(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131700
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】治具、積層型固体撮像素子の製造方法、および接合型固体撮像素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20230914BHJP
H01J 29/45 20060101ALI20230914BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
H01L23/02 Z
H01J29/45 A
H01L27/146 E
H01L27/146 D
H01L27/146 F
H01L23/02 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036598
(22)【出願日】2022-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100213333
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿山 昌代
(72)【発明者】
【氏名】宮川 和典
(72)【発明者】
【氏名】峰尾 圭忠
(72)【発明者】
【氏名】為村 成亨
(72)【発明者】
【氏名】難波 正和
(72)【発明者】
【氏名】相原 聡
(72)【発明者】
【氏名】新井 俊希
(72)【発明者】
【氏名】渡部 俊久
【テーマコード(参考)】
4M118
【Fターム(参考)】
4M118AA05
4M118AA06
4M118AB01
4M118BA07
4M118BA14
4M118BA19
4M118CA14
4M118CB05
4M118HA02
4M118HA14
4M118HA22
4M118HA26
4M118HA30
4M118HA33
(57)【要約】
【課題】良質な光電変換膜を備える固体撮像素子を製造する際に使用される治具を提供する。
【解決手段】固体撮像素子を製造する際に使用される治具100は、第1開口部111Hを有し、パッケージ1、およびパッケージ1にアッセンブルされた信号読み出し回路基板2を覆う第1部材111と、信号読み出し回路基板2上に設けられる光電変換膜4の成膜領域に応じた第2開口部112Hを有し、成膜領域を囲むように、第1開口部111Hに嵌まる第2部材112と、を備える。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体撮像素子を製造する際に使用される治具であって、
第1開口部を有し、パッケージ、および前記パッケージにアッセンブルされた信号読み出し回路基板を覆う第1部材と、
前記信号読み出し回路基板上に設けられる光電変換膜の成膜領域に応じた第2開口部を有し、前記成膜領域を囲むように、前記第1開口部に嵌まる第2部材と、
を備える治具。
【請求項2】
前記第1部材は、
X軸方向における前記パッケージの側面に対する厚さを除いた長さが、X軸方向における前記パッケージの長さより長く、
Y軸方向における前記パッケージの側面に対する厚さを除いた長さが、Y軸方向における前記パッケージの長さより長い、
請求項1に記載の治具。
【請求項3】
前記第1部材は、
X軸方向における前記第1開口部を除いた長さX1またはX2が、X軸方向における前記パッケージの側面に対する厚さA1またはA4、X軸方向における前記信号読み出し回路基板のボンディングパッド部と前記第2部材の外周側面との距離A2またはA5、およびX軸方向における前記ボンディングパッド部と前記パッケージの側面との距離A3またはA6を用いて、次式(1)を満たすように設計され、
X1=A1+A2+A3、または、X2=A4+A5+A6 (1)
Y軸方向における前記第1開口部を除いた長さY1またはY2が、Y軸方向における前記パッケージの側面に対する厚さB1またはB4、Y軸方向における前記信号読み出し回路基板のボンディングパッド部と前記第2部材の外周側面との距離B2またはB5、およびY軸方向における前記ボンディングパッド部と前記パッケージの側面との距離B3またはB6を用いて、次式(2)を満たすように設計される、
Y1=B1+B2+B3、または、Y2=B4+B5+B6 (2)
請求項1または2に記載の治具。
【請求項4】
前記第2部材は、
X軸方向における前記第2部材の長さX112が、前記A1および前記A4を除いた前記第1部材111の長さX100B、前記A2、前記A3、前記A5、前記A6、前記第1部材の付加係数KX、パッケージの長さX100A、および前記第2部材の外周の付加係数LXを用いて、次式(3)を満たすように設計され、
X112=X100A+KX-(A2+A3+A5+A6)-LX
=(X100B-KX)+KX-(A2+A3+A5+A6)-LX (3)
Y軸方向における前記第2部材の長さY112が、前記B1および前記B4を除いた前記第1部材111の長さY100B、前記B2、前記B3、前記B5、前記B6、前記第1部材の付加係数KY、パッケージの長さY100A、および前記第2部材の外周の付加係数LYを用いて、次式(4)を満たすように設計される、
Y112=Y100A+KY-(B2+B3+B5+B6)-LY
=(Y100B-KY)+KY-(B2+B3+B5+B6)-LY (4)
請求項3に記載の治具。
【請求項5】
前記第2部材は、
X軸方向における前記第2開口部の長さが、X軸方向における前記光電変換膜の成膜領域の長さより長く、
Y軸方向における前記第2開口部の長さが、Y軸方向における前記光電変換膜の成膜領域の長さより長い、
請求項1から4のいずれか一項に記載の治具。
【請求項6】
前記第1部材は、前記信号読み出し回路基板のボンディングパッド部および前記パッケージの電極部に接続されるボンディングワイヤと重畳するように、前記パッケージおよび前記信号読み出し回路基板を覆う、
請求項1から5のいずれか一項に記載の治具。
【請求項7】
固体撮像素子を製造する際に使用される治具であって、
第1開口部を有し、パッケージ、および前記パッケージにアッセンブルされた信号読み出し回路基板を覆う第1部材と、
前記信号読み出し回路基板上に設けられる光電変換膜の第1成膜領域に応じた第2開口部を有し、前記第1成膜領域を囲むように、前記第1開口部に嵌まる第2部材、または、前記信号読み出し回路基板上に設けられる透明導電膜の第2成膜領域に応じた第3開口部を有し、前記第2成膜領域を囲むように、前記第1開口部に嵌まる第2部材と、
を備える治具。
【請求項8】
パッケージに、信号読み出し回路基板をアッセンブルする工程と、
第1開口部を有する第1部材で、前記パッケージおよび前記信号読み出し回路基板を覆う工程と、
前記信号読み出し回路基板上に形成される光電変換膜の成膜領域に応じた第2開口部を有する第2部材を、前記成膜領域を囲むように、前記第1開口部に嵌める工程と、
前記信号読み出し回路基板上に、光電変換膜を形成する工程と、
前記光電変換膜上に、透明導電膜を形成する工程と、
前記第1部材および前記第2部材を取り外す工程と、
を含む、積層型固体撮像素子の製造方法。
【請求項9】
パッケージに、信号読み出し回路基板をアッセンブルする工程と、
第1開口部を有する第1部材で、前記パッケージおよび前記信号読み出し回路基板を、覆う工程と、
前記信号読み出し回路基板上に形成される光電変換膜の成膜領域に応じた第2開口部を有する第2部材を、前記成膜領域を囲むように、前記第1開口部に嵌める工程と、
前記信号読み出し回路基板上に、第1アモルファスセレン膜を形成する工程と、
前記第1部材および前記第2部材を取り外す工程と、
透光性基板上に、透明導電膜を形成する工程と、
前記透明導電膜上に、第2アモルファスセレン膜を形成する工程と、
加圧および加熱により、前記第1アモルファスセレン膜と前記第2アモルファスセレン膜とを接合し、光電変換膜を形成する工程と、
を含む、接合型固体撮像素子の製造方法。
【請求項10】
パッケージに、信号読み出し回路基板をアッセンブルする工程と、
第1開口部を有する第1部材で、前記パッケージおよび前記信号読み出し回路基板を覆う工程と、
前記信号読み出し回路基板上に形成される光電変換膜の第1成膜領域に応じた第2開口部を有する第2部材を、前記第1成膜領域を囲むように、前記第1開口部に嵌める工程と、
前記信号読み出し回路基板上に、光電変換膜を形成する工程と、
前記第2部材を取り外す工程と、
前記信号読み出し回路基板上に形成される透明導電膜の第2成膜領域に応じた第3開口部を有する第2部材を、前記第2成膜領域を囲むように、前記第1開口部に嵌める工程と、
前記光電変換膜上に、透明導電膜を形成する工程と、
前記第1部材および前記第2部材を取り外す工程と、
を含む、積層型固体撮像素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、治具、積層型固体撮像素子の製造方法、および接合型固体撮像素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高精細テレビ方式である4K、8K用の固体撮像素子を、専用のパッケージにアッセンブルする際、信号読み出し回路基板を接着剤でパッケージに接着する工程(ダイアタッチ工程)、および信号読み出し回路基板のボンディングパッド部とパッケージの電極部とを微細な導電性の配線で接続する工程(ワイヤボンディング工程)が行われる。信号読み出し回路基板とパッケージとの接着力、および配線の付着力を強化するために、ダイアタッチ工程では、約100度の加熱が、ワイヤボンディング工程では、約150度の加熱が必要とされる。
【0003】
例えば、非特許文献1および特許文献1には、信号読み出し回路基板上に、アバランシェ増倍現象を生じる結晶セレンを主材料とした光電変換膜を設けることで、高感度化を実現した積層型固体撮像素子が開示されている。
【0004】
例えば、非特許文献2には、信号読み出し回路基板上に第1非晶質セレン膜を形成する工程と、単結晶サファイア基板上に透明導電膜および第2非晶質セレン膜を形成する工程と、加圧および加熱により、第1非晶質セレン膜と第2非晶質セレン膜とを接合し、光電変換膜として結晶セレン膜を形成した後、パッケージにアッセンブルする工程と、を含む接合型固体撮像素子の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【0006】
【非特許文献1】S. Imura et al., “Low-voltage-operation avalanche photodiode based on n-gallium oxide/p-crystalline selenium heterojunction”, Applied Physics Letters, Vol. 104, No. 24, pp. 242101-242101-4, 2014
【非特許文献2】宮川ほか、NHK技研、「固体撮像デバイスの高感度化に向けた、接合構造による結晶セレン光電変換膜の高増倍率化」、映像情報メディア学会冬季大会2020年予稿集、32E-1、2020
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来における固体撮像素子の製造方法では、信号読み出し回路基板上に光電変換膜などを形成した後、パッケージにアッセンブルしていたため、光電変換膜が高温下に一定時間曝されてしまうという問題があった。特に、光電変換膜が耐熱性の低い(約40度~約60度)材料で形成される場合、光電変換膜が信号読み出し回路基板から剥離する、光電変換膜の特性が劣化するなどの不具合が顕著になり、良質な光電変換膜を備える固体撮像素子を得難かった(
図11参照)。
【0008】
かかる事情に鑑みてなされた本発明の目的は、良質な光電変換膜を備える固体撮像素子を製造する際に使用される治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施形態に係る治具は、固体撮像素子を製造する際に使用される治具であって、第1開口部を有し、パッケージ、および前記パッケージにアッセンブルされた信号読み出し回路基板を覆う第1部材と、前記信号読み出し回路基板上に設けられる光電変換膜の成膜領域に応じた第2開口部を有し、前記成膜領域を囲むように、前記第1開口部に嵌まる第2部材と、を備えることを特徴とする。
【0010】
さらに、一実施形態に係る治具において、前記第1部材は、X軸方向における前記パッケージの側面に対する厚さを除いた長さが、X軸方向における前記パッケージの長さより長く、Y軸方向における前記パッケージの側面に対する厚さを除いた長さが、Y軸方向における前記パッケージの長さより長い、ことを特徴とする。
【0011】
さらに、一実施形態に係る治具において、前記第1部材は、X軸方向における前記第1開口部を除いた長さX1またはX2が、X軸方向における前記パッケージの側面に対する厚さA1またはA4、X軸方向における前記信号読み出し回路基板のボンディングパッド部と前記第2部材の外周側面との距離A2またはA5、およびX軸方向における前記ボンディングパッド部と前記パッケージの側面との距離A3またはA6を用いて、次式(1)を満たすように設計され、
X1=A1+A2+A3、または、X2=A4+A5+A6 (1)
Y軸方向における前記第1開口部を除いた長さY1またはY2が、Y軸方向における前記パッケージの側面に対する厚さB1またはB4、Y軸方向における前記信号読み出し回路基板のボンディングパッド部と前記第2部材の外周側面との距離B2またはB5、およびY軸方向における前記ボンディングパッド部と前記パッケージの側面との距離B3またはB6を用いて、次式(2)を満たすように設計される、
Y1=B1+B2+B3、または、Y2=B4+B5+B6 (2)
ことを特徴とする。
【0012】
さらに、一実施形態に係る治具において、前記第2部材は、
X軸方向における前記第2部材の長さX112が、前記A1および前記A4を除いた前記第1部材111の長さX100B、前記A2、前記A3、前記A5、前記A6、前記第1部材の付加係数KX、パッケージの長さX100A、および前記第2部材の外周の付加係数LXを用いて、次式(3)を満たすように設計され、
X112=X100A+KX-(A2+A3+A5+A6)-LX
=(X100B-KX)+KX-(A2+A3+A5+A6)-LX (3)
Y軸方向における前記第2部材の長さY112が、前記B1および前記B4を除いた前記第1部材111の長さY100B、前記B2、前記B3、前記B5、前記B6、前記第1部材の付加係数KY、パッケージの長さY100A、および前記第2部材の外周の付加係数LYを用いて、次式(4)を満たすように設計される、
Y112=Y100A+KY-(B2+B3+B5+B6)-LY
=(Y100B-KY)+KY-(B2+B3+B5+B6)-LY (4)
ことを特徴とする。
【0013】
さらに、一実施形態に係る治具において、前記第2部材は、X軸方向における前記第2開口部の長さが、X軸方向における前記光電変換膜の成膜領域の長さより長く、Y軸方向における前記第2開口部の長さが、Y軸方向における前記光電変換膜の成膜領域の長さより長い、ことを特徴とする。
【0014】
さらに、一実施形態に係る治具において、前記第1部材は、前記信号読み出し回路基板のボンディングパッド部および前記パッケージの電極部に接続されるボンディングワイヤと重畳するように、前記パッケージおよび前記信号読み出し回路基板を覆う、ことを特徴とする。
【0015】
一実施形態に係る治具は、固体撮像素子を製造する際に使用される治具であって、第1開口部を有し、パッケージ、および前記パッケージにアッセンブルされた信号読み出し回路基板を覆う第1部材と、前記信号読み出し回路基板上に設けられる光電変換膜の第1成膜領域に応じた第2開口部を有し、前記第1成膜領域を囲むように、前記第1開口部に嵌まる第2部材、または、前記信号読み出し回路基板上に設けられる透明導電膜の第2成膜領域に応じた第3開口部を有し、前記第2成膜領域を囲むように、前記第1開口部に嵌まる第2部材と、を備えることを特徴とする。
【0016】
一実施形態に係る積層型固体撮像素子の製造方法は、パッケージに、信号読み出し回路基板をアッセンブルする工程と、第1開口部を有する第1部材で、前記パッケージおよび前記信号読み出し回路基板を覆う工程と、前記信号読み出し回路基板上に形成される光電変換膜の成膜領域に応じた第2開口部を有する第2部材を、前記成膜領域を囲むように、前記第1開口部に嵌める工程と、前記信号読み出し回路基板上に、光電変換膜を形成する工程と、前記光電変換膜上に、透明導電膜を形成する工程と、前記第1部材および前記第2部材を取り外す工程と、を含むことを特徴とする。
【0017】
一実施形態に係る接合型固体撮像素子の製造方法は、パッケージに、信号読み出し回路基板をアッセンブルする工程と、第1開口部を有する第1部材で、前記パッケージおよび前記信号読み出し回路基板を、覆う工程と、前記信号読み出し回路基板上に形成される光電変換膜の成膜領域に応じた第2開口部を有する第2部材を、前記成膜領域を囲むように、前記第1開口部に嵌める工程と、前記信号読み出し回路基板上に、第1アモルファスセレン膜を形成する工程と、前記第1部材および前記第2部材を取り外す工程と、透光性基板上に、透明導電膜を形成する工程と、前記透明導電膜上に、第2アモルファスセレン膜を形成する工程と、加圧および加熱により、前記第1アモルファスセレン膜と前記第2アモルファスセレン膜とを接合し、光電変換膜を形成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0018】
一実施形態に係る積層型固体撮像素子の製造方法は、パッケージに、信号読み出し回路基板をアッセンブルする工程と、第1開口部を有する第1部材で、前記パッケージおよび前記信号読み出し回路基板を覆う工程と、前記信号読み出し回路基板上に形成される光電変換膜の第1成膜領域に応じた第2開口部を有する第2部材を、前記第1成膜領域を囲むように、前記第1開口部に嵌める工程と、前記信号読み出し回路基板上に、光電変換膜を形成する工程と、前記第2部材を取り外す工程と、前記信号読み出し回路基板上に形成される透明導電膜の第2成膜領域に応じた第3開口部を有する第2部材を、前記第2成膜領域を囲むように、前記第1開口部に嵌める工程と、前記光電変換膜上に、透明導電膜を形成する工程と、前記第1部材および前記第2部材を取り外す工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、良質な光電変換膜を備える固体撮像素子を製造する際に使用される治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】本発明の第1実施形態に係る積層型固体撮像素子の構成の一例を示す模式断面図である。
【
図1B】本発明の第1実施形態に係る接合型固体撮像素子の構成の一例を示す模式断面図である。
【
図2A】本発明の第1実施形態に係る治具の構成の一例を示す模式平面図および模式断面図である。
【
図2B】本発明の第1実施形態に係る治具の構成の一例を示す模式平面図および模式断面図である。
【
図2C】本発明の第1実施形態に係る治具の構成の一例を示す模式斜視図である。
【
図2D】本発明の第1実施形態に係る治具の構成の一例を示す模式斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係る積層型固体撮像素子の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4A】本発明の第1実施形態に係る積層型固体撮像素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図4B】本発明の第1実施形態に係る積層型固体撮像素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図4C】本発明の第1実施形態に係る積層型固体撮像素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図4D】本発明の第1実施形態に係る積層型固体撮像素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図4E】本発明の第1実施形態に係る積層型固体撮像素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図4F】本発明の第1実施形態に係る積層型固体撮像素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係る接合型固体撮像素子の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6A】本発明の第1実施形態に係る接合型固体撮像素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図6B】本発明の第1実施形態に係る接合型固体撮像素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図6C】本発明の第1実施形態に係る接合型固体撮像素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図6D】本発明の第1実施形態に係る接合型固体撮像素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図6E】本発明の第1実施形態に係る接合型固体撮像素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図6F】本発明の第1実施形態に係る接合型固体撮像素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係る接合型固体撮像素子の一例を示す図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る積層型固体撮像素子の構成の一例を示す模式断面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る積層型固体撮像素子の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【
図10A】本発明の第2実施形態に係る積層型固体撮像素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図10B】本発明の第2実施形態に係る積層型固体撮像素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図10C】本発明の第2実施形態に係る積層型固体撮像素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図10D】本発明の第2実施形態に係る積層型固体撮像素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図10E】本発明の第2実施形態に係る積層型固体撮像素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図10F】本発明の第2実施形態に係る積層型固体撮像素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図10G】本発明の第2実施形態に係る積層型固体撮像素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図10H】本発明の第2実施形態に係る積層型固体撮像素子の製造方法の一例を示す模式断面図である。
【
図11】従来に係る接合型固体撮像素子の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、同一の構成要素には原則として同一の参照番号を付して、重複する説明を省略する。各図において、説明の便宜上、各構成の縦横の比率を実際の比率から誇張して示している。なお、本明細書における「上」とは、図面に描かれた座標軸表示のZ軸におけるプラスの方向を意味するものとする。
【0022】
<第1実施形態>
図1A乃至
図2Dを参照して、第1実施形態に係る治具100の構成の一例について説明する。治具100は、例えば、
図1Aに示される積層型固体撮像素子10Aを製造する際に使用される治具である。あるいは、治具100は、例えば、
図1Bに示される接合型固体撮像素子10Bを製造する際に使用される治具である。
【0023】
〔積層型固体撮像素子〕
図1Aを参照して、第1実施形態に係る治具100を使用して製造される積層型固体撮像素子10Aの構成の一例について、簡単に説明する。
【0024】
積層型固体撮像素子10Aは、パッケージ1と、画素領域2Dを含む信号読み出し回路基板2と、ボンディングワイヤ3と、光電変換膜4と、透明導電膜5と、を備える。積層型固体撮像素子10Aは、電極6を介して電源7と接続されている。
【0025】
パッケージ1は、当該技術分野で適用される公知のパッケージであってよい。パッケージ1は、ボンディングワイヤ3を介して、信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部と電気的に接続される。パッケージ1は、例えば、X軸方向の長さが58.0mm、Y軸方向の長さが48.0mm、Z軸方向の厚さが6.75mmであってよい。
【0026】
信号読み出し回路基板2は、例えば、シリコン基板上にCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)構造が形成された基板である。信号読み出し回路基板2は、画素電極などが設けられる画素領域2Dを含む。画素電極は、各画素と対応して設けられる。画素電極は、例えば、金(Au)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)などの金属膜で形成される。画素電極間には、例えば、酸化シリコン(SiO2)などで形成される絶縁膜が設けられる。
【0027】
ボンディングワイヤ3は、一端が、信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部と電気的に接続され、他端が、パッケージ1の電極部と電気的に接続される。ボンディングワイヤ3は、例えば、金(Au)などの導電性材料で形成される。ボンディングワイヤ3は、例えば、1つのパッケージ1に940本、設けられてよい。
【0028】
光電変換膜4は、積層型固体撮像素子10Aにおける光電変換部であって、P型半導体として機能する。光電変換膜4は、例えば、結晶セレン膜、HARP(High-gain Avalanche Rushing amorphous Photoconductor)膜などであってよい。光電変換膜4は、膜厚が0.1μm以上、好ましくは0.3μm以上であれば、可視光全域で十分な感度を得られることから、積層型固体撮像素子10Aを実現できる。また、光電変換膜4は、膜厚が50μm以下、好ましくは15μm以下であれば、高感度で膜厚ムラなく形成されるため、生産性の観点で好ましい。
【0029】
透明導電膜5は、光の入射側であり、光電変換膜4を介して、画素電極と反対側に設けられる。透明導電膜5は、透光性を有する材料で形成されることが好ましい。透光性を有する材料としては、例えば、ITO(酸化インジウムスズ)、IZO(酸化亜鉛スズ)、AZO(アルミニウム添加酸化亜鉛)、SnO2(酸化スズ)、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)などが挙げられる。透明導電膜5は、膜厚が5nm以上30nm以下であることが好ましい。
【0030】
積層型固体撮像素子10Aは、
図1Aに示される構成に限定されるものではない。例えば、光電変換膜4と透明導電膜5との間に、酸化ガリウム膜、酸化ニッケル膜、酸化セリウム膜などが設けられていてもよい。また、信号読み出し回路基板2と光電変換膜4との間に、酸化ニッケル膜、三流化アンチモンなどが設けられてもよい。例えば、信号読み出し回路基板2と光電変換膜4との間、あるいは、光電変換膜4と透明導電膜5との間に、結晶核が設けられていてもよい。
【0031】
〔接合型固体撮像素子〕
図1Bを参照して、第1実施形態に係る治具100を使用して製造される接合型固体撮像素子10Bの構成の一例について、簡単に説明する。
【0032】
接合型固体撮像素子10Bは、パッケージ1と、画素領域2Dを含む信号読み出し回路基板2と、ボンディングワイヤ3と、光電変換膜4と、透明導電膜5と、透光性基板8と、を備える。接合型固体撮像素子10Bは、導電性ワイヤを介して電源7と透明導電膜5が接続されている。
【0033】
パッケージ1、信号読み出し回路基板2、ボンディングワイヤ3、光電変換膜4、および透明導電膜5についての説明は既述のとおりであり、重複する説明を省略する。
【0034】
透光性基板8は、光の入射側であり、光電変換膜4を介して、信号読み出し回路基板2と反対側に設けられる。透光性基板8は、透光性を有する材料で形成されることが好ましい。このような材料としては、例えば、ガラス、サファイア、シリコンなどが挙げられる。透光性基板8の材料は、透明導電膜5の材料に応じて適宜選択されることが好ましい。
【0035】
接合型固体撮像素子10Bは、
図1Bに示される構成に限定されるものではない。例えば、光電変換膜4と透明導電膜5との間に、酸化ガリウム膜、酸化ニッケル膜などが設けられていてもよい。また、信号読み出し回路基板2と光電変換膜4との間に、酸化ニッケル膜などが設けられてもよい。例えば、信号読み出し回路基板2と光電変換膜4との間、あるいは、光電変換膜4と透明導電膜5との間に、結晶核が設けられていてもよい。
【0036】
上述した積層型固体撮像素子10Aおよび接合型固体撮像素子10Bは、以下に説明する治具100を使用して製造される。当該治具100を使用することにより、良質な光電変換膜を備える積層型固体撮像素子10Aおよび接合型固体撮像素子10Bを実現できる。
【0037】
〔治具〕
図2A乃至
図2Dを参照して、第1実施形態に係る治具100の構成の一例について、説明する。第1実施形態では、光電変換膜4の成膜領域と透明導電膜5の成膜領域とが等しい場合を一例に挙げて説明する。
【0038】
治具100は、第1部材111と、第2部材112と、を備える。
【0039】
〔〔第1部材〕〕
第1部材111は、パッケージ1、およびパッケージ1にアッセンブルされた信号読み出し回路基板2を覆うように設けられる。この際、第1部材111は、ボンディングワイヤ3と重畳するように、パッケージ1、および信号読み出し回路基板2を覆う。これにより、第1部材111の第1開口部111Hに、第2部材112が嵌まる際に、第2部材112がボンディングワイヤ3と接触することを防ぐことができる。
【0040】
第1部材111は、例えば、真空中で使用可能なガス放出に優れたテープ(例えば、カプトンテープなど)で、パッケージ1の側面およびパッケージ1の上面に貼り付けられることで、パッケージ1に取り付けられる。第1部材111は、例えば、ネジまたはベルトを設けた構造での固着により、パッケージ1の側面およびパッケージ1の上面に固定されることで、パッケージ1に取り付けられる。
【0041】
第1部材111は、加工精度に優れ、真空中でのガス放出が少なく、また、セレンの結晶化温度である約200℃の耐熱性と一定の硬度を有する材料で形成されることが好ましい。このような材料としては、例えば、ステンレス、アルミニウム、銅などが挙げられる。
【0042】
第1部材111は、X軸方向における長さX111が、例えば、62.7mmであってよい。第1部材111は、Y軸方向における長さY111が、例えば、52.6mmであってよい。第1部材111は、Z軸方向における長さZ111が、例えば、5.0mmであってよい。
【0043】
図2Cに示すように、第1部材111は、第1開口部111Hを有する。第1開口部111Hは、X軸方向における長さが、例えば、28.2mmであってよい。第1開口部111Hは、Y軸方向における長さが、例えば、22.2mmであってよい。
【0044】
第1部材111は、X軸方向におけるパッケージ1の側面に対する厚さA1,A4を除いた長さX100Bが、X軸方向におけるパッケージ1の長さX100Aより長くなるように設計される。X軸方向におけるパッケージ1の側面に対する厚さA1,A4を除いた長さX100Bは、例えば、58.7mmであってよい。X軸方向におけるパッケージ1の側面に対する厚さA1,A4を除いた第1部材111の長さX100Bは、X軸方向におけるパッケージ1の長さX100Aを用いると、次式で表される。
【0045】
【0046】
第1部材111は、Y軸方向におけるパッケージ1の側面に対する厚さB1,B4を除いた長さY100Bが、Y軸方向におけるパッケージ1の長さY100Aをより長くなるように設計される。Y軸方向におけるパッケージ1の側面に対する厚さB1,B4を除いた長さY100Bは、例えば、48.6mmであってよい。Y軸方向におけるパッケージ1の側面に対する厚さB1,B4を除いた第1部材111の長さY100Bは、Y軸方向におけるパッケージ1の長さY100Aを用いると、次式で表される。
【0047】
【0048】
KXは、X軸方向における第1部材111の付加係数であり、KYは、Y軸方向における第1部材111の付加係数である。第1部材111の付加係数とは、例えば、第1部材111にパッケージ1の取り付けと、その後の成膜位置にズレが生じない寸法とするために、設けた値を意味する。KX,KYは、0.1mm以上0.8mm以下であることが好ましい。X軸方向におけるパッケージ1の側面に対する厚さA1,A4を除いた第1部材111の長さX100Bを、X軸方向におけるパッケージ1の長さX100Aより僅かに長くする、あるいは、Y軸方向におけるパッケージ1の側面に対する厚さB1,B4を除いた長さY100Bを、Y軸方向におけるパッケージ1の長さY100Aより僅かに長くすることで、第1部材111をパッケージ1に取り付け易く、または、第1部材111をパッケージ1から取り外し易くすることができる。
【0049】
第1部材111は、X軸方向におけるパッケージ1の側面に対する厚さA1,A4が、1mm以上3mm以下であることが好ましい。また、第1部材111は、Y軸方向におけるパッケージ1の側面に対する厚さB1,B4が、1mm以上3mm以下であることが好ましい。また、第1部材111は、Z軸方向におけるパッケージ1の上面に対する厚さC1が、0.5mm以上3mm以下であることが好ましい。A1,A4,B1,B4が全て等しいことで、積層型固体撮像素子10Aおよび接合型固体撮像素子10Bを製造する際の加工精度を高めることができる。
【0050】
第1部材111は、X軸方向における信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部と第2部材112の外周側面との距離A2,A5が、0.2mm+KX以上0.5mm+KX以下であることが好ましい。また、第1部材111は、Y軸方向における信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部と第2部材112の外周側面との距離B2,B5が、0.2mm+KY以上0.5mm+KY以下であることが好ましい。A2,A5が、0.2mm+KX以上0.5mm+KX以下であることで、また、B2,B5が、0.2mm+KY以上0.5mm+KY以下であることで、第2部材112がボンディングパット部に接触しない効果が得られて、同部分に損傷を与えずに、信号読み出し回路基板2上に形成する画素領域2Dに各膜を、ボンディングパット部およびボンディングワイヤ3に接触することなく形成することができる。
【0051】
第1部材111は、X軸方向における信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部とパッケージ1の側面との距離A3,A6が、適宜設定されることが好ましい。また、第1部材111は、Y軸方向における信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部とパッケージ1の側面との距離B3,B6が、適宜設定されることが好ましい。
【0052】
第1部材111は、X軸方向における第1開口部111Hを除いた長さX1が、例えば、17.25mmであってよい。X軸方向における第1開口部111Hを除いた長さX1は、X軸方向におけるパッケージ1の側面に対する厚さA1、X軸方向における信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部と第2部材112の外周側面との距離A2、およびX軸方向における信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部とパッケージ1の側面との距離A3を用いると、次式で表される。
【0053】
【0054】
第1部材111は、X軸方向における第1開口部111Hを除いた長さX2が、例えば、17.25mmであってよい。X軸方向における第1開口部111Hを除いた長さX2は、X軸方向におけるパッケージ1の側面に対する厚さA4、X軸方向における信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部と第2部材112の外周側面との距離A5、およびX軸方向における信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部とパッケージ1の側面との距離A6を用いると、次式で表される。
【0055】
【0056】
第1部材111は、Y軸方向における第1開口部111Hを除いた長さY1が、例えば、15.2mmであってよい。Y軸方向における第1開口部111Hを除いた長さY1は、Y軸方向におけるパッケージ1の側面に対する厚さB1、Y軸方向における信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部と第2部材112の外周側面との距離B2、およびY軸方向における信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部とパッケージ1の側面との距離B3を用いると、次式で表される。
【0057】
【0058】
第1部材111は、Y軸方向における第1開口部111Hを除いた長さY2が、例えば、15.2mmであってよい。Y軸方向における第1開口部111Hを除いた長さY2は、Y軸方向におけるパッケージ1の側面に対する厚さB4、Y軸方向における信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部と第2部材112の外周側面との距離B5、およびY軸方向における信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部とパッケージ1の側面との距離B6を用いると、次式で表される。
【0059】
【0060】
〔〔第2部材〕〕
第2部材112は、光電変換膜4の成膜領域Sを囲むように、第1部材111の第1開口部111Hに嵌まるように設けられる。第1部材111がボンディングワイヤ3と重畳するように、パッケージ1、およびパッケージ1にアッセンブルされた信号読み出し回路基板2を覆っているため、第2部材112は、ボンディングワイヤ3と接触することなく、光電変換膜4の成膜領域Sを囲むように、第1部材111の第1開口部111Hに嵌められる。
【0061】
第2部材112は、例えば、真空中で使用可能なガス放出に優れたテープで、第1部材111の第1開口部111Hに貼り付けられることで、第1部材111の第1開口部111Hに取り付けられる。第2部材112は、例えば、ネジまたはベルトを設けた構造での固着により、第1部材111の第1開口部111Hに固定されることで、第1部材111の第1開口部111Hに取り付けられる。
【0062】
第2部材112は、X軸方向における長さX112が、例えば、28.0mmであってよい。第2部材112は、Y軸方向における長さY112が、例えば、22.0mmであってよい。第2部材112は、Z軸方向における長さZ112が、例えば、5.0mmであってよい。
【0063】
X軸方向における第2部材112の長さX112は、X軸方向におけるパッケージ1の長さX100A、X軸方向における信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部と第2部材112の外周側面との距離A2,A5、X軸方向における信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部とパッケージ1の側面との距離A3,A6を用いると、次式で表される。
【0064】
【0065】
Y軸方向における第2部材112の長さY112は、Y軸方向におけるパッケージ1の長さY100A、Y軸方向における信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部と第2部材112の外周側面との距離B2,B5、Y軸方向における信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部とパッケージ1の側面との距離B3,B6を用いると、次式で表される。
【0066】
【0067】
LXは、X軸方向における第2部材112の外周の付加係数であり、LYは、Y軸方向における第2部材112の外周の付加係数である。第2部材112の外周の付加係数とは、第1部材111へ装填する際の隙間を意味する。Lは、0.1mm以上0.8mm以下であることが好ましい。仮に、Lがゼロであると、作業者が、第2部材112を第1部材111に取り付ける際、あるいは、作業者が、第2部材112から第1部材111を取り外す際の抜き差しが困難となる。したがって、Lを、0.1mm以上0.8mm以下とすることで、第1部材111の第1開口部111Hに対する第2部材112の抜き差しを容易とすることができ、また、積層型固体撮像素子10Aおよび接合型固体撮像素子10Bの製造工程において、治具100の装填位置の誤差を少なくすることができる。
【0068】
Z軸方向における第2部材112の長さZ112は、Z軸方向における第1部材111のパッケージ1の上面に対する厚さC1を用いると、次式で表される。
【0069】
【0070】
第2部材112は、加工が容易な材料で形成されることが好ましい。このような材料としては、例えば、テフロン(登録商標)、プラスチックなどが挙げられる。第2部材112は、例えば、テフロンで形成される場合、信号読み出し回路基板2との接触面が平坦加工され易くなるため、当該接触面に傷が付くことを防ぐことができる。さらに、第2部材112と信号読み出し回路基板2との密着性を高めることができるため、当該接触面を介して、成膜材料がボンディングワイヤ3側に漏れてしまうことを防ぐことができる。
【0071】
図2Dに示すように、第2部材112は、第2開口部112Hを有する。第2開口部112Hは、光電変換膜4の成膜領域Sに応じて設計される。
【0072】
第2開口部112Hは、X軸方向における長さX113が、X軸方向における光電変換膜4の成膜領域Sの長さSXより僅かに長くなるように設計される。X軸方向における第2開口部112Hの長さX113は、例えば、26.0mmであってよい。X軸方向における第2開口部112Hの長さX113は、X軸方向における光電変換膜4の成膜領域Sの長さSXを用いると、次式で表される。
【0073】
【0074】
第2開口部112Hは、Y軸方向における長さY113が、Y軸方向における光電変換膜4の成膜領域Sの長さSYより僅かに長くなるように設計される。Y軸方向における第2開口部112Hの長さY113は、例えば、16.0mmであってよい。Y軸方向における第2開口部112Hの長さY113は、Y軸方向における光電変換膜4の成膜領域Sの長さSYを用いると、次式で表される。
【0075】
【0076】
MXは、X軸方向における第2部材112の内周の付加係数であり、MYは、Y軸方向における第2部材112の内周の付加係数である。第2部材112の内周の付加係数とは、信号読み出し回路基板2の画素領域2Dに対する成膜領域Sの余白(のりしろ)を意味する。MX,MYは、0.2mm以上2.5mm以下であることが好ましい。MX,MYは、信号読み出し回路基板2上に設けられる光電変換膜4の成膜領域Sに応じて設定される。
【0077】
第1実施形態に係る治具100を使用することで、良質な光電変換膜4を備える積層型固体撮像素子10Aおよび接合型固体撮像素子10Bを製造することができる。つまり、従来のように、光電変換膜の変色、変質、結晶粒径の増大などにより、画像取得した際に固定パターンノイズおよび暗電流が増加し、固体撮像素子の画質が著しく劣化するなどの問題が生じない。結果的に、低暗電流および出力画像にムラのない安定した撮像特性を有する積層型固体撮像素子10Aおよび接合型固体撮像素子10Bを実現できる。
【0078】
〔積層型固体撮像素子の製造方法〕
図3乃至
図4Fを参照して、第1実施形態に係る治具100を使用した積層型固体撮像素子10Aの製造方法の一例について説明する。第1実施形態に係る治具100を使用して、下記のステップS101~S106を実施することにより、良質な光電変換膜を備える積層型固体撮像素子10Aが得られる。第1実施形態では、光電変換膜4の成膜領域と透明導電膜5の成膜領域とが等しい場合を一例に挙げて説明する。
【0079】
以下、各工程の詳細を順次説明する。なお、同一の構成要素に同一の参照番号を付しており、各構成要素の材料、膜厚などの説明は既述のとおりであり、重複する説明を省略する。
【0080】
積層型固体撮像素子10Aの製造方法は、パッケージ1に、信号読み出し回路基板2をアッセンブルする工程(ステップS101)と、第1開口部111Hを有する第1部材111で、パッケージ1および信号読み出し回路基板2を覆う工程(ステップS102)と、信号読み出し回路基板2上に形成される光電変換膜4の成膜領域Sに応じた第2開口部112Hを有する第2部材112を、成膜領域Sを囲むように、第1開口部111Hに嵌める工程(ステップS103)と、信号読み出し回路基板2上に、光電変換膜4を形成する工程(ステップS104)と、光電変換膜4上に、透明導電膜5を形成する工程(ステップS105)と、第1部材111および第2部材112を取り外す工程(ステップS106)と、を含む。
【0081】
図4Aに示すように、ステップS101において、作業者は、パッケージ1に、信号読み出し回路基板2をアッセンブルする。まず、作業者は、ダイアタッチ工程として、信号読み出し回路基板2を、パッケージ1に接着する。そして、作業者は、ワイヤボンディング工程として、信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部とパッケージ1の電極部とを、ボンディングワイヤ3で接続する。
【0082】
信号読み出し回路基板2上に、光電変換膜4などを形成する前に、ダイアタッチ工程およびワイヤボンディング工程を終了させておくことで、光電変換膜4を約150度の高温化に一定時間曝さずに済む。これにより、良質な光電変換膜4を備える積層型固体撮像素子10Aを製造することができる。また、低暗電流および出力画像にムラのない安定した撮像特性を有する積層型固体撮像素子10Aを実現できる。
【0083】
次に、
図4Bに示すように、ステップS102において、作業者は、パッケージ1に合わせて設計された第1部材111で、パッケージ1、およびパッケージ1にアッセンブルされた信号読み出し回路基板2を覆う。この際、作業者は、次工程で、第1部材111の第1開口部111Hに、第2部材112が嵌められる際に、第2部材112がボンディングワイヤ3と接触しないように、第1部材111がボンディングワイヤ3と重畳するように、第1部材111で、パッケージ1、およびパッケージ1にアッセンブルされた信号読み出し回路基板2を覆う。そして、作業者は、真空中で使用可能なガス放出に優れたテープで、第1部材111を、パッケージ1の側面およびパッケージ1の上面に貼り付ける。これにより、第1部材111は、パッケージ1に取り付けられる。
【0084】
次に、
図4Cに示すように、ステップS103において、作業者は、光電変換膜4の成膜領域Sを囲むように、第1部材111の第1開口部111Hに、光電変換膜4の成膜領域Sに応じた第2開口部112Hを有する第2部材112を嵌める。そして、作業者は、真空中で使用可能なガス放出に優れたテープで、第2部材112を、第1部材111の第1開口部111Hに貼り付ける。これにより、第2部材112は、第1部材111に取り付けられる。
【0085】
次に、
図4Dに示すように、ステップS104において、信号読み出し回路基板2上に、例えば、真空蒸着法により、膜厚300nmのアモルファスセレン膜を形成する。そして、パッケージ1を含めた全体を約160度のホットプレート上で1分間加熱し、アモルファスセレン膜を結晶化させて、光電変換膜4として、結晶セレン膜を形成する。この際、信号読み出し回路基板2と光電変換膜4との間に、例えば、真空蒸着法により、膜厚0.2nmのテルル膜からなる結晶核を形成してもよい。
【0086】
なお、第1部材11および第2部材112の材料の耐熱性が十分でない場合は、信号読み出し回路基板2上に、例えば、真空蒸着法により、膜厚300nmのアモルファスセレン膜を形成した後、作業者が、第1部材11および第2部材112を取り外してから、パッケージ1を含めた全体を約160度のホットプレート上で1分間加熱してもよい。
【0087】
次に、
図4Eに示すように、ステップS105において、光電変換膜4上に、例えば、DCスパッタリング法(酸素ガス分圧:7.6×10
-3Pa,アルゴンガス分圧:6.0×10
-1Pa)により、透明導電膜5として、膜厚10nmのITO膜を形成する。この際、光電変換膜4と透明導電膜5との間に、例えば、真空蒸着法により、膜厚0.2nmのテルル膜からなる結晶核を形成してもよい。
【0088】
次に、
図4Fに示すように、ステップS106において、作業者は、第1部材11および第2部材112を取り外し、透明導電膜5上の画像出力に影響しない部分に、導電性接着材などにより、小型でピン状の電極6を接着する。そして、作業者は、小型でピン状の電極6と信号出力回路の電源7とを、導電性ワイヤなどにより接続して、積層型固体撮像素子10Aへの電源供給、および積層型固体撮像素子10Aの画像出力を行う。
【0089】
以上の任意工程を含む各工程を経ることにより、
図1Aに示すような積層型固体撮像素子10Aを製造することができる。第1実施形態に係る治具100を使用することで、ダイアタッチ工程およびワイヤボンディング工程を終了させた後に、信号読み出し回路基板2上に、光電変換膜4などを形成することができるため、光電変換膜4を約150度の高温化に一定時間曝さずに済む。これにより、例えば、光電変換膜4が結晶セレン膜で形成される場合、セレンの物質固有の耐熱性が原因で、アッセンブル時の加熱に耐えられなくなり、結晶セレン膜の結晶粒径が増大するという問題を回避できる。また、例えば、光電変換膜4がアモルファスセレン膜で形成される場合、異常結晶成長が発生するという問題を回避できる。つまり、第1実施形態に係る治具100を使用することで、良質な光電変換膜4を備える積層型固体撮像素子10Aを製造することができる。
【0090】
〔接合型固体撮像素子の製造方法〕
図5乃至
図6Fを参照して、第1実施形態に係る治具100を使用した接合型固体撮像素子10Bの製造方法の一例について説明する。第1実施形態に係る治具100を使用して、下記のステップS201~S208を実施することにより、良質な光電変換膜を備える接合型固体撮像素子10Bが得られる。第1実施形態では、光電変換膜の成膜領域と透明導電膜の成膜領域とが等しい場合を一例に挙げて説明する。
【0091】
以下、各工程の詳細を順次説明する。なお、同一の構成要素に同一の参照番号を付しており、各構成要素の材料、膜厚などの説明は既述のとおりであり、重複する説明を省略する。
【0092】
接合型固体撮像素子10Bの製造方法は、パッケージ1に、信号読み出し回路基板2をアッセンブルする工程(ステップS201)と、第1開口部111Hを有する第1部材111で、パッケージ1および信号読み出し回路基板2を、覆う工程(ステップS202)と、信号読み出し回路基板2上に形成される光電変換膜4の成膜領域Sに応じた第2開口部112Hを有する第2部材112を、成膜領域Sを囲むように、第1開口部111Hに嵌める工程(ステップS203)と、信号読み出し回路基板2上に、第1アモルファスセレン膜4Aを形成する工程(ステップS204)と、第1部材111および第2部材112を取り外す工程(ステップS205)と、透光性基板8上に、透明導電膜5を形成する工程(ステップS206)と、透明導電膜5上に、第2アモルファスセレン膜4Bを形成する工程(ステップS207)と、加圧および加熱により、第1アモルファスセレン膜4Aと第2アモルファスセレン膜4Bとを接合し、光電変換膜4を形成する工程(ステップS208)と、を含む。
【0093】
図6Aに示すように、ステップS201において、作業者は、パッケージ1に、信号読み出し回路基板2をアッセンブルする。まず、作業者は、ダイアタッチ工程として、信号読み出し回路基板2を、パッケージ1に接着する。そして、作業者は、ワイヤボンディング工程として、信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部とパッケージ1の電極部とを、ボンディングワイヤ3で接続する。
【0094】
信号読み出し回路基板2上に、光電変換膜4などを形成する前に、ダイアタッチ工程およびワイヤボンディング工程を終了させておくことで、光電変換膜4を約150度の高温化に一定時間曝さずに済む。これにより、良質な光電変換膜4を備える接合型固体撮像素子10Bを製造することができる。また、低暗電流および出力画像にムラのない安定した撮像特性を有する接合型固体撮像素子10Bを実現できる。
【0095】
次に、
図6Bに示すように、ステップS202において、作業者は、パッケージ1に合わせて設計された第1部材111で、パッケージ1、およびパッケージ1にアッセンブルされた信号読み出し回路基板2を覆う。この際、作業者は、次工程で、第1部材111の第1開口部111Hに、第2部材112が嵌められる際に、第2部材112がボンディングワイヤ3と接触しないように、第1部材111がボンディングワイヤ3と重畳するように、第1部材111で、パッケージ1、およびパッケージ1にアッセンブルされた信号読み出し回路基板2を覆う。そして、作業者は、真空中で使用可能なガス放出に優れたテープで、第1部材111を、パッケージ1の側面およびパッケージ1の上面に貼り付ける。これにより、第1部材111は、パッケージ1に取り付けられる。
【0096】
次に、
図6Cに示すように、ステップS203において、作業者は、光電変換膜4の成膜領域Sを囲むように、第1部材111の第1開口部111Hに、光電変換膜4の成膜領域Sに応じた第2開口部112Hを有する第2部材112を嵌める。そして、作業者は、真空中で使用可能なガス放出に優れたテープで、第2部材112を、第1部材111の第1開口部111Hに貼り付ける。これにより、第2部材112は、第1部材111に取り付けられる。
【0097】
次に、
図6Dに示すように、ステップS204において、作業者は、信号読み出し回路基板2上に、例えば、真空蒸着法により、膜厚300nmの第1アモルファスセレン膜4Aを形成する。この際、信号読み出し回路基板2と光電変換膜4との間に、例えば、真空蒸着法により、膜厚0.2nmのテルル膜からなる結晶核を形成してもよい。
【0098】
次に、
図6Eに示すように、ステップS205において、透光性基板8上に、例えば、DCスパッタリング法(酸素ガス分圧:7.6×10
-3Pa,アルゴンガス分圧:6.0×10
-1Pa)により、透明導電膜5として、膜厚10nmのITO膜を形成する。そして、透明導電膜5上に、例えば、真空蒸着法により、膜厚300nmの第2アモルファスセレン膜4Bを形成する。この際、第2アモルファスセレン膜4Bと透明導電膜5との間に、例えば、真空蒸着法により、膜厚0.2nmのテルル膜からなる結晶核を形成してもよい。そして、作業者は、第1部材11および第2部材112を取り外し、加圧および加熱により、信号読み出し回路基板2上に形成された第1アモルファスセレン膜4Aと透光性基板8上に形成された第2アモルファスセレン膜4Bとを接合し、第1アモルファスセレン膜4Aおよび第2アモルファスセレン膜4Bを結晶化させて、光電変換膜4として、結晶セレン膜を形成する。
【0099】
なお、接合構造のプロセスの詳細については、例えば、下記の文献を参照できる。
宮川ほか、NHK技研、「固体撮像デバイスの高感度化に向けた、接合構造による結晶セレン光電変換膜の高増倍率化」、映像情報メディア学会冬季大会2020年予稿集、32E-1、2020
【0100】
次に、
図6Fに示すように、ステップS206において、作業者は、透明導電膜5の端部に、導電性接着材などにより、導電性ワイヤを接着し、透明導電膜5と信号出力回路の電源7とを、導電性ワイヤにより接続して、接合型固体撮像素子10Bへの電源供給、および接合型固体撮像素子10Bの画像出力を行う。
【0101】
以上の任意工程を含む各工程を経ることにより、
図1Bに示すような接合型固体撮像素子10Bを製造することができる。第1実施形態に係る治具100を使用することで、ダイアタッチ工程およびワイヤボンディング工程を終了させた後に、信号読み出し回路基板2上に、光電変換膜4などを形成することができるため、光電変換膜4を約150度の高温化に一定時間曝さずに済む。これにより、例えば、光電変換膜4が結晶セレン膜で形成される場合、セレンの物質固有の耐熱性が原因で、アッセンブル時の加熱に耐えられなくなり、結晶セレン膜の結晶粒径が増大するという問題を回避できる。また、例えば、光電変換膜4がアモルファスセレン膜で形成される場合、異常結晶成長が発生するという問題を回避できる。つまり、第1実施形態に係る治具100を使用することで、
図7に示すように、良質な光電変換膜4を備える接合型固体撮像素子10Bを製造することができる。
【0102】
<第2実施形態>
図8乃至
図10Hを参照して、第2実施形態に係る治具200を使用した積層型固体撮像素子20の製造方法の一例について説明する。
【0103】
第2実施形態に係る治具200を使用した積層型固体撮像素子20の製造方法が、第1実施形態に係る治具100を使用した積層型固体撮像素子10Aの製造方法と異なる点は、第1実施形態に係る治具100を使用した積層型固体撮像素子10Aの製造方法が、光電変換膜4の成膜領域と透明導電膜5の成膜領域とが等しい場合に適用されるのに対して、第2実施形態に係る治具200を使用した積層型固体撮像素子20の製造方法は、光電変換膜4の成膜領域と透明導電膜5の成膜領域とが異なる場合に適用される点である。以下、第1実施形態と重複する部分については、重複した説明を省略する。
【0104】
まず、第2実施形態に係る治具200を使用して製造される積層型固体撮像素子20、および第2実施形態に係る治具200の構成について、簡単に説明する。
【0105】
〔積層型固体撮像素子〕
図8を参照して、第2実施形態に係る治具200を使用して製造される積層型固体撮像素子20の構成の一例について、簡単に説明する。
【0106】
積層型固体撮像素子20は、パッケージ1と、画素領域2Dを含む信号読み出し回路基板2と、ボンディングワイヤ3と、光電変換膜4と、透明導電膜5と、を備える。積層型固体撮像素子20は、電圧供給部9から電圧が供給される。
【0107】
透明導電膜5は、光電変換膜4の上面のみならず、光電変換膜4の側面を覆うように設けられる。透明導電膜5は、光電変換膜4の上面を覆う部分の膜厚が5nm以上30nm以下であることが好ましい。透明導電膜5は、光電変換膜4の側面を覆う部分の膜厚が5nm以上30nm以下であることが好ましい。
【0108】
パッケージ1、信号読み出し回路基板2、ボンディングワイヤ3、および光電変換膜4についての説明は既述のとおりであり、重複する説明を省略する。
【0109】
積層型固体撮像素子20は、
図8に示される構成に限定されるものではない。例えば、光電変換膜4と透明導電膜5との間に、酸化ガリウム膜、酸化ニッケル膜などが設けられていてもよい。例えば、信号読み出し回路基板2と光電変換膜4との間、あるいは、光電変換膜4と透明導電膜5との間に、結晶核が設けられていてもよい。
【0110】
上述した積層型固体撮像素子20は、以下に説明する治具200を使用して製造される。これにより、良質な光電変換膜を備える積層型固体撮像素子20を実現できる。
【0111】
〔治具〕
治具100は、第1部材111と、第2部材112_1,第2部材112_2と、を備える。
【0112】
第1部材111は、第1実施形態に係る治具100が備える第1部材111と同様の構成を有する。また、第2部材112_1は、第1実施形態に係る治具100が備える第2部材112と同様の構成を有する。第1部材111および第2部材112_1についての説明は既述のとおりであり、重複する説明を省略する。
【0113】
第2部材112_2は、透明導電膜5の成膜領域を囲むように、第1部材111の第1開口部111Hに嵌まるように設けられる。第1部材111がボンディングワイヤ3と重畳するように、パッケージ1、およびパッケージ1にアッセンブルされた信号読み出し回路基板2を覆っているため、第2部材112_2は、ボンディングワイヤ3と接触することなく、透明導電膜5の成膜領域を囲むように、第1部材111の第1開口部111Hに嵌められる(
図10F参照)。
【0114】
第2部材112_2は、例えば、真空中で使用可能なガス放出に優れたテープで、第1部材111の第1開口部111Hに貼り付けられることで、第1部材111の第1開口部111Hに取り付けられる。第2部材112_2は、例えば、ネジまたはベルトを設けた構造での固着により、第1部材111の第1開口部111Hに固定されることで、第1部材111の第1開口部111Hに取り付けられる。
【0115】
第2部材112_2は、X軸方向における長さが、例えば、28.0mmであってよい。第2部材112_2は、Y軸方向における長さが、例えば、22.0mmであってよい。第2部材112_2は、Z軸方向における長さが、例えば、5.0mmであってよい。
【0116】
第2部材112_2は、加工が容易な材料で形成されることが好ましい。このような材料としては、例えば、テフロン、プラスチックなどが挙げられる。第2部材112_2は、例えば、テフロンで形成される場合、信号読み出し回路基板2との接触面が平坦加工され易くなるため、当該接触面に傷が付くことを防ぐことができる。さらに、第2部材112_2と信号読み出し回路基板2との密着性を高めることができるため、当該接触面を介して、成膜材料がボンディングワイヤ3側に漏れてしまうことを防ぐことができる。
【0117】
第2部材112_2は、第3開口部112H’を有する。第3開口部112H’は、透明導電膜5の成膜領域に応じて設計される。透明導電膜5の成膜領域は、少なくとも、光電変換膜4の成膜領域Sと異なる領域であればよく、その領域が特に限定されるものではない。例えば、透明導電膜5の成膜領域は、光電変換膜4の上面、および光電変換膜4の1つの側面を覆う領域であってよい。例えば、透明導電膜5の成膜領域は、光電変換膜4の上面、および光電変換膜4の全ての側面を覆う領域であってよい。
【0118】
第3開口部112H’は、X軸方向における長さが、X軸方向における透明導電膜5の成膜領域の長さより僅かに長くなるように設計される。X軸方向における第3開口部112H’の長さは、例えば、26.2mmであってよい。
【0119】
第3開口部112H’は、Y軸方向における長さが、Y軸方向における透明導電膜5の成膜領域の長さより僅かに長くなるように設計される。Y軸方向における第3開口部112H’の長さは、例えば、18.0mmであってよい。
【0120】
第2実施形態に係る治具200を使用することで、良質な光電変換膜4を備える積層型固体撮像素子20を製造することができる。つまり、従来のように、光電変換膜の変色、変質、結晶粒径の増大などにより、画像取得した際に固定パターンノイズおよび暗電流が増加し、固体撮像素子の画質が著しく劣化するなどの問題が生じない。結果的に、低暗電流および出力画像にムラのない安定した撮像特性を有する積層型固体撮像素子20を実現できる。
【0121】
〔積層型固体撮像素子の製造方法〕
図8、
図9、および
図10A乃至
図10Hを参照して、第2実施形態に係る治具200を使用した積層型固体撮像素子20の製造方法の一例について説明する。第2実施形態に係る治具200を使用して、下記のステップS301~S308を実施することにより、良質な光電変換膜を備える積層型固体撮像素子20が得られる。第2実施形態では、光電変換膜4の成膜領域と透明導電膜5の成膜領域とが異なる場合を一例に挙げて説明する。
【0122】
以下、各工程の詳細を順次説明する。なお、同一の構成要素に同一の参照番号を付しており、各構成要素の材料、膜厚などの説明は既述のとおりであり、重複する説明を省略する。
【0123】
積層型固体撮像素子20の製造方法は、パッケージ1に、信号読み出し回路基板2をアッセンブルする工程(ステップS301)と、第1開口部111Hを有する第1部材111で、パッケージ1および信号読み出し回路基板2を覆う工程(ステップS302)と、信号読み出し回路基板2上に形成される光電変換膜4の第1成膜領域Sに応じた第2開口部112Hを有する第2部材112_1を、第1成膜領域Sを囲むように、第1開口部111Hに嵌める工程(ステップS303)と、信号読み出し回路基板2上に、光電変換膜4を形成する工程(ステップS304)と、第2部材112_1を取り外す工程(ステップS305)と、信号読み出し回路基板2上に形成される透明導電膜5の第2成膜領域に応じた第3開口部112H’を有する第2部材112_2を、第2成膜領域を囲むように、第1開口部111Hに嵌める工程(ステップS306)と、光電変換膜4上に、透明導電膜5を形成する工程(ステップS307)と、第1部材111および第2部材112_2を取り外す工程(ステップS308)と、を含む。
【0124】
図10Aに示すように、ステップS301において、作業者は、パッケージ1に、電圧供給部9があらかじめ設けられた信号読み出し回路基板2をアッセンブルする。まず、作業者は、ダイアタッチ工程として、電圧供給部9があらかじめ設けられた信号読み出し回路基板2を、パッケージ1に接着する。そして、作業者は、ワイヤボンディング工程として、電圧供給部9があらかじめ設けられた信号読み出し回路基板2のボンディングパッド部とパッケージ1の電極部とを、ボンディングワイヤ3で接続する。
【0125】
電圧供給部9があらかじめ設けられた信号読み出し回路基板2上に、光電変換膜4などを形成する前に、ダイアタッチ工程およびワイヤボンディング工程を終了させておくことで、光電変換膜4を約150度の高温化に一定時間曝さずに済む。これにより、良質な光電変換膜4を備える積層型固体撮像素子20を製造することができる。また、低暗電流および出力画像にムラのない安定した撮像特性を有する積層型固体撮像素子20を実現できる。
【0126】
次に、
図10Bに示すように、ステップS302において、作業者は、パッケージ1に合わせて設計された第1部材111で、パッケージ1、およびパッケージ1にアッセンブルされた信号読み出し回路基板2を覆う。この際、作業者は、次工程で、第1部材111の第1開口部111Hに、第2部材112_1が嵌められる際に、第2部材112_1がボンディングワイヤ3と接触しないように、第1部材111がボンディングワイヤ3と重畳するように、第1部材111で、パッケージ1、およびパッケージ1にアッセンブルされた信号読み出し回路基板2を覆う。そして、作業者は、真空中で使用可能なガス放出に優れたテープで、第1部材111を、パッケージ1の側面およびパッケージ1の上面に貼り付ける。これにより、第1部材111は、パッケージ1に取り付けられる。
【0127】
次に、
図10Cに示すように、ステップS303において、作業者は、光電変換膜4の成膜領域Sを囲むように、第1部材111の第1開口部111Hに、光電変換膜4の成膜領域Sに応じた第2開口部112Hを有する第2部材112_1を嵌める。そして、作業者は、真空中で使用可能なガス放出に優れたテープで、第2部材112_1を、第1部材111の第1開口部111Hに貼り付ける。これにより、第2部材112_1は、第1部材111に取り付けられる。
【0128】
次に、
図10Dに示すように、ステップS304において、作業者は、信号読み出し回路基板2上に、例えば、真空蒸着法により、膜厚300nmのアモルファスセレン膜を形成する。そして、パッケージ1を含めた全体を約160度のホットプレート上で1分間加熱し、アモルファスセレン膜を結晶化させて、光電変換膜4として、結晶セレン膜を形成する。この際、信号読み出し回路基板2と光電変換膜4との間に、例えば、真空蒸着法により、膜厚0.2nmのテルル膜からなる結晶核を形成してもよい。
【0129】
なお、第1部材111および第2部材112_1の材料の耐熱性が十分でない場合は、信号読み出し回路基板2上に、例えば、真空蒸着法により、膜厚300nmのアモルファスセレン膜を形成した後、作業者が、第1部材11および第2部材112_1を取り外してから、パッケージ1を含めた全体を約160度のホットプレート上で1分間加熱してもよい。
【0130】
次に、
図10Eに示すように、ステップS305において、作業者は、第2部材112_1を取り外す。
【0131】
次に、
図10Fに示すように、ステップS306において、作業者は、取り外した第2部材112_1を、新たな第2部材112_2と交換し、透明導電膜5の成膜領域を囲むように、第1部材111の第1開口部111Hに、透明導電膜5の成膜領域に応じた第3開口部112H’を有する第2部材112_2を嵌める。そして、作業者は、真空中で使用可能なガス放出に優れたテープで、第2部材112_2を、第1部材111の第1開口部111Hに貼り付ける。これにより、第2部材112_2は、第1部材111に取り付けられる。
【0132】
そして、光電変換膜4の上面および光電変換膜4の側面の1つを覆うように、例えば、DCスパッタリング法(酸素ガス分圧:7.6×10-3Pa,アルゴンガス分圧:6.0×10-1Pa)により、透明導電膜5として、膜厚10nmのITO膜を形成する。この際、光電変換膜4と透明導電膜5との間に、例えば、真空蒸着法により、膜厚0.2nmのテルル膜からなる結晶核を形成してもよい。
【0133】
次に、
図10Gに示すように、ステップS307において、作業者は、第2部材112_2を取り外す。
【0134】
次に、
図10Hに示すように、ステップS308において、作業者は、第1部材111を取り外す。積層型固体撮像素子20は、リード線などに接続される電圧供給部9から電圧が供給され、画像出力を行う。
【0135】
以上の任意工程を含む各工程を経ることにより、
図8に示すような積層型固体撮像素子20を製造することができる。第2実施形態に係る治具200を使用することで、ダイアタッチ工程およびワイヤボンディング工程を終了させた後に、信号読み出し回路基板2上に、光電変換膜4などを形成することができるため、光電変換膜4を約150度の高温化に一定時間曝さずに済む。これにより、例えば、光電変換膜4が結晶セレン膜で形成される場合、セレンの物質固有の耐熱性が原因で、アッセンブル時の加熱に耐えられなくなり、結晶セレン膜の結晶粒径が増大するという問題を回避できる。また、例えば、光電変換膜4がアモルファスセレン膜で形成される場合、異常結晶成長が発生するという問題を回避できる。つまり、第2実施形態に係る治具200を使用することで、良質な光電変換膜4を備える積層型固体撮像素子20を製造することができる。
【0136】
<変形例>
本実施形態では、第1部材111の外形が、矩形である場合を一例に挙げて説明したが、第1部材111の外形は、これに限定されない。例えば、第1部材111の外形の外形は、円形、多角形などであってもよい。
【0137】
また、本実施形態では、第1開口部111H,第2開口部112H,第3開口部112H’の形状が、矩形である場合を一例に挙げて説明したが、第1開口部111H,第2開口部112H,第3開口部112H’の形状は、これに限定されない。例えば、第1開口部111H,第2開口部112H,第3開口部112H’の形状は、円形、多角形などであってもよい。
【0138】
また、本実施形態では、第2部材112_1,第2部材112_2が、別体である場合を一例に挙げて説明したが、第2部材112_1,第2部材112_2は、互いに、取り付けまたは取り外しが可能な構成を有し、一時的に一体となり、一時的に別体となるような構成を有していてもよい。
【0139】
本発明は上記の実施形態および変形例に限定されるものではない。例えば、上述の各種の工程は、記載にしたがって時系列に実行されるのみならず、工程を実行する装置の処理能力あるいは必要に応じて、並列的にあるいは個別に実行されてもよい。その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0140】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本開示の趣旨および範囲内で、多くの変更および置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態により制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形または変更が可能である。実施形態のフローチャートに記載の複数の工程を1つに組み合わせたり、あるいは1つの工程を分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0141】
1 パッケージ
2 信号読み出し回路基板
2D 画素領域
3 ボンディングワイヤ
4 光電変換膜
4A 第1アモルファスセレン膜
4B 第2アモルファスセレン膜
5 透明導電膜
6 電極
7 電源
8 透光性基板
9 電圧供給部
10A 積層型固体撮像素子
10B 接合型固体撮像素子
20 積層型固体撮像素子
100 治具
111 第1部材
111H 第1開口部
112,112_1,112_2 第2部材
112H 第2開口部
112H’ 第3開口部
200 治具