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特開2023-132652生コンクリートの品質管理方法、及び、スランプロスの評価方法
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  • 特開-生コンクリートの品質管理方法、及び、スランプロスの評価方法 図1
  • 特開-生コンクリートの品質管理方法、及び、スランプロスの評価方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132652
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】生コンクリートの品質管理方法、及び、スランプロスの評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 11/00 20060101AFI20230914BHJP
   G01N 33/38 20060101ALI20230914BHJP
   G01N 11/14 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
G01N11/00 E
G01N33/38
G01N11/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038106
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 大樹
(72)【発明者】
【氏名】西 元央
(72)【発明者】
【氏名】小田部 裕一
(57)【要約】
【課題】生コンクリートの品質を簡易的に管理することが可能な生コンクリートの品質管理方法、及び、該生コンクリートの品質管理方法に用いられるスランプロスの評価方法を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係る生コンクリートの品質管理方法は、生コンクリートを収容しつつ軸線を中心に回転可能に構成された回転ドラムと、該回転ドラムの内周面に沿って配設された螺旋状のブレードと、を備えるアジテータ車において生コンクリートの品質を管理する方法であって、前記アジテータ車が、さらに、前記回転ドラムの外周面に取り付けられた加速度計を備え、前記加速度計を用いて加速度を測定する測定工程と、測定した加速度に基づき、生コンクリートのフレッシュ性状を把握する管理工程と、を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生コンクリートを収容しつつ軸線を中心に回転可能に構成された回転ドラムと、該回転ドラムの内周面に沿って配設された螺旋状のブレードと、を備えるアジテータ車において生コンクリートの品質を管理する方法であって、
前記アジテータ車が、さらに、前記回転ドラムの外周面に取り付けられた加速度計を備え、
前記加速度計を用いて加速度を測定する測定工程と、
測定した加速度に基づき、生コンクリートのフレッシュ性状を把握する管理工程と、
を有する、生コンクリートの品質管理方法。
【請求項2】
前記回転ドラムが、軸線方向の前方から後方側に向かってテーパ状に拡開する筒状のフロントシェルと、前記軸線方向の後方から前方側に向かってテーパ状に拡開する筒状のリアシェルと、前記フロントシェルと前記リアシェルとの間に前記軸線に沿って形成される筒状のセンターシェルと、を備え、
前記加速度計が、前記センターシェル及び前記リアシェルの少なくとも一方の外周面に取り付けられる、請求項1に記載の生コンクリートの品質管理方法。
【請求項3】
前記回転ドラムが、前記加速度計を取り付ける取付位置が該回転ドラムの回転によって通過する軌道の最も下方に最下点を有すると共に、該最下点よりも上方まで生コンクリートを収容する、請求項1又は2に記載の生コンクリートの品質管理方法。
【請求項4】
前記加速度計を取り付ける取付位置は、対応する内周面に前記ブレードが配設されていない、請求項1~3のいずれか一つに記載の生コンクリートの品質管理方法。
【請求項5】
前記測定工程では、前記加速度計を取り付ける取付位置が前記回転ドラムの回転によって通過する軌道のうち下方側の軌道を通過する際、加速度を測定する、請求項1~4のいずれか一つに記載の生コンクリートの品質管理方法。
【請求項6】
生コンクリートを収容しつつ軸線を中心に回転可能に構成された回転ドラムと、該回転ドラムの内周面に沿って配設された螺旋状のブレードと、を備えるアジテータ車において生コンクリートのスランプロスを評価する方法であって、
前記アジテータ車が、さらに、前記回転ドラムの外周面に取り付けられた加速度計を備え、
前記加速度計を用いて加速度を測定する測定工程と、
測定した加速度に基づき、生コンクリートのスランプロスを評価する評価工程と、
を有する、スランプロスの評価方法。
【請求項7】
前記評価工程では、任意の1秒間における最大加速度と最小加速度との加速度差を算出し、初期の前記加速度差に対する所定時間経過後の前記加速度差の変化率が、90%以下、又は、150%以上である場合に、スランプロスが生じていると判定する、請求項6に記載のスランプロスの評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生コンクリートの品質管理方法、及び、該生コンクリートの品質管理方法に用いられるスランプロスの評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所望の品質を満たすように工場内で製造された生コンクリートは、回転ドラムを備えたアジテータ車によって打ち込み現場まで運搬されている。打ち込み現場では、打ち込み前に所望の品質が満たされているか確認するため、スランプ値等を測定する受け入れ検査が行われている。ところが、受け入れ検査において所望の品質が満たされていない場合、生コンクリートを工場へ持ち帰る必要があった。また、1台目のアジテータ車で運搬された生コンクリートの受け入れ検査の結果を受けた後、2台目のアジテータ車で運搬する生コンクリートの製造を始めると、打ち込み現場では生コンクリートが到着するまでの待ち時間が長く生じていた。
【0003】
このような問題を解決するため、生コンクリートを製造後、受け入れ検査前までに生コンクリートのフレッシュ性状を把握して、工場へフィードバックすることが求められている。しかしながら、生コンクリートのフレッシュ性状は、受け入れ検査においてスランプ値を測定しなければ把握することができない。そこで、アジテータ車で運搬中に、生コンクリートのスランプ値を予測する方法が種々提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1では、回転ドラムのセンタシャフトの中心を貫通した回転軸に羽根を取り付け、羽根が生コンクリートから受ける抵抗を検出することにより、その抵抗の大きさから生コンクリートのスランプ値を推定する方法が開示されている。また、特許文献2では、回転ドラムの駆動源が油圧モータであるアジテータ車において、生コンクリートの攪拌時に油圧モータに加わる油圧を計測し、その計測した油圧を生コンクリートのスランプ値に換算する方法が開示されている。また、非特許文献1では、アジテータ車に取り付けたプローブで圧力を感知して、スランプ値を推定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭58-52546号公報
【特許文献2】特開平11-194083号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】廣藤義和、プローブを活用したコンクリート品質の連続管理システムによる生産性向上、コンクリート工学、Vol.55、No.9、pp.783-787、2017年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の生コンクリートのスランプ値を予測する方法は、いずれもアジテータ車の改良や複雑なシステム装置を取り付ける必要があるため、生コンクリートの品質をより簡易的に把握する方法が求められている。
【0008】
このような事情に鑑み、本発明は、生コンクリートの品質を簡易的に管理することが可能な生コンクリートの品質管理方法、及び、該生コンクリートの品質管理方法に用いられるスランプロスの評価方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る生コンクリートの品質管理方法は、生コンクリートを収容しつつ軸線を中心に回転可能に構成された回転ドラムと、該回転ドラムの内周面に沿って配設された螺旋状のブレードと、を備えるアジテータ車において生コンクリートの品質を管理する方法であって、前記アジテータ車が、さらに、前記回転ドラムの外周面に取り付けられた加速度計を備え、前記加速度計を用いて加速度を測定する測定工程と、測定した加速度に基づき、生コンクリートのフレッシュ性状を把握する管理工程と、を有する。
【0010】
前記生コンクリートの品質管理方法では、回転ドラムの外周面に加速度計を取り付け、該加速度計を用いて加速度を測定することにより、ブレードから流れ落ちる生コンクリートの動きを検知し、その結果、生コンクリートのフレッシュ性状を把握することができる。よって、前記生コンクリートの品質管理方法は、アジテータ車の改良や複雑なシステム装置を取り付ける必要がなく、生コンクリートの品質を簡易的に管理することができる。
【0011】
本発明に係る生コンクリートの品質管理方法は、前記回転ドラムが、軸線方向の前方から後方側に向かってテーパ状に拡開する筒状のフロントシェルと、前記軸線方向の後方から前方側に向かってテーパ状に拡開する筒状のリアシェルと、前記フロントシェルと前記リアシェルとの間に前記軸線に沿って形成される筒状のセンターシェルと、を備え、前記加速度計が、前記センターシェル及び前記リアシェルの少なくとも一方の外周面に取り付けられていてもよい。
【0012】
前記生コンクリートの品質管理方法は、前記加速度計を前記センターシェル又は前記リアシェルの少なくとも一方の外周面に取り付けることにより、前記加速度計を用いて測定する加速度の変化をより検出しやすくなるため、より精度良く生コンクリートのフレッシュ性状を把握することができる。
【0013】
本発明に係る生コンクリートの品質管理方法は、前記回転ドラムが、前記加速度計を取り付ける取付位置が該回転ドラムの回転によって通過する軌道の最も下方に最下点を有すると共に、該最下点よりも上方まで生コンクリートを収容してもよい。
【0014】
前記生コンクリートの品質管理方法は、前記最下点よりも上方まで生コンクリートを収容することにより、前記加速度計が加速度の変化をより検出しやすくなるため、より精度良く生コンクリートのフレッシュ性状を把握することができる。
【0015】
本発明に係る生コンクリートの品質管理方法において、前記加速度計を取り付ける取付位置は、対応する内周面に前記ブレードが配設されていなくてもよい。
【0016】
前記生コンクリートの品質管理方法は、斯かる構成により、前記加速度計が加速度の変化をより検出しやすくなるため、より精度良く生コンクリートのフレッシュ性状を把握することができる。
【0017】
本発明に係る生コンクリートの品質管理方法において、前記測定工程では、前記加速度計を取り付ける取付位置が前記回転ドラムの回転によって通過する軌道のうち下方側の軌道を通過する際、加速度を測定してもよい。
【0018】
前記生コンクリートの品質管理方法は、斯かる構成により、前記加速度計が加速度の変化をより検出しやすくなるため、より精度良く生コンクリートのフレッシュ性状を把握することができる。
【0019】
本発明に係るスランプロスの評価方法は、生コンクリートを収容しつつ軸線を中心に回転可能に構成された回転ドラムと、該回転ドラムの内周面に沿って配設された螺旋状のブレードと、を備えるアジテータ車において生コンクリートのスランプロスを評価する方法であって、前記アジテータ車が、さらに、前記回転ドラムの外周面に取り付けられた加速度計を備え、前記加速度計を用いて加速度を測定する測定工程と、測定した加速度に基づき、生コンクリートのスランプロスを評価する評価工程と、を有する。
【0020】
前記スランプロスの評価方法では、回転ドラムの外周面に加速度計を取り付け、該加速度計を用いて加速度を測定することにより、生コンクリートのスランプロスを評価することができるため、アジテータ車の改良や複雑なシステム装置を取り付ける必要がない。よって、前記スランプロスの評価方法は、生コンクリートのスランプロスを簡易的に評価することができる。
【0021】
本発明に係るスランプロスの評価方法において、前記評価工程では、任意の1秒間における最大加速度と最小加速度との加速度差を算出し、初期の前記加速度差に対する所定時間経過後の前記加速度差の変化率が90%以下、又は、150%以上である場合に、スランプロスが生じていると判定してもよい。
【0022】
前記スランプロスの評価方法は、斯かる構成により、前記加速度計を用いて測定した加速度に基づき、より簡易的に生コンクリートのスランプロスを評価することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、生コンクリートの品質を簡易的に管理することが可能な生コンクリートの品質管理方法、及び、該生コンクリートの品質管理方法に用いられるスランプロスの評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本実施形態に係る生コンクリートの品質管理方法、及び、スランプロスの評価方法において用いられるアジテータ車1の概略側面図である。
図2図2は、図1に示すアジテータ車1が備える回転ドラム2の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本実施形態に係る生コンクリートの品質管理方法、及び、スランプロスの評価方法について説明する。図1は、本実施形態に係る生コンクリートの品質管理方法、及び、スランプロスの評価方法において用いられるアジテータ車1の概略側面図である。図2は、図1に示すアジテータ車1が備える回転ドラム2の断面図である。なお、以下の図面において同一又は相当する部分には同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0026】
<生コンクリートの品質管理方法>
まず、本実施形態に係る生コンクリートの品質管理方法において用いられるアジテータ車1について説明する。アジテータ車1は、生コンクリートを収容しつつ軸線Xを中心に回転可能に構成された回転ドラム2と、該回転ドラム2の内周面に沿って配設された螺旋状のブレード3と、を備える。そして、アジテータ車1は、さらに、回転ドラム2の外周面に取り付けられた加速度計4を備える。
【0027】
具体的には、アジテータ車1は、回転ドラム2を運転席後方に備える。回転ドラム2の後方には、回転ドラム2に生コンクリートを供給するためのホッパ5、及び、回転ドラム2から生コンクリートを排出するための排出部6が取付けられている。ここで、生コンクリートには、未硬化のコンクリート及びモルタルが含まれる。
【0028】
回転ドラム2は、軸線X方向の前方から後方側に向かってテーパ状に拡開する筒状のフロントシェル21と、軸線X方向の後方から前方側に向かってテーパ状に拡開する筒状のリアシェル22と、フロントシェル21とリアシェル22との間に軸線Xに沿って形成される筒状のセンターシェル23と、を備える。回転ドラム2は、フロントシェル21側が下方となるように、水平面に対して傾斜して配置されている。回転ドラム2の容量は、特に限定されるものではない。本実施形態に係る生コンクリートの品質管理方法は、回転ドラム2の容量が、例えば、2.5~9.8mのアジテータ車1において適用することができる。
【0029】
回転ドラム2の内周面には、1枚の螺旋状のブレード3が配設されている。回転ドラム2は、ブレード3が順方向に回転することによって、ホッパ5から供給された生コンクリートを下方(フロントシェル21側)に押し込みつつ攪拌し、ブレード3が逆方向に回転することによって、生コンクリートを排出部6から排出する。
【0030】
アジテータ車1は、リアシェル22の外周面に加速度計4が一つ取付けられている。そして、加速度計4を取り付ける取付位置Pは、対応する内周面にブレード3が配設されていない。回転ドラム2は、この取付位置Pが該回転ドラム2の回転によって通過する軌道の最も下方に最下点P’を有する。そして、生コンクリートは、回転ドラム2の最下点P’よりも上方(リアシェル22側)まで収容されている。
【0031】
加速度計4としては、例えば、小型高応答低容量1軸加速度計ARGL-100A(東京測器研究所社製)等を用いることができる。加速度計4は、例えば、磁石、接着剤、ネジ等を用いて、回転ドラム2の外周面に簡単に取付けることができる。
【0032】
本実施形態に係る生コンクリートの品質管理方法は、上述のアジテータ車1において生コンクリートの品質を管理する方法であって、加速度計4を用いて加速度を測定する測定工程と、測定した加速度に基づき、生コンクリートのフレッシュ性状を把握する管理工程と、を有する。
【0033】
具体的には、前記測定工程では、加速度計4を取り付ける取付位置Pが回転ドラム2の回転によって通過する軌道のうち下方側の軌道を通過する際、加速度を測定する。このとき、回転ドラム2の回転速度は、例えば、0.5rpm以上2rpm以下とすることができる。また、回転ドラム2の容量に対する生コンクリートの収容量の容積比は、例えば、0.10以上0.51以下とすることができる。
【0034】
また、前記管理工程では、測定した加速度に基づき、初期の加速度に対する所定時間経過後の加速度の変化をモニタリングすることにより、生コンクリートのフレッシュ性状の変化を把握する。
【0035】
本実施形態に係る生コンクリートの品質管理方法では、回転ドラム2の外周面に加速度計4を取り付け、該加速度計4を用いて加速度を測定することにより、ブレード3から流れ落ちる生コンクリートの動きを検知し、その結果、生コンクリートのフレッシュ性状を把握することができる。よって、前記生コンクリートの品質管理方法は、アジテータ車1の改良や複雑なシステム装置を取り付ける必要がなく、生コンクリートの品質を簡易的に管理することができる。
【0036】
本実施形態に係る生コンクリートの品質管理方法は、加速度計4をリアシェル22の外周面に取り付けることにより、加速度計4を用いて測定する加速度の変化をより検出しやすくなるため、より精度良く生コンクリートのフレッシュ性状を把握することができる。
【0037】
本実施形態に係る生コンクリートの品質管理方法は、最下点P’よりも上方まで生コンクリートを収容することにより、加速度計4が加速度の変化をより検出しやすくなるため、より精度良く生コンクリートのフレッシュ性状を把握することができる。
【0038】
本実施形態に係る生コンクリートの品質管理方法において、加速度計4を取り付ける取付位置Pは、対応する内周面にブレード3が配設されていないことにより、加速度計4が加速度の変化をより検出しやすくなるため、より精度良く生コンクリートのフレッシュ性状を把握することができる。
【0039】
本実施形態に係る生コンクリートの品質管理方法において、前記測定工程では、加速度計4を取り付ける取付位置Pが回転ドラム2の回転によって通過する軌道のうち下方側の軌道を通過する際、加速度を測定することにより、加速度計4が加速度の変化をより検出しやすくなるため、より精度良く生コンクリートのフレッシュ性状を把握することができる。
【0040】
<スランプロスの評価方法>
本実施形態に係るスランプロスの評価方法において用いられるアジテータ車1は、前記生コンクリートの品質管理方法において用いられるアジテータ車1と同様である。
【0041】
本実施形態に係るスランプロスの評価方法は、上述のアジテータ車1において生コンクリートのスランプロスを評価する方法であって、加速度計4を用いて加速度を測定する測定工程と、測定した加速度に基づき、生コンクリートのスランプロスを評価する評価工程と、を有する。
【0042】
具体的には、前記測定工程は、前記生コンクリートの品質管理方法における測定方法と同様である。
【0043】
また、前記評価工程では、任意の1秒間における最大加速度と最小加速度との加速度差を算出し、初期の前記加速度差に対する所定時間経過後の前記加速度差の変化率が、90%以下、又は、150%以上である場合に、スランプロスが生じていると判定する。より詳しくは、まず、初期の任意の1秒間における最大加速度と最小加速度との加速度差を算出する。次に、初期の任意の1秒間の測定位置と同じ測定位置において、所定時間経過後の任意の1秒間における最大加速度と最小加速度との加速度差を算出する。つまり、任意の1秒間の測定開始位置、すなわち、測定を開始する際の加速度計4の取付位置Pは、毎回同じ地点である。そして、同じ地点において測定した初期の前記加速度差に対する所定時間経過後の前記加速度差の変化率を求め、該変化率が90%以下、又は、150%以上である場合に、スランプロスが生じていると判定する。ここで、任意の1秒間とは、加速度計4を取り付ける取付位置Pが回転ドラム2の回転によって通過する軌道のうち下方側の軌道を通過する際の任意の1秒間である。
【0044】
本実施形態に係るスランプロスの評価方法は、回転ドラム2の外周面に加速度計4を取り付け、該加速度計4を用いて加速度を測定することにより、生コンクリートのスランプロスを評価することができるため、アジテータ車1の改良や複雑なシステム装置を取り付ける必要がない。よって、前記スランプロスの評価方法は、生コンクリートのスランプロスを簡易的に評価することができる。
【0045】
本実施形態に係るスランプロスの評価方法は、任意の1秒間における最大加速度と最小加速度との加速度差を算出し、初期の前記加速度差に対する所定時間経過後の前記加速度差の変化率が90%以下、又は、150%以上である場合に、スランプロスが生じていると判定することにより、加速度計4を用いて測定した加速度に基づき、より簡易的に生コンクリートのスランプロスを評価することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えることができる。また、上記及び下記の複数の実施形態の構成や方法等を任意に採用して組み合わせてもよい(1つの実施形態に係る構成や方法等を他の実施形態に係る構成や方法等に適用してもよい)ことは勿論である。
【0047】
例えば、本実施形態に係る生コンクリートの品質管理方法、及び、スランプロスの評価方法において用いられるアジテータ車1は、リアシェル22の外周面に加速度計4が一つ取付けられている。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、センターシェル23の外周面に加速度計4が一つ取付けられていてもよい。また、複数の加速度計4が、センターシェル23及びリアシェル22の少なくとも一方の外周面に取り付けられていてもよい。さらに、フロントシェル21の外周面に加速度計4が取付けられていてもよい。
【0048】
また、アジテータ車1において、加速度計4を取り付ける取付位置は、対応する内周面にブレード3が配設されていない。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、加速度計4を取り付ける取付位置は、対応する内周面にブレード3が配設されていてもよい。
【0049】
本実施形態に係る生コンクリートの品質管理方法、及び、スランプロスの評価方法において、生コンクリートは、回転ドラム2の最下点P’よりも上方まで収容されている。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、生コンクリートが最下点P’まで収容されていなくてもよい。
【0050】
また、前記測定工程では、加速度計4を取り付ける取付位置Pが回転ドラム2の回転によって通過する軌道のうち下方側の軌道を通過する際、加速度を測定する。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、加速度計4を取り付ける取付位置Pが回転ドラム2の回転によって通過する軌道のうち上方側の軌道を通過する際に加速度を測定してもよい。
【0051】
本実施形態に係るスランプロスの評価方法において、前記評価方法では、加速度計4を取り付ける取付位置Pが回転ドラム2の回転によって通過する軌道のうち下方側の軌道を通過する際の任意の1秒間において、最大加速度と最小加速度との加速度差を算出する。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、加速度計4を取り付ける取付位置Pが回転ドラム2の回転によって通過する軌道のうち上方側の軌道を通過する際の任意の1秒間において、最大加速度と最小加速度との加速度差を算出してもよい。
【0052】
また、前記評価方法では、前記変化率が、90%以下、又は、150%以上である場合に、スランプロスが生じていると判定する。しかしながら、本発明は当該構成に限定されるものではなく、スランプロスが生じているか否かの判定方法は、打ち込み現場において求められる品質に応じて適宜変更することができる。
【実施例0053】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
<試験1>
生コンクリートとしては、普通33-18-20Nの配合のものを用いた。また、回転ドラムとしては、図2に示す構造のものを用いた。加速度計は、小型高応答低容量1軸加速度計ARGL-100A(東京測器研究所社製)を用い、リアシェルの外周面に磁石を用いて取り付けた。
【0055】
次に、生コンクリートを回転ドラムに供給し、回転速度2rpmで回転させた。なお、回転ドラムの容量に対する生コンクリートの収容量の容積比は0.50であり、この容積比は大型アジテータ車のほぼ満載5.0mに相当する。
【0056】
生コンクリートのスランプ値は、初期及び任意の時間が経過した後の生コンクリートを採取し、JIS A 1101コンクリートのスランプ試験方法に準拠して求めた。スランプ値の測定結果を表1に示す。
【0057】
そして、初期、及び、上記スランプ値を測定した際の任意の時間経過後における任意の5秒間において、1秒間ごとの最大加速度と最小加速度との加速度差を算出し、初期の前記加速度差に対する任意の時間経過後の前記加速度差の変化率を求めた。結果を表1に示す。なお、任意の5秒間は、加速度計を取り付ける取付位置が回転ドラムの回転によって通過する軌道のうち下方側の軌道を通過する際の任意の5秒間とし、また、任意の5秒間の測定開始位置は、毎回同じ地点とした。
【0058】
【表1】
【0059】
<試験2>
生コンクリートとして普通27-12-20Nの配合のものを用いたこと以外は、試験1と同様の方法でスランプ値、及び、加速度差の変化率を求めた。結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
表1及び表2の結果から分かるように、回転ドラムの外周面に加速度計を取り付け、該加速度計を用いて加速度を測定することにより、生コンクリートのフレッシュ性状を把握し、又は、生コンクリートのスランプロスを評価することができる。よって、アジテータ車の改良や複雑なシステム装置を取り付ける必要がなく、生コンクリートの品質を簡易的に管理し、又は、生コンクリートのスランプロスを簡易的に評価することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 アジテータ車
2 回転ドラム
3 ブレード
4 加速度計
5 ホッパ
6 排出部
21 フロントシェル
22 リアシェル
23 センターシェル
X 軸線
P 取付位置
P’ 最下点
図1
図2