(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131499
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】端子、端子付き電線及び端子付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/02 20060101AFI20230914BHJP
H01R 43/02 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
H01R4/02 C
H01R43/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036304
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】達川 永吾
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 健作
【テーマコード(参考)】
5E051
5E085
【Fターム(参考)】
5E051LA04
5E051LB03
5E085BB01
5E085BB12
5E085DD04
5E085EE40
5E085JJ50
(57)【要約】
【課題】コストを抑え、電線を端子に超音波接合するときに端子の破損を防ぐ。
【解決手段】端子は、電線が有する導体が接合される接合部と、前記接合部に連なり、最小断面二次モーメントが前記接合部の最小断面二次モーメントより大きく、接続相手へ接続される接続部と、を備える。接続部の最小断面二次モーメントが接合部の最小断面二次モーメントより大きいため、接合部に電線を超音波接合するときに接続部の変形が抑えられ、疲労しにくくなり破損を防ぐことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が有する導体が接合される接合部と、
前記接合部に連なり、最小断面二次モーメントが前記接合部の最小断面二次モーメントより大きく、接続相手へ接続される接続部と、
を備える端子。
【請求項2】
前記接続部の厚さが前記接合部より厚い
請求項1に記載の端子。
【請求項3】
前記接続部の断面形状が前記接合部の断面形状と異なる
請求項1又は請求項2に記載の端子。
【請求項4】
前記接続部の断面形状が凹形であり、前記接合部の断面形状が矩形である
請求項3に記載の端子。
【請求項5】
前記接続部の断面形状が中空の矩形であり、前記接合部の断面形状が矩形である
請求項3に記載の端子。
【請求項6】
前記接続部の断面を形成する辺の数が前記接合部を形成する辺の数より多い
請求項3に記載の端子。
【請求項7】
前記接続部の最小断面二次モーメントが6.7×10-13m4以上である
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の端子。
【請求項8】
前記接続部の厚さが1.3mm以上7mm以下である
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の端子。
【請求項9】
前記接続部の最小断面二次モーメントが1.0×10-11m4以上1.0×10-10m4未満であり、前記接続部の長さが1.2mm以上30mm未満である
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の端子。
【請求項10】
前記接続部の最小断面二次モーメントが1.0×10-10m4以上1.0×10-9m4未満であり、前記接続部の長さが1.2mm以上40mm未満である
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の端子。
【請求項11】
前記接続部の最小断面二次モーメントが1.0×10-9m4以上1.0×10-7m4未満であり、前記接続部の長さが1.2mm以上50mm未満である
請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の端子。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の端子と、
電線と、を有し、
前記電線の導体が、前記端子の前記接合部に超音波接合されている、
端子付き電線。
【請求項13】
電線が有する導体が接合される接合部と、前記接合部に連なり、最小断面二次モーメントが前記接合部の最小断面二次モーメントより大きく、接続相手へ接続される接続部を有する端子の前記接合部へ前記導体を超音波接合するステップ
を備える端子付き電線の製造方法。
【請求項14】
前記導体を前記接合部へ超音波接合する超音波接合機のホーンの駆動周波数が20kHzであり、前記ホーンの振動の周波数が前記駆動周波数の-10%から5%の範囲内である
請求項13に記載の端子付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子、端子付き電線及び端子付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電線の芯線を金属端子に超音波接合するときに端子への振動の影響を抑える発明として、例えば特許文献1に開示された発明がある。この発明では、まず導電性板材の幅方向の一端側と他端側とを折り曲げ、折り曲げられて重なった部分をレーザ溶接して断面が矩形状の箱部を有する端子を形成する。次に長さ方向で箱部と反対側に超音波接合装置によって電線の芯線を接合する。特許文献1に開示された発明では、レーザ溶接によって閉じた箱部を形成することにより、箱部の底部に対する側壁部の相対運動を抑えている。箱部の底部に対する側壁部の相対運動を抑えることにより、箱部の内部に収容されるように形成されているバネが大きく揺れるのを防ぎ、バネに疲労が集中して破損するのを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された技術によれば、超音波接合において、端子が破損するのを抑えることができる。しかしながら、特許文献1に開示された技術では、箱部のレーザ溶接を行う必要があるため、工数が多くなり、コストがかかることとなる。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、コストを抑え、電線を端子に超音波接合するときに端子の破損を防ぐ技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る端子は、電線が有する導体が接合される接合部と、前記接合部に連なり、最小断面二次モーメントが前記接合部の最小断面二次モーメントより大きく、接続相手へ接続される接続部と、を備える。
【0007】
本発明の一態様に係る端子は、前記接続部の厚さが前記接合部より厚い構成としてもよい。
【0008】
本発明の一態様に係る端子は、前記接続部の断面形状が前記接合部の断面形状と異なる構成としてもよい。
【0009】
本発明の一態様に係る端子は、前記接続部の断面形状が凹形であり、前記接合部の断面形状が矩形である構成としてもよい。
【0010】
本発明の一態様に係る端子は、前記接続部の断面形状が中空の矩形であり、前記接合部の断面形状が矩形である構成としてもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る端子は、前記接続部の断面を形成する辺の数が前記接合部を形成する辺の数より多い構成としてもよい。
【0012】
本発明の一態様に係る端子は、前記接続部の最小断面二次モーメントが6.7×10-13m4以上である構成としてもよい。
【0013】
本発明の一態様に係る端子は、前記接続部の厚さが1.3mm以上7mm以下である構成としてもよい。
【0014】
本発明の一態様に係る端子は、前記接続部の最小断面二次モーメントが1.0×10-11m4以上1.0×10-10m4未満であり、前記接続部の長さが1.2mm以上30mm未満である構成としてもよい。
【0015】
本発明の一態様に係る端子は、前記接続部の最小断面二次モーメントが1.0×10-10m4以上1.0×10-9m4未満であり、前記接続部の長さが1.2mm以上40mm未満である構成としてもよい。
【0016】
本発明の一態様に係る端子は、前記接続部の最小断面二次モーメントが1.0×10-9m4以上1.0×10-7m4未満であり、前記接続部の長さが1.2mm以上50mm未満である構成としてもよい。
【0017】
本発明に係る端子付き電線は、上記のいずれか一つの構成の端子と、電線と、を有し、前記電線の導体が、前記端子の前記接合部に超音波接合されている。
【0018】
本発明に係る端子付き電線の製造方法は、電線が有する導体が接合される接合部と、前記接合部に連なり、最小断面二次モーメントが前記接合部の最小断面二次モーメントより大きく、接続相手へ接続される接続部を有する端子の前記接合部へ前記導体を超音波接合するステップを備える。
【0019】
本発明の一態様に係る端子付き電線の製造方法においては、前記導体を前記接合部へ超音波接合する超音波接合機のホーンの駆動周波数が20kHzであり、前記ホーンの振動の周波数が前記駆動周波数の-10%から5%の範囲内としてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コストを抑え、電線を端子に超音波接合するときに端子の破損を防ぐことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る端子の形状を示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る端子の固有振動数を示すグラフである。
【
図3】
図3は、第2実施形態に係る端子の形状を示す図である。
【
図4】
図4は、第2実施形態に係る端子の固有振動数を示すグラフである。
【
図5】
図5は、第3実施形態に係る端子の形状を示す図である。
【
図6】
図6は、第3実施形態に係る端子の固有振動数を示すグラフである。
【
図7】
図7は、第4実施形態に係る端子の形状を示す図である。
【
図8】
図8は、第4実施形態に係る端子の固有振動数を示すグラフである。
【
図9】
図9は、第5実施形態に係る端子の形状を示す図である。
【
図10】
図10は、第5実施形態に係る端子の固有振動数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態により本発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、図中では適宜XYZ座標軸を示し、これにより方向を説明する。XYZ座標軸で示される空間においてX成分が増加する方向を+X方向といい、X成分が減少する方向を-X方向という。同様に、Y、Z成分についても、+Y方向、-Y方向、+Z方向、-Z方向と定義する。なお、Z軸方向は、鉛直方向であって、+Z方向は鉛直上向きであり、-Z方向は鉛直下向きでもある。
【0023】
[第1実施形態]
図1(a)は、本発明の第1実施形態に係る端子付き電線10の平面図である。端子付き電線10は、端子1Aと被覆電線3とから構成される。
図1(b)は、端子1Aの平面図であり、
図1(c)は、端子1Aの正面図である。また、
図1(d)は、
図1(b)のA-A線断面図であり、
図1(e)は、
図1(b)のB-B線断面図である。
【0024】
被覆電線3は、導体31と、導体31を被覆する被覆部32からなる。導体31は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅又は銅合金製である複数の素線が撚り合わせられた撚り線である。なお、導体31は、複数の素線を撚り合わせたものではなく、複数の素線を束ねたものであってもよい。導体31の公称断面積は、本実施形態では60sqである。導体31の公称断面積は、16sq以上を採用することが可能であり、好ましくは20sq~60sqである。なお、導体31の公称断面積は、60sqを超えるものとして、例えば90sqや100sqであってもよい。
【0025】
被覆部32は、例えば、絶縁性を有するポリ塩化ビニル(PVC)や、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂等、この技術の分野において通常用いられるものを選択することができる。被覆部32は、導体31の外周を被覆している。被覆電線3の先端は、被覆部32が除去されて導体31が露出しており、露出している導体31が端子1Aに接合される。
【0026】
端子1Aは、導体31に電気的及び機械的に接合される端子である。端子1Aは、銅又は銅合金からなる板材をプレス加工することにより形成される。本実施形態においては、板材の厚さは2mmであり、Y軸方向の長さは49mmである。端子1Aを形成する銅合金としては、例えば、黄銅、りん青銅、コルソン系銅合金等が挙げられるが、導体31より高い融点であることが好ましい。
【0027】
端子1Aは、大別して接続部11aと接合部12aを有している。なお、端子1Aは、表面に錫メッキ処理が施された構成であってもよい。端子1Aに錫メッキ処理を施す場合、接続部11aにのみ錫メッキ処理を施し、接合部12aには錫メッキ処理を施さない構成としてもよい。
【0028】
接続部11aは、導体31が接合された端子1Aを接続先となる他の端子付き電線の端子、電源等の端子、又はバスバーに接続するための部分である。接続部11aは、板材を折り曲げて形成されており、
図1(d)に示すようにXZ平面に沿った断面が凹形になっている。接続部11aは、X軸方向の幅が17mmであり、Y軸方向の長さが31mmである。また、接続部11aは、上側の辺と下側の辺との間の距離が4mmとなっている。
【0029】
接合部12aは、導体31が超音波接合される部分である。接合部12aは板状であり、Y軸方向の長さが18mmである。また、接合部12aは、導体31が接合される部分については、X軸方向の幅が13mmとなっている。
【0030】
導体31を端子1Aに接合する際には、接合部12aをアンビルの上に載せ、導体31を接合部12aの上に載せる。次にZ軸方向に超音波振動するホーンを-Z方向に圧力を加えつつ導体31に接触させ、導体31と接合部12aを接合する。なお、ホーンの駆動周波数は、例えば20kHzであるが、出力のばらつきによりホーンの振動の周波数は、18kHz~21kHzの範囲内となる。ホーンの振動の周波数のばらつきの範囲に端子1Aの固有振動数が一致すると、端子1Aが共振し、金属疲労により端子1Aが破損する虞がある。
【0031】
本実施形態においては、
図1(d)に示すように断面が凹形である接続部11aは、最小断面二次モーメントが6.5×10
-10m
4であり、
図1(e)に示すように断面が矩形である接合部12aは、最小断面二次モーメントが8.7×10
-12m
4である。なお、最小断面二次モーメントの算出においては、端子1Aの素材をタフピッチ銅とし、密度が8890kg/m
3、ヤング率を1.18×10
11N/m
2としている。
【0032】
このように、端子1Aは、接続部11aの最小断面二次モーメントが接合部12aの最小断面二次モーメントより大きくなるように構成されている。接合部12aの最小断面二次モーメントより接続部11aの最小断面二次モーメントを大きくすることにより接続部11aの変形が抑えられ、疲労しにくくなり破損を防ぐことができる。
【0033】
図2は、接続部11aの最小断面二次モーメントと接続部11aの固有振動数の関係を示すグラフである。
図2においてプロットされている下側の点は、接続部11aの1次モードの固有振動数であり、上側の点は、接続部11aの2次モードの固有振動数である。また、
図2に示す2本の破線の間の範囲は、超音波接合における上述したホーンの振動の周波数の範囲である。接続部11aの最小断面二次モーメントを寸法と形状によって調整することにより、
図2に示すように、接続部11aの固有振動数は、ホーンの振動の周波数範囲である18kHz~21kHzの範囲から外れるため、接続部11aが超音波接合の振動の周波数に共振して破損するのを抑えることができる。
【0034】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態においては、導体31が接合される端子の構成が第1実施形態と異なる。
図3(a)は、導体31が接合される端子1Bの平面図であり、
図3(b)は、端子1Bの正面図である。また、
図3(c)は、
図3(a)のC-C線断面図であり、
図3(d)は、
図3(a)のD-D線断面図である。
【0035】
端子1Bは、導体31に電気的及び機械的に接合される端子である。端子1Bは、銅又は銅合金からなる板材をプレス加工することにより形成される。端子1Bは、大別して接続部11b、接合部12b及びバレル部13bを有している。端子1Bは、Y軸方向の長さが60mmである。
【0036】
接続部11bは、導体31が接合された端子1Bを他の端子付き電線の端子、電源等の端子、又はバスバーに接続するための部分である。接続部11bは、板状であってY軸方向の長さが25mmであり、X軸方向の幅が18.4mmである。また、接続部11bは、Z軸方向の厚さが2.3mmである。
【0037】
接合部12bは、導体31が超音波接合される部分である。接合部12aは板状であり、上方から見て矩形で導体31が超音波接合される部分は、Y軸方向の長さが9.6mmであり、X軸方向の幅が9.6mmである。また、接合部12bは、Z軸方向の厚さが1.2mmである。
【0038】
バレル部13bは、バレル片14bとバレル片15bを有する。板状のバレル片14bとバレル片15bをプレス加工によって中空の管状に成形することによりバレル部13bが形成されている。管状に成形されたバレル部13bの内径は、被覆電線3が挿入可能な直径である。
【0039】
本実施形態においては、
図3(c)に示すように断面が矩形である接続部11bは、最小断面二次モーメントが1.9×10
-11m
4である。また、
図3(d)に示すように接合部12bにおいて導体31が接続される部分は、断面が矩形であって最小断面二次モーメントが1.38×10
-12m
4である。なお、最小断面二次モーメントの算出においては、端子1Bの素材をタフピッチ銅とし、密度が8890kg/m
3、ヤング率を1.18×10
11N/m
2としている。
【0040】
このように、端子1Bは、接続部11bの最小断面二次モーメントが接合部12bの最小断面二次モーメントより大きくなるように構成されている。接合部12bの最小断面二次モーメントより接続部11bの最小断面二次モーメントを大きくすることにより接続部11bの変形が抑えられ、疲労しにくくなり破損を防ぐことができる。
【0041】
図4は、接続部11bの最小断面二次モーメントと接続部11bの固有振動数の関係を示すグラフである。
図4においてプロットされている点は、下から順番に1次モード、2次モード、3次モード、4時モードの固有振動数である。また、
図4に示す2本の破線の間の範囲は、超音波接合における上述したホーンの振動の周波数の範囲である。接続部11bの最小断面二次モーメントを寸法と形状によって調整することにより、
図4に示すように、接続部11aの固有振動数は、ホーンの振動の周波数範囲である18kHz~21kHzの範囲から外れるため、接続部11bが超音波接合の振動の周波数に共振して破損するのを抑えることができる。
【0042】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態においては、導体31が接合される端子の構成が第1実施形態と異なる。
図5(a)は、導体31が接合される端子1Cの平面図であり、
図5(b)は、端子1Cの正面図である。また、
図5(c)は、
図5(a)のE-E線断面図であり、
図5(d)は、
図5(a)のF-F線断面図である。
【0043】
端子1Cは、導体31に電気的及び機械的に接合される端子である。端子1Cは、銅又は銅合金からなる板材をプレス加工することにより形成される。端子1Cは、大別して接続部11c、接合部12c及びバレル部13cを有している。端子1Cは、Y軸方向の長さが60mmである。
【0044】
接続部11cは、導体31が接合された端子1Cを他の端子付き電線の端子、電源等の端子、又はバスバーに接続するための部分である。接続部11cは、板材を折り曲げて形成されており、
図5(c)に示すようにXZ平面に沿った断面が凹形に形成されている。接続部11cは、X軸方向の幅が18.4mmであり、Y軸方向の長さが35mmである。また、接続部11cは、凹形の各辺の厚さが2.3mmであり、下面から上面までの高さが10mmである。
【0045】
接合部12cは、導体31が超音波接合される部分である。接合部12cは板状であり、Y軸方向の長さが18mmであり、Z軸方向の厚さが2.3mmである。また、接合部12cは、X軸方向の幅が18.4mmである。
【0046】
バレル部13cは、バレル片14cとバレル片15cを有する。板状のバレル片14cとバレル片15cをプレス加工によって中空の管状に成形することによりバレル部13cが形成されている。管状に成形されたバレル部13cの内径は、被覆電線3が挿入可能な直径である。
【0047】
本実施形態においては、
図5(c)に示すように断面が凹形である接続部11cは、最小断面二次モーメントが1.3×10
-9m
4であり、
図5(d)に示すように断面が矩形である接合部12cは、最小断面二次モーメントが1.9×10
-11m
4である。なお、最小断面二次モーメントの算出においては、端子1Cの素材をタフピッチ銅とし、密度が8890kg/m
3、ヤング率を1.18×10
11N/m
2としている。
【0048】
このように、端子1Cは、接続部11cの最小断面二次モーメントが接合部12cの最小断面二次モーメントより大きくなるように構成されている。接合部12cの最小断面二次モーメントより接続部11cの最小断面二次モーメントを大きくすることにより接続部11cの変形が抑えられ、疲労しにくくなり破損を防ぐことができる。
【0049】
図6は、接続部11cの最小断面二次モーメントと接続部11cの固有振動数の関係を示すグラフである。
図6においてプロットされている下側の点は、1次モードの固有振動数であり、上側の点は、2次モードの固有振動数である。また、
図6に示す2本の破線の間の範囲は、超音波接合における上述したホーンの振動の周波数の範囲である。
図6に示すように、接続部11cの固有振動数は、ホーンの振動の周波数範囲である18kHz~21kHzの範囲から外れるため、接続部11cが超音波接合の振動の周波数に共振して破損するのを抑えることができる。
【0050】
[第4実施形態]
次に本発明の第4実施形態について説明する。第4実施形態においては、導体31が接合される端子の構成が第1実施形態と異なる。
図7(a)は、導体31が接合される端子1Dの平面図であり、
図7(b)は、端子1Dの正面図である。また、
図7(c)は、
図7(a)のG-G線断面図であり、
図7(d)は、
図7(a)H-H線断面図である。
【0051】
端子1Dは、導体31に電気的及び機械的に接合される端子である。端子1Dは、銅又は銅合金からなる板材をプレス加工することにより形成される。端子1Dは、大別して接続部11d、接合部12d及びバレル部13dを有している。端子1Dは、Y軸方向の長さが80mmである。
【0052】
接続部11dは、導体31が接合された端子1Dを他の端子付き電線の端子、電源等の端子、又はバスバーに接続するための部分である。接続部11dは、板材を折り曲げて形成されており、
図7(c)に示すようにXZ平面に沿った断面が中空の矩形形状に形成されている。接続部11dは、X軸方向の幅が18.4mmであり、Y軸方向の長さが48mmである。また、接続部11dは、矩形の各辺の厚さが2.3mmであり、下面から上面までの高さが18.4mmである。
【0053】
接合部12dは、導体31が超音波接合される部分である。接合部12dは板状であり、X軸方向の幅が18.4mmであり、Z軸方向の厚さが2.3mmである。
【0054】
バレル部13dは、バレル片14dとバレル片15dを有する。板状のバレル片14dとバレル片15dをプレス加工によって中空の管状に成形することによりバレル部13dが形成されている。管状に成形されたバレル部13dの内径は、被覆電線3が挿入可能な直径である。
【0055】
本実施形態においては、
図7(c)に示すように断面が中空の矩形である接続部11dは、最小断面二次モーメントが6.6×10
-9m
4であり、
図7(d)に示すように断面が矩形である接合部12cは、最小断面二次モーメントが1.9×10
-11m
4である。なお、最小断面二次モーメントの算出においては、端子1Dの素材をタフピッチ銅とし、密度が8890kg/m
3、ヤング率を1.18×10
11N/m
2としている。
【0056】
このように、端子1Dは、接続部11dの最小断面二次モーメントが接合部12dの最小断面二次モーメントより大きくなるように構成されている。接合部12dの最小断面二次モーメントより接続部11dの最小断面二次モーメントを大きくすることにより接続部11dの変形が抑えられ、疲労しにくくなり破損を防ぐことができる。
【0057】
図8は、接続部11dの最小断面二次モーメントと接続部11dの固有振動数の関係を示すグラフである。
図8においてプロットされている下側の点は、1次モードの固有振動数であり、上側の点は、2次モードの固有振動数である。また、
図8に示す2本の破線の間の範囲は、超音波接合における上述したホーンの振動の周波数の範囲である。
図8に示すように、接続部11dの固有振動数は、ホーンの振動の周波数範囲である18kHz~21kHzの範囲から外れるため、接続部11dが超音波接合の振動の周波数に共振して破損するのを抑えることができる。
【0058】
[第5実施形態]
次に本発明の第5実施形態について説明する。第5実施形態においては、導体31が接合される端子の構成が第1実施形態と異なる。
図9(a)は、導体31が接合される端子1Eの平面図であり、
図9(b)は、端子1Eの正面図である。また、
図9(c)は、
図9(a)のJ-J線断面図であり、
図9(d)は、
図9(a)のK-K線断面図である。
【0059】
端子1Eは、導体31に電気的及び機械的に接合される端子である。端子1Eは、銅又は銅合金からなる板材をプレス加工することにより形成される。端子1Eは、大別して接続部11e、接合部12e及びバレル部13eを有している。端子1Eは、Y軸方向の長さが40mmである。
【0060】
接続部11eは、導体31が接合された端子1Eを他の端子付き電線の端子、電源等の端子、又はバスバーに接続するための部分である。接続部11eは、XZ平面に沿って形成されている。接続部11eには、
図9(c)に示すようにY軸方向に貫通する直径が10mmのボルト穴が形成されている。接続部11eは、X軸方向の幅が18.4mmであり、Y軸方向の厚さが2.3mmである。また、接続部11eは、Z軸方向の高さが40mmである。
【0061】
接合部12eは、導体31が超音波接合される部分である。接合部12eは板状であり、Z軸方向の厚さが2.3mmである。また、接合部12eは、X軸方向の幅が18.4mmである。
【0062】
バレル部13eは、バレル片14eとバレル片15eを有する。板状のバレル片14eとバレル片15eをプレス加工によって中空の管状に成形することによりバレル部13eが形成されている。管状に成形されたバレル部13eの内径は、被覆電線3が挿入可能な直径である。
【0063】
本実施形態においては、
図9(b)に示すように接合部12eから-Z方向に折り曲げられて形成された接続部11eは、最小断面二次モーメントが9.8×10
-8m
4であり、
図9(d)に示すように断面が矩形である接合部12eは、最小断面二次モーメントが1.9×10
-11m
4である。なお、最小断面二次モーメントの算出においては、端子1Cの素材をタフピッチ銅とし、密度が8890kg/m
3、ヤング率を1.18×10
11N/m
2としている。
【0064】
このように、端子1Eは、接続部11eの最小断面二次モーメントが接合部12eの最小断面二次モーメントより大きくなるように構成されている。接合部12eの最小断面二次モーメントより接続部11eの最小断面二次モーメントを大きくすることにより接続部11eの変形が抑えられ、疲労しにくくなり破損を防ぐことができる。
【0065】
図10は、接続部11eの最小断面二次モーメントと接続部11eの固有振動数の関係を示すグラフである。
図10においてプロットされている点は、1次モードの固有振動数である。また、
図10に示す2本の破線の間の範囲は、超音波接合における上述したホーンの振動の周波数の範囲である。
図10に示すように、接続部11eの固有振動数は、ホーンの振動の周波数範囲である18kHz~21kHzの範囲を外れるため、接続部11eが超音波接合の振動の周波数に共振して破損するのを抑えることができる。
【0066】
[接続部の好適な構成]
次に上述した接続部の長さと最小断面二次モーメントの関係について説明する。発明者は、上述した実施形態に係る端子が有する接続部ついて、Y軸方向の長さと最小断面二次モーメントを変えて端子付き電線の強度を検討した。表1は、端子の接続部について、Y軸方向の長さと最小断面二次モーメントとを変えて端子付き電線の引張試験を行った結果である。なお、試験においては、端子付き電線を作成するにあたり、端子に接合する導体の断面積を60sqとした。また、導体31の端子への超音波接合においては、接合条件としてエネルギーを8000J~12000Jの範囲、加圧の圧力を2kN~4kNの範囲、振幅を80%~100%とした。引張試験の評価については、引張強度が3N以上の場合を強度良好の「○」、引張強度が3N未満の場合を強度不足の「△」、引張試験において端子に亀裂や変形が生じた場合を「×」と評価した。
【0067】
【0068】
表1に示すように、端子の接続部の最小断面二次モーメントについては、接続部のY軸方向の長さが30mm未満である場合、1.0×10-11m4以上であるのが好ましく、接続部のY軸方向の長さを30mm以上40mm未満とする場合、1.0×10-10m4以上であるのが好ましい。また、端子の接続部の最小断面二次モーメントについては、接続部のY軸方向の長さを40mm以上50mm未満とする場合、1.0×10-9m4以上であるのが好ましい。
【0069】
なお、接続部の最小断面二次モーメントを大きくすると、引っ張りに対しての強度は良好となるが、最小断面二次モーメントを1.0×10-7m4以上とすると、接続部の重量や体積が増加するため、接続部の最小断面二次モーメントは、1.0×10-7m4未満であるのが好ましい。また、接続部の最小断面二次モーメントについては、6.7×10-13m4未満とすると、厚さやX軸方向の幅が狭くなり、被覆電線3が高圧用の電線である場合には、接続先との電気的な接続に必要な面積が不足するため、6.7×10-13m4以上であるのが好ましい。
【0070】
また、端子の接続部の厚さについては、1.3mm以上7mm以下が好ましく、軽量化及びコストの観点から1.3mm以上3.5mm以下であるのが好ましい。
【0071】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。なお、上述した実施形態及び以下の変形例は、各々を組み合わせてもよい。上述した各実施形態及び各変形例の構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態や変形例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0072】
上述した第3実施形態では接続部の断面形状が凹形であり、第4実施形態では接続部の断面形状が中空の矩形であるが、板材を折り曲げて接続部を形成する場合、接続部の断面形状は凹形や中空の矩形に限定されるものではない。板材を折り曲げて端子の接続部を形成する場合、接続部の断面を形成する辺の数が接合部の断面を形成する辺の数より多い構成としてもよい。
【0073】
導体31を接合部へ接合する超音波接合機のホーンの駆動周波数は、20kHzに限定されるものではなく、他の周波数であってもよい。導体31を接合部へ接合する超音波接合機のホーンの駆動周波数は、例えば20kHz~120kHzの範囲内であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
1A、1B、1C、1D、1E 端子
3 被覆電線
10 端子付き電線
11a、11b、11c、11d、11e 接続部
12a、12b、12c、12d、12e 接合部
13b、13c、13d、13e バレル部
14b、14c、14d、14e バレル片
15b、15c、15d、15e バレル片
31 導体
32 被覆部