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特開2023-132884分割スパッタリングターゲット及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023132884
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】分割スパッタリングターゲット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
C23C14/34 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038454
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】梶山 純
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029DC03
4K029DC05
4K029DC13
4K029DC15
4K029DC24
(57)【要約】
【課題】筒状の分割スパッタリングターゲットにおいて、隣接するスパッタリングターゲット部材同士の間隙にバッキングチューブ及びボンディング材が露出するのを防止する新規で実用的な手段を提供する。
【解決手段】筒状のバッキングチューブと、前記筒状のバッキングチューブの外周面を周回被覆するようにして、前記筒状のバッキングチューブの中心軸方向に間隙をおいて直列に配列された、複数の筒状のスパッタリングターゲット部材と、前記間隙に位置する前記筒状のバッキングチューブの外周面の部分を周回被覆するように、前記外周面に直接接着して配置された熱硬化性樹脂で構成されたマスク材であって、JIS Z2244:2009に規定されるビッカース硬さ試験により測定したときのビッカース硬さ(Hv)が10~50であるマスク材と、前記間隙に前記マスク材が露出することを条件に、前記筒状のバッキングチューブと前記複数の筒状のスパッタリングターゲット部材の間に配置されたボンディング材と、を備えた分割スパッタリングターゲット。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のバッキングチューブと、
前記筒状のバッキングチューブの外周面を周回被覆するようにして、前記筒状のバッキングチューブの中心軸方向に間隙をおいて直列に配列された、複数の筒状のスパッタリングターゲット部材と、
前記間隙に位置する前記筒状のバッキングチューブの外周面の部分を周回被覆するように、前記外周面に直接接着して配置された熱硬化性樹脂で構成されたマスク材であって、JIS Z2244:2009に規定されるビッカース硬さ試験により測定したときのビッカース硬さ(Hv)が10~50であるマスク材と、
前記間隙に前記マスク材が露出することを条件に、前記筒状のバッキングチューブと前記複数の筒状のスパッタリングターゲット部材の間に配置されたボンディング材と、
を備えた分割スパッタリングターゲット。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、及び尿素樹脂から選択される1種又は2種以上の熱硬化性樹脂を含有する請求項1に記載の分割スパッタリングターゲット。
【請求項3】
前記マスク材の厚みを前記中心軸周りで1周分測定したときの前記マスク材の厚みの最大値と最小値の差が0.20mm以下であり、前記マスク材の厚みの最小値が0.10mm以上、最大値が0.50mm以下である請求項1又は2に記載の分割スパッタリングターゲット。
【請求項4】
前記間隙に配置された前記マスク材の前記中心軸方向の幅は、隣接するスパッタリングターゲット部材同士の間隙の前記中心軸方向の幅よりも大きい請求項1~3の何れか一項に記載の分割スパッタリングターゲット。
【請求項5】
前記間隙に配置された前記マスク材の前記中心軸方向の幅は、1mm~15mmである請求項1~4の何れか一項に記載の分割スパッタリングターゲット。
【請求項6】
前記マスク材の外周面は、各スパッタリングターゲット部材の内周面よりも内周側に位置する請求項1~5の何れか一項に記載の分割スパッタリングターゲット。
【請求項7】
前記マスク材の平均厚みは、前記筒状のバッキングチューブと各スパッタリングターゲット部材の間のクリアランスの半分以下である請求項6に記載の分割スパッタリングターゲット。
【請求項8】
前記筒状のバッキングチューブと前記複数の筒状のスパッタリングターゲット部材の間のクリアランスが0.5mm~1.5mmである請求項1~7の何れか一項に記載の分割スパッタリングターゲット。
【請求項9】
超音波探傷試験により測定される各スパッタリングターゲット部材の接着率が95%以上である請求項1~8の何れか一項に記載の分割スパッタリングターゲット。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の分割スパッタリングターゲットをスパッタすることを含む成膜方法。
【請求項11】
前記筒状のバッキングチューブの外周面を周回被覆するようにして、熱硬化性樹脂を前記外周面に塗布する工程Aと、
塗布された熱硬化性樹脂を硬化することにより、マスク材を形成する工程Bと、
を含む請求項1~9の何れか一項に記載の分割スパッタリングターゲットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は筒状のバッキングチューブ上に複数のスパッタリングターゲット部材、とりわけ酸化物半導体スパッタリングターゲット部材が接合された分割スパッタリングターゲットに関する。また、本発明は分割スパッタリングターゲットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリング法は、液晶ディスプレイ及び有機ELディスプレイ等の表示装置を含む各種電子機器の薄膜を製造するための成膜法として多用されている。近年では、表示装置の大型化に伴い、スパッタリング法で使用するスパッタリングターゲットの大型化が要求されるようになっている。
【0003】
表示装置用のスパッタリングターゲットとしては、酸化物半導体スパッタリングターゲット部材が多用されている。しかしながら、酸化物半導体スパッタリングターゲット部材はセラミックス製であることから脆く、大面積化が難しい。このため、平板状のバッキングプレート又は筒状のバッキングチューブ上に複数のスパッタリングターゲット部材が接合された分割スパッタリングターゲットを使用することが従来行われてきた。
【0004】
分割スパッタリングターゲットを使用する場合、バッキングプレート(又はバッキングチューブ)を構成する材料(典型的には銅、チタン)とスパッタリングターゲット部材との熱膨張差を考慮して、隣接するスパッタリングターゲット部材の間には若干の間隙が設けられるのが通常である。しかしながら、隣接するスパッタリングターゲット部材の間に間隙があると、スパッタ時にバッキングプレート(又はバッキングチューブ)及びボンディング材(「接合材」ともいう。)に起因するターゲット材以外の成分がスパッタ膜中に混入し、スパッタ膜の特性に悪影響を与える危険性がある。そのため、分割スパッタリングターゲットにおいては、隣接するスパッタリングターゲット部材同士の間隙にマスク材(「遮蔽部材」、「保護体」とも言う。)を配置することでバッキングプレート(又はバッキングチューブ)及びボンディング材の露出を防止する方法が提案されている。
【0005】
国際公開第2012/063524号(特許文献1)では、バッキングプレート上に、複数のターゲット部材を低融点ハンダにより接合して形成される分割スパッタリングターゲットにおいて、接合されたターゲット部材間に形成される間隙に沿って、バッキングプレートに保護体を設けたことを特徴とする分割スパッタリングターゲットが提案されている。保護体としては、Zn、Ti、Snいずれかの金属箔、またはZn、Ti、Snのいずれか一種以上を80質量%以上含む合金箔、もしくはセラミックシート、或いは高分子シートが記載されている。そして、保護体は低融点ハンダや導電性両面テープなどを用いて貼付することができると記載されている。
【0006】
国際公開第2020/250586号(特許文献2)では、バッキングチューブの外周面に沿うように並設され、円弧状の断面を有する複数のターゲット部材を備えた長い円筒状のスパッタリングターゲットが提案されている。当該スパッタリングターゲットにおいて、ターゲット部材間に形成される間隙は、バッキングチューブの中心軸方向に延在する。また、バッキングチューブとターゲット部材の間には接合材が設けられており、更に、接合材とターゲット部材の間には遮蔽部材が設けられている。遮蔽部材としては、粘着性を有する粘着シート及びプラズマ耐性を有する樹脂シートが接合材の側から順に貼付された積層体、並びに、粘着シート、金属シート、及び酸化物層が接合材の側から順に並ぶ積層体が開示されている。
【0007】
国際公開第2020/250587号(特許文献3)には、外周面に複数の凹部が形成され、複数の凹部のそれぞれが中心軸方向に延在し、複数の凹部のそれぞれが中心軸周りに並設されたバッキングチューブと、バッキングチューブの外周面に、バッキングチューブの中心軸方向に離れるようにして並設されている複数の円筒状ターゲット部材と、ターゲット部材間に形成される間隙であって、バッキングチューブの中心軸周りを周回し、当該間隙は複数の凹部のそれぞれと交差する間隙とを備えた長い円筒状のスパッタリングターゲットが提案されている。当該スパッタリングターゲットにおいて、バッキングチューブとターゲット部材の間には接合材が設けられており、更に、複数の凹部のそれぞれを跨ぐように接合材とターゲット部材との間には遮蔽部材が設けられており、間隙を接合材の側から遮蔽する。遮蔽部材としては、シリコーン系樹脂、フッ素系樹脂等の耐熱性、プラズマ耐性に優れた材料で形成されたOリングが開示されている。
【0008】
国際公開第2020/250588号(特許文献4)では、バッキングチューブと、バッキングチューブの外周面に、バッキングチューブの中心軸方向に離れるようにして並設されている複数の円筒状ターゲット部材と、上記中心軸方向に複数のターゲット部材が並ぶことよって隣り合うターゲット部材間に形成される間隙とを備えた長い円筒状のスパッタリングターゲットが提案されている。円筒状ターゲット部材のバッキングチューブの側には、間隙に連通する凹部が形成されており、当該凹部はバッキングチューブの中心軸の周りを周回する。当該スパッタリングターゲットにおいて、バッキングチューブとターゲット部材の間には接合材が設けられており、更に、接合材とターゲット部材との間には遮蔽部材が上記凹部に収容されるようにして配置されており、間隙を接合材の側から遮蔽する。遮蔽部材としては、粘着性を有する粘着シート及びプラズマ耐性を有する樹脂シートが接合材の側から順に貼付された積層体、並びに、粘着シート、金属シート、及び酸化物層が接合材の側から順に並ぶ積層体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2012/063524号
【特許文献2】国際公開第2020/250586号
【特許文献3】国際公開第2020/250587号
【特許文献4】国際公開第2020/250588号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように、分割スパッタリングターゲットにおいて、隣接するスパッタリングターゲット部材同士の間隙にマスク材を配置することでバッキングプレート(又はバッキングチューブ)の露出を防止する技術が提案されている。しかしながら、筒状のバッキングチューブを使用する場合はその形状が障害となり、平板状のバッキングプレートと同じ対策をそのまま適用することは困難である。また、上記文献には、筒状のバッキングチューブを使用することを想定した技術も記載されているが、そのマスク材の成型性や強度、マスク材のバッキングチューブとの密着性、バッキングチューブやターゲットの凹凸加工等による製造コストやリードタイム増加等の観点から、バッキングチューブの露出防止手段に関して最適な手法であるとは言い難い。従って、従来技術とは異なる実用的な手法によって、分割スパッタリングターゲットにおける筒状のバッキングチューブの露出を防止することができれば有利であろう。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みて創作されたものであり、一実施形態において、筒状のバッキングチューブ上に複数の筒状のスパッタリングターゲット部材が接合された分割スパッタリングターゲットにおいて、隣接するスパッタリングターゲット部材同士の間隙にバッキングチューブ及びボンディング材が露出するのを防止する新規で実用的な手段を提供することを課題とする。また、本発明は別の一実施形態において、そのような分割スパッタリングターゲットの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討したところ、所定の硬さに硬化可能な熱硬化性樹脂を使用することで、筒状のバッキングチューブの側面形状に追随して密着し、常温のみならずターゲットのボンディング工程における高温下においても破損・剥離しにくいマスク材を形成可能であることを見出した。本発明は上記知見に基づき完成したものであり、以下に例示される。
【0013】
[1]
筒状のバッキングチューブと、
前記筒状のバッキングチューブの外周面を周回被覆するようにして、前記筒状のバッキングチューブの中心軸方向に間隙をおいて直列に配列された、複数の筒状のスパッタリングターゲット部材と、
前記間隙に位置する前記筒状のバッキングチューブの外周面の部分を周回被覆するように、前記外周面に直接接着して配置された熱硬化性樹脂で構成されたマスク材であって、JIS Z2244:2009に規定されるビッカース硬さ試験により測定したときのビッカース硬さ(Hv)が10~50であるマスク材と、
前記間隙に前記マスク材が露出することを条件に、前記筒状のバッキングチューブと前記複数の筒状のスパッタリングターゲット部材の間に配置されたボンディング材と、
を備えた分割スパッタリングターゲット。
[2]
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、及び尿素樹脂から選択される1種又は2種以上の熱硬化性樹脂を含有する[1]に記載の分割スパッタリングターゲット。
[3]
前記マスク材の厚みを前記中心軸周りで1周分測定したときの前記マスク材の厚みの最大値と最小値の差が0.20mm以下であり、前記マスク材の厚みの最小値が0.10mm以上、最大値が0.50mm以下である[1]又は[2]に記載の分割スパッタリングターゲット。
[4]
前記間隙に配置された前記マスク材の前記中心軸方向の幅は、隣接するスパッタリングターゲット部材同士の間隙の前記中心軸方向の幅よりも大きい[1]~[3]の何れか一項に記載の分割スパッタリングターゲット。
[5]
前記間隙に配置された前記マスク材の前記中心軸方向の幅は、1mm~15mmである[1]~[4]の何れか一項に記載の分割スパッタリングターゲット。
[6]
前記マスク材の外周面は、各スパッタリングターゲット部材の内周面よりも内周側に位置する[1]~[5]の何れか一項に記載の分割スパッタリングターゲット。
[7]
前記マスク材の平均厚みは、前記筒状のバッキングチューブと各スパッタリングターゲット部材の間のクリアランスの半分以下である[6]に記載の分割スパッタリングターゲット。
[8]
前記筒状のバッキングチューブと前記複数の筒状のスパッタリングターゲット部材の間のクリアランスが0.5mm~1.5mmである[1]~[7]の何れか一項に記載の分割スパッタリングターゲット。
[9]
超音波探傷試験により測定される各スパッタリングターゲット部材の接着率が95%以上である[1]~[8]の何れか一項に記載の分割スパッタリングターゲット。
[10]
[1]~[9]の何れか一項に記載の分割スパッタリングターゲットをスパッタすることを含む成膜方法。
[11]
前記筒状のバッキングチューブの外周面を周回被覆するようにして、熱硬化性樹脂を前記外周面に塗布する工程Aと、
塗布された熱硬化性樹脂を硬化することにより、マスク材を形成する工程Bと、
を含む[1]~[9]の何れか一項に記載の分割スパッタリングターゲットの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態に係る筒状の分割スパッタリングターゲットにおいては、マスク材が筒状のバッキングチューブの側面形状に追随して密着し、常温のみならず、ターゲットのボンディング工程における高温下においても破損・剥離しにくい。従って、当該分割スパッタリングターゲットにおいてはマスク材の信頼性が高く、バッキングチューブの露出防止効果が高い。このため、スパッタ時にスパッタ膜中へバッキングチューブの構成成分が混入するのを効果的に防止できる。従って、本発明の一実施形態によれば、スパッタ膜の大面積化に貢献する分割スパッタリングターゲットを提供することができる。当該分割スパッタリングターゲットは、例えば、大型液晶ディスプレイ及び大型有機ELディスプレイ等の大型表示装置の工業生産に大きく貢献できると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る分割スパッタリングターゲットの模式的な斜視図である。
図2図1に示す分割スパッタリングターゲットの模式的なA-A’線断面図である。
図3図1に示す分割スパッタリングターゲットの分割部の中心軸Oの方向に平行な断面の部分構造を表す模式図である。
図4】デジタルデプスゲージによりマスク材の厚みを測定する方法を説明するための模式図である。
図5】本発明の一実施形態に係る分割スパッタリングターゲットの製造方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<A.分割スパッタリングターゲット>
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳述する。図1には、本発明の一実施形態に係る分割スパッタリングターゲット100の模式的な斜視図が示されている。図2には、図1に示す分割スパッタリングターゲット100の模式的なA-A’線断面図が示されている。図3には、図1に示す分割スパッタリングターゲット100の分割部の中心軸Oの方向に平行な断面の部分構造が模式的に示されている。
【0017】
分割スパッタリングターゲット100は、
筒状のバッキングチューブ120と、
筒状のバッキングチューブ120の外周面122を周回被覆するようにして、筒状のバッキングチューブ120の中心軸Oの方向(中心軸Oの延びる方向と同義)に間隙130をおいて直列に配列された、複数の筒状のスパッタリングターゲット部材140と、
間隙130に位置する筒状のバッキングチューブ120の外周面122の部分を周回被覆するように、外周面122に直接接着して配置された熱硬化性樹脂で構成されたマスク材160と、
間隙130にマスク材160が露出することを条件に、筒状のバッキングチューブ120と複数の筒状のスパッタリングターゲット部材140の間に配置されたボンディング材180と、
を備える。
【0018】
(1.筒状のバッキングチューブ120)
筒状のバッキングチューブ120は、筒状のスパッタリングターゲット部材140と接合することで分割スパッタリングターゲット100の構造強度を高める機能を果たす。バッキングチューブを使用することはスパッタリングターゲット部材がセラミックス等の脆い物質で形成されているときに特に有利である。バッキングチューブを形成する材質としては、強度の観点から、金属であることが好ましく、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金、ステンレス、銅及び銅合金、チタン及びチタン合金、タングステン、モリブデン等が挙げられる。その中でも特に、銅の様に導電性が高い金属からなるバッキングチューブを使用する場合、ターゲット部材の間隙でバッキングチューブが露出することによるスパッタリング時の異常が顕著となるため、マスク材を利用したボンディング方法が効果的である。
【0019】
バッキングチューブの形状は筒状である限り特段の制約はないが、取り扱い性や製造容易性の観点から、ターゲット形状に倣って円筒状であるのが一般的である。バッキングチューブの中心軸Oの方向の長さLは、要求仕様に従えば良く、複数の分割スパッタリングターゲットのすべてを支持可能な長さに設定すればよい。
【0020】
図1を参照すると、例示的には、バッキングチューブ120の中心軸Oの方向の長さLは、支持するスパッタリングターゲット部材140の全長、製品の仕様を考慮して適宜設定すればよく、特に制限はないが、500~4000mmとすることができ、典型的には1000~3500mmとすることができる。図3を参照すると、バッキングチューブ120の肉厚Tは、要求される分割スパッタリングターゲットの構造強度や重量・寸法に応じて適宜設定すればよく、特に制限はないが、例えば3~5mmとすることができ、典型的には3.5~4.5mmとすることができる。図2を参照すると、バッキングチューブ120の外径Dは、支持するスパッタリングターゲット部材140の内径を考慮して適宜設定すればよく、特に制限はないが、例えば50~140mmとすることができ、典型的には130~135mmとすることができる。
【0021】
(2.スパッタリングターゲット部材140)
図1を参照すると、複数の筒状のスパッタリングターゲット部材140はバッキングチューブ120の中心軸Oの方向に間隙130をおいて直列に配列される。筒状のスパッタリングターゲット部材140の配列数には特に制限はなく、要求寸法及び生産効率を考慮して必要な数を配列すればよいが、例えば、一本のバッキングチューブ120には、2~12個、典型的には2~5個の筒状のスパッタリングターゲット部材140を直列に配列することができる。
【0022】
筒状のスパッタリングターゲット部材の材質としては、特に制限はないが、シリコン(Si)及びゲルマニウム(Ge)等の半導体材料、Al23、PZT(Pb(Zr,Ti)O3)、HfO2、La23、MgO、ITO、IZO、ZTO、ITZO及びIGZO等の酸化物系セラミックス、チタン、インジウム、バナジウム、ジルコニウム、モリブデン及びタングステン等の金属材料、ホウ化物(例:TiB2、CrB2、WB)、炭化物(例:WC、TiW、SiC)、窒化物(例:TiN、AlN)、珪化物(例:TiSi2、CrSi2)等の非酸化物系セラミックスが挙げられる。これらは単独で各スパッタリングターゲット部材を形成してもよいし、二種以上を混合して各スパッタリングターゲット部材を形成してもよい。また、透明導電膜用ターゲットと比較して、酸化物半導体ターゲットは、導電性のバッキングチューブが隣接するスパッタリングターゲット部材同士の間隙で露出し、スパッタ膜中にバッキングチューブを構成する材料成分が混入することによりスパッタ膜の特性が不均一化しやすい。このため、各スパッタリングターゲット部材の材質として、特にITZO及びIGZO等の酸化物半導体を利用することは、マスク材によってバッキングチューブを保護する意義が大きい。なお、各スパッタリングターゲット部材はこれら以外の成分を含有してもよい。
【0023】
図1を参照すると、複数の筒状のスパッタリングターゲット部材140はそれぞれ、バッキングチューブ120の外周面122を周回被覆している。一実施形態において、複数の筒状のスパッタリングターゲット部材140はそれぞれ、バッキングチューブ120と同軸の筒状、典型的には円筒状である。バッキングチューブ120の外周面122と、それぞれの筒状のスパッタリングターゲット部材140の内周面142の間には、ボンディング材180を充填するための所定のクリアランスCが設けられるように、それぞれの筒状のスパッタリングターゲット部材140の内径が定められる。
【0024】
図3を参照すると、バッキングチューブ上にマスク材を配置した上で、ボンディング時に上記クリアランスC内に溶融したボンディング材を充填するのに十分な間隙が必要であるため、クリアランスCの下限は、0.5mm以上であることが好ましく、0.8mm以上であることがより好ましい。クリアランスCの上限は、ターゲットの熱伝達性能とスパッタ時の冷却水による冷却効率の観点から、1.5mm以下であることが好ましく、1.2mm以下であることがより好ましい。
【0025】
隣接する筒状のスパッタリングターゲット部材140同士の間隙130は、狭いほうがノジュールやアーキングといったスパッタ不良の低減、膜特性の均質化の観点で好ましい。このことから、隣接するスパッタリングターゲット部材140同士の間隙130の中心軸Oの方向の幅Xは、何れの場所においても0.50mm以下であることが好ましく、0.45mm以下であることがより好ましく、0.40mm以下であることが更により好ましい。但し、隣接するスパッタリングターゲット部材140同士の間隙130は、狭すぎると、ボンディング工程の実施後に、間隙において固化したIn等のボンディング材を除去する作業の際に、スパッタリングターゲット部材にチッピングを生じさせるリスクが増加すること、及び、スパッタリング時にスパッタリングターゲット部材が熱膨張する際に、隣り合うスパッタリングターゲット部材が接触し、スパッタリングターゲット部材が割れるリスクがあることから、何れの場所においても0.15mm以上であることが好ましく、0.20mm以上であることが更により好ましい。
【0026】
複数の筒状のスパッタリングターゲット部材140の形状、寸法及び材質はそれぞれ異なっていてもよく、一部が同じでもよく、すべてが同じでもよい。しかしながら、ノジュールやアーキングといったスパッタ不良の低減、膜特性の均質化、熱膨張特性を均一にすることによるスパッタリング中の割れ低減の理由により、複数の筒状のスパッタリングターゲット部材の形状、寸法及び材質はすべて同じであることが好ましい。
【0027】
図1を参照すると、筒状のスパッタリングターゲット部材140のそれぞれの中心軸Oの方向の長さMは、ターゲットの製造工程、材料強度、及び顧客の要求規格を考慮して適宜設定すればよく、特に制限はないが、例えば200~1400mmとすることができ、典型的には300~1200mmとすることができる。図3を参照すると、筒状のスパッタリングターゲット部材140のそれぞれの肉厚Sは、製品寿命、材料強度、及び顧客の要求規格を考慮して適宜設定すればよく、特に制限はないが、例えば5~15mmとすることができ、典型的には6~12mmとすることができる。図2を参照すると、筒状のスパッタリングターゲット部材140のそれぞれの外径Eは、材料強度や顧客の要求規格を考慮して適宜設定すればよく、特に制限はないが、例えば145~165mmとすることができ、典型的には147~159mmとすることができる。
【0028】
(3.マスク材160)
マスク材160は、隣接する筒状のスパッタリングターゲット部材140同士の間隙130に位置するバッキングチューブ120の外周面122の部分を周回被覆するように、外周面122に直接接着して配置される。図3を参照すると、間隙130に配置されたマスク材160の中心軸Oの方向の幅Wは、間隙130の中心軸Oの方向の幅Xと同じであるか、又は、それよりも大きいことが好ましく、後者の態様がより好ましい。図3を参照すると、隣り合うスパッタリングターゲット部材140の向かい合う各端縁よりもスパッタリングターゲット部材140の内側にマスク材160が入り込んでいる状態が好ましい。当該構成により、バッキングチューブ120がマスク材160によって隠蔽される領域が前記間隔130よりも広がるので、バッキングチューブ120がスパッタされる可能性を一層小さくすることができる。また、当該構成により、マスク材160又はスパッタリングターゲット部材140の設置位置に多少の誤差が生じたとしても間隙130に位置するバッキングチューブ120の外周面122が露出するのを容易に防止することが可能となる。
【0029】
マスク材は硬化後の熱硬化性樹脂で構成されている。硬化前のゲル状の熱硬化性樹脂は、筒状のバッキングチューブの側面形状に容易に追随して密着することができる。更に、熱硬化性樹脂は硬化することでボンディング工程及びボンディング材の掻き取りに耐えられる硬さを得ることができる。これにより、マスク材は破損・剥離しにくい。なお、本明細書において、熱硬化性樹脂には常温硬化性のあるものも含まれる。
【0030】
後述する工程Fにおいてマスク材が破損するのを抑制するという観点、及びマスク材の厚みの均一性向上という観点から、マスク材のビッカース硬さ(Hv)の下限は10以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、20以上であることが更により好ましい。また、ターゲットの加熱時・冷却時の熱膨張・熱収縮時における熱応力の緩和と吸収の観点から、マスク材は硬すぎないことが好ましく、そのビッカース硬さ(Hv)の上限は50以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましく、30以下であることが更により好ましい。本明細書において、マスク材のビッカース硬さは、JIS Z2244:2009に規定される、ビッカース硬さ試験により測定される。測定対象となる各マスク材のビッカース硬さを、試験力を1kgf、保持時間15秒として3箇所以上測定し、得られた値の平均値を当該マスク材のビッカース硬さとする。
【0031】
熱硬化性樹脂の好適な具体例としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、及び尿素樹脂等が挙げられ、マスク材160はこれらから選択される1種又は2種以上の熱硬化性樹脂を含有することが好ましく、二液混合タイプのエポキシ樹脂がより好ましい。なお、二液混合タイプの樹脂は二液を混合した状態で1種の樹脂として捉える。ビッカース硬さは、熱硬化性樹脂が硬化することにより顕著に上昇するところ、例えば、樹脂の種類(骨格、官能基)の他、硬化剤の種類や量、架橋密度等を調整することで高めることができる。
【0032】
一実施形態において、各間隙に配置されている各マスク材の厚みYを中心軸Oの周りで1周分測定したときのマスク材の厚みYの最大値と最小値の差を0.20mm以下とすることができ、好ましくは0.15mm以下とすることができ、より好ましくは0.10mm以下とすることができ、例えば0.05~0.15mmとすることができる。
【0033】
一実施形態において、各間隙に配置されている各マスク材の厚みYを中心軸Oの周りで1周分測定したときのマスク材の厚みYの最小値は、硬化したマスク材の強度を確保することを目的として0.10mm以上であることが好ましく、0.15mm以上であることがより好ましく、0.20mm以上であることが更により好ましい。また、各間隙に配置されている各マスク材の厚みYを中心軸Oの周りで1周分測定したときのマスク材の厚みYの最大値は、上述したクリアランスCに溶融したボンディング材を充填する際の、ボンディング材の流動性向上と、それにより金属酸化物が除去され易くなることによるボンディング後の接着性の向上を目的として、0.50mm以下であることが好ましく、0.45mm以下であることがより好ましく、0.40mm以下であることが更により好ましい。
【0034】
各間隙に配置されている各マスク材の厚みYを中心軸Oの周りで1周分測定する方法としては、デジタルデプスゲージによりマスク材とバッキングチューブとの段差を、周方向に45°間隔で合計8点測定する方法が採用される。図4に、デジタルデプスゲージ400によってマスク材160の厚みを測定する様子を模式的に示す。デジタルデプスゲージ400は、ベース420と、ベース420の底面422に対して垂直下方に延びる測定子440と、表示部460とを有する。マスク材160の外周面162の最も高い地点にベース420の底面422を接触させ、バッキングチューブ120の外周面122に測定子440を接触させる。この際、測定子440の延びる方向は、測定子440の先端が接触している外周面122の地点Pにおける法線方向に一致するようにデジタルデプスゲージ400を配置する。表示部460には測定箇所におけるマスク材160とバッキングチューブ120の外周面122との段差、すなわちマスク材160の厚みYが表示される。
【0035】
図3を参照すると、マスク材160の外周面162は、各スパッタリングターゲット部材140の内周面142よりも内周側に位置し、マスク材160の外周面162と各スパッタリングターゲット部材140の内周面142の間にはボンディング材180が介在することが好ましい。これにより、スパッタリングターゲット部材にマスク材が直接接触することがなくなり、スパッタリングターゲット部材の内周面全体にボンディング材を直接接触させることが可能となるので、絶縁性のマスク材を使用した場合等、マスク材の熱伝導性が低い時に、バッキングプレートからのスパッタリングターゲット部材への熱伝導性が向上する。また、マスク材が各スパッタリングターゲット部材の内周面よりも内周側に位置することでスパッタ時にプラズマが届きにくくなり、マスク材がスパッタされにくくなるという効果も得られる。
【0036】
上記効果をより良く発揮するため、マスク材160の平均厚みは、筒状のバッキングチューブ120と各スパッタリングターゲット部材140の間のクリアランスCの半分以下であることがより好ましい(図3参照)。マスク材160の平均厚みは、デジタルデプスゲージ400によってマスク材160の厚みを中心軸Oの周りで1周分(周方向に45°間隔で合計8点)測定したときの平均値とする。
【0037】
複数のスパッタリングターゲット部材をバッキングチューブに接合するボンディング工程において、スパッタリングターゲット部材同士の間隙がボンディング後の常温環境にて0.15~0.50mm程度となるようボンディング工程が実施されるが、スパッタリングターゲット部材の長手方向(中心軸Oの方向)における、各スパッタリングターゲット部材の間隙の中心位置は、バッキングチューブに塗布されたマスク材の中心位置から、0.01~1mm程度ずれる可能性がある。この位置ずれを加味し、ボンディング後のスパッタリングターゲット部材同士の間隙にバッキングチューブ表面が露出しないためには、マスク材の幅をある程度大きく取ることが望ましい。
【0038】
よって、間隙130に配置されたマスク材160の中心軸Oの方向の幅Wは、1mm以上であることが好ましく、3mm以上であることがより好ましく、5mm以上であることが更により好ましい。一方で、幅Wが大きすぎると、マスク材160が配置された箇所における熱伝達特性が悪化し、ターゲット使用時の当該箇所の局所的な温度上昇やスパッタリング性能の低下等が懸念される。このため、幅Wは、15mm以下であることが好ましく、12mm以下であることがより好ましく、10mm以下であることが更により好ましい。よって、幅Wは例えば1mm~15mmとすることが好ましく、5mm~10mmとすることがより好ましい。
【0039】
(4.ボンディング材180)
ボンディング材180は、隣り合うスパッタリングターゲット部材140の間の間隙130にマスク材160が露出することを条件に、バッキングチューブ120と複数の筒状のスパッタリングターゲット部材140の間に配置される。ボンディング材180がバッキングチューブ120と各スパッタリングターゲット部材140の間に配置されることで、バッキングチューブ120と各スパッタリングターゲット部材140の間のクリアランスCに充填されて両者を接合する役割を果たす。
【0040】
隣り合うスパッタリングターゲット部材140の間の間隙130にマスク材160を露出させるため、隣り合うスパッタリングターゲット部材140の間の間隙130にはボンディング材180は存在しないことが好ましい。隣り合うスパッタリングターゲット部材140の間の間隙にボンディング材180が存在すると、スパッタリングターゲット部材140とボンディング材180の間で電位差が発生し、スパッタ中のアーキング等異常発生の原因となる他、スパッタ時にボンディング材180がスパッタリングされて、ボンディング材180を構成する材料がスパッタ膜中に混入するおそれがあるからである。
【0041】
ボンディング材180の材質は、バッキングチューブ120と各スパッタリングターゲット部材140の材質を考慮して適宜選定すればよいが、例えば、In、In-Sn合金(例:Sn60~90at%)、Sn-Ag合金(例:Ag3~20at%)、Pb-Sn合金(例:Sn50~95at%)等の熱伝導性と導電性が良好な低融点金属(例:融点が130~250℃)を用いることができる。
【0042】
一実施形態において、超音波探傷試験で測定される各スパッタリングターゲット部材の接着率を95%以上にすることができ、好ましくは97%以上にすることができ、より好ましくは98%以上にすることができ、例えば97~100%にすることができる。本明細書において、超音波探傷試験は以下の手順によりパルス反射法で実施する。各スパッタリングターゲット部材140の外周面144に超音波探傷器により超音波のパルスを探触子から発信し、反射して戻ってくるエコーの強さから、接着良好部と接着不良部を識別することができる。この操作をスパッタリングターゲット部材140の外周面144の異なる位置で繰り返し、スパッタリングターゲット部材140の外周面144の全体についての探傷図を得る。探傷図を2値化処理し、接着良好部の面積割合を当該スパッタリングターゲット部材の接着率とする。
【0043】
超音波探傷試験は、以下の条件で行う。
超音波探傷器:株式会社日立パワーソリューションズ製のFSLINE Hybrid又はこれと同等の性能を有する装置
面積割合を算出するソフトウェア:株式会社日立パワーソリューションズ製のFSLINE ROLL(Version 7.0.3.4(2007))又はこれと同等の性能を有するソフトウェア
発信する超音波の周波数:2MHz~10MHz
分割スパッタリングターゲット全体を純水中に浸漬した後、スパッタリングターゲット部材の外周面に垂直に探触子を差し向けて超音波のパルスを発信しながら、当該外周面上を周方向及び長手方向に走査し、エコーの反射強度を測定する。
2値化処理の方法:モード法
【0044】
<B.分割スパッタリングターゲットの製法>
本発明の一実施形態に係る分割スパッタリングターゲットの製造方法を図5を参照しながら例示的に説明する。
分割スパッタリングターゲットの製造方法は一実施形態において:
筒状のバッキングチューブ120の外周面122を周回被覆するようにして、熱硬化性樹脂560を外周面122に塗布する工程Aと、
塗布された熱硬化性樹脂560を硬化することにより、マスク材160を形成する工程Bと、
を含む。
【0045】
工程Bの後の工程は、限定的ではないが、例えば、
複数の筒状のスパッタリングターゲット部材140を、筒状のバッキングチューブ120の外周側にスペーサ590を挟んで直列に挿通し、隣り合うスパッタリングターゲット部材140の間の間隙130に位置する筒状のバッキングチューブ120の外周面122の部分をマスク材160が遮蔽するように配列する工程Cと、
複数の筒状のスパッタリングターゲット部材140と筒状のバッキングチューブ120の間のクリアランスCに、溶融させたボンディング材180を充填する工程Dと、
工程Dの後、ボンディング材180を固化する工程Eと、
工程Eの後、スペーサ590を除去すると共に、隣り合うスパッタリングターゲット部材140の間の間隙130にはみ出たボンディング材180を除去し、間隙130にマスク材160を露出させる工程Fと、
を含む。
【0046】
分割スパッタリングターゲットの製造方法は好ましい一実施形態において:
筒状のバッキングチューブ120の外周面122を周回被覆するようにして、中心軸Oの方向に間隙を置いて対向する一対の壁面540a、540bを形成する部材を外周面122の上に設ける工程A1と、
一対の壁面540a、540bの間に形成された溝部520に熱硬化性樹脂560を塗布する工程A2と、
一対の壁面540a、540bの上端にスクレーパー580を押し当てながらスクレーパー580を一対の壁面540a、540bの長手方向(周方向)に沿って移動させることにより、溝部520に塗布された熱硬化性樹脂560の厚みを均す工程A3と、
工程A3の後、溝部520に塗布された熱硬化性樹脂560を硬化することにより、マスク材160を形成する工程B1と、
工程B1の後、一対の壁面540a、540bを形成する部材を外周面122から剥離する工程B2と、
複数の筒状のスパッタリングターゲット部材140を、筒状のバッキングチューブ120の外周側にスペーサ590を挟んで直列に挿通し、隣り合うスパッタリングターゲット部材140の間の間隙130に位置する筒状のバッキングチューブ120の外周面122の部分をマスク材160が遮蔽するように配列する工程Cと、
複数の筒状のスパッタリングターゲット部材140と筒状のバッキングチューブ120の間のクリアランスCに、溶融させたボンディング材180を充填する工程Dと、
工程Dの後、ボンディング材180を固化する工程Eと、
工程Eの後、スペーサ590を除去すると共に、隣り合うスパッタリングターゲット部材140の間の間隙130にはみ出たボンディング材180を除去し、間隙130にマスク材160を露出させる工程Fと、
を含む。
【0047】
工程A1では、バッキングチューブ120の外周面122を周回被覆するようにして、中心軸Oの方向に間隙を置いて対向する一対の壁面540a、540bを形成する部材を外周面122に設ける。なお、壁面540a、540bを形成する部材は、加熱により形状を崩さないもので、バッキングチューブ120の外周表面に沿って密着できるものであれば材質は問わないが、樹脂製又は金属製のテープやリングが挙げられる。例えば耐熱性の粘着テープを複数枚積層することで、所望の高さの壁面を形成可能である。対向する一対の壁面540a、540bの間の間隔は先述したマスク材160の中心軸Oの方向の幅Wに対応する。粘着テープの種類としては、工程A1を実施できる限り特に制限はないが、基材としてはポリイミドフィルム、ガラス布、その他の耐熱性樹脂などが挙げられ、基材に塗布されている粘着剤としてはシリコーン系粘着剤、アクリル系粘着剤などが挙げられる。代表的な耐熱テープとして、カプトンテープに代表される様なポリイミド製テープが挙げられる。
【0048】
工程A2では、対向する一対の壁面540a、540bの間に形成された溝部520に熱硬化性樹脂560を塗布する。熱硬化性樹脂は、大気曝露されると硬化を開始するため、塗布可能な粘性を有する時間内に塗布することが必要である。典型的には樹脂メーカ推奨の可使時間(例示的には、樹脂の大気暴露開始から5~60分程度)内であれば、塗布可能である。塗布の方法としては、特に制限はないが、溝部520が完全に熱硬化性樹脂560で満たされるように刷毛等で塗布することが均一な厚みを確保する観点で望ましい。中心軸Oを回転軸としてバッキングチューブ120を回転させながら塗布すると、均一な厚みで塗布しやすい。回転速度は熱硬化性樹脂560の粘度によって調整すればよいが、例えば1~5rpmとすることができ、2~3rpmとすることが厚みの均一性を高める上で好ましい。この段階では、熱硬化性樹脂560は溝部520から対向する一対の壁面540a、540bの上にはみ出てもよいが、対向する一対の壁面540a、540bを超えてバッキングチューブ120の外周面122の上にまではみ出るのは望ましくない。
【0049】
工程A3では、対向する一対の壁面540a、540bの上端にスクレーパー580を押し当てながらスクレーパー580を一対の壁面540a、540bの長手方向(バッキングチューブ120の外周面122を周回する方向)に沿って移動させることにより、溝部520に塗布された熱硬化性樹脂560の厚みを均す。工程A3を実施することにより、熱硬化性樹脂560の厚み均一性が向上する。中心軸Oを回転軸としてバッキングチューブ120を回転させながら工程A3を実施することが作業効率向上の観点で好ましい。
【0050】
工程B1では、溝部520に塗布された熱硬化性樹脂560を硬化することにより、マスク材160を形成する。硬化条件は、熱硬化性樹脂560の種類に応じて適宜選択すればよいが、低温で硬化すると硬化に長時間を要する。このため、硬化中に塗布された熱硬化性樹脂560が重力によって変形し、厚みの均一性が悪化するおそれがある。このことから、熱硬化性樹脂560を100℃以上に加熱して硬化することが好ましく、120℃以上に加熱して硬化することがより好ましく、150℃以上に加熱して硬化することが更により好ましい。但し、硬化時の加熱温度が高すぎると樹脂がガラス転移温度を大きく超えて材料が変質し、硬化後の硬度を保てなくなることから、熱硬化性樹脂560を200℃以下に加熱して硬化することが好ましく、190℃以下に加熱して硬化することがより好ましく、180℃以下に加熱して硬化することが更により好ましい。
【0051】
工程B2では、対向する一対の壁面540a、540bを形成する粘着テープ等の部材を外周面122から剥離する。剥離の方法には特に制限はないが、熱硬化性樹脂560が硬化した後、冷却後に、壁面540a、540bと熱硬化性樹脂560(マスク材160)の境目にカッターで切込を入れ、壁面側を剥離することが好ましい。
【0052】
工程Cでは、複数の筒状のスパッタリングターゲット部材140を、筒状のバッキングチューブ120の外周側に間隔調整用のスペーサ590を挟んで直列に挿通し、隣り合うスパッタリングターゲット部材140の間の間隙130に位置する筒状のバッキングチューブ120の外周面122の部分をマスク材160が遮蔽するように配列する。スペーサ590は隣接するスパッタリングターゲット部材140同士の間隙130の大きさを調整する役割を果たす。従って、スペーサ590の厚みは、隣接するスパッタリングターゲット部材140同士の間隙130の中心軸Oの方向の幅Xに対応する。また、スペーサ590は、隣り合うスパッタリングターゲット部材140がボンディング時に熱膨張することによって互いに接触してクラッキングが発生するのを防止する役割も果たす。ボンディング材の漏洩を防止する観点から、スペーサ590は環状であることが好ましい。スペーサ590が環状である場合、スペーサ590の内径は、ボンディング材の流通を妨げないように、スパッタリングターゲット部材140の内径よりも大きいことが望ましい。なお、スペーサ590が環状である場合、一体成形品であることがボンディング材の漏洩を防止する観点から好ましいが、複数の部品を組み合わせて構築してもよい。
【0053】
スペーサ590の材質としては、金属、樹脂、又はこれらの複合材が挙げられるが、ボンディング工程における高温に耐える耐熱性と、スパッタリングターゲット部材の熱膨張時に自身が潰れてスパッタリングターゲット部材への応力を分散する柔軟性を持つという理由により樹脂が好ましく、フッ素樹脂がより好ましい。
【0054】
工程Dでは、複数の筒状のスパッタリングターゲット部材140と筒状のバッキングチューブ120の間のクリアランスCに、溶融させたボンディング材180を充填する。ボンディング材180の充填方法には特に制限はないが、複数の筒状のスパッタリングターゲット部材140がバッキングチューブ120の外周側にスペーサ590を挟んで直列に挿通されている状態で、溶融させたボンディング材180を複数の筒状のスパッタリングターゲット部材140全体の中心軸Oの方向の一端から他端に向かって流し、クリアランスCに充填する方法が挙げられる。マスク材160の外周面162が、各スパッタリングターゲット部材140の内周面142よりも内周側に位置することで、複数の筒状のスパッタリングターゲット部材140とバッキングチューブ120の間のクリアランスC全体を容易にボンディング材180で充填させることが可能となる。
【0055】
ボンディング材180を充填する際は、直列に配列された複数の筒状のスパッタリングターゲット部材140に対して、中心軸Oの方向に平行な圧縮力を与えることで、スペーサ590が設置されている隣接するスパッタリングターゲット部材140同士の間隙130からボンディング材180が漏出するのを抑制することができる。
【0056】
工程Eではボンディング材180を固化する。溶融させたボンディング材180は融点未満に冷却することで固化するが、ボンディング材180の収縮による引け巣(接着不良)の発生を防止するため、少なくともボンディング時の温度から120℃までは0.1℃/min~3℃/min程度の速度でターゲット全体を徐冷するのが望ましい。
【0057】
工程Fでは、スペーサ590を除去すると共に、隣り合うスパッタリングターゲット部材140の間の間隙130にはみ出たボンディング材180を除去し、間隙130にマスク材160を露出させる。スペーサ590を除去する方法としては、例えばスペーサ590を破断して除去する方法が挙げられる。ボンディング材180を除去する方法としては、特段の制限はないが、例えば治具を利用して掻き取る方法が挙げられる。
【0058】
<C.成膜方法>
本発明の一実施形態によれば、分割スパッタリングターゲットをスパッタすることを含む成膜方法が提供される。スパッタ法としては、限定的ではないが、RFマグネトロンスパッタ法、DCマグネトロンスパッタ法、ACマグネトロンスパッタ法、パルスDCマグネトロンスパッタ法等を好適に使用することができる。
【0059】
<D.バッキングチューブの再生>
分割スパッタリングターゲットを使用後は、分割スパッタリングターゲットからバッキングチューブを取り外すことにより、バッキングチューブを再利用することができる。分割スパッタリングターゲットからバッキングチューブを取り外す方法は、例えば、分割スパッタリングターゲットをボンディング材の溶融温度以上に加熱した後、筒状のバッキングチューブから複数の筒状のスパッタリングターゲット部材を分離する工程と、複数の筒状のスパッタリングターゲット部材から分離された筒状のバッキングチューブの外周側面に直接接着して配置されている硬化後の熱硬化性樹脂で構成されるマスク材を加熱することにより熱分解し、バッキングチューブの外周側面に対する接着力を低下させてからマスク材を剥離する工程を含む。熱硬化性樹脂の熱分解温度は、ボンディング時に熱分解を受けないようにするという観点から、200℃以上であることが好ましく、210℃以上であることがより好ましい。また、熱硬化性樹脂の熱分解温度は、バッキングチューブが影響を受けないという観点から、240℃以下であることが好ましく、220℃以下であることがより好ましい。
【実施例0060】
以下、本発明及びその利点の理解を容易にするための実施例を示すが、本発明は実施例に限定されるべきではない。
【0061】
<1.部材の用意>
実施例及び比較例の分割スパッタリングターゲットを製造するに当たり、以下の部材を用意した。
(1)バッキングチューブ(BT)
材質:Ti
形状:長さ1550mm×内径125mm×外径133mmの円筒状
(2)スパッタリングターゲット部材
材質:IGZO
形状:長さ375mm×内径135mm×外径153mmの円筒状
(3)マスク材(熱硬化性樹脂)
樹脂A:2液混合型エポキシ樹脂(スリーボンド製、品番TB2088E)、メーカ推奨可使時間=常温(25℃)で70分
樹脂B:2液混合型エポキシ樹脂(東都化学工業製、品番ベストンPM-4)、メーカ推奨可使時間=常温(25℃)で120分
樹脂C:2液混合型アクリル樹脂(セメダイン製、品番Y611)、メーカ推奨可使時間=常温(25℃)で3分
樹脂D:1液反応型エポキシ樹脂(セメダイン製、品番EP-138)、メーカ推奨可使時間=非公開(120℃以下の場合は大気開放後30分以内であれば塗布可能)
樹脂E:1液反応型アクリル樹脂(セメダイン製、品番SX720W)、メーカ推奨可使時間=指触乾燥時間という指標で、9分。
樹脂F:1液反応型シリコーン系RTVゴム(信越化学工業製、品番KE-3417)、メーカ推奨可使時間=常温(25℃)で12分
樹脂G:1液反応型ポリイソブチレン系樹脂(3M製、品番GC-T)、メーカ推奨可使時間=常温(25℃)で3分
(4)ボンディング材
材質:In
【0062】
<2.硬さ試験>
上記の各種熱硬化性樹脂について、表1に記載の各硬化条件にて硬化させた。次いで、硬化後の熱硬化性樹脂から20mm×20mm×5mmの大きさの試験片を切り出して、硬さ試験に適した試験片を作成することができるかを調査した。その結果、樹脂A、B、C及びDについては試験片を作成することができた。一方、樹脂Eは、気泡が多く巻き込まれた蜂の巣構造で、加熱硬化後の樹脂が柔らかいため、作成不可と判断した。樹脂Fは、加熱後に十分に硬化しないため、作成不可と判断した。樹脂Gは、加熱硬化後の樹脂が柔らかく、また、気化量が多くマスク材として必要な厚みが確保出来ないため、作成不可と判断した。
【0063】
樹脂A、B、C及びDについては、作成した試験片の表面の3箇所に対して、先述した条件で、JIS Z2244:2009に規定されるビッカース硬さ試験により測定したときのビッカース硬さ(Hv)を測定し、平均値を測定値とした。結果を表1に示す。
【0064】
<3.分割スパッタリングターゲットの製造>
上記の部材を使用して以下の工程を順に実施し、実施例及び比較例の分割スパッタリングターゲットを製造した。
【0065】
(1)工程A1
バッキングチューブ120の外周面122を周回被覆するようにして、中心軸Oの方向に間隙(10mm)を置いて対向する一対の壁面540a、540bを形成するポリイミド製の粘着テープを外周面122の上に貼り付けた。粘着テープは狙いとするマスク材の厚みに応じて複数枚積層することで壁面540a、540bの高さを調整した。
【0066】
(2)工程A2
次いで、対向する一対の壁面540a、540bの間に形成された溝部520に、試験番号に応じて表1に示す熱硬化性樹脂560を塗布した。塗布は、中心軸Oを回転軸としてバッキングチューブ120を3rpmで回転させながら、メーカ推奨の可使時間内に実施した。また、塗布は、溝部520が完全に熱硬化性樹脂560で満たされるように刷毛で行った。なお、比較例2は、樹脂の粘度が小さすぎて樹脂がバッキングチューブから液垂れにより落下し、塗布できなかったため、以降の工程は実施しなかった。
【0067】
(3)工程A3
工程A2の後、可使時間内に、壁面540a、540bを跨ぐ様にして、対向する一対の壁面540a、540bの上端にステンレス製のスクレーパー580の刃先を押し当てながら、中心軸Oを回転軸としてバッキングチューブ120を回転させることにより、溝部520に塗布された熱硬化性樹脂560の厚みを均した。
【0068】
(4)バッキングチューブへの塗布性評価
工程A2における塗布時のバッキングチューブからの熱硬化性樹脂の液垂れによる落下の有無及び、工程A3におけるスクレーパーの刃先の動きに追随した熱硬化性樹脂の伸びの有無を以下の基準で評価した。
〇:液垂れ無し、且つ、伸び有り
△:液垂れ無しだが、伸びが不十分
×:液垂れ有り、又は、伸び無し
【0069】
(5)工程B1
工程A3の後、溝部520に塗布された熱硬化性樹脂560を硬化することにより、マスク材160を形成した。硬化条件は表1に記載の通りとした。
【0070】
(6)工程B2
工程B1の後、室温まで冷却後に、対向する一対の壁面540a、540bを形成する粘着テープを外周面122から剥離した。
【0071】
(7)マスク材の厚み評価
このようにして得られた実施例及び比較例のマスク材の厚みYを中心軸Oの周りで1周分測定した。具体的には、デジタルデプスゲージ(ミツトヨ製デジタルダイヤルデプスゲージ型番547-211)によりマスク材とバッキングチューブとの段差を、周方向に45°間隔で合計8点測定した。そして、マスク材の厚みYの平均値、最大値、最小値、及び(最大値-最小値)をそれぞれ求めた。結果を表1に示す。
【0072】
(8)工程C
二つの円筒状のスパッタリングターゲット部材140を、円筒状のバッキングチューブ120の外周側にフッ素樹脂製の環状スペーサ590を挟んで直列にバッキングチューブ120と同軸状に挿通し、隣り合うスパッタリングターゲット部材140の間の間隙130に位置する円筒状のバッキングチューブ120の外周面122の部分をマスク材160が遮蔽するように配列した。隣接するスパッタリングターゲット部材140同士の間隙130の中心軸Oの方向の幅Xに対応する環状スペーサ590の厚みは0.4mmとした。
【0073】
(9)工程D
中心軸Oの方向に平行な圧縮力を加えた状態で、二つの円筒状のスパッタリングターゲット部材140と円筒状のバッキングチューブ120の間のクリアランスCに、溶融させた200℃のボンディング材180を充填した。
【0074】
(10)工程E
その後、二つの円筒状のスパッタリングターゲット部材140と円筒状のバッキングチューブ120の間のクリアランスCに充填されている溶融させたボンディング材180を室温まで冷却し、固化させた。この際、ターゲット温度がボンディング時の温度から120℃へ冷却される際の平均冷却速度は0.5℃/min程度であった。
【0075】
(11)工程F
工程Eの後、環状スペーサ590を破断して除去し、また、隣り合うスパッタリングターゲット部材140の間の間隙130にはみ出たボンディング材180を、金属製の治具で掻き取り除去することで間隙130にマスク材160を露出させた。
【0076】
<4.超音波探傷試験>
上記の手順で製造した分割スパッタリングターゲット(実施例1~4、比較例1)に対し、先述した条件に従って超音波探傷試験をパルス反射法により実施することで、スパッタリングターゲット部材の接着率を測定した。結果を表1に示す。
【0077】
<5.マスク材の破損・剥離評価>
超音波探傷試験後にボンディング材180を200℃に加熱溶融させることでスパッタリングターゲット部材140をバッキングチューブ120から取り外し、バッキングチューブ表面に残留したマスク材の破損及び剥離の有無を目視により確認した。評価は以下の基準で行った。結果を表1に示す。
〇:マスク材の剥離や破損が無く、マスク材の塗布部にBT表面が露出している箇所が無い
△:一部でマスク材の剥離や破損があり、マスク材の塗布部の一部(目安:塗布面積の20%未満)でBT表面が露出している
×:マスク材の剥離や破損箇所が多く、マスク材の塗布部の多く(目安:塗布面積の20%以上)でBT表面が露出している
【0078】
<6.マスク材の除去容易性評価>
「5.マスク材の破損・剥離評価」で得られたマスク材が残留したバッキングチューブを230℃に加熱した状態で、マスク材をバッキングチューブからスクレーパーで掻き取り除去する際の容易性を評価した。評価は以下の基準で行った。結果を表1に示す。
○:スクレーパーでの掻き取りにより、マスク材を完全に除去出来た
△:スクレーパーでの掻き取りにより、一部除去できないマスク材が存在した
×:マスク材がバッキングチューブと固く接合しており、スクレーパーでの掻き取りではマスク材は除去できなかった
【0079】
<7.考察>
実施例1~4においては、適切なビッカース硬さをもつ熱硬化性樹脂によりマスク材を形成した。これらのマスク材は筒状のバッキングチューブの側面形状に追随して密着し、破損・剥離しにくいという特性を有していた。
一方、比較例1~5は、熱硬化性樹脂のビッカース硬さが不足していたことからマスク材を形成できないか、又は、マスク材を形成できたとしても強度が不足して、破損・剥離が生じた。
【0080】
【表1-1】
【0081】
【表1-2】
【符号の説明】
【0082】
100 :分割スパッタリングターゲット
120 :バッキングチューブ
122 :外周面
130 :間隙
140 :スパッタリングターゲット部材
142 :内周面
144 :外周面
160 :マスク材
162 :外周面
180 :ボンディング材
400 :デジタルデプスゲージ
420 :ベース
422 :底面
440 :測定子
460 :表示部
520 :溝部
540a :壁面
540b :壁面
560 :熱硬化性樹脂
580 :スクレーパー
590 :スペーサ
図1
図2
図3
図4
図5