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特開2023-132812光学フィルム及び積層体、並びにその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132812
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】光学フィルム及び積層体、並びにその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/14 20150101AFI20230914BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20230914BHJP
   C08G 69/26 20060101ALI20230914BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20230914BHJP
   C08J 7/046 20200101ALI20230914BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20230914BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230914BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20230914BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230914BHJP
   G06F 3/041 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
G02B1/14
C08G73/10
C08G69/26
C08J5/18
C08J7/046 Z CFG
B32B27/34
G09F9/00 302
G09F9/00 313
G09F9/00 366A
G02B5/30
G09F9/30 308Z
G06F3/041 460
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038353
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【弁理士】
【氏名又は名称】森住 憲一
(74)【代理人】
【識別番号】100172605
【弁理士】
【氏名又は名称】岩木 郁子
(72)【発明者】
【氏名】大松 一喜
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 佳久
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 真義
【テーマコード(参考)】
2H149
2K009
4F006
4F071
4F100
4J001
4J043
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB24
2H149BA02
2H149FA15Z
2H149FC03
2H149FD05
2H149FD12
2H149FD47
2K009AA15
2K009BB22
4F006AA39
4F006BA02
4F006CA05
4F071AA60
4F071AA81
4F071AB26
4F071AE11
4F071AF30Y
4F071AF31C
4F071AF35Y
4F071AF61Y
4F071AH12
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC12
4F100AA20A
4F100AK49A
4F100AR00B
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DE01A
4F100GB41
4F100JA03
4F100JA07
4F100JK12B
4F100JN01A
4F100JN18A
4F100YY00A
4J001DA01
4J001EB02
4J001EB14
4J001EB15
4J001EB16
4J001EB34
4J001EB44
4J001EB46
4J001EC44
4J001EC54
4J001EC55
4J001EC56
4J001EC74
4J001JA07
4J043PA01
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043RA35
4J043SA05
4J043SA52
4J043SA54
4J043SB01
4J043TA22
4J043TB04
4J043UA022
4J043UA042
4J043UA082
4J043UA121
4J043UA122
4J043UA131
4J043UA132
4J043UA152
4J043UA231
4J043UA232
4J043UA261
4J043UB011
4J043UB021
4J043UB061
4J043UB062
4J043UB121
4J043UB122
4J043UB152
4J043UB301
4J043UB302
4J043UB401
4J043VA011
4J043VA012
4J043VA021
4J043VA041
4J043VA052
4J043VA062
4J043XA03
4J043XA16
4J043XB07
4J043XB09
4J043ZB21
4J043ZB47
5C094AA31
5C094DA06
5C094EB02
5C094FB01
5C094JA08
5C094JA11
5G435AA09
5G435GG43
5G435HH05
(57)【要約】
【課題】加熱による異方的な収縮が生じにくい光学フィルム及び該光学フィルムを有する積層体を提供する。
【解決手段】ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含み、面内位相差値Rは0.1nm以上30nm以下である、光学フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含み、面内位相差値Rは0.1nm以上30nm以下である、光学フィルム。
【請求項2】
ヘーズは1.0%以下である、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
YI値は3未満である、請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
厚さは20μm以上130μm以下である、請求項1~3のいずれかに記載の光学フィルム。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の光学フィルムと、該光学フィルムの少なくとも一方の面に積層されたハードコート層とを有する、積層体。
【請求項6】
請求項1~4のいずれかに記載の光学フィルムを備える、フレキシブル表示装置。
【請求項7】
請求項5に記載の積層体を備える、フレキシブル表示装置。
【請求項8】
偏光板をさらに備える、請求項6又は7に記載のフレキシブル表示装置。
【請求項9】
タッチセンサをさらに備える、請求項6~8のいずれかに記載のフレキシブル表示装置。
【請求項10】
(a)ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂、及び少なくとも1種の溶媒を含む樹脂ワニスを基材上に塗布すること、
(b)塗布された樹脂ワニスを予備乾燥および本乾燥して、基材上に樹脂塗膜を形成すること、及び
(c)該樹脂塗膜を基材から剥離すること
を含む、面内位相差値Rが0.1nm以上30nm以下である光学フィルムの製造方法。
【請求項11】
溶媒の沸点よりも50℃以上低い温度で予備乾燥し、次いで150℃以上の温度で本乾燥して基材上に樹脂塗膜を形成する、ただし、本乾燥温度は予備乾燥温度よりも30℃以上高い温度である、請求項10に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項12】
(A)ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂、及び少なくとも1種の溶媒を含む樹脂ワニスを基材上に塗布すること、
(B)塗布された樹脂ワニスを予備乾燥及び本乾燥して、基材上に樹脂塗膜を形成すること、
(C)基材上に形成された樹脂塗膜上に、ハードコート層を積層すること、及び
(D)ハードコート層が積層された樹脂塗膜を基材から剥離すること
を含む、面内位相差値Rが0.1nm以上30nm以下である光学フィルムと、該光学フィルムの少なくとも一方の面に積層されたハードコート層とを有する積層体の製造方法。
【請求項13】
溶媒の沸点よりも50℃以上低い温度で予備乾燥し、次いで150℃以上の温度で本乾燥して基材上に樹脂塗膜を形成する、ただし、本乾燥温度は予備乾燥温度よりも30℃以上高い温度である、請求項12に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、該光学フィルムを有する積層体、及び該光学フィルム又は該積層体を備えるフレキシブル表示装置、並びに該光学フィルム及び該積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機EL表示装置等の画像表示装置は、携帯電話やスマートウォッチといった種々の用途に広く活用されている。このような画像表示装置の前面板としてガラスが用いられてきたが、ガラスは非常に剛直であり、割れやすいため、例えばフレキシブルディスプレイ等の前面板材料としての利用は難しい。近年、ガラスに代わる材料の一つとして、ポリイミド系樹脂やポリアミド系樹脂があり、これらの樹脂を用いた光学フィルムが検討されている。例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3には、ポリイミド系フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-187914号公報
【特許文献2】国際公開第2019/013169号
【特許文献3】特開2019-195994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロールトゥロール法などにより連続的に製造されたスマートフォン等に使用される光学フィルムは、ロールから切り出されたフィルムにおいて、次工程でハードコート層等の機能層を積層して積層体を製造する際に、加熱により光学フィルムが異方的に収縮することにより、得られる積層体に反りや層間剥離が発生しやすいという課題があった。
【0005】
そこで、本発明の目的は、加熱により異方的に収縮しにくい光学フィルム及び該光学フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち本発明は、以下の好適な形態を提供するものである。
〔1〕ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含み、面内位相差値Rは0.1nm以上30nm以下である、光学フィルム。
〔2〕ヘーズは1.0%以下である、〔1〕に記載の光学フィルム。
〔3〕YI値は3未満である、〔1〕又は〔2〕に記載の光学フィルム。
〔4〕厚さは20μm以上130μm以下である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の光学フィルム。
〔5〕〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の光学フィルムと、該光学フィルムの少なくとも一方の面に積層されたハードコート層とを有する、積層体。
〔6〕〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の光学フィルムを備える、フレキシブル表示装置。
〔7〕〔5〕に記載の積層体を備える、フレキシブル表示装置。
〔8〕偏光板をさらに備える、〔6〕又は〔7〕に記載のフレキシブル表示装置。
〔9〕タッチセンサをさらに備える、〔6〕~〔8〕のいずれかにに記載のフレキシブル表示装置。
〔10〕(a)ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂、及び少なくとも1種の溶媒を含む樹脂ワニスを基材上に塗布すること、
(b)塗布された樹脂ワニスを予備乾燥及び本乾燥して、基材上に樹脂塗膜を形成すること、及び
(c)該樹脂塗膜を基材から剥離すること
を含む、面内位相差値Rが0.1nm以上30nm以下である光学フィルムの製造方法。
〔11〕溶媒の沸点よりも50℃以上低い温度で予備乾燥し、次いで150℃以上の温度で本乾燥して基材上に樹脂塗膜を形成する、ただし、本乾燥温度は予備乾燥温度よりも30℃以上高い温度である、〔10〕に記載の光学フィルムの製造方法。
〔12〕(A)ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂、及び少なくとも1種の溶媒を含む樹脂ワニスを基材上に塗布すること、
(B)塗布された樹脂ワニスを予備乾燥及び本乾燥して、基材上に樹脂塗膜を形成すること、
(C)基材上に形成された樹脂塗膜上に、ハードコート層を積層すること、及び
(D)ハードコート層が積層された樹脂塗膜を基材から剥離すること
を含む、面内位相差値Rが0.1nm以上30nm以下である光学フィルムと、該光学フィルムの少なくとも一方の面に積層されたハードコート層とを有する積層体
〔13〕溶媒の沸点よりも50℃以上低い温度で予備乾燥し、次いで150℃以上の温度で本乾燥して基材上に樹脂塗膜を形成する、ただし、本乾燥温度は予備乾燥温度よりも30℃以上高い温度である、〔12〕に記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、加熱により異方的に収縮しにくい光学フィルム及び該光学フィルムの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。
【0009】
〔光学フィルム〕
本発明の光学フィルムは、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含み、面内位相差値Rが0.1nm以上30nm以下である。本発明において、面内位相差値Rとは、波長589.6nmにおける光学フィルムの面内位相差値を表す。光学フィルムの面内位相差値Rは、光学フィルムの任意の一方向において0.1nm以上30nm以下であればよい。本発明の一実施形態において、光学フィルムの加熱による異方的な収縮をより抑制しやすい観点から、光学フィルムの任意の二方向の両方において、面内位相差値Rが0.1nm以上30nm以下であることが好ましい。任意の二方向としては特に制限されないが、例えば、任意の一方向と、当該方向に対して垂直な方向とであってもよく、光学フィルムのMD方向と光学フィルムのTD方向とであってもよい。
本発明の光学フィルムは、面内位相差値Rが0.1nm以上30nm以下であるため、加熱による異方的な収縮が生じにくい、すなわち、加熱による収縮が等方的であるため、光学フィルムにハードコート層等の機能層を積層して積層体を製造する際にも、積層体製造時の加熱によって、反り及び/又は層間剥離等が生じにくい。
【0010】
一方、光学フィルムの前記面内位相差値Rが30nmを超える場合、光学フィルムの加熱による異方的な収縮が生じやすく、光学フィルムにハードコート層等の機能層を積層して積層体を製造する際に、積層体製造時の加熱によって反り及び/又は層間剥離等が生じやすい。これは、以下のような理由が考えられる。光学フィルムの面内位相差値Rが30nmを超える場合、光学フィルム内の歪みが大きすぎるため、光学フィルムは加熱されると、かかる光学フィルム内の歪みを解消する方向に大きく変形、特に収縮する。したがって、光学フィルム内の歪みが大きすぎる、すなわち面内位相差値Rが30nmを超える場合には、光学フィルムは加熱により大きく収縮する。その結果、面内位相差値Rが30nmを超えるフィルムを用いて積層体を製造すると、製造時に光学フィルムが加熱により大きく収縮し、異方的な収縮が生じやすいと考えられる。
【0011】
前記面内位相差値Rは、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすい観点から、好ましくは20nm以下、より好ましくは10nm以下、さらに好ましくは5nm以下、さらにより好ましくは3nm以下、とりわけ好ましくは2nm以下、とりわけより好ましくは1.5nm以下である。また、前記面内位相差値Rが小さいほど、光学フィルム内の歪みは小さく、光学フィルムの加熱収縮率が低下しやすい傾向にあるため、下限は特に制限されず、例えば0.1nm以上であってよい。面内位相差値Rは、位相差測定装置(王子計測機器(株)製、KOBRA-WPR)により測定でき、例えば、実施例に記載の方法により測定できる。
【0012】
光学フィルムの面内位相差値Rは、光学フィルムの組成及びその製造方法等によって調整し得る。また、面内位相差値は式(A)によって決定されることから、光学フィルムの複屈折率Δn(λ)及び厚さdによっても調整し得る。
【0013】
(λ)=Δn(λ)×d (A)
【0014】
[式(A)中、R(λ)は波長λnmにおける面内位相差値を表し、
Δn(λ)は波長λnmにおける複屈折率を表し、
dは光学フィルムの厚さを表す。]
【0015】
光学フィルムの複屈折率Δn(λ)は、光学フィルムの面内位相差値Rを小さくしやすい観点から、好ましくは0.01以下、より好ましくは0.005以下、さらに好ましくは0.001以下である。複屈折率Δn(λ)は、後述する光学フィルムに含まれるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の配向状態により調整できる。
前記複屈折率Δn(λ)は、位相差測定装置(王子計測機器(株)製、KOBRA-WPR)により測定できる。
【0016】
光学フィルムの厚さは、光学フィルムの耐衝撃性を高めやすい観点から、好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、また、光学フィルムの全光線透過率等の光学特性を向上しやすい観点、及び光学フィルムの面内位相差値Rを小さくして、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすい観点から、好ましくは130μm以下、より好ましくは100μm以下、さらに好ましくは80μm以下である。光学フィルムの厚さは、マイクロメーターを用いて測定でき、例えば実施例に記載の方法により測定できる。
【0017】
本発明の光学フィルムの波長589.6nmにおける厚さ方向位相差値Rthは、フィルムの着色を抑え、透明性を高めやすい観点から、好ましくは30,000nm以下、より好ましくは20,000nm以下、さらに好ましくは10,000nm以下、さらにより好ましくは5,000nm以下、特に好ましくは3,000nm以下であり、また、屈曲耐性を確保しやすい観点から、好ましくは1,000nm以上、より好ましくは1,500nm以上である。光学フィルムの厚さ方向位相差値は、式(B)によって決定されることから、3次元屈折率及び厚さdによって調整し得る。なお、3次元屈折率は、後述する光学フィルムに含まれる、ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の配向状態により調整できる。
【0018】
th(λ)=[(nx(λ)+ny(λ))/2-nz(λ)]×d (B)
【0019】
[式(B)中、dは光学フィルムの厚さを表し、
光学フィルムが形成する屈折率楕円体において、
nz(λ)>nx(λ)≒ny(λ) (C)
(式(C)中、nz(λ)は光学フィルムが形成する屈折率楕円体において、波長λ(nm)の光に対する該フィルム平面に対して垂直な方向の屈折率を表し、
nx(λ)は該フィルムが形成する屈折率楕円体において、波長λ(nm)の光に対する該フィルム平面に対して平行な方向の最大屈折率を表し、
ny(λ)は該フィルムが形成する屈折率楕円体において、該フィルム平面に対して平行であり、且つ、前記nxの方向に対して直交する方向の波長λ(nm)の光に対する屈折率を表す。ただし、nx(λ)=ny(λ)となる場合には、nx(λ)は該フィルム平面に対して平行な任意の方向の屈折率を表す。)
の関係を有する。]
【0020】
厚さ方向位相差値は位相差測定装置(王子計測機器(株)製、KOBRA-WPR)により、例えば、実施例に記載の方法により測定できる。
【0021】
本発明の光学フィルムのヘーズは、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.2%以下であり、通常0.01%以上である。光学フィルムのヘーズが上記の上限以下であると、光学フィルムを、特に前面板として、画像表示装置に組込んだ際に、視認性を高めやすい。なお、ヘーズは、JIS K 7105:1981又はJIS K 7136:2000に準拠してヘーズコンピュータを用いて測定できる。
【0022】
本発明の光学フィルムの黄色度(以下、YI値と記載することがある)は、好ましくは3未満、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.2以下、さらにより好ましくは2.0以下、とりわけ好ましくは1.7以下、とりわけより好ましくは1.5以下であり、好ましくは-5以上、より好ましくは-2以上である。光学フィルムのYI値が上記上限以下であると、透明性が良好となり、画像表示装置の前面板に使用した場合に、高い視認性に寄与することができる。なお、YI値は紫外可視近赤外分光光度計を用いて300~800nmの光に対する透過率測定を行い、3刺激値(X、Y、Z)を求め、
YI=100×(1.2769X-1.0592Z)/Y
の式に基づいて算出できる。
【0023】
本発明の光学フィルムの300~800nmでの全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは88%以上、さらにより好ましくは89%以上、とりわけ好ましくは90%以上、とりわけより好ましくは92%以上であり、通常100%以下である。全光線透過率が上記下限以上であると、光学フィルムを、特に前面板として、画像表示装置に組み込んだ際に視認性を高めやすい。本発明の光学フィルムは通常、高い全光線透過率を示すので、例えば、透過率の低いフィルムを用いた場合と比べて、一定の明るさを得るために必要な表示素子等の発光強度を抑えることが可能となる。このため、消費電力を削減することができる。例えば、本発明の光学フィルムを画像表示装置に組みこむ場合、バックライトの光量を減らしても明るい表示を得られる傾向があり、エネルギーの節約に貢献できる。なお、全光線透過率は、例えばJIS K 7105:1981又はJIS K 7361-1:1997に準拠してヘーズコンピュータを用いて測定できる。また、全光線透過率は、後述する光学フィルムの厚さの範囲における全光線透過率であってよい。
【0024】
本発明の光学フィルムは、面内位相差値Rが0.1nm以上30nm以下であるため、加熱による異方的な収縮が抑制されており、本発明の光学フィルムを用いた積層体は、反り及び層間剥離等を生じにくい。本発明の光学フィルムの加熱収縮率は、光学フィルムの任意の二方向、例えばMD方向及びTD方向の両方において、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下であり、通常0%以上である。
また、光学フィルムの任意の二方向の加熱収縮率比、例えばMD方向の加熱収縮率XMDとTD方向の加熱収縮率XTDとの比である加熱収縮率比(XMD/XTD)は、好ましくは0.7~1.2、より好ましくは0.8~1.15、さらに好ましくは0.9~1.1である。光学フィルムの加熱収縮率比が上記範囲内であると、加熱環境下で該光学フィルムを使用及び加工しても、光学フィルムが異方的に収縮しにくいため、光学フィルムにハードコート層等の機能層が積層された積層体において、反り及び層間剥離等が生じにくい。積層体にわずかでも反り及び/又は層間剥離等がある場合には、かかる積層体を、特に前面板として、画像表示装置に組み込んだ際に、画像の歪み等が視認される場合があるが、本発明の光学フィルムは加熱収縮率比が1に近い一定の範囲内にあるため、本発明の光学フィルムを有する積層体においては、このような反り及び層間剥離等が生じにくい。そのため、本発明の光学フィルムを有する積層体は、画像表示装置に組み込んでも画像の歪み等が生じにくく、画像表示装置の視認性を高めることができる。
加熱収縮率及び加熱収縮率比は、寸法を測定した光学フィルムを300℃のオーブンに1時間投入し、その後、光学フィルムをオーブンから取り出し、加熱後の光学フィルムの寸法を測定して、加熱前後の光学フィルムのそれぞれの寸法から割合を算出することにより求めることができ、例えば実施例に記載の方法で求められる。
【0025】
<樹脂>
本発明の光学フィルムは、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を含む。本明細書において、ポリイミド系樹脂とは、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド前駆体樹脂、及び、ポリアミドイミド前駆体樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を表す。ポリイミド樹脂は、イミド基を含む繰返し構成単位を含有する樹脂であり、ポリアミドイミド樹脂は、イミド基及びアミド基の両方を含む繰返し構成単位を含有する樹脂である。ポリイミド前駆体樹脂及びポリアミドイミド前駆体樹脂は、それぞれ、イミド化によりポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂を与える、イミド化前の前駆体であり、ポリアミック酸とも称される樹脂である。また、本明細書において、ポリアミド系樹脂は、アミド基を含む繰返し構成単位を含有する樹脂である。なお、本明細書において、繰り返し構造単位を構成単位ということがある。
本発明の光学フィルムは、1種類のポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂を含んでいてもよいし、2種以上のポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂を組合せて含んでいてもよい。本発明の光学フィルムは、加熱による異方的な収縮を抑制しやすい観点から、ポリイミド系樹脂を含むことが好ましく、該ポリイミド系樹脂は、好ましくはポリイミド樹脂又はポリアミドイミド樹脂であり、より好ましくはポリアミドイミド樹脂である。
【0026】
本発明の好ましい一実施形態において、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすい観点から、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂は芳香族系の樹脂であることが好ましい。本明細書において、芳香族系の樹脂とは、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂に含まれる構成単位が主に芳香族系の構成単位である樹脂を表す。
【0027】
上記の好ましい一実施形態において、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすい観点から、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂に含まれる全構成単位に対する芳香族系モノマーに由来する構成単位の割合は、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、さらにより好ましくは85モル%以上である。ここで、芳香族系モノマーに由来する構成単位とは、芳香族系の構造、例えば芳香環を少なくとも一部に含むモノマーに由来し、芳香族系の構造、例えば芳香環を少なくとも一部に含む構成単位である。芳香族系モノマーとしては、例えば芳香族テトラカルボン酸化合物、芳香族ジアミン、芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0028】
本発明の好ましい一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、式(1):
【0029】
【化1】
[式(1)中、Yは4価の有機基を表し、Xは2価の有機基を表し、*は結合手を表す]
で表される構成単位を有するポリイミド樹脂であるか、又は、式(1)で表される構成単位及び式(2):
【化2】
[式(2)中、Z及びXは、互いに独立に、2価の有機基を表し、*は結合手を表す]
で表される構成単位を有するポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。また、ポリアミド系樹脂は、式(2)で表される構成単位を有するポリアミド樹脂であることが好ましい。以下において式(1)及び式(2)について説明するが、式(1)についての説明は、ポリイミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂の両方に関し、式(2)についての説明は、ポリアミド樹脂及びポリアミドイミド樹脂の両方に関する。
【0030】
式(1)で表される構成単位は、テトラカルボン酸化合物とジアミン化合物とが反応して形成される構成単位であり、式(2)で表される構成単位は、ジカルボン酸化合物とジアミン化合物とが反応して形成される構成単位である。
【0031】
式(1)において、Yは、4価の有機基、好ましくは炭素数4~40の4価の有機基を表し、より好ましくは環状構造を有する炭素数4~40の4価の有機基を表す。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられ、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすい観点からは、好ましくは芳香環が挙げられる。前記有機基は、有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基であり、その場合、炭化水素基及びフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1~8である。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、複数種のYを含み得、複数種のYは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。Yとしては、以下の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基;該式(20)~式(29)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
【0032】
【化3】
【0033】
[式(20)~式(29)中、*は結合手を表し、Wは、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-Ar-、-SO-、-CO-、-O-Ar-O-、-Ar-O-Ar-、-Ar-CH-Ar-、-Ar-C(CH-Ar-又は-Ar-SO-Ar-を表す。Arは、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数6~20のアリーレン基を表す。]
【0034】
Arの具体例としてはフェニレン基が挙げられる。
【0035】
式(20)~式(29)で表される基の中でも、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい観点から、式(26)、式(28)又は式(29)で表される基が好ましく、式(26)で表される基がより好ましい。また、Wは、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び耐屈曲性を高めやすいと共に、光学フィルムのYI値を低減しやすい観点から、互いに独立に、好ましくは単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-又は-C(CF-、より好ましくは単結合、-O-、-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-又は-C(CF-、さらに好ましくは単結合、-C(CH-又は-C(CF-、とりわけ好ましくは単結合又は-C(CF-である。
【0036】
本発明の好ましい一実施形態において、ポリイミド系樹脂中のYの、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が、式(26)で表される。ポリイミド系樹脂における上記範囲内のYが式(26)、好ましくはWが単結合、-C(CH-又は-C(CF-である式(26)、より好ましくはWが単結合又は-C(CF-である式(26)で表されると、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び耐屈曲性を高めやすいと共に、光学フィルムのYI値を低減しやすい。ポリイミド系樹脂中のYが式(26)で表される構成単位の割合は、例えばH-NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
【0037】
本発明の好ましい一実施形態において、複数の式(1)中のYの少なくとも一部は、式(5):
【化4】
[式(5)中、R18~R25は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を表し、R18~R25に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、*は結合手を表す]
及び/又は式(9)
【化5】
[式(9)中、R35~R40は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基又は炭素数6~12のアリール基を表し、R35~R40に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、*は結合手を表す]
で表される。複数の式(1)中のYの少なくとも一部が式(5)で表される、及び/又は、式(9)で表されると、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び光学特性を向上させやすい。
【0038】
式(5)において、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24及びR25は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を表す。炭素数1~6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチルブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。炭素数1~6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。炭素数6~12のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。R18~R25は、互いに独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基、より好ましくは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、ここで、R18~R25に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。該ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。R18~R25は、互いに独立に、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい観点、並びに、透明性を高めやすい観点から、さらに好ましくは水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基であり、よりさらに好ましくはR18、R19、R20、R23、R24及びR25が水素原子、R21及びR22が水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基であり、とりわけ好ましくはR21及びR22がメチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0039】
式(9)において、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい観点、並びに、透明性を高めやすい観点から、R35~R40は、好ましくは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、より好ましくは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子である。ここで、R35~R40に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、該ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R35~R40における炭素数1~6のアルキル基及び炭素数6~12のアリール基としては、それぞれ上記に例示のものが挙げられる。
【0040】
本発明の好ましい一実施形態においては、式(5)は式(5’)で表され、式(9)は式(9’):
【化6】
で表される。すなわち、複数のYの少なくとも一部は、式(5’)及び/又は式(9’)で表される。この場合、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい。さらに、式(5)が式(5’)で表される場合、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を高め、該樹脂を含有するワニスの保管安定性を向上しやすいと共に、該ワニスの粘度を低減しやすく、光学フィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、光学フィルムの光学特性を向上しやすい。
【0041】
本発明の好ましい一実施形態において、ポリイミド系樹脂中のYの、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が、式(5)、特に式(5’)で表される。ポリイミド系樹脂における上記範囲内のYが式(5)、特に式(5’)で表されると、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を高め、該樹脂を含有するワニスの粘度を低減しやすく、光学フィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、光学フィルムの光学特性を向上しやすい。なお、好ましくは、上記ポリイミド系樹脂中のYの100モル%以下が式(5)、特に式(5’)で表される。ポリイミド系樹脂中のYは式(5)、特に式(5’)であってもよい。ポリイミド系樹脂中のYの式(5)で表される構成単位の割合は、例えばH-NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
【0042】
式(1)及び式(2)において、Xは、互いに独立に、2価の有機基、好ましくは炭素数4~40の2価の有機基、より好ましくは環状構造を有する炭素数4~40の2価の有機基を表す。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。前記有機基は、有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、炭化水素基及びフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1~8である。本発明の一実施形態において、本発明のポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂は、複数種のXを含み得、複数種のXは、互いに同一であっても異なっていてもよい。Xとしては、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)及び式(18)で表される基;該式(10)~式(18)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;並びに炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
【0043】
【化7】
[式(10)~式(18)中、*は結合手を表し、
、V及びVは、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-SO-、-CO-又は-N(Q)-を表す。ここで、Qはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。]
【0044】
炭素数1~12の1価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチルブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル、n-ヘプチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられ、これらはハロゲン原子で置換されていてもよい。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
1つの例は、V及びVが単結合、-O-又は-S-であり、かつ、Vが-CH-、-C(CH-、-C(CF-又は-SO-である。VとVとの各環に対する結合位置、及び、VとVとの各環に対する結合位置は、互いに独立に、各環に対して好ましくはメタ位又はパラ位、より好ましくはパラ位である。
【0045】
式(10)~式(18)で表される基の中でも、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい観点から、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)及び式(17)で表される基が好ましく、式(14)、式(15)及び式(16)で表される基がより好ましい。また、V、V及びVは、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び柔軟性を高めやすい観点から、互いに独立に、好ましくは単結合、-O-又は-S-、より好ましくは単結合又は-O-である。
【0046】
本発明の好ましい一実施形態において、ポリアミド系樹脂及びポリイミド系樹脂は、式(1)中のX又は式(2)中のXとして、式(4):
【化8】
[式(4)中、R10~R17は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基を表し、R10~R17に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、*は結合手を表す]
で表される構造を含む。式(1)及び式(2)で表される複数の構成単位中のXの少なくとも一部が式(4)で表される構造であると、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び透明性を高めやすい。
【0047】
式(4)において、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数6~12のアリール基を表す。炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基としては、式(5)における炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基として例示した基が挙げられる。R10~R17は、互いに独立に、好ましくは水素原子又は炭素数1~6のアルキル基、より好ましくは水素原子又は炭素数1~3のアルキル基を表し、ここで、R10~R17に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R10~R17は、互いに独立に、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率、透明性及び耐屈曲性の観点から、さらに好ましくは水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基であり、さらにより好ましくはR10、R12、R13、R14、R15及びR16が水素原子、R11及びR17が水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基であり、とりわけ好ましくはR11及びR17がメチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0048】
本発明の好ましい一実施形態において、式(4)で表される構成単位は式(4’):
【化9】
で表される構成単位であり、すなわち、式(1)及び式(2)で表される複数の構成単位中のXの少なくとも一部は、式(4’)で表される構成単位である。この場合、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂の溶媒への溶解性を高め、該樹脂を含有するワニスの保管安定性を向上しやすいと共に、該ワニスの粘度を低減しやすく、光学フィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、光学フィルムの光学特性を向上しやすい。
【0049】
本発明の好ましい一実施形態において、上記ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂中のXの、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が式(4)、特に式(4’)で表される。ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂における上記範囲内のXが式(4)、特に式(4’)で表される場合、得られる光学フィルムは、フッ素元素を含有する骨格により樹脂の溶媒への溶解性を高め、該樹脂を含有するワニスの保管安定性を向上しやすいと共に、該ワニスの粘度を低減しやすく、光学フィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、光学フィルムの光学特性も向上しやすい。なお、好ましくは、上記ポリイミド系樹脂又はポリアミド系樹脂中のXの100モル%以下が式(4)、特に式(4’)で表される。上記樹脂中のXは式(4)、特に式(4’)であってもよい。上記樹脂中のXの式(4)で表される構成単位の割合は、例えばH-NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
【0050】
式(2)において、Zは、2価の有機基を表し、好ましくは炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数6~12のアリール基(これらの基における水素原子はハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置換されていてもよい)で置換されていてもよい、炭素数4~40の2価の有機基、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数6~12のアリール基(これらの基における水素原子はハロゲン原子、好ましくはフッ素原子で置換されていてもよい)で置換されていてもよい、環状構造を有する炭素数4~40の2価の有機基を表す。
なお、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数6~12のアリール基の例としては、式(5)における炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基として上記に例示の基が挙げられる。
環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。
Zの有機基として、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29):
【化10】
[式(20)~式(29)中、Wは、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-Ar-、-SO-、-CO-、-O-Ar-O-、-Ar-O-Ar-、-Ar-CH-Ar-、-Ar-C(CH-Ar-又は-Ar-SO-Ar-を表し、ここで、Arは、互いに独立に、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数6~20のアリーレン基(例えばフェニレン基)を表し、
*は結合手を表す]
で表される基の結合手のうち、隣接しない2つが水素原子に置き換わった基及び炭素数6以下の2価の鎖式炭化水素基が例示され、Zのヘテロ環構造としてはチオフェン環骨格を有する基が例示される。光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、YI値を低減しやすい観点から、式(20)~式(29)で表される基、及び、チオフェン環骨格を有する基が好ましく、式(26)、式(28)及び式(29)で表される基がより好ましい。
【0051】
Zの有機基としては、式(20’)、式(21’)、式(22’)、式(23’)、式(24’)、式(25’)、式(26’)、式(27’)、式(28’)及び式(29’):
【化11】
[式(20’)~式(29’)中、W及び*は、式(20)~式(29)において定義した通りである]
で表される2価の有機基がより好ましい。なお、式(20)~式(29)及び式(20’)~式(29’)における環上の水素原子は、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数6~12のアリール基(これらの基における水素原子はハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)で置換されていてもよい)で置換されていてもよい。
【0052】
ポリアミド系樹脂又はポリアミドイミド樹脂が、式(2)中のZが上記の式(20’)~式(29’)のいずれかで表される構成単位を有する場合、特に式(2)中のZが後述する式(3’)で表される構成単位を有する場合、ポリアミド系樹脂又はポリアミドイミド樹脂は、該構成単位に加えて、次の式(d1):
【化12】
[式(d1)中、R24は後述する式(3)中のR3aについて定義する基、又は水素原子であり、R25は、R24又は-C(=O)-*を表し、*は結合手を表す]
で表されるカルボン酸由来の構成単位をさらに有することが、ワニスの成膜性を高めやすく、光学フィルムの均一性を高めやすい観点から好ましい。構成単位(d1)としては、具体的には、R24及びR25がいずれも水素原子である構成単位(ジカルボン酸化合物に由来する構成単位)、R24がいずれも水素原子であり、R25が-C(=O)-*を表す構成単位(トリカルボン酸化合物に由来する構成単位)等が挙げられる。
【0053】
ポリアミド系樹脂又はポリアミドイミド樹脂は、式(2)中のZとして複数種のZを含んでよく、複数種のZは、互いに同一であっても異なっていてもよい。特に、本発明の光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、光学特性を高めやすい観点から、式(2)中のZが好ましくは式(3):
【0054】
【化13】
【0055】
[式(3)中、R3a及びR3bは、互いに独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数6~12のアリール基を表し、R3a及びR3bに含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
Wは、互いに独立に、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-SO-、-S-、-CO-又は-N(R)-を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表し、
sは0~4の整数であり、tは0~4の整数であり、uは0~4の整数であり、*は結合手を表す]
【0056】
、より好ましくは式(3’):
【0057】
【化14】
【0058】
[式(3’)中、R3a、R3b、s、t、u、W及び*は、式(3)において定義した通りである]
【0059】
で表される構成単位を少なくとも有することが好ましい。式(2)で表される複数の構成単位中のZの少なくとも一部が式(3)又は式(3’)で表される構造であると、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすい。なお、本明細書において、ポリアミド系樹脂又はポリアミドイミド樹脂が式(2)中のZが式(3)で表される構成単位を有することと、ポリアミド系樹脂又はポリアミドイミド系樹脂が式(2)中のZとして式(3)で表される構造を有することとは、同様の意味を有し、ポリアミド系樹脂又はポリアミドイミド樹脂に含まれる複数の式(2)で表される構成単位のうち、少なくとも一部の構成単位におけるZが式(3)で表されることを意味する。当該記載は、他の同様の記載にもあてはまる。
【0060】
式(3)及び式(3’)において、Wは、互いに独立に、単結合、-O-、-CH-、-CH-CH-、-CH(CH)-、-C(CH-、-C(CF-、-SO-、-S-、-CO-又は-N(R)-を表し、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、耐屈曲性を高めやすい観点から、好ましくは-O-又は-S-、より好ましくは-O-を表す。
3a及びR3bは、互いに独立に、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、又は炭素数6~12のアリール基を表す。炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基としては、式(5)における炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基又は炭素数6~12のアリール基として上記に例示の基が挙げられる。光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、表面硬度及び柔軟性を向上しやすい観点から、R3a及びR3bは、互いに独立に、好ましくは炭素数1~6のアルキル基、より好ましくは炭素数1~3のアルキル基を表す。ここで、R3a及びR3bに含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。炭素数1~12の1価の炭化水素基としては、式(10)~(18)中のQにおけるハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基として上記に例示の基が挙げられる。
【0061】
式(3)及び式(3’)中のt及びuは、互いに独立に、0~4の整数であり、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらにより好ましくは0である。
【0062】
式(3)中及び式(3’)中のsは0~4の範囲の整数であり、sがこの範囲内であると、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び耐屈曲性を向上しやすい。式(3)及び式(3’)中のsは、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び耐屈曲性を向上しやすい観点から、好ましくは0~3の範囲の整数、より好ましくは0~2の範囲の整数、さらに好ましくは0又は1、さらにより好ましくは0である。sが0である式(3)又は式(3’)で表される構成単位は、例えばテレフタル酸又はイソフタル酸に由来する構成単位であり、該構成単位は特に、式(3)又は式(3’)中のsが0及びuが0である構成単位であることが好ましい。光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び耐屈曲性を向上しやすい観点から、ポリアミドイミド樹脂又はポリアミド系樹脂はテレフタル酸に由来する構成単位を含むことが好ましい。ポリアミドイミド樹脂又はポリアミド系樹脂はZにおいて、式(3)又は式(3’)で表される構成単位を1種又は2種類以上含んでいてもよい。光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び耐屈曲性を向上しやすく、並びにYI値を低減しやすい観点からは、ポリアミドイミド樹脂又はポリアミド系樹脂はZにおいて、式(3)中又は式(3’)中のsの値が異なる2種類以上の構成単位を含むことが好ましく、式(3)又は式(3’)中のsの値が異なる2種類又は3種類の構成単位を含むことがより好ましい。この場合、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい観点、並びに、光学フィルムのYI値を低減しやすい観点から、ポリアミドイミド樹脂又はポリアミド系樹脂が式(2)で表される構成単位におけるZとして、sが0である式(3)で表される構造を含有し、該構造を含む構成単位に加えてsが1である式(3)で表される構造を含む構成単位をさらに含有することがさらに好ましい。また、sが0である式(3)で表されるZを有する式(2)で表される構成単位に加えて、上記の式(d1)で表される構成単位をさらに有することも好ましい。
【0063】
本発明の好ましい一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂又はポリアミド系樹脂は、式(3)又は式(3’)で表される構成単位として、s=0であり、かつu=0である構成単位を有する。本発明のより好ましい一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂又はポリアミド系樹脂は、式(3)又は式(3’)で表される構成単位として、s=0であり、かつu=0である構成単位と、式(3”):
【化15】
で表される構成単位を有する。この場合、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び耐屈曲性を向上させやすく、また、YI値を低減しやすい。
【0064】
ポリアミドイミド樹脂又はポリアミド系樹脂が、式(3)又は式(3’)で表される構成単位を有する場合、その割合は、ポリアミドイミド樹脂又はポリアミド系樹脂の式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上、さらにより好ましくは50モル%以上、とりわけ好ましくは60モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは85モル%以下、さらに好ましくは80モル%以下である。式(3)又は式(3’)で表される構成単位の割合が上記の下限以上であると、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい。式(3)又は式(3’)で表される構成単位の割合が上記の上限以下であると、式(3)由来のアミド結合間水素結合による樹脂含有ワニスの粘度上昇を抑制し、フィルムの加工性を向上しやすい。
【0065】
また、ポリアミドイミド樹脂又はポリアミド系樹脂がs=1~4である式(3)又は式(3’)で表される構成単位を有する場合、sが1~4である式(3)又は式(3’)で表される構成単位の割合は、ポリアミドイミド樹脂又はポリアミド系樹脂の式(1)で表される構成単位及び式(2)で表される構成単位の合計を100モル%としたときに、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは7モル%以上、さらにより好ましくは9モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下、さらに好ましくは50モル%以下、さらにより好ましくは30モル%以下である。sが1~4である式(3)又は式(3’)で表される構成単位の割合が上記の下限以上であると、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び耐屈曲性を向上しやすい。sが1~4である式(3)で表される構成単位の割合が上記の上限以下であると、式(3)又は式(3’)で表される構成単位由来のアミド結合間水素結合による樹脂含有ワニスの粘度上昇を抑制し、フィルムの加工性を向上しやすい。なお、式(1)、式(2)、式(3)又は式(3’)で表される構成単位の割合は、例えばH-NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
【0066】
本発明の好ましい一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂又はポリアミド系樹脂中のZの、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは45モル%以上、さらにより好ましくは50モル%以上が、sが0~4である式(3)又は式(3’)で表される構成単位である。Zの上記の下限以上が、sが0~4である式(3)又は式(3’)で表される構成単位であると、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい。また、ポリアミドイミド樹脂又はポリアミド系樹脂中のZの100モル%以下が、sが0~4である式(3)又は式(3’)で表される構成単位であればよい。なお、樹脂中の、sが0~4である式(3)又は式(3’)で表される構成単位の割合は、例えばH-NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
【0067】
本発明の好ましい一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂又はポリアミド系樹脂中のZの、好ましくは5モル%以上、より好ましくは8モル%以上、さらに好ましくは10モル%以上、さらにより好ましくは12モル%以上が、sが1~4である式(3)又は式(3’)で表される。ポリアミドイミド樹脂又はポリアミド系樹脂のZの上記の下限以上が、sが1~4である式(3)又は式(3’)で表される場合、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい。また、Zの、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下、さらに好ましくは50モル%以下、さらにより好ましくは30モル%以下が、sが1~4である式(3)又は式(3’)で表される。Zの上記の上限以下が、sが1~4である式(3)で表される場合、sが1~4である式(3)又は式(3’)で表される構成単位由来のアミド結合間水素結合による樹脂含有ワニスの粘度上昇を抑制し、フィルムの加工性を向上しやすい。なお樹脂中のsが1~4である式(3)又は式(3’)で表される構成単位の割合は、例えばH-NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
【0068】
ポリイミド系樹脂は、式(30)で表される構成単位及び/又は式(31)で表される構成単位を含むものであってもよく、また式(1)及び場合により式(2)で表される構成単位の他に、式(30)で表される構成単位及び/又は式(31)で表される構成単位を含むものであってもよい。
【0069】
【化16】
【0070】
式(30)において、Yは4価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Yとしては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基、該式(20)~式(29)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基、並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、複数種のYを含み得、複数種のYは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0071】
式(31)において、Yは3価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Yとしては、上記の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)及び式(29)で表される基の結合手のいずれか1つが水素原子に置き換わった基、及び3価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、複数種のYを含み得、複数種のYは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0072】
式(30)及び式(31)において、X及びXは、互いに独立に、2価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基又はフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。X及びXとしては、上記の式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)及び式(18)で表される基;該式(10)~式(18)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基又はトリフルオロメチル基で置換された基;並びに炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
【0073】
本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、式(1)、又は式(1)及び式(2)で表される構成単位、並びに場合により式(30)及び/又は式(31)で表される構成単位からなる。また、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい観点から、上記ポリイミド系樹脂において、式(1)及び式(2)で表される構成単位の割合は、式(1)及び式(2)、並びに場合により式(30)及び式(31)で表される全構成単位に基づいて、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。なお、ポリイミド系樹脂において、式(1)及び式(2)で表される構成単位の割合は、式(1)及び式(2)、並びに場合により式(30)及び/又は式(31)で表される全構成単位に基づいて、通常100%以下である。なお、上記割合は、例えば、H-NMRを用いて測定することができ、又は原料の仕込み比から算出することもできる。
【0074】
ポリアミドイミド樹脂において、式(2)で表される構成単位の含有量は、式(1)で表される構成単位1モルに対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.5モル以上、さらに好ましくは1.0モル以上、さらにより好ましくは1.5モル以上であり、好ましくは6.0モル以下、より好ましくは5.0モル以下、さらに好ましくは4.5モル以下である。式(2)で表される構成単位の含有量が上記の下限以上であると、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率を高めやすい。また、式(2)で表される構成単位の含有量が上記の上限以下であると、式(2)中のアミド結合間の水素結合による増粘を抑制し、光学フィルムの加工性を向上させやすい。
【0075】
本発明の好ましい一実施形態において、光学フィルムに含まれるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂は、例えば上記の含フッ素置換基等によって導入することができる、フッ素原子等のハロゲン原子を含んでよい。ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂がハロゲン原子を含む場合、光学フィルムの弾性率を向上させ、かつYI値を低減させやすい。光学フィルムの弾性率が高いと、傷及びシワ等の発生を抑制しやすい。また、光学フィルムのYI値が低いと、該フィルムの透明性及び視認性を向上させやすくなる。ハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子である。ポリイミド系樹脂にフッ素原子を含有させるために好ましい含フッ素置換基としては、例えばフルオロ基及びトリフルオロメチル基が挙げられる。
【0076】
ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂におけるハロゲン原子の含有量は、それぞれ、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂の質量を基準として、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~40質量%、さらに好ましくは5~30質量%である。ハロゲン原子の含有量が上記の下限以上であると、光学フィルムの弾性率をより向上させ、吸水率を下げ、YI値をより低減し、透明性及び視認性をより向上させやすい。ハロゲン原子の含有量が上記の上限以下であると、合成がしやすくなる。
【0077】
ポリイミド系樹脂及びポリアミドイミド樹脂のイミド化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは96%以上である。光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、光学特性を高めやすい観点から、イミド化率が上記の下限以上であることが好ましい。また、イミド化率の上限は100%以下である。イミド化率は、ポリイミド系樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値に対する、ポリイミド系樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。なお、ポリイミド系樹脂がトリカルボン酸化合物を含む場合には、ポリイミド系樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値と、トリカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量との合計に対する、ポリイミド系樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。また、イミド化率は、IR法、NMR法などにより求めることができる
【0078】
ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂として、市販品を使用してもよい。ポリイミド樹脂の市販品としては、例えば三菱瓦斯化学(株)製ネオプリム(登録商標)、河村産業(株)製KPI-MX300F等が挙げられる。
【0079】
本発明において、光学フィルムは、ポリアミド系樹脂を含んでいてもよい。本実施形態に係るポリアミド系樹脂は、式(2)で表される繰り返し構成単位を主とする重合体である。ポリアミド系樹脂における式(2)中のZの好ましい例及び具体例は、ポリイミド系樹脂におけるZの好ましい例及び具体例と同じである。前記ポリアミド系樹脂は、Zが異なる2種類以上の式(2)で表される繰り返し構成単位を含んでいてもよい。
【0080】
ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂の重量平均分子量(以下、Mwと記載することがある)は、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率及び耐屈曲性を高めやすい観点から、標準ポリスチレン換算で、好ましくは100,000以上、より好ましくは150,000以上、さらに好ましくは180,000以上、さらにより好ましくは200,000以上、とりわけ好ましくは230,000以上である。また、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂のMwは、該樹脂の溶媒に対する溶解性を向上しやすいと共に、光学フィルムの延伸性及び加工性を向上しやすい観点から、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは800,000以下、さらに好ましくは700,000以下、さらにより好ましくは500,000以下である。Mwは、例えばゲル浸透クロマトグラフィ(以下、GPCと記載することがある)測定を行い、標準ポリスチレン換算によって求めることができ、例えば実施例に記載の方法により算出してよい。
【0081】
本発明の一実施形態において、光学フィルム中におけるポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の含有量は、光学フィルム100質量部に対して、好ましくは40質量部以上、より好ましくは50質量部以上、さらに好ましくは60質量部以上であり、通常100質量部以下である。ポリイミド系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の含有量が上記範囲内であると、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、光学特性及び弾性率を高めやすい。
【0082】
(樹脂の製造方法)
ポリイミド樹脂及びポリイミド前駆体樹脂は、例えば、テトラカルボン酸化合物及びジアミン化合物を主な原料として製造でき、ポリアミドイミド樹脂及びポリアミドイミド前駆体樹脂は、例えば、テトラカルボン酸化合物、ジカルボン酸化合物及びジアミン化合物を主な原料として製造でき、ポリアミド樹脂は、例えば、ジアミン化合物及びジカルボン酸化合物を主な原料として製造できる。
【0083】
樹脂の製造に使用されるジアミン化合物としては、例えば、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミン及びこれらの混合物が挙げられる。なお、本実施形態において「芳香族ジアミン」とは、アミノ基が芳香環に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基又はその他の置換基を含んでいてもよい。この芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環及びフルオレン環等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、好ましくはベンゼン環が例示される。また「脂肪族ジアミン」とは、アミノ基が脂肪族基に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に芳香環やその他の置換基を含んでいてもよい。
【0084】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン等の非環式脂肪族ジアミン、並びに1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジアミン及び4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン等の環式脂肪族ジアミン等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。
【0085】
芳香族ジアミンとしては、例えばp-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン等の、芳香環を1つ有する芳香族ジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノジフェニル(以下、TFMBと記載することがある)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン等の、芳香環を2つ以上有する芳香族ジアミンが挙げられ、好ましくは4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチルベンジジン、TFMB、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルであり、より好ましくは4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチルベンジジン、TFMB、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルが挙げられる。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
【0086】
上記ジアミン化合物の中でも、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、弾性率、透明性、柔軟性、屈曲耐性を高めやすい観点、並びに低着色性の観点からは、ビフェニル構造を有する芳香族ジアミンからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。2,2’-ジメチルベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、TFMB、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル及び4,4’-ジアミノジフェニルエーテルからなる群から選ばれる1種以上を用いることがより好ましく、TFMBを用いることがよりさらに好ましい。
【0087】
樹脂の製造に用いられるテトラカルボン酸化合物としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物等の芳香族テトラカルボン酸化合物;及び脂肪族テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸化合物等が挙げられる。テトラカルボン酸化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。テトラカルボン酸化合物は、二無水物の他、酸クロリド化合物等のテトラカルボン酸化合物類縁体であってもよい。
【0088】
芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物及び縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと記載することがある)、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(以下、6FDAと記載することがある)、1,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。また、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物が挙げられ、縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0089】
これらの中でも、好ましくは4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、BPDA、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、6FDA、1,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物及び4,4’-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられ、より好ましくは4,4’-オキシジフタル酸二無水物、BPDA、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6FDA、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物及び4,4’-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。これらは単独又は2種以上を組合せて使用できる。
【0090】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、環式又は非環式の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは、脂環式炭化水素構造を有するテトラカルボン酸二無水物であり、その具体例としては、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等のシクロアルカンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸二無水物及びこれらの位置異性体が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、及び1,2,3,4-ペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組合せて用いることができる。また、環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物及び非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物を組合せて用いてもよい。
【0091】
上記テトラカルボン酸二無水物の中でも、光学フィルムの等方加熱収縮性、高弾性率、高表面硬度、高透明性、高柔軟性、高屈曲耐性、及び低着色性の観点から、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、BPDA、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、6FDA、並びにこれらの混合物が好ましく、BPDA及び6FDA、並びにこれらの混合物がより好ましい。
【0092】
樹脂の製造に用いられるジカルボン酸化合物としては、好ましくはテレフタル酸、イソフタル酸、4,4’-オキシビス安息香酸又はそれらの酸クロリド化合物が用いられる。テレフタル酸、イソフタル酸、4,4’-オキシビス安息香酸又はそれらの酸クロリド化合物に加えて、他のジカルボン酸化合物が用いられてもよい。他のジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、2種以上を組合せて用いてもよい。具体例としては、イソフタル酸;ナフタレンジカルボン酸;4,4’-ビフェニルジカルボン酸;3,3’-ビフェニルジカルボン酸;炭素数8以下である鎖式炭化水素、のジカルボン酸化合物及び2つの安息香酸が単結合、-CH-、-C(CH-、-C(CF-、-SO-若しくはフェニレン基で連結された化合物並びに、それらの酸クロリド化合物が挙げられる。具体例としては、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)(以下、OBBCと記載することがある)、テレフタロイルクロリド(以下、TPCと記載することがある)又はイソフタロイルクロリドが好ましく、OBBCとTPCとを組合せて用いることがさらに好ましい。
【0093】
なお、上記ポリイミド系樹脂は、光学フィルムの各種物性を損なわない範囲で、上記テトラカルボン酸化合物に加えて、テトラカルボン酸及びトリカルボン酸並びにそれらの無水物及び誘導体をさらに反応させたものであってもよい。
【0094】
テトラカルボン酸としては、上記テトラカルボン酸化合物の無水物の水付加体が挙げられる。
【0095】
トリカルボン酸化合物としては、芳香族トリカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸及びそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、2種以上を組合せて用いてもよい。具体例としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸の無水物;1,3,5-ベンゼントリカルボン酸の無水物;2,3,6-ナフタレントリカルボン酸-2,3-無水物;フタル酸無水物と安息香酸とが単結合、-O-、-CH-、-C(CH-、-C(CF-、-SO-若しくはフェニレン基で連結された化合物が挙げられる。
【0096】
樹脂の製造において、ジアミン化合物、テトラカルボン酸化合物及び/又はジカルボン酸化合物の使用量は、所望とするポリイミド系樹脂の各構成単位の比率に応じて適宜選択できる。
【0097】
樹脂の製造において、ジアミン化合物、テトラカルボン酸化合物及びジカルボン酸化合物の反応温度は、特に限定されないが、例えば5~350℃、好ましくは20~200℃、より好ましくは25~100℃である。反応時間も特に限定されないが、例えば0.5~10時間程度である。必要に応じて、不活性雰囲気又は減圧の条件下において反応を行ってよい。好ましい態様では、反応は、常圧及び/又は不活性ガス雰囲気下、撹拌しながら行う。また、反応は、反応に不活性な溶媒中で行うことが好ましい。溶媒としては、反応に影響を与えない限り特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-ブトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン(以下、GBLと記載することがある)、γ-バレロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等のエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;アセトニトリル等のニトリル系溶媒;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル系溶媒;クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素含有溶媒;N,N-ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと記載することがある)、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記載することがある)等のアミド系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;及びそれらの組合せなどが挙げられる。これらの中でも、溶解性の観点から、アミド系溶媒を好適に使用できる。
【0098】
ポリイミド系樹脂の製造におけるイミド化工程では、イミド化触媒の存在下で、イミド化することができる。イミド化触媒としては、例えばトリプロピルアミン、ジブチルプロピルアミン、エチルジブチルアミン等の脂肪族アミン;N-エチルピペリジン、N-プロピルピペリジン、N-ブチルピロリジン、N-ブチルピペリジン、及びN-プロピルヘキサヒドロアゼピン等の脂環式アミン(単環式);アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザビシクロ[3.2.1]オクタン、アザビシクロ[2.2.2]オクタン、及びアザビシクロ[3.2.2]ノナン等の脂環式アミン(多環式);並びにピリジン、2-メチルピリジン(2-ピコリン)、3-メチルピリジン(3-ピコリン)、4-メチルピリジン(4-ピコリン)、2-エチルピリジン、3-エチルピリジン、4-エチルピリジン、2,4-ジメチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、3,4-シクロペンテノピリジン、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリン、及びイソキノリン等の芳香族アミンが挙げられる。また、イミド化反応を促進しやすい観点から、イミド化触媒とともに、酸無水物を用いることが好ましい。酸無水物は、イミド化反応に用いられる慣用の酸無水物等が挙げられ、その具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族酸無水物、フタル酸等の芳香族酸無水物などが挙げられる。
【0099】
ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂は、慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組合せた分離手段により分離精製して単離してもよく、好ましい態様では、透明ポリアミドイミド樹脂を含む反応液に、多量のメタノール等のアルコールを加え、樹脂を析出させ、濃縮、濾過、乾燥等を行うことにより単離することができる。
【0100】
<無機材料>
本発明の好ましい一実施形態では、本発明の光学フィルムは、前記樹脂に加えて、光学フィルムの加熱による異方的な収縮をさらに抑制しやすい観点から、無機粒子等の無機材料をさらに含んでよい。光学フィルムがさらに無機材料を含む場合、光学フィルムの面内位相差値Rが小さくなりやすい。その結果、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすくなると考えられる。
無機材料としては、例えば、シリカ粒子、チタン粒子、水酸化アルミニウム、ジルコニア粒子、チタン酸バリウム粒子などの無機粒子、また、オルトケイ酸テトラエチル等の4級アルコキシシラン等のケイ素化合物が挙げられる。無機材料は、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすい観点、及びワニスの安定性、無機材料の分散性の観点から、好ましくは、シリカ粒子、水酸化アルミニウム、ジルコニア粒子、さらに好ましくはシリカ粒子である。これらの無機材料は1種単独でも、2種以上の組合せであってもよい。
【0101】
光学フィルムが無機材料を含む場合、該無機材料の平均一次粒子径は、好ましくは1nm以上、より好ましくは3nm以上、さらに好ましくは5nm以上、とりわけ好ましくは10nm以上であり、好ましくは200nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下、とりわけ好ましくは30nm以下である。無機材料の平均一次粒子径が上記上限以下であると、得られる光学フィルムの透明性を向上しやすく、上記下限以上であると、無機材料の凝集を抑制しやすく、取り扱い性を向上しやすい。無機材料の平均一次粒子径は、BET法により測定できる。なお、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡の画像解析により、平均一次粒子径を測定してもよい。
【0102】
光学フィルムが無機材料を含む場合、無機材料の含有量は、光学フィルム100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。無機材料の含有量が上記下限以上であると、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすく、該含有量が上記上限以下であると、光学フィルムの光学特性を向上しやすい。
【0103】
本発明の光学フィルムは、紫外線吸収剤をさらに含んでよい。紫外線吸収剤は、樹脂材料の分野で紫外線吸収剤として通常用いられているものから、適宜選択することができる。紫外線吸収剤は、400nm以下の波長の光を吸収する化合物を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、及びトリアジン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。紫外線吸収剤は単独で又は二種以上を組合せて使用できる。光学フィルムが紫外線吸収剤を含むことにより、樹脂の劣化が抑制されるため、得られる光学フィルムを画像表示装置等に適用した場合に視認性を高めることができる。本明細書において、「系化合物」とは、当該「系化合物」が付される化合物の誘導体を指す。例えば、「ベンゾフェノン系化合物」とは、母体骨格としてのベンゾフェノンと、ベンゾフェノンに結合している置換基とを有する化合物を指す。
【0104】
光学フィルムが紫外線吸収剤を含む場合、紫外線吸収剤の含有量は、光学フィルム100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、さらに好ましくは3質量部以上であり、好ましくは10質量部以下、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下である。好適な含有量は用いる紫外線吸収剤により異なるが、400nmの光線透過率が20~60%程度になるように紫外線吸収剤の含有量を調節すると、光学フィルムの耐光性が高められるとともに、透明性を高めやすい。
【0105】
本発明の光学フィルムは、前記樹脂、及び場合により無機材料及び紫外線吸収剤の他に、他の添加剤をさらに含んでもよい。他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤、難燃剤、pH調整剤、シリカ分散剤、滑剤、増粘剤、及びレベリング剤等が挙げられる。光学フィルムが他の添加剤を含む場合、その含有量は、光学フィルム100質量部に対して、好ましくは0.001~20質量部、より好ましくは0.01~15質量部、さらに好ましくは0.1~10質量部であってよい。
【0106】
本発明の光学フィルムは、単層であっても、2層以上の光学フィルムを有するフィルムであってもよいが、機械的強度を高めやすい観点からは単層であることが好ましい。2層以上の光学フィルムを有する場合、2層以上の光学フィルムは互いに同一であっても異なっていてもよい。
本発明の光学フィルムの用途は特に制限されず、種々の用途で使用してよく、例えば、画像表示装置の前面板として使用しても、アンテナ用途を含む回路基板として使用してもよい。また、本発明の光学フィルムはそのまま光学フィルム単体で使用してもよく、後述のように光学フィルムに1以上の機能層を積層して、積層体として使用してもよい。
【0107】
〔積層体〕
本発明は、本発明の光学フィルムの少なくとも一方の面に、1以上の機能層が積層された積層体も包含する。本発明の積層体は、積層体に含まれる光学フィルムが加熱による異方的な収縮が生じにくいため、反り及び層間剥離等を生じにくい。機能層としては、例えば、紫外線吸収層、ハードコート層、プライマー層、ガスバリア層、粘着層、色相調整層、屈折率調整層などが挙げられる。機能層は単独であっても又は二種以上の組合せであってもよい。
【0108】
紫外線吸収層は、紫外線吸収の機能を有する層であり、例えば、紫外線硬化型の透明樹脂、電子線硬化型の透明樹脂、及び熱硬化型の透明樹脂から選ばれる主材と、この主材に分散した紫外線吸収剤とから構成される。
【0109】
粘着層は、粘着性の機能を有する層であり、光学フィルムを他の部材に接着させる機能を有する。粘着層の形成材料としては、通常知られたものを用いることができる。例えば、熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物を用いることができる。この場合、事後的にエネルギーを供給することで熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物を高分子化し硬化させることができる。粘着層は、感圧型接着剤(Pressure Sensitive Adhesive、PSA)と呼ばれる、押圧により対象物に貼着される層であってもよい。感圧型接着剤は、「常温で粘着性を有し、軽い圧力で被着材に接着する物質」(JIS K 6800)である粘着剤であってもよく、「特定成分を保護被膜(マイクロカプセル)に内容し、適当な手段(圧力、熱等)によって被膜を破壊するまでは安定性を保持できる接着剤」(JIS K 6800)であるカプセル型接着剤であってもよい。
【0110】
色相調整層は、色相調整の機能を有する層であり、光学フィルムを目的の色相に調整することができる層である。色相調整層は、例えば、樹脂及び着色剤を含有する層である。この着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、弁柄、チタニウムオキサイド系焼成顔料、群青、アルミン酸コバルト、及びカーボンブラック等の無機顔料;アゾ系化合物、キナクリドン系化合物、アンスラキノン系化合物、ペリレン系化合物、イソインドリノン系化合物、フタロシアニン系化合物、キノフタロン系化合物、スレン系化合物、及びジケトピロロピロール系化合物等の有機顔料;硫酸バリウム、及び炭酸カルシウム等の体質顔料;並びに塩基性染料、酸性染料、及び媒染染料等の染料を挙げられる。
【0111】
屈折率調整層は、屈折率調整の機能を有する層であり、例えば単層の光学フィルムとは異なる屈折率を有し、光学フィルムに所定の屈折率を付与することができる層である。屈折率調整層は、例えば、適宜選択された樹脂、及び場合によりさらに顔料を含有する樹脂層であってもよいし、金属の薄膜であってもよい。屈折率を調整する顔料としては、例えば、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化錫、酸化チタン、酸化ジルコニウム及び酸化タンタルが挙げられる。該顔料の平均一次粒子径は、0.1μm以下であってもよい。顔料の平均一次粒子径を0.1μm以下とすることにより、屈折率調整層を透過する光の乱反射を防止し、透明度の低下を防止することができる。屈折率調整層に用いられる金属としては、例えば、酸化チタン、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ケイ素、酸化インジウム、酸窒化チタン、窒化チタン、酸窒化ケイ素、窒化ケイ素等の金属酸化物又は金属窒化物が挙げられる。
【0112】
ハードコート層は、活性エネルギー線照射、或いは熱エネルギー付与により架橋構造を形成し得る反応性材料を含むハードコート組成物を硬化させて形成することができ、活性エネルギー線照射によるものが好ましい。活性エネルギー線は、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることができるエネルギー線と定義され、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線及び電子線などが挙げられ、好ましくは紫外線が挙げられる。前記ハードコート組成物は、ラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有する。
【0113】
前記ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合性基を有する化合物である。前記ラジカル重合性化合物が有するラジカル重合性基としては、ラジカル重合反応を生じ得る官能基であればよく、炭素-炭素不飽和二重結合を含む基などが挙げられ、具体的には、ビニル基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、前記ラジカル重合性化合物が2個以上のラジカル重合性基を有する場合、これらのラジカル重合性基はそれぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。前記ラジカル重合性化合物が1分子中に有するラジカル重合性基の数は、ハードコート層の硬度を向上する点から、好ましくは2以上である。前記ラジカル重合性化合物としては、反応性の高さの点から、好ましくは(メタ)アクリロイル基を有する化合物が挙げられ、具体的には1分子中に2~6個の(メタ)アクリロイル基を有する多官能アクリレートモノマーと称される化合物やエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートと称される分子内に数個の(メタ)アクリロイル基を有する分子量が数百から数千のオリゴマーが挙げられ、好ましくはエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート及びポリエステル(メタ)アクリレートから選択された1種以上が挙げられる。
【0114】
前記カチオン重合性化合物は、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルエーテル構造を有する基等のカチオン重合性基を有する化合物である。前記カチオン重合性化合物が1分子中に有するカチオン重合性基の数は、ハードコート層の硬度を向上する点から、好ましくは2以上であり、より好ましくは3以上である。
また、前記カチオン重合性化合物としては、中でも、カチオン重合性基としてエポキシ基及びオキセタニル基の少なくとも1種を有する化合物が好ましい。エポキシ基、オキセタニル基等の環状のエーテル結合を有する基は、重合反応に伴う収縮が小さいという点から好ましい。また、環状のエーテル結合を有する基のうちエポキシ基を有する化合物は多様な構造の化合物が入手し易く、得られたハードコート層の耐久性に悪影響を与えず、ラジカル重合性化合物との相溶性もコントロールし易いという利点がある。また、環状のエーテル結合を有する基のうちオキセタニル基は、エポキシ基と比較して重合度が高くなりやすく、低毒性であり、得られたハードコート層のカチオン重合性化合物から得られるネットワーク形成速度を早め、ラジカル重合性化合物と混在する領域でも未反応のモノマーを膜中に残さずに独立したネットワークを形成する等の利点がある。
エポキシ基を有するカチオン重合性化合物としては、例えば、脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル又は、シクロヘキセン環、シクロペンテン環含有化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化する事によって得られる脂環族エポキシ樹脂;脂肪族多価アルコール、又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジル(メタ)アクリレートのホモポリマー、コポリマーなどの脂肪族エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールFや水添ビスフェノールA等のビスフェノール類、又はそれらのアルキレンオキサイド付加体、カプロラクトン付加体等の誘導体と、エピクロルヒドリンとの反応によって製造されるグリシジルエーテル、及びノボラックエポキシ樹脂等でありビスフェノール類から誘導されるグリシジルエーテル型エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0115】
前記ハードコート組成物は重合開始剤をさらに含むことができる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル及びカチオン重合開始剤等が挙げられ、適宜選択して用いられる。これらの重合開始剤は、活性エネルギー線照射及び加熱の少なくとも一種により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。
ラジカル重合開始剤は、活性エネルギー線照射及び加熱の少なくともいずれかによりラジカル重合を開始させる物質を放出することが可能であればよい。例えば、熱ラジカル重合開始剤としては、過酸化水素、過安息香酸等の有機過酸化物、アゾビスブチロニトリル等のアゾ化合物等があげられる。
活性エネルギー線ラジカル重合開始剤としては、分子の分解でラジカルが生成されるType1型ラジカル重合開始剤と、3級アミンと共存して水素引き抜き型反応でラジカルを生成するType2型ラジカル重合開始剤があり、それらは単独で又は併用して使用される。
カチオン重合開始剤は、活性エネルギー線照射及び加熱の少なくともいずれかによりカチオン重合を開始させる物質を放出することが可能であればよい。カチオン重合開始剤としては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、シクロペンタジエニル鉄(II)錯体等が使用できる。これらは、構造の違いによって活性エネルギー線照射又は加熱のいずれか又はいずれでもカチオン重合を開始することができる。
【0116】
前記重合開始剤の含有量は、前記ハードコート組成物全体100質量%に対して好ましくは0.1~10質量%である。前記重合開始剤の含量が前記の範囲にあると、硬化を十分に進行させることができ、最終的に得られる塗膜の機械的物性や密着力を良好な範囲とすることができ、また、硬化収縮による接着力不良や割れ現象及びカール現象が発生し難くなる傾向がある。
【0117】
前記ハードコート組成物はさらに溶剤、添加剤からなる群から選択される一つ以上をさらに含むことができる。
前記溶剤は、前記重合性化合物及び重合開始剤を溶解又は分散させることができるもので、本技術分野のハードコート組成物の溶剤として知られている溶剤であれば、本発明の効果を阻害しない範囲で、使用することができる。
前記添加剤は、無機粒子、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、帯電防止剤、潤滑剤、防汚剤などをさらに含むことができる。
【0118】
本発明の一実施形態において、本発明の積層体における機能層の少なくとも1つはハードコート層であってよく、光学フィルムの少なくとも一方の面にハードコート層が積層されていることが好ましい。すなわち、本発明の好ましい実施形態において、本発明の積層体は、光学フィルムと該光学フィルムの少なくとも一方の面に積層されたハードコート層とを有する。
【0119】
ハードコート層の厚さは特に限定されず、例えば、2~100μmであってもよい。前記ハードコート層の厚さが前記の範囲にあると、耐衝撃性を高めることができると共に、耐屈曲性が低下しにくく、硬化収縮によるカール発生の問題が発生し難い傾向がある。
【0120】
本発明の光学フィルム及び積層体は、保護フィルムをさらに含んでもよい。保護フィルムは、光学フィルムの片面又は両面に積層されていてもよく、光学フィルムの片面に機能層が積層された積層体の場合には、保護フィルムは、光学フィルム側の表面又は機能層側の表面に積層されていてもよく、光学フィルム側と機能層側の両方に積層されていてもよい。光学フィルムの両面に機能層が積層された積層体の場合には、保護フィルムは、片方の機能層側の表面に積層されていてもよく、両方の機能層側の表面に積層されていてもよい。保護フィルムは、光学フィルム又は機能層の表面を一時的に保護するためのフィルムであり、光学フィルム又は機能層の表面を保護できる剥離可能なフィルムである限り特に限定されない。保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂フィルム;ポリエチレン、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィン系樹脂フィルム、アクリル系樹脂フィルム等が挙げられ、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート系樹脂フィルム及びアクリル系樹脂フィルムからなる群から選択されることが好ましい。光学フィルムが保護フィルムを2つ有する場合、各保護フィルムは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0121】
保護フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、通常、10~100μm、好ましくは10~80μm、より好ましくは10~50μmである。光学フィルムが保護フィルムを2つ有する場合、各保護フィルムの厚さは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0122】
〔光学フィルムの製造方法〕
本発明は、本発明の光学フィルムの製造方法も包含する。本発明の光学フィルムの製造方法は、光学フィルムの面内位相差値Rが0.1nm以上30nm以下である限り特に制限されないが、本発明の好ましい実施形態において、本発明の光学フィルムは、光学フィルムの面内位相差値Rを0.1nm以上30nm以下に調整しやすく、加熱による異方的な収縮が生じにくい光学フィルムを得やすい観点、並びに、反り及び/又は層間剥離等を生じにくい積層体を得やすい観点から、以下:
(a)ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂、及び少なくとも1種の溶媒を含む樹脂ワニスを基材上に塗布すること(樹脂ワニス塗布工程)、
(b)塗布された樹脂ワニスを予備乾燥及び本乾燥して、基材上に樹脂塗膜を形成すること(乾燥工程)、及び
(c)該樹脂塗膜を基材から剥離すること(剥離工程)
を含む方法によって製造されることが好ましい。
【0123】
<工程(a):樹脂ワニス塗布工程>
樹脂ワニス塗布工程において、樹脂ワニスを基材上に塗布する。樹脂ワニスは、ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂、及び少なくとも1種の溶媒、及び場合により、シリカ粒子等の無機材料、紫外線吸収剤及び他の添加剤を含み、これらを撹拌混合することにより調製できる。なお、樹脂ワニスに含まれ得る樹脂、無機材料、紫外線吸収剤及び他の添加剤としては、光学フィルムに含まれ得る樹脂、無機材料、紫外線吸収剤及び他の添加剤に関する例示が同様にあてはまる。また、樹脂ワニスに含まれ得る樹脂、無機材料、紫外線吸収剤及び他の添加剤の樹脂ワニスの固形分100質量部に対する各含有量は、光学フィルムに含まれ得る樹脂、無機材料、紫外線吸収剤及び他の添加剤に関する光学フィルム100質量部に対する含有量の記載が同様にあてはまる。
【0124】
無機材料としてシリカ粒子を使用する場合には、シリカ粒子は、液相法で製造される有機溶媒等にシリカ粒子を分散させたシリカゾルの形態で使用しても、気相法で製造されるシリカ微粒子粉末の形態で使用してもよい。前記シリカゾルは、シリカゾルに含まれる有機溶媒を前記樹脂が溶解可能な溶媒、例えば下記の樹脂ワニスに含まれる溶媒で置換して使用してもよい。シリカ粒子を使用する場合には、シリカ粒子は、ハンドリングしやすい観点からは、シリカゾル分散液の形態で使用することが好ましい。
【0125】
樹脂ワニスの調製に使用し得る溶媒は、前記樹脂を溶解可能であれば特に限定されない。かかる溶媒としては、例えばDMAc、DMF等のアミド系溶媒;GBL、γ-バレロラクトン等のラクトン系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;及びそれらの組合せが挙げられる。これらの中でも、アミド系溶媒又はラクトン系溶媒が好ましい。これらの溶媒は単独又は二種以上組合せて使用できる。また、ワニスには水、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、非環状エステル系溶媒、エーテル系溶媒などが含まれてもよい。樹脂ワニスの固形分濃度は、好ましくは1~25質量%、より好ましくは5~20質量%、さらに好ましくは5~15質量%である。また、本発明の一実施形態において、樹脂ワニスに使用する溶媒の沸点は80℃以上であることが好ましく、樹脂ワニスに含まれる溶媒が2種以上の溶媒を含む混合溶媒である場合、樹脂ワニス中の溶媒の沸点とは、該混合溶媒の沸点を意味する。樹脂塗膜中の溶媒含有量は、熱重量-示差熱(TG-DTA)測定装置を用いて120~250℃にかけての質量減少率を測定することにより求められる。
【0126】
樹脂ワニスを基材上に塗布する方法は特に制限されず、公知の塗布方法により、塗布してよい。公知の塗布方法としては、例えばワイヤーバーコーティング法、リバースコーティング、グラビアコーティング等のロールコーティング法、ダイコート法、カンマコート法、リップコート法、スピンコーティング法、スクリーンコーティング法、ファウンテンコーティング法、ディッピング法、スプレー法、流涎成形法等が挙げられる。
【0127】
本発明の製造方法に使用し得る基材としては、塗布された樹脂ワニスを乾燥させる乾燥工程において軟化又は変形等しない、高い耐熱性を有する基材であれば特に制限されない。かかる基材としては、例えば、ガラス板等の無機基材、SUS板等の金属基材、ポリイミド系フィルム等の高耐熱性樹脂フィルム、好ましくはガラス板等の無機基材、SUS板等の金属基材、より好ましくはガラス板、SUS板、さらに好ましくはガラス板が挙げられる。このような基材を使用することにより、後述の乾燥工程において、基材に塗布された樹脂ワニスを基材から剥離することなく高温で乾燥できる。そのため、乾燥前の樹脂塗膜に引張応力等の応力がかからず、樹脂塗膜内、及び得られる光学フィルム内に大きな歪みが生じにくい。その結果、面内位相差値Rが30nm以下の光学フィルムを得やすく、加熱による異方的な収縮が生じにくい光学フィルムを得やすい。さらに、乾燥前に基材に塗布された樹脂ワニスを基材から剥離する必要がないため、キズ及び異物の混入が少ない高品質な光学フィルムを得やすい。
【0128】
本発明の一実施形態において、基材の引張り弾性率は、好ましくは4GPa以上、より好ましくは5GPa以上、さらに好ましくは6GPa以上であり、好ましくは20GPa以下、より好ましくは15GPa以下、さらに好ましくは10GPa以下である。引張弾性率はAutographにより測定できる。引張弾性率が前記の範囲にある場合、光学フィルムの屈曲耐性を向上しやすい。
【0129】
<工程(b):乾燥工程>
乾燥工程において、樹脂ワニス塗布工程において基材上に塗布された樹脂ワニスを予備乾燥及び本乾燥して、樹脂ワニス中の溶媒の一部又は全部を除去し、基材上に樹脂塗膜を形成する。乾燥工程における樹脂ワニス中の溶媒の除去は、短時間で一気に行ってもよく、段階的に行ってもよい。本発明の光学フィルムの製造方法において、加熱による異方的な収縮が生じにくい光学フィルムを得やすい観点から、乾燥工程は、樹脂ワニスを基材に塗布した状態のまま行われる。樹脂ワニスを基材から剥離せずに予備乾燥及び本乾燥することにより、上述のように、樹脂塗膜内に大きな歪みが生じにくく、面内位相差値30nm以下の光学フィルムが得やすいため、加熱による異方的な収縮が生じにくい光学フィルムを得やすい。また、予備乾燥及び本乾燥前に基材に塗布された樹脂ワニスを基材から剥離する必要がないため、キズ及び異物の混入が少ない高品質な光学フィルムを得やすい。
【0130】
本発明において、プレベイクとも称される予備乾燥工程とは、基材上に塗布された樹脂ワニスを、樹脂ワニス中の溶媒の沸点よりも50℃以上低い温度で乾燥して、基材上に樹脂塗膜を形成する工程をいう。本発明の一実施形態では、基材上に塗布された樹脂ワニス中に含まれる溶媒の少なくとも50質量%を予備乾燥により除去してもよく、予備乾燥工程後の樹脂塗膜の固形分濃度は特に制限されないが、好ましくは50~95質量%、より好ましくは55~90質量%である。
また、本発明において、ポストベイクとも称される本乾燥工程とは、予備乾燥工程後に、予備乾燥工程後の基材上に形成された樹脂塗膜を、樹脂ワニス中に含まれる溶媒の沸点から10℃低い温度より高い温度以上、例えば150℃以上の温度でさらに乾燥して、基材上に樹脂塗膜を形成する工程をいう。本発明の一実施形態において、本乾燥工程では、予備乾燥工程により樹脂ワニス中の溶媒の一部が除去されて基材上に形成された樹脂塗膜をさらに乾燥し、より固形分濃度の高い樹脂塗膜を基材上に形成してよい。本乾燥工程後の樹脂塗膜の固形分濃度は特に制限されないが、好ましくは80~100質量%、より好ましくは90~99.9質量%、さらに好ましくは95~99.9質量%、さらにより好ましくは97~99.9質量%、とりわけ好ましくは98~99.9質量%である。
【0131】
予備乾燥工程は、基材上に樹脂ワニスが塗布された状態のまま行われ、本乾燥工程は、基材上に樹脂塗膜が形成された状態で行われる。予備乾燥工程において樹脂ワニス中の溶媒の一部を除去することにより得られる樹脂塗膜を、基材から剥離することなく本乾燥することにより、本乾燥工程前の該樹脂塗膜にかかる引張応力等の応力に異方性が発生しにくい。そのため、本乾燥工程後の樹脂塗膜内にも異方性が生じにくい。その結果、得られる光学フィルム内にも異方性が生じにくいため、光学フィルム内の面内位相差値Rを30nm以下に調整しやすく、加熱による異方的な収縮が生じにくい光学フィルムを得やすい。
【0132】
予備乾燥温度は、フィルム表面の品質保持の観点から、好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下である。
予備乾燥時間は、樹脂ワニスに含まれる溶媒の種類、予備乾燥温度等に応じて適宜選択すればよく、好ましくは5~150分間、より好ましくは10~120分間、さらに好ましくは20~60分間である。予備乾燥は、必要に応じて、不活性雰囲気下又は減圧条件下で行ってよい。
【0133】
本乾燥温度は、フィルム中の溶媒除去の観点から、好ましくは150℃以上、より好ましくは180℃以上、さらに好ましくは200℃以上であり、フィルムの着色を防ぐ観点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは220℃以下である。本乾燥温度は、予備乾燥温度より高い温度であり、予備乾燥温度よりも好ましくは30℃以上高い温度、より好ましくは40℃以上高い温度、さらに好ましくは50℃以上高い温度である。
本乾燥時間は、予備乾燥後の樹脂塗膜の固形分濃度等に応じて適宜選択すればよく、好ましくは1~120分間、より好ましくは5~80分間、さらに好ましくは10~40分間、特に好ましくは15~30分間である。また、本乾燥温度が例えば280℃以上の高温である場合には、本乾燥時間は30分以下とすることが好ましい。本乾燥は、必要に応じて、不活性雰囲気下又は減圧条件下で行ってよい。
【0134】
本発明の一実施形態において、光学フィルムの加熱による異方的な収縮を抑制しやすい観点から、予備乾燥工程及び本乾燥工程を、樹脂塗膜の固形分濃度が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらにより好ましくは97質量%以上、とりわけ好ましくは98質量%以上となるまで、基材から樹脂塗膜を剥離することなく、基材上に樹脂塗膜が形成された状態で行うことが好ましい。
【0135】
本発明の一実施形態において、乾燥工程は、予備乾燥工程及び本乾燥工程の後に、必要に応じて、さらに乾燥する工程(以下、後乾燥工程と記載することがある)を含んでもよく、後乾燥工程により、樹脂塗膜の溶媒含有量をさらに低減して、樹脂塗膜の固形分濃度を高めてもよい。後乾燥工程を含む場合、後乾燥温度は、フィルムの歪み抑制の観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは50℃以上、さらに好ましくは80℃以上であり、好ましくは300℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。後乾燥は、必要に応じて、不活性雰囲気下又は減圧条件下で行ってよい。
【0136】
<工程(c):剥離工程>
剥離工程において、乾燥工程で形成された樹脂塗膜を基材から剥離することにより、面内位相差値Rが0.1nm以上30nm以下の光学フィルムが得られる。
【0137】
〔積層体の製造方法〕
本発明は、本発明の光学フィルム及び積層体の製造方法も包含する。本発明の積層体の製造方法は、光学フィルムの面内位相差値Rが0.1nm以上30nm以下である限り特に制限されない。本発明の積層体は、上記の方法により製造される光学フィルムに1以上の機能層を積層して製造してもよいが、キズ及び異物の混入が少ない高品質な積層体を得やすい観点からは、上記剥離工程において樹脂塗膜を基材から剥離して本発明の光学フィルムを得る前に、上記乾燥工程で形成される、本発明の光学フィルムを与える樹脂塗膜上に、1以上の機能層を積層し、次いで1以上の機能層が積層された樹脂塗膜を基材から剥離することにより製造されることが好ましい。
【0138】
本発明の一実施形態において、本発明の積層体は、反り及び/又は層間剥離等が生じにくい積層体を得やすい観点、並びにキズや異物の混入が少ない高品質な積層体を得やすい観点から、以下:
(A)ポリイミド系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂、及び少なくとも1種の溶媒を含む樹脂ワニスを基材上に塗布すること(樹脂ワニス塗布工程)、
(B)塗布された樹脂ワニスを予備乾燥及び本乾燥して、基材上に樹脂塗膜を形成すること(乾燥工程)、
(C)基材上に形成された樹脂塗膜上に、ハードコート層等の1以上の機能層を積層すること(機能層積層工程)、及び
(D)1以上の機能層、例えば、ハードコート層が積層された樹脂塗膜を基材から剥離すること(剥離工程)、
を含む方法によって製造されることが好ましい。
【0139】
<工程(A):樹脂ワニス塗布工程及び工程(B):乾燥工程>
樹脂ワニス塗布工程及び乾燥工程は、それぞれ、上述の光学フィルムの製造方法における樹脂ワニス塗布工程(工程(a))及び乾燥工程(工程(b))と同様であってよい。
【0140】
<工程(C):機能層積層工程>
機能層積層工程において、基材上に形成された樹脂塗膜上に機能層を積層する方法は特に制限されず、積層する機能層に応じて、それぞれ公知の積層方法により積層できる。
本発明の一実施形態において、基材上に形成された樹脂塗膜上に機能層としてハードコート層を積層する場合には、該樹脂塗膜上に、上述のハードコート組成物を塗布し、塗布されたハードコート組成物を硬化させることによって該樹脂塗膜上にハードコート層を積層してよい。ハードコート組成物の塗布方法は特に制限されず、例えば、樹脂ワニスを基材上に塗布する方法として例示される公知の方法が挙げられる。ハードコート組成物を硬化させる方法としては特に制限されず、ハードコート組成物に含まれる反応性材料に応じて選択でき、例えば紫外線照射により硬化してもよい。
【0141】
<工程(D):剥離工程>
剥離工程において、機能層積層工程でハードコート層等の機能層が積層された樹脂塗膜を基材から剥離することにより、面内位相差値Rが0.1nm以上30nm以下の光学フィルムと該光学フィルムの少なくとも一方の面に積層されたハードコート層とを有する積層体が得られる。
【0142】
本発明の好ましい一実施形態において、本発明の光学フィルム及び該光学フィルムに1以上の機能層が積層された本発明の積層体は、画像表示装置の前面板、中でもウィンドウフィルムと称されるフレキシブル表示装置の前面板、特にローラブルディスプレイやフォルダブルディスプレイの前面板として非常に有用である。フレキシブル表示装置は、例えば、フレキシブル機能層と、フレキシブル機能層に重ねられて前面板として機能する光学フィルムを有する。すなわち、フレキシブル表示装置の前面板は、フレキシブル機能層の上の視認側に配置される。この前面板は、フレキシブル機能層、例えばフレキシブルディスプレイ内の画像表示素子を保護する機能を有する。
【0143】
画像表示装置としては、テレビ、スマートフォン、携帯電話、カーナビゲーション、タブレットPC、携帯ゲーム機、電子ペーパー、インジケーター、掲示板、時計、及びスマートウォッチ等のウェアラブルデバイス等が挙げられる。フレキシブル表示装置としては、フレキシブル特性を有する全ての画像表示装置が挙げられる。
【0144】
〔フレキシブル表示装置〕
本発明は、本発明の光学フィルム又は本発明の積層体を備えるフレキシブル表示装置も提供する。本発明の光学フィルム及び本発明の積層体は、好ましくはフレキシブル表示装置において前面板として用いられる。フレキシブル表示装置は、フレキシブル表示装置用積層体と、有機EL表示パネルとからなり、有機EL表示パネルに対して視認側にフレキシブル表示装置用積層体が配置され、折り曲げ可能に構成されている。フレキシブル表示装置用積層体は、本発明の光学フィルムであるウィンドウフィルム、円偏光板、タッチセンサを備えていてよく、それらの積層順は任意であるが、視認側からウィンドウフィルム、円偏光板、タッチセンサ又はウィンドウフィルム、タッチセンサ、円偏光板の順に積層されていることが好ましい。タッチセンサの視認側に円偏光板が存在すると、タッチセンサのパターンが視認されにくくなり表示画像の視認性が良くなるので好ましい。それぞれの部材は接着剤、粘着剤等を用いて積層することができる。また、ウィンドウフィルム、円偏光板、タッチセンサのいずれかの層の少なくとも一面に形成された遮光パターンを具備することができる。
【0145】
<偏光板>
本発明のフレキシブル表示装置は、偏光板、好ましくは円偏光板をさらに備えていてもよい。円偏光板は、直線偏光板にλ/4位相差板を積層することにより右円偏光又は左円偏光成分のみを透過させる機能を有する機能層である。例えば、外光を右円偏光に変換して有機ELパネルで反射されて左円偏光となった外光を遮断し、有機ELの発光成分のみを透過させることで反射光の影響を抑制して画像を見やすくするために用いられる。円偏光機能を達成するためには、直線偏光板の吸収軸とλ/4位相差板の遅相軸は理論上45°である必要があるが、実用的には45±10°である。直線偏光板とλ/4位相差板とは必ずしも隣接して積層される必要はなく、吸収軸と遅相軸の関係が前述の範囲を満足していればよい。全波長において完全な円偏光を達成することが好ましいが実用上は必ずしもその必要はないので本発明における円偏光板は楕円偏光板をも包含する。直線偏光板の視認側にさらにλ/4位相差フィルムを積層して、出射光を円偏光とすることで偏光サングラスをかけた状態での視認性を向上させることも好ましい。
【0146】
直線偏光板は、透過軸方向に振動している光は通すが、それとは垂直な振動成分の偏光を遮断する機能を有する機能層である。前記直線偏光板は、直線偏光子単独又は直線偏光子及びその少なくとも一面に貼り付けられた保護フィルムを備えた構成であってもよい。前記直線偏光板の厚さは、200μm以下であってもよく、好ましくは0.5~100μmである。直線偏光板の厚さが前記の範囲にあると柔軟性が低下し難い傾向にある。
【0147】
前記直線偏光子は、ポリビニルアルコール(以下、PVAと記載することがある)系フィルムを染色、延伸することで製造されるフィルム型偏光子であってもよい。延伸によって配向したPVA系フィルムに、ヨウ素等の二色性色素が吸着、又はPVAに吸着した状態で延伸されることで二色性色素が配向し、偏光性能を発揮する。前記フィルム型偏光子の製造においては、他に膨潤、ホウ酸による架橋、水溶液による洗浄、乾燥等の工程を有していてもよい。延伸や染色工程はPVA系フィルム単独で行ってもよいし、ポリエチレンテレフタレートのような他のフィルムと積層された状態で行うこともできる。用いられるPVA系フィルムの厚さは好ましくは10~100μmであり、延伸倍率は好ましくは2~10倍である。
【0148】
さらに前記偏光子の他の一例としては、液晶偏光組成物を塗布して形成する液晶塗布型偏光子が挙げられる。前記液晶偏光組成物は、液晶性化合物及び二色性色素化合物を含むことができる。前記液晶性化合物は液晶状態を示す性質を有していればよく、特にスメクチック相等の高次の配向状態を有していると高い偏光性能を発揮することができるため好ましい。また、液晶性化合物は重合性官能基を有していることも好ましい。
【0149】
前記二色性色素は、前記液晶化合物とともに配向して二色性を示す色素であって、重合性官能基を有していてもよく、また、二色性色素自身が液晶性を有していてもよい。液晶偏光組成物の中のいずれかの化合物は重合性官能基を有している。
【0150】
前記液晶偏光組成物はさらに開始剤、溶剤、分散剤、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、架橋剤、シランカップリング剤などを含むことができる。
【0151】
前記液晶偏光層は、配向膜上に液晶偏光組成物を塗布して液晶偏光層を形成することにより製造される。液晶偏光層は、フィルム型偏光子に比べて厚さを薄く形成することができる。前記液晶偏光層の厚さは、好ましくは0.5~10μm、より好ましくは1~5μmである。
【0152】
前記配向膜は、例えば基材上に配向膜形成組成物を塗布し、ラビング、偏光照射等により配向性を付与することで製造することができる。前記配向膜形成組成物は、配向剤の他に溶剤、架橋剤、開始剤、分散剤、レベリング剤、シランカップリング剤等を含んでいてもよい。前記配向剤としては、例えば、ポリビニルアルコール類、ポリアクリレート類、ポリアミック酸類、ポリイミド類が挙げられる。光配向を適用する場合にはシンナメート基を含む配向剤を使用することが好ましい。前記配向剤として使用される高分子のMwは、例えば10,000~1,000,000程度であってもよい。前記配向膜の厚さは、配向規制力の観点から、好ましくは5~10,000nm、より好ましは10~500nmである。
【0153】
前記液晶偏光層は基材から剥離して転写して積層することもできるし、前記基材をそのまま積層することもできる。前記基材が、保護フィルムや位相差板、ウィンドウフィルムの透明基材としての役割を担うことも好ましい。
【0154】
前記保護フィルムとしては、透明な高分子フィルムであればよく、具体的には、用いられる高分子フィルムとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン又はシクロオレフィンを含む単量体の単位を有するシクロオレフィン系誘導体等のポリオレフィン類、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、プロピオニルセルロース等の(変性)セルロース類、メチルメタクリレート(共)重合体等のアクリル類、スチレン(共)重合体等のポリスチレン類、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体類、アクリロニトリル・スチレン共重合体類、エチレン‐酢酸ビニル共重合体類、ポリ塩化ビニル類、ポリ塩化ビニリデン類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリアリレート等のポリエステル類、ナイロン等のポリアミド類、ポリイミド類、ポリアミドイミド類、ポリエーテルイミド類、ポリエーテルスルホン類、ポリスルホン類、ポリビニルアルコール類、ポリビニルアセタール類、ポリウレタン類、エポキシ樹脂類等のフィルムが挙げられ、透明性及び耐熱性に優れる点で、好ましくはポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエステル、オレフィン、アクリル又はセルロース系のフィルムが挙げられる。これらの高分子はそれぞれ単独又は2種以上混合して使用することができる。これらのフィルムは未延伸のまま、あるいは1軸又は2軸延伸したフィルムとして使用される。セルロース系フィルム、オレフィン系フィルム、アクリルフィルム、ポリエステル系フィルムが好ましい。エポキシ樹脂等のカチオン硬化組成物やアクリレート等のラジカル硬化組成物を塗布して硬化して得られるコーティング型の保護フィルムであってもよい。必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料や染料のような着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤等を含んでいてもよい。前記保護フィルムの厚さは、好ましくは200μm以下、より好ましくは1~100μmである。前記保護フィルムの厚さが前記の範囲にあると、保護フィルムの柔軟性が低下し難い。
【0155】
前記λ/4位相差板は、入射光の進行方向に直交する方向、すなわちフィルムの面内方向にλ/4の位相差を与えるフィルムである。前記λ/4位相差板は、セルロース系フィルム、オレフィン系フィルム、ポリカーボネート系フィルム等の高分子フィルムを延伸することで製造される延伸型位相差板であってもよい。前記λ/4位相差板は、必要に応じて位相差調整剤、可塑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、顔料や染料のような着色剤、蛍光増白剤、分散剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、酸化防止剤、滑剤、溶剤等を含んでいてもよい。前記延伸型位相差板の厚さは、好ましくは200μm以下、より好ましくは1~100μmである。厚さが前記の範囲にあるとフィルムの柔軟性が低下し難い傾向にある。
【0156】
さらに前記λ/4位相差板の他の一例としては、液晶組成物を塗布して形成する液晶塗布型位相差板が挙げられる。前記液晶組成物は、ネマチック、コレステリック、スメクチック等の液晶状態を示す性質を有する液晶性化合物を含む。液晶組成物の中の液晶性化合物を含むいずれかの化合物は重合性官能基を有している。前記液晶組成物はさらに開始剤、溶剤、分散剤、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、架橋剤、シランカップリング剤などを含むことができる。前記液晶塗布型位相差板は、前記液晶偏光層での記載と同様に配向膜上に液晶組成物を塗布硬化して液晶位相差層を形成することで製造することができる。液晶塗布型位相差板は、延伸型位相差板に比べて厚さを薄く形成することができる。前記液晶偏光層の厚さは、好ましくは0.5~10μm、より好ましくは1~5μmである。前記液晶塗布型位相差板は基材から剥離して転写して積層することもできるし、前記基材をそのまま積層することもできる。前記基材が、保護フィルムや位相差板、ウィンドウフィルムの透明基材としての役割を担うことも好ましい。
【0157】
一般的には、短波長ほど複屈折が大きく、長波長ほど小さな複屈折を示す材料が多い。この場合には全可視光領域でλ/4の位相差を達成することはできないので、視感度の高い560nm付近に対してλ/4となるような面内位相差、すなわち好ましくは100~180nm、より好ましくは130~150nmの面内位相差に設計されることが多い。通常とは逆の複屈折率波長分散特性を有する材料を用いた逆分散λ/4位相差板は、視認性をよくすることができる点で好ましい。このような材料としては、延伸型位相差板の場合は特開2007-232873号公報等、液晶塗布型位相差板の場合には特開2010-30979号公報に記載されているものを用いることも好ましい。
【0158】
また、他の方法としてはλ/2位相差板と組合せることで広帯域λ/4位相差板を得る技術も知られている(特開平10-90521号公報)。λ/2位相差板もλ/4位相差板と同様の材料及び方法で製造される。延伸型位相差板と液晶塗布型位相差板との組合せは任意であるが、どちらの場合にも、液晶塗布型位相差板を用いることが、厚さを薄くすることができる点で好ましい。
前記円偏光板に、斜め方向の視認性を高めるために、正のCプレートを積層する方法も知られている(特開2014-224837号公報)。正のCプレートは、液晶塗布型位相差板であっても延伸型位相差板であってもよい。該位相差板の厚さ方向の位相差は、好ましくは-200~-20nm、より好ましくは-140~-40nmである。
【0159】
<タッチセンサ>
本発明のフレキシブル表示装置は、タッチセンサをさらに備えていてもよい。タッチセンサは入力手段として用いられる。タッチセンサとしては、抵抗膜方式、表面弾性波方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式等の様々な様式が提案されており、いずれの方式でも構わないが、静電容量方式が好ましい。静電容量方式タッチセンサは活性領域及び前記活性領域の外郭部に位置する非活性領域に区分される。活性領域は表示パネルで画面が表示される領域である表示部に対応する領域であって、使用者のタッチが感知される領域であり、非活性領域は表示装置で画面が表示されない領域である非表示部に対応する領域である。タッチセンサはフレキシブルな特性を有する基板と;前記基板の活性領域に形成された感知パターンと;前記基板の非活性領域に形成され、前記感知パターンとパッド部を介して外部の駆動回路と接続するための各センシングラインを含むことができる。フレキシブルな特性を有する基板としては、前記高分子フィルムと同様の材料が使用できる。タッチセンサの基板は、その靱性が2,000MPa%以上であるものがタッチセンサのクラック抑制の面から好ましい。より好ましくは靱性が2,000~30,000MPa%であってもよい。ここで、靭性は、高分子材料の引張実験を通じて得られる応力(MPa)-歪み(%)曲線(Stress-strain curve)で破壊点までの曲線の下部面積として定義される。
【0160】
前記感知パターンは、第1方向に形成された第1パターン及び第2方向に形成された第2パターンを備えることができる。第1パターンと第2パターンは互いに異なる方向に配置される。第1パターン及び第2パターンは、同一層に形成され、タッチされる地点を感知するためには、それぞれのパターンが電気的に接続されなければならない。第1パターンは各単位パターンが継ぎ手を介して互いに接続された形態であるが、第2パターンは各単位パターンがアイランド形態に互いに分離された構造になっているので、第2パターンを電気的に接続するためには別途のブリッジ電極が必要である。第2パターンを電気的に接続するための電極としては、周知の透明電極素材を適用することができる。該透明電極素材としては、例えば、インジウムスズ酸化物(以下、ITOと記載することがある)、インジウム亜鉛酸化物、亜鉛酸化物、インジウム亜鉛スズ酸化物、インジウムガリウム亜鉛酸化物、カドミウムスズ酸化物、PEDOTと称されるpoly(3,4-ethylenedioxythiophene)、炭素ナノチューブ、グラフェン、金属ワイヤ等を挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。該透明電極素材として、好ましくはITOを使用することができる。金属ワイヤに使用される金属は特に限定されず、例えば、銀、金、アルミニウム、銅、鉄、ニッケル、チタン、セレニウム、クロム等が挙げられ、これらは単独又は2種以上混合して使用することができる。
【0161】
ブリッジ電極は感知パターン上部に絶縁層を介して前記絶縁層上部に形成することができ、基板上にブリッジ電極が形成されており、その上に絶縁層及び感知パターンを形成することができる。前記ブリッジ電極は感知パターンと同じ素材で形成することもでき、モリブデン、銀、アルミニウム、銅、パラジウム、金、白金、亜鉛、スズ、チタン又はこれらのうちの2種以上の合金などの金属で形成することもできる。第1パターンと第2パターンは電気的に絶縁されなければならないので、感知パターンとブリッジ電極の間には絶縁層が形成される。絶縁層は第1パターンの継ぎ手とブリッジ電極の間にのみ形成することもでき、感知パターン全体を覆う層として形成することもできる。感知パターン全体を覆う層として形成する場合は、ブリッジ電極は絶縁層に形成されたコンタクトホールを介して第2パターンを接続することができる。
【0162】
前記タッチセンサはパターンが形成されたパターン領域と、パターンが形成されていない非パターン領域間の透過率の差、具体的には、これらの領域における屈折率の差によって誘発される光透過率の差を適切に補償するための手段として基板と電極の間に光学調節層をさらに含むことができる。前記光学調節層は無機絶縁物質又は有機絶縁物質を含むことができる。光学調節層は光硬化性有機バインダー及び溶剤を含む光硬化組成物を基板上にコーティングして形成することができる。前記光硬化組成物は無機粒子をさらに含むことができる。前記無機粒子によって光学調節層の屈折率を上昇させることができる。
前記光硬化性有機バインダーは、例えば、アクリレート系単量体、スチレン系単量体、カルボン酸系単量体などの各単量体の共重合体を含むことができる。前記光硬化性有機バインダーは、例えば、エポキシ基含有繰り返し単位、アクリレート繰り返し単位、カルボン酸繰り返し単位などの互いに異なる各繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。
前記無機粒子としては、例えば、ジルコニア粒子、チタニア粒子、アルミナ粒子等が挙げられる。前記光硬化組成物は、光重合開始剤、重合性モノマー、硬化補助剤などの各添加剤をさらに含むこともできる。
【0163】
<接着層>
前記フレキシブル表示装置用積層体を形成する、ウィンドウフィルム、偏光板、タッチセンサ等の各層、並びに各層を構成する直線偏光板、λ/4位相差板等のフィルム部材は接着剤によって接着することができる。接着剤としては、水系接着剤、有機溶剤系接着剤、無溶剤系接着剤、固体接着剤、溶剤揮散型接着剤、湿気硬化型接着剤、加熱硬化型接着剤、嫌気硬化型接着剤、水系溶剤揮散型接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤、硬化剤混合型接着剤、熱溶融型接着剤、感圧型接着剤、感圧型粘着剤、再湿型接着剤等、汎用に使用されているものが使用できる。中でも水系溶剤揮散型接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤、粘着剤がよく用いられる。接着層の厚さは、求められる接着力等に応じて適宜調節することができ、好ましくは0.01~500μm、より好ましくは0.1~300μmである。前記フレキシブル画像表示装置用積層体には、複数の接着層が存在してよいが、それぞれの厚さ及び用いられる接着剤の種類は同じであっても異なっていてもよい。
【0164】
前記水系溶剤揮散型接着剤としてはポリビニルアルコール系ポリマー、でんぷん等の水溶性ポリマー、エチレン-酢酸ビニル系エマルジョン、スチレン-ブタジエン系エマルジョン等水分散状態のポリマーを主剤ポリマーとして使用することができる。水、前記主剤ポリマーに加えて、架橋剤、シラン系化合物、イオン性化合物、架橋触媒、酸化防止剤、染料、顔料、無機フィラー、有機溶剤等を配合してもよい。前記水系溶剤揮散型接着剤によって接着する場合、前記水系溶剤揮散型接着剤を被接着層間に注入して被着層を貼合した後、乾燥させることで接着性を付与することができる。前記水系溶剤揮散型接着剤を用いる場合の接着層の厚さは0.01~10μm、好ましくは0.1~1μmであってもよい。前記水系溶剤揮散型接着剤を複数層の形成に用いる場合、それぞれの層の厚さ及び前記接着剤の種類は同じであっても異なっていてもよい。
【0165】
前記活性エネルギー線硬化型接着剤は、活性エネルギー線を照射して接着剤層を形成する反応性材料を含む活性エネルギー線硬化組成物の硬化により形成することができる。前記活性エネルギー線硬化組成物は、ハードコート組成物について記載した化合物と同様のラジカル重合性化合物及びカチオン重合性化合物の少なくとも1種の重合物を含有することができる。前記ラジカル重合性化合物としては、ハードコート組成物について記載した化合物と同様の種類のものが使用できる。接着層に用いられるラジカル重合性化合物としてはアクリロイル基を有する化合物が好ましい。接着剤組成物としての粘度を下げるために、該組成物が単官能の化合物を含むことも好ましい。
【0166】
前記カチオン重合性化合物としては、ハードコート組成物について記載した化合物と同様の種類のものが使用できる。活性エネルギー線硬化組成物に用いられるカチオン重合性化合物としては、エポキシ化合物がより好ましい。接着剤組成物の粘度を下げるために、該組成物が単官能の化合物を反応性希釈剤として含むことも好ましい。
【0167】
活性エネルギー線組成物は、重合開始剤をさらに含むことができる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル及びカチオン重合開始剤等が挙げられ、これらは適宜選択して用いることができる。これらの重合開始剤は、活性エネルギー線照射及び加熱の少なくとも一種により分解されて、ラジカル又はカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。ハードコート組成物の記載の中で活性エネルギー線照射によりラジカル重合又はカチオン重合の内の少なくともいずれか開始することができる開始剤を使用することができる。
【0168】
前記活性エネルギー線硬化組成物はさらに、イオン捕捉剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、密着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動粘度調整剤、可塑剤、消泡剤溶剤、添加剤、溶剤を含むことができる。前記活性エネルギー線硬化型接着剤によって2つの被接着層を接着する場合、前記活性エネルギー線硬化組成物を被接着層のいずれか一方又は両方に塗布後、貼合し、いずれか一方の被接着層又は両方の被接着層を通して活性エネルギー線を照射して、該組成物を硬化させることにより、接着することができる。前記活性エネルギー線硬化型接着剤を用いる場合の接着層の厚さは、好ましくは0.01~20μm、より好ましくは0.1~10μmである。前記活性エネルギー線硬化型接着剤を複数層の形成に用いる場合、それぞれの層の厚さ及び用いられる接着剤の種類は、同一であっても異なっていてもよい。
【0169】
前記粘着剤としては、主剤ポリマーに応じて、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等に分類され、これらの何れを使用することもできる。粘着剤には主剤ポリマーに加えて、架橋剤、シラン系化合物、イオン性化合物、架橋触媒、酸化防止剤、粘着付与剤、可塑剤、染料、顔料、無機フィラー等を配合してもよい。前記粘着剤を構成する各成分を溶剤に溶解・分散させて粘着剤組成物を得て、該粘着剤組成物を基材上に塗布した後に乾燥させることで、粘着層又は接着層が形成される。粘着層は直接形成されてもよいし、別途基材に形成したものを転写することもできる。接着前の粘着面をカバーするためには離型フィルムを使用することも好ましい。前記粘着剤を用いる場合の接着層の厚さは、好ましくは1~500μm、より好ましくは2~300μmである。前記粘着剤を複数層の形成に用いる場合、それぞれの層の厚さ及び用いられる粘着剤の種類は、同一であっても異なっていてもよい。
【0170】
<遮光パターン>
前記遮光パターンは前記フレキシブル画像表示装置のベゼル又はハウジングの少なくとも一部として適用することができる。遮光パターンによって前記フレキシブル画像表示装置の辺縁部に配置される配線が隠されて視認されにくくすることで、画像の視認性が向上する。前記遮光パターンは単層又は複層の形態であってもよい。遮光パターンのカラーは特に制限されることはなく、黒色、白色、金属色などの多様なカラーを有することができる。遮光パターンはカラーを具現するための顔料と、アクリル系樹脂、エステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン、シリコーンなどの高分子で形成することができる。これらの単独又は2種類以上の混合物で使用することもできる。前記遮光パターンは、印刷、リソグラフィ、インクジェットなど各種の方法にて形成することができる。遮光パターンの厚さは、好ましくは1~100μm、より好ましくは2~50μmである。また、遮光パターンの厚さ方向に傾斜等の形状を付与することも好ましい。
【実施例0171】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。例中の「%」及び「部」は、特記しない限り、それぞれ質量%及び質量部を意味する。まず始めに物性値の測定方法を説明する。
【0172】
<重量平均分子量の測定>
樹脂のMwは、GPCを用いて測定した。測定試料の調製方法及び測定条件は次の通りである。
(1)試料調製方法
樹脂を20mg秤りとり、10mLのDMF(10mmol/L臭化リチウム添加)を加え、完全に溶解させた。この溶液をクロマトディスク(孔径0.45μm)にてろ過し、試料溶液とした。
(2)測定条件
装置:HLC-8020GPC
カラム:ガードカラム+TSKgelα-M(長さ300mm、内径7.8mm)を2本連結、α-2500(長さ300mm、内径7.8mm)を1本連結
溶離液:DMF(10mmol/Lの臭化リチウム添加)
流量:1.0mL/分
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μL
分子量標準:標準ポリスチレン
【0173】
<厚さの測定>
実施例及び比較例で得られた光学フィルムについて、ABSデジマチックインジケーター((株)ミツトヨ製、ID-C112BS)を用いて、光学フィルムの厚さを測定した。
【0174】
<面内位相差値R及び厚さ方向位相差値Rthの測定>
面内位相差値及び厚さ方向位相差値の測定用サンプルは、以下のようにして作成した。実施例及び比較例で得られたフィルムにおいて、そのTD方向の中央部で、MD方向及びTD方向にそれぞれ平行な四辺をもつ4cm四方の正方形を切り出した。測定サンプルを位相差測定装置(王子計測機器(株)製、KOBRA-WPR、解析ソフト:KOBRA-RE)に設置し、MD方向及びTD方向それぞれを遅相軸としたときの入射角0°における波長589.6nmのリタデーションを測定し、その測定値をMD方向の面内位相差値R0,MD及びTD方向の面内位相差値R0,TDとした。R0,MD及びR0,TDのいずれかをRとする。また、上記と同様に、入射角40°における波長589.6nmのリタデーションを測定し、MD方向を遅相軸とした場合の測定値を厚さ方向位相差値Rthとした。
【0175】
<加熱収縮率比の測定>
実施例及び比較例で得られた光学フィルムをそれぞれ、100mm四方にカットし、加熱収縮率測定用試料を作製した。この際、フィルム作製時のワニス搬送方向をMD、ワニス搬送方向に対して垂直方向をTDとし、切り出したサンプルも方向が分かるように記録した。作製した各試料を庫内温度300℃に設定した全排気オーブン(エスペック(株)製、SPH-202)内に設置して、1時間加熱した。加熱後、各試料をオーブンから取出し、室温で1時間養生後、各試料の大きさを測定顕微鏡((株)ミツトヨ製、MF-UC2010B)を用いて測定した。加熱前後の各試料の大きさから、MD方向とTD方向との加熱収縮率(加熱後の試料の長さ/加熱前の試料の長さ×100)Xをそれぞれ求め、MD方向とTD方向との加熱収縮率との比(XMD/XTD)を算出した。
【0176】
<ヘーズ>
分光測色計(コニカミノルタ(株)製、CM-3700A)を用いて、ASTM D1003-97に準拠し、光学フィルムのヘーズを測定した。それぞれの測定試料は、実施例及び比較例の光学フィルムを縦横各30mmの大きさにしたものである。
【0177】
<YI値>
実施例及び比較例で得られた光学フィルムのYI値を、分光測色計(コニカミノルタ(株)製、CM-3700A)によってASTM D1975に準拠して測定した。それぞれの測定試料は、実施例及び比較例の光学フィルムを縦横各30mmの大きさにしたものである。
【0178】
<合成例1:ポリアミドイミド樹脂1の製造>
十分に乾燥させた撹拌機と温度計を備える反応容器に、窒素を導通させ、容器内を窒素で置換した。該反応容器に、DMAc 995.55gを入れ、TFMB 41.59g(129.9mmol)と6FDA 17.52g(39.4mmol)を加えて反応させた。
次いで、OBBC 3.88g(13.1mmol)とTPC 16.01g(78.9mmol)を加え反応させた。
次いで、無水酢酸 28.18g(276.1mmol)を加え、15分間撹拌した後、4-ピコリン 8.57g(92.0mmol)を加え、反応容器を70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を得た。
反応液を冷却し、メタノール 1493.3gを加え、次いでイオン交換水 746.7gを滴下し、白色固体を析出させた。析出した白色固体を遠心ろ過により捕集し、メタノールで洗浄することにより、ポリアミドイミド樹脂を含むウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを減圧下、60℃で乾燥させることによりポリアミドイミド樹脂(TPC/6FDA/OBBC/TFMB=60/30/10/100)の粉体を得た。得られたポリアミドイミド樹脂1のMwは295,207であった。
【0179】
<合成例2:ポリアミドイミド樹脂2の製造>
十分に乾燥させた撹拌機と温度計を備える反応容器に、窒素を導通させ、容器内を窒素で置換した。該反応容器に、DMAc 627.15gを入れ、TFMB 18.27g(57.1mmol)と6FDA 7.76g(17.5mmol)を加えて反応させた。
次いで、OBBC 1.72g(5.8mmol)とTPC 7.09g(34.9mmol)を加えて反応させた。
次いで、無水酢酸 12.48g(122.3mmol)を加え、15分間撹拌した後、4-ピコリン 3.80g(40.8mmol)を加え、反応容器を70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を得た。
反応液を冷却し、メタノール 940gを加え、次いでイオン交換水 470gを滴下し、白色固体を析出させた。析出した白色固体を遠心ろ過により捕集し、メタノールで洗浄することにより、ポリアミドイミド樹脂を含むウェットケーキを得た。得られたウェットケーキを減圧下、60℃で乾燥させることによりポリアミドイミド樹脂2(TPC/6FDA/OBBC/TFMB=60/30/10/100)の粉体を得た。得られたポリアミドイミド樹脂2のMwは353,286であった。
【0180】
<シリカゾルの製造>
無機材料としてシリカ粒子を用いるために、シリカゾルを調製した。具体的には、1,000mLのフラスコにメタノール分散シリカゾル(平均一次粒子径27nm、シリカ粒子固形分29.9%) 395.1g及びGBL 601.9gを入れ、真空エバポレータで45℃の湯浴下、400hPaで1時間、続いて250hPaで1時間、メタノールを蒸発させた。さらに250hPa下で70℃まで昇温して30分間加熱し、GBL分散シリカゾル1を得た。得られたGBL分散シリカゾル1の固形分濃度は30.5%であった。
【0181】
<実施例1>
合成例1で得られたポリアミドイミド樹脂1をGBLで希釈し、GBL分散シリカゾル1を加えて十分に混合することで、樹脂/シリカ粒子混合ワニスを得た。その際、樹脂とシリカ粒子の固形分濃度は、該ワニスに対して10.5質量%であり、樹脂とシリカ粒子との質量比が80:20となるようにした。得られたワニスを目開き10μmのフィルターでろ過した後、ガラス基材上に自立膜の厚さが45μmとなるように塗工厚さを調整し、アプリケーターを用いて一定方向にワニスを流延塗布した。この際のワニス流延方向をMD方向、MD方向に垂直な方向をTD方向と規定した。その後、全排気オーブン中で、140℃で30分間、予備乾燥した後、ガラス基材に密着したままさらに大気下、200℃で20分間、本乾燥して、厚さ40.0μmの光学フィルムを得た。
【0182】
<実施例2>
合成例1で得られたポリアミドイミド樹脂1をGBLで希釈し、GBL分散シリカゾル1を加えて十分に混合することで、樹脂/シリカ粒子混合ワニスを得た。その際、樹脂とシリカ粒子の固形分濃度は、該ワニスに対して10.5質量%であり、樹脂とシリカ粒子との質量比が80:20となるようにした。得られたワニスを目開き10μmのフィルターでろ過した後、ガラス基材上に自立膜の厚さが48μmとなるように塗工厚さを調整し、アプリケーターを用いて一定方向にワニスを流延塗布した。なお、ワニス流延方向をMD方向とし、MD方向に垂直な方向をTD方向と規定した。その後、全排気オーブン中で、140℃で30分間、予備乾燥した後、ガラス基材に密着したままさらに大気下、300℃で20分間、本乾燥して、厚さ39.0μmの光学フィルムを得た。
【0183】
<実施例3>
合成例2で得られたポリアミドイミド樹脂2をGBLで希釈し、GBL分散シリカゾル1を加えて十分に混合することで、樹脂/シリカ粒子混合ワニスを得た。その際、樹脂とシリカ粒子の固形分濃度は、該ワニスに対して11.5質量%であり、樹脂とシリカ粒子との質量比が60:40となるようにした。得られたワニスを目開き10μmのフィルターでろ過した後、ガラス基材上に自立膜の厚さが85μmとなるように塗工厚さを調整し、アプリケーターを用いて一定方向にワニスを流延塗布した。なお、ワニス流延方向をMD方向とし、MD方向に垂直な方向をTD方向と規定した。その後全排気オーブン中で、140℃で30分間、予備乾燥した後、ガラス基材に密着したままさらに大気下、200℃で20分間、本乾燥して、厚さ79.0μmの光学フィルムを得た。
【0184】
<比較例1>
合成例1で得られたポリアミドイミド樹脂1をGBLで希釈し、GBL分散シリカゾル1を加えて十分に混合することで、樹脂/シリカ粒子混合ワニスを得た。その際、樹脂とシリカ粒子の固形分濃度は、該ワニスに対して10.5質量%であり、樹脂とシリカ粒子との質量比が80:20となるようにした。得られたワニスを目開き3μmのフィルターでろ過した後、ポリエステル基材(東洋紡(株)製、コスモシャイン(登録商標) A4100)の平滑面上に自立膜の厚さが45μmとなるように塗工厚さを調整し、アプリケーターを用いて一定方向にワニスを流延塗布した。なお、ワニス流延方向をMD方向、MD方向に垂直な方向をTD方向と規定した。その後、140℃で30分間、予備乾燥した後、得られた塗膜をポリエステル基材から剥離して、自立膜を得た。自立膜を金枠に固定し、全排気オーブン中で、大気下、200℃で20分間、本乾燥して、厚さ39.2μmの光学フィルムを得た。
【0185】
<比較例2>
合成例1で得られたポリアミドイミド樹脂1をGBLで希釈し、GBL分散シリカゾル1を加えて十分に混合することで、樹脂/シリカ粒子混合ワニスを得た。その際、樹脂とシリカ粒子の固形分濃度は、該ワニスに対して10.5質量%であり、樹脂とシリカ粒子の質量比が80:20となるようにした。得られたワニスを目開き10μmのフィルターでろ過した後、ポリエステル基材(東洋紡(株)製、コスモシャイン A4100)上において一定方向に流延成型することにより塗膜を成形した。温度を段階的に120℃から70℃になるように設定した長さ8mの炉内を線速1.4m/分で通過させることにより塗膜を乾燥炉内において予備乾燥し、得られた塗膜をポリエステル基材から剥離して、自立膜を得た。その後、全排気オーブン中で、200℃で20分、塗膜を本乾燥して、厚さ40.4μmの光学フィルムを得た。
【0186】
<比較例3>
合成例2で得られたポリアミドイミド樹脂2をGBLで希釈し、GBL分散シリカゾル1を加えて十分に混合することで、樹脂/シリカ粒子混合ワニスを得た。その際、樹脂とシリカ粒子の固形分濃度は、該ワニスに対して11.5質量%であり、樹脂とシリカ粒子の質量比が60:40となるようにした。得られたワニスを目開き10μmのフィルターでろ過した後、ポリエステル基材(東洋紡(株)製、コスモシャイン A4100)の平滑面上に自立膜の厚さが86μmとなるように塗工厚さを調整し、アプリケーターを用いて一定方向にワニスを流延塗布した。なお、ワニス流延方向をMD方向、MD方向に垂直な方向をTD方向と規定した。その後乾燥炉内において140℃で30分間予備乾燥した後、得られた塗膜をポリエステル基材から剥離して、自立膜を得た。自立膜を金枠に固定し、全排気オーブン中で、大気下、200℃で20分間本乾燥して、厚さ77.0μmの光学フィルムを得た。
【0187】
<比較例4>
合成例1で得られたポリアミドイミド樹脂1をGBLで希釈し、GBL分散シリカゾル1を加えて十分に混合することで、樹脂/シリカ粒子混合ワニスを得た。その際、樹脂とシリカ粒子の固形分濃度は、該ワニスに対して10.5質量%であり、樹脂とシリカ粒子の質量比が80:20となるようにした。得られたワニスを目開き10μmのフィルターでろ過した後、ガラス基材上に自立膜の厚さが68μmとなるように塗工厚さを調整し、アプリケーターを用いて一定方向にワニスを流延塗布した。なお、ワニス流延方向をMD方向とし、MD方向に垂直な方向をTD方向と規定した。その後、140℃で30分間、予備乾燥した後、得られた塗膜をガラス基材から剥離して、自立膜を得た。自立膜を金枠に固定し、全排気オーブン中で、大気下、300℃で40分間、本乾燥して、厚さ61.0μmの光学フィルムを得た。
【0188】
【表1】
【0189】
実施例1~3の光学フィルムにおいて、R0,MDがそれぞれ、1.3nm、1.0nmおよび2.3nmであり、R0,TDが、それぞれ0.4nm、0.8nmおよび2.6nmであり、加熱収縮率比が比較例1~4と比較して1に近いことから、実施例1~3の光学フィルムは加熱での寸法変化が等方的であり、異方的ではないことが確認された。