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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132833
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】光ファイババンドル構造
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/04 20060101AFI20230914BHJP
   G02B 6/36 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
G02B6/04 B
G02B6/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038380
(22)【出願日】2022-03-11
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度 国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/ Beyond 5G 超大容量無線通信を支える空間多重光ネットワーク・ノード技術の研究開発 経済性と転送性能に優れた空間多重光ネットワーク基盤技術の研究開発」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翼
(72)【発明者】
【氏名】杉崎 隆一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正典
(72)【発明者】
【氏名】新子谷 悦宏
【テーマコード(参考)】
2H036
2H250
【Fターム(参考)】
2H036JA02
2H036KA01
2H036KA02
2H036KA03
2H036MA11
2H036QA12
2H036QA23
2H036QA24
2H250AB02
2H250AC68
2H250AC93
2H250AC96
2H250BA32
2H250CA42
2H250CA43
2H250CA50
2H250CA67
2H250CC15
2H250CC28
(57)【要約】
【課題】 集合する光ファイバの本数が増えても、確実に細径部を最密配置で集合させることが可能な光ファイババンドル構造を提供する。
【解決手段】 光ファイバ心線19は、先端から順に、ガラスファイバ部7と、ガラスファイバに樹脂が被覆された樹脂被覆部9によって構成される。ガラスファイバ部7の先端は、樹脂被覆部9におけるガラスファイバ径よりも径が細い細径部13となる。細径部13の端部は略最密構造で配列されて接着剤によって保持部材15の細径部13に固定される。ここで、接着剤25による表面張力s=(P×r/M)で表され、ガラスファイバ部7の撓みからの復元力ω=8EIσ/Lで表される。この場合、s>ωである必要がある。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の光ファイバ心線と、
複数の前記光ファイバ心線を保持する保持部材と、
を具備し、
前記光ファイバ心線は、先端から順に、ガラスファイバ部と、ガラスファイバに樹脂が被覆された樹脂被覆部と、を具備し、
前記ガラスファイバ部の先端は、前記樹脂被覆部におけるガラスファイバ径よりも径が細い細径部であり、
前記保持部材には、前記ガラスファイバ部と前記樹脂被覆部の一部が収納され、前記細径部の端部は略最密構造で配列されて接着剤により固定され、
前記接着剤による表面張力s=(P×r/M)、前記ガラスファイバ部の撓みからの復元力ω=8EIσ/L(但し、P:パラコール、r:前記接着剤の液体密度(g/cm)、M:前記接着剤の分子量(g/mol)、E:前記ガラスファイバ部のヤング率(GPa)、I:前記細径部における断面維持モーメント(mm)、σ:前記細径部の撓み量(mm)、L:前記ガラスファイバ部の長さ(mm))の時、
s>ωであることを特徴とする光ファイババンドル構造。
【請求項2】
前記ガラスファイバ部は、先端から順に、前記細径部と、前記樹脂被覆部におけるガラスファイバ径と略同一径の定径部と、を具備し、
前記定径部が、略最密構造で配列されて固定されていることを特徴とする請求項1記載の光ファイババンドル構造。
【請求項3】
前記樹脂被覆部における前記光ファイバ心線の径は255μm以下であり、
前記樹脂被覆部におけるガラスファイバ径は50μm以上125μm以下であり、
前記細径部におけるガラスファイバ径は、25μm以上45μm以下であり、
前記細径部の長さは5mm以上30mm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光ファイババンドル構造。
【請求項4】
前記樹脂被覆部におけるガラスファイバ径は75μm以上85μm以下であり、
前記樹脂被覆部前記光ファイバ心線の径は160μm~170μmであることを特徴とする請求項3記載の光ファイババンドル構造。
【請求項5】
前記樹脂被覆部の樹脂層の厚さは5μm以上であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の光ファイババンドル構造。
【請求項6】
少なくとも前記細径部の一部がプラズマまたは紫外線で表面改質されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の光ファイババンドル構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の間隔でコアが配列されたマルチコアファイバ等と接続可能な、光ファイババンドル構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の光通信におけるトラフィックの急増により、伝送容量の増大が求められている。そこで、さらに通信容量を拡大する手段として、シングルコアの光ファイバに代えて一本の光ファイバに複数のコアが形成されたマルチコアファイバが提案されている。
【0003】
マルチコアファイバを伝送路として用いた場合、このマルチコアファイバの各コアは、他のマルチコアファイバの対応するコアや、それぞれ別のシングルコアファイバや受発光素子等と接続されて伝送信号を送受する必要がある。マルチコアファイバとシングルコアファイバとを接続する方法として、マルチコアファイバと、そのマルチコアファイバのコアに対応する位置にシングルコアの光ファイバが配列されたバンドルファイバとを接続し、伝送信号を送受信する方法が提案されている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1では、細径のガラスファイバを接着剤の表面張力によって最密配置に集合させてバンドル構造を形成するものである。特許文献1では、中心の光ファイバ心線の周囲に6本の光ファイバ心線を1層配置した7心のバンドル構造について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-181791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のように、例えば通常径の樹脂被覆光ファイバの樹脂を剥離して、露出したガラスファイバをエッチング等で細径化し、細径部分をバンドル化すると、通常径部分と細径部分との径の差に応じた量だけ、細径部を中心方向に移動させる必要がある。この移動量は、細径部と通常径部との径の差が大きいほど、また、バンドルする本数が大きくなるほど(すなわち、中心の光ファイバの外周に複数層以上の光ファイバを集合させる場合)大きくなる。
【0007】
このように光ファイバの移動量が大きくなると、光ファイバの撓み量が大きくなるため、光ファイバの径方向の外方に向かう復元力が大きくなり、接着剤による表面張力では、光ファイバの細径部を最密配置に集合することが困難となる。
【0008】
これに対し、径変化のない細径光ファイバをバンドル化して、細径光ファイバと通常径の光ファイバとを接続すると、接続されるファイバ径の差が大きいため、例えば融着接続する際の接続ロスが増大してしまうおそれがある。また、細径光ファイバは取り扱いが困難である。
【0009】
一方、通常の光ファイバとしては、ガラスファイバの外周に樹脂が被覆された樹脂被覆光ファイバが使用される。樹脂被覆部は外径が大きくなるため、細径部との径の差を小さくするためには、樹脂が剥離されたガラスファイバがバンドルされる。しかし、バンドル構造を保持する保持部材の縁部がガラスファイバと接触すると、ガラスファイバが傷付き、信頼性が劣化してしまう不具合の発生や、破損のおそれがある。
【0010】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、集合する光ファイバの本数が増えても、確実に細径部を最密配置で集合させることが可能な光ファイババンドル構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、複数の光ファイバ心線と、複数の前記光ファイバ心線を保持する保持部材と、を具備し、前記光ファイバ心線は、先端から順に、ガラスファイバ部と、ガラスファイバに樹脂が被覆された樹脂被覆部と、を具備し、前記ガラスファイバ部の先端は、前記樹脂被覆部におけるガラスファイバ径よりも径が細い細径部であり、前記保持部材には、前記ガラスファイバ部と前記樹脂被覆部の一部が収納され、前記細径部の端部は最密構造で配列されて接着剤により固定され、前記接着剤による表面張力s=(P×r/M)、前記ガラスファイバ部の撓みからの復元力ω=8EIσ/L(但し、P:パラコール、r:前記接着剤の液体密度(g/cm)、M:前記接着剤の分子量(g/mol)、E:前記ガラスファイバ部のヤング率(GPa)、I:前記細径部における断面維持モーメント(mm)、σ:前記細径部の撓み量(mm)、L:前記ガラスファイバ部の長さ(mm))の時、s>ωであることを特徴とする光ファイババンドル構造である。
【0012】
前記ガラスファイバ部は、先端から順に、前記細径部と、前記樹脂被覆部におけるガラスファイバ径と略同一径の定径部と、を具備し、前記定径部が、前記保持部材によって、略最密構造で配列されていてもよい。
【0013】
前記樹脂被覆部における前記光ファイバ心線の径は255μm以下であり、前記樹脂被覆部におけるガラスファイバ径は50μm以上125μm以下であり、前記細径部におけるガラスファイバ径は、25μm以上45μm以下であり、前記細径部の長さは5mm以上30mm以下であることが望ましい。
【0014】
さらに、前記樹脂被覆部におけるガラスファイバ径は75μm以上85μm以下であり、前記樹脂被覆部前記光ファイバ心線の径は160μm~170μmであることが望ましい。
【0015】
前記樹脂被覆部の樹脂層の厚さは5μm以上であることが望ましい。
【0016】
少なくとも前記細径部がプラズマまたは紫外線で表面改質されていてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、集合する光ファイバの本数が増えても、確実に細径部を最密配置で集合させることが可能な光ファイババンドル構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】光ファイバ接続構造1を示す断面図。
図2】(a)は、図1のA-A線断面図、(b)は、図1のB-B線断面図。
図3】(a)は、図1のC-C線断面図、(b)は、図1のD-D線断面図。
図4】光ファイバ心線19の端部を示す図。
図5】光ファイバ心線19を集合させてバンドル構造を形成する工程を示す図。
図6】(a)は光ファイバ接続構造1aを示す図、(b)は光ファイバ接続構造1bを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、光ファイバのバンドル構造について説明する。図1は、バンドル構造5とマルチコアファイバとが接続された光ファイバ接続構造1を示す図である。また、図2(a)は、図1のA-A線断面図、図2(b)は、図1のB-B線断面図、図3(a)は、図1のC-C線断面図、図3(b)は、図1のD-D線断面図である。
【0020】
マルチコアファイバ3は、キャピラリ17に挿通されて固定される。マルチコアファイバ3は、複数のコアが所定の間隔で配置され、コアを取り囲むようにクラッドが設けられる。図2(a)に示した例では、マルチコアファイバ3は、19個のコアが、等間隔に配置されている。
【0021】
マルチコアファイバ3と接続されるバンドル構造5は、同一径の複数の光ファイバ心線19と、複数の光ファイバ心線19を保持する保持部材15等からなる。保持部材15は、フェルールとして利用可能である。
【0022】
光ファイバ心線19は、コアと、コアを取り囲むクラッドからなる単心光ファイバであり、光ファイバ心線19は、先端から順に、ガラスファイバ部7と、ガラスファイバに樹脂が被覆された樹脂被覆部9によって構成される。また、ガラスファイバ部7は、先端から順に、細径部13と、細径部13よりも外径が大きく、樹脂被覆部9におけるガラスファイバ径と略同一径の定径部11とによって構成される。すなわち、樹脂被覆部9は、定径部11におけるガラスファイバに樹脂が被覆されて形成され、ガラスファイバ部7の先端は、樹脂被覆部9におけるガラスファイバ径よりも径が細い細径部13となる。
【0023】
細径部13は、樹脂被覆部9の樹脂を除去することで、内部のガラスファイバを露出させて、露出したガラスファイバの先端側の所定の長さに対してケミカルエッチングを施すこと等で形成される。すなわち、定径部11は、細径部13に対して太径部となる。なお、細径部13は、定径部11との境界から先端に行くにつれて徐々に径が細くなるようにしてもよい。
【0024】
なお、細径部13の外径は、マルチコアファイバ3のコアピッチと略等しく、高密度なマルチコアファイバと接続するためには、例えば25μm以上45μm以下であることが望ましい。また、細径部13の長さは5mm以上30mm以下であることが望ましい。細径部13の長さが5mm未満では、細径部13のバンドル化が困難であり、細径部13の長さが30mmを超えると、バンドル構造5の長さが長くなるとともに、クラッドから漏洩する透過損失を無視できなくなる。
【0025】
また、定径部11の外径(定径部11における径変化部を除く最大外径部の外径であって、樹脂被覆部9におけるガラスファイバ径)は、例えば50μm以上125μm以下であることが望ましく、75μm以上85μm以下であることがさらに望ましい。また、定径部11の長さ(樹脂被覆部9の端部から細径部13の端部までの長さであり、樹脂被覆部9におけるガラスファイバ径と同一径の部位と、細径部13にかけて径が変化する径変化部の長さの和)は例えば1mm以上5mm以下である。すなわち、ガラスファイバ部7の全体の長さは35mm以下であることが望ましい。なお、定径部11において樹脂被覆部9におけるガラスファイバ径と同一径のストレート部をなくして、樹脂被覆部9の端部から径変化部としてもよい。
【0026】
樹脂被覆部9における光ファイバ心線19の径(ガラスファイバの外周の樹脂被覆外径)は255μm以下であることが望ましく、160μm~170μmであることがより望ましい。また、樹脂被覆部9の樹脂層の厚さは5μm以上であることが望ましい。なお、樹脂被覆部9の樹脂層の厚みが厚くなりすぎると、後述する外径差が大きくなるため、樹脂層の厚みは65μm以下であることが望ましく、40μm以下であることがより望ましい。
【0027】
光ファイバ心線19は、保持部材15の孔に挿通され、接着剤によって保持部材15に固定される。保持部材15は、後端側に配置され、内径が相対的に大きな拡径部23と、先端側に配置され、内径が相対的に小さな縮径部21が形成される。
【0028】
図2(b)に示すように、保持部材15の先端部に形成される縮径部21には、光ファイバ心線19の細径部13が挿通される。細径部13の端部は略最密構造で配列されて接着剤によって保持部材15の縮径部21に固定される。なお、縮径部21の内径は、最密配置された細径部13が挿入可能であり、かつ、最密配置された細径部13を保持可能な程度に、最密配置の外接円と略同一径(例えば外接円の径+1μm以下)とする。このようにすることで、縮径部21において細径部13を精度よく最密配置で配置することができる。
【0029】
図3(a)に示すように、定径部11は保持部材15の拡径部23に配置される。定径部11は、保持部材15の内部において略最密構造で配列されている。なお、定径部11は必ずしも最密配置で互いに接触していなくてもよい。
【0030】
また、拡径部23には、樹脂被覆部9の先端が挿入される。すなわち、保持部材15には、ガラスファイバ部7と樹脂被覆部9の一部が収納される。図3(b)に示すように、樹脂被覆部9は略最密配置で配置される。なお、拡径部23の内径は、最密配置された樹脂被覆部9が挿入可能であり、かつ、最密配置された樹脂被覆部9を保持可能な程度に、最密配置の外接円と略同一径で構成される。
【0031】
次に、バンドル構造5の製造方法について説明する。まず、図4に示すように、所定本数の光ファイバ心線19の被覆を除去する。また、露出したガラスファイバ部7の先端部分をエッチング等によって細径化して、定径部11の端部側に細径部13を形成する。次に、形成された細径部13を集合して仮保持部材27に挿入する。なお、仮保持部材27はガラスファイバ部7を挿入可能な孔が形成される。孔は、挿入側端部から他端側に向けて径が縮径される。
【0032】
図5は、ガラスファイバ部7を仮保持部材27に挿通して、仮保持部材27の端部から突出するガラスファイバ部7の先端を、あらかじめ容器に溜められた接着剤25に浸ける。この際、仮保持部材27の端部からは、細径部13の先端がそれぞれ略同一長さだけ出るように(例えば10mm程度)、光ファイバ心線19が仮保持部材27に挿入される。なお、仮保持部材27は例えば光ファイバ心線19に仮固定される。
【0033】
接着剤25は例えば溶液系の接着剤であり、合成樹脂等の高分子固形分が、水、アルコール、有機溶剤などの溶媒に溶け込んだ液状のものである。このような溶液系接着剤では、溶媒が気化した後に残留する溶質が硬化することで接着される。なお、接着剤25としては、通常使用される溶質濃度よりもさらに希釈されたものが望ましい。このようにすることで、接着剤の粘度を下げ、また、残留する溶質量を抑えることができる。このため、光ファイバ心線同士の隙間の接着層を薄くし、細径部13同士の間隔をより精度よく一定にすることができる。
【0034】
ここで、仮保持部材27の内部では、細径部13は略最密に近い状態で挿入されるが、細径部13の先端が接着剤25に浸けられる前の状態では、一部では互いの間に隙間が形成したり、また他の部位では互いが密着したりするなど、完全な最密配置(一定のコア間隔)とすることは困難である。
【0035】
このように、仮保持部材27へ挿入したのみの状態では、細径部13同士の間には隙間が形成される場合があるが、接着剤25の粘度が低く、表面張力(毛細管現象)によって接着剤25は細径部13同士の隙間に吸い上げられる。この際、互いの表面張力によって細径部13同士が密着される。
【0036】
すなわち、集合した細径部13同士の間に多少不均一な隙間が形成されていても、その隙間には接着剤25が吸い上げられて、細径部13同士が密着される。この際、それぞれのファイバ間に吸引されて存在する接着剤の表面張力が安定化する配置、すなわち、細径部13同士が確実に最密配置となるとともに、この状態で接着剤25を硬化させることで互いを接着することができる。
【0037】
ここで、本発明では、バンドル構造5を構成する光ファイバ心線19の本数は特に限定されないが、19本以上であることが望ましい。すなわち、中心に1本の光ファイバ心線19が配置され、その周囲に第1層として6本の光ファイバ心線19が最密配置され、さらに、その周囲に第2層として12本の光ファイバ心線19が最密配置される。さらに第3層以上に光ファイバ心線19を最密配置してもよい。
【0038】
ここで、樹脂被覆部9を最密に配置したとしても、第1層目の細径部13は、樹脂被覆部9と細径部13との外径差に応じた径方向の距離だけ、中心の細径部13に近づくように移動する必要がある。さらに、第2層目の細径部13は、第1層目の細径部13に対して、その2倍の移動量が必要となる。すなわち、第2層の光ファイバ心線19は、第1層の光ファイバ心線19に対してより大きな変形量が必要となる。
【0039】
ここで、接着剤25による表面張力sは、(P×r/M)で表され、ガラスファイバ部7の撓みからの復元力ωは、8EIσ/Lで表される。但し、P:パラコール、r:接着剤25の液体密度(g/cm)、M:接着剤25の分子量(g/mol)、E:ガラスファイバ部7のヤング率(GPa)、I:細径部13における断面維持モーメント(mm)、σ:細径部13の撓み量(mm)、L:ガラスファイバ部7の長さ(mm)である。この場合、s>ωである必要がある。
【0040】
なお、光ファイバ心線19の撓み量は、前述したように第1層目よりも第2層目が大きく、例えば19心(2層の最密配置)における2層目の光ファイバ心線は、(樹脂被覆部9の外径-細径部13の外径)×2の撓み量が必要となる。このため、上記不等式を満たすように、撓み量が大きくなる分、Lを長くするか細径部13の外径を小さくして、ωを小さくすることが望ましい。
【0041】
一方、細径部13の外径を小さくすると上述した外径差が大きくなるため、上記不等式を満たすように適切な細径部13の外径の設定が必要である。言い換えれば、所定の細径部13の外径に対して上記不等式を満たすように、樹脂被覆部9の外径等を設定する必要がある。
【0042】
なお、細径部13の少なくとも一部をプラズマまたは紫外線で表面改質してもよい。このようにすることで、接着剤25との濡れ性が向上し、接着剤25の吸い上げがスムーズとなり、より確実に上記不等式を満たして均一に細径部13同士を接着することができる。なお、表面改質は、細径部13の全体に行ってもよく、細径部13の先端のみに行ってもよく、又は、細径部13の先端を除く所定の範囲に行ってもよい。
【0043】
また、細径部13を集合させて接着する際に、定径部11も集合させて接着してもよい。定径部11を略最密配置する場合には、例えば19心(2層の最密配置)においても、前述した必要な撓み量が(樹脂被覆部9の外径-定径部11の外径)×2となり、樹脂被覆部9から細径部13を集合させる場合よりも撓み量が小さくなる(なお、この場合にはL=定径部11のテーパ部を除く長さとする)。また、この場合、細径部13においても、必要な撓み量が(定径部11の外径-定径部11の外径)×2となり、樹脂被覆部9から細径部13を集合させる場合よりも撓み量が小さくなる。このようにすることで、中間に定径部11の最密配置を形成することで、光ファイバの撓みによる復元力を分散させて、より確実に細径部13同士を最密配置して固定することができる。
【0044】
次に、仮保持部材27を除去して、細径部13同士が最密状態で互いに接着された状態で、保持部材15に光ファイバ心線19を挿入して、保持部材15と細径部13とを接着する。また、前述したように、樹脂被覆部9の一部が保持部材15に挿入されるため、樹脂被覆部9と保持部材15を接着剤によって接着する。なお、仮保持部材27を用いずに、直接保持部材15を用いて細径部13を集合させて接着してもよい。
【0045】
最後に、保持部材15より突出する光ファイバ心線19および保持部材15の一部を研磨することで、バンドル構造5が形成される。なお、バンドル構造の端面を研磨によって均一な面を得るのではなく、例えばダイシングソー等による切断により均一な面を得ても良い。
【0046】
得られたバンドル構造5の先端部(細径部13端面)にマルチコアファイバ3が融着によって光接続される。この際、キャピラリ17と保持部材15も接続される。また、バンドル構造5の他端(樹脂被覆部9側の端部)には、通常のシングルモード光ファイバが接続される。
【0047】
このようにして得られる光ファイバ接続構造としては、バンドル構造5の挿入損失と、マルチコアファイバ3とバンドル構造5との接続損失と、バンドル構造とシングルモード光ファイバとの接続損失の合計が3.0dB以下であることが望ましく、さらに0.5dB以下であることが望ましい。
【0048】
なお、前述の通り、バンドル構造5とマルチコアファイバ3を融着によって接続する場合には、接着剤として、耐熱性接着剤を用いればよい。また、ガラスパウダを溶媒に混ぜて、上述の方法で毛細管現象によりファイバ心線同士を密着させた後、溶媒を揮発させて、ガラスパウダのみを残してもよい。また、接着剤として、水ガラス(液体ガラス/ゾル・ゲルガラス)を用いてもよい。
【0049】
以上、本実施の形態によれば、特に19心以上(中心を除く2層以上)の最密配置のバンドル構造に対しても、確実に細径部13を最密配置して接着固定することができる。また、保持部材15の後端部においては、樹脂被覆部9の一部が挿入されるため、保持部材15の後縁部とガラスファイバとが直接接触することがなく、ガラスファイバの破損を抑制することができる。
【0050】
なお、保持部材の形態としては、図1に示す例には限られない。例えば、図6(a)に示すように、保持部材15aを用いた光ファイバ接続構造1aとしてもよい。保持部材15aは、保持部材15と略同様の構造であるが、拡径部23と縮径部21との間にテーパ形状が形成される。拡径部23から縮径部21へ向けて徐々に径が小さくなるようなテーパ形状とすることで、バンドル構造5の挿入性が良好となる。
【0051】
また、図6(b)に示すように、保持部材15bを用いた光ファイバ接続構造1bとしてもよい。保持部材15bは、保持部材15と略同様の構造であるが、拡径部23が2段階の径を有し、樹脂被覆部9が挿入される第1拡径部と、第1拡径部とテーパ部を介して接続され、第1拡径部よりも径が小さな第2拡径部とからなる。第1拡径部では樹脂被覆部9が保持され、第2拡径部では定径部11が保持される。例えば、第2拡径部によって、定径部11を略最密配置で配列して固定することが容易となり、細径部13をより確実に最密配置で固定することができる。さらに、拡径部23の後端側に、挿入性を高めるためのテーパ形状を形成してもよい。
【実施例0052】
バンドル構造を作成してその際の損失を評価した。マルチコアファイバとしては19心のコアピッチが40μmのものを用いた。バンドル構造に用いる光ファイバ心線としては、所定長さの樹脂被覆を取り除き、先端部の所定長さをフッ酸によるエッチングで外径40μmの細径部を形成した。得られた光ファイバ心線のコアピッチ(外径)としては、最密配置した際の細径部のコアピッチ(外径)を40μm、定径部のコアピッチ(外径)を80μm、樹脂被覆部のコアピッチ(外径)を165μmとした。また、細径部の長さは10mmと20mmの物を用意した。
【0053】
保持部材としては、図6(a)と同様の内部形態とし、縮径部は、内径が約200μm(40μm×5本の細径部を挿入可能な内径)で長さが8mmとし、拡径部の内径は約825μm(165μm×5本の樹脂被覆部を挿入可能な内径)とした。なお、保持部材の最小肉厚は0.1mmである。
【0054】
上述したバンドル構造は、特性劣化なく部材破損もなく作成することができた。なお、光ファイババンドルの挿入損失測定は以下のように行った。バンドル構造の各ファイバのシングルモード光ファイバに光を入射し、バンドル構造を介して他端のシングルモード光ファイバで受光してパワーメータで測定した(P1)。さらに、バンドル構造部分を切除して同様に測定して(P0)、その差(P0-P1)を光ファイババンドルの有無での受光パワーの差を光ファイババンドルの挿入損失とした。この測定を19心のファイバすべてで行った。
【0055】
また、上記測定により挿入損失が既知の光ファイババンドル構造とマルチコアファイバのコア位置を合わせた状態で接着固定して接続し、片端の光ファイババンドルのシングルモード光ファイバ側から光を入射し、マルチコアファイバ側での出力をパワーメータで測定した(P2)。この際、前述した光ファイババンドルの挿入損失からの増加分(P1-P2)をマルチコアファイバと光ファイババンドル構造の接続損失とした。
【0056】
また、上記測定により挿入損失が既知の光ファイババンドルの被覆樹脂側のファイバと通常の125μm外径のシングルモード光ファイバとの融着接続を行い、同様にシングルモードファイバ側から光を入射し、マルチコアファイバ側での出力をパワーメータで測定した(P3)。この際、損失増加分(P2-P3)を光ファイバンドルとシングルモード光ファイバとの融着損失した。
【0057】
上記方法で測定したところ、光ファイババンドルの挿入損失測定は最大1.5dBであり、マルチコアファイバと光ファイババンドル構造の接続損失は、最大1.2dBであり、光ファイバンドルとシングルモード光ファイバとの融着損失は、0.3dBであった。結果について、細径部10mm、20mmともに同等の結果であった。なお、マルチコアファイバのコアピッチと細径ファイバの外径を合わせるため外径精度を向上させるなどにより、合計の損失を0.5dBを達成することも可能である。
【0058】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0059】
1、1a、1b………光ファイバ接続構造
3………マルチコアファイバ
5………バンドル構造
7………ガラスファイバ部
9………樹脂被覆部
11………定径部
13………細径部
15、15a、15b………保持部材
17………キャピラリ
19………光ファイバ心線
21………縮径部
23………拡径部
25………接着剤
27………仮保持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6