留部40は、所定の高さを有する平たい柱状を呈している。貯留部40の高さは、特に限定されるものではないが、20mm以上30mm以下であることが好ましい。貯留部40は、本実施形態では横断面視の外形が円形状であるが、円形状には限定されない。
【0040】
貯留部40は、液餌を貯留可能な凹部42を備える。凹部42は、特に限定されるものではないが、本実施形態では横断面視において貯留部40の中央に位置しており、貯留部40の直径方向に延びている。凹部42の横幅(長手方向と直交する方向の長さ)は、特に限定されるものではないが、15mm以上20mm以下であることが好ましい。凹部42は、貯留部40の一部分について上から凹状に所定の深さへこました形状(上面を凹状に切り欠いた形状)を呈しており、底面と底面の外周縁から立ち上がる四方の側面とに囲まれた空間に液餌を貯留可能である。凹部42の深さは、特に限定されるものではないが、10mm以上15mm以下であることが好ましい。
【0041】
貯留部40は、特に限定されるものではないが、本実施形態では凹部42を挟む両側に位置する一対の平面部43を備える。平面部43の上面は平坦である。平面部43は、凹部42に隣接しており、好ましくは凹部42の上端において凹部42に隣接している。つまり、凹部42の上端から水平に平面部43の上面が延びるように、平面部43が凹部42に隣接している。平面部43は、凹部42の液餌を昆虫が採餌する際に、一部の昆虫がその上に乗ったり、前脚などを乗せたりすることが可能である。
【0042】
支持部41は、貯留部40上に設けられている。支持部41は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、所定の高さを有する平たい半円柱状を呈しており、支持部41の縦横のサイズは貯留部40の約半分である。支持部41は、貯留部40上において、一対の平面部43の一方から他方に凹部42を跨ぐように架設されている。
【0043】
支持部41において、貯留部40の凹部42を覆う部分は、下から凸状に所定の深さへこまされており(下面が凸状に切り欠かれており)、これにより当該部分に凹溝44が形成されている。また、支持部41において、貯留部40の凹部42を覆う部分は、凹溝44によって肉薄とされており、当該部分に供給管3を挿通可能な挿通孔45が形成されている。
【0044】
支持部41は、貯留部40の凹部42の上方に位置しかつ供給管3を支持して倒立状態の収容ボトル1を給餌容器4の上方で保持する支持部材6を備える。支持部材6は、特に限定されないが、本実施形態では例えば所定の高さを有するリング状や円筒状のゴム製部材である。支持部材6の内径は供給管3の外径と等しい又は僅かに小さい。支持部材6の外径は支持部41の挿通孔45の外径より大きい。支持部材6は、例えばゴムブッシュのように、外周面に周方向の全周にわたって延びる溝が上下方向の中央部に形成され、当該溝に支持部41の挿通孔45の開口周縁部を嵌め込むことで、支持部41に固定することができる。なお、支持部41に対する支持部材6の固定方法は特に限定されず、例えば支持部41の上面に支持部材6を挿通孔45と同心円状に配置し、接着剤などを用いて支持部材6を支持部41に固定してもよい。
【0045】
支持部材6は、その中央開口に押し通された供給管3の下端31側の一部分をホールドすることにより、供給管3を直立状態で支持し、これにより、倒立状態の収容ボトル1を給餌容器4の上方に保持する。また、支持部材6は、その中央開口から供給管3を引き抜くことで、供給管3を取り外すことが可能である。支持部材6の高さは、特に限定されるものではないが、5mm以上10mm以下であることが好ましい。
【0046】
支持部材6は、支持部材6によりホールドする供給管3の下端31側の一部分を上下にずらすことで、供給管3を上下方向にスライド可能に支持する。これにより、供給管3の下端31の上下方向における位置を自在に変えることができる。詳細は後述するが、給餌容器4の凹部42には、供給管3の下端31の高さまで液餌が溜まるまで収容ボトル1から液餌が供給されるため、供給管3の下端31の上下方向における位置を、給餌容器4の凹部42内で自在に変えることで、凹部42に貯留される液餌の液面の高さを自在に変えることができる。
【0047】
供給管3の下端31は、図3に示すように、給餌容器4の凹部42の上端と同じ高さに位置させることが好ましい。これにより、凹部42の上端まで液餌を貯留することができ、昆虫が凹部42に貯留された液餌を容易に採餌することが可能である。なお、供給管3の下端31は、給餌対象の昆虫に応じて、図6に示すように、給餌容器4の凹部42の上端よりも下方に位置させてもよい。
【0048】
支持部材6は、リング状や円筒状のゴム製部材の他、例えば、互いに接近及び離反可能な一対の板状の挟持部材を用い、供給管3の下端31側の一部分を一対の挟持部材でホールドすることにより、供給管3を直立状態で支持するようにしてもよい。このように、支持部材6は、供給管3の一部分をホールドして供給管3を直立状態で支持できれば、種々の構造のものを用いることができ、必ずしも供給管3を上下方向にスライド可能に支持する構造のものでなくてもよい。
【0049】
表面張力低減部材
図1から図3に示すように、表面張力部材5は、上端50及び下端51を備える上下に長い形状を呈している。表面張力低減部材5は、供給管3の内部を通って供給管3の下端31から突き出るように、供給管3及び/又は栓部材2に固定されている。表面張力低減部材5は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、供給管3よりも長く形成されており、表面張力低減部材5の上端50及び下端51は、供給管3の上端30及び下端31から上下に突き出ている。そして、表面張力低減部材5の上端50は折り返されて栓部材2と供給管3との間に差し込まれており、これにより、表面張力低減部材5が供給管3から抜け落ちることなく供給管3及び/又は栓部材2に固定されている。なお、供給管3及び/又は栓部材2に対する表面張力低減部材5の固定方法は特に限定されないが、表面張力低減部材5は、供給管3及び/又は栓部材2に対して取り外し可能であることが好ましい。
【0050】
表面張力低減部材5は、供給管3の内部を通って供給管3の下端31から突き出ることで、下端51側の一部分が給餌容器4の凹部42に貯留された液餌に浸漬する。これにより、給餌容器4の凹部42において供給管3の下端31と接触する範囲の液餌の表面張力を低減することができ、詳細は後述するが、給餌容器4の凹部42に貯留された液餌が蒸発や昆虫による採餌によって減量した場合に、収容ボトル1内の液餌を供給管3の下端31から吐き出して給餌容器4の凹部42に円滑に補給することができる。
【0051】
供給管3内を供給管3の下端31から突き出る表面張力低減部材5の数は、特に限定されるものではなく、供給管3の内径、表面張力部材5の太さ、液餌の粘性などに応じて、供給管3の下端31と接触する範囲の液餌の表面張力を良好に低減できる数を設定することができる。
【0052】
表面張力部材5は、本実施形態では、例えばワイヤーなどの細長い線材の形態であるが、線材に限定されるものではなく、線材よりも太い棒材や板材などの形態であっても構わない。表面張力部材5の素材としては、特に限定されるものではないが、例えば合成樹脂、ガラス、金属もしくは合金などを挙げることができ、この中でも、この中でもさびにくいとの観点からはステンレスを好ましく挙げることができる。
【0053】
表面張力低減部材5に線材を用いる場合、表面張力低減部材5は、複数の線材をより合わせた撚り線の形態とすることが好ましい。これにより、表面張力低減部材5の表面を滑らかではなく、小さな起伏や凹凸のある粗いものとすることができるため、供給管3の下端31と接触する液餌の表面張力を良好に低減することができる。なお、表面張力低減部材5の表面を粗くする方法としては、例えば、表面を艶消し処理など、その他の方法を用いてもよい、表面張力低減部材5において、その表面を粗くするのは、少なくとも供給管3の下端31から突き出る部分だけで十分である。
【0054】
給餌装置の動作
収容ボトル1に液餌が収容されると、液餌は供給管3の一端30から供給管3内を通って供給管3の他端31から給餌容器4の凹部42に供給され、凹部42に液餌が貯留される。給餌容器4の凹部42においては、液餌の供給に伴い液餌の液面が徐々に上昇し、液餌の液面が供給管3の下端31に到達すると、収容ボトル1からの液餌の供給が自然にストップし、液餌の液面の高さは供給管3の下端31と同じ高さに維持される。
【0055】
給餌容器4の凹部42に貯留された液餌は、昆虫による採餌や自然に蒸発することにより減量して、液餌の液面が降下する。このときに、供給管3の下端31と液餌の液面との間に隙間が生じることで、密閉された収容ボトル1内の液餌が自動的に供給管3の下端31から吐き出されて給餌容器4の凹部42に供給され、液餌の液面が供給管3の下端31に再び到達するまで液餌が補給される。
【0056】
このとき、図10に示す比較例の給餌装置101のように、表面張力低減部材5が供給管3内を供給管3の下端31から突き出ていない場合には、給餌容器4の凹部42に貯留された液餌の減量によって液餌の液面が供給管3の下端31と接触した状態から降下する際に、液餌の表面張力により液餌が供給管3に対してぬれ上がり、液餌の液面と供給管3の下端31との間に液体膜Fが形成される。液餌の液面が降下する際に液餌の液面と供給管3の下端31との間に液体膜Fが形成されると、収容ボトル1内の液餌が供給管3の他端31から吐き出されないため、給餌容器4の凹部42には液餌が補給されない。よって、給餌容器4の凹部42では、液餌の液面が降下した状態が継続し、昆虫が給餌容器4の凹部42に貯留された液餌を採餌し難くなる。
【0057】
これに対して本開示の給餌装置100のように、表面張力低減部材5が供給管3内を供給管3の下端31から突き出て給餌容器4の凹部42に貯留された液餌に浸漬している場合には、図4に示す通り、給餌容器4の凹部42に貯留された液餌の減量によって液餌の液面が供給管3の下端31と接触した状態から降下する際に、表面張力低減部材5によって液餌の表面張力が低減される。これにより、液餌が表面張力により供給管3に対してぬれ上がって液餌の液面と供給管3の下端31との間に液体膜が形成されるのが抑制される。そのため、液餌の液面が降下することで供給管3の下端31と液餌の液面との間に隙間が生じ、図5に示す通り、液餌の液面が供給管3の下端31に到達するまで、収容ボトル1内の液餌が供給管3の他端31から吐き出されて給餌容器4の凹部42には液餌が補給される。よって、給餌容器4の凹部42では、液餌の液面の高さが安定して供給管3の下端31と同じ高さに維持されるので、昆虫は給餌容器4の凹部42に貯留された液餌を容易に採餌することが可能である。
【0058】
給餌装置の作用・効果
上述した実施形態の給餌装置100によれば、多量の液餌を収容した収容ボトル1から給餌容器4に液餌が供給され、これにより吸液容器4に貯留された液餌を昆虫に与えるとともに、給餌容器4において昆虫による液餌の採餌や液餌の蒸発によって減量した分の液餌は、密閉された収容ボトル1から随時補給される。そのため、給餌装置100を昆虫の飼育ゲージなどに設置するだけで、十分な量の液餌を昆虫に与えて昆虫を飼育できるうえ、随時の液餌の補充を削減して昆虫を飼育することができる。なお、容量の異なる複数種の収容ボトル1の中から給餌対象の昆虫に応じて適切な容量の収容ボトル1を給餌装置100にセットすることで、収容ボトル1の交換頻度も少なく昆虫を飼育することができる。
【0059】
以上より、上述した実施形態の給餌装置100は、メンテナンスを軽減できるため、コストや手間の低減を可能にする。
【0060】
また上述した実施形態の給餌装置100によれば、表面張力低減部材5が供給管3内を供給管3の下端31から突き出て給餌容器42に貯留された液餌に浸漬しており、これにより液餌の表面張力を低減している。そのため、給餌容器4に貯留された液餌が減量した際に、減量した分の液餌を収容ボトル1から供給管3を通して給餌容器4に円滑に補充でき、給餌容器4に貯留された液餌の液面の変動を小さく抑えることができる。よって、コオロギやテントウムシなどの小型昆虫であっても容易に液餌を採餌することができる。加えて、上述した実施形態の給餌装置100によれば、表面張力低減部材5が複数の線材をより合わせた撚り線で形成されているため、液餌の表面張力を効果的に低減することができる。
【0061】
また上述した実施形態の給餌装置100によれば、収容ボトル1と給餌容器4との間に供給管3が介在しており、収容ボトル1は給餌容器4の上方に一定の距離をあけて配置されている。そのため、大型昆虫やカブトムシなどの角の長い昆虫が給餌容器4に貯留された液餌を採餌する際に、上方に位置する収容ボトル1が邪魔になるおそれが少ない。よって、このような昆虫であっても容易に液餌を採餌することができる。
【0062】
また上述した実施形態の給餌装置100において、給餌容器4をチョウ類などの所定の昆虫が寄りつく色に着色することで、特殊な色にしか誘引されない昆虫であっても容易に液餌を採餌することができる。
【0063】
また上述した実施形態の給餌装置100によれば、液餌は、収容ボトル1から供給管3を流れて給餌容器4に供給され、先行技術のように吸液芯材で液餌を吸い上げない。そのため、液餌の蒸発により液餌が結晶化して、チョウ類などの液餌しか採餌できない昆虫に対して餌を与えることが困難になる可能性がほとんどない。
【0064】
以上より、上述した実施形態の給餌装置100は、様々な昆虫に対して液餌を与えることを可能にする。
【0065】
また上述した実施形態の給餌装置100によれば、給餌容器4は、液餌を貯留する凹部42と、上面が平坦な平面部43とを備えているため、小型昆虫やチョウ類などは平面部43に乗って凹部42の液餌を採餌することができる。また大型昆虫は前脚などを平面部43に乗せて凹部42の液餌を採餌することができる。よって、昆虫がより容易に液餌を採餌することができる。
【0066】
また上述した実施形態の給餌装置100によれば、供給管3の下端31は、給餌容器4の凹部42の上端と同じ高さに位置し、これにより、給餌容器4においては凹部42の上端まで液餌が貯留されている。そのため、昆虫がより容易に液餌を採餌することができる。
【0067】
また上述した実施形態の給餌装置100によれば、給餌容器4は、支持部材6により供給管3を上下方向にスライド可能に支持しており、これにより、供給管3の下端31の上下方向における位置を自在に変えることができる。そのため、給餌対象の昆虫に応じて、給餌容器4の凹部42に貯留される液餌の液面の高さを自在に変えることができる。
【0068】
また上述した実施形態の給餌装置100によれば、収容ボトル1、栓部材2、供給管3、給餌容器4及び表面張力低減部材5がそれぞれ取り外し可能である。そのため、給餌装置100の清掃が容易であり、メンテナンスをより良好に軽減でき、その分のコストや手間の低減を可能にする。
【0069】
給餌装置の変形例
以上、本開示の給餌装置の一実施形態について説明したが、本開示の給餌装置は上述した実施形態の給餌装置100に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。
【0070】
一変形例として、上述した実施形態の給餌装置100において、コオロギやテントウムシなどの小型昆虫に液餌を与える場合は、図8及び図9に示すように、小型昆虫が給餌容器4の凹部42に貯留された液餌中に沈溺しないように保持部材7を、給餌容器4の凹部42に設置してもよい。保持部材7としては、例えば脱脂綿やスポンジなどの液餌が浸透可能な素材のブロック状物を用い、保持部材7を給餌容器4の凹部42に貯留された液餌中に設置することができる。その他、保持部材7としては、例えば網目が小型昆虫よりも小さい金網などの網状物、孔径が小型昆虫よりも小さいパンチングメタルなどの多孔の板状物、ガーゼなどの布、編物、透水性のある紙などのシート状物を用い、保持部材7を給餌容器4の凹部42に貯留された液餌の液面に浮くように設置することができる。図8及び図9に示す実施形態の給餌装置100では、昆虫が保持部材7の上に乗って給餌容器4の凹部42に貯留された液餌を採餌することができるので、採餌中に昆虫が凹部42内の液餌中に沈溺するのを防ぐことができる。
【0071】
一変形例として、上述した実施形態の給餌装置100において、支持部材6は供給管3を上下方向にスライドできない状態で支持するものであってもよい。
【0072】
一変形例として、上述した実施形態の給餌装置100において、供給管3を支持して収容ボトル1を給餌容器4の上方に保持する支持部材6に代えて、図示は省略するが、収容ボトル1を支持して収容ボトル1を給餌容器4の上方に保持するアームを給餌容器4が備えていてもよい。前記アームは、例えば収容ボトル1の胴部12を把持可能な把持機構を備えることで収容ボトル1を支持可能であり、これにより、収容ボトル1を倒立状態で給餌容器4の上方に保持可能である。また、前記アームは、例えば前記把持機構が当該アームに対して上下動可能である、あるいは、当該アームが伸縮可能もしくは折り曲げ可能であることで、収容ボトル1を上下方向にスライド可能に支持可能であり、これにより、供給管3の下端31の上下方向における位置を自在に変えることができる。
【0073】
一変形例として、上述した実施形態の給餌装置100において、給餌容器4の貯留部40は、凹部42に隣接する平面部43を備えていなくてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1 収容ボトル
2 栓部材
3 供給管
4 給餌容器
5 表面張力低減部材
6 支持部材
11 収容ボトルの液餌の出入口
20 栓部材の貫通孔
30 供給管の上端
31 供給管の下端
42 給餌容器の凹部
43 給餌容器の平面部
51 表面張力低減部材の下端
100 給餌装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10