(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132173
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】石炭灰処理システムおよびコンクリート用フライアッシュの製造方法
(51)【国際特許分類】
B09B 5/00 20060101AFI20230914BHJP
B09B 3/30 20220101ALI20230914BHJP
B03C 7/08 20060101ALI20230914BHJP
C04B 18/08 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
B09B5/00 N
B09B3/00 Z
B03C7/08
C04B18/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037346
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】吉田 友香
(72)【発明者】
【氏名】山下 牧生
(72)【発明者】
【氏名】門田 浩史
【テーマコード(参考)】
4D004
4D054
【Fターム(参考)】
4D004AA37
4D004AB10
4D004BA02
4D004CA08
4D004CA09
4D004CB45
4D004DA01
4D004DA17
4D054GA01
4D054GA09
4D054GB03
(57)【要約】
【課題】未燃カーボン含有量が低く、かつ活性度指数が高い石炭灰を効率よく得ることができる石炭灰処理システムおよびコンクリート用フライアッシュの製造方法を提供する。
【解決手段】未燃カーボンを含有する石炭灰の未燃カーボン含有量を低減させて、改質石炭灰を得る改質装置と、前記改質石炭灰の一部を採取するサンプリング装置と、前記サンプリング装置で採取された前記改質石炭灰の面積平均粒子径および所定の粒径のふるい残分からなる群より選択される少なくとも1つの物性値を測定する物性測定装置と、前記物性値に基づいて前記改質石炭灰を振り分ける振分装置と、を含む石炭灰処理システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未燃カーボンを含有する石炭灰の未燃カーボン含有量を低減させて、改質石炭灰を得る改質装置と、
前記改質石炭灰の一部を採取するサンプリング装置と、
前記サンプリング装置で採取された前記改質石炭灰の面積平均粒子径および所定の粒径のふるい残分からなる群より選択される少なくとも1つの物性値を測定する物性測定装置と、
前記物性値に基づいて前記改質石炭灰を振り分ける振分装置と、を含む石炭灰処理システム。
【請求項2】
前記ふるい残分の粒径が、3μm以上15μm以下の範囲内にある請求項1に記載の石炭灰処理システム。
【請求項3】
前記改質装置がベルト式静電分離装置である請求項1または2に記載の石炭灰処理システム。
【請求項4】
前記物性測定装置がレーザー回折式粒度分布測定装置である請求項1から3のいずれか1項に記載の石炭灰処理システム。
【請求項5】
未燃カーボンを含有する石炭灰の未燃カーボン含有量を低減させて、改質石炭灰を得る改質工程と、
前記改質石炭灰の一部を採取するサンプリング工程と、
前記サンプリング工程で採取された前記改質石炭灰の面積平均粒子径および所定の粒径のふるい残分からなる群より選択される少なくとも1つの物性値を測定する物性測定工程と、
前記物性値に基づいて前記改質石炭灰の材齢28日の活性度指数を予測する予測工程と、
前記改質石炭灰のうちの前記予測工程で前記活性度指数が80%以上の任意の値と予測された改質石炭灰を回収する回収工程と、を含むコンクリート用フライアッシュの製造方法。
【請求項6】
前記サンプリング工程、前記物性測定工程、前記予測工程、前記回収工程の各工程を、前記改質工程で得られた前記改質石炭灰を連続的に搬送しながら行う請求項5に記載のコンクリート用フライアッシュの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭灰処理システムおよびコンクリート用フライアッシュの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭灰(フライアッシュ)は、石炭火力発電所の発電ボイラーで微粉炭を燃焼させた際に、高温のガス中で溶融した燃え殻が凝集することによって生成した微粒子である。石炭灰は、SiO2やAl2O3を主成分とするポゾラン物質であり、コンクリートに使用することで長期強度の増進、ワーカビリティの向上、アルカリシリカ反応の抑制等の優れた特性を示すことが知られている。しかしながら、石炭灰は、未燃カーボンを含む。未燃カーボン含有量が多い石炭灰をコンクリートに使用すると、黒斑の発生やAE剤の吸着による空気量減少などのコンクリートの品質に悪影響を及ぼすことがある。このため、石炭灰から未燃カーボン含有量を低減させることが行われている。石炭灰の未燃カーボン含有量を低減させる方法としては、ベルト式静電分離法、加熱処理法、浮遊選別法などが検討されている(特許文献1~3)。また、加熱処理によって未燃カーボン含有量を低減させた改質石炭灰に対して、分級や粉砕処理を施すことによって、改質石炭灰の活性度指数を向上させることも検討されている(特許文献2)。
【0003】
また、石炭灰の活性度指数は、石炭火力発電所で使用する石炭の種類などの要因によって変動することがある。このため、石炭灰の活性度指数を予測して、活性度指数の高い石炭灰を選択して、コンクリートに使用することが検討されている(特許文献4~5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2013-538124号公報
【特許文献2】特開2019-107620号公報
【特許文献3】特開2010-23018号公報
【特許文献4】特開2019-168433号公報
【特許文献5】特開2017-142140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンクリートに使用する石炭灰は、未燃カーボン含有量が低く、かつ活性度指数が高いことが望ましい。しかしながら、石炭灰の未燃カーボン含有量を低減させることによっては、石炭灰の活性度指数を格段に向上させることは難しい。また、未燃カーボン含有量を低減させた改質石炭灰に対して、分級や粉砕処理を施すことによって、改質石炭灰の活性度指数を向上させることは作業が煩雑となる。さらに、ブレーン比表面積により石炭灰の活性度指数を予測することは、ブレーン比表面積の測定に時間を要し、工程に直ちに反映することが難しいため、石炭灰の未燃カーボン含有量を定常的に低減させることは難しい。
【0006】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、未燃カーボン含有量が低く、かつ活性度指数が高い石炭灰を効率よく得ることができる石炭灰処理システムおよびコンクリート用フライアッシュの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の石炭灰処理システムは、未燃カーボンを含有する石炭灰の未燃カーボン含有量を低減させて、改質石炭灰を得る改質装置と、前記改質石炭灰の一部を採取するサンプリング装置と、前記サンプリング装置で採取された前記改質石炭灰の面積平均粒子径および所定の粒径のふるい残分からなる群より選択される少なくとも1つの物性値を測定する物性測定装置と、前記物性値に基づいて前記改質石炭灰を振り分ける振分装置と、を含む。
【0008】
以上のような構成とされた本発明の石炭灰処理システムは、未燃カーボンを含有する原料石炭灰の未燃カーボン含有量を低減させて、改質石炭灰を得る石炭灰改質装置を含むので、未燃カーボン含有量が低い石炭灰を得ることができる。また、本発明の石炭灰処理システムは、石炭灰改質装置で得られた改質石炭灰の一部を採取するサンプリング装置と、サンプリング装置で採取された改質石炭灰の面積平均粒子径および所定の粒径のふるい残分からなる群より選択される少なくとも1つの物性値を測定する物性測定装置と、その物性値に基づいて改質石炭灰を振り分ける改質石炭灰振分装置とを含むので、活性度指数が高い石炭灰を得ることができる。よって、本発明の石炭灰処理システムによれば、未燃カーボン含有量が低く、かつ活性度指数が高い石炭灰を効率よく得ることが可能となる。
【0009】
ここで、本発明の石炭灰処理システムにおいては、前記ふるい残分の粒径が、3μm以上15μm以下の範囲内にある構成とされていてもよい。
この場合は、ふるい残分の粒径が、3μm以上15μm以下の範囲内にあるので、活性度指数が高い石炭灰をより精度よく得ることができる。
【0010】
また、本発明の石炭灰処理システムにおいては、石炭灰改質装置がベルト式静電分離装置である構成とされていてもよい。
この場合は、石炭灰を加熱することなく室温で、かつ連続的に原料石炭灰を改質できるので、未燃カーボン含有量が低く、エネルギー負荷も小さくかつ活性度指数が高い石炭灰をより効率よく得ることができる。
【0011】
また、本発明の石炭灰処理システムにおいては、物性測定装置がレーザー回折式粒度分布測定装置である構成とされていてもよい。
この場合、改質石炭灰の物性値を乾式で連続的に測定することができるので、未燃カーボン含有量が低く、かつ活性度指数が高い石炭灰をさらに効率よく得ることができる。
【0012】
本発明のコンクリート用フライアッシュの製造方法は、未燃カーボンを含有する石炭灰の未燃カーボン含有量を低減させて、改質石炭灰を得る改質工程と、前記改質石炭灰の一部を採取するサンプリング工程と、前記サンプリング工程で採取された前記改質石炭灰の面積平均粒子径および所定の粒径のふるい残分からなる群より選択される少なくとも1つの物性値を測定する物性測定工程と、前記物性値に基づいて前記改質石炭灰の材齢28日の活性度指数を予測する予測工程と、前記改質石炭灰のうちの前記予測工程で前記活性度指数が80%以上の任意の値と予測された改質石炭灰を回収する回収工程と、を含む。
【0013】
本発明のコンクリート用フライアッシュの製造方法は、未燃カーボンを含有する石炭灰の未燃カーボン含有量を低減させて、改質石炭灰を得る改質工程を含むので、未燃カーボン含有量が低い石炭灰を得ることができる。また、本発明のコンクリート用フライアッシュの製造方法は、改質工程で得られた改質石炭灰の一部を採取するサンプリング工程と、サンプリング工程で採取された改質石炭灰の面積平均粒子径および所定の粒径のふるい残分からなる群より選択される少なくとも1つの物性値を測定する物性測定工程と、前記物性値に基づいて前記改質石炭灰の材齢28日の活性度指数を予測する予測工程と、前記改質石炭灰のうちの前記予測工程で前記活性度指数が80%以上と予測された改質石炭灰を回収する回収工程とを含むので、活性度指数が高い石炭灰を得ることができる。よって、本発明のコンクリート用フライアッシュの製造方法によれば、未燃カーボン含有量が低く、かつ活性度指数が高い石炭灰を効率よく得ることが可能となる。
【0014】
ここで、本発明のコンクリート用フライアッシュの製造方法においては、前記サンプリング工程、前記物性測定工程、前記予測工程、前記回収工程の各工程を、前記改質工程で得られた前記改質石炭灰を連続的に搬送しながら行う構成とされていてもよい。
この場合、前記改質工程で得られた改質石炭灰を一時的に貯留するための設備が不要となるので、コンクリート用フライアッシュをより効率よく製造することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、未燃カーボン含有量が低く、かつ活性度指数が高い石炭灰を効率よく得ることができる石炭灰処理システムおよびコンクリート用フライアッシュの製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る石炭灰処理システムを示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るコンクリート用フライアッシュの製造方法を示すフロー図である。
【
図3】実施例で得られた改質石炭灰の5μmふるい残分と活性度指数の相関図である。
【
図4】実施例で得られた改質石炭灰の10μmふるい残分と活性度指数の相関図である。
【
図5】実施例で得られた改質石炭灰の面積平均粒子径MAと活性度指数の相関図である。
【
図6】実施例で得られた改質石炭灰のブレーン比表面積と活性度指数の相関図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態について添付した図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る石炭灰処理システムを示すブロック図である。
図1に示すように、石炭灰処理システム10は、原料石炭灰貯蔵設備11、石炭灰供給装置12、石炭灰改質装置13、サンプリング装置14、物性測定装置15、計算装置16、制御装置17、改質石炭灰振分装置18、高活性改質石炭灰貯留装置19を含む。
【0018】
原料石炭灰貯蔵設備11は、石炭灰を処理する前の原料石炭灰を一時的に貯蔵する設備である。原料石炭灰は、例えば、石炭火力発電所の発電ボイラーなどで生成した石炭灰である。
【0019】
石炭灰供給装置12は、原料石炭灰貯蔵設備11に貯蔵された原料石炭灰を石炭灰改質装置13に供給する装置である。石炭灰供給装置12は、例えば、ベルトコンベア、エアスライダー、ロータリーバルブ等を組み合わせたものである。
【0020】
石炭灰改質装置13は、未燃カーボンを多量に含む未燃カーボン多量含有石炭灰を除去することによって、原料石炭灰の未燃カーボン含有量を低減させて、改質石炭灰を得る装置である。石炭灰改質装置13 としては、例えば、ベルト式静電分離装置、加熱装置を用いることができる。ベルト式静電分離装置は、平行に配置された一対の電極と、その一対の電極(正極、負極)間に配置された網目状ベルトとを有する。ベルト式静電分離装置では、回転している網目状ベルトに原料石炭灰を供給して、原料石炭灰同士を衝突あるいは接触させることによって、未燃カーボンを正に帯電させ、石炭灰(ポゾラン物質)を負に帯電させる。そして、正に帯電した未燃カーボンを負極側に、負に帯電した石炭灰を正極側にそれぞれ移動させることによって、未燃カーボンと石炭灰とを分離する。加熱装置は、原料石炭灰は加熱によって未燃カーボンを揮発除去する装置である。ベルト式静電分離装置は、室温で、熱エネルギーが不要であり、かつ連続的に原料石炭灰を改質できる点で好ましい。
【0021】
サンプリング装置14は、石炭灰改質装置13で得られた改質石炭灰の一部を採取する装置である。改質石炭灰の一部とは、物性測定装置15で改質石炭灰の物性を測定するのに必要な量である。改質石炭灰の残部は、石炭灰改質装置13から改質石炭灰振分装置18に送られる。サンプリング装置14は、改質石炭灰を石炭灰改質装置13から改質石炭灰振分装置18に改質石炭灰を搬送するためのラインから一部を測定試料としてサンプリングできる位置に配置されていてもよい。
【0022】
物性測定装置15は、サンプリング装置14で採取された改質石炭灰の物性を測定する装置である。測定する改質石炭灰の物性は、面積平均粒子径および所定の粒径のふるい残分である。ふるい残分の粒径は、3μm以上15μm以下の範囲内にあることが好ましく、5μm±2μmの範囲内あるいは10μm±2μmの範囲内にあることが好ましい。物性測定装置15としては、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いることができる。物性の測定は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用い、乾式で連続的に測定することが好ましい。乾式で測定することによって、改質石炭灰の物性を連続的に測定することができる。
【0023】
計算装置16は、物性測定装置15で測定された物性値に基づいて、改質石炭灰の材齢28日の活性度指数の予測値を算出する装置である。計算装置16としては、例えば、予め測定された改質石炭灰の物性値と材齢28日の活性度指数との相関関係式を記憶する記憶部と、記憶部に記憶された相関関係式に物性測定装置15で測定された物性値を代入することにより、改質石炭灰の材齢28日の活性度指数の予測値を算出する算出部とを有する装置を用いることができる。計算装置16の例としては、パーソナルコンピュータ、スマートフォンを挙げることができる。なお、計算装置16と物性測定装置15とは、有線で接続されていてもよいし、無線で接続されていてもよい。
【0024】
制御装置17は、計算装置16で予測された活性度指数の予測値が予め設定された設定値であるか否かを判定する装置である。そして、その判定結果に基づいて、改質石炭灰振分装置18に対して制御信号を送信する。例えば、制御装置17は、計算装置16で予測された改質石炭灰の活性度指数の予測値が80%以上である場合、その改質石炭灰を高活性改質石炭灰として回収し、改質石炭灰の活性度指数の予測値が80%未満である場合、その改質石炭灰を低活性改質石炭灰として回収するように制御信号を送信する。なお、制御装置17と計算装置16とは、有線で接続されていてもよいし、無線で接続されていてもよい。また、制御装置17と改質石炭灰振分装置18とは、有線で接続されていてもよいし、無線で接続されていてもよい。
【0025】
改質石炭灰振分装置18は、制御装置17から送信された制御信号に基づいて、石炭灰改質装置13から搬送された改質石炭灰を高活性改質石炭灰と低活性改質石炭灰とを振り分ける装置である。高活性改質石炭灰は、例えば、コンクリート用フライアッシュとして利用することができる。低活性改質石炭灰は、例えば、セメント原料として利用することができる。
【0026】
高活性改質石炭灰貯留装置19は、改質石炭灰振分装置18で振り分けられた高活性改質石炭灰を貯留する装置である。
【0027】
本実施形態の石炭灰処理システム10において、サンプリング装置14で改質石炭灰を採取してから制御装置17が制御信号を改質石炭灰振分装置18に送信するまでに要する時間は、石炭灰改質装置13にて得られた改質石炭灰が改質石炭灰振分装置18に搬送されるまでの時間内にあることが好ましい。この場合、石炭灰改質装置13と改質石炭灰が改質石炭灰振分装置18との間に、改質石炭灰を一時的に貯留するための設備を設ける必要がなく、石炭灰を連続的に処理することができる。
【0028】
次に、本発明の一実施形態に係るコンクリート用フライアッシュの製造方法について説明する。
図2は、本発明の一実施形態に係るコンクリート用フライアッシュの製造方法を示すフロー図である。
図2に示すように、本実施形態のコンクリート用フライアッシュの製造方法は、原料石炭灰からコンクリート用フライアッシュを製造する方法である。コンクリート用フライアッシュの製造方法は、改質工程S01、サンプリング工程S02、物性測定工程S03、予測工程S04、判断工程S05、回収工程S06を含む。
【0029】
改質工程S01は、原料石炭灰の未燃カーボン含有量を低減させて、改質石炭灰を得る工程である。改質工程S01は、上述の石炭灰改質装置13を用いて実施することができる。
【0030】
サンプリング工程S02は、改質工程S01で得られた改質石炭灰の一部を採取する工程である。サンプリング工程S02は、上述のサンプリング装置14を用いて実施することができる。改質工程S01で得られた改質石炭灰の残部は、回収工程S06に搬送される。
【0031】
物性測定工程S03は、サンプリング工程S02で採取された改質石炭灰の物性を測定する工程である。物性測定工程S03は、上述の物性測定装置15を用いて実施することができる。
【0032】
予測工程S04は、物性測定工程S03で測定された物性値に基づいて、改質石炭灰の材齢28日の活性度指数の予測値を算出する工程である。予測工程S04は、上述の計算装置16を用いて実施することができる。
【0033】
判断工程S05は、予測工程S04で予測された活性度指数の予測値が予め設定された設定値であるか否かを判定する工程である。判断工程S05は、上述の制御装置17を用いて実施することができる。本実施形態では、改質石炭灰の活性度指数の予測値が80%以上であるか否かを判断する。
【0034】
回収工程S06は、判断工程S05で活性度指数の予測値が80%以上であると判断された改質石炭灰をコンクリート用フライアッシュとして回収する工程である。回収工程S06は、上述の改質石炭灰振分装置18を用いて実施することができる。判断工程S05で活性度指数の予測値が80%未満であると判断された改質石炭灰は、例えば、前記コンクリート用フライアッシュとは別に回収して、セメント原料として利用することができる。
【0035】
本実施形態のコンクリート用フライアッシュの製造方法においては、サンプリング工程S02、物性測定工程S03、予測工程S04、回収工程S06の各工程を、改質工程S01で得られた改質石炭灰を連続的に搬送しながら行うことが好ましい。すなわち、サンプリング工程S02、物性測定工程S03、予測工程S04、判断工程S05に要する時間は、改質工程S01で得られた改質石炭灰が回収工程S06に搬送されるまでに要する時間内にあることが好ましい。改質工程S01で得られた改質石炭灰を一時的に貯留するための設備が不要となるので、コンクリート用フライアッシュをより効率よく製造することができる。
【0036】
以上のような構成とされた本実施形態の石炭灰処理システム10は、未燃カーボンを含有する原料石炭灰の未燃カーボン含有量を低減させて、改質石炭灰を得る石炭灰改質装置13を含むので、未燃カーボン含有量が低い石炭灰を得ることができる。また、本実施形態の石炭灰処理システム10は、石炭灰改質装置13で得られた改質石炭灰の一部を採取するサンプリング装置14と、サンプリング装置14で採取された改質石炭灰の面積平均粒子径および所定の粒径のふるい残分からなる群より選択される少なくとも1つの物性値を測定する物性測定装置15と、その物性値に基づいて改質石炭灰を振り分ける改質石炭灰振分装置18とを含むので、活性度指数が高い石炭灰を得ることができる。よって、本実施形態の石炭灰処理システム10によれば、未燃カーボン含有量が低く、かつ活性度指数が高い石炭灰を効率よく得ることができる。
【0037】
本実施形態の石炭灰処理システム10において、ふるい残分の粒径が、3μm以上15μm以下の範囲内にある場合は、活性度指数が高い石炭灰をより精度よく得ることができる。
また、本実施形態の石炭灰処理システム10において、石炭灰改質装置13がベルト式静電分離装置である場合は、石炭灰を室温で、かつ連続的に原料石炭灰を改質できるので、未燃カーボン含有量が低く、かつ活性度指数が高い石炭灰をより効率よく得ることができる。
また、物性測定装置15がレーザー回折式粒度分布測定装置である場合は、改質石炭灰の物性値を乾式で連続的に測定することができるので、未燃カーボン含有量が低く、かつ活性度指数が高い石炭灰をさらに効率よく得ることができる。
【0038】
本実施形態のコンクリート用フライアッシュの製造方法は、未燃カーボンを含有する石炭灰の未燃カーボン含有量を低減させて、改質石炭灰を得る改質工程S01を含むので、未燃カーボン含有量が低い石炭灰を得ることができる。また、本実施形態のコンクリート用フライアッシュの製造方法は、改質工程S01で得られた改質石炭灰の一部を採取するサンプリング工程S02と、サンプリング工程S02で採取された改質石炭灰の面積平均粒子径および所定の粒径のふるい残分からなる群より選択される少なくとも1つの物性値を測定する物性測定工程S03と、前記物性値に基づいて前記改質石炭灰の材齢28日の活性度指数を予測する予測工程S04と、前記改質石炭灰のうちの予測工程S04で前記活性度指数が80%以上と予測された改質石炭灰を回収する回収工程S06とを含むので、活性度指数が高い石炭灰を得ることができる。よって、本実施形態のコンクリート用フライアッシュの製造方法によれば、未燃カーボン含有量が低く、かつ活性度指数が高い石炭灰を効率よく得ることができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態の石炭灰処理システム10では、計算装置16を用いて、物性測定装置15で測定された物性値に基づいて、改質石炭灰の材齢28日の活性度指数の予測値を算出しているが、これに限定されるものではない。物性測定装置15で測定された改質石炭灰の面積平均粒子径や所定の粒径のふるい残分などの物性値に基づいて改質石炭灰を振り分けるようにしてもよい。
【実施例0040】
20種の石炭灰を用意した。用意した石炭灰のそれぞれを、ベルト式静電分離装置を用いて正に帯電した粒子と負に帯電した粒子とに分離し、負に帯電した粒子を改質石炭灰として回収した。回収した改質石炭灰について、レーザー回折式粒度分布測定装置(インシテック乾式、Malvern Instruments社)を用いて、乾式にて粒度分布を測定し、体積平均径MV、個数平均径MN、面積平均径MA、計算比表面積CS、95μmふるい残分、45μmふるい残分、20μmふるい残分、5μmふるい残分を求めた。また、改質石炭灰のブレーン比表面積、網ふるい方法による45μmふるい残分、活性度指数(材齢28日)を測定した。ブレーン比表面積は、JIS R 5201:2015(セメントの物理試験方法)で規定された方法に準拠して測定した。網ふるい方法による45μmふるい残分は、JIS A 6201:2015(コンクリート用フライアッシュ)の附属書Bで規定された方法に準拠して測定した。活性度指数は、JIS A 6201:2015の附属書Cで規定された方法に準拠して測定した。その結果を表1に示す。
【0041】
【0042】
ブレーン比表面積、網ふるい方法による45μmふるい残分およびレーザー回折式粒度分布測定装置で測定された各物性値について、活性度指数(材齢:28日)との相関係数を算出した。その結果、活性度指数に対して決定係数が0.88以上と高い相関性を示したのは、5μmふるい残分、10μmふるい残分、面積平均粒子径MA、ブレーン比表面積であった。
図3に5μmふるい残分と活性度指数の相関図を、
図4に10μmふるい残分と活性度指数の相関図を、
図5に面積平均粒子径MAと活性度指数の相関図を、
図6にブレーン比表面積と活性度指数の相関図を示す。
【0043】
図3~
図6の結果から、5μmふるい残分、10μmふるい残分、面積平均粒子径MA、ブレーン比表面積を用いることによって、改質石炭灰の活性度指数(材齢:28日)を精度よく予測できることが確認された。ただし、ブレーン比表面積は連続的に測定することは困難である。一方、5μmふるい残分、10μmふるい残分、面積平均粒子径MAは、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いることによって連続的に測定することができる。よって、改質装置を用いて連続的に改質された改質石炭灰に対して、連続的に活性度指数を予測することができる。