(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132781
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体吐出装置及び液体循環装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20230914BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038308
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 佑
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056KB16
2C056KB25
2C057AF72
2C057AG44
2C057AG77
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】流路内の異物をヘッド外に排出しやすい液体吐出ヘッドの提供。
【解決手段】 液体を吐出するための複数のノズルと、複数の前記ノズルのそれぞれに連通する複数の圧力室と、前記圧力室に対して前記液体を供給する供給共通液室と、前記圧力室から前記液体を回収する回収共通液室と、前記供給共通液室に前記液体を供給する供給口と、前記回収共通液室から前記液体を排出する排出口と、前記供給口と前記圧力室との間に設けられた第1のフィルターと、前記排出口と前記圧力室との間に設けられた第2のフィルターと、を有し、前記第1のフィルターの開口径は、前記ノズルの開口径よりも小さく、前記第2のフィルターの開口径は、前記ノズルの開口径よりも大きいことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するための複数のノズルと、
複数の前記ノズルのそれぞれに連通する複数の圧力室と、
前記圧力室に対して前記液体を供給する供給共通液室と、
前記圧力室から前記液体を回収する回収共通液室と、
前記供給共通液室に前記液体を供給する供給口と、
前記回収共通液室から前記液体を排出する排出口と、
前記供給口と前記圧力室との間に設けられた第1のフィルターと、
前記排出口と前記圧力室との間に設けられた第2のフィルターと、を有し、
前記第1のフィルターの開口径は、前記ノズルの開口径よりも小さく、前記第2のフィルターの開口径は、前記ノズルの開口径よりも大きいことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出ヘッドであって、
前記第1のフィルターは、前記供給口と前記供給共通液室との間に設けられ、
前記第2のフィルターは、前記排出口と前記回収共通液室との間に設けられたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項3】
請求項1または2に記載の液体吐出ヘッドであって、
前記第1のフィルターと前記第2のフィルターとは、開口面積の合計が略一致するように設けられたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載の液体吐出ヘッドであって、
前記第1のフィルターと前記第2のフィルターとは、開口が前記ノズルに近い側の径が遠い側の径に比べて大きいテーパー形状をしていることを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載の液体吐出ヘッドを有する液体吐出ユニット。
【請求項6】
請求項5に記載の液体吐出ユニットを有する液体吐出装置。
【請求項7】
請求項1乃至4の何れか1つに記載の液体吐出ヘッドと、
前記ノズルから洗浄液を吸引するとともに、前記排出口から排出させて前記ノズルと前記圧力室とを洗浄する洗浄機構と、を備えた液体循環装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体吐出装置及び液体循環装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の画像形成装置等に用いられるインクジェットヘッドとして、電圧が印加されると圧電素子の変形によって圧力室の体積が変わり、圧力室内部のインクが押し出されて吐出されるピエゾ方式のものが知られている(例えば特許文献1等参照)。
このようなインクジェットヘッドにおいては、十数ミクロンのノズル部分からインクが吐出されるが、圧力室へはインクを供給し続ける必要があり、ヘッドによっては吐出されるインクの粘度を一定に保って安定性を高めるため、インクジェットヘッドの上流側からポンプ等でインクが供給されるとともに、回収用のポートを圧力室下流側に設けてインクを循環させるような構成も知られている。
こうした循環式のインクジェットヘッドを用いる場合には、供給および回収されるインクから異物を取り除くために、圧力室の供給口や回収口にフィルターを設け、当該フィルターによってインク中の不純物をトラップする構成を有することも多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このようなフィルターを設けたとしても、フィルターを異物がすり抜けてしまうことはあり、かかる異物によるノズルの詰まりを防ぐことは難しい。さらに、一度フィルターを通過してしまうと、回収側からはフィルターによって出られず、ノズル穴に詰まってしまう懸念もある。
また同様に、圧力室内でインクが固着してしまった時などにも、回収側にフィルターがあることによってインクジェットヘッド外に流れていかず、結果としてノズルに詰まってしまうという問題も懸念される。
【0004】
このような問題を解決するために、例えば回収側のフィルターを可動にして、異物が圧力室に入った際には可動フィルターを開状態として異物をヘッド外へと排出するような方式も考えられているが、小さなインクジェットヘッドにさらに可動部分を設けることは、部品点数の増大や可動部分の故障のリスク要因もあって、小型のインクジェットヘッドを求める際には適していないという問題が生じていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するため、本発明に係る液体吐出ヘッドでは、液体を吐出するための複数のノズルと、複数の前記ノズルのそれぞれに連通する複数の圧力室と、前記圧力室に対して前記液体を供給する供給共通液室と、前記圧力室から前記液体を回収する回収共通液室と、前記供給共通液室に前記液体を供給する供給口と、前記回収共通液室から前記液体を排出する排出口と、前記供給口と前記圧力室との間に設けられた第1のフィルターと、前記排出口と前記圧力室との間に設けられた第2のフィルターと、を有し、前記第1のフィルターの開口径は、前記ノズルの開口径よりも小さく、前記第2のフィルターの開口径は、前記ノズルの開口径よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ヘッド内に入ってしまった異物やヘッド内で生成されてしまった物質を容易にヘッド外に排出可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の液体吐出ヘッドの構成の一例を示す図である。
【
図2】
図1に示した液体吐出ヘッドの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図2に示したヘッドのノズル部分の構成の一例を拡大表示した図である。
【
図4】第1のフィルターと第2のフィルターの開口部の構成を比較するための模式図である。
【
図5】第1のフィルターの縦断面方向の形状について示す図である。
【
図6】第2のフィルターの縦断面方向の形状について示す図である。
【
図7】従来のフィルターを用いた際にインクヘッド内に異物が入り込む場合の一例を示す模式図である。
【
図8】本発明の構成による効果の一例を示す図である。
【
図9】本発明のクリーニング装置の構成の一例を示す図である。
【
図10】
図7のクリーニング装置の動作時の効果の一例を示す図である。
【
図11】本発明における液体吐出装置の構成の一例を示す図である。
【
図12】本発明における液体吐出ユニットの構成の一例を示す図である。
【
図13】本発明における液体吐出ユニットの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の液体吐出ヘッドであるインクジェットヘッドとして、圧電素子を駆動手段とした液体吐出ヘッド100について説明する。
【0009】
本実施形態の液体吐出ヘッド100は、供給口6aから流入した液体を排出口である回収口6bから排出することで液体を循環させる循環型液体吐出ヘッドであり、
図1に示すように、第1液室基板2と、ダンパー3と、第2液室基板4と、ノズル基板5と、を積層接合して構成されている。
液体吐出ヘッド100はまた、ヘッドの筐体部分を兼ねているヘッドフレーム部材1と、FPCである可撓性を備えたプリント基板7と、を備えている。
液体吐出ヘッド100には、供給側のインク通液孔である供給口6aと、回収側のインク通液孔である回収口6bと、が設けられており、それぞれ後述するように流路を構成するためのチューブ456で接続されている。
【0010】
かかる液体吐出ヘッド100の断面の模式図を
図2、
図3に示す。
第2液室基板4の内部には、供給側共通液室10と、回収側共通液室11と、が設けられており、隔壁12によって遮断されている。これらの供給側共通液室10と回収側共通液室11とは、一体化して1つの共通液室としても良いが、供給口6aから流入するインクPと回収口6bから排出されるインクPとの流れを形成しやすくするために、隔壁12によって分離しておくことが望ましい。
また、第2液室基板4の内部には、
図3に示すように供給側共通液室10と回収側共通液室11とに接続された圧力室16が複数設けられており、それぞれの圧力室16に設けられた圧電アクチュエータ15によって圧力室16を構成する壁面が押圧されることで、圧力室16の体積が変化して、液体であるインクPが吐出される。以上のような構成により、本実施形態においては、供給側共通液室10は、複数の圧力室16に対して前記液体を供給する供給共通液室として機能する。また、回収側共通液室11は、圧力室16から前記液体を回収する回収共通液室として機能する。
ノズル基板5は、インクPを吐出するためのノズルとしての開口部であるノズル孔17を有している。
ダンパー3の供給側共通液室10との境界位置には、供給側フィルター部8が設けられている。同様に、回収側共通液室11との境界位置には、回収側フィルター部9が設けられている。
供給側共通液室10には、供給側フィルター部8とは反対側に、圧力室16に流れ込むための開口孔である圧力室入口13が設けられている。また、回収側共通液室11には、圧力室16からインクPが回収される圧力室出口14が設けられている。
供給口6a側から流入する液体であるインクPは、図中に矢印で示すように、第1液室基板2と第2液室基板4との間に設けられた開口より、供給側フィルター部8を通過して供給側共通液室10に流入する。また、圧力室入口13を介して圧力室16へと流入し、一部は圧電アクチュエータ15によってノズル孔17から吐出されるが、残りは圧力室出口14を介して回収側共通液室11へ移動し、回収側フィルター部9を通って回収口6bへと移動していく。なお、例えば回収口6bの先はチューブ456がつながれて、後述するような液体貯留手段たるインクタンク205やインクPを循環させる駆動源となるポンプ等が接続されている。
このように、供給側フィルター部8は本実施形態において「供給口6aと圧力室16との間に設けられた」第1のフィルターとして機能し、回収側フィルター部9は本実施形態において「排出口6bと圧力室16との間に設けられた」第2のフィルターとして機能する。
なお、供給側フィルター部8は供給口6aと圧力室16との間の何れかの位置に配置されれば良いが、特に好ましくは、本実施形態において示すように供給口6aと供給側共通液室10との間に配置される方が良い。また同様に、回収側フィルター部9は回収口6bと圧力室16との間の何れかの位置に配置されれば良いが、回収口6bと回収側共通液室11との間に配置されることが特に好ましい。
かかる配置とすることによって、液体吐出ヘッド100の内部に異物が侵入することを防ぎつつも、仮に侵入した異物に対しては排除が容易となる。
【0011】
第2液室基板4において圧力室16を形成する壁面の、圧力室16とは反対側には、当該壁面を変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ15を配置している。
【0012】
圧電アクチュエータ15は、ベース部材上に接合した圧電部材にハーフカットダイシングによって溝加工をして、ノズル配列方向において、所要数の柱状の圧電素子を所定の間隔で櫛歯状に形成して形成される圧電駆動部であり、プリント基板7を介した電気的な制御により、圧力室16の容積を変更する手段である。
【0013】
圧電アクチュエータ15は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極(端面電極)に接続され、外部電極にフレキシブル配線部材でもあるプリント基板7が接続されている。
かかる構成により、液体吐出ヘッド100においては、例えば圧電素子に与える電圧を基準電位(中間電位)から下げることによって圧電素子が収縮し、圧力室16の容積が膨張することで、圧力室16内に液体が流入する。
【0014】
逆に、圧電素子に印加する電圧を上げて圧電素子を積層方向に伸長させると、圧力室16の上壁面がノズル孔17に向かう方向に変形し、圧力室16の容積を収縮させることとなり、圧力室16内の液体が加圧され、ノズル孔17から液体が吐出される。
【0015】
図4は、供給側フィルター部8に取り付けられているフィルターの開口部18と、回収側フィルター部9に取り付けられているフィルターの開口部19と、を示す図である。
図4に示すように、供給側フィルター部8に設けられた開口部18と、回収側フィルター部9に設けられた開口部19とでは、互いに径が異なっており、供給側フィルター部8の開口部18の径の方が小さい。また、それぞれのフィルターのサイズは等しく、フィルターに設けられた開口部18の開口面積の総和S
inと、開口部19の開口面積の総和S
outは略一致するように設けられている。
【0016】
また、
図5に示すように、本実施形態の供給側フィルター部8の開口部18は、
図5に矢印で示されたインクの流れる方向に対して、下流側の径が上流側の径よりも大きいテーパー形状を形成している。
言い換えると、供給側フィルター部8はノズル孔17側に近い側の径が遠い側の径に比べて大きいテーパー形状をしている。
また、
図6に示すように、本実施形態の回収側フィルター部9の開口部19は、
図6に矢印で示されたインクの流れる方向に対して、下流側の径が上流側の径よりも小さいテーパー形状を形成している。
言い換えると、回収側フィルター部9はノズル孔17側に近い側の径が遠い側の径に比べて大きいテーパー形状をしている。
このように、ノズル孔17に近い側の径が遠い側の径に比べて大きくなるように、開口部18、19の径を構成することとすれば、
図5に示すように供給側フィルター部8を超えて侵入しようとする異物30は、供給側共通液室10に入り込みにくいのに対し、流出する側である回収側フィルター部9の開口部19では、上流側の径が広がっているために、
図6に示すように斜めに異物30が位置するので、開口部19よりも径が小さく、細長いような異物30である場合には、開口部19を通過しやすい。
【0017】
従来、インク内に混入した異物の回収のため、共通液室あるいは流路内の何れかの位置に、こうしたフィルターを設けることは知られていた。
しかしながら、従来のフィルターFは、単に供給/回収されるインクに含まれる異物が、ヘッド内に侵入しないように設けられているものであって、例えば何らかの事情で一度ヘッド内に異物が混入してしまった場合には、自動で除去されることはないので、ノズルに詰まってしまう問題や、フィルターの目詰まりを生じてしまう等の懸念がある。
例えば、
図7に示すように、径こそ小さいものの全長が長めの細長い異物30であれば、異物30の向きによってはフィルターFの開口部をすり抜けてしまう危険性が考えられる。さらに、こうした異物30は、向きが適度に合致しない限りは侵入しないものの、同じ理由により一度侵入してしまうと勝手に排出されることもまた生じにくい。
異物が液体吐出ヘッド100の内部に侵入してしまうことは、例えばノズル孔17の目詰まりを生じてしまうという問題も懸念され、こうしたフィルターには、ヘッド内に異物30の進入を防ぐ効果の他、仮に侵入してしまった場合には出来る限り速やかに液体吐出ヘッド100の内部からは排除される構成としておくことが好ましい。
【0018】
そこで、本発明の液体吐出ヘッド100では、供給側フィルター部8に設けられた開口部18と、回収側フィルター部9に設けられた開口部19とでは、互いに径が異なっており、供給側フィルター部8に設けられた開口部18の開口径はノズル孔17の径よりも小さく、回収側フィルター部9に設けられた開口部19の開口径はノズル孔17よりも大きい。
かかる構成により、供給側フィルター部8に設けられた開口部18と、回収側フィルター部9に設けられた開口部19とでは、互いに径が異なっており、供給側フィルター部8の開口部18の径の方が小さくなるので、仮にインクPに不純物として異物が混在していたとしても、供給側共通液室10には供給側フィルター部8によってかかる異物が進入できず、さらにもし仮に
図5に示すように細長い異物が、供給側フィルター部8をすり抜けてしまったときにも、供給側フィルター部8よりも目の粗い回収側フィルター部9を通過しやすいために、液体吐出ヘッド100のヘッド部分にこうした異物が残る危険性が少ない。
さらに、回収側フィルター部9の開口部19がノズル孔17の開口径よりも大きい構成とすることで、侵入した異物は、ノズル孔17から排出されるよりも回収側フィルター部9の開口部19を通過して液体吐出ヘッド100の内部から排出される可能性が高くなる。
従って、液体吐出ヘッド100のヘッド内に入ってしまった異物やヘッド内で生成されてしまった物質を容易にヘッド外に排出可能である。
【0019】
また、このようにフィルターの目を細かくする場合には、かかるフィルター部分がインクの流れを遮ってしまい、インクの流れが悪くなってしまう虞もある。
そこで、本実施形態ではさらに、供給側フィルター部8と回収側フィルター部9とは、開口面積の合計が互いに略一致するように設けられている。
かかる構成によれば、供給側共通液室10に流れ込むインクの量と、回収側共通液室11から流出するインクの量とが、開口面積に応じてある程度一様になることで、流れを妨げることなく、異物の除去が可能となる。
【0020】
また、本実施形態では、供給側フィルター部8と回収側フィルター部9とは、いずれもその開口がノズル孔17側に近い側の径が遠い側の径に比べて大きいテーパー形状をしている。
かかる構成により、供給側フィルター部8では流れ方向において上流側の径が小さくなるため、異物30の供給側共通液室10への流入が難しくなる一方、回収側フィルター部9では流れ方向において上流側の径が大きくなるため、より異物30が下流側に向かって移動しやすい形状となっている。
このように、ノズル孔17に近い側の径が大きくなるテーパー形状を形成していることによって、異物30がヘッド内に侵入しづらく、また仮に侵入したとしても、ノズル孔17に詰まってしまう前に速やかに排出されやすい形状となっているので、ノズル孔17の目詰まりを防ぐことができる。
【0021】
図8には、本発明の数値実施例として、ノズル孔17の径を24μm、供給側フィルター部8の開口部18の径を12μmとしたときのノズル孔17の異物詰まりの数量の比較を例示する。
なお、
図8においては、差異をわかりやすくするために、敢えてインク中には20~30μmの異物を混入した検査液をヘッドに流入させ、1ヘッド当たり800チャンネルのノズル孔17に対して、目詰まりを生じたノズル孔17の量を示している。また、供給側フィルター部8と同じ位置に、開口径をノズル孔17の径と同じく24μmとしたフィルターを挿入したときの、目詰まりを生じたノズル孔17の量を比較例として挙げている。このように、比較例である24μmの場合には、30チャンネルの目詰まりが生じたが、本発明では目詰まりが生じないことが明らかとなった。
このように、供給側フィルター部8と回収側フィルター部9との径を、ノズル孔17の径に対して変更させることは、異物の流入に対して効果的であることが確認できた。
【0022】
さらに、かかる液体吐出ヘッド100の目詰まりの回復についても評価するべく、
図9に液体吐出ヘッド100を洗浄液(純水)によって洗浄する場合の模式図を示した。
図9においては、
図9(a)で示すように液体吐出ヘッド100のノズル孔17の位置を洗浄液に着水させるとともに、回収口6bからポンプ201によって吸い上げることで、
図9(b)に拡大図として示すようにノズル孔17に詰まった異物30を逆流によって回収側へと流すことでノズル孔17の目詰まりの解消を目的としている。
図9(a)においては、液体吐出ヘッド100の供給口6aと回収口6bとにそれぞれチューブ456を介してポンプ201が接続され、液体吐出ヘッド100のノズル孔17の部分が洗浄液を湛える洗浄液保持層202上に保持される。これらの各機構を備える装置を液体循環装置200として示している。
【0023】
図10には回収側フィルター部9の開口部19の径について、30μmとした本実施例と、24μmとした比較例とで、ノズル孔17側から回収側フィルター部9に向けて純水を通液したときのノズル孔17の復活率(目詰まりが解消されたチャンネル数/目詰まりがあったチャンネル数)を示している。このように、供給側フィルター部8と回収側フィルター部9との径を、ノズル孔17の径に対して変更させることは、異物の流入および流入した後の異物の洗浄・排出においても、効果的であることが確認できた。
【0024】
このように、本実施形態における液体吐出ヘッド100は、ノズル孔17から洗浄液を吸引するとともに、回収口6bから排出させてノズル孔17と圧力室16とを洗浄する洗浄機構と、を備えた液体循環装置200としても用いることができる。
かかる構成は、例えば液体吐出ヘッド100をインクヘッドとして用いた印刷装置等において、インクヘッドの洗浄動作を行うときなどに洗浄機構として用いることができる。
【0025】
次に、本発明に係る液体吐出装置として、印刷装置の例について
図11及び
図12、
図13を参照して説明する。
図11は同装置の要部側面説明図、
図12は同装置の要部平面説明図である。
【0026】
この印刷装置500は、シリアル型装置であり、
図11に示す主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0027】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド100と、液体吐出ヘッド100にインクを供給するためのインクタンク205とを備えた液体吐出ユニット440が搭載されている。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド100は、接続されたインクタンク205に従い、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド100は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0028】
液体吐出ヘッド100は、インクタンク205と接続されて、既に述べたように、所要の色の液体が循環供給される。
【0029】
この印刷装置500は、記録媒体としての用紙410を搬送するための搬送機構を備えている。搬送機構は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0030】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド100に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0031】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によって搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0032】
このように構成したこの印刷装置500においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0033】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド100を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成する。
【0034】
液体吐出ユニット440は、液体吐出装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド100で構成されている。
【0035】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について
図13を参照して説明する。
図13は同ユニットの正面説明図である。
【0036】
この液体吐出ユニット440は、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド100と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0037】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク205を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド100のプリント基板7等と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0038】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特にインクには限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0039】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0040】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0041】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0042】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0043】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0044】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0045】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0046】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0047】
「液体吐出装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体吐出装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0048】
この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0049】
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0050】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0051】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0052】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0053】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0054】
また、「液体吐出装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0055】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0057】
8・・・第1フィルター(供給側フィルター部)
9・・・第2フィルター(回収側フィルター部)
6a・・・供給口
6b・・・排出口
10・・・供給側共通液室(共通液室)
11・・・回収側共通液室(共通液室)
16・・・圧力室
17・・・ノズル
100・・・液体吐出ヘッド
200・・・液体循環装置
500・・・印刷装置(液体吐出装置)
Sin、Sout・・・開口面積
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】
【特許文献1】特開2016-199032号公報
【特許文献2】特開2012-245725号公報
【特許文献3】特開2020-049818号公報