(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023131884
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】ポリアセタール共重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 2/04 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
C08G2/04
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022036888
(22)【出願日】2022-03-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】増田 栄次
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032AA05
4J032AA34
4J032AB06
4J032AC03
4J032AC12
4J032AC13
4J032AC16
4J032AC17
4J032AC32
4J032AC49
4J032AD41
4J032AD44
4J032AD46
4J032AE02
4J032AF08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ポリアセタール共重合体からなる成形品の外観を良好なものとし、製品毎のバラツキも小さい、ポリアセタール共重合体の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、
(A)トリオキサンを主モノマー(a)とし、少なくとも一つの炭素-炭素結合を有する環状ホルマールおよび環状エーテルから選択される少なくとも1種をコモノマー(b)とし、プロトン酸重合開始剤(c)ならびに、場合により分子量調節剤(d1)を添加し、ポリアセタール共重合体を重合機1で重合する工程、
(B)(A)工程で得られたポリアセタール共重合体を重合機から取り出し、沸点が200℃未満の液体状分子量調節剤(d2)を添加し、該ポリアセタール共重合体の分子量を調整する工程、および
(C)分子量を調整する工程に次いで前記重合開始剤(c)を失活する工程、
とをこの順で有するポリアセタール共重合体の製造方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、
(A)トリオキサンを主モノマー(a)とし、少なくとも一つの炭素-炭素結合を有する環状ホルマールおよび環状エーテルから選択される少なくとも1種をコモノマー(b)とし、プロトン酸重合開始剤(c)ならびに、場合により分子量調節剤(d1)を添加し、ポリアセタール共重合体を重合機で重合する工程、
(B)該(A)工程で得られたポリアセタール共重合体を重合機から取り出し、沸点が200℃未満の液体状分子量調節剤(d2)を添加し、該ポリアセタール共重合体の分子量を調整する工程、および
(C)分子量を調整する工程に次いで前記重合開始剤(c)を失活する工程、
とをこの順で有するポリアセタール共重合体の製造方法。
【請求項2】
前記(A)重合する工程で添加する前記分子量調節剤(d1)と、前記(B)で添加する分子量調節剤(d2)との質量比が0:100~80:20である、請求項1に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
【請求項3】
前記分子量調節剤(d1)および(d2)が、線状ホルマール類、アルコール類および水から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面外観に優れる成形品を提供するポリアセタール共重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリアセタール共重合体の製造法として、トリオキサンを主モノマーとし、少なくとも一つの炭素-炭素結合を有する環状エーテル及び環状ホルマールから選択される化合物をコモノマーとするカチオン共重合が知られている。これら共重合に用いるカチオン活性開始剤としては、ルイス酸、プロトン酸など各種のものが知られている。
【0003】
工業的には、重合機の一端から上記の主モノマー、コモノマー、重合開始剤を供給し、他端よりポリアセタール共重合体が粉体として排出される連続重合装置が一般に用いられる。
【0004】
その際、適量の分子量調節剤が主モノマー、コモノマー、重合開始剤とともに供給される。このようにして得られたポリアセタール共重合体は精製後、安定剤・添加剤を配合して商品化される。
【0005】
ポリアセタール共重合体は機械的性質、耐薬品性、摺動性等のバランスに優れ、且つ、その加工が容易であることにより代表的なエンジニアリングプラスチックとして、電気・電子部品、自動車部品その他の各種機械部品を中心として広く利用されている。
【0006】
近年、利用範囲の拡大に伴い、薄肉部品に使用するケースが多く見られている。ポリアセタール共重合体は流動性や成形性に比較的優れるものの、成形品の薄肉部への流動不良に由来する表面荒れやキャビティー端部への充填不良等が発生することもあり、かかる成形品の外観不良はその商品的価値を著しく低下させるため大きな問題となっている。成形金型の設計、成形条件の調整で対応されてきているが、十分なものではなかった。
【0007】
これに対し重合面からの対策として、ポリアセタール共重合体の重合時に分子量調節剤を増量させ、メルトインデックス(以下、メルトフローレート、MFRともいう)を上げる提案がされている。しかし、かかる方法では、機械的特性の低下、特に耐衝撃特性の低下を招くため好ましい結果が得られていない。
【0008】
特開昭50-30949号公報(特許文献1)ではメルトインデックスの異なる二成分のポリアセタール共重合体の混合物を用いることで、射出成形時には流動性が高く成形品表面状態が改善され、高分子量であることから成形品の機械特性が保たれる方法が記載されている。
【0009】
特開平11-12337号公報(特許文献2)では、重合開始後に、分子量調節剤の全部または残りの一部を重合機内の後段での1段階または2段階以上で供給する塊状重合方法が記載されている。成形時の表面流れ性や充填度合いを改善して良外観を得ることと耐衝撃特性を保持することを両立している。
【0010】
しかしながらこれらの方法では大量のポリアセタール共重合体のブレンド工程や重合装置の精密な改良を必要としており、工業的には製品毎のバラツキも存在し実施が容易ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開昭50-30949号公報
【特許文献2】特開平11-12337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、ポリアセタール共重合体からなる成形品の外観を良好なものとし、製品毎のバラツキも小さい、ポリアセタール共重合体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上記課題を達成すべく鋭意検討の結果、ポリアセタール共重合体を重合機で重合する工程についで、該重合工程で得られたポリアセタール共重合体を重合機から取り出し、重合開始剤を失活する前に液体状分子量調節剤を添加し、該ポリアセタール共重合体の分子量を調整する工程を経ることによって、上記目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明は、以下の通りである。
1. 少なくとも、
(A)トリオキサンを主モノマー(a)とし、少なくとも一つの炭素-炭素結合を有する環状ホルマールおよび環状エーテルから選択される少なくとも1種をコモノマー(b)とし、プロトン酸重合開始剤(c)ならびに、場合により分子量調節剤(d1)を添加し、ポリアセタール共重合体を重合機で重合する工程、
(B)該(A)工程で得られたポリアセタール共重合体を重合機から取り出し、沸点が200℃未満の液体状分子量調節剤(d2)を添加し、該ポリアセタール共重合体の分子量を調整する工程、および
(C)分子量を調整する工程に次いで前記重合開始剤(c)を失活する工程、
とをこの順で有するポリアセタール共重合体の製造方法。
2. 前記(A)重合する工程で添加する前記分子量調節剤(d1)と、前記(B)で添加する分子量調節剤(d2)との質量比が0:100~80:20である、前記1に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
3. 前記分子量調節剤(d1)および(d2)が、線状ホルマール類、アルコール類および水から選択される少なくとも1種である、前記1または2に記載のポリアセタール共重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、成形後の良外観性に優れ、製品毎のバラツキも小さいポリアセタール共重合体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の製造方法に使用する重合装置の一例の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0018】
<ポリアセタール共重合体の製造方法で使用される材料>
≪トリオキサン(a)≫
本発明において主モノマーとして用いられるトリオキサンとは、ホルムアルデヒドの環状三量体であり、一般的には酸性触媒の存在下でホルムアルデヒド水溶液を反応させることによって得られ、これを蒸留等の方法で精製して用いられる。
【0019】
ここで主モノマーとは、全モノマー種の中で、最も使用する量の多いモノマーであることを意味し、好ましくは80質量%以上である。
【0020】
≪少なくとも一つの炭素-炭素結合を有する環状ホルマールおよび環状エーテルから選択される少なくとも1種(b)≫
少なくとも一つの炭素-炭素結合を有する環状ホルマールおよび環状エーテルは、ポリアセタール共重合体の製造においてコモノマーとして一般に使用される化合物である。
【0021】
具体的な環状ホルマールとしては、1,3-ジオキソラン、1,3,6-トリオキソカン、1,4-ブタンジオールホルマール、1,3,5-トリオキセパン等が挙げられる。
【0022】
具体的な環状エーテルとしては、エチレンオキシドが挙げられる。
【0023】
本発明において、少なくとも一つの炭素-炭素結合を有する環状ホルマールおよび環状エーテルは、トリオキサン100質量部に対して0.01~20質量部の範囲となるように使用するのが好ましく、さらに好ましくは0.05~5質量部の範囲である。
【0024】
<重合開始剤(c)>
重合開始剤としては、トリオキサンを主モノマーとするカチオン共重合において公知のプロトン酸重合開始剤が使用できる。ルイス酸重合開始剤は一般にコンバージョンが低く重合が完結しないため未反応モノマーが多く、本発明技術では好ましくない。
【0025】
≪プロトン酸≫
プロトン酸としては、ヘテロポリ酸、イソポリ酸、パーフルオロアルカンスルホン酸及びその誘導体等が挙げられる。
【0026】
ヘテロポリ酸とは、異種の酸素酸が脱水縮合して生成するポリ酸をいい、中心に特定の異種元素が存在し、酸素原子を共有して縮合酸基が縮合してできる単核又は複核の錯イオンを有する。イソポリ酸とは、イソ多重酸、同核縮合酸、同種多重酸とも称され、V価又はVI価の単一種類の金属を有する無機酸素酸の縮合体から成る高分子量の無機酸素酸をいう。
【0027】
ヘテロポリ酸の具体例として、リンモリブデン酸、リンタングステン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、リンタングストバナジン酸、ケイタングステン酸、ケイモリブデン酸、ケイモリブドタングステン酸、ケイモリブドタングステントバナジン酸等が挙げられる。特に、重合活性の観点から、ヘテロポリ酸は、ケイモリブデン酸、ケイタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステン酸から選択されることが好ましい。
【0028】
イソポリ酸の具体例として、パラタングステン酸、メタタングステン酸等に例示されるイソポリタングステン酸、パラモリブデン酸、メタモリブデン酸等に例示されるイソポリモリブデン酸、メタポリバナジウム酸、イソポリバナジウム酸等が挙げられる。中でも、重合活性の観点から、イソポリタングステン酸であることが好ましい。
【0029】
パーフルオロアルカンスルホン酸の具体例として、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、ウンデカフルオロペンタンスルホン酸、トリデカフルオロヘキサンスルホン酸、ペンタデカフルオロへプタンスルホン酸、ヘプタデカフルオロオクタンスルホン酸が挙げられる。またその誘導体としてはトリフルオロメタンスルホン酸メチル、トリフルオロメタンスルホン酸無水物のようなエステルや酸無水物が挙げられる。これらの中では、重合活性の観点から、トリフルオロメタンスルホン酸が好ましい。
【0030】
重合開始剤の添加量は特に限定されるものでないが、全モノマーの合計に対して0.1ppm以上50ppm以下であることが好ましく、0.1ppm以上30ppm以下であることがより好ましい。特に好ましくは0.1ppm以上15ppm以下である。
【0031】
<分子量調節剤>
本発明のポリアセタール共重合体の製造においては、上記成分の他に分子量を調整するために分子量調節剤を使用する。分子量調節剤としては、カチオン重合において公知の連鎖移動剤が使用できる。
【0032】
≪(d1)≫
(A)ポリアセタール共重合体を重合機で重合する工程(以下、重合工程または(A)工程ともいう)において添加される分子量調節剤(d1)には、特に制限はなく、カチオン重合での公知の連鎖移動剤1種以上を適宜使用することができる。この工程での分子量調節剤(d1)は、必ずしも必須ではなく、場合により添加しなくとも良い。
【0033】
具体的には、メチラール、エチラール、ジブトキシメタンのような線状ホルマール類、メタノール、エタノール、エチレングリコールのようなアルコール類、水などが例示される。中でも、不安定末端を形成することのない連鎖移動剤、即ち、メチラール、エチラール、ジブトキシメタンが好ましい。(d1)は、全モノマー量に対して、0を超えて1500ppm以下添加させることが好ましい。さらには、300~1200ppmが好ましい。
【0034】
≪(d2)≫
(B)前記(A)工程で得られたポリアセタール共重合体を重合機から取り出し(以下、重合後であって失活工程前のポリアセタール共重合体を粗ポリアセタール共重合体ともいう)、得られた粗ポリアセタール共重合体の分子量を調整する工程(以下、分子量調整工程または(B)工程ともいう)において、使用される分子量調節剤(d2)は、常圧(1気圧)において沸点(bp)200℃未満の液体である。
【0035】
分子量調節剤(d2)は(d1)と同じであっても良いし、異なっていても良く1種以上を使用することができる。具体的には、例えば、メチラール(bp42℃)、エチラール(bp88℃)、ジブトキシメタン(bp180℃)、メタノール(bp65℃)、エタノール(bp78℃)、水(bp100℃)等が挙げられる。沸点が200℃以上であるとポリアセタール共重合体中に残留し臭気や無用な副反応の原因となるので、200℃未満が好ましい。
【0036】
分子量調節剤(d2)は、希釈溶剤で希釈してもよく、希釈溶剤としては沸点以外の制約は無いが、例えば、ベンゼン、トルエン等の芳香族類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル類が挙げられる。希釈後の濃度は適宜選択することができる。
【0037】
分子量調節剤(d2)は、粗ポリアセタール共重合体量に対して、100~2000ppm添加させることが好ましい。分子量調節剤(d1)と(d2)は、0:100~80;20の質量比で添加することが好ましい。さらには、20:80~60:40が好ましい。
【0038】
<失活剤(e)>
本発明の重合開始剤を失活する工程(以下、失活工程または(C)工程ともいう)で使用される失活剤(e)は、特に限定されるものでないが、加熱下で溶融混錬することで、重合開始剤の失活及び粗ポリアセタール重合体の不安定末端の安定化に供することができる点で、アミン化合物、4級アンモニウム基を有する化合物、アミノ基又は置換アミノ基を有するトリアジン環含有化合物、アルカリ金属元素又はアルカリ土類金属元素の炭酸塩、炭酸水素塩若しくはカルボン酸塩又はその水和物から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。二種以上を使用することもできる。
【0039】
アミン化合物として、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミンのような1級アミン化合物、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミンのような2級アミン化合物、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミンのような3級アミン化合物が挙げられる。4級アンモニウム基を有する化合物としては、水酸化コリン等が挙げられる。
【0040】
アミノ基又は置換アミノ基を有するトリアジン環含有化合物としては、メラミン、メチロール化メラミン、メトキシメチルメラミン、ベンゾグアナミン等が挙げられる。
【0041】
アルカリ金属元素又はアルカリ土類金属元素の炭酸塩、炭酸水素塩若しくはカルボン酸塩又はその水和物としては、ギ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム又はステアリン酸カルシウムから選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0042】
添加量は特に制限されるものではないが、粗ポリアセタール共重合体に対し、0.002~5.0質量%であることが好ましい。
【0043】
<ポリアセタール共重合体の製造方法>
本発明のポリアセタール共重合体の製造方法では、少なくとも、(A)トリオキサンを主モノマー(a)とし、少なくとも一つの炭素-炭素結合を有する環状ホルマールおよび環状エーテルから選択される少なくとも1種をコモノマー(b)とし、プロトン酸重合開始剤(c)ならびに、場合により分子量調節剤(d1)を添加し、ポリアセタール共重合体を重合機で重合する工程、(B)該(A)工程で得られたポリアセタール共重合体を重合機から取り出し、沸点が200℃未満の液体状分子量調節剤(d2)を添加し、該ポリアセタール共重合体の分子量を調整する工程、および(C)分子量を調整する工程に次いで前記重合開始剤(c)を失活する工程、とをこの順で有することを特徴とする。
【0044】
≪(A)工程≫
(A)工程は、従来から公知のトリオキサンの共重合と同様の設備と方法で行うことができる。すなわち、バッチ式、連続式、半連続式の何れも可能であり、液体モノマーを用い、重合の進行とともに固体粉塊状のポリマーを得る方法が一般的である。本発明では、連続式であることが好ましい。
【0045】
本発明に用いられる重合装置としては、バッチ式では一般に用いられる撹拌機付きの反応槽が使用でき、又、連続式としては、コニーダー、2軸スクリュー式連続押出混合機、2軸パドルタイプの連続混合機、その他、これまでに提案されているトリオキサン等の連続重合装置が使用可能であり、また2種以上のタイプの重合機を組み合わせて使用することもできる。
【0046】
〔粉砕工程〕
(B)工程に入る前に、粉砕工程を設けても良い。粉砕工程では、乾式粉砕機を用いて重合機から取り出した粗ポリアセタール共重合体を粉砕する。粉砕工程では、取り出した粗ポリアセタール共重合体を一定の粒径とすることが好ましく、例えば、目開きが11.2mmである篩いを用いて篩分したときの篩下の割合が90重量部以上であることが好ましい。粉砕機としては、一般的な乾式粉砕機を使用でき、具体的には、ジェット式、ハンマー式、ボール式、ロール式、ロッド式、フェザー式などがある。
【0047】
≪(B)工程≫
(B)工程は、重合機から取り出した粉体状の粗ポリアセタール共重合体に、沸点200℃未満の液体状分子量調節剤(d2)を作用させる工程である。粗ポリアセタール重合体に液体ポンプを用いて滴下あるいは霧状噴霧を行う、もしくは滴下あるいは液状噴霧した後で撹拌混合機能を持ったミキサーで均一化処理を行う等の方法がある。(d2)量が少量の場合は沸点が200℃未満の溶剤で希釈してもよい。
【0048】
この工程においては、(A)工程で得られた粗ポリアセタール共重合体粒子の表面では(d2)と接触することで分子量調節剤との反応が進み分子量の低下が起こる一方で、(d2)と接触せず反応が起こらない粒子内部では分子量の低下は起こらない。また、粒子径には大小の分布があるので、小粒子は分子量が下がりやすく大粒子は分子量が下がりにくい。その結果、(B)工程後の粗ポリアセタール重合体は、(A)工程で得られた粗ポリアセタール重合体とは異なる分子量分布を持つことになる。
【0049】
≪(C)工程≫
(B)工程で得られた分子量を調整後の粗ポリアセタール共重合体に失活剤(e)を添加し、溶融混練処理して不揮発性の重合開始剤であるプロトン酸を失活させる工程である。この工程は、従来から公知の方法で行うことができる。溶融混練処理装置についても特に限定されないが、溶融した共重合体を混練する機能を有し、好ましくはベント機能を有するものであり、例えば、少なくとも1つのベント孔を有する単軸又は多軸の連続押出し混練機、コニーダー等が挙げられる。溶融混練処理は、共重合体の融点以上260℃までの温度範囲が好ましい。
【0050】
本発明において、上記の溶融混練処理は酸化防止剤AOの存在下で行うことが好ましい。酸化防止剤としては、従来のポリアセタール樹脂の安定剤として公知の物質、例えば各種のヒンダードフェノール系酸化防止剤等が用いられる。AOは、粗ポリアセタール共重合体の0.05~0.5質量%添加することが好ましい。
【0051】
さらに、この段階で必要に応じ、各種のポリアセタール樹脂の安定剤として公知の物質を添加しても何ら差し支えない。さらに、例えばガラス繊維の如き無機充填剤、結晶化促進剤(核剤)、離型剤、抗酸化剤等を添加してもよい。
【0052】
上記のように、(B)工程での分子量調整を施した粗ポリアセタール共重合体に失活剤(e)を添加し、溶融混練処理した後、通常、分解して生じたホルムアルデヒドガス、未反応モノマー、オリゴマー、分子量調節剤等が押出機のベント部より減圧下で除去され、ペレット等に成形されて樹脂加工用の製品となる。ペレットは必要に応じて乾燥される。乾燥する場合、例えば、135℃、4時間程度乾燥させる。
【実施例0053】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
下記のような重合工程により、実施例および比較例のポリアセタール共重合体を作製した。使用した材料および量は、表1に記載の通りである。表1、2に記載の、材料を示す略号は、下記の化合物を意味する。
【0055】
≪主モノマー≫
トリオキサン:TO
≪コモノマー≫
1,3-ジオキソラン:DO
ブタンジオールホルマール:BDF
≪重合開始剤≫
リンモリブデン酸:PMA
リンタングステン酸:PWA
トリフルオロメタンスルホン酸:TFMSA
三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体:BF3/OEt2
≪分子量調節剤≫
メチラール:DMM
エチラール:DEM
ジブトキシメタン:DBM
メタノール:ME
酢酸:AA
水:H2O
PD:1.5-ペンタンジオール bp242℃
≪希釈溶剤≫
トルエン:TOL
【0056】
<製造工程>
≪(A)ポリアセタール共重合体の重合工程≫
重合機は連続二軸パドルスクリュー押出機型を用いた。胴体外側に加熱用又は冷却用の媒体を通すためのジャケットを持っている。胴体は上下分割構造であり上部開放が可能な構造となっている。重合機の内部には撹拌、推進用の多数のバドルを付した2本の回転軸が長手方向に設けられている。
【0057】
ジャケットには80℃の媒体を通じて温調し、主モノマー(a)と、コモノマー(b)と分子量調節剤(d1)とを、それぞれ表1に示す質量部で含有する混合液を、連続的に供給しこれに重合開始剤(c)(対全モノマー、単位:質量ppm)を添加した。重合開始剤であるリンタングステン酸(PWA)とリンモリブデン酸(PMA)は、ギ酸メチル溶液で、トリフルオロメタンスルホン酸(TFMSA)はシクロヘキサン溶液にして添加した。重合反応が定常状態となったことを、反応装置各部位の温度および吐出量の定常化によって確認した。
【0058】
≪(B)分子量調整工程≫
重合機より吐出された粗ポリアセタール共重合体に分子量調節剤(d2)を液体ポンプで添加し、撹拌混合機能を持ったミキサー(
図1の2:撹拌混合装置)に投入し、粗ポリアセタール共重合体と混合して反応させた。
【0059】
≪(C)失活工程≫
(B)工程で分子量を調整した粗ポリアセタール共重合体に対して、失活剤(e)としてメラミン0.1質量%および酸化防止剤AOとしてトリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕0.3質量%を添加し、連続的にベント付き2軸押出機を用いて温度220℃、ベント部の真空度5mmHgで溶融混練して押し出し、実施例および比較例に係るポリアセタール共重合体樹脂のペレットを調製した。
【0060】
<評価>
実施例及び比較例に係るポリアセタール共重合体のペレットを135℃、4時間の条件で乾燥した後、下記成形品の外観評価を行った。結果を表1および2に示す。
【0061】
[成形品外観評価]
射出成型機日鋼J75SS2A(Φ35)を用いてΦ1.5mmのセンター1点ピンゲートの50mm角3mmt平板を以下の条件で射出成形した。その後、成形品のゲート付近のフローマークの大きさを測定し、外観の評価を目視で行った。製品として良品以上のレベルをA、良品より劣るが使用可能なレベルをB、使用不可のレベルをCとした。
【0062】
成形条件:シリンダー温度:ノズル-C1 -C2 -C3
200-200-170-150℃
金型温度:90℃
保圧:750kg/cm2
射出時間 4.5秒
射出条件:計量:25-20-8mm
速度:25-2.5mm/sec
【0063】
【0064】
【0065】
表1、2の評価結果から、本発明の技術範囲において、成形品外観に優れていることがわかる。