(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132649
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20230914BHJP
H05H 1/46 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
H01L21/302 102
H05H1/46 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038101
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】久保田 直樹
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084AA03
2G084BB26
2G084BB27
2G084CC12
2G084CC13
2G084CC14
2G084CC33
2G084DD02
2G084DD15
2G084DD24
2G084DD55
2G084FF04
2G084FF21
2G084FF23
5F004AA14
5F004BA20
5F004BB13
5F004BB32
5F004CA06
5F004DA23
(57)【要約】
【課題】逆スパッタによる基板の処理の際に、処理容器内に設けられるシールド部材の駆動部分が逆スパッタされてパーティクルが発生することを抑制できる技術を提供する。
【解決手段】プラズマ中のイオンを基板に作用させて基板の処理を行う基板処理装置は、処理すべき基板が配置され、内部にプラズマが生成される処理容器と、処理容器内に設けられた、基板を載置するステージと、ステージにプラズマ中のイオンを基板に作用させるための高周波電力を印加する高周波電源と、処理容器内に設けられた、駆動部分を有するシールド部材と、シールド部材の駆動部分を駆動させる駆動機構と、シールド部材の駆動部分と接地された接地部分とを接続し、駆動部分の駆動に追従して変形する可撓性を有する導電性接続プレートとを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ中のイオンを基板に作用させて基板の処理を行う基板処理装置であって、
処理すべき基板が配置され、内部にプラズマが生成される処理容器と、
前記処理容器内に設けられた、基板を載置するステージと、
前記ステージに前記プラズマ中のイオンを前記基板に作用させるための高周波電力を印加する高周波電源と、
前記処理容器内に設けられた、駆動部分を有するシールド部材と、
前記シールド部材の前記駆動部分を駆動させる駆動機構と、
前記シールド部材の前記駆動部分と接地された接地部分とを接続し、前記駆動部分の駆動に追従して変形する可撓性を有する導電性接続プレートと、
を有する、基板処理装置。
【請求項2】
前記シールド部材は、固定的に設けられた上部シールドと、前記上部シールドに対して接離するように昇降する、前記駆動部分としての下部シールドと、を有し、前記下部シールドが上昇位置にある場合に、前記上部シールドと前記下部シールドとで前記基板を処理する処理空間を形成する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記上部シールドは、固定部材により前記処理容器に固定されている、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記可撓性を有する導電性接続プレートは、前記下部シールドが下降位置にある場合にU字状に縮退し、前記下部シールドが上昇位置にある場合に伸長する、請求項2または請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記駆動機構は、前記下部シールドを昇降させる昇降機構であり、前記可撓性を有する導電性接続プレートは、前記昇降機構に対応した位置に設けられている、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記昇降機構が複数設けられ、前記可撓性を有する導電性接続プレートは、複数の前記昇降機構に対応した複数の位置に設けられている、請求項5に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記接地部分は、前記処理容器を介して接地される、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記接地部分は、接地用ガスケットまたはシールドフィンガーを有する接地部材である、請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記可撓性を有する導電性接続プレートは、銅で構成される、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記処理容器内の前記プラズマはプラスイオンを含み、前記ステージに高周波電力を印加した際に、前記プラスイオンが前記基板の表面に作用し、その際に、前記シールド部材の前記駆動部分にマイナス電荷がたまり、前記可撓性を有する導電性接続プレートを介して前記マイナス電荷がリリースされる、請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記プラズマは、アルゴンガスのプラズマであり、前記プラズマ中のアルゴンイオンが前記基板の表面に作用する、請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記ステージに形成された挿通孔に挿通され、前記ステージの上面に対し突別可能でかつ前記基板を昇降する複数の昇降ピンと、
前記昇降ピンを昇降させる駆動部と、前記高周波電源のインピーダンス整合を行うマッチングボックスと、
前記マッチングボックスを固定するマッチングボックス固定プレートと、
前記駆動部と前記マッチングボックス固定プレートとの間に固定される、前記高周波電源からの高周波をシールドするRFシールドと、
をさらに有し、
前記RFシールドは、導電性およびゴム弾性を有する材料で構成されている、請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項13】
基板処理装置によりプラズマ中のイオンを基板に作用させて基板の処理を行う基板処理方法であって、
前記基板処理装置は、
処理すべき基板が配置される処理容器と、
前記処理容器内に設けられた基板が載置されるステージと、前記ステージに前記プラズマ中のイオンを前記基板に作用させるための高周波電力を印加する高周波電源と、
前記処理容器内に設けられ、固定的に設けられた上部シールドと、前記上部シールドに対して近接または離隔するように昇降する下部シールドとを有するシールド部材と、
前記下部シールドを駆動させる駆動機構と、
を有し、
前記シールド部材の前記駆動部分と接地された接地部分との間に可撓性を有する導電性接続プレートを設けた状態とすることと、
前記下部シールドを下降位置にし、前記可撓性を有する導電性接続プレートを縮退させた状態で、前記処理容器内に基板を搬入して前記ステージ上に載置することと、
前記下部シールドを上昇位置に移動させ、それに追従して前記可撓性を有する導電性接続プレートを伸長させた状態とすることと、
前記下部シールドを前記上昇位置にした状態で、前記処理容器内にプラズマを生成するとともに、前記ステージに高周波電力を印加して、前記基板の表面にプラズマ中のイオンを作用させて前記基板の処理を行うことと、
前記基板の処理の際に前記下部シールドに溜まった電荷を、前記可撓性を有する導電性接続プレートおよび前記接地部分を介してリリースすることと、
を有する、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造過程では、例えばPVDやCVD等、基板上に膜を形成する成膜工程が存在する。基板上には不可避的に自然酸化膜が形成されるが、自然酸化膜が形成されたまま成膜工程が実施されると膜特性等が劣化するおそれがある。このため、成膜工程に先立って、基板に高周波電力を印加し、Arガスのプラズマを作用させて逆スパッタにより基板表面のクリーニング処理を行うことが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、逆スパッタによる基板の処理の際に、処理容器内に設けられるシールド部材の駆動部分が逆スパッタされてパーティクルが発生することを抑制できる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る基板処理装置は、プラズマ中のイオンを基板に作用させて基板の処理を行う基板処理装置であって、処理すべき基板が配置され、内部にプラズマが生成される処理容器と、前記処理容器内に設けられた、基板を載置するステージと、前記ステージに前記プラズマ中のイオンを前記基板に作用させるための高周波電力を印加する高周波電源と、前記処理容器内に設けられた、駆動部分を有するシールド部材と、前記シールド部材の前記駆動部分を駆動させる駆動機構と、前記シールド部材の前記駆動部分と接地された接地部分とを接続し、前記駆動部分の駆動に追従して変形する可撓性を有する導電性接続プレートと、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、逆スパッタによる基板の処理の際に、処理容器内に設けられるシールド部材の駆動部分が逆スパッタされてパーティクルが発生することを抑制できる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態に係る基板処理装置を示す断面図であり、基板搬送時の状態を示す。
【
図2】一実施形態に係る基板処理装置を示す断面図であり、基板処理時の状態を示す。
【
図3】一実施形態に係る基板処理装置の要部の詳細構造を示す斜視図である。
【
図4】昇降ピンの位置調整を説明するための断面図である。
【
図5】昇降ピンの位置調整の後に行われるRFシールドの固定を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して実施形態について具体的に説明する。
図1および
図2は一実施形態に係る基板処理装置を示す断面図であり、
図1は基板搬送時の状態を示し、
図2は基板処理時の状態を示す。
【0009】
基板処理装置100は、基板の表面を逆スパッタによりクリーニングするものであり、略円筒状の金属製の処理容器1を有している。処理容器1は接地ライン1aを介して接地されている。処理容器1の内部には、基板Wを水平に載置するための金属製のステージ2が設けられている。処理容器1の底部とステージ2との間には、絶縁部材5が介在されている。
【0010】
処理容器1内は、真空ポンプや圧力制御バルブ等を備えた排気装置(図示せず)により、所望の真空度に真空排気可能となっている。また、処理容器1の側壁には、基板Wの搬入出口(図示せず)が設けられ、搬入出口はゲートバルブ(図示せず)により開閉可能となっている。さらに、処理容器1内には、ガス供給機構(図示せず)からArガス等のプラズマ生成用のガスが供給される。さらにまた、基板処理装置100は、処理容器1内にプラズマを生成するためのプラズマ生成機構(図示せず)も有している。プラズマ生成機構は特に限定されないが、誘導結合プラズマやマイクロ波プラズマを生成するものが好適なものとして例示される。
【0011】
ステージ2には複数(例えば3つ)の挿通孔2aが形成されており、挿通孔2aには、その上面に対し突没可能に複数(例えば3本)の昇降ピン3が挿通されている。昇降ピン3は駆動部4によりステージ2の表面に対して突没可能に昇降されるようになっている。そして、駆動部4による昇降ピン3の昇降動作により、ステージ2に対する基板Wの授受が行われるようになっている。なお、ステージ2は、基板の処理に応じて、加熱機構または冷却機構を有していてもよい。
【0012】
ステージ2の底部には、マッチングボックス固定プレート6が取り付けられており、駆動部4はマッチングボックス固定プレート6に支持されている。処理容器1の底部の中央には穴が形成されており、マッチングボックス固定プレート6および駆動部4は、その穴の下方に突出するように設けられている。
【0013】
駆動部4は、駆動機構41と、昇降軸42と、フランジ部43と、昇降板44とを有する。駆動機構41はシリンダ等からなりマッチングボックス固定プレート6の下方に設けられている。マッチングボックス固定プレート6の底部には穴部61が設けられており、駆動機構41から穴部61を通って昇降軸42が上方に延びている。また、昇降軸42はフランジ部43に形成された穴にガイドされて昇降機構41により昇降されるようになっている。昇降軸42の上端に昇降板44が固定されている。昇降板44には上方に延びる昇降ピン3が固定されている。したがって、駆動機構41により昇降軸42を昇降させることにより、昇降板44を介して昇降ピン3が昇降される。フランジ部43は、マッチングボックス固定プレート6の穴部61に挿入された状態でRFシールド50を介してマッチングボックス固定プレート6に支持されている。つまり、駆動部4がRFシールド50を介してマッチングボックス固定プレート6に支持されている。RFシールド50は、高周波電源8からの高周波(RF)をシールドして、高周波が駆動部4を支持するマッチングボックス固定プレート6の穴部61から外部に漏洩することを防止するものであり、中空環状体(Oリング形状)である。
【0014】
マッチングボックス固定プレート6の底部にはマッチングボックス7が固定され、マッチングボックス7には給電線9を介して高周波電源8が接続されている。マッチングボックス7は給電線(図示せず)を介してステージに電気的に接続されている。したがって、高周波電源8からマッチングボックス7を介してステージ2に高周波電力が印加される。ステージ2に高周波電力が印加されることにより、基板WにArイオンのようなイオン(プラスイオン)が引き込まれて基板Wの表面が逆スパッタされる。マッチングボックス7内にはインピーダンス整合回路が設けられている。インピーダンス整合回路は、高周波電源8側のインピーダンスに負荷(プラズマ)インピーダンスを整合させるものである。なお、高周波電源8をプラズマ生成機構としても機能させ、容量結合プラズマを生成するようにしてもよい。
【0015】
ステージ2の上方には、金属製(例えば全面ブラストコーティングされたアルミニウム製)のシールド部材10が設けられている。シールド部材10は、全体が円環状をなし、処理容器1の内壁にプラズマ中の粒子が付着することを防止する防着シールドとして機能する。シールド部材10は、固定的に設けられた上部シールド11と、上部シールド11に対して接離するように昇降可能に設けられた下部シールド12とを有する。
【0016】
上部シールド11は、固定部材(図示せず)により処理容器1に固定されている。例えば処理容器1の底部に固定されている。上部シールド11の外周部には下部へ突出する円環状の突出部13が形成されており、突出部13には円環状の溝部13aが形成されている。下部シールド12は、溝部13aに対応するように円環状の突出部12aが設けられており、下部シールド12が
図2に示す上昇位置にある場合には、突出部12aが溝部13aに挿入され、基板Wが載置されたステージ2の上方に処理空間Sを形成し、基板処理が可能となる。一方、下部シールド12が
図1に示す下降位置にある場合には、ステージ2への基板Wの搬送が可能となる。なお、突出部12aには、処理容器1の搬入出口に対応して基板Wの搬入出用の孔(図示せず)が形成されている。
【0017】
下部シールド12は、2つの昇降機構20により昇降されるように構成されている。昇降機構20は、処理容器1の下方に設けられたシリンダ21と、シリンダ21から処理容器1内を上方に延びるピストン22と、シリンダ21を処理容器1に取り付けるためのフランジ部23とを有する。ピストン22の上端には下部シールド固定部材15が取り付けられており、下部シールド固定部材15に下部シールド12が固定されている。そして、昇降機構20のピストン22の昇降動作により下部シールド12が昇降される。
【0018】
処理容器1の底部には円環状の接地部材32が設けられており、接地部材32の上には取り付け部材31が設けられている。接地部材32は、接地用のガスケットまたはシールドフィンガーを含む。接地部材32は処理容器1に電気的に接続されており、取り付け部材31は接地部材32を介して処理容器1の接地ラインに接続されている。すなわち、取り付け部材31は接地された接地部分として機能する。
【0019】
2つの昇降機構20にそれぞれ対応する下部シールド固定部材15と、対応する取り付け部材31との間は、可撓性を有する導電性接続プレート30により電気的に接続されている。導電性接続プレート30は、下部シールド固定部材15と取り付け部材31とにネジ止めにより固定されており、下部シールド12の昇降に追従して変形する。実際には、
図3の詳細斜視図に示すように、下部シールド固定部材15の上面、および、取り付け部材31の上面に2つの導電性プレート30がネジ止めされている。なお、昇降機構20は2つに限らず、3つ以上の複数設けてもよい。その場合には、各昇降機構20に対応する下部シールド固定部材15にそれぞれ導電性プレート30を設けることができる。
【0020】
可撓性を有する導電性接続プレート30は、可撓性を有する導電性材料であれば特に限定されないが、導電性が良好な銅(Cu)で構成されることが好ましい。
【0021】
導電性接続プレート30は、
図1に示すように下部シールド12が下降位置にある場合に、U字状に縮んだ状態であり、
図2に示すように下部シールドが上昇位置にある場合に伸長するように構成されている。
【0022】
このように、導電性接続プレート30は、可撓性を有しているため、下部シールド12の昇降に追従して変形が可能であり、下部シールド12をその昇降位置にかかわらず、導電性接続プレート30により取り付け部材31を介して処理容器1の接地ラインに繋いだ状態とすることができる。
【0023】
次に、以上のように構成される基板処理装置100の動作について説明する。
まず、
図1に示す、シールド部材10の下部シールド12が下降位置にある状態で、基板Wを処理容器1内に搬入し、ステージ2の上に載置する。基板Wの載置は、複数の昇降ピン3をステージ2の表面から突出させた状態として、搬送装置(図示せず)により基板Wを昇降ピン3上に受け渡し、昇降ピン3を下降させることにより行われる。
【0024】
次いで、下部シールド12を上昇させて、
図2に示すように、シールド部材10内に処理空間Sを形成する。
【0025】
この状態で、処理容器1内にArガス等のガスを供給し、プラズマ生成機構によりプラズマを生成する。そして、高周波電源8からステージ2に高周波電力を印加することにより、プラズマ中のイオン、例えばArイオンのようなプラスイオンが基板Wに引き込まれて、基板W表面が逆スパッタされる。これにより、基板Wの表面層を物理的に除去するクリーニング処理が行われる。
【0026】
クリーニング処理としては、例えば、PVDやCVD等の成膜工程の前処理としての自然酸化膜除去処理を挙げることができる。このときのクリーニング処理は、表面層である自然酸化膜を除去できれば十分である。
【0027】
この種のプラズマを用いた装置においては、一般的に、処理容器内に金属製のシールド部材が設けられ、シールド部材は基板の搬入出のために昇降可能な構造を有している。従来は、このようなシールド部材の昇降部分は、単に昇降機構により昇降されるだけで、昇降部分が上昇した状態では電気的にフローティング状態となっているのが一般的である。
【0028】
しかし、このような場合、基板に例えばArイオンのようなプラスイオンを引き込むと、フローティング状態の昇降部分にマイナス電荷がたまり(マイナスに帯電し)、昇降部分が逆スパッタされてパーティクルが発生するおそれがあることが判明した。
【0029】
例えば、本実施形態のように昇降する下部シールド12が電気的にフローティング状態の場合には、基板処理の際にステージ2に高周波電力を印加して基板WにArイオンを引き込むと、下部シールド12がマイナスに帯電し、下部シールド12が逆スパッタされてパーティクルが発生するおそれがある。
【0030】
下部シールド12が下降状態の場合には、下部シールド12が処理容器1の底部に近いため、下部シールド12を処理容器1の底部の接地ラインに接続して容易にマイナス電荷をリリースすることができる。しかし、下部シールド12が上昇位置では、近くに接地ラインはなく、従来はフローティング状態のままとならざるを得なかった。
【0031】
そこで、本実施形態では、下部シールド12を固定する下部シールド固定部材15と、処理容器1の接地ライン1aに接続されている取り付け部材31との間を、可撓性を有する導電性接続プレート30により電気的に接続する。
【0032】
可撓性を有する導電性接続プレート30は、下部シールド12の昇降に追従して変形が可能であり、下部シールド12をその昇降位置にかかわらず、導電性接続プレート30により取り付け部材31を介して処理容器1の接地ラインに繋いだ状態とすることができる。このため、下部シールド12の位置にかかわらず下部シールド12にたまったマイナス電荷を、導電性接続プレート30を介して接地ライン1aにリリースすることができる。したがって、下部シールド12が逆スパッタされてパーティクルが発生することを防止することができ、パーティクルによるプロセスへの悪影響を抑制することができる。
【0033】
また、可撓性を有する導電性接続プレート30を、昇降機構20と下部シールド12とを固定する下部シールド固定部材15に設けたので設置が容易である。また、2つ(複数)の昇降機構20に対応する位置に導電性接続プレート30を設けることにより、電荷のリリースを容易に行うことができる。
【0034】
次に、昇降ピン3の位置調整とRFシールドの固定の方法について説明する。
【0035】
昇降ピン3の位置調整については、
図4に示すように行われる。最初に、固定部材45により、ステージ2とフランジ部43を固定し、駆動部4をステージ2に固定した状態とする。次に、昇降ピン3がステージ2の挿通孔2aに対して最適な位置になるように、昇降ピン3の水平位置を調整する。
【0036】
昇降ピン3の位置調整の後にRFシールド50の固定が行われる。RFシールド50は、
図5に示すように、駆動部4のフランジ部43の下面にRFシールド50を装着した後、マッチングボックス固定プレート6をRFシールド50に押し当て、ネジ等の適宜の固定手段により固定することにより固定される。
【0037】
本実施形態において、RFシールド50は、導電性およびゴム弾性を有する材料で構成されている。RFシールド50は、例えば、ゴム弾性を有する樹脂基材に、フィラーまたは接着剤として導電材料を添加して構成される。樹脂基材としてはシリコーンラバーが例示され、導電材材料としては銀メッキしたアルミニウムが例示される。
【0038】
このようにRFシールド50はゴム弾性を有するので、駆動部4のフランジ部43とマッチングボックス固定プレート6とを固定する際に昇降ピン3の位置ずれを防止することができる。
【0039】
従来から一般的なRFシールドとして金属製のものが用いられている。しかし、金属製のRFシールドを用いた場合、昇降ピン3の位置調整を行った後、昇降部4のフランジ部43とマッチングボックス固定プレート6との間に、例えばネジによりRFシールドを固定すると、ネジの締め付け時にフランジ部43がねじれるように動いてしまう。この際に、これに追従して昇降ピン3の位置がずれるため、昇降ピン3の再調整が必要となる。このため、調整作業が煩雑になってしまう。
【0040】
これに対して、本実施形態のように、導電性およびゴム弾性を有する材料で構成されたRFシールド50を用いる場合は、RFシールド50を介在した状態でフランジ部43とマッチングボックス固定プレート6を例えばネジにより固定しても、その際の力がRFシールド50で吸収される。このため、昇降ピン3の再調整が不要であり、調整作業を効率的に行うことができる。
【0041】
以上、実施形態について説明したが、今回開示された実施形態は、全ての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0042】
例えば、上記実施形態では、基板処理として基板のステージに高周波電力を印加してプラズマ中のArイオンのようなイオンを引き込んで基板の表面をクリーニングする例を示したが、これに限るものでない。
【0043】
また、上記実施形態の基板処理装置はあくまで例示であり、シールド部材10の構造や昇降機構20の構造および数、可撓性を有する導電性接続プレート30の取り付け形態等は上記実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0044】
1;処理容器
1a;接地ライン
2;ステージ
3;昇降ピン
4;駆動部
6;マッチングボックス固定プレート
7;マッチングボックス
8;高周波電源
10;シールド部材
11;上部シールド
12;下部シールド
15;下部シールド固定部材
20;昇降機構
30;可撓性を有する導電性接続プレート
31;取り付け部材
32;接地部材
43;フランジ部
50;RFシールド
100;基板処理装置
W;基板