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特開2023-132597情報処理システム、組織構成支援システム、情報処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132597
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】情報処理システム、組織構成支援システム、情報処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/10 20230101AFI20230914BHJP
【FI】
G06Q10/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038013
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 涼
(72)【発明者】
【氏名】草薙 真人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 友規
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA11
(57)【要約】
【課題】複数人の人間関係の改善を支援すること。
【解決手段】情報処理システムは、複数のユーザが参加する会議における前記複数のユーザのそれぞれの状態を示すユーザ会議情報を前記複数のユーザが使用する端末機器から取得するユーザ会議情報取得部と、業務に関する行動履歴に関わる業務情報を記憶する業務情報記憶部から前記複数のユーザの前記業務情報を取得する業務情報取得部と、前記ユーザ会議情報取得部が取得した前記ユーザ会議情報と前記業務情報取得部が取得した前記業務情報とに基づいて、前記複数のユーザの関係性を示す関係性指標を算出し、前記関係性指標を記憶部に記憶させる関係性指標算出部と、前記記憶部に記憶された関係性指標に基づいて、当該関係性指標をユーザに提示するための提示情報を生成し、前記提示情報を前記端末機器に提示させる提示情報生成部と、を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のユーザが参加する会議における前記複数のユーザのそれぞれの状態を示すユーザ会議情報を前記複数のユーザが使用する端末機器から取得するユーザ会議情報取得部と、
業務に関する行動履歴に関わる業務情報を記憶する業務情報記憶部から前記複数のユーザの前記業務情報を取得する業務情報取得部と、
前記ユーザ会議情報取得部が取得した前記ユーザ会議情報と前記業務情報取得部が取得した前記業務情報とに基づいて、前記複数のユーザの関係性を示す関係性指標を算出し、前記関係性指標を記憶部に記憶させる関係性指標算出部と、
前記記憶部に記憶された関係性指標に基づいて、当該関係性指標をユーザに提示するための提示情報を生成し、前記提示情報を前記端末機器に提示させる提示情報生成部と、
を有することを特徴とする情報処理システム。
【請求項2】
前記ユーザ会議情報は、前記複数のユーザの画像情報、音声情報及び生理情報のうちのいずれかを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記提示情報は、関係性指標の値又は前記値を図示した情報である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記提示情報は、前記関係性指標が時系列に配置された情報である、
ことを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記提示情報は、時系列に配置された前記関係性指標に対応したイベントの情報を含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記関係性指標算出部は、前記ユーザ会議情報及び前記業務情報を含むユーザ情報が示す複数の特徴のうち前記関係性指標に対して相対的に影響度の高い特徴を推定し、
前記提示情報生成部は、前記関係性指標算出部が推定した特徴に関連する情報を前記提示情報に含める、
ことを特徴とする請求項1乃至5いずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記複数の特徴は、前記ユーザ会議情報が含む画像情報の特徴、音声情報の特徴、及び生理情報の特徴、並びに前記業務情報の特徴のいずれかを含む、
ことを特徴とする請求項6に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記提示情報生成部は、前記関係性指標算出部が推定した特徴に基づいて前記関係性の改善案を生成し、当該改善案を含むように前記提示情報を生成する、
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記提示情報生成部は、会議の最中に前記改善案が提示されるように前記提示情報を生成する、
ことを特徴とする請求項8記載の情報処理システム。
【請求項10】
前記改善案が提示された後に算出される前記関係性指標に対して相対的に影響度の高い前記ユーザの特徴に基づいて、前記改善案に係る改善が行われているか否かを判定する判定部と、
判定の結果を出力する出力部と、
を有することを特徴とする請求項8又は9に記載の情報処理システム。
【請求項11】
前記判定部は、会議の最中に前記改善案に係る改善が行われているか否かを判定し、
前記出力部は、会議の最中に判定の結果を出力する、
ことを特徴とする請求項10に記載の情報処理システム。
【請求項12】
前記判定の結果の出力は、表示、音、振動、光のいずれかを含む、
ことを特徴とする請求項10又は11に記載の情報処理システム。
【請求項13】
前記ユーザ会議情報取得部は、更に、前記複数のユーザには含まれない1以上の他のユーザのそれぞれが使用する端末機器から、前記他のユーザが参加した会議における前記他のユーザの前記ユーザ会議情報を取得し、
前記業務情報取得部は、更に、前記他のユーザの前記業務情報を前記業務情報記憶部から取得し、
前記関係性指標算出部は、前記複数のユーザの前記ユーザ会議情報及び前記業務情報と前記他のユーザの前記ユーザ会議情報及び前記業務情報とに基づいて、前記複数のユーザと前記他のユーザとを含むユーザの集合に関する関係性指標を算出し、
前記提示情報生成部は、前記集合に関する前記関係性指標に基づいて前記提示情報を生成する、
請求項1乃至12いずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項14】
前記ユーザ会議情報取得部は、前記複数のユーザには含まれない複数の他のユーザのそれぞれが使用する端末機器から、前記他のユーザが参加した会議における前記他のユーザの前記ユーザ会議情報を取得し、
前記業務情報取得部は、前記複数の他のユーザの前記業務情報を前記業務情報記憶部から取得し、
前記関係性指標算出部は、前記複数の他のユーザのうちの一部又は全部を含む前記他のユーザの組み合わせごとに、前記複数のユーザの前記ユーザ会議情報及び前記業務情報と当該組み合わせに係る前記他のユーザの前記ユーザ会議情報及び前記業務情報とに基づいて、当該組み合わせに係る前記他のユーザを含むユーザの集合に関する関係性指標を算出し、
前記提示情報生成部は、前記組み合せごとの関係性指標に基づいて各組み合わせの順位付けの情報を含むように前記提示情報を生成する、
ことを特徴とする請求項13に記載の情報処理システム。
【請求項15】
或る組織に属する複数のユーザが参加する会議における前記複数のユーザのそれぞれの状態を示すユーザ会議情報を前記複数のユーザが使用する端末機器から取得すると共に、前記組織に属さない1以上の他のユーザのそれぞれが使用する端末機器から、前記他のユーザが参加した会議における前記他のユーザの前記ユーザ会議情報を取得するユーザ会議情報取得部と、
業務に関する行動履歴に関わる業務情報を記憶する業務情報記憶部から前記複数のユーザ及び前記他のユーザの前記業務情報を取得する業務情報取得部と、
前記ユーザ会議情報取得部が取得した前記ユーザ会議情報と前記業務情報取得部が取得した前記業務情報とに基づいて、前記複数のユーザと前記他のユーザとを含むユーザの集合に関する関係性を示す関係性指標を算出する関係性指標算出部と、
前記関係性指標に基づいて、当該関係性指標をユーザに提示するための提示情報を生成し、前記提示情報を前記端末機器に提示させる提示情報生成部と、
を有することを特徴とする組織構成支援システム。
【請求項16】
複数のユーザが参加する会議における前記複数のユーザのそれぞれの状態を示すユーザ会議情報を前記複数のユーザが使用する端末機器から取得するユーザ会議情報取得手順と、
業務に関する行動履歴に関わる業務情報を記憶する業務情報記憶部から前記複数のユーザの前記業務情報を取得する業務情報取得手順と、
前記ユーザ会議情報取得手順が取得した前記ユーザ会議情報と前記業務情報取得手順が取得した前記業務情報とに基づいて、前記複数のユーザの関係性を示す関係性指標を算出し、前記関係性指標を記憶部に記憶させる関係性指標算出手順と、
前記記憶部に記憶された関係性指標に基づいて、当該関係性指標をユーザに提示するための提示情報を生成し、前記提示情報を前記端末機器に提示させる提示情報生成手順と、
をコンピュータが実行することを特徴とする情報処理方法。
【請求項17】
複数のユーザが参加する会議における前記複数のユーザのそれぞれの状態を示すユーザ会議情報を前記複数のユーザが使用する端末機器から取得するユーザ会議情報取得手順と、
業務に関する行動履歴に関わる業務情報を記憶する業務情報記憶部から前記複数のユーザの前記業務情報を取得する業務情報取得手順と、
前記ユーザ会議情報取得手順が取得した前記ユーザ会議情報と前記業務情報取得手順が取得した前記業務情報とに基づいて、前記複数のユーザの関係性を示す関係性指標を算出し、前記関係性指標を記憶部に記憶させる関係性指標算出手順と、
前記記憶部に記憶された関係性指標に基づいて、当該関係性指標をユーザに提示するための提示情報を生成し、前記提示情報を前記端末機器に提示させる提示情報生成手順と、
をコンピュータが実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理システム、組織構成支援システム、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、「良いチーム(組織)」では、メンバ間の関係が良好であるといわれている。近年、HRtechと呼ばれる、人事・組織マネジメントサービスが注目されている。また、メンバ間の関係性に着目し、コミュニケーションの改善を支援する技術やサービスが既に知られている。
【0003】
メンバ間の関係性の一例として、近年、心理的安全性と呼ばれる概念が注目されている。本概念は、"チームが対人的リスクテイキングにおいて安全であるという共有された信念"として学術的に知られており、チームの効果性に影響する最重要因子と位置付けられている。このような関係性の構築を目的とし、コミュニケーションの改善を促すサービスがこれまで提供されている。
【0004】
なお、特許文献1には、会議におけるコミュニケーションを支援する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のコミュニケーションを支援する技術では、チームにおけるメンバの関係性を改善するのは困難である。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、複数人の人間関係の改善を支援することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで上記課題を解決するため、情報処理システムは、複数のユーザが参加する会議における前記複数のユーザのそれぞれの状態を示すユーザ会議情報を前記複数のユーザが使用する端末機器から取得するユーザ会議情報取得部と、業務に関する行動履歴に関わる業務情報を記憶する業務情報記憶部から前記複数のユーザの前記業務情報を取得する業務情報取得部と、前記ユーザ会議情報取得部が取得した前記ユーザ会議情報と前記業務情報取得部が取得した前記業務情報とに基づいて、前記複数のユーザの関係性を示す関係性指標を算出し、前記関係性指標を記憶部に記憶させる関係性指標算出部と、前記記憶部に記憶された関係性指標に基づいて、当該関係性指標をユーザに提示するための提示情報を生成し、前記提示情報を前記端末機器に提示させる提示情報生成部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
複数人の人間関係の改善を支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1の実施の形態における関係性改善支援システム1の構成例を示す図である。
図2】第1の実施の形態における情報処理サーバ400のハードウェア構成例を示す図である。
図3】端末100の機能構成例を示す図である。
図4】情報処理サーバ400の機能構成例を示す図である。
図5】第1の実施の形態における提示情報の第1の例を示す図である。
図6】第1の実施の形態における提示情報の第2の例を示す図である。
図7】第1の実施の形態における関係性改善支援システム1が会議ごとに実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
図8】第1の実施の形態における提示情報の提示処理の処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
図9】第2の実施の形態において改善案が実施されていないことを示す情報の出力例を示す図である。
図10】第3の実施の形態における関係性改善支援システム1の構成例を示す図である。
図11】第3の実施の形態における提示情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、第1の実施の形態における関係性改善支援システム1の構成例を示す図である。各装置の数は本形態に限定されるものではない。また、以下で示す"会議"は、オンラインであるか否かを問わない。すなわち、会議は、特定の場所に集まって実施される対面式の会議でもよいし、Web会議等のように、オンラインで実施される会議でもよい。本実施の形態では、3名のメンバ(以下、「ユーザ」という。)が所属する(構成する)組織としてチームTaを想定する。
【0011】
図1において、関係性改善支援システム1は、複数(図1では3台)の端末100と、ネットワーク中継装置200と、業務情報管理サーバ300と、情報処理サーバ400とを含む。各端末100は、LAN(Local Area Network)又はインターネット等のネットワーク中継装置200を介してネットワーク500に接続する。ネットワーク中継装置200は、例えば、ルータ等である。
【0012】
業務情報管理サーバ300は、各ユーザの業務情報の記録及び管理を行う1以上のコンピュータである。業務情報とは、ユーザの属性やユーザの日常業務に関係する情報をいう。例えば、性別、年齢、所属、職位、勤続年数、担当業務、稼働時間(勤務時間)、業務上の行動履歴(例えば、eメールやチャットの送受信履歴、会議の履歴情報、業務のスケジュール等の業務履歴)を示す情報、業績を示す情報、及び業務に関連するイベント情報等を含む情報である。eメールやチャットの送受信履歴は、過去の各eメールやチャットの送信元及び宛先や送信日時等が判別可能な情報である。但し、タイトルや本文等が送受信履歴に含まれてもよい。会議の履歴とは、過去に行われた会議の開催日時や参加メンバ等が判別可能な情報である。なお、業務情報は、会議中におけるユーザ間の関係ではなく、その背後にある日常的な業務における各ユーザ間の関係を把握可能な情報であれば、どのような情報を含んでもよい。
【0013】
各端末100は、チームTaで行われる会議の際に各ユーザによって使用されるPC又はスマート端末等の端末機器である。端末100は、チームTaにおいて実施される会議ごとに、当該会議中において、当該端末100が備える(又は当該端末100に接続された)カメラやマイク等を介して、ユーザの画像情報や音声情報を入力し、入力した情報を記録する。端末100は、また、ユーザの生理情報を計測可能なセンサに接続されてもよい。この場合、端末100は、当該センサによって計測された生理情報も記録する。なお、Web会議等が行われる場合、端末100は、例えば、Web会議に利用される端末である。対面での会議が行われる場合、端末100は、例えば、ユーザの近傍(例えば、正面)に配置されたカメラやマイク等に接続された端末である。端末100は、会議中に記録された情報(以下、「ユーザ会議情報」という。)と、当該端末100のユーザについて業務情報管理サーバ300に管理されている業務情報と(以下、或るユーザのユーザ会議情報と業務情報とを含む情報を「ユーザ情報」という。)について特徴量の集合(特徴量群)を算出する。端末100は、算出した特徴量群を情報処理サーバ400へ送信する。なお、各端末100は、当該端末100に対応する特徴量群を算出する。したがって、各端末100が情報処理サーバ400へ送信するユーザ特徴量群の値は相互に異なる。
【0014】
情報処理サーバ400は、ネットワーク500を介して各端末100から特徴量群を受信し、チームTaを構成する複数人(本実施の形態では3人)の特徴量群に基づいて、チームTa内のメンバ間の関係性指標を算出する1以上のコンピュータである。関係性指標を構成する値は1つであってもよいし複数であってもよいが、情報処理サーバ400は、1回の会議について、チームTaについての1つ(又は1組)の関係性指標を算出する。すなわち、チームTaについての関係性指標は、会議ごとに算出される。なお、1回の会議を時系列に沿って分割された複数のセグメントごとに算出された関係性指標を時系列順に整列したものを1組の関係性指標としてもよい。
【0015】
図2は、第1の実施の形態における情報処理サーバ400のハードウェア構成例を示す図である。図2の情報処理サーバ400は、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置406、補助記憶装置402、メモリ装置403、プロセッサ404、及びインタフェース装置405等を有する。
【0016】
情報処理サーバ400での処理を実現するプログラムは、CD-ROM等の記録媒体101によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体101がドライブ装置406にセットされると、プログラムが記録媒体101からドライブ装置406を介して補助記憶装置402にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体101より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置402は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0017】
メモリ装置403は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置402からプログラムを読み出して格納する。プロセッサ404は、CPU若しくはGPU(Graphics Processing Unit)、又はCPU及びGPUであり、メモリ装置403に格納されたプログラムに従って情報処理サーバ400に係る機能を実行する。インタフェース装置405は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。
【0018】
[端末100の機能構成例]
図3は、端末100の機能構成例を示す図である。図3において、端末100は、情報取得部110、情報処理部120、情報通信部130及び情報提示部140を有する。これら各部は、端末100にインストールされた1以上のプログラムが、端末100のCPUに実行させる処理により実現される。端末100は、また、記憶部150を利用する。記憶部150は、例えば、端末100の補助記憶装置402、又は端末100にネットワークを介して接続可能な記憶装置等を用いて実現可能である。
【0019】
<情報取得部110>
情報取得部110は、ユーザ情報を取得し、取得したユーザ情報を記憶部150に記録(保存)する。情報取得部110は、画像情報取得部111、音声情報取得部112及び業務情報取得部113を含む。このうち、画像情報取得部111及び音声情報取得部112は、異なるモダリティのユーザ会議情報を取得する。
【0020】
すなわち、画像情報取得部111は、会議中のユーザの表情を示す画像情報又はユーザの上体部分の画像情報(静止画情報又は動画情報)をユーザ会議情報の一部として取得する。一例として、画像情報取得部111は、端末100に搭載されているカメラから画像情報を取得する。なお、端末100に搭載されたカメラに限らず、端末100に外部接続された複数のカメラが用いられてもよい。また、画像情報取得部111は、micro-expressionと呼ばれる微表情などの特殊な表情情報を抽出可能な画像情報を取得可能なように構成されてもよい。画像情報取得部111は、画像情報を取得したタイミング(時刻)を示すタイムスタンプを当該画像情報に関連付ける。
【0021】
音声情報取得部112は、会議中にユーザが発話することにより生じる音声を示す音声情報をユーザ会議情報の一部として取得する。一例として、画像情報取得部111は、端末100に搭載されているマイクから音声情報を取得する。なお、端末100に搭載されたマイクに限らず、端末100に接続されるヘッドセットや指向性やノイズキャンセリング機能を有する外部マイクなどが用いられてもよい。音声情報取得部112は、音声情報を取得したタイミング(時刻)を示すタイムスタンプを当該音声情報に関連付ける。
【0022】
業務情報取得部113は、情報通信部130が接続するネットワーク500を介して、端末100のユーザの業務情報を業務情報管理サーバ300から取得する。
【0023】
なお、情報取得部110は、会議中のユーザの生理情報を取得する生理情報取得部を含んでもよい。生理情報の一例としては、脳波、呼吸、体温、瞬目、心拍などがある。生理情報取得部は、カメラなどを利用した非接触式センサ、身体に接触させる接触式センサなどを利用してもよい。これらのセンサは、Bluetooth(登録商標)などで端末100と線接続されてもよい。生理情報取得部は、生理情報を取得したタイミング(時刻)を示すタイムスタンプを当該生理情報に関連付ける。
【0024】
<情報処理部120>
情報処理部120は、情報加工処理や、端末100を構成する他の機能部間の情報の授受の仲介を行う。具体的には、情報処理部120は、情報取得部110が取得し、記憶部150に保存されているユーザ情報に基づいて、関係性指標を算出するための特徴量の集合(特徴量群)を算出する。情報処理部120は、算出した特徴量群を記憶部150に保存する。特徴量とは、ユーザ情報の特徴を示す情報をいう。上記したように、ユーザ情報は、ユーザ会議情報(画像情報及び音声情報)及び業務情報を含む。このうち、ユーザ会議情報は、更に、会議中のユーザの生理情報を含んでもよい。関係性に寄与する特徴量としては、ユーザの感情変化や会話中の行動、動作/感情/生理指標などがユーザ間で同期する同調と呼ばれる現象など、様々な特徴量が公知である。以下、関係性指標を算出するために、情報処理部120がユーザ情報から算出する特徴量の集合を「ユーザ特徴量群」という。なお、1つの端末100の情報処理部120が算出するユーザ特徴量群は、当該端末100に対応する一人のユーザに関するユーザ情報の特徴量の集合である。
【0025】
ユーザ情報に基づいてユーザ特徴量群を算出する方法について説明する。なお、情報処理部120がユーザ情報を特徴量化する際には、特徴量化の直前にノイズを除去するノイズ除去処理などのデータクレンジング処理を行う。
【0026】
情報処理部120は、画像情報取得部111が取得する画像情報からは、アクションユニットなどと呼ばれる表情に深く関連する表情筋動作群の発現履歴を画像処理により求めて特徴量化する。情報処理部120は、算出されたアクションユニットから基本6感情(怒り(anger)、嫌悪(disgust)、恐怖(fear)、喜び(happiness)、悲しみ(sadness)、驚き(surprise))に中立(neutral)を加えた各感情の感情強度時系列情報を算出し、当該感情強度時系列情報を特徴量としてもよい。情報処理部120は、更に、感情強度時系列情報から、感情の変化回数や時間比率、及びユーザ間の感情の一致度を算出し、算出結果(変化回数、時間比率、感情の一致度等)を特徴量としてもよい。
【0027】
情報処理部120は、音声情報取得部112が取得する音声情報からは、ユーザの音声に特有の韻律特徴量(テンポ・ピッチ、エネルギーなど)や複数のユーザ間の会話に関する特徴量(発話回数、発言比率、ターンテイキング数、オーバーラップ時間など)を音声信号処理により算出する。
【0028】
情報処理部120は、業務情報取得部113が取得する業務情報からは、一例として、性別、年齢、所属、職位、勤続年数、担当業務、稼働時間、eメール・チャットの送受信履歴を特徴量として取得する。情報処理部120は、また、業務情報を加工することにより得られる、コミュニケーション活発度、コミュニケーションネットワークの大きさ、などの情報を特徴量として取得してもよい。
【0029】
また、情報取得部110がユーザの生理情報を取得する場合、情報処理部120は、当該生理情報から、ストレスや緊張の時系列変化を示す情報を特徴量として算出してもよい。
【0030】
なお、情報処理部120のデータクレンジング処理や特徴量化は、上記の方法に限定されるものではなく、公知の技術を用いることができる。また、ユーザ情報からユーザ特徴量群を算出する機能は、情報処理サーバ400の情報処理部420が実現してもよい。この場合、各端末100の情報通信部130は、当該端末100の情報取得部110が取得したユーザ情報を情報処理サーバ400へ送信すればよい。又は、ユーザ情報のうち、業務情報については、情報処理サーバ400が業務情報管理サーバ300から取得してもよい。そうする場合、各端末100の情報通信部130は、当該端末100の情報取得部110が取得したユーザ会議情報を情報処理サーバ400へ送信すればよい。
【0031】
<情報通信部130>
情報通信部130は、ネットワーク中継装置200及びネットワーク500を介して、業務情報管理サーバ300及び情報処理サーバ400と情報通信を行う。情報通信部130は、業務情報管理サーバ300との情報通信においては、例えば、端末100に対応するユーザに係る業務情報のリクエストの送信と、当該ユーザの業務情報の受信とを行う。情報通信部130は、情報処理サーバとの情報通信においては、例えば、情報処理部120が算出し、記憶部150に保存されているユーザ特徴量群の送信と、情報処理サーバ400が生成する提示情報の受信とを行う。
【0032】
<情報提示部140>
情報提示部140は、例えば、端末100のユーザによる操作に応じ、情報通信部130を介して情報処理サーバ400から提示情報を受信(取得)し、当該提示情報の提示を行う。提示情報とは、情報処理サーバ400によって算出された関係性指標をユーザに提示するための情報をいう。例えば、ユーザは、端末100に対して過去の会議の識別情報(以下、「会議ID」という。)を入力することで、当該会議の提示情報を参照することができる。提示情報の提示方法の一例としては、端末100のモニタ(表示装置)やプロジェクタなどにより視覚情報として出力する方法、スピーカなどにより音声情報として出力する方法、又はユーザが装着するウェアラブルデバイスなどにより振動情報として出力する方法などが挙げられるが、これに限定しない。また、提示情報の提示先としては、端末100を使用するユーザ個人や、ユーザが所属するチームTa又はチームTa外の人物等、端末100以外の端末を使用する人物等などが挙げられるが、これに限定しない。
【0033】
<記憶部150>
記憶部150は、例えば、情報取得部110が取得するユーザ情報、情報処理部120により算出されるユーザ特徴量群、及び情報処理サーバ400から受信された提示情報の一時保存を行う。
【0034】
[業務情報管理サーバ300]
業務情報管理サーバ300について説明する。業務情報管理サーバ300は、業務情報を、ユーザごと又はチームごとに収集し、ユーザ又はチームのIDに関連付けて記憶及び管理する。ユーザごとに区別される業務情報は、ユーザのID(以下、「ユーザID」という。)に関連付けられる。チームごとに区別される業務情報(例えば、チームに関連するイベントの情報等)は、チームのID(以下、「チームID」という。)に関連付けられる。業務情報管理サーバ300は、各ユーザがいずれのチームに属するのかを示す情報(すなわち、ユーザIDとチームIDとの対応情報)も記憶する。したがって、業務情報管理サーバ300は、或るユーザの業務情報に対して、当該ユーザが属するチームの業務情報を含めることが可能である。業務情報管理サーバ300は、ネットワーク500を介して、ユーザIDや業務情報の種類等を含むリクエストを受信すると、リクエストの送信先へリクエストの内容で指定された業務情報を送信する。
【0035】
[情報処理サーバ400の機能構成例]
図4は、情報処理サーバ400の機能構成例を示す図である。図4において、情報処理サーバ400は、情報通信部410、情報処理部420、関係性指標算出部430及び提示情報生成部440を有する。これら各部は、情報処理サーバ400にインストールされた1以上のプログラムが、プロセッサ404に実行させる処理により実現される。情報処理サーバ400は、また、記憶部450を利用する。記憶部450は、例えば、補助記憶装置402、又は情報処理サーバ400にネットワークを介して接続可能な記憶装置等を用いて実現可能である。
【0036】
<情報通信部410>
情報通信部410は、ネットワーク500を介して、端末100及び業務情報管理サーバ300との情報通信を行う。情報通信部410は、端末100との情報通信においては、例えば、各端末100の情報処理部120が算出するユーザ特徴量群と会議IDと各端末100から受信し、受信したユーザ特徴量群を受信した会議IDに関連付けて記憶部450に保存する。情報通信部410は、また、提示情報生成部440が生成する提示情報を送信する。情報通信部410は、業務情報管理サーバ300との情報通信においては、例えば、各ユーザ又はチームTaの業務情報のリクエストを送信し、各ユーザ又はチームTaの業務情報を受信する。
【0037】
<情報処理部420>
情報処理部420は、情報加工処理や、情報処理部420を構成する他の機能部間の情報の授受の仲介を行う。但し、情報処理部420は、各ユーザのユーザ情報について、ユーザ特徴量群を算出してもよい。
【0038】
<関係性指標算出部430>
関係性指標算出部430は、各ユーザのユーザ特徴量群からチームTaの関係性指標を算出する。関係性指標とは、チームTa内の人間関係に関する或る一側面の程度の評価を与える評価値、又は、人間関係の2つ以上の側面のそれぞれに対する前記評価値により構成される数値の組、又は人間関係の2つ以上の側面のそれぞれに対する前記評価値に或る法則(例えば、加重平均演算)を適用することにより導出される数値若しくは複数の数値の組をいう。関係性指標としては、学術分野では様々な概念が公知になっている。例えば、「Edmondson, A. (1999). Psychological safety and learning behavior in work teams. Administrative Science Quarterly, 44 (2), 350-383」における心理的安全性、特許第5691073号における結束度、その他において提示されているエンゲージメントスコアなどの指標が関係性指標として用いられてもよい。また、「石井遼介、(2020)、心理的安全性のつくりかた、日本能率協会マネジメントセンター」では、心理的安全性はさらに複数の要素に分割可能であることが示されており、心理的安全性を構成する要素としての「話しやすさ」などが関係性指標として用いられてもよい。
【0039】
関係性指標算出部430が関係性指標を算出する方法としては、機械学習による方法を採用することができる。事前調査を実施して複数人のユーザ特徴量群と当該複数人の関係性指標との組を収集することにより学習データを構築する。当該学習データを用いて、例えば、線形回帰モデル、決定木、ランダムフォレスト、サポートベクターマシン、ニューラルネットワークなどの学習モデルを学習させることにより、複数人のユーザ特徴量群から関係性指標の予測を行う予測モデルを構築することができる。関係性指標算出部430は、このように構築された予測モデルを用いて、各ユーザのユーザ特徴量群からチームTaの関係性指標を算出する。ここで、事前調査における関係性指標の導出には、例えば、アンケートによる方法を用いることができる。ここでいう事前調査は、関係性改善支援システム1の構築時に実施してもよいし、関係性改善支援システム1を利用者に提供する際に、利用者を対象にして実施してもよい。また、関係性改善支援システム1の運用開始後に、定期的又は不定期に利用者を対象にした前記調査を実施し、それにより構成される学習データを用いて学習モデルを更新してもよい。また、学習モデルとしては、複数の学習モデルをアンサンブル法により融合することにより得られるモデルが使用されてもよいし、その他の公知のモデルが使用されてもよい。
【0040】
また、関係性指標算出部430は、関係性指標の算出時に、ユーザ特徴量群を構成する各特徴量が算出結果に与えた影響の程度を示す特徴量影響度情報を特徴量ごとに算出してもよい。特徴量影響度情報の算出には、例えば、「Scott M. Lundberg, Su-In Lee (2017), A Unified Approach to Interpreting Model Predictions, Proceedings of the 31st International Conference on Neural Information Processing Systems, pp.4768-4777」に開示された技術を用いることができる。
【0041】
また、関係性指標算出部430は、単一の会議全体に対応する関係性指標を算出してもよいし、単一の会議を複数のセグメントに分割し、各々のセグメントに対して関係性指標を算出し、このようにして算出された複数の関係性指標を対応するセグメントの時系列順に整列した時系列情報を生成してもよい。
【0042】
<記憶部450>
記憶部450は、例えば、ネットワーク500から送信される情報の一時保存や、後述する提示情報生成部440により生成される提示情報の一時保存を行う。
【0043】
また、記憶部450は、現在から過去の一定期間において関係性指標算出部430により算出された関係性指標を保存する。
【0044】
<提示情報生成部440>
提示情報生成部440は、関係性指標算出部430が算出した関係性指標に基づき、端末100の情報提示部140に提示させる提示情報を生成する。なお、提示情報生成部440の機能は端末100の情報提示部140が実現してよい。
【0045】
提示情報生成部440は、関係性指標を数値として表現した情報や、関係性指標の大きさに対応した文字列(例えば、「高」、「低」など)を提示情報として生成してもよい。
【0046】
また、提示情報生成部440は、現在から過去の一定期間において関係性指標算出部430により算出され、記憶部450に保存された関係性指標をグラフとして図示したものや、関係性指標の変化点を強調表示した情報を提示情報として生成してもよい。この際、提示情報生成部440は、或る特徴的な値(例えば、他チームの関係性指標の平均値など)の位置を示す情報(例えば、水平線)をも示すグラフを提示情報として生成してもよい。
【0047】
また、提示情報生成部440は、図5に例示されるような、現在から過去の一定期間において関係性指標算出部430により算出され、記憶部450に記憶されている関係性指標をグラフとして図示したものに、業務情報管理サーバ300から得られる業務に関連するイベント情報が示すイベントの発生時期情報を付した情報を提示情報として生成してもよい。すなわち、図5が示すグラフg1において、横軸は時間(日付)であり、縦軸は関係性指標である。図5では、12/6、12/7、12/8の各日にチームTaが行った会議における関係性指標がグラフg1にプロットされている。また、12/6から12/7にかけてのチームTaに関連するイベント情報(「○○社と商談成立」、「△△△最終納期」)や、12/7から12/8にかけてのチームTaに関連するイベント情報(「□□さん移動」、「××の実装完了」)がグラフg1の時間軸(横軸)に対応付けられている。図5のような提示情報によれば、関係性指標の推移を把握可能となり、また、イベントと関係性指標との関係も把握可能となる。これにより、提示情報の閲覧者(以下、単に「閲覧者」という。)は業務上のイベントと関係性指標の変動との因果関係(関係性指標の返還の原因)を推察することができる。
【0048】
また、提示情報生成部440は、提示情報に対して特徴量影響度情報を付加してもよい。例えば、「発話比率が高いこと」が相対的に大きく影響して関係性指標を高く評価することになった場合(すなわち、発話比率の影響度が大きい場合)、提示情報生成部440は、「関係性指標が高く評価された理由:発話比率が高い」などの文字列が表示されるように当該文字列を提示情報に付加する。これにより、閲覧者は、会議におけるメンバの状態と関係性指標との関連を推察することができる。
【0049】
また、提示情報生成部440は、関係性指標算出部430が単一の会議に対して関係性指標を時系列情報として出力する場合には、関係性指標が特徴的な値(例えば、最大値、最小値など)を取る時刻(セグメント)に対応するユーザ会議情報の一部分を提示情報として生成してもよい。これにより、閲覧者は、関係性指標が特徴的である時刻(セグメント)におけるメンバの状態を確認することができ、会議におけるメンバの状態と関係性指標との関連を推察することができる。ユーザ会議情報の一部分を提示情報に含める場合、各端末100の情報通信部130は、ユーザ特徴量群だけでなくユーザ会議情報をも会議ID及びユーザ特徴量群と共に情報処理サーバ400へ送信し、情報処理サーバ400は、ユーザ会議情報も会議IDに関連付けて記憶部450に保存しておけばよい。そうすることで、提示情報生成部440は、各会議におけるユーザ会議情報を利用することができる。
【0050】
また、提示情報生成部440は、図6で示されるような、上記で示した各種の提示情報の一部又は全部に加え、ユーザ名及びチームTa名などの情報を統合した情報を提示情報として生成してもよい。図6の提示情報において、グラフg2は、図5のグラフg1と同様に、会議ごとの関係性指標とイベント情報とを関連付けて示すグラフである。グラフg3は、1つの会議(前回の会議)を複数に分割するセグメントごとに、当該セグメントの関係性指標を示すグラフである。なお、セグメントごとの関係性指標も記憶部450から取得可能である。領域a1は、関係性指標が特徴的な値(図6では最小値)を取る時刻(セグメント)に対応するユーザ会議情報に係る画像情報を表示する領域である。いずれのユーザの画像情報を表示するかについては、閲覧者に選択させるようにしてもよい。領域a2は、特徴的な値(図6では最小値)の関係性指標に対する特徴量影響度情報に基づく文字列を含む。
【0051】
[処理手順]
図7は、第1の実施の形態における関係性改善支援システム1が会議ごとに実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【0052】
ステップS110において、或る会議(以下、「対象会議」という。)の開始から終了までの間に、会議に参加している各ユーザの端末100の情報取得部110は、当該端末100のユーザに関するユーザ会議情報を取得及び記録する。
【0053】
対象会議の最中の任意のタイミング又は対象会議が終了したタイミングで、各ユーザの端末100の業務情報取得部113は、当該端末100のユーザの業務情報を業務情報管理サーバ300から取得する(S120)。
【0054】
ステップS120に続いて、各ユーザの端末100の情報処理部120は、ステップS110において記録されたユーザ会議情報とステップS120において取得された業務情報とを含むユーザ情報に基づいて、当該端末100のユーザのユーザ特徴量群を算出する(S130)。各ユーザの端末100の情報通信部130は、算出されたユーザ特徴量群と対象会議の会議IDとをネットワーク500を介して情報処理サーバ400へ送信する。この際、情報通信部130は、ユーザ会議情報又はユーザ情報をも情報処理サーバ400に送信してもよい。
【0055】
情報処理サーバ400の情報通信部410が各端末100から送信されたユーザ特徴量群等(すなわち、チームTa内の各ユーザのユーザ特徴量群やユーザ会議情報またはユーザ情報)及び会議IDを受信すると、受信した情報を当該会議IDに関連付けて記憶部450に保存する。続いて、関係性指標算出部430は、会議IDが共通する各ユーザのユーザ特徴量群に基づき1つの(1組の)関係性指標を算出する(S140)。関係性指標算出部430は、算出した関係性指標を会議IDに関連付けて記憶部450へ保存する。この際、関係性指標算出部430は、各特徴量について特徴量影響度情報を算出してもよい。この場合、関係性指標算出部430は、算出した特徴量影響度情報も会議IDに関連付けて記憶部450へ保存する。
【0056】
なお、ステップS140は、必ずしも会議の実施のタイミングに同期して行われなくてもよい。
【0057】
図8は、第1の実施の形態における提示情報の提示処理の処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【0058】
ステップS210において、或る端末100(以下、「対象端末100」という。)の情報提示部140は、提示情報の提示要求を受け付ける。この際、提示対象とする会議を特定するための情報(以下、「会議特定情報」という。)が指定される。例えば、1以上の会議IDが指定されてもよいし、チームID及び期間が指定されてもよい。チームID及び期間が指定される場合、当該チームIDに係る会議であって、当該期間において実施された1以上の会議が提示対象となる。対象端末100の情報通信部130は、当該提示要求において指定された情報を含む、提示情報の生成要求を情報処理サーバ400へ送信する。なお、ステップS210は、任意のタイミングで実行可能である。すなわち、提示情報の閲覧は、閲覧者の任意のタイミングで実施可能である。
【0059】
情報処理サーバ400の情報通信部410が提示情報の生成要求を受信すると、提示情報生成部440は、当該生成要求において指定された会議特定情報に該当する各会議の関係性指標等を記憶部450から取得する(S220)。この際、提示情報生成部440は、必要に応じて(提示情報の形態に応じて)、会議特定情報に係る会議の会議IDに関連付けられている特徴量影響度情報や各参加者のユーザ会議情報を記憶部450から取得したり、当該各参加者の業務情報を業務情報管理サーバ300から取得したりする。
【0060】
続いて、提示情報生成部440は、ステップS220において取得した情報に基づいて提示情報を生成する(S230)。例えば、図5図6に示したような提示情報が生成される。情報処理サーバ400の情報通信部410は、生成された提示情報を対象端末100へ送信する。
【0061】
対象端末100の情報通信部130が当該提示情報を受信すると、対象端末100の情報提示部140は、当該提示情報を出力(表示)する(S240)。その結果、閲覧者は、当該提示情報を閲覧することができる。
【0062】
なお、提示情報生成部440が生成する提示情報は、端末100の記憶部150又は情報処理サーバ400の記憶部450に保存されてもよい。この場合、ユーザが所望するタイミングで、保存されている提示情報が情報提示部140に伝達され、情報提示部140が当該提示情報を出力してもよい。
【0063】
また、ステップS210以降、又はステップS220以降が図7のステップS130に続いて実行されてもよい。この場合、会議中の任意のタイミング、又は会議の終了後に、当該会議の各参加者の端末100に提示情報が表示されることになる。
【0064】
上述したように、第1の実施の形態によれば、チームを構成する複数のユーザについて人間関係の状態を示す関係性指標を推定され、当該関係性指標を提示する提示情報が生成される。したがって、ユーザは、当該提示情報を参照することで、どのようにすれば人間関係を改善するのかについてヒントを得ることができる。その結果、複数人の人間関係の改善を支援することができる。例えば、チームの人間関係の状態を理想的な状態に近づけることができる。
【0065】
さらに、関係性指標として、心理的安全性、結束度、エンゲージメントのような人間関係の状態をより直接的に示す関係性指標を用いることで、人間関係をより直接的に示す提示情報をユーザは参照することができる。それにより、複数人の人間関係の改善を、より直接的に支援することができる。
【0066】
また、各ユーザ特徴量について特徴量影響度情報を算出して、関係性指標の推定結果に影響を与えた因子の特定を可能とする提示情報が生成される場合には、関係性の改善を容易化することができる。
【0067】
なお、従来のコミュニケーションの状態を評価して、コミュニケーションに関わる人間の関係を評価・提示する技術では、コミュニケーション自体は改善できても、背後の人間関係を考慮できていないため、表面的な評価・改善にとどまってしまう。本実施の形態によれば、背後の人間関係の手がかりとなりうる業務情報をも用いて関係性指標を推定することで、コミュニケーションの背後にある人間関係を考慮して関係性指標を推定することができる。その結果、表面的な改善支援となり十分な効果が得られないといった可能性を低下させることができる。
【0068】
また、人間関係を評価するにはアンケート等の手法があるが、アンケート実施の負荷が大きく高頻度で実施ができず、かつ、回答が主観的であり客観性が不足するという問題がある。本実施の形態によれば、アンケートを不要とすることができるため、このような問題を回避することができる。その結果、アンケートの実施による負担から各ユーザを解放して人間関係の状態の評価を高頻度に実施することができ、最新の状態が把握できる可能性を高めることができる。
【0069】
次に、第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態では第1の実施の形態と異なる点について説明する。したがって、特に言及されない点については、第1の実施の形態と同様でもよい。
【0070】
第1の実施の形態では、関係性指標及び関係性指標に影響を及ぼす因子の考察に用いることができる情報が提示情報として提示される。これに基づき改善をおこなう場合、改善の程度は個人の力量に左右され適切な改善効果が得られない可能性がある。そこで、第2の実施の形態では、具体的な改善方法も提案する例について説明する。
【0071】
上記したように、心理的安全性は複数の因子(関係性指標)に分割できると言われており、その中に"話しやすさ"の因子が存在する。ここでは、便宜上、関係性指標算出部430は、この話しやすさの程度を示す数値を関係性指標の一例として算出することとする。話しやすさの程度を数値として表現したものを、以下「話しやすさ指標」という。
【0072】
第2の実施の形態では、図8のステップS230において、提示情報生成部440は、関係性指標算出部430によって算出された話しやすさ指標と特徴量影響度情報とに基づき関係性改善案情報を生成する。より具体的には、提示情報生成部440は、次の手順で関係性改善案情報を生成する。
【0073】
まず、提示情報生成部440は、話しやすさ指標の算出に伴って生成される特徴量影響度情報に基づいて、ユーザ特徴量群の中から、話しやすさ指標の算出の過程において算出結果に相対的に良い影響を与えた特徴量及び相対的に悪い影響を与えた特徴量を特定する。例えば、特徴量影響度情報が、良い影響については正の値となり、悪い影響については負の値となり、絶対値によって影響の大きさを示す場合には、各特徴量の特徴量影響度情報の正負とその絶対値に基づいて、相対的に良い影響を与えた特徴量及び相対的に悪い影響を与えた特徴量を特定することができる。
【0074】
続いて、提示情報生成部440は、良い影響を与えた特徴量を維持するための方法、又は悪い影響を与えた特徴量を改善するための方法を文字列として表現したものを関係性改善案情報として生成する。
【0075】
このとき、提示情報生成部440は、より具体的な改善案を表現する画像、音声、動画などを関係性改善案情報に含めてもよい。これらの画像・音声・動画は予め製作したものであってもよいし、過去のユーザ情報から生成したものであってもよい。例えば、話しやすさ指標が低く評価されたことに対して、発話の抑揚の小さいことが相対的に強く影響したと判断される場合には、提示情報生成部440は、「発話の抑揚の小ささがチーム内の話しやすさに影響しているようです。発話する際には抑揚を意識するようにしましょう。」という意味のメッセージが表示されるように関係性改善案情報を生成するとともに、発話時の適切な抑揚付けの実施例を記録した音声又は動画を関係性改善案情報に付与する。なお、抑揚は、韻律特徴量(ピッチ)の時間的な変化量に基づいて算出可能な特徴量である。
【0076】
提示情報生成部440は、第1の実施の形態と同様の方法で生成した提示情報に関係性改善案情報を付加したものを提示情報として生成する。提示情報は、記憶部150又は記憶部450に保存され、過去の任意の会議に基づく改善案に関する提示情報をユーザが任意のタイミングで参照できるようにしてもよい。
【0077】
情報処理部120は、会議中において、情報取得部110から取得されるユーザ情報に基づきリアルタイムにユーザ特徴量群の一部又は全部を算出し、前回の会議について生成された関係性改善案情報が示す改善案が適切に実施されているか否かをリアルタイムに判定する。このとき、情報処理部120は、前回の会議より更に過去の会議に基づき生成された1つ以上の関係性改善案情報を参照し、複数の改善策に対して判定を実行してもよい。
【0078】
情報提示部140は、情報処理部120により改善案が実施されていないと判定された場合には、当該改善案が実施されていないことを示す情報をリアルタイムに端末100に表示する。
【0079】
例えば、前回の会議で声のトーンの低さが話しやすさに悪い影響を与えていることが検知され、その改善案として「声のトーンを上げること」を示す関係性改善案情報が生成されていた場合、情報提示部140は、その次の会議において、ユーザが声のトーンが低い状態にある際に、ユーザに当該改善案が実施されていないことを示す情報を表示する。なお、声のトーンは、例えば、韻律特徴量(ピッチ等)に基づいて算出可能な特徴量である。
【0080】
図9は、第2の実施の形態において改善案が実施されていないことを示す情報の出力例を示す図である。図9において、領域a1には、関係性改善案情報が含まれている。領域a2には、現在進行中の会議において当該関係性改善案情報が示す改善案が実施されていないことを示すメッセージと、当該関係性改善案情報の対象とされている特徴量の当該会議における推移を示すグラフとが含まれている。
【0081】
なお、情報提示部140は、改善案が実施されていないことを、音、振動、光等によって提示(出力)してもよい。そうすることで、当該改善案が実施されていないことの提示にユーザが即座に気付く可能性を高めることができる。
【0082】
上述したように、第2の実施の形態によれば、具体的な改善案も提示される。したがって、ユーザごとに改善のための施策にばらつきが生じる可能性を低下させることができ、人間関係の改善をより一層期待することができる。
【0083】
次に、第3の実施の形態について説明する。第3の実施の形態では第1又は第2の実施の形態と異なる点について説明する。したがって、特に言及されない点については、第1又は第2の実施の形態と同様でもよい。
【0084】
第1の実施の形態及び第2の実施の形態は、既存のチームの関係性に関する実施形態であったが、第3の実施の形態では、チーム構成の変更を支援する例について説明する。ここでは、チームに新規に参入するメンバを選抜する場合について説明する。チームへ新規に参入するメンバの候補者が複数名存在するものとする。第3の実施の形態によれば、新規参入候補者の中からチームの関係性を最も向上しうる候補者を示すことができる。
【0085】
図10は、第3の実施の形態における関係性改善支援システム1の構成例を示す図である。図10中、図1と同一部分には同一符号を付し、その説明は省略する。
【0086】
図10においては、更に、チームTbに所属する各メンバがユーザである端末100D、端末100E及び端末100Fがネットワーク中継装置200を介してネットワーク500に接続する。チームTbに所属する3人のユーザがチームTaへの新規参入の候補者であると仮定する。この仮定はあくまで便宜的なものであって、例えば、候補者はチームTa以外の異なる複数のチームに散在してもよい。
【0087】
なお、チーム数及び装置の個数は図10に示したものに限定されない。また、ネットワーク中継装置200、業務情報管理サーバ300、情報処理サーバ400はチームごとに独立して設けられ、それぞれがネットワーク500に接続されてもよい。
【0088】
第3の実施の形態において、関係性指標算出部430は、チームTaの任意の会議におけるチームTaのメンバ全員のユーザ特徴量群と、チームTbの任意の会議における候補者のユーザ特徴量群とに基づいて、候補者ごとに、チームTaのメンバ全員と当該候補者との集合に関する関係性指標を算出する。これにより、候補者ごとに、当該候補者が実際にチームTaに参入した際の関係性指標を予測することができる。以下、候補者ごとに算出される関係性指標を「参入時推定関係性指標」という。
【0089】
なお、参入時推定関係性指標は、候補者のユーザ特徴量群を含めて算出した関係性指標と、当該候補者のユーザ特徴量群を含めずに算出した関係性指標との差分であってもよい。
【0090】
また、関係性指標算出部430は、2人以上の候補者の組み合わせについて、1つの(1組の)参入時推定関係性指標を算出してもよい。すなわち、関係性指標算出部430は、1回の参入時推定関係性指標の算出において、2人以上の候補者のユーザ特徴量群を用いてもよい。この場合、関係性指標算出部430は、全ての候補者の組み合わせのそれぞれについて参入時推定関係性指標を算出する。例えば、候補者としてA,B,Cが存在し、これらから2人をチームTaに参入させることを考える場合には、関係性指標算出部430は、(A,B),(A,C),(B,C)の候補者の組み合わせのそれぞれに対応する参入時推定関係性指標を算出する。
【0091】
提示情報生成部440は、関係性指標算出部430によって候補者(の組み合わせ)ごとに算出された参入時推定関係性指標を、候補者情報と共に提示する提示情報を生成する。ここで、候補者情報は候補者の名前であってもよいし、所属や顔画像及びその他の業務情報を更に含んでもよい。なお、或る候補者の候補者情報は、当該候補者について業務情報管理サーバ300が記憶している業務情報から取得可能である。
【0092】
提示情報生成部440は、候補者(の組み合わせ)の中で最良の参入時推定関係性指標に対応する候補者(の組み合わせ)の候補者情報が強調表示されるように提示情報を生成してもよい。又は、提示情報生成部440は、図11に示されるように、候補者情報を参入時推定関係性指標の昇順又は降順に整列し、候補者情報の順位付けの情報を含むように提示情報を生成してもよい。
【0093】
上述したように、第3の実施の形態によれば、関係性を向上させるチーム構成の変更を支援することができる。
【0094】
なお、上記各実施の形態において、情報処理サーバ400、又は情報処理サーバ400及び端末100は、情報処理システム及び組織構成支援システムの一例である。業務情報管理サーバ300は、業務情報記憶部の一例である。画像情報取得部111及び音声情報取得部112は、ユーザ会議情報取得部の一例である。情報処理部120は、判定部の一例である。情報提示部140は、出力部の一例である。
【0095】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 関係性改善支援システム
100 端末
101 記録媒体
102 補助記憶装置
103 メモリ装置
104 プロセッサ
105 インタフェース装置
106 ドライブ装置
110 情報取得部
111 画像情報取得部
112 音声情報取得部
113 業務情報取得部
120 情報処理部
130 情報通信部
140 情報提示部
150 記憶部
200 ネットワーク中継装置
300 業務情報管理サーバ
400 情報処理サーバ
410 情報通信部
420 情報処理部
430 関係性指標算出部
440 提示情報生成部
450 記憶部
B バス
【先行技術文献】
【特許文献】
【0097】
【特許文献1】特開2020-113197号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11