(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131626
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】生体磁気計測装置、生体磁気計測処理装置および生体磁気計測装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/242 20210101AFI20230914BHJP
G01R 33/02 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A61B5/242
G01R33/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036497
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(71)【出願人】
【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 一磨
(72)【発明者】
【氏名】川端 茂▲徳▼
【テーマコード(参考)】
2G017
4C127
【Fターム(参考)】
2G017AA08
2G017AD32
2G017BA15
2G017BA18
4C127AA10
4C127HH16
(57)【要約】
【課題】生体磁気計測装置において、計測部位と磁気センサとの位置関係の取得時の被検者の負担を軽減する。
【解決手段】生体磁気計測装置は、複数の磁気センサを含む信号検出部と、前記信号検出部を含む領域の光学画像を取得する光学画像取得部と、前記複数の磁気センサの相互の位置関係を示す位置情報と、前記光学画像内での前記複数の磁気センサの位置の特定に使用する位置特定情報を保持する記録部と、前記信号検出部が取得した磁気データを処理し、前記記録部に保持された前記位置情報と前記位置特定情報とに基づいて、前記光学画像において前記複数の磁気センサの位置にセンサマークを重畳して重畳画像を生成する生体磁気計測処理装置と、前記重畳画像を表示する表示部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の磁気センサを含む信号検出部と、
前記信号検出部を含む領域の光学画像を取得する光学画像取得部と、
前記複数の磁気センサの相互の位置関係を示す位置情報と、前記光学画像内での前記複数の磁気センサの位置の特定に使用する位置特定情報を保持する記録部と、
前記信号検出部が取得した磁気データを処理し、前記記録部に保持された前記位置情報と前記位置特定情報とに基づいて、前記光学画像において前記複数の磁気センサの位置にセンサマークを重畳して重畳画像を生成する生体磁気計測処理装置と、
前記重畳画像を表示する表示部と、
を有することを特徴とする生体磁気計測装置。
【請求項2】
前記表示部は、前記光学画像取得部が取得する前記光学画像と前記重畳画像とを表示することを特徴とする請求項1に記載の生体磁気計測装置。
【請求項3】
外部からの指示を受け付ける操作部を有し、
前記生体磁気計測処理装置は、前記操作部で受け付けた指示に基づいて、前記光学画像取得部および前記信号検出部の動作を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記光学画像取得部からの光学画像データの転送中に前記操作部が受け付けた検出開始指示に基づいて、前記光学画像取得部に光学画像データの転送を停止させ、前記信号検出部に磁気の検出を開始させること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の生体磁気計測装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記信号検出部による磁気の検出の開始から所定時間の経過後、または、前記操作部が受け付けた検出停止指示に基づいて、前記信号検出部に磁気の検出を停止させ、前記光学画像取得部に光学画像データの転送を開始させること
を特徴とする請求項3に記載の生体磁気計測装置。
【請求項5】
前記光学画像取得部は、光学画像データを繰り返し取得し、
前記制御部は、前記操作部が受け付けた前記検出開始指示に基づいて、前記光学画像取得部から最後に転送される光学画像データを前記記録部に記録すること
を特徴とする請求項3または請求項4に記載の生体磁気計測装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記操作部が受け付けた前記検出開始指示に基づいて、前記信号検出部が検出した磁気データの前記記録部への記録を開始すること
を特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の生体磁気計測装置。
【請求項7】
複数の磁気センサを含む信号検出部が取得した磁気データを処理し、光学画像取得部が取得した前記信号検出部を含む領域の光学画像を処理する生体磁気計測処理装置であって、
記録部に保持された前記複数の磁気センサの相互の位置関係を示す位置情報と、前記光学画像内での前記複数の磁気センサの位置の特定に使用する位置特定情報とに基づいて、前記光学画像において前記複数の磁気センサの位置にセンサマークを重畳して重畳画像を生成し、
前記重畳画像を表示部に表示すること
を特徴とする生体磁気計測処理装置。
【請求項8】
複数の磁気センサを含む信号検出部と、前記信号検出部を含む領域の光学画像を取得する光学画像取得部と、前記複数の磁気センサの相互の位置関係を示す位置情報と、前記光学画像内での前記複数の磁気センサの位置の特定に使用する位置特定情報を保持する記録部と、前記信号検出部が取得した磁気データを処理する生体磁気計測処理装置と、表示部とを有する生体磁気計測装置の制御方法であって、
前記生体磁気計測処理装置が、
前記記録部に保持された前記位置情報と前記位置特定情報とに基づいて、前記光学画像において前記複数の磁気センサの位置にセンサマークを重畳して重畳画像を生成し、
前記重畳画像を前記表示部に表示すること
を特徴とする生体磁気計測装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体磁気計測装置、生体磁気計測処理装置および生体磁気計測装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体磁気計測装置において、計測部位と磁気センサとの位置関係を対応付けて表示する種々の方法が開示されており、計測された生体磁場より算出される神経活動または筋活動の分布と形態画像の重畳などに利用されている(例えば、非特許文献1参照)。また、磁場を発生するコイルを計測部位の周囲に取り付けることで、計測部位と磁気センサとの位置関係とが対応付けられる(例えば、特許文献1、2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、例えば、計測部位を撮影した画像と磁気センサとの位置関係が正確でない場合、算出された神経活動または筋活動の分布と実際の神経または筋の位置関係との関係を正確に対応させることができない。この場合、神経活動または筋活動を適切に評価できないおそれがある。また、例えば、磁場の計測領域にマーカコイルを配置し、磁気計測時にX線画像を取得することで、計測部位と磁気センサとの位置関係を把握することが可能である。しかしながら、X線画像の取得は、X線を計測部位に照射する必要があり、被検者に負担を掛けてしまう。また、計測部位の周囲にコイルを取り付ける場合も、被検者に負担を掛けてしまう。
【0004】
本発明は、生体磁気計測装置において、計測部位と磁気センサとの位置関係の取得時の被検者の負担を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一形態の生体磁気計測装置は、複数の磁気センサを含む信号検出部と、前記信号検出部を含む領域の光学画像を取得する光学画像取得部と、前記複数の磁気センサの相互の位置関係を示す位置情報と、前記光学画像内での前記複数の磁気センサの位置の特定に使用する位置特定情報を保持する記録部と、前記信号検出部が取得した磁気データを処理し、前記記録部に保持された前記位置情報と前記位置特定情報とに基づいて、前記光学画像において前記複数の磁気センサの位置にセンサマークを重畳して重畳画像を生成する生体磁気計測処理装置と、前記重畳画像を表示する表示部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、生体磁気計測装置において、計測部位と磁気センサとの位置関係の取得時の被検者の負担を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る生体磁気計測装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1の信号検出部に含まれる磁気センサアレイの一例を示す斜視図である。
【
図3】磁気センサの位置を示すセンサマークを光学画像に重畳する方法の一例を示す説明図である。
【
図4】
図1の表示部に表示される光学画像と重畳画像との一例を示す説明図である。
【
図5】第2の実施形態に係る生体磁気計測装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】
図5の生体磁気計測装置の動作の一例を示すタイミング図である。
【
図7】
図1および
図5のデータ処理装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施の形態を説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る生体磁気計測装置の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示す生体磁気計測装置100は、信号検出部110、光学画像取得部120、データ処理装置130および表示部140を有する。データ処理装置130は、演算部131、制御部132および記録部133を有する。データ処理装置130は、生体磁気計測処理装置の一例である。
【0010】
例えば、生体磁気計測装置100は、筋磁計(MMG:Magnetomyograph)、脊磁計(MSG:Magnetospinograph)、脳磁計(MEG:Magnetoencephalograph)または心磁計(MCG:Magnetocardiograph)等である。
【0011】
信号検出部110は、図示しない複数の磁気センサを含む磁気センサアレイを有する。磁気センサアレイについては、
図2以降で説明される。信号検出部110は、被検体の筋活動または神経活動により発生する磁場を検出し、検出した磁場を示す磁気データをデータ処理装置130に出力する。なお、生体磁気計測装置100は、被検体の体表(皮膚)に貼り付けられる電極を介して被検体の神経または筋を電気的に刺激する刺激装置を有してもよい。
【0012】
光学画像取得部120は、図示しない撮像部を信号検出部110に向けて、生体磁気計測装置100に固定される。これにより、光学画像取得部120は、信号検出部110が含まれる同じ被写体領域の同じ画角の光学画像を繰り返し取得可能である。すなわち、光学画像取得部120が取得する光学画像に含まれる信号検出部110の画像の画素位置は、常に同じになる。
【0013】
光学画像取得部120は、信号検出部110上に置かれた被検体の計測部位を信号検出部110とともに撮影することで光学画像を取得する。例えば、光学画像取得部120は、所定のフレームレートで光学画像を取得し、取得した光学画像を示す光学画像データ(フレームデータ)をリアルタイムでデータ処理装置130に順次転送する。
【0014】
データ処理装置130は、例えば、サーバ等のコンピュータ装置であり、内蔵するCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサにより制御プログラムを実行することで生体磁気計測装置100の全体の動作を制御する。例えば、演算部131および制御部132は、CPUが実行する制御プログラムにより実現される。なお、演算部131および制御部132は、FPGA等のハードウェアにより実現されてもよく、ハードウェアとソフトウェアとが協働することにより実現されてもよい。
【0015】
演算部131は、信号検出部110により検出された生体磁場を示す磁気データを処理し、所定の間隔を置いてマトリックス状に配置される複数の算出点または指定された位置での電流成分を再構成する。例えば、演算部131は、再構成した電流成分を使用して、計測部位である神経軸索上または筋線維上での電流成分を計算する。再構成した電流成分および計測部位での電流成分は、計測部位の光学画像内に重ねて、表示部140に表示されてもよい。
【0016】
また、演算部131は、
図3で説明するように、光学画像取得部120が取得した光学画像と、記録部133に保持された磁気センサ等の位置情報とに基づいて、光学画像内の複数の磁気センサの位置にセンサマークを重畳した重畳画像を生成する。生成された重畳画像は、表示部140に表示される。
【0017】
制御部132は、信号検出部110を制御し、磁場の検出動作を開始させ、または磁場の検出動作を停止させる。制御部132は、光学画像取得部120を制御し、または光学画像の取得を開始させ、光学画像の取得を停止させる。また、制御部132は、表示部140を制御し、光学画像、重畳画像、神経活動または筋活動の分布図等を表示部140に表示させる。また、制御部132は、神経活動または筋活動を示す電流波形等を表示部140に表示させる。さらに、制御部は、記録部133を制御し、記録部133に磁気データ、光学画像または重畳画像等を記録し、記録部133から演算部131で使用する各種パラメータ等を取得する。
【0018】
記録部133は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)またはSRAM(Static Random Access Memory)等の半導体メモリ、HDD(Hard Disk Drive)およびSSD(Solid State Drive)等の少なくともいずれかを含む。
【0019】
表示部140は、例えば、液晶ディスプレイ等の表示画面を有する。表示部140は、制御部132による制御に基づいて、光学画像取得部120で取得された光学画像、演算部131により生成された重畳画像、または、演算部131により計算された複数の算出点、神経軸索上または筋線維上での電流成分等を表示する。
【0020】
図2は、
図1の信号検出部110に含まれる磁気センサアレイの一例を示す斜視図である。
図2に示す磁気センサアレイSARYは、低温容器200から突出する突出部210内の先端側に配置される。例えば、低温容器200は、磁気を遮蔽する磁気シールドルーム内に設置される。
【0021】
磁気センサアレイSARYは、例えば、上面視で千鳥状に配置され、先端が上に向く複数の棒状の磁気センサMSを有する。なお、磁気センサアレイSARYに含まれる磁気センサMSの数および配列は、
図2に示す例に限定されない。例えば、磁気センサMSは、SQUID(Superconducting QUantum Interference Device)センサである。
【0022】
各磁気センサMSは、
図1の制御部132からの指示に基づいて被検体が発生する磁場を計測し、計測した磁場を電圧信号(磁場を示す磁場信号)としてデータ処理装置130に出力する。特に限定されないが、各磁気センサMSは、例えば、X軸、Y軸、Z軸を有する3軸のセンサであり、磁場信号を3次元のベクトル量として計測可能である。なお、各磁気センサMSは、磁場信号を2次元のベクトル量として計測可能な2軸(例えば、X軸、Y軸)を有する2軸センサでもよく、1軸(例えば、Z軸)のみを有する1軸センサでもよい。
【0023】
図3は、磁気センサMSの位置を示すセンサマークを光学画像に重畳する方法の一例を示す説明図である。まず、重畳画像が生成される前に、突出部210において、磁気センサアレイSARYの各磁気センサMSの先端に対向する位置にマーカMKが配置される。
【0024】
例えば、マーカMKは、矩形形状を有しており、マーカMKの大きさは、幅200mm、高さ150mmである。マーカMKの大きさは、マーカサイズ情報として記録部133に予め保持されている。また、マーカMKの所定の位置には、電流を流すことにより磁場を発生するコイルが取り付けられている。例えば、マーカMKの相対座標は、マーカMKの左下の角が(0,0)であるとし、マーカMKの右上が(200,150)であるとする。演算部131は、マーカMKのコイルから発生する磁場を検出した磁気データに基づいて、光学画像IMG内のマーカMKの位置情報を取得可能である。
【0025】
図3に示す例では、説明の簡単化のため、光学画像IMGは、マーカMKの矩形平面に沿う面において、横960mm、縦600mmの領域の画像を含むとする。また、光学画像IMGの左下の座標は、(0,0)に設定され、光学画像IMGの右上の座標は、(960,600)に設定される。そして、演算部131は、光学画像IMG内のマーカMKの左下の座標(開始点X,開始点Y)を、例えば、(500,100)と算出する。演算部131は、算出したマーカMKの左下の座標(500,100)をマーカMKのサイズを示す幅200、高さ150とともに光学画像IMG中のマーカ座標情報として記録部133に記録する。
【0026】
例えば、各磁気センサMSは、
図3に示すセンサアレイSARYの左下に位置する磁気センサMS00のXY座標を(0,0)として、相対座標(X,Y)が割り当てられている。各磁気センサMSの相対座標(X,Y)は、センサ位置情報として記録部133に予め保持されている。センサ位置情報は、複数の磁気センサMSの相互の位置関係を示す位置情報の一例である。
【0027】
例えば、磁気センサMSは、識別情報MXxy(MX00、MX01、...、MS90、MS91、...、MS100、MS101、...、MS103)が割り当てられている。識別情報MSxyの符号xは、センサアレイSARYのX方向に並ぶ磁気センサMSの行番号を示し、識別情報MSxyの符号yは、X方向に並ぶ磁気センサMSの各行の左からの並び順を示す。
【0028】
演算部131は、光学画像取得部120が取得したマーカMKの画像を含む光学画像IMGと、信号検出部110が検出したマーカMKのコイルから発生する磁場の磁気データとに基づいて、マーカMKに対するセンサアレイSARYの相対位置を検出する。例えば、演算部131は、マーカMKの左下の角(相対座標=(0,0))の位置に対する磁気センサMS00の相対位置をセンサ相対位置情報として記録部133に記録する。
図3に示す例では、センサ相対位置情報は、(X,Y)=(37,10)である。
【0029】
そして、演算部131は、マーカ座標情報とセンサ相対位置情報とに基づいて、光学画像IMG中の各磁気センサMSの座標を算出する。マーカ座標情報およびセンサ相対位置情報は、光学画像IMG内での複数の磁気センサMSの位置の特定に使用する位置特定情報の一例である。なお、マーカ座標情報およびセンサ相対位置情報は、テキストデータとして記録部133に記録されてもよい。
【0030】
図3の右下のかぎ括弧内の説明図に例示するように、演算部131は、マーカMKの左下の座標(開始点X,開始点Y)=(500,100)に磁気センサMS00のセンサ相対位置情報(X,Y)=(37,10)を加算する。そして、演算部131は、加算結果である(537,110)を磁気センサMS00の光学画像IMG内での座標に設定する。また、演算部131は、磁気センサMS00の座標に、他の磁気センサMSのセンサ位置情報を加算して、他の磁気センサMSの光学画像IMG内での座標を算出する。演算部131は、算出した各磁気センサMSの光学画像IMG内での座標を記録部133に記録してもよい。
【0031】
演算部131は、各磁気センサMSの光学画像IMG内での座標に基づいて、光学画像IMG内の複数の磁気センサMSの位置にセンサマークを重畳して重畳画像OIMG(
図4)を生成する。例えば、光学画像IMG内での各磁気センサMSの位置を示すセンサマークは、丸印であるが、他の形状の図形でもよい。演算部131が生成した重畳画像OIMGを示す画像データは、制御部132を介して表示部140に転送され、表示部140に表示される。
【0032】
図4は、
図1の表示部140に表示される光学画像IMG1と重畳画像OIMGとの一例を示す説明図である。
図4に示す例では、表示部140の表示画面の左側に光学画像IMG1が表示され、表示画面の右側に重畳画像OIMGが表示される。すなわち、光学画像IMG1と重畳画像OIMGとは、表示部140の表示画面に並べて表示される。
図4に示す例では、光学画像IMG1および重畳画像OIMGには、被検体の計測部位である右手の画像も含まれる。
【0033】
光学画像IMG1の画角および被写体の撮影位置は、それぞれ
図3に示した画像IMGの画角および被写体の撮影位置と同じである。重畳画像OIMGは、磁気センサアレイ140の全ての磁気センサMSを含む領域を光学画像IMG1から切り出した画像と、演算部131が
図3で説明した方法で算出した各磁気センサMSの位置を示すセンサマークSMの画像とを含む。
【0034】
重畳画像OIMGは、被検体の計測部位をX線撮影したX線画像を使用しないため、X線の照射およびX線照射時に計測部位の位置を動かないよう止めておくなどの被検者の負担を軽減することができる。また、被検者にマーカコイルを直接取り付けるなどの負担も発生しない。
【0035】
図4に示す重畳画像OIMGにより、被検体の計測部位と各磁気センサMSとの位置関係を正確に把握することができる。これにより、演算部131は、重畳画像OIMG内の計測部位に含まれる筋の推定位置の指定に基づいて、指定された位置での電流成分を再構成することができ、分布図として表示部140に表示させることができる。なお、重畳画像OIMG内の計測部位に含まれる筋の推定位置の指定は、例えば、
図5に示す操作部150を介して生体磁気計測装置100の操作者から受け付けられてもよい。
【0036】
さらに、演算部131は、再構成した筋の経路上の複数箇所での電流成分の時間変化を示す電流波形を生成し、生成した電流波形を制御部132を介して表示部140に表示することができる。また、筋活動の分布図と被検体の計測部位との重ね合わせも容易に実施することが可能になる。
【0037】
なお、例えば、光学画像IMGに含まれる計測部位が腰部または頚部の場合、演算部131は、神経経路の推定位置の指定に基づいて、指定された位置での電流成分を再構成することができ、分布図として表示部140に表示させることができる。さらに、演算部131は、再構成した神経経路上の複数箇所での電流波形を生成して表示部140に表示することができる。また、光学画像IMGに含まれる計測部位が頭部または胸部の場合にも、演算部131は、脳または心臓の推定位置の指定に基づいて、指定された位置での電流成分を再構成することができ、分布図または電流波形として表示部140に表示させることができる。
【0038】
以上、この実施形態では、被検体の計測部位の光学画像を撮影することで、計測部位と磁気センサMSとの位置関係を正確に取得することができる。したがって、計測部位をX線撮影する場合、または、計測部位にコイルを直接取り付ける場合に比べて、計測部位と磁気センサとの位置関係の取得時の被検者の負担を軽減することができる。
【0039】
演算部131は、制御部132を介して、被検体の計測部位とセンサアレイSARYの領域とを含む光学画像IMG1と重畳画像OIMGとを表示部140に表示する。これにより、医師等の評価者は、計測部位の周囲およびセンサアレイSARYの周囲を状態を把握しつつ、神経機能または筋機能を適切に評価することが可能になる。
【0040】
(第2の実施形態)
図5は、第2の実施形態における生体磁気計測装置の構成の一例を示すブロック図である。
図1と同様の要素については、同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。この実施形態の生体磁気計測装置101は、
図1の生体磁気計測装置100に操作部150を追加していることを除き、
図1の生体磁気計測装置100と同様の構成および機能を有する。
【0041】
操作部150は、生体磁気計測装置101の外部からの指示を受け付け、受け付けた指示を制御部132に通知する。例えば、操作部150は、図示しないキーボードおよびマウス等の入力インタフェースに接続される。操作部150は、例えば、信号検出部110による磁場の検出を開始する開始指示を受け付ける。
【0042】
なお、操作部150は、表示部140に表示される入力ウィンドウの操作を受け付けてもよい。例えば、入力ウィンドウには、開始ボタン、磁場の検出の継続時間を入力する入力部、または磁場の検出を停止させる停止ボタン等が設けられてもよい。
【0043】
操作部150は、信号検出部110による磁場の検出を停止する停止指示を受け付けてもよい。なお、操作部150は、重畳画像OIMG(
図3)内の計測部位に含まれる筋または神経経路の推定位置の指定の受け付けなど、筋機能または神経機能を評価するための各種指示を受け付けてもよい。制御部132は、操作部150からの通知に基づいて、信号検出部110および光学画像取得部120の動作を制御する。
【0044】
図6は、
図5の生体磁気計測装置101の動作の一例を示すタイミング図である。
図6に示す動作は、生体磁気計測装置101のデータ処理装置130が光学画像取得部120および信号検出部110の動作を制御する制御プログラムを実行することで実現される。すなわち、
図6は、データ処理装置130の制御方法の一例である。
【0045】
データ処理装置130の制御部132は、信号検出部110による磁場の検出開始の指示を操作部150が受け付けたことに基づいて、例えば、パルス状のトリガ信号TRG1を生成する。トリガ信号TRG1は、光学画像データの転送を停止する転送停止指示として光学画像取得部120に出力され、磁場の検出を開始する検出開始指示として信号検出部110に出力される。
【0046】
光学画像取得部120は、転送停止指示に基づいて、データ処理装置130に転送中の光学画像データの転送を時刻T1に停止する。光学画像取得部120は、光学画像データの転送を停止する場合、光学画像の取得(すなわち、撮影)を停止する。
【0047】
なお、光学画像取得部120が時刻T1より前に光学画像を繰り返し取得している期間、制御部132は、光学画像取得部120から転送された光学画像データをフレームデータとして表示部140に順次出力する。これにより、表示部140には、フレームレート毎に更新される光学画像(すなわち、動画)が表示される。
【0048】
また、制御部132は、転送停止指示による光学画像データの転送が停止される前(すなわち、磁場の検出の開始時)の最後のフレームに対応して光学画像取得部120から転送される最後の光学画像データを記録部133に記録してもよい。これにより、信号検出部110が磁場の検出を開始するときの光学画像を、例えば、磁場の検出動作の完了後に表示部140に表示することが可能になる。
【0049】
したがって、神経機能または筋機能を評価する評価者は、例えば、磁場の検出動作の完了後、磁場の検出を開始するときの様子を確認することができる。この結果、評価者は、演算部131が算出した電流成分に基づいて生成された電流波形が、筋活動を正しく示しているかどうかを判断することが可能になる。
【0050】
信号検出部110は、検出開始指示に基づいて、時刻T1に磁場の検出を開始する。なお、信号検出部110による磁場の検出は、光学画像取得部120による光学画像データの転送の停止と同時でなく、光学画像データの転送の停止から所定時間経過後に開始されてもよい。この場合、制御部132は、光学画像取得部120にトリガ信号TRG1を出力した後、信号検出部110に別のトリガ信号TRG1を出力してもよい。
【0051】
なお、制御部132は、信号検出部110から転送される磁気データを記録部133に記録してもよい。これにより、信号検出部110による磁場の検出後に、記録部133に保持された磁気データを表示部140に表示することができ、評価者は、表示部140に表示される磁気データを解析することが可能になる。
【0052】
また、記録部133に保持された磁気データを使用して演算部131により電流成分を再構成することができるため、信号検出部110による磁場の検出後に、電流成分または電流成分の時間変化を示す電流波形を表示部140に表示することができる。この結果、信号検出部110による磁場の検出後に、評価者は、表示部140に表示される電流成分または電流波形を解析することが可能になる。
【0053】
制御部132は、トリガ信号TRG1の生成から時間Tの経過後、パルス状のトリガ信号TRG2を生成する。トリガ信号TRG2は、パルス状の波形を有しており、光学画像データの転送を開始する転送開始指示として光学画像取得部120に出力され、磁場の検出を停止する検出停止指示として信号検出部110に出力される。
【0054】
信号検出部110は、検出停止指示に基づいて、時刻T2に磁場の検出を停止する。光学画像取得部120は、転送開始指示に基づいて、時刻T2にデータ処理装置130への光学画像データの転送を開始する。光学画像取得部120は、光学画像データの転送を開始する場合、光学画像の取得(すなわち、撮影)を開始する。
【0055】
なお、光学画像取得部120による光学画像データの転送の開始は、信号検出部110による磁場の検出の停止と同時でなく、信号検出部110による磁場の検出の停止から所定時間経過後に開始されてもよい。この場合、制御部132は、信号検出部110にトリガ信号TRG2を出力した後、光学画像取得部120に別のトリガ信号TRG2を出力してもよい。
【0056】
図6に示すように、信号検出部110による磁場の検出中に光学画像取得部120からの光学画像のデータ処理装置130への転送を停止することで、磁気データの転送に伴って発生する電磁波に起因するノイズが磁気データに混入することを抑制することができる。
【0057】
以上、この実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。例えば、被検体の計測部位の光学画像に基づいて、計測部位と磁気センサMSとの位置関係を正確に取得することができ、計測部位と磁気センサとの位置関係の取得時の被検者の負担を軽減することができる。
【0058】
さらに、この実施形態では、信号検出部110による磁場の検出中に光学画像取得部120からの光学画像のデータ処理装置130への転送を停止する。これにより、磁気データの転送に伴って発生する電磁波に起因するノイズが磁気データに混入することを抑制することができる。
【0059】
信号検出部110による磁場の検出の開始時の光学画像を記録部133に記録することで、評価者は、例えば、磁場の検出動作の完了後、磁場の検出を開始するときの様子を確認することができる。この結果、評価者は、演算部131が算出した電流成分に基づいて生成された電流波形が、筋活動を正しく示しているかどうかを判断することが可能になる。
【0060】
また、信号検出部110から転送される磁気データを記録部133に記録することで、信号検出部110による磁場の検出後に、磁気データを表示部140に表示することができる。また、磁気データを使用して再構成された電流成分または電流成分の時間変化を示す電流波形を表示部140に表示することができる。これにより、評価者は、表示部140に表示される磁気データを解析することができ、表示部140に表示される電流成分または電流波形を解析することができる。
【0061】
さらに、信号検出部110から転送される磁気データを記録部133に記録することで、信号検出部110による磁場の検出後に、記録部133に保持された磁気データを表示部140に表示することができる。また、記録部133に保持された磁気データを使用して演算部131により電流成分を再構成し、電流成分または電流成分の時間変化を示す電流波形を表示部140に表示することができる。これにより、評価者は、表示部140に表示される磁気データを解析することができる。また、記録部133に保持された磁気データを使用して演算部131により電流成分を再構成することができる。この結果、信号検出部110による磁場の検出後に、電流成分または電流成分の時間変化を示す電流波形を表示部140に表示することができる。
【0062】
図7は、
図1および
図5のデータ処理装置130のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。データ処理装置130は、CPU11とROM12とRAM13と外部記憶装置14とを有する。また、データ処理装置130は、入力インタフェース部15と出力インタフェース部16と入出力インタフェース部17と通信インタフェース部18とを有する。例えば、CPU11とROM12とRAM13と外部記憶装置14と入力インタフェース部15と出力インタフェース部16と入出力インタフェース部17と通信インタフェース部18とは、バスBUSを介して相互に接続される。
【0063】
CPU11は、OS(Operating System)およびアプリケーション等の各種プログラムを実行し、データ処理装置130の全体の動作を制御する。また、CPU11は、制御プログラムを実行することにより生体磁気計測処理装置として機能するデータ処理装置130の制御方法を実施する。CPU11は、制御プログラムを実行するコンピュータの一例である。
【0064】
ROM12は、CPU11により実行される制御プログラムを含む各種プログラムおよび各種パラメータ等を保持する。RAM13は、CPU11により実行される各種プログラムや、プログラムで使用するデータ等を記憶する。外部記憶装置14は、HDDまたはSSD等であり、RAM13に展開される各種プログラムを記憶する。
【0065】
入力インタフェース部15には、データ処理装置130を操作する操作者等からの入力を受け付ける入力装置20が接続される。例えば、入力装置20は、マウス、キーボードまたはタブレット等である。出力インタフェース部16には、データ処理装置130が生成する各種画像、テキストまたは図形等を出力する出力装置30が接続される。例えば、出力装置30は、CPU11が実行する各種プログラムにより生成される画像等を表示する表示部140(
図1)またはプリンタ等である。
【0066】
入出力インタフェース部17には、USB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録媒体40が接続される。例えば、記録媒体40には、CPU11が実行する制御プログラム等の各種プログラムが格納されてもよい。この場合、各種プログラムは、入出力インタフェース部17を介して記録媒体40から外部記憶装置14に転送され、RAM13に展開される。なお、記録媒体40は、CD-ROMやDVD(Digital Versatile Disc:登録商標)等でもよく、この場合、入出力インタフェース部17は、接続する記録媒体40に対応するインタフェースを有する。通信インタフェース部18は、データ処理装置130をネットワーク等に接続する。
【0067】
以上、各実施形態に基づき本発明の説明を行ってきたが、上記実施形態に示した要件に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の主旨をそこなわない範囲で変更することができ、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0068】
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 外部記憶装置
15 入力インタフェース部
16 出力インタフェース部
17 入出力インタフェース部
18 通信インタフェース部
20 入力装置
30 出力装置
40 記録媒体
100、101 生体磁気計測装置
110 信号検出部
120 光学画像取得部
130 データ処理装置
131 演算部
132 制御部
133 記録部
140 表示部
200 低温容器
210 突出部
IMG 光学画像
MS 磁気センサ
OIMG 重畳画像
SARY センサアレイ
TRG1、TRG2 トリガ信号
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特開平2-095337号公報
【特許文献2】特開2020-054788号公報
【非特許文献】
【0070】
【非特許文献1】"Magnetospinography visualizes electrophysiological activity in the cervical spinal cord" Scientific Reports 7, Article number: 2192 (2017)
【非特許文献2】Sasaki, Toru, et al. "Visualization of electrophysiological activity at the carpal tunnel area using magnetoneurography." Clinical Neurophysiology 131.4 (2020): 951-957.