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特開2023-132271汗腺細胞および汗腺組織の老化を評価する方法、並びに、被験試料の汗腺細胞および汗腺組織に対する老化調整効果を評価する方法
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  • 特開-汗腺細胞および汗腺組織の老化を評価する方法、並びに、被験試料の汗腺細胞および汗腺組織に対する老化調整効果を評価する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132271
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】汗腺細胞および汗腺組織の老化を評価する方法、並びに、被験試料の汗腺細胞および汗腺組織に対する老化調整効果を評価する方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/02 20060101AFI20230914BHJP
   C12Q 1/6851 20180101ALI20230914BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230914BHJP
   C12N 15/57 20060101ALI20230914BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20230914BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20230914BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230914BHJP
   G01N 33/573 20060101ALI20230914BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20230914BHJP
   C12N 15/24 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
C12Q1/02
C12Q1/6851 Z
C12N15/12
C12N15/57
G01N33/50 P
G01N33/68
G01N33/53 D
G01N33/53 P
G01N33/573 A
G01N33/53 M
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
C12N15/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022037496
(22)【出願日】2022-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】390011442
【氏名又は名称】株式会社マンダム
(71)【出願人】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】関口 清俊
(72)【発明者】
【氏名】早川 智久
(72)【発明者】
【氏名】藤田 郁尚
(72)【発明者】
【氏名】岡田 文裕
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CB01
2G045DA14
2G045DA36
4B063QA20
4B063QQ08
4B063QQ28
4B063QQ53
4B063QQ62
4B063QR08
4B063QR36
4B063QR42
4B063QR77
4B063QS03
4B063QS25
4B063QS34
4B063QS36
4B063QX02
(57)【要約】
【課題】汗腺細胞および汗腺組織の老化に関与する遺伝子を明らかにし、当該遺伝子に基づいた、汗腺細胞または汗腺組織の老化を評価する方法、および、被験試料の汗腺細胞または汗腺組織に対する老化調整効果を評価する方法を提供する。
【解決手段】INK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子を、汗腺細胞および汗腺組織の老化の指標とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体から分離した汗腺細胞におけるINK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を検出する工程を有する、汗腺細胞の老化を評価する方法。
【請求項2】
前記遺伝子の発現量が基準値よりも多い場合、前記汗腺細胞が老化していると評価する工程をさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法を一工程として含む、汗腺組織の老化を評価する方法。
【請求項4】
被験試料の汗腺細胞に対する老化調整効果を評価する方法であって、
前記被験試料と、生体から分離した汗腺細胞とを接触させる工程と、
前記接触の前後において、前記汗腺細胞におけるINK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を比較する工程と、
前記比較の結果から、前記被験試料の汗腺細胞に対する老化調整効果を評価する工程と、を含む方法。
【請求項5】
前記評価する工程は、
(i)前記接触の後の前記発現量が、前記接触の前の前記発現量よりも少ない場合、前記被験試料が前記汗腺細胞の老化を抑制すると評価すること;および/または、
(ii)前記接触の後の前記発現量が、前記接触の前の前記発現量よりも多い場合、前記被験試料が前記汗腺細胞の老化を促進すると評価することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
請求項4または5に記載の方法を一工程として含む、被験試料の汗腺組織に対する老化調整効果を評価する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汗腺細胞および汗腺組織の老化を評価する方法、並びに、被験試料の汗腺細胞および汗腺組織に対する老化調整効果を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汗腺は、ヒトにおける重要な体温調節器官であり、汗腺の機能不全は、重篤な疾患(例えば、熱中症)を誘発する。汗腺の機能不全の原因として、加齢に伴う汗腺の老化が知られている。汗腺が老化すると、汗腺のサイズの縮小と、汗腺の発汗量の低下とが生じることが知られている。
【0003】
従来の汗腺の老化に関する研究では、汗腺の発汗機能の変化に関する解析、および、汗腺の組織構造の変化に関する解析に焦点があてられており、汗腺における分子レベルの変化(例えば、老化に関連する遺伝子の発現量の変化)については明らかにされていない。このため、汗腺の老化を評価すること、および、汗腺の老化を予防する物質をスクリーニングすることは難しい。
【0004】
汗腺以外の他の組織に関しては、老化に関連する遺伝子が報告されている(非特許文献1~3参照)。例えば、非特許文献1~3には、様々な組織において、加齢に伴って特定の遺伝子の発現量が変化することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】M. Laura Idda et al., “Survey of senescent cell markers with age in human tissue” AGING 2020, Vol.12, No5, p.4052-4066
【非特許文献2】Darren J. Baker et al., “Naturally occurring p16(Ink4a) - positive cells shorten healthy lifespan” Nature, Vol.530, 11 February 2016, p.184-189
【非特許文献3】Adam D. Hudgins et al., “Age- and Tissue-Specific Expression of Senescence Biomarkers in Mice” Frontiers in Genetics, February 2018, Vol.9, Article 59, p.1-6
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、老化に関する遺伝子は、組織ごとに大きな違いがあり、汗腺以外の他の組織において老化に関連する遺伝子を、汗腺の老化に関連すると考えることはできない。従って、汗腺の老化に関連する遺伝子を検討する必要がある。
【0007】
本発明の一態様は、汗腺細胞および汗腺組織の老化に関与する遺伝子を明らかにし、当該遺伝子に基づいた、汗腺細胞および汗腺組織の老化を評価する方法、並びに、被験試料の汗腺細胞および汗腺組織に対する老化調整効果を評価する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は前記課題を解決するために鋭意検討した結果、INK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子は、汗腺細胞および汗腺組織の老化の指標になることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の構成を含む。
【0009】
<1>生体から分離した汗腺細胞におけるINK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を検出する工程を有する、汗腺細胞の老化を評価する方法。
【0010】
<2>前記遺伝子の発現量が基準値よりも多い場合、前記汗腺細胞が老化していると評価する工程をさらに有する、<1>に記載の方法。
【0011】
<3><1>または<2>に記載の方法を一工程として含む、汗腺組織の老化を評価する方法。
【0012】
<4>被験試料の汗腺細胞に対する老化調整効果を評価する方法であって、前記被験試料と、生体から分離した汗腺細胞とを接触させる工程と、前記接触の前後において、前記汗腺細胞におけるINK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を比較する工程と、前記比較の結果から、前記被験試料の汗腺細胞に対する老化調整効果を評価する工程と、を含む方法。
【0013】
<5>前記評価する工程は、(i)前記接触の後の前記発現量が、前記接触の前の前記発現量よりも少ない場合、前記被験試料が前記汗腺細胞の老化を抑制すると評価すること;および/または、(ii)前記接触の後の前記発現量が、前記接触の前の前記発現量よりも多い場合、前記被験試料が前記汗腺細胞の老化を促進すると評価することを含む、<4>に記載の方法。
【0014】
<6><4>または<5>に記載の方法を一工程として含む、被験試料の汗腺組織に対する老化調整効果を評価する方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、汗腺細胞および汗腺組織の老化を評価する方法、並びに、被験試料の汗腺細胞および汗腺組織に対する老化調整効果を評価する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例における、特定の遺伝子(INK4a、p21、MMP-3、MMP-10、IL-8、IL-6)の加齢に伴う発現量の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態及び実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態および実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。本明細書中、数値範囲に関して「A~B」と記載した場合、当該記載は「A以上B以下」を意図する。
【0018】
〔1.汗腺細胞および汗腺組織の老化を評価する方法〕
本発明の一実施形態に係る「汗腺細胞の老化を評価する方法」は、「汗腺細胞の老化を評価するためのデータの取得方法」であってもよい。本発明の一実施形態に係る「汗腺組織の老化を評価する方法」は、「汗腺組織の老化を評価するためのデータの取得方法」であってもよい。
【0019】
本発明の一実施形態に係る汗腺細胞の老化を評価する方法は、生体から分離した汗腺細胞におけるINK4a(inhibitor of CDK4)、MMP-3(matrix metalloprotease-3)、およびIL-8(interleukin-8)からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を検出する工程を有する。
【0020】
前記汗腺細胞を分離する生体の種類は、限定されない。生体としては、例えば、ヒト、および、非ヒト哺乳類を挙げることができる。非ヒト哺乳類としては、例えば、霊長類、実験動物、愛玩動物、および、家畜を挙げることができ、より具体的に、サル、チンパンジー、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、及びウマを挙げることができる。
【0021】
前記汗腺細胞が由来する汗腺の種類は、限定されない。汗腺としては、例えば、アポクリン汗腺、エクリン汗腺、および、主として非ヒト哺乳類に存在する汗腺を挙げることができる。生命維持に関わる汗腺機能の老化を評価できるという観点から、前記汗腺細胞が由来する汗腺は、エクリン汗腺であることが好ましい。
【0022】
前記生体から分離した汗腺細胞は、例えば、生体から分離した汗腺組織内に含まれる汗腺細胞であってもよいし、生体から分離した汗腺組織から更に分離された汗腺細胞であってもよい。
【0023】
前記検出する工程では、INK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を検出する。より精度高く汗腺細胞および汗腺組織の老化を評価できるという観点から、前記検出する工程では、INK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも2つの遺伝子の発現量を検出することが好ましく、INK4a、MMP-3、およびIL-8の3つの遺伝子の発現量を検出することが更に好ましい(例えば、INK4aとMMP-3との組み合わせ、INK4aとIL-8との組み合わせ、MMP-3とIL-8との組み合わせ、および、INK4aとMMP-3とIL-8との組み合わせ)。
【0024】
前記遺伝子の発現量の検出は、前記遺伝子から転写されたmRNAの量に基づいて行われてもよく、前記mRNAから翻訳されたタンパク質の量に基づいて行われてもよい。
【0025】
前記遺伝子の発現量の検出をmRNAの量に基づいて行う場合、検出方法は限定されない。当該検出方法としては、例えば、PCR、RT-PCR、ノーザンブロット、in situ ハイブリダイゼーション、RNA-seq、および、scRNA-seqを挙げることができる。なお、これらの方法は公知であるので、ここでは、その説明を省略する。
【0026】
前記遺伝子の発現量の検出をタンパク質の量に基づいて行う場合、検出方法は限定されない。当該検出方法としては、例えば、免疫染色、ウエスタンブロット、ELISA、および、質量分析を挙げることができる。なお、これらの方法は公知であるので、ここでは、その説明を省略する。
【0027】
ヒトのINK4aのcDNAの塩基配列(配列番号1)、ヒトのMMP-3のcDNAの塩基配列(配列番号2)、および、ヒトのIL-8のcDNAの塩基配列(配列番号3)は、公知である。前記遺伝子の発現量の検出をmRNAの量に基づいて行う場合には、例えば、下記の(a)~(c)のポリヌクレオチドに基づいて、プライマーおよびプローブ等を設計し、上述した方法にしたがって、前記遺伝子の発現量を検出すればよい。
【0028】
(a):
・配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;または、
・配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、細胞周期阻害活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
・配列番号1に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと90%以上(または、95%以上、98%以上)の同一性を有し、かつ、細胞周期阻害活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0029】
(b):
・配列番号2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;または、
・配列番号2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、プロテアーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
・配列番号2に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと90%以上(または、95%以上、98%以上)の同一性を有し、かつ、プロテアーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0030】
(c):
・配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチド;または、
・配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ケモカイン活性(例えば、細胞遊走誘導)を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
・配列番号3に示される塩基配列からなるポリヌクレオチドと90%以上(または、95%以上、98%以上)の同一性を有し、かつ、ケモカイン活性(例えば、細胞遊走誘導)を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【0031】
ヒトのINK4aのタンパク質のアミノ酸配列(配列番号4)、ヒトのMMP-3のタンパク質のアミノ酸配列(配列番号5)、および、ヒトのIL-8のタンパク質のアミノ酸配列(配列番号6)は、公知である。前記遺伝子の発現量の検出をタンパク質の量に基づいて行う場合には、例えば、下記の(d)~(f)のポリペプチドに基づいて、抗体等を設計し、上述した方法にしたがって、前記遺伝子の発現量を検出すればよい。
【0032】
(d):
・配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;または、
・配列番号4に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、細胞周期阻害活性を有するポリペプチド。
・配列番号4に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドと90%以上(または、95%以上、98%以上)の同一性を有し、かつ、細胞周期阻害活性を有するポリペプチド。
【0033】
(e):
・配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;または、
・配列番号5に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、プロテアーゼ活性を有するポリペプチド。
・配列番号5に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドと90%以上(または、95%以上、98%以上)の同一性を有し、かつ、プロテアーゼ活性を有するポリペプチド。
【0034】
(f):
・配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド;または、
・配列番号6に示されるアミノ酸配列において、1個もしくは数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ケモカイン活性(例えば、細胞遊走誘導)を有するポリペプチド。
・配列番号6に示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドと90%以上(または、95%以上、98%以上)の同一性を有し、かつ、ケモカイン活性(例えば、細胞遊走誘導)を有するポリペプチド。
【0035】
本明細書において、「ストリンジェントな条件」は、いわゆる塩基配列に特異的な2本鎖のポリヌクレオチドが形成され、非特異的な2本鎖のポリヌクレオチドが形成されない条件をいう。換言すれば、相同性が高い核酸同士、例えば完全にマッチしたハイブリッドの融解温度(Tm値)から15℃、好ましくは10℃、更に好ましくは5℃低い温度までの範囲の温度でハイブリダイズする条件ともいえる。
【0036】
例えば、一例を示すと、0.25M NaHPO、pH7.2、7%SDS、1mM EDTA、1×デンハルト溶液からなる緩衝液中で温度が60~68℃、好ましくは65℃、さらに好ましくは68℃の条件下で16~24時間ハイブリダイズさせ、さらに20mM NaHPO、pH7.2、1%SDS、1mM EDTAからなる緩衝液中で温度が60~68℃、好ましくは65℃、さらに好ましくは68℃の条件下で15分間の洗浄を2回行う条件を挙げることができる。
【0037】
他の例としては、25%ホルムアミド、より厳しい条件では50%ホルムアミド、4×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)、50mM Hepes pH7.0、10×デンハルト溶液、20μg/mL変性サケ精子DNAを含むハイブリダイゼーション溶液中、42℃で一晩プレハイブリダイゼーションを行った後、標識したプローブを添加し、42℃で一晩保温することによりハイブリダイゼーションを行う。その後の洗浄における洗浄液および温度条件は、「1×SSC、0.1%SDS、37℃」程度で、より厳しい条件としては「0.5×SSC、0.1%SDS、42℃」程度で、さらに厳しい条件としては「0.2×SSC、0.1%SDS、65℃」程度で実施することができる。このようにハイブリダイゼーションの洗浄の条件が厳しくなるほど、特異性の高いハイブリダイズとなる。ただし、前記SSC、SDSおよび温度の条件の組み合わせは例示であり、当業者であれば、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを決定する前記若しくは他の要素(例えば、プローブ濃度、プローブの長さ、ハイブリダイゼーション反応時間等)を適宜組み合わせることにより、前記と同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。このことは、例えば、Sambrookら、Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 3rd Ed., Cold Spring Harbor Laboratory(2001)等に記載されている。
【0038】
塩基配列、および、アミノ酸配列の同一性は、例えば、BLASTX等のプログラム(Altschul et al. J. Mol. Biol., 215: 403-410, 1990)を利用して決定することができる。該プログラムは、KarlinおよびAltschulによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:2264-2268, 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90: 5873-5877, 1993)に基づいている。BLASTXによってアミノ酸配列を解析する場合には、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。また、Gapped BLASTプログラムを用いて、アミノ酸配列を解析する場合は、Altschulら(Nucleic Acids Res. 25: 3389-3402, 1997)に記載されているように行うことができる。これらの解析方法の具体的な手法は公知である。比較対象の塩基配列またはアミノ酸配列を最適な状態にアラインメントするために、付加または欠失(例えば、ギャップ等)を許容してもよい。
【0039】
「細胞周期阻害活性を有するポリペプチド」であるか否かは、当該ポリペプチドを所望の細胞にて発現させて、当該細胞の細胞周期が停止することを確認することによって、判断することができる。「プロテアーゼ活性を有するポリペプチド」であるか否かは、当該ポリペプチドを所望の細胞にて発現させて、当該細胞によってタンパク質(例えば、細胞外マトリックス)が分解されることを確認することによって、判断することができる。「ケモカイン活性(例えば、細胞遊走誘導)を有するポリペプチド」であるか否かは、当該ポリペプチドを所望の細胞にて発現させて、当該細胞によってケモカイン活性(例えば、細胞遊走誘導)が示されることを確認することによって、判断することができる。
【0040】
本明細書において「1個もしくは数個のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、及び/又は付加された」とは、限定されるものではないが、好ましくは20個以下、より好ましくは15個以下、より好ましくは10個以下、より好ましくは9個以下、より好ましくは8個以下、より好ましくは7個以下、より好ましくは6個以下、より好ましくは5個以下、より好ましくは4個以下、より好ましくは3個以下、より好ましくは2個以下、最も好ましくは1個以下のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、及び/又は付加されることを意図する。
【0041】
本発明の一実施形態に係る汗腺細胞の老化を評価する方法は、前記遺伝子の発現量が基準値よりも多い場合、前記汗腺細胞が老化していると評価する工程をさらに有することが好ましい。当該構成によれば、より精度高く汗腺細胞および汗腺組織の老化を評価することができる。
【0042】
前記基準値としては、限定されない。当該基準値は、例えば、(i)汗腺細胞の老化を評価するために生体から汗腺細胞を分離する時よりも前に、同じ生体から汗腺細胞を分離し、当該汗腺細胞において予め検出されたINK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量であってもよく、(ii)異なる生体から汗腺細胞を分離し、当該汗腺細胞において予め検出されたINK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量であってもよく、(iii)複数の異なる生体から汗腺細胞を分離し、これらの汗腺細胞において予め検出されたINK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量の平均値であってもよい。より精度高く汗腺細胞および汗腺組織の老化を評価できるという観点から、前記基準値は、上述した(i)~(iii)の中では、(iii)に示される基準値であることがより好ましく、(i)に示される基準値であることが最も好ましい。
【0043】
前記汗腺細胞が老化しているか否かを評価する基準は、限定されない。例えば、前記遺伝子の発現量(例えば、mRNAまたはタンパク質の量)をA、基準値をBとする。例えば、「A/B」の値が、1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上、2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、10以上、50以上、100以上、または、1000以上である場合に、前記遺伝子の発現量が基準値よりも多いと見なすことができ、かつ、前記汗腺細胞が老化していると評価することができる。「A/B」の値が、1.1未満(例えば、1.0以下)である場合には、例えば、前記汗腺細胞は老化していない、または、前記汗腺細胞の老化が進行していない、と評価することができる。
【0044】
前記遺伝子の発現量は、例えば、mRNAまたはタンパク質を検出する際に用いる標識(例えば、化学反応マーカー、蛍光色素、ラジオアイソトープ)を用いて測定され得る。前記遺伝子の発現量を測定したときに検出される標識の強度をC、基準値として用いる標識の強度をDとする。例えば、「C/D」の値が、1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上、2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、10以上、50以上、100以上、または、1000以上である場合に、前記遺伝子の発現量が基準値よりも多いと見なすことができ、かつ、前記汗腺細胞が老化していると評価することができる。「C/D」の値が、1.1未満(例えば、1.0以下)である場合には、例えば、前記汗腺細胞は老化していない、または、前記汗腺細胞の老化が進行していない、と評価することができる。
【0045】
汗腺組織を構成する汗腺細胞の老化が進むにしたがって(例えば、汗腺組織において、老化した汗腺細胞が増えるにしたがって)、汗腺組織も老化すると考えられる。汗腺組織が老化すると、例えば、汗腺のサイズの縮小と、汗腺の発汗量の低下とが生じる。このことは、汗腺細胞の老化の評価の積み重ねによって、汗腺組織の老化を評価し得ることを示している。
【0046】
それ故に、本発明の一実施形態に係る汗腺組織の老化を評価する方法は、本発明の一実施形態に係る汗腺細胞の老化を評価する方法を一工程として含む。なお、本発明の一実施形態に係る汗腺細胞の老化を評価する方法については既に説明したので、ここでは、その説明を省略する。
【0047】
本発明の一実施形態に係る汗腺組織の老化を評価する方法は、本発明の一実施形態に係る汗腺細胞の老化を評価する方法を一工程として含む以外に、別の工程を含んでもよい。当該別の工程は、限定されない。
【0048】
〔2.被験試料の、汗腺細胞および汗腺組織に対する老化調整効果を評価する方法〕
本発明の一実施形態に係る被験試料の汗腺細胞に対する老化調整効果を評価する方法は、前記被験試料と、生体から分離した汗腺細胞とを接触させる工程と、前記接触の前後において、前記汗腺細胞におけるINK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を比較する工程と、前記比較の結果から、前記被験試料の汗腺細胞に対する老化調整効果を評価する工程と、を含む。
【0049】
上述したように、本発明の一実施形態に係る被験試料の汗腺細胞に対する老化調整効果を評価する方法は、前記被験試料と、生体から分離した汗腺細胞とを接触させる工程を含む。
【0050】
前記被験試料は、限定されず、例えば、無機化合物、有機化合物、植物抽出物、微生物抽出物、および、各種細胞の培養上清を挙げることができる。被験試料は、そのままの状態にて用いられてもよく、溶媒に溶解された状態にて用いられてもよい。当該溶媒としては、例えば、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、及び水を挙げることができる。
【0051】
前記生体から分離した汗腺細胞に関して、汗腺細胞を分離する生体の種類、および、汗腺細胞が由来する汗腺の種類などは、限定されない。汗腺細胞を分離する生体の種類、および、汗腺細胞が由来する汗腺の種類などは、例えば、上述した〔1.汗腺細胞および汗腺組織の老化を評価する方法〕欄にて説明した種類であり得る。
【0052】
前記被験試料と接触させる、生体から分離した汗腺細胞は、例えば、生体から分離した汗腺組織内に含まれる汗腺細胞であってもよいし、汗腺組織から分離された株化されていない汗腺細胞(例えば、初代培養細胞)であってもよいし、汗腺組織から分離した汗腺細胞を株化した汗腺細胞であってもよいし、汗腺組織から分離した汗腺細胞を不死化した汗腺細胞であってもよい。不死化した汗腺細胞としては、例えば、国際公開WO2019/031500号パンフレット、特願2020-157576、または、特願2020-157577に記載の不死化した汗腺細胞を挙げることができる。
【0053】
前記接触させる工程では、被験試料と、生体から分離した汗腺細胞とを、例えば培地中で接触させた後、当該汗腺細胞を所望の時間、培養してもよい。なお、当該培養の間、被験試料と汗腺細胞とは、接触していてもよいし、接触していなくてもよい。培養時間は、限定されず、1時間~1日であってもよく、1日~3日であってもよく、1日~7日であってもよく、7日以上であってもよい。
【0054】
上述したように、本発明の一実施形態に係る被験試料の汗腺細胞に対する老化調整効果を評価する方法は、前記被験試料と、前記生体から分離した汗腺細胞との接触の前後において、前記汗腺細胞におけるINK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を比較する工程を含む。
【0055】
前記比較する工程は、(i)前記被験試料と、前記生体から分離した汗腺細胞との接触の前において、前記汗腺細胞におけるINK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を検出すること、および/または、(ii)前記被験試料と、前記生体から分離した汗腺細胞との接触の後において、前記汗腺細胞におけるINK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を検出すること、を包含してもよい。
【0056】
前記比較する工程では、INK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を検出および/または比較する。より精度高く被験試料の汗腺細胞に対する老化調整効果を評価できるという観点から、前記比較する工程では、INK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも2つの遺伝子の発現量を検出および/または比較することが好ましく、INK4a、MMP-3、およびIL-8の3つの遺伝子の発現量を検出および/または比較することが更に好ましい(例えば、INK4aとMMP-3との組み合わせ、INK4aとIL-8との組み合わせ、MMP-3とIL-8との組み合わせ、および、INK4aとMMP-3とIL-8との組み合わせ)。
【0057】
前記遺伝子の発現量の検出および/または比較は、前記遺伝子から転写されたmRNAの量に基づいて行われてもよく、前記mRNAから翻訳されたタンパク質の量に基づいて行われてもよい。前記遺伝子の発現量の検出については、上述した〔1.汗腺細胞または汗腺組織の老化を評価する方法〕欄にて説明したので、ここでは、その説明を省略する。
【0058】
上述したように、本発明の一実施形態に係る被験試料の汗腺細胞に対する老化調整効果を評価する方法は、前記比較の結果から、前記被験試料の汗腺細胞に対する老化調整効果を評価する工程を含む。
【0059】
前記評価する工程では、比較の結果から、(i)被験試料は汗腺細胞の老化を抑制する、および/または、(ii)被験試料は汗腺細胞の老化を促進する、と評価することが好ましい。前記評価する工程では、更に、比較の結果から、(iii)被験試料は汗腺細胞の老化に影響しない、と評価することが好ましい。
【0060】
より具体的に、前記評価する工程は、(i)接触の後の遺伝子の発現量が、接触の前の遺伝子の発現量よりも少ない場合、被験試料が汗腺細胞の老化を抑制すると評価すること;および/または、(ii)接触の後の遺伝子の発現量が、接触の前の遺伝子の発現量よりも多い場合、被験試料が汗腺細胞の老化を促進すると評価することを含む、ことが好ましい。前記評価する工程は、更に、(iii)接触の後の遺伝子の発現量が、接触の前の遺伝子の発現量と略同じである場合、被験試料は汗腺細胞の老化に影響しないと評価することを含む、ことが好ましい。
【0061】
前記被験試料の汗腺細胞に対する老化調整効果を評価する基準は、限定されない。例えば、接触の後の遺伝子の発現量(例えば、mRNAまたはタンパク質の量)をa、接触の前の遺伝子の発現量(例えば、mRNAまたはタンパク質の量)をbとする。例えば、「b/a」の値が、1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上、2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、10以上、50以上、100以上、または、1000以上である場合に、接触の後の遺伝子の発現量が、接触の前の遺伝子の発現量よりも少ないと見なすことができ、かつ、被験試料が汗腺細胞の老化を抑制すると評価することができる。例えば、「a/b」の値が、1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上、2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、10以上、50以上、100以上、または、1000以上である場合に、接触の後の遺伝子の発現量が、接触の前の遺伝子の発現量よりも多いと見なすことができ、かつ、被験試料が汗腺細胞の老化を促進すると評価することができる。例えば、「b/a」の値が、略1.0である場合に、接触の後の遺伝子の発現量が、接触の前の遺伝子の発現量と略同じであると見なすことができ、かつ、被験試料が汗腺細胞の老化に影響しないと評価することができる。
【0062】
前記遺伝子の発現量は、例えば、mRNAまたはタンパク質を検出する際に用いる標識(例えば、化学反応マーカー、蛍光色素、ラジオアイソトープ)を用いて測定され得る。例えば、接触の後の遺伝子の発現量を測定した時に検出される標識の強度をc、接触の前の遺伝子の発現量を測定した時に検出される標識の強度をdとする。例えば、「d/c」の値が、1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上、2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、10以上、50以上、100以上、または、1000以上である場合に、接触の後の遺伝子の発現量が、接触の前の遺伝子の発現量よりも少ないと見なすことができ、かつ、被験試料が汗腺細胞の老化を抑制すると評価することができる。例えば、「c/d」の値が、1.1以上、1.2以上、1.3以上、1.4以上、1.5以上、1.6以上、1.7以上、1.8以上、1.9以上、2.0以上、3.0以上、4.0以上、5.0以上、10以上、50以上、100以上、または、1000以上である場合に、接触の後の遺伝子の発現量が、接触の前の遺伝子の発現量よりも多いと見なすことができ、かつ、被験試料が汗腺細胞の老化を促進すると評価することができる。例えば、「d/c」の値が、略1.0である場合に、接触の後の遺伝子の発現量が、接触の前の遺伝子の発現量と略同じであると見なすことができ、かつ、被験試料が汗腺細胞の老化に影響しないと評価することができる。
【0063】
被験試料が汗腺細胞の老化を抑制すると評価された場合、当該被験試料を含有する化粧品は、汗腺細胞の老化を抑制する効果を有すると考えられる。一方、被験試料が汗腺細胞の老化を促進すると評価された場合、当該被験試料が除去された化粧品は、汗腺細胞の老化を抑制する効果を有すると考えられる。
【0064】
汗腺組織を構成する汗腺細胞の老化が進むにしたがって(例えば、汗腺組織において、老化した汗腺細胞が増えるにしたがって)、汗腺組織も老化すると考えられる。汗腺組織が老化すると、例えば、汗腺のサイズの縮小と、汗腺の発汗量の低下とが生じる。このことは、被験試料の汗腺細胞に対する老化調整効果を評価することによって、当該被験試料の汗腺組織に対する老化調整効果を評価し得ることを示している。
【0065】
それ故に、本発明の一実施形態に係る被験試料の汗腺組織に対する老化調整効果を評価する方法は、本発明の一実施形態に係る被験試料の汗腺細胞に対する老化調整効果を評価する方法を一工程として含む。なお、本発明の一実施形態に係る被験試料の汗腺細胞に対する老化調整効果を評価する方法については既に説明したので、ここでは、その説明を省略する。
【0066】
本発明の一実施形態に係る被験試料の汗腺組織に対する老化調整効果を評価する方法は、本発明の一実施形態に係る被験試料の汗腺細胞に対する老化調整効果を評価する方法を一工程として含む以外に、別の工程を含んでもよい。当該別の工程は、限定されない。
【0067】
〔3.その他〕
本発明の一実施形態は、以下のように構成することもできる。
【0068】
<1>汗腺細胞におけるINK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を検出する工程を有する、汗腺細胞の老化を評価する方法。
【0069】
<2>前記遺伝子の発現量が基準値よりも多い場合、前記汗腺細胞が老化していると評価する工程をさらに有する、<1>に記載の方法。
【0070】
<3><1>または<2>に記載の方法を一工程として含む、汗腺組織の老化を評価する方法。
【0071】
<4>被験試料の汗腺細胞に対する老化調整効果を評価する方法であって、
前記被験試料と、汗腺細胞とを接触させる工程と、
前記接触の前後において、前記汗腺細胞におけるINK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現量を比較する工程と、
前記比較の結果から、前記被験試料の汗腺細胞に対する老化調整効果を評価する工程と、を含む方法。
【0072】
<5>前記評価する工程は、
(i)前記接触の後の前記発現量が、前記接触の前の前記発現量よりも少ない場合、前記被験試料が前記汗腺細胞の老化を抑制すると評価すること;および/または、
(ii)前記接触の後の前記発現量が、前記接触の前の前記発現量よりも多い場合、前記被験試料が前記汗腺細胞の老化を促進すると評価することを含む、<4>に記載の方法。
【0073】
<6><4>または<5>に記載の方法を一工程として含む、被験試料の汗腺組織に対する老化調整効果を評価する方法。
【実施例0074】
<1.試験方法>
若齢者(16歳~40歳、5~7人)、および、老齢者(69歳~79歳、5~8人)の各々から、汗腺を含む皮膚組織を採取し、当該皮膚組織をハサミで切り刻み、小さな皮膚組織断片を得た。
【0075】
前記皮膚組織断片を、37℃にて4時間、Collagenase type2を含む処理液(600U/mL)に浸し、これによって、汗腺以外の皮膚組織を分解した。次いで、前記処理液中に分解されずに残った汗腺を、ピペットを用いて採取した。
【0076】
採取した汗腺から、市販のキットを用いてmRNAを分離した。当該mRNAを用いたRT-PCRによって、若齢者の汗腺と老齢者の汗腺との間で発現量に差異がある遺伝子を同定した。なお、RT-PCRは、公知の手法にしたがった。
【0077】
<2.試験結果>
INK4a、および、p21は、共に、細胞周期阻害タンパク質をコードする遺伝子であって、機能が類似する遺伝子である。
【0078】
MMP-3、および、MMP-10は、共に、マトリックスメタロプロテアーゼをコードする遺伝子であって、機能が類似する遺伝子である。
【0079】
IL-8、および、IL-6は、共に、炎症誘導タンパク質をコードする遺伝子であって、機能が類似する遺伝子である。
【0080】
図1に示すように、INK4aは、若齢者における発現量に比べて、老齢者における発現量が有意に増加していた。一方、機能が類似するp21は、若齢者における発現量と老齢者における発現量との間に有意な差異はなかった。
【0081】
図1に示すように、MMP-3は、若齢者における発現量に比べて、老齢者における発現量が有意に増加していた。一方、機能が類似するMMP-10は、若齢者における発現量と老齢者における発現量との間に有意な差異はなかった。
【0082】
図1に示すように、IL-8は、若齢者における発現量に比べて、老齢者における発現量が有意に増加していた。一方、機能が類似するIL-6は、若齢者における発現量と老齢者における発現量との間に有意な差異はなかった。
【0083】
以上の結果から、INK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子は、汗腺細胞の老化を評価するための指標となることが明らかになった。
【0084】
また、汗腺組織を構成する汗腺細胞の老化が進むにしたがって(例えば、汗腺組織において、老化した汗腺細胞が増えるにしたがって)、汗腺組織も老化する。それ故に、INK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子は、汗腺組織の老化を評価するための指標となることが明らかになった。
【0085】
また、INK4a、MMP-3、およびIL-8からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子を指標とすることによって、汗腺細胞および汗腺組織に対する老化調整効果を有する物質をスクリーニングできることが明らかになった。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、化粧品分野、および、医療分野などに広く利用することができる。
図1
【配列表】
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