(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023013159
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
G01N35/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021117132
(22)【出願日】2021-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】舟越 砂穂
(72)【発明者】
【氏名】大草 武徳
(72)【発明者】
【氏名】横山 洸幾
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058BB02
2G058BB09
2G058BB17
2G058BB27
2G058GA03
(57)【要約】
【課題】ヒータの容量を大きくすることなく反応槽の液温を短時間で所定の温度に上昇させる。
【解決手段】本開示の自動分析装置は、反応液を収容する反応容器が浸漬される液体を保持する反応槽と、前記液体を循環させて前記反応槽に供給するポンプと、前記液体を加熱するヒータと、前記液体を加熱及び冷却可能なペルチェ素子と、前記液体の温度を検知する第1の温度センサと、前記第1の温度センサの検知した温度に基づいて、前記ヒータの出力及び前記ペルチェ素子の出力を制御する制御装置と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応液を収容する反応容器が浸漬される液体を保持する反応槽と、
前記液体を循環させて前記反応槽に供給するポンプと、
前記液体を加熱するヒータと、
前記液体を加熱及び冷却可能なペルチェ素子と、
前記液体の温度を検知する第1の温度センサと、
前記第1の温度センサの検知した温度に基づいて、前記ヒータの出力及び前記ペルチェ素子の出力を制御する制御装置と、を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
前記制御装置は、
前記第1の温度センサの検知した温度が所定温度より低いときには、前記ペルチェ素子が前記液体を加熱する加熱運転を行い、前記第1の温度センサの検知した温度が前記所定温度以上のときには、前記ペルチェ素子が前記液体を冷却する冷却運転を行うように、前記ペルチェ素子の出力を制御することを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記自動分析装置の起動時において、前記第1の温度センサの検知した温度が前記所定温度よりも低いときには、前記ペルチェ素子が前記加熱運転を行い、前記第1の温度センサの検知した温度が前記所定温度以上のときには前記ペルチェ素子が前記冷却運転を行うように、前記ペルチェ素子の出力を制御することを特徴とする請求項2記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記制御装置は、
前記加熱運転においては、前記第1の温度センサの検知した温度が低いほど前記ペルチェ素子の運転率又は電流が大きくなるように、前記自動分析装置の起動時に前記ペルチェ素子の運転率又は電流を設定し、
前記冷却運転においては、前記第1の温度センサの検知した温度が高いほど前記ペルチェ素子の運転率又は電流が大きくなるように、前記自動分析装置の起動時に前記ペルチェ素子の運転率又は電流を設定することを特徴とする請求項3記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記制御装置は、
前記ヒータの運転率又は印加電圧が所定値よりも低いときには、前記ペルチェ素子が前記液体を冷却する冷却運転を行い、前記ヒータの運転率又は印加電圧が所定値以上のときには、前記ペルチェ素子が前記液体を加熱する加熱運転を行うように、前記ペルチェ素子の出力を制御し、
前記冷却運転においては、前記ヒータの運転率又は印加電圧が低いほど前記ペルチェ素子の運転率又は電流を大きくし、
前記加熱運転においては、前記ヒータの運転率又は印加電圧が高いほど前記ペルチェ素子の運転率又は電流を大きくすることを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記ヒータの運転率と前記ペルチェ素子の運転率との差が所定値よりも小さいときには、前記ペルチェ素子が前記液体を冷却する冷却運転を行い、前記ヒータの運転率と前記ペルチェ素子の運転率の差が所定値以上のときには、前記ペルチェ素子が前記液体を加熱する加熱運転を行うように、前記ペルチェ素子の出力を制御し、
前記冷却運転においては、前記ヒータの運転率と前記ペルチェ素子の運転率の差が小さいほど、前記ペルチェ素子の運転率を大きくし、
前記加熱運転においては、前記ヒータの運転率と前記ペルチェ素子の運転率の差が大きいほど、前記ペルチェ素子の運転率を大きくすることを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項7】
周囲の空気温度を検知する空気温度センサをさらに備え、
前記制御装置は、
前記空気温度センサの検知した前記空気温度が所定の空気温度以上のときには、前記ペルチェ素子が前記液体を冷却する冷却運転を行い、前記空気温度センサの検知した前記空気温度が前記所定の空気温度よりも低いときには、前記ペルチェ素子が前記液体を加熱する加熱運転を行うように、前記ペルチェ素子の出力を制御し、
前記冷却運転においては、前記空気温度センサの検知した前記空気温度が高いほど前記ペルチェ素子の運転率又は電流を大きくし、
前記加熱運転においては、前記空気温度センサの検知した前記空気温度が低いほど前記ペルチェ素子の運転率又は電流を大きくすることを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項8】
前記反応槽と前記ポンプとの間に配置され、前記液体の温度を検知する第2の温度センサをさらに備え、
前記第1の温度センサは、前記ヒータと前記反応槽との間に設けられ、
前記制御装置は、
前記第1の温度センサの検知した温度と前記第2の温度センサの検知した温度との差が所定値よりも小さいときには、前記ペルチェ素子が前記液体を冷却する冷却運転を行い、前記第1の温度センサの検知した温度と前記第2の温度センサの検知した温度との差が前記所定値以上のときには、前記ペルチェ素子が前記液体を加熱する加熱運転を行うように、前記ペルチェ素子の出力を制御し、
前記冷却運転においては、前記第1の温度センサの検知した温度と前記第2の温度センサの検知した温度との差が小さいほど前記ペルチェ素子の運転率又は電流を大きくし、
前記加熱運転においては、前記第1の温度センサの検知した温度と前記第2の温度センサの検知した温度との差が大きいほど前記ペルチェ素子の運転率又は電流を大きくすることを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項9】
前記制御装置は、
前記第1の温度センサの検知した温度と、前記液体の設定温度とに基づいて前記ペルチェ素子の出力を変化させ、
前記自動分析装置の起動時において前記第1の温度センサの検知した温度が所定温度よりも低いときには前記ヒータを運転し、
前記ヒータの運転時において、前記第1の温度センサの検知した温度が安定した時点で、前記ペルチェ素子が前記液体を冷却する冷却運転を行っているか、前記ペルチェ素子が前記液体を加熱する加熱運転を行っている場合は前記ペルチェ素子の出力が所定値以下のときには、前記ヒータを停止することを特徴とする請求項1記載の自動分析装置。
【請求項10】
反応液を収容する反応容器が浸漬される液体を保持する反応槽と、
前記液体を循環させて前記反応槽に供給するポンプと、
前記液体を加熱するヒータと、
前記液体を冷却可能なラジエータと、
前記ラジエータに送風するファンと、
前記液体の温度を検知する第1の温度センサと、
前記第1の温度センサの検知した温度に基づいて、前記ヒータの出力及び前記ファンの運転を制御する制御装置と、を備えることを特徴とする自動分析装置。
【請求項11】
前記制御装置は、
前記自動分析装置の起動時において前記第1の温度センサの検知した温度が所定温度以上のときには、前記ファンを運転し、前記第1の温度センサの検知した温度が前記所定温度よりも低いときには、前記ファンを停止することを特徴とする請求項10記載の自動分析装置。
【請求項12】
前記制御装置は、
前記ヒータの運転率又は印加電圧が所定値より低いときには、前記ファンを運転し、前記ヒータの運転率又は印加電圧が前記所定値以上のときには、前記ファンを停止することを特徴とする請求項10記載の自動分析装置。
【請求項13】
周囲の空気温度を検知する空気温度センサをさらに備え、
前記制御装置は、
前記空気温度センサの検知した前記空気温度が所定の空気温度以上のときには、前記ファンを運転し、前記空気温度センサの検知した前記空気温度が前記所定の空気温度よりも低いときには、前記ファンを停止することを特徴とする請求項10記載の自動分析装置。
【請求項14】
前記反応槽と前記ポンプとの間に配置され、前記液体の温度を検知する第2の温度センサをさらに備え、
前記第1の温度センサは、前記ヒータと前記反応槽との間に設けられ、
前記制御装置は、
前記第1の温度センサの検知した温度と前記第2の温度センサの検知した温度との差が所定値よりも小さいときには、前記ファンを運転し、
前記第1の温度センサの検知した温度と前記第2の温度センサの検知した温度との差が前記所定値以上のときには、前記ファンを停止することを特徴とする請求項10記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料と試薬とを反応容器内で混合し、反応液の光学的特性を測定することにより目的とする成分の分析を行う自動分析装置において、測定精度を維持するために、反応容器を浸漬させる液体の温度を正確に制御する必要がある。
【0003】
特許文献1には、「円形の反応ディスク1の円周上に取り付けられた反応容器2は、同じく円形の反応槽3に保持された液体に浸漬されている。反応槽内の液体は、排出配管4と供給配管5との間に設置された循環用ポンプ6により常時循環されており、ヒータ7のオン/オフ制御により温度制御されている。これにより、反応容器2の内部に保持された反応液を反応に最適な温度(例えば37℃)に保っている。反応槽内の液体は水でもよいし、他の溶液であってもよい。また、反応槽内の液体の温度が高くなりすぎた場合に液体を冷却するための冷却ユニット8を設けてもよい。」という構成の自動分析装置が開示されている(特許文献1の段落0015等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の冷却ユニットは、冷却する機能しか有しないため、冬季などで周囲温度が低温のときには、反応槽の液体温度が所定の温度に達するまでに長い時間を要する。また、液体温度を速く上昇させるためにはヒータの容量を大きくする必要がある。
【0006】
そこで、本開示は、ヒータの容量を大きくすることなく反応槽の液温を短時間で所定の温度に上昇させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の自動分析装置は、反応液を収容する反応容器が浸漬される液体を保持する反応槽と、前記液体を循環させて前記反応槽に供給するポンプと、前記液体を加熱するヒータと、前記液体を加熱及び冷却可能なペルチェ素子と、前記液体の温度を検知する第1の温度センサと、前記第1の温度センサの検知した温度に基づいて、前記ヒータの出力及び前記ペルチェ素子の出力を制御する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本開示に関連する更なる特徴は、本明細書の記述、添付図面から明らかになるものである。また、本開示の態様は、要素及び多様な要素の組み合わせ及び以降の詳細な記述と添付される特許請求の範囲の様態により達成され実現される。本明細書の記述は典型的な例示に過ぎず、本開示の特許請求の範囲又は適用例を如何なる意味に於いても限定するものではない。
【発明の効果】
【0009】
本開示の技術によれば、ヒータの容量を大きくすることなく反応槽の液温を短時間で所定の温度に上昇させることができる。上記以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態の自動分析装置における反応槽近傍の構成を示す模式図である。
【
図3】液体ジャケットの構成例を示す断面図である。
【
図4】液体ジャケットの別の構成例の断面図である。
【
図6A】従来例(特許文献1)の冷却ユニット(冷凍機)及びヒータの運転パターンを示す図である。
【
図6B】第1の実施形態のペルチェ素子及びヒータの運転パターンを示す図である。
【
図7】第1の実施形態のペルチェ素子及びヒータの運転パターンの他の例を示す図である。
【
図8】制御装置により実行される循環水の温度制御方法を示すフローチャートである。
【
図9】自動分析装置の起動時におけるペルチェ素子の運転率の設定方法を説明するための図である。
【
図10】従来例に係る運転方法及び本実施形態に係る運転方法における水温の変化を模式的に示すグラフである。
【
図11】第2の実施形態におけるペルチェ素子の運転率の設定方法を説明するための図である。
【
図12】第2の実施形態の変形例に係るペルチェ素子の運転率の設定方法を説明するための図である。
【
図13】第3の実施形態におけるペルチェ素子の運転率の設定方法を説明するための図である。
【
図14】第4の実施形態の自動分析装置における反応槽近傍の構成を示す模式図である。
【
図15】第4の実施形態におけるペルチェ素子の運転率の設定方法を説明するための図である。
【
図16】第4の実施形態の変形例に係るペルチェ素子の運転率の設定方法を説明するための図である。
【
図17】第5の実施形態の自動分析装置における反応槽近傍の構成を示す模式図である。
【
図18】第5の実施形態におけるペルチェ素子の運転率の設定方法を説明するための図である。
【
図19】第5の実施形態の変形例に係るペルチェ素子の運転率の設定方法を説明するための図である。
【
図20】第6の実施形態の自動分析装置における反応槽近傍の構成を示す模式図である。
【
図21】第7の実施形態の自動分析装置における反応槽近傍の構成を示す模式図である。
【
図22】第7の実施形態のラジエータの構成例を示す断面図である。
【
図23】ラジエータの別の構成例を示す模式図である。
【
図24】第8の実施形態の自動分析装置における反応槽近傍の構成を示す模式図である。
【
図25】第9の実施形態の自動分析装置における反応槽近傍の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施形態]
<自動分析装置の反応槽近傍の構成例>
図1は、第1の実施形態の自動分析装置における反応槽1近傍の構成を示す模式図である。自動分析装置は、反応槽1、ポンプ3、ペルチェユニット5、ヒータ6、温度センサ7、制御装置8、光源10、光度計11、ディスク12、チューブ13を備える。
【0012】
図1においては、反応槽1の垂直方向の断面図が示されている。反応槽1は、上面視で略円形である。反応槽1の内部には恒温水槽14が設けられている。反応槽1は、循環水が恒温水槽14の内部を循環する水循環方式である。
【0013】
ディスク12は、上面視で略円形であり、複数の反応容器2を保持可能に構成される。反応容器2は、血液又は尿などの生体試料と試薬とを混合させた反応液を収容する。反応容器2は、恒温水槽14に浸漬される。
【0014】
ポンプ3は、反応槽1への循環水を循環させる。反応槽1から排出された循環水はペルチェユニット5において冷却又は加熱され、ヒータ6において加熱されて反応槽1に至り、反応槽1からポンプ3に戻る。チューブ13は、循環水が流れる上記の各構成要素を連結する。温度センサ7は、ヒータ6の下流側に配置され、反応槽1に導入される循環水の温度を検知し、温度の検知信号を制御装置8に出力する。
【0015】
制御装置8は、汎用コンピュータ、スマートフォン、タブレット端末などのコンピュータ装置である。図示は省略しているが、制御装置8は、本明細書で説明する処理を実行するプロセッサ、プロセッサにより実行されるプログラム及びその他必要なデータを一時的に格納するメモリ、プログラムを格納する記憶装置及び入出力装置を備える。
【0016】
制御装置8は、温度センサ7の検知した温度が目標の温度になるようにペルチェユニット5への入力及びヒータ6への入力を制御する。このように、本実施形態では、ヒータ6がペルチェユニット5より下流側に配置され、ヒータ6を通過した循環水の温度が温度センサ7により検知される。このような構成は、主にヒータ6によって反応槽1へ供給される循環水の温度を調節する場合に有利である。
【0017】
ペルチェユニット5は、ペルチェ素子4、液体ジャケット9、フィン51及びファン52を有する。ペルチェユニット5の詳細な構成は後述する。
【0018】
光源10は、反応槽1の内部に配置され、反応容器2に光を照射する。光度計11は、反応容器を通過した光の吸光度を計測し、計測信号を制御装置8又は他の演算装置に出力する。制御装置8又は他の演算装置は、光度計11から受信した計測信号に基づいて、生体試料中の特定成分の定性・定量分析を行う。反応液の温度が分析精度に影響するため、反応容器2が浸漬された恒温水槽14における水温は、一定の温度に制御する必要がある。
【0019】
<ペルチェユニットの構成例>
図2は、ペルチェユニット5の断面図である。
図2に示すように、ペルチェユニット5は、ペルチェ素子4、グリース等のサーマルインタフェース201~203、ヒートスプレッダ204、例えば樹脂製のケース205、フィン51、フィンベース206、ファン52、チューブコネクタ211を有する。チューブコネクタ211は、チューブ13(
図2には不図示)と液体ジャケット9内の流路214とを接続する。
【0020】
循環水を冷却する場合には、ペルチェ素子4の液体ジャケット9の側の面の温度が低く、フィンベース206の側の温度が高くなるように、ペルチェ素子4に通電する。液体ジャケット9の流路214を流れる循環水の熱は、液体ジャケット9からサーマルインタフェース201及びヒートスプレッダ204を介して、ペルチェ素子4によって吸熱されることにより、循環水が冷却される。一方、ペルチェ素子4の反対側は発熱し、その熱はサーマルインタフェース203を介してフィンベース206からフィン51に伝わり、ファン52によってフィン51の間に送られる空気に放熱される。
【0021】
一方、循環水を加熱する場合には、ペルチェ素子4の液体ジャケット9の側の面の温度が高く、フィンベース206の側の温度が低くなるように、ペルチェ素子4に通電する。ペルチェ素子4の液体ジャケット9の側の面が発熱し、液体ジャケット9に熱が伝わり、その流路214を流れる循環水が加熱される。ペルチェ素子4の反対側は吸熱面になり、フィン51の間を流れる空気からフィン51及びフィンベース206を通って吸熱する。以下の説明において、ペルチェ素子4が循環水を冷却する運転を冷却運転と呼び、ペルチェ素子4が循環水を加熱する運転を加熱運転と呼ぶこととする。
【0022】
液体ジャケット9、ヒートスプレッダ204、フィン51及びフィンベース206は、例えばステンレス又はアルミニウム等の金属で作成することができる。ケース205は、断熱性を有する樹脂などの断熱性材料で形成することができ、これにより液体ジャケット9とフィン51との熱伝導を防止することができ、液体ジャケット9内の循環水の冷却及び加熱を効率的に行うことができる。
【0023】
図3は、液体ジャケット9の構成例を示す断面図である。
図3は、
図2の断面と直交する方向における断面を示している。
図3に示すように、液体ジャケット9の流路214は、複数のフィン213により複数の流路に分割することができる。チューブコネクタ211から液体ジャケット9に供給された循環水は、フィン213の間にある流路214を流れて吸熱又は放熱し、チューブコネクタ212から排出される。
【0024】
図4は、液体ジャケット9の別の構成例を示す断面図である。
図4の例では、流路214の代わりに、蛇行流路215が設けられている。チューブコネクタ211から液体ジャケットに供給された循環水は、蛇行流路215を流れる間に吸熱又は放熱し、チューブコネクタ212から排出される。
【0025】
<ヒータの構成例>
図5は、ヒータ6の構成例を示す断面図である。ヒータ6は、加熱部としてのシースヒータ301、水路壁302、断熱材303、流路304、チューブコネクタ305、チューブコネクタ306、電源コード307を有する。
【0026】
水路壁302は略円筒形を有し、その内部空間に線形のシースヒータ301が配置されるとともに、流路304が画定される。シースヒータ301と水路壁302の接合部は、循環水の外部への漏出を防止するため、シールされている。水路壁302は断熱材303に覆われている。電源コード307は、シースヒータ301と電源とを接続し、電源によるシースヒータ301への通電は制御装置8により制御される。シースヒータ301は通電されることで加熱される。循環水は、入口のチューブコネクタ305から供給され流路304を通過して出口のチューブコネクタ306に流れる間にシースヒータ301によって加熱される。シースヒータ301の加熱量は、電源からの入力を調節することによって制御される。シースヒータ301の種類は、直流電源及び交流電源のいずれでもよい。シースヒータ301への入力を変える方法としては、電源の電圧を変える、一定電圧で電源をスイッチングして通電する割合(運転率)を変える、交流の場合はサイリスタを用いるなどの方法がある。
【0027】
<ペルチェ素子及びヒータの運転方法>
次に、本実施形態のペルチェユニット5のペルチェ素子4とヒータ6との運転パターンを従来例と比較して説明する。
【0028】
図6Aは、従来例(特許文献1)の冷却ユニット(冷凍機)及びヒータの運転パターンを示す図である。
図6Aに示すように、従来例においては、冷却ユニットは冷却運転しかできないため、循環水の水温にかかわらず、常に冷却運転が行われる。一方、ヒータも常に加熱運転が行われるが、ヒータの入力を変えることによって循環水に与えられる加熱量が制御される。
【0029】
図6Bは、本実施形態のペルチェ素子4及びヒータ6の運転パターンを示す図である。本実施形態においては、制御装置8は、温度センサ7が検知した水温が所定の運転切替温度Tcより低いときには、液体ジャケット9側の面を加熱する加熱運転を行うようにペルチェ素子4を制御し、水温が運転切替温度Tc以上のときには、液体ジャケット9側の面を冷却する冷却運転を行うようにペルチェ素子4を制御する。運転切替温度Tcは、循環水の目標温度よりも低く設定することができる。
【0030】
図7は、本実施形態のペルチェ素子4及びヒータ6の運転パターンの他の例を示す図である。
図7に示すように、1つの運転切替温度Tcを設定する代わりに、水温上昇時の運転切替温度Tc1と、水温下降時の運転切替温度Tc2とを異なる温度として設定し、ヒステリシスを設けてもよい。この場合、制御装置8は、ペルチェ素子4の加熱運転時に温度センサ7の温度が運転切替温度Tc1以上になった場合に冷却運転に切り替え、ペルチェ素子4の冷却運転時に温度センサ7の温度が運転切替温度Tc2以下になった場合に加熱運転に切り替える。運転切替温度Tc1と運転切替温度Tc2との差は、例えば1℃程度とすることができる。このようにヒステリシスを持たせることにより、ペルチェ素子4の加熱運転と冷却運転が頻繁に切り替わることを防止することができる。
【0031】
図8は、制御装置8により実行される循環水の温度制御方法を示すフローチャートである。制御装置8は、自動分析装置の起動を開始する指示の入力を受け付けると、不図示のメモリに格納されたプログラムに従って、
図8に示す処理を実行する。
【0032】
ステップS11において、制御装置8は、温度センサ7により検出された水温Twが運転切替温度Tcよりも高いか否かを判定する。水温Twが運転切替温度Tcよりも高い場合(Yes)、処理はステップS12に移行し、制御装置8は、ペルチェ素子4を冷却運転する。水温Twが運転切替温度Tc以下の場合(No)、処理はステップS13に移行し、制御装置8は、ペルチェ素子4を加熱運転する。
【0033】
次に、ステップS14において、制御装置8は、水温Twと、予め定められた循環水の目標水温に従って、ヒータ6の入力を決定し、PID制御等によって入力を変化させて水温を制御する。
【0034】
次に、ステップS15において、制御装置8は、反応容器2の反応液の測定が終了したか否かを判定する。測定が終了した場合(Yes)、処理を終了する。測定が終了していない場合(No)、処理はステップS11に戻る。
【0035】
<ペルチェ素子の運転率について>
図9は、自動分析装置の起動時におけるペルチェ素子4の運転率の設定方法を説明するための図である。
図9において、縦軸はペルチェ素子4の運転率を示し、正の値は冷却運転の運転率を表し、負の値は加熱運転の運転率を表す。横軸は起動時に温度センサ7が検知した水温Twを示す。
【0036】
自動分析装置の起動時において、温度センサ7で検知された水温Twが運転切替温度Tc以下のときには常にペルチェ素子4を100%の運転率で加熱運転をしてもよい。代替的に、
図9に示すように、起動時の水温Twに応じてペルチェ素子4の運転条件を変更してもよい。
図9に示すように、起動時の水温Twが低いときにはペルチェ素子4を加熱運転させ、起動時の水温Twが高いときには冷却運転させ、さらに起動時の水温Twに応じてペルチェ素子4の運転率を変化させることにより、より速く反応槽1の水温を目標温度に到達させることができる。ペルチェ素子4の運転率が0%となる起動時の水温Twは、例えば上記の運転切替温度Tc以下とすることができる。ペルチェ素子4の加熱運転率を100%とする水温Tw、冷却運転率を100%とする水温Twは、自動分析装置の出荷前などに予め任意に設定することができ、制御装置8の記憶装置に記憶させておく。
【0037】
ペルチェ素子4の運転率は、一定電流でスイッチングさせて、オンとオフの比率を変えることにより制御することができる。運転率を変える替わりに、ペルチェ素子4に流す電流を変化させることによってペルチェ素子4の能力を変化させてもよい。
【0038】
図10は、従来例に係る運転方法及び本実施形態に係る運転方法における水温の変化を模式的に示すグラフである。
図10に示すように、本実施形態のように水温が運転切替温度Tc以下のときにペルチェ素子4を加熱運転することにより、従来例よりも速く水温を目標温度Tsまで到達させることが可能であり、迅速に自動分析装置を立ち上げることが可能である。また、従来例においては、液体温度を速く上昇させるためにヒータの容量を大きくすると、ヒータが大きくなって装置が大きくなり、ヒータ及び電源のコストが上昇してしまう。これに対し、本実施形態によれば、立ち上げ時間に余裕がある場合には、ヒータ6の容量を小さくすることができるため、ヒータ6を小型化したり、ヒータ6に要するコストを低減したりすることができる。
【0039】
<第1の実施形態のまとめ>
以上のように、本実施形態の自動分析装置は、反応液を収容する反応容器2が浸漬される循環水(液体)を保持する反応槽1と、循環水を循環させて反応槽1に供給するポンプ3と、循環水を加熱するヒータ6と、循環水を加熱及び冷却可能なペルチェ素子4と、循環水の温度を検知する温度センサ7と、温度センサの検知した温度に基づいて、ヒータ6の出力及びペルチェ素子4の出力を制御する制御装置8と、を備える。このように、ヒータ6と、加熱及び冷却が可能なペルチェ素子4とを組み合わせることにより、ヒータ6の容量を大きくすることなく、循環水のトータルの加熱能力を向上できるので、周囲の空気温度が低温の場合においても、反応槽1の液体温度をより速く所定の温度に上げることが可能である。また、例えば水温がある程度上昇した場合などにはペルチェ素子4を冷却運転することで、循環水の水温を安定化することができる。
【0040】
[第2の実施形態]
上述の第1の実施形態においては、自動分析装置の起動時における循環水の水温に基づいて、ペルチェ素子4の運転率を決定することを説明した。第2の実施形態においては、循環水の水温が安定しているときのペルチェ素子4の運転率の決定方法について提案する。本実施形態の自動分析装置の構成は第1の実施形態と同じであるため説明を省略する。
【0041】
<ペルチェ素子の運転率について>
図11は、第2の実施形態におけるペルチェ素子4の運転率の設定方法を説明するための図である。
図11において、縦軸は
図9と同様である。横軸は起動後ある程度の時間が経過して温度センサ7が検知した水温Twが安定した状態におけるヒータ6の運転率を示す。本実施形態では、
図11のように、制御装置8は、温度センサ7の検知する水温Twがある程度安定した時点において、ヒータ6の運転率又はヒータ6の入力に応じてペルチェ素子4の運転率を変化させ、ペルチェ素子4の冷却能力及び加熱能力を変化させる。ヒータ6の運転率が高いときには反応槽1等の熱負荷、すなわち放熱量が大きいと推定し、ヒータ6の運転率が高いほどペルチェ素子4の冷却能力を下げ、さらにヒータ6の運転率が高いときにはペルチェ素子4の加熱能力を上げる運転を行う。ペルチェ素子4の運転率を0%とするときのヒータ6の運転率は、例えば50%とすることができる。ペルチェ素子4の加熱運転率を100%とするヒータ6の運転率、冷却運転率を100%とするヒータ6の運転率は、自動分析装置の出荷前などに予め任意に設定することができ、制御装置8の記憶装置に記憶させておく。
【0042】
図12は、第2の実施形態の変形例に係るペルチェ素子4の運転率の設定方法を説明するための図である。
図11ではペルチェ素子4の運転率を直線的に変化させている。これに対し、
図12に示すように、ペルチェ素子4の運転率を階段状に変化させ、ヒータ6の運転率の上昇時と下降時とでヒステリシスを持たせてもよい。
【0043】
動作が不安定になるのを避けるために、
図11及び
図12に基づくペルチェ素子4の運転率の変更は常時行うのではなく、ある程度の時間間隔で行うようにしてもよい。
【0044】
<第2の実施形態のまとめ>
従来例の自動分析装置においては、周囲の空気温度によって変わる熱負荷にかかわらず冷却ユニットが冷却運転を行うため、ヒータの消費電力が多くなりがちであった。これに対し、本実施形態のように熱負荷に応じてペルチェ素子4の運転率とヒータ6の運転率を制御することによって、無駄な冷却及び加熱を行うことがなくなり、消費電力を低減することが可能である。
【0045】
[第3の実施形態]
<ペルチェ素子の運転率について>
図13は、第3の実施形態におけるペルチェ素子4の運転率の設定方法を説明するための図である。
図13において、縦軸は
図9と同様である。横軸は起動後ある程度の時間が経過して温度センサ7が検知した水温Twが安定した状態におけるヒータ6の運転率とペルチェ素子4の運転率との差を示す。水温Twが安定した状態におけるヒータ6の運転率とペルチェ素子4の運転率との差は、そのときにトータルとしての加熱量、すなわち反応槽1などの熱負荷を表すと考えられる。そこで、制御装置8は、ヒータ6の運転率とペルチェ素子4の運転率の差に応じて、ペルチェ素子4の運転率を変更する。実際には、ヒータ6の運転率に定数Aを乗じ、ペルチェ素子4の運転率に定数Bを乗じて、
図13の横軸を「A×ヒータの運転率-B×ペルチェ素子の運転率」としてもよい。
【0046】
図13においては、ヒータ6の運転率がペルチェ素子4の運転率よりも高い場合のグラフが示されているが、ヒータ6の運転率とペルチェ素子4の運転率とのバランス(ヒータ6の能力とペルチェ素子4の能力との兼ね合い)に応じて、
図13中のグラフの線はシフトする。
【0047】
動作が不安定になるのを避けるため、
図13に基づくペルチェ素子の運転率の変更は常時行うのではなく、ある程度の時間間隔で行うようにしてもよい。
【0048】
<第3の実施形態のまとめ>
以上のように、本実施形態のように熱負荷に応じてペルチェ素子4の運転率とヒータ6の運転率を制御することによって、無駄な冷却及び加熱を行うことがなくなり、消費電力を低減することが可能である。
【0049】
[第4の実施形態]
<自動分析装置の反応槽近傍の構成例>
図14は、第4の実施形態の自動分析装置における反応槽1近傍の構成を示す模式図である。本実施形態の自動分析装置は、周囲の空気温度を検知する空気温度センサ15をさらに備える点で、第1の実施形態の構成と異なっている。他の構成については第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。空気温度センサ15は、空気温度の検知信号を制御装置8に出力する。
【0050】
<ペルチェ素子の運転率について>
図15は、本実施形態におけるペルチェ素子の運転率の設定方法を説明するための図である。
図15において、縦軸は
図9と同様である。横軸は空気温度センサ15が検知した周囲の空気温度を示す。空気温度が低いほど反応槽1などからの周囲への放熱量すなわち熱負荷が大きい。そこで、本実施形態においては、制御装置8は、空気温度センサ15が検知した周囲の空気温度が所定の空気温度より低いときにはペルチェ素子4の加熱運転を行い、周囲の空気温度が低いほどペルチェ素子4の運転率が高くなるように、ペルチェ素子4の運転率を制御する。空気温度センサ15が検知した周囲の空気温度が所定の空気温度以上の場合には、ペルチェ素子4を冷却運転し、周囲の空気温度が高いほどペルチェ素子4の運転率が高くなるようにする。ペルチェ素子4の運転率を0%とする周囲の空気温度(上記の所定の空気温度:加熱運転と冷却運転を切り替えるときの空気温度)は、例えば、循環水の目標温度よりも低い温度とすることができる。
【0051】
図16は、第4の実施形態の変形例に係るペルチェ素子4の運転率の設定方法を説明するための図である。
図15ではペルチェ素子4の運転率を直線的に変化させている。これに対し、
図16に示すように、ペルチェ素子4の運転率を階段状に変化させ、ヒータ6の運転率の上昇時と下降時とでヒステリシスを持たせてもよい。
【0052】
動作が不安定になるのを避けるために、
図15及び
図16に基づくペルチェ素子4の運転率の変更は常時行うのではなく、ある程度の時間間隔で行うようにしてもよい。
【0053】
<第4の実施形態のまとめ>
以上のように、本実施形態のように熱負荷に応じてペルチェ素子4の運転率とヒータ6の運転率を制御することによって、無駄な冷却及び加熱を行うことがなくなり、消費電力を低減することが可能である。
【0054】
[第5の実施形態]
<自動分析装置の反応槽近傍の構成例>
図17は、第5の実施形態の自動分析装置における反応槽1近傍の構成を示す模式図である。本実施形態の自動分析装置は、反応槽1とポンプ3との間に設けられ、循環水の温度を検知する温度センサ16をさらに備える点で、第1の実施形態の構成と異なっている。温度センサ16は、循環水の温度の検知信号を制御装置8に出力する。
【0055】
<ペルチェ素子の運転率について>
図18は、本実施形態におけるペルチェ素子の運転率の設定方法を説明するための図である。
図18において、縦軸は
図9と同様である。横軸は温度センサ7(第1の温度センサ)が検知した水温と温度センサ16(第2の温度センサ)が検知した水温との差を示す。本実施形態では、反応槽1などの放熱量が大きいほど、温度センサ7の検知温度と温度センサ16の検知温度との差が大きいことを利用する。具体的には、制御装置8は、温度センサ7が検知した温度と、温度センサ16が検知した温度との差が所定値以上のときにはペルチェ素子4の加熱運転を行い、温度差が大きいほど運転率を高く設定する。制御装置8は、2つの温度センサ7及び16の温度差が所定値より低いときにはペルチェ素子4の冷却運転を行い、温度差が小さいほどペルチェ素子4の運転率を高く設定する。ペルチェ素子4の運転率を0%とするときの2つの温度センサ7及び16の温度差(上記の所定値:加熱運転と冷却運転を切り替えるときの空気温度)は、例えば、1℃未満とすることができる。
【0056】
図19は、第5の実施形態の変形例に係るペルチェ素子4の運転率の設定方法を説明するための図である。
図18ではペルチェユニットの運転率を直線的に変化させている。これに対し、
図19に示すように、ペルチェ素子4の運転率を階段状に変化させ、ヒータ6の運転率の上昇時と下降時とでヒステリシスを持たせてもよい。
【0057】
動作が不安定になるのを避けるために、
図18及び
図19に基づくペルチェ素子4の運転率の変更は常時行うのではなく、ある程度の時間間隔で行うようにしてもよい。
【0058】
[第6の実施形態]
<自動分析装置の反応槽近傍の構成例>
図20は、第6の実施形態の自動分析装置における反応槽1近傍の構成を示す模式図である。本実施形態の自動分析装置は、ペルチェユニット5がヒータ6の下流側に配置されている点で、第1の実施形態の構成と異なっている。本実施形態においては、制御装置8は、温度センサ7の検知した循環水の水温Twと目標温度に従って、ペルチェ素子4の冷却能力又は加熱能力を制御する。ペルチェ素子4の冷却能力又は加熱能力は、ペルチェ素子4の電圧の印加方向と運転率を変化させて制御する。
【0059】
より具体的には、制御装置8は、運転開始時に温度センサ7が検知した水温Twが所定値以下の場合には、ヒータ6を一定出力で運転するとともに、ペルチェ素子4を加熱運転し、温度センサ7の検知した水温Twに従ってペルチェ素子4の加熱能力又は冷却能力を制御する。ヒータ6の運転時において温度センサ7の温度が安定した時点で、ペルチェ素子4が冷却運転されているか、ペルチェ素子4の加熱運転における運転率が所定値以下のときには、制御装置8は、ヒータ6を停止し、ペルチェ素子4によって循環水の温度を制御する。
【0060】
<第6の実施形態のまとめ>
以上のように、本実施形態によれば、加熱の負荷が小さいときにはヒータ6を停止してペルチェ素子4のみで循環水の温度を制御することにより、省電力の運転が実現される。
【0061】
[第7の実施形態]
<自動分析装置の反応槽近傍の構成例>
図21は、第7の実施形態の自動分析装置における反応槽1近傍の構成を示す模式図である。本実施形態の自動分析装置は、ペルチェユニット5の替わりにラジエータ60が設けられ、ラジエータ60によって循環水の熱を空気に放熱することにより循環水の冷却を行う点で、第1の実施形態の構成と異なっている。
【0062】
ラジエータ60は、液体ジャケット9、フィン51及びファン52を有する。ラジエータ60の詳細な構成は後述する。ラジエータ60のファン52の動作は、制御装置8により制御される。
【0063】
<ラジエータの構成例>
図22は、ラジエータ60の構成例を示す断面図である。ラジエータ60は、液体ジャケット9、フィン51、ファン52、グリース等のサーマルインタフェース201、フィンベース206を有する。液体ジャケット9は、サーマルインタフェース201を介してフィンベース206に接続されている。液体ジャケット9からの熱は、サーマルインタフェース201を経てフィンベース206からフィン51に伝導する。フィン51及びフィンベース206からは、ファン52によってフィン51間を流れる空気に放熱される。液体ジャケット9の構造は、第1の実施形態(
図3又は
図4)に例示した構造と同様の構造とすることができる。
【0064】
図23は、第7の実施形態の変形例に係る別の構造のラジエータ70を示す模式図である。
図23の左側は、ラジエータ70を第1の方向から見た図を示し、
図23の右側は、第1の方向とは直交する第2の方向から見た図を示している。ラジエータ70は、液体ジャケット9、フィン51、サーマルインタフェース201及びフィンベース206の代わりに、循環水が流れるパイプ53が設けられている。パイプ53は、チューブ13(
図23には不図示)に接続される。パイプ53はステンレス等の金属製とすることができる。循環水はパイプ53を流れ、ファン52によってパイプ53の周囲に空気が流され、循環水の熱はパイプ53から空気に放熱される。
【0065】
ラジエータ60及び70のファン52は常時運転してもよいが、以下のような制御を行ってもよい。制御装置8は、起動時において、温度センサ7が検知した温度が所定値より低い場合はファン52を停止する。これにより、水温を速く目標温度まで到達させることができる。さらに、制御装置8は、水温が安定した状態でヒータ6の運転率が所定値以上のときにはファン52を停止する。これにより、定常時の消費電力を低減することができる。
【0066】
本実施形態において、第2の実施形態と同様に、ヒータ6の運転率又はヒータ6の入力に応じてファン52の運転(冷却)及び停止を制御するようにしてもよい。この場合、制御装置8は、ヒータ6の運転率又は印加電圧が所定値より低い場合に、ファン52を運転し、ヒータ6の運転率又は印加電圧が所定値以上の場合に、ファン52を停止する。
【0067】
<第7の実施形態のまとめ>
以上のように、本実施形態によれば、比較的構造が単純なラジエータを循環水の冷却に用いることにより、コストを低減することが可能である。
【0068】
[第8の実施形態]
<自動分析装置の反応槽近傍の構成例>
図24は、第8の実施形態の自動分析装置における反応槽1近傍の構成を示す模式図である。本実施形態の自動分析装置は、周囲の空気温度を検知する空気温度センサ15をさらに備える点で、第7の実施形態の構成と異なっている。他の構成については第7の実施形態と同様であるため説明を省略する。空気温度センサ15は、空気温度の検知信号を制御装置8に出力する。
【0069】
本実施形態では、制御装置8は、空気温度センサ15の検知した周囲の空気温度が所定値より低いときに、ファン52を停止し、周囲の空気温度が所定値以上のときに、ファン52を運転する。ファン52を停止するための上記の所定値は、例えば、循環水の目標温度よりも低い温度とすることができる。これにより、従来よりも速く水温を目標温度まで到達させることができ、迅速に自動分析装置を立ち上げることが可能である。
【0070】
[第9の実施形態]
<自動分析装置の反応槽近傍の構成例>
図25は、第9の実施形態の自動分析装置における反応槽1近傍の構成を示す模式図である。本実施形態の自動分析装置は、反応槽1とポンプ3との間に設けられ、循環水の温度を検知する温度センサ16をさらに備える点で、第7の実施形態の構成と異なっている。温度センサ16は、循環水の温度の検知信号を制御装置8に出力する。
【0071】
本実施形態においては、制御装置8は、起動時に温度センサ7が検知した温度が所定値より低い場合はファン52を停止する。これにより、速く水温を目標温度まで到達させることができる。さらに、制御装置8は、水温安定時に、温度センサ7と温度センサ16の温度の差が所定値以上のときにはファン52を停止する。これにより、定常時の消費電力を低減することが可能である。
【0072】
[変形例]
本開示は、上述した実施形態に限定されるものでなく、様々な変形例を含んでいる。例えば、上述した実施形態は、本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備える必要はない。また、ある実施形態の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることもできる。また、各実施形態の構成の一部について、他の実施形態の構成の一部を追加、削除又は置換することもできる。
【符号の説明】
【0073】
1…反応槽
2…反応容器
3…ポンプ
4…ペルチェ素子
5…ペルチェユニット
6…ヒータ
7…温度センサ
8…制御装置
9…液体ジャケット
10…光源
11…光度計
12…ディスク
13…チューブ
14…恒温水槽
15…空気温度センサ
16…温度センサ
51…フィン
52…ファン
53…パイプ
201、202、203…サーマルインタフェース
204…ヒートスプレッダ
205…ケース
206…フィンベース
211、212…チューブコネクタ
213…フィン
214…流路
301…シースヒータ
302…水路壁
303…断熱材
304…流路
305、306…チューブコネクタ
307…電源コード