(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131838
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 49/16 20060101AFI20230914BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20230914BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
B24B49/16
B24B7/04 A
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036816
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】前嶋 信
(72)【発明者】
【氏名】長井 健
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB52
3C034BB73
3C034BB83
3C034BB92
3C034CA17
3C034DD07
3C034DD09
3C034DD10
3C043BA03
3C043BA08
3C043BA09
3C043BA13
3C043BA16
3C043CC04
3C043DD05
3C043DD06
3C043DD12
5F057AA20
5F057AA53
5F057BA15
5F057BA21
5F057BB03
5F057CA14
5F057DA11
5F057FA01
5F057FA46
5F057GB05
(57)【要約】
【課題】進行する研削が不安定である場合に、研削が不安定であると判定する。
【解決手段】被加工物を保持するチャックテーブルと、スピンドルと該スピンドルの上端に接続されたスピンドルモータを有し、研削砥石を環状に配置した研削ホイールが該スピンドルの下端側に装着され、該スピンドルを回転させ回転移動する該研削砥石を該チャックテーブルに保持された該被加工物に接触させて該被加工物を研削する研削ユニットと、該チャックテーブルと該研削ユニットを相対的に接近及び離間する方向に移動させる研削送りユニットと、該研削砥石が該被加工物に接触したことで上昇する該スピンドルモータの負荷電流値を測定する負荷電流値測定ユニットと、制御ユニットと、を備え、該制御ユニットは、該負荷電流値測定ユニットによって測定された該負荷電流値の単位時間あたりの変動量が予め設定された閾値を超える場合に該負荷電流値が不安定であると判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、
スピンドルと、該スピンドルの上端に接続されたスピンドルモータと、を有し、研削砥石を環状に配置した研削ホイールが該スピンドルの下端側に装着され、該スピンドルを回転させ回転移動する該研削砥石を該チャックテーブルに保持された該被加工物に接触させて該被加工物を研削する研削ユニットと、
該チャックテーブルと、該研削ユニットと、を相対的に接近及び離間する方向に移動させる研削送りユニットと、
該研削砥石が該被加工物に接触したことで上昇する該スピンドルモータの負荷電流値を測定する負荷電流値測定ユニットと、
各構成要素を制御する制御ユニットと、を備え、
該制御ユニットは、該負荷電流値測定ユニットによって測定された該負荷電流値の単位時間あたりの変動量が予め設定された閾値を超える場合に該負荷電流値が不安定であると判定することを特徴とする研削装置。
【請求項2】
情報を表示する表示ユニットをさらに有し、
該制御ユニットは、該負荷電流値が不安定であると判定する場合に該表示ユニットに該負荷電流値が不安定であることを示すメッセージを表示することを特徴とする請求項1に記載の研削装置。
【請求項3】
該制御ユニットは、該負荷電流値測定ユニットによって測定された該負荷電流値の推移を示すグラフを作成するグラフ変換部を備え、該グラフ変換部によって作成された該負荷電流値の推移を示す該グラフを該表示ユニットに表示可能であることを特徴とする請求項2に記載の研削装置。
【請求項4】
該制御ユニットへの情報の入力に使用される入力ユニットをさらに有し、
該制御ユニットは、該研削ユニットによる該被加工物の研削の進行中に該入力ユニットによる該被加工物の研削に関する情報の入力を受け付け可能であり、該負荷電流値が不安定であると判定する場合に該被加工物の研削の進行中に入力された該被加工物の研削に関する該情報に基づいて研削条件を変更して研削を継続できることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の板状の被加工物を研削して薄化する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やコンピュータ等の電子機器に使用されるデバイスチップは、複数のデバイスが表面に並べて配設されたウェーハを裏面側から研削して薄化し、デバイス毎にウェーハを分割することで形成される。ウェーハ等の被加工物の研削は、研削装置で実施される。研削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、チャックテーブルで保持された被加工物を研削する研削ユニットと、を備える。
【0003】
研削ユニットには、環状に配設された研削砥石を下面に備える研削ホイールが装着されている。研削ユニットは、研削ホイールを保持するホイールマウントを下端に備えるスピンドルを有し、スピンドルの上端にはスピンドルを回転させるスピンドルモータが接続されている。スピンドルモータを作動させてスピンドルを回転させると、研削ホイールが回転して研削砥石が円環状の軌道に沿って回転移動する。
【0004】
研削装置では、裏面側を上方に露出させた状態で被加工物をチャックテーブルで保持し、回転移動する研削砥石を被加工物の裏面側に接触させて該被加工物を研削する。ただし、研削装置では、研削工程を進める間に研削砥石に目詰まりや目潰れ等の不具合が生じて被加工物を正常に研削できない状態となることがある。そこで、このときにスピンドルモータの負荷電流値が上昇することを利用して負荷電流値が許容される上限値を超えたとき警報を発して作業者や管理者等に通知する研削装置が開発された(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、スピンドルモータの負荷電流値が許容される上限値を超えずに推移する場合においても、不適切な研削条件で被加工物の研削が実施されていると、安定的に研削が進行せず仕上がりの品質が低くなることがある。例えば、前例のない新たな被加工物の研削を開始するとき等には、複数の被加工物を準備してそれぞれ様々な研削条件で研削し、研削後の各被加工物の状態を評価し、各研削条件の良否を評価し、研削条件を選定する作業、すなわち、テスト加工が必要となる。
【0007】
テスト加工では、被加工物の研削が終了した後で被加工物の状態を評価しており、研削が不安定に進行していたことが後で判明する場合があった。しかしながら、研削が不安定に進行していることが研削の進行中に判明すれば、それ以上研削を続ける必要がなく、研削後に被加工物を検査する必要もなくなる。この場合、研削の進行中に研削条件を切り替えることができれば、次の研削条件を早期に評価することも可能となり、テスト加工で失われる被加工物の数も低減できる。
【0008】
さらに、研削装置で進行する被加工物の研削が不安定であることを研削の進行中に判定できれば、テスト加工ではない通常の研削工程における異常の検出にも有用である。すなわち、テスト加工に限らず、スピンドルモータの負荷電流値が許容される上限値を超えない場合においても、進行する研削が不安定であることを検知したいとの要望がある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、進行する研削が不安定である場合に、研削が不安定であると判定できる研削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、スピンドルと、該スピンドルの上端に接続されたスピンドルモータと、を有し、研削砥石を環状に配置した研削ホイールが該スピンドルの下端側に装着され、該スピンドルを回転させ回転移動する該研削砥石を該チャックテーブルに保持された該被加工物に接触させて該被加工物を研削する研削ユニットと、該チャックテーブルと、該研削ユニットと、を相対的に接近及び離間する方向に移動させる研削送りユニットと、該研削砥石が該被加工物に接触したことで上昇する該スピンドルモータの負荷電流値を測定する負荷電流値測定ユニットと、各構成要素を制御する制御ユニットと、を備え、該制御ユニットは、該負荷電流値測定ユニットによって測定された該負荷電流値の単位時間あたりの変動量が予め設定された閾値を超える場合に該負荷電流値が不安定であると判定することを特徴とする研削装置が提供される。
【0011】
好ましくは、情報を表示する表示ユニットをさらに有し、該制御ユニットは、該負荷電流値が不安定であると判定する場合に該表示ユニットに該負荷電流値が不安定であることを示すメッセージを表示する。
【0012】
さらに、好ましくは、該制御ユニットは、該負荷電流値測定ユニットによって測定された該負荷電流値の推移を示すグラフを作成するグラフ変換部を備え、該グラフ変換部によって作成された該負荷電流値の推移を示す該グラフを該表示ユニットに表示可能である。
【0013】
また、好ましくは、該制御ユニットへの情報の入力に使用される入力ユニットをさらに有し、該制御ユニットは、該研削ユニットによる該被加工物の研削の進行中に該入力ユニットによる該被加工物の研削に関する情報の入力を受け付け可能であり、該負荷電流値が不安定であると判定する場合に該被加工物の研削の進行中に入力された該被加工物の研削に関する該情報に基づいて研削条件を変更して研削を継続できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係る研削装置は、下端側に研削ホイールが装着されたスピンドルの上端に接続されたスピンドルモータの負荷電流値を測定する負荷電流値測定ユニットを備える。そして、研削装置の制御ユニットは、負荷電流値測定ユニットで測定された負荷電流値の単位時間あたりの変動量を算出し、これが予め設定された閾値を超える場合に負荷電流値が不安定であると判定する。
【0015】
そのため、負荷電流値が許容される上限値を超えずに推移する場合においても、負荷電流値が不安定である場合にこれを検出できる。負荷電流値が不安定であると判定される場合、被加工物の研削が安定的に進行していないこととなるため、これを知った作業者等は研削の続行の要否を判定して、研削条件を変更することもできる。本発明の一態様に係る研削装置では、被加工物の研削が完了するのを待って被加工物の状態を確認する従来の方法とは異なり、研削の完了を待つことなく判定を実施できる。
【0016】
したがって、本発明の一態様によると、進行する研削が不安定である場合に、研削が不安定であると判定できる研削装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】被加工物を研削する研削装置を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3(A)は、研削が安定的に進行する場合における負荷電流値の推移を模式的に示すグラフであり、
図3(B)は、進行する研削が不安定である場合における負荷電流値の推移を模式的に示すグラフである。
【
図4】
図4(A)は、負荷電流値が不安定であるか否かを判定する際の研削装置の動作フローを示すフローチャートであり、
図4(B)は、研削の進行中に研削条件を変更する際の研削装置の動作フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態に係る研削装置は、板状の被加工物を研削して所定の厚さに薄化する。
図1は、本実施形態に係る研削装置2を模式的に示す斜視図である。また、
図2は、被加工物1を研削する研削装置2を模式的に示す断面図である。
【0019】
まず、研削装置2で研削される被加工物1について説明する。被加工物1は、シリコン等の材料で形成された円板状のウェーハであり、互いに概ね平行な表面1a及び裏面1bを備える。被加工物1の表面1aには、互いに交差するように格子状に配列された複数の分割予定ライン(不図示)が設定される。被加工物1の表面1aの分割予定ラインで区画された各領域には、それぞれ、IC、LSI等のデバイス(不図示)が形成される。
【0020】
なお、被加工物1の材質、構造、大きさ、形状等に制限はない。例えば被加工物1は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、サファイア、ガラス(石英ガラス、ホウケイ酸ガラス等)等でなる基板であってもよい。また、デバイスの種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はなく、被加工物1にはデバイスが形成されていなくてもよい。
【0021】
被加工物1の裏面1b側を研削する際、表面1a側を保護するために被加工物1の径と同程度の径のテープ状の保護部材3が被加工物1の表面1a側に貼着される。被加工物1を裏面1b側から研削して薄化し、被加工物1を分割予定ラインに沿って分割すると、デバイスをそれぞれ備える複数の薄型のチップ(デバイスチップ)が製造される。
【0022】
次に、研削装置2について説明する。研削装置2は、各構成要素を支持する略直方体状の基台4を有する。基台4の上面には、Y軸方向に沿った凹部4aが形成されている。凹部4aには、被加工物を保持できるY軸方向に移動可能なチャックテーブル6と、チャックテーブル6を露出しながら凹部4aの開口を覆う防塵防滴カバー4bと、が設けられる。
【0023】
図2では、防塵防滴カバー4bが省略されている。凹部4aの内部には、チャックテーブル6を移動可能に支持するY軸移動機構8が配設されている。Y軸移動機構8は、Y軸方向に沿った一対のガイドレール10と、該ガイドレール10にスライド可能に支持された移動テーブル12と、移動テーブル12の下面設けられたナット部14に螺合されたY軸方向に沿ったボールねじ16と、を備える。ボールねじ16の一端には、該ボールねじ16を回転させるパルスモータ18が接続されている。
【0024】
移動テーブル12の上には、チャックテーブル6が配設されている。Y軸移動機構8を作動させると、チャックテーブル6をY軸方向に沿って移動できる。チャックテーブル6
は、セラミックス製の枠体6aを有する。枠体6a内には流路(不図示)が設けられており、この流路の一端はエジェクタ等の吸引源(不図示)に接続している。
【0025】
枠体6aは、円盤状の空間から成る凹部を上面側に有する。この凹部には略円盤状の多孔質プレート6bが固定されている。多孔質プレート6bは、平坦な円形の下面及び上面を有する。多孔質プレート6bの径は、被加工物1の径と略同一とされる。多孔質プレート6bの下面側には、枠体6aの流路の他端が接続している。吸引源を動作させると、多孔質プレート6bの上面には負圧が生じて、被加工物1は、この上面で吸引されて保持される。それゆえ、チャックテーブル6の上面は、保持面6cとして機能する。
【0026】
チャックテーブル6の枠体6aの下面側には、円盤状のテーブル基台6dが連結されている。このテーブル基台6dの下面中央にはスピンドル20の上端が連結されており、スピンドル20の下端はスピンドルハウジング20aに回転可能に収容されている。スピンドルハウジング20aには、スピンドル20を回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が設けられている。この回転駆動源を作動させることにより、チャックテーブル6は、保持面6cに垂直な回転軸の周りで回転する。
【0027】
研削装置2は、チャックテーブル6で保持された被加工物1を研削する研削ユニット22と、研削ユニット22を昇降させる研削送りユニット(昇降機構)24と、を備える。研削送りユニット24は、研削ユニット22に代えてチャックテーブル6を昇降させてもよい。すなわち、研削送りユニット24は、チャックテーブル6と、研削ユニット22と、を相対的に接近及び離間する方向に移動させる。
【0028】
研削装置2の後方側には支持部26が立設されており、この支持部26により研削送りユニット24を介して研削ユニット22が支持されている。支持部26の前面には、Z軸方向(鉛直方向)に沿った一対のガイドレール28が設けられている。それぞれのガイドレール28には、移動プレート30がスライド可能に取り付けられている。
【0029】
移動プレート30の裏面側(後面側)には、ナット部32が設けられており、このナット部32には、ガイドレール28に平行なボールねじ34が螺合されている。ボールねじ34の一端部には、パルスモータ36が連結されている。パルスモータ36でボールねじ34を回転させると、移動プレート30は、ガイドレール28に沿ってZ軸方向に移動する。
【0030】
移動プレート30の前面側には、研削ユニット22が固定されている。移動プレート30を移動させれば、研削ユニット22はZ軸方向(研削送り方向)に移動できる。研削ユニット22は、切断された円筒状の保持部材38を有する。保持部材38は、移動プレート30の前方側の表面に固定されている。
【0031】
保持部材38の内側には、スピンドルハウジング40が設けられている。スピンドルハウジング40の下部には、ゴム等で形成された円環状の緩衝部材42が設けられている。スピンドルハウジング40は、緩衝部材42を介して保持部材38の底板に支持されている。
【0032】
スピンドルハウジング40には、スピンドル44の一部が回転可能な態様で収容されている。スピンドル44の上端には、スピンドルモータ41が連結されている。スピンドルモータ41を動作させると、スピンドル44は回転軸46の周りに回転する。
【0033】
スピンドル44の下端は、保持部材38の底板よりも下方に位置している。スピンドル44の下端には、円盤状のホイールマウント48の上面側が連結されている。スピンドル44の下端側には、ホイールマウント48を介して円環状の研削ホイール50が装着されている。
【0034】
研削ホイール50は、円環状のホイール基台52を有する。ホイール基台52は、アルミニウム等の金属で形成され、被加工物1の径に対応する径とされる。このホイール基台52の上面側がホイールマウント48の下面側に連結される。つまり、研削ホイール50は、ホイールマウント48を介してスピンドル44に装着される。
【0035】
ホイール基台52の下面側には、環状に配置された研削砥石54が設けられている。研削砥石54は、例えば、ビトリファイドやレジノイド等の結合材に、ダイヤモンドやcBN(cubic boron nitride)等の砥粒を混合し、混合体を焼結することで形成されている。スピンドルモータ41を作動させてスピンドル44を回転軸46の周りに回転させて研削ホイール50を回転させると、研削砥石54が円環軌道上を回転移動する。
【0036】
研削装置2で被加工物1を研削する際には、保護部材3を介して被加工物1をチャックテーブル6の保持面6c上に載せ、チャックテーブル6で被加工物1を吸引保持し、被加工物1の被研削面となる裏面1bを上方に露出させる。そして、Y軸移動機構8を作動させてチャックテーブル6を研削ユニット22の下方に移動させる。
【0037】
その後、研削ホイール50と、チャックテーブル6と、をそれぞれの回転軸の周りに回転させ、研削送りユニット24を作動させて研削ユニット22の下降を開始する。そして、円環軌道上を移動する研削砥石54の下面が被加工物1の裏面1bに当たると、被加工物1の研削が始まる。研削装置2は、被加工物1の厚みを測定できる図示しない厚み測定ユニットを備え、厚み測定ユニットで被加工物1の厚みを監視しながら研削ユニット22の下降を継続する。
【0038】
その後、被加工物1の厚みが所定の仕上げ厚みに達したときに研削ユニット22の下降を終了し研削ユニット22を上昇させる。すると、仕上げ厚みに薄化された被加工物1が得られる。
【0039】
なお、被加工物1を研削する間、被加工物1及び研削砥石54との間の摩擦により摩擦熱が生じる。摩擦熱により被加工物1、研削砥石54等の温度が変化すると、これらが熱膨張する等して所望の研削結果が得られないことがある。また、研削を実施する間、被加工物1及び研削砥石54が消耗して加工屑が生じる。そこで、被加工物1の研削を実施する間、純水等で構成される研削液が被加工物1及び研削砥石54に供給され、加工屑及び摩擦熱が研削液により除去される。
【0040】
研削装置2は、タッチパネル付きディスプレイ58を外装に備える。タッチパネル付きディスプレイ58は、入力ユニット(入力インタフェース)となるタッチパネルと、タッチパネルに重ねられた液晶パネル等の表示ユニットと、により構成される。タッチパネル付きディスプレイ58は、表示ユニットとして機能して各種の情報を表示できるとともに、入力ユニットとして機能して後述の制御ユニット60への各種の指令や情報の入力に使用される。
【0041】
研削砥石54の表面では、結合材から適度に砥粒が露出している。被加工物1を研削砥石54で研削する間、砥粒が消耗したり結合材から脱落したりして研削砥石54の研削能力が低下することが考えられる。しかしながら、結合材も徐々に消耗して新しい砥粒が表面に次々に露出するため、研削砥石54の研削能力は維持される。この作用は、自生発刃と呼ばれる。
【0042】
しかしながら、砥粒の間に加工屑が詰まる目詰まりや、結合材が予定より消耗せず表出した砥粒が削れる目潰れ等の不具合が生じて研削砥石54の研削能力が低下し、研削砥石54が被加工物1を正常に研削できない状態となることがある。研削砥石54の研削能力が低下し始めると、研削砥石54の回転駆動源となるスピンドルモータ41の負荷電流値が上昇する。
【0043】
そこで、研削装置2は、スピンドルモータ41の負荷電流値を測定する負荷電流値測定ユニット56を備える。負荷電流値測定ユニット56は、例えば、スピンドルモータ41に接続された電源系に設けられた電流計である。そして、研削装置2では、スピンドルモータ41の負荷電流値が負荷電流値測定ユニット56により監視される。
【0044】
まず、研削砥石54が被加工物1に接触して食いつき始めると、負荷電流値測定ユニット56で測定される負荷電流値が上昇し、その後に負荷電流値が定常状態となる。そして、スピンドルモータ41の負荷電流値が許容される上限値を超えたとき、研削砥石54が適切な研削加工を続行できる状態でないと判定され、研削が自動停止される。
【0045】
しかしながら、スピンドルモータ41の負荷電流値が許容される上限値を超えずに推移する場合においても、不適切な研削条件で被加工物1の研削が実施されていると、安定的に研削が進行せず仕上がりの品質が低くなることがある。
【0046】
また、研削装置2で研削されたことのない新たな被加工物1の研削を開始するとき等には、被加工物1を様々な研削条件で試しに研削し、研削後の被加工物1の状態を評価し、各研削条件の良否を評価し、研削が安定的に進む研削条件を特定する作業が必要となる。すなわち、テスト加工が必要となる。
【0047】
テスト加工では、被加工物1の研削が終了した後で被加工物1の状態を評価していたため、研削が不安定に進行していたことが後で判明する場合もあった。しかしながら、研削が安定的でないことを研削の進行中に判定できれば、それ以上研削を続ける必要も、研削後の被加工物1を検査する必要もなくなる。この場合、研削装置2で進行中の研削の研削条件を切り替えることができれば、新たな研削条件を早期に評価することも可能となり、テスト加工で失われる被加工物の数も低減できる。
【0048】
さらに、研削装置2で進行する被加工物1の研削が不安定であることを研削の進行中に判定できることは、テスト加工ではない通常の研削工程における異常の検出にも有用である。スピンドルモータ41の負荷電流値が許容される上限値を超えない場合においても、進行する研削が不安定であることを検知したいとの要望がある。
【0049】
そこで、本実施形態に係る研削装置2では、負荷電流値測定ユニット56で測定されるスピンドルモータ41の負荷電流値を用いて、研削が安定的に進行しているか否かを判定する。以下、判定に寄与する構成を中心に研削装置2をさらに説明する。
【0050】
研削装置2は、制御ユニット60を備える。制御ユニット60は、研削装置2の各構成要素に接続されており、各構成要素を制御する機能を有する。制御ユニット60は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。補助記憶装置に記憶されるソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御ユニット60の機能が実現される。
【0051】
制御ユニット60には、被加工物1を加工するための研削条件が予め入力され登録される。そして、制御ユニット60は、研削条件に従って各構成要素を制御する。研削条件は、被加工物の種別や所望の加工結果に合わせて適宜設定される。そして、制御ユニット60は、各構成要素から送られた情報を参照しつつ各構成要素を制御して被加工物1の研削を所定の手順で進行させる。
【0052】
換言すると、制御ユニット60は、研削条件等が予め入力され登録された記憶部62と、記憶部62に登録された研削条件に従って各構成要素を制御して被加工物1の研削を遂行する研削制御部64と、を備える。
【0053】
また、本実施形態に係る研削装置2の制御ユニット60は、負荷電流値測定ユニット56によって測定された負荷電流値が不安定であるか否かを判定し、被加工物1の研削が安定的に進行しているか否かを判定する機能を有する。換言すると、制御ユニット60は、負荷電流値が不安定であるか否かを判定し、被加工物1の研削が安定的に進行しているか否かを判定する判定部66を含む。
【0054】
例えば、制御ユニット60(判定部66)は、負荷電流値の単位時間あたりの変化量を評価し、これが予め設定された閾値を超える場合に負荷電流値が不安定であると判定する。ここで、被加工物1の研削が進行する際に負荷電流値測定ユニット56で測定される負荷電流値の推移について説明する。
【0055】
図3(A)は、被加工物1の研削が安定的に進行する間に観測される負荷電流値の推移の一例を模式的に示すグラフである。このグラフにおいて、横軸は研削が開始されてからの経過時間を表し、縦軸が負荷電流値測定ユニット56で測定されるスピンドルモータ41の負荷電流値を表す。
【0056】
被加工物1の研削が実施される際には、まず、スピンドルモータ41を作動させてスピンドル44を回転させ、研削砥石54の円環軌道上における回転移動を開始する。その後、研削送りユニット24を作動させて研削ユニット22の下降を開始する。そして、被加工物1の裏面1bに研削砥石54が接触すると、スピンドルモータ41の負荷電流値が上昇し始める。
図3(A)に示すグラフでは、被加工物1に研削砥石54が接触する際の時間がT
0とされ、このときまでの負荷電流値がI
0とされる。
【0057】
研削砥石54が被加工物1に接触して食いつき始めると、十数秒間にわたって負荷電流値が上昇し続ける。そして、研削が安定状態に移行する直前に負荷電流値の上昇が終了し、その後負荷電流値が僅かに低下して研削が安定状態に移行する。その後に研削が安定的に進行する場合、負荷電流値に緩やかな上昇がみられるものの大きな変動が確認されなくなる。
【0058】
図3(A)のグラフで示される負荷電流値は、時間T
1以降が安定期となる。そこで、研削装置2では時間T
1以降に負荷電流値が監視され、制御ユニット60(判定部66)による判定が開始される。例えば、負荷電流値には許容される上限値(I
MAX)が設定される。そして、負荷電流値がこの上限値を超えたとき、制御ユニット60は研削砥石54が正常な状態ではなく被加工物1の研削が不適切に進行していると判定し、被加工物1の研削を停止させる。
【0059】
また、スピンドルモータ41の負荷電流値が許容される上限値(IMAX)を超えない場合においても、制御ユニット60(判定部66)は、負荷電流値が不安定であるか否かを判定する。ここで、負荷電流値が不安定であるか否かは、単位時間あたりの負荷電流値の変動量により評価される。
【0060】
例えば、負荷電流値測定ユニット56は、スピンドルモータ41の負荷電流値を0.1秒毎に測定して測定値を制御ユニット60に送信する。そして、制御ユニット60は、負荷電流値の1秒毎の平均値を時々刻々と算出し記憶部62に記録していき、前後の平均値の差が所定の閾値を超えたときに負荷電流値が不安定であると判定する。
【0061】
より詳細には、被加工物1に研削砥石54が接触したときに負荷電流値が8.0A程度まで上昇し、その後7.5Aで安定化するとき、負荷電流値の許容される上限値(IMAX)は15A程度に設定される。このとき、例えば、毎秒0.1A以上0.3A以下程度の負荷電流値の変動は許容される。その一方で、1秒あたりの負荷電流値の変動量が0.5A以上となるとき、制御ユニット60は負荷電流値が不安定であると判定する。すなわち、負荷電流値の単位時間あたりの変動量に設定される閾値は、例えば、0.5Aである。
【0062】
ここで、閾値は、1秒あたりの負荷電流値の変動量に設定される必要はない。すなわち、数秒間の間に観測されるスピンドルモータ41の負荷電流値の変動量に対しても許容される閾値が設定されてもよい。例えば、5秒あたりの負荷電流値の変動量の閾値として、1.0Aが設定されてもよい。すなわち、毎秒の負荷電流値の変動量が許容範囲に収まる場合においても、負荷電流値が5秒間で1.0Aを超えて変動した場合、制御ユニット60は負荷電流値が不安定であると判定する。
【0063】
図3(B)は、負荷電流値測定ユニット56で測定される負荷電流値が不安定である場合における負荷電流値の推移の一例を模式的に示すグラフである。例えば、時間T
1を過ぎて研削が進行する間に、比較的短い時間(ΔT
1)あたりの負荷電流値の変動量と、比較的長い時間(ΔT
2)あたりの負荷電流値の変動量と、が同時に評価される。そして、それぞれに設定された閾値のいずれかを超える量での負荷電流値の変動が確認されたとき、制御ユニット60は負荷電流値が不安定であると判定するとよい。
【0064】
このように、研削装置2は、スピンドルモータ41の負荷電流値が許容される上限値(IMAX)を超えていなくても、負荷電流値の変動量を評価することで進行する被加工物1の研削が不安定であるか否かを判定できる。そのため、例えば、適切な研削条件を探すためのテスト加工を実施する際に、負荷電流値が不安定であると判定されたときにそのまま研削を続行する必要がなく、他の検証対象となる研削条件に切り替えて研削を実施することもできる。
【0065】
そして、制御ユニット60は、スピンドルモータ41の負荷電流値が不安定であると判定する場合に研削装置2の使用者又は管理者等に所定の方法で判定の結果を伝達してもよい。例えば、
図1に示すように制御ユニット60は表示ユニットを制御する表示制御部68を備え、表示制御部68はタッチパネル付きディスプレイ58に判定の結果を表示させる。すなわち、制御ユニット60は、表示ユニットとして機能するタッチパネル付きディスプレイ58で負荷電流値が不安定であることを示すメッセージを表示してもよい。
【0066】
また、制御ユニット60は、他の方法で判定部66による判定の結果を使用者等に伝達してもよい。例えば、研削装置2が警報音を発生させるスピーカーを有する場合、制御ユニット60は判定の結果を示す警報音をスピーカーに発生させる。また、例えば、研削装置2が警報ランプを有する場合、制御ユニット60は判定の結果を示す光を警報ランプに発生させる。すなわち、本実施形態に係る研削装置2では、判定部66による判定の結果の報知方法は特に限定されない。
【0067】
また、制御ユニット60の表示制御部68は、判定部66による判定の結果のみならず、スピンドルモータ41の負荷電流値に関する情報を表示ユニットとして機能するタッチパネル付きディスプレイ58に表示させてもよい。
【0068】
制御ユニット60は、負荷電流値測定ユニット56によって測定されたスピンドルモータ41の負荷電流値の推移を示すグラフを作成するグラフ変換部72をさらに備えることが好ましい。そして、制御ユニット60の表示制御部68は、グラフ変換部72によって作成された負荷電流値の推移を示すグラフを表示ユニットに表示できるとよい。
【0069】
図3(A)または
図3(B)に示されるグラフは負荷電流値の推移を示すグラフの一例であり、タッチパネル付きディスプレイ58には
図3(A)または
図3(B)に示されたようなグラフが表示されるとよい。この場合、タッチパネル付きディスプレイ58に表示されるグラフには、被加工物1の研削の進行にともなって推移するスピンドルモータ41の負荷電流値が次々に反映されるとよく、ほぼリアルタイムでグラフが更新されることが好ましい。
【0070】
ここで、研削装置2において、被加工物1の適切な研削条件を選定するために様々な条件でテスト加工を実施している場合、判定部66がスピンドルモータ41の負荷電流値が不安定であると判定するとき、研削条件を変えずにそれ以上研削を続ける必要がない。本実施形態に係る研削装置2では、被加工物1の研削が完了し被加工物1を検査するのを待たずに判定部66の判定結果に基づいて当該研削条件に見切りをつけられる。この場合、直ちに別の研削条件にてテスト加工を実施することが望まれる。
【0071】
そこで、本実施形態に係る研削装置2では、制御ユニット60は、ある研削条件にて被加工物1の研削が進行する間に研削条件の変更の指令の入力を受け付け可能とする。例えば、制御ユニット60は、入力ユニットとして機能するタッチパネル付きディスプレイ58を利用して入力された指令を受け付ける入力制御部70を備える。入力制御部70は、研削条件に代表される被加工物1の研削に関する情報の入力を受け付け可能であり、研削ユニット22による被加工物1の研削の進行中に当該情報の入力を受け付けできる。
【0072】
そして、研削装置2の使用者または管理者等は、制御ユニット60の判定部66がスピンドルモータ41の負荷電流値が不安定であると判定する場合に、タッチパネル付きディスプレイ58を利用して被加工物1の研削に関する情報として新しい研削条件を入力する。このとき、制御ユニット60では、入力されたこの情報に基づく新しい研削条件を記憶部62で記録するとともに、この新しい研削条件にて研削制御部64により研削ユニット22等を制御して研削条件を変更しつつ研削を継続する。
【0073】
さらに、変更した研削条件にて被加工物1の研削を進める間に判定部66が再びスピンドルモータ41の負荷電流値が不安定であると判定する場合、直ちにさらに新しい研削条件に切り替えて被加工物1の研削を継続可能である。すなわち、本実施形態に係る研削装置2では、最適な加工条件を探すために被加工物1のテスト加工を実施する場合に、見込みのない加工条件に早期に見切りをつけて次々に検証対象となる加工条件を検証できる。
【0074】
従来、検証対象となる加工条件の数だけ被加工物1を準備しテスト加工が繰り返されていた。これに対して本実施形態に係る研削装置2では、一つの被加工物1で複数の検証対象となる加工条件を評価できるため、テスト加工で消費される被加工物1の数を大幅に低減できる。その上、被加工物1の研削が完了した後に被加工物1を検査することなく、各加工条件の良否を評価できる。したがって、加工結果を評価する時間をも低減できる。
【0075】
最後に、本実施形態に係る研削装置2の動作フローを説明する。
図4(A)は、スピンドルモータ41の負荷電流値が安定であるか否かを判定しつつ被加工物1を研削する研削装置2の動作フローを示すフローチャートである。
【0076】
研削装置2では、まず、チャックテーブル6に被加工物1を載せ、チャックテーブル6で被加工物1を吸引保持する。そして、チャックテーブル6を研削ユニット22の下方に移動させる。次に、スピンドルモータ41を作動させ、研削砥石54を円環軌道上で回転移動させる。このとき、負荷電流値測定ユニット56によりスピンドルモータ41の負荷電流値の測定を開始する。
【0077】
そして、図示しない供給ノズルからの被加工物1または研削砥石54に対する研削液の供給を開始し、研削送りユニット24を作動させて研削ユニット22の下降を開始する(S10)。上方に露出した被加工物1の裏面1bに回転移動する研削砥石54の下面が接触すると、被加工物1の研削が開始される(S20)。
【0078】
このとき、
図3(A)等のグラフで説明したように、研削砥石54が被加工物1に食いつくにつれ負荷電流値測定ユニット56により測定されるスピンドルモータ41の負荷電流値が上昇する。その後、負荷電流値はピークを過ぎて若干低下し、定常状態となる。このとき、負荷電流値測定ユニット56を利用してスピンドルモータ41の負荷電流値の監視を開始する(S30)。
【0079】
そして、研削装置2の制御ユニット60の判定部66は、測定される負荷電流値が不安定であるか否かを判定する(S40)。より詳細には、測定される負荷電流値の単位時間あたりの変動量が所定の閾値を超えていない場合、負荷電流値が不安定ではなく被加工物1の研削が適切に進行していると判定する。この場合、研削装置2は、被加工物1の研削をそのまま継続する。
【0080】
これに対して、制御ユニット60の判定部66は、測定される負荷電流値の単位時間あたりの変動量が所定の閾値を超えている場合、負荷電流値が不安定であると判定する。この場合、制御ユニット60の表示制御部68は、表示ユニットとして機能するタッチパネル付きディスプレイ58に負荷電流値が不安定であることを示すメッセージを表示させる(S50)。なお、この場合においても研削の停止が望まれるとは限らないため、特段の指令が入力されない限り、研削制御部64は研削ユニット22に研削を続行させるとよい。
【0081】
そして、制御ユニット60は、図示しない厚み測定ユニットにより測定される被加工物1の厚みが所定の厚みに到達していないとき、被加工物1の研削を継続させつつ、スピンドルモータ41の負荷電流値の監視を継続する。そして、被加工物1の厚みが所定の厚みに到達したとき、研削送りユニット24による研削ユニット22の下降を終了し、研削砥石54による被加工物1の研削を終了する(S80)。
【0082】
ここで、本実施形態に係る研削装置2では、研削ユニット22の下降を開始し、研削砥石54が被加工物1の裏面1bに接触して被加工物1の研削が開始された後、研削条件の変更が可能である。
図4(B)は、被加工物1の研削の進行中に研削に関する情報が入力され研削条件を変更しつつ被加工物1の研削を継続する研削装置2の動作フローを示すフローチャートである。
【0083】
被加工物1の研削が進行する間にタッチパネル付きディスプレイ58を利用した研削に関する情報の入力があるとき(S90)、制御ユニット60は当該情報を記憶部62に記録するとともに、研削条件を変更して被加工物1の研削を続行する(S60、S100)。また、制御ユニット60は、研削に関する情報の入力がない場合、そのままの研削条件で被加工物1の研削を続行する(S60)。
【0084】
ここで、研削条件には、研削送りユニット24による研削ユニット22の下降速度(研削送り速度)、スピンドルモータ41により回転する研削砥石54の回転速度、及び、チャックテーブル6の回転速度等が主に含まれる。また、研削条件には、研削液の供給量、チャックテーブル6の回転軸の傾き角、及び、スピンドル44の傾き角等が含まれてもよい。ただし、研削条件の項目は、これらに限定されない。
【0085】
そして、制御ユニット60は、被加工物1の厚みが所定の厚みに到達していないとき、情報の入力を受け付けつつ被加工物1の研削を継続させる。その後、被加工物1の厚みが所定の厚みに到達したとき、研削送りユニット24による研削ユニット22の下降を終了し、研削砥石54による被加工物1の研削を終了する(S80)。
【0086】
以上に説明する通り、本実施形態に係る研削装置2の制御ユニット60は、負荷電流値測定ユニット56で測定されたスピンドルモータ41の負荷電流値の単位時間あたりの変動量を算出する。そして、これが予め設定された閾値を超える場合に負荷電流値が不安定であると判定する。
【0087】
そのため、負荷電流値が許容される上限値を超えずに推移する場合においても、負荷電流値が不安定である場合にこれを検出できる。負荷電流値が不安定であると判定される場合、被加工物1の研削が安定的に進行していないこととなるため、これを知った作業者等は研削の続行の要否を判定して、研削条件を変更することもできる。
【0088】
なお、本発明は上記実施形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施形態では、研削装置2が一つの研削ユニット22及びチャックテーブル6を備え、一つの被加工物1を研削する場合について説明した。しかしながら、本実施形態に係る研削装置2はこれに限定されない。
【0089】
すなわち、本発明の一態様に係る研削装置2は、2以上の研削ユニット22及びチャックテーブル6を備えてもよく、同時に2以上の被加工物1を研削してもよい。この場合、各研削ユニット22のスピンドルモータ41に負荷電流値測定ユニット56が接続され、それぞれの負荷電流値が不安定となるか否かが監視される。
【0090】
また、上記実施形態では、スピンドルモータ41の負荷電流値が不安定であるときに研削装置2の使用者等が研削に関する情報を制御ユニット60に入力して研削条件を変更する場合について説明したが、本発明の一態様はこれに限定されない。すなわち、本発明の一態様に係る研削装置2は、スピンドルモータ41の負荷電流値が不安定であると判定されないときでも制御ユニット60が該情報の入力を受け付け可能でもよく、研削条件の変更が可能でもよい。
【0091】
例えば、判定部66により負荷電流値が不安定であると判定されない場合において、タッチパネル付きディスプレイ58に表示されたスピンドルモータ41の負荷電流値の推移を示すグラフを見る作業者等が研削条件の変更を望む場合がある。経験等に基づいて作業者が研削条件の変更の必要性を認識する場合に、本発明の一態様に係る研削装置2は研削条件の変更が可能でもよい。
【0092】
その他、上述した実施形態や変形例等にかかる構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0093】
1 被加工物
1a 表面
1b 裏面
3 保護部材
2 研削装置
4 基台
4a 凹部
4b 防塵防滴カバー
6 チャックテーブル
6a 枠体
6b 多孔質プレート
6c 保持面
6d テーブル基台
8 Y軸移動機構
10 ガイドレール
12 移動テーブル
14 ナット部
16 ボールねじ
18 パルスモータ
20 スピンドル
20a スピンドルハウジング
22 研削ユニット
24 研削送りユニット
26 支持部
28 ガイドレール
30 移動プレート
32 ナット部
34 ボールねじ
36 パルスモータ
38 保持部材
40 スピンドルハウジング
41 スピンドルモータ
42 緩衝部材
44 スピンドル
46 回転軸
48 ホイールマウント
50 研削ホイール
52 ホイール基台
54 研削砥石
56 負荷電流値測定ユニット
58 タッチパネル付きディスプレイ
60 制御ユニット
62 記憶部
64 研削制御部
66 判定部
68 表示制御部
70 入力制御部
72 グラフ変換部