(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133014
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】携帯端末、分析システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3563 20140101AFI20230914BHJP
【FI】
G01N21/3563
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038670
(22)【出願日】2022-03-11
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】野口 英剛
(72)【発明者】
【氏名】安住 純一
(72)【発明者】
【氏名】釜谷 智彦
(72)【発明者】
【氏名】柳田 晃司
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA01
2G059BB08
2G059EE02
2G059EE12
2G059GG01
2G059GG02
2G059JJ05
2G059JJ13
2G059KK01
2G059MM01
2G059MM05
2G059MM10
2G059MM14
2G059PP04
(57)【要約】
【課題】試料の分析に係る情報を、分析結果とともにエビデンスとして残す。
【解決手段】試料からの反射光に基づき分光器で得られた分光スペクトルの情報に基づいて、前記試料を分析する分析処理部と、前記分析処理部による分析結果を、表示部に表示する表示制御部と、前記試料の分析に係る情報を取得する情報取得部と、を備え、前記表示制御部は、前記試料の分析に係る情報を、前記分析結果に対応付けて前記表示部に表示する。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料からの反射光に基づき分光器で得られた分光スペクトルの情報に基づいて、前記試料を分析する分析処理部と、
前記分析処理部による分析結果を、表示部に表示する表示制御部と、
前記試料の分析に係る情報を取得する情報取得部と、
を備え、
前記表示制御部は、前記試料の分析に係る情報を、前記分析結果に対応付けて前記表示部に表示する、
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記情報取得部は、前記試料の分析に係る情報として、前記試料を撮影した撮影データを取得し、
前記表示制御部は、前記試料を撮影した撮影データを、前記分析結果に対応付けて前記表示部に表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記情報取得部は、前記試料の分析に係る情報として、前記試料の分析に係るテキストデータを取得し、
前記表示制御部は、前記試料の分析に係るテキストデータを、前記分析結果に対応付けて前記表示部に表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項4】
前記分析処理部は、前記分析結果を、外部機器との間で共有可能な態様で記憶部に記憶する、
ことを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載の携帯端末。
【請求項5】
試料からの反射光に基づき分光スペクトルの情報を得る分光器と、
請求項1ないし4の何れか一項に記載の携帯端末と、
を備えることを特徴とする分析システム。
【請求項6】
コンピュータを、
試料からの反射光に基づき分光器で得られた分光スペクトルの情報に基づいて、前記試料を分析する分析処理部と、
前記分析処理部による分析結果を、表示部に表示する表示制御部と、
前記試料の分析に係る情報を取得する情報取得部と、
として機能させるためのプログラムであって、
前記表示制御部は、前記試料の分析に係る情報を、前記分析結果に対応付けて前記表示部に表示する、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末、分析システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日において、使用済みの例えばエアコンディショナー装置、テレビジョン受像機、冷蔵庫、冷凍庫、洗濯機、衣類乾燥機等の家電製品がリサイクルされるようになっている。使用済の家電製品は、家電リサイクル工場で破砕されて小片となされた後に、磁気、風力、又は振動等を利用して、材種ごとに選別回収され、リサイクル材料として再資源化される。樹脂材料においては、ポリプロピレン(以下、PPと表記)、ポリスチレン(以下、PSと表記)、又はアクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(以下、ABSと表記)等が家電製品に多く用いられており、樹脂の分子構造による近赤外線領域(波長範囲800~2500nm)の吸光特性を利用した選別装置によって樹脂種ごとに選別回収されている。
【0003】
特許文献1には、400nm~2500nmの波長領域の光を利用して各試料中の成分の判別及び成分の特性を測定し、バリデーション誤差SEVとバリデーションの相関rVal等の測定結果を表示する分光分析方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術も含め、従来の分析システムによれば、試料の分析に係る情報を、分析結果とともにエビデンスとして残すことができずにいた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、試料の分析に係る情報を、分析結果とともにエビデンスとして残すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、試料からの反射光に基づき分光器で得られた分光スペクトルの情報に基づいて、前記試料を分析する分析処理部と、前記分析処理部による分析結果を、表示部に表示する表示制御部と、前記試料の分析に係る情報を取得する情報取得部と、を備え、前記表示制御部は、前記試料の分析に係る情報を、前記分析結果に対応付けて前記表示部に表示する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、試料の分析に係る情報を、分析結果とともにエビデンスとして残すことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施の形態にかかる分析システムのシステム構成を示す図である。
【
図4】
図4は、分光器に設けられている処理部のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、分光器の処理部の機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、携帯端末のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7は、携帯端末の機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図8】
図8は、携帯端末における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、測定完了画面の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、測定結果詳細画面の別の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、携帯端末、分析システムおよびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
(システム構成)
図1は、実施の形態にかかる分析システムのシステム構成を示す図である。
図1において、分析システム100は、分光器102及び携帯端末110を備える。なお、分析システム100は、一つの携帯端末110に対して一つの分光器102を備える場合のほかに、一つの携帯端末110に対して複数の分光器102を備えていてもよい。
【0011】
分光器102は、赤外線分光分析ユニット120に備える光検出器から時間的に提供される光の強度を含む出力を処理するプロセッサ106を備える。通信回路104は、プロセッサ106で処理された分光スペクトルの時間と光の強度を含む出力が関連付けられた情報を外部へと出力する。
【0012】
携帯端末110は、インタフェース114及びプロセッサ116を有する。なお、携帯端末110としては、例えば携帯電話機、タブレット端末又はスマートフォン等の携帯機器を用いることができる。また、携帯端末110は、カメラ機能を有している。また、携帯端末110としては、携帯機器に限るものではなく、パーソナルコンピュータ、サーバ、ノートPC(Personal Computer)などの情報処理機器であってもよい。さらに、携帯端末110は、専用の分析装置であってもよい。
【0013】
プロセッサ116は、分光器102のプロセッサ106で処理された分光スペクトルの時間と光の強度を含む出力が関連付けられた情報と、分光器102が有する可動ミラーの振動周波数に基づいて、時間を光の波長に換算し、光の波長毎の光の強度の関係で構成される分光スペクトル情報を得る。
【0014】
表示部であるディスプレイ112は、分光器102で測定された分光スペクトルの情報及び組成判別結果等の分析結果を表示する。
【0015】
このような分析システム100において、分光器102は、例えばBluetooth(登録商標)等の無線シリアル通信を用いて、通信回路104を介してデータを携帯端末110に伝送する。携帯端末110は、分光器102からデータを受信し、プロセッサ116によって処理及び分析する。そして、この分析結果である、例えば分光スペクトルの情報及び組成判別結果等を、ディスプレイ112に表示する。プロセッサ116は、その他にも、樹脂種、組成比率、添加剤の情報等をディスプレイ112に表示させてもよい。
【0016】
(分光器の詳細構成)
図2は、分光器102の構成を示す断面図である。
図2に示すように、分光器102は、光源216及び処理部215aを有する。
【0017】
光源216は、分光分析の対象となる試料108等に対して、所望の波長領域の光を照射する。例えばLED(発光ダイオード)又はハロゲンランプ等である。光源216は、外側フレーム210の外側に配置される。光源216として、分光分析の対象物に対して適正な波長帯域の光を照射する光源が選択され、配置される。
【0018】
処理部215aは、光検出器214から入力される電気信号に基づき、分光スペクトルを取得する演算を行う。また処理部215aは、所望の波長の光を光検出器214に出射させるために可動ミラー203を制御し、さらに光源216による光の照射、例えば光の強度を制御する。
【0019】
また、分光器102は、入射スリット201、凹面回折格子202、可動ミラー203及び出射スリット204を有する。図中の点線は、分光器102内に入射し、分光器102の内部で反射され出射され、光検出器214に出射される光線の一部を示している。
【0020】
入射スリット201は、細い矩形の開口であり、外側フレーム210のテーパ孔212から入射した光を、フレーム209内に導光する。入射スリット201の短手方向の開口の幅は、例えば、数10μm~数100μm等である。入射スリット201は、例えばニッケル等の金属基板に矩形の貫通孔を設けて形成される。ただし、基板の材質は金属に限定されず半導体や樹脂等でもよい。また、入射スリット201は、矩形開口に限定されず、円形開口のピンホール等であってもよい。入射スリット201から分光器102の内部に入射した光は、凹面回折格子202に入射する。
【0021】
凹面回折格子202は、金属の凹面ミラーの表面に等間隔の細線が形成された光学素子である。ただし、凹面回折格子202の基材の材質は金属に限定されず、半導体、ガラス、樹脂等であってもよい。また、凹面回折格子202における細線は基材上に直接形成してもよいし、基材上に形成した薄い樹脂等の層に形成してもよい。凹面回折格子202は、回折格子による光の分散機能と、凹面ミラーによる集光機能とを有する。凹面回折格子202に入射した光は、凹面回折格子202により回折して分散し、可動ミラー203に向けて集光する。なお、光の分散とは、入射光が波長ごとに別々に分離する現象をいう。
【0022】
可動ミラー203は、例えば、ミラー部を設けた可動部が接続部としての弾性梁部と基板上に一体に形成されたMEMS(Micro Electro Mechanical System)ミラーである。ミラー部は、入射する光を反射する。また、可動部は弾性梁部の弾性運動によって回動され、それに伴って可動部に設けられたミラー面が回動する。
【0023】
図3は、可動ミラー203を示す図である。このうち、
図3(a)は可動ミラー203の側面図であり、
図3(b)は可動ミラー203の平面図である。
図3(a)及び
図3(b)に示すように、可動ミラー203は、支持部206に対して可動部207が接続部208を介して支持されている。接続部208は、ねじりバネの機能を有する。圧電駆動、静電駆動又は電磁駆動等の駆動力が、駆動部から加えられることで、可動部207が、
図3(b)のA-A´線を軸にして、
図3(a)の一点鎖線の矢印で示されている方向に回動する。
【0024】
可動部207を回動させる駆動部を、支持部206にモノリシックに形成することで、モータ等の外部駆動手段を用いずに、可動部207を駆動することができ、また可動部207を小型化することができる。一例ではあるが、支持部206は、Si(シリコン)又はガラス等で形成できる。支持部206に、Si等の半導体材料を用いると、半導体プロセスによる高精度な微細加工が可能になる。
【0025】
図2に戻り、可動ミラー203は、凹面回折格子202により分散した光を出射スリット204に向けて反射する。ミラーを有する可動部207の回動により、反射光の反射角度は可変である。
【0026】
出射スリット204は、細い矩形の開口であり、分散した光を分光器102から出射させるための開口として作用する。出射スリット204の材質及び形状は、入射スリット201と同じ材質及び形状のものが使用可能である。
【0027】
出射スリット204は、凹面回折格子202により分散した光の結像位置に配置される。凹面回折格子202により分散した光は、結像位置が波長に応じて横ずれ(シフト)する。そのため、可動ミラー203による反射角度を変化させ、出射スリット204を通過する光の波長を変えることで、分散した光のうち所望の波長の光を光検出器214に選択的に出射させることができる。光検出器214は、Siフォトダイオード等の光電変換素子であり、光の情報が電気信号として出力され、分光分析等が行われる。
【0028】
(分光器の処理部のハードウェア構成)
図4は、分光器102に設けられている処理部215aのハードウェア構成を示すブロック図である。
図4に示すように、処理部215aは、CPU(Central Processing Unit)351と、ROM(Read Only Memory)352と、RAM(Random Access Memory)353とを有する。また処理部215aは、NVRAM(Non Volatile Memory)354と、出力インタフェース(出力I/F)355と、A/D(Analog/Digital)変換回路356と、ミラー駆動回路357とを有する。これらは、システムバス358を介して相互に接続されている。
【0029】
CPU351は、処理部215aの動作を統括的に制御する。また、CPU351は、光検出器214が出力する電気信号に基づき、分光スペクトルを算出する。
【0030】
光源駆動回路359は、光源216と電気的に接続され、照射光の光強度を示す電圧、又は電流を光源216に出力する。光源216は、光源駆動回路359から入力される電圧、又は電流に応じた強度の光を照射する。
【0031】
処理部215aは、入力される電気信号に基づき、分光スペクトルを取得する演算を行う。また、処理部215aは、所望の波長の光を選択的に出射させるために、ミラー駆動回路357より可動ミラー203も制御する。
【0032】
(分光器の処理部の機能構成)
図5は、分光器102の処理部215aの機能構成を示す機能ブロック図である。なお、
図5に示す各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部を、上述のCPU351が実行するプログラムで実現してもよいし、又は、ワイヤードロジック等によるハードウェアで実現してもよい。
【0033】
図5において、処理部215aは、A/D変換部461と、スペクトル取得部462と、記憶部463と、出力部464と、駆動制御部465aと、ミラー駆動部466と、光源駆動部467とを有する。
【0034】
A/D変換部461は、光検出器214が出力するアナログの電気信号を受信して、デジタル信号に変換し、スペクトル取得部462、記憶部463等に出力する。A/D変換部461は、A/D変換回路356等により実現される。
【0035】
スペクトル取得部462は、A/D変換部461が出力するデジタル信号を入力し、分光器102に入射する光の分光スペクトルを演算する。演算結果は、記憶部463、出力部464等に出力される。スペクトル取得部462は、CPU351等により実現される。
【0036】
記憶部463は、スペクトル取得部462による演算結果、及び、A/D変換部461から出力されるデジタルデータを記憶し、要求に応じてこれらを出力部464に出力する。記憶部463は、NVRAM354等により実現される。
【0037】
出力部464は、スペクトル取得部462による演算結果又はA/D変換部461の出力するデジタル信号データを、携帯端末110に出力する。出力部464は、出力I/F355等により実現される。
【0038】
駆動制御部465aは制御信号を出力し、ミラー駆動部466及び光源駆動部467を制御する。駆動制御部465aは、CPU351等により実現される。
【0039】
ミラー駆動部466は制御信号に応じて電圧、又は電流を可動ミラー203に出力し、所望の反射角度が得られるように可動部207を回動させる。ミラー駆動部466は、ミラー駆動回路357等により実現される。
【0040】
ここで、分光器102は、
図2に示すように電池218を有する。また分光器102は、分光分析ユニット200、処理部215a及び電池218を収納する筐体217を有する。
【0041】
電池218は、処理部215aに電力を供給する。例えば、リチウムイオン電池、乾電池、又はPSU(Power Supply Unit)等である。
【0042】
処理部215aは、通信制御部を備え、近距離通信やインターネットを介した通信により、分光スペクトルの演算結果等を送受信可能にしてもよい。
【0043】
また、外側フレーム210と筐体217を一体的に形成した構成にしてもよい。外側フレーム210に温度計を設けてもよい。
【0044】
このように、電力を供給する電池18を備えることで、分光器102とは別に電源を用意して設置する必要がなくなる。このため、任意の場所又は時間において、様々な対象物に対する分光分析を実施しやすくなる。
【0045】
(携帯端末のハードウェア構成)
図6は、携帯端末110のハードウェア構成を示すブロック図である。
図6に示されているように、携帯端末110は、CPU401、ROM402、RAM403、EEPROM404、CMOSセンサ405、撮像素子I/F406、加速度・方位センサ407、メディアI/F409、GPS受信部411を備えている。
【0046】
これらのうち、CPU401は、携帯端末110全体の動作を制御する。ROM402は、CPU401やIPL等のCPU401の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM403は、CPU401のワークエリアとして使用される。EEPROM404は、CPU401の制御にしたがって、アプリケーションプログラム、基準樹脂データ、測定データ等の各種データの読み出し又は書き込みを行う。CPU401、ROM402、RAM403、EEPROM404は、前述したプロセッサ116を構成する。
【0047】
CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ405は、CPU401の制御に従って被写体(主に自画像)を撮像して画像データを得る内蔵型の撮像手段(カメラ)の一種である。なお、CMOSセンサではなく、CCD(Charge Coupled Device)センサ等の撮像手段であってもよい。撮像素子I/F406は、CMOSセンサ405の駆動を制御する回路である。
【0048】
加速度・方位センサ407は、地磁気を検知する電子磁気コンパスやジャイロコンパス、加速度センサ等の各種センサである。メディアI/F409は、フラッシュメモリ等の記録メディア408に対するデータの読み出し又は書き込み(記憶)を制御する。GPS受信部411は、GPS衛星からGPS信号を受信する。
【0049】
また、携帯端末110は、遠距離通信回路412、CMOSセンサ413、撮像素子I/F414、マイク415、スピーカ416、音入出力I/F417、ディスプレイ112、外部機器接続I/F(Interface)419、近距離通信回路420、近距離通信回路420のアンテナ420a、及びタッチパネル421を備えている。
【0050】
これらのうち、遠距離通信回路412は、通信ネットワークを介して、他の機器と通信する回路である。CMOSセンサ413は、CPU401の制御に従って被写体を撮像して画像データを得る内蔵型の撮像手段(カメラ)の一種である。撮像素子I/F414は、CMOSセンサ413の駆動を制御する回路である。
【0051】
マイク415は、音を電気信号に変える内蔵型の回路である。スピーカ416は、電気信号を物理振動に変えて音楽や音声などの音を生み出す内蔵型の回路である。音入出力I/F417は、CPU401の制御に従ってマイク415及びスピーカ416との間で音信号の入出力を処理する回路である。
【0052】
ディスプレイ112は、被写体の画像や各種アイコン等を表示する液晶や有機EL(Electro Luminescence)などの表示手段の一種である。
【0053】
外部機器接続I/F419は、各種の外部機器を接続するためのインタフェースである。前述したインタフェース114に該当する近距離通信回路420は、NFC(Near Field Communication)やBluetooth(登録商標)等の通信回路であり、分光器102との通信に用いられる。タッチパネル421は、利用者がディスプレイ112を押下することで、携帯端末110を操作する入力手段の一種である。
【0054】
また、携帯端末110は、バスライン410を備えている。バスライン410は、
図6に示されているCPU401等の各構成要素を電気的に接続するためのアドレスバスやデータバス等である。
【0055】
(情報処理装置の機能構成)
図7は、携帯端末110の機能構成を示す機能ブロック図である。なお、
図5に示す各機能ブロックにて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部を、上述のプロセッサ116が実行するプログラムで実現してもよいし、又は、ワイヤードロジック等によるハードウェアで実現してもよい。
【0056】
図7に示すように、携帯端末110は、分析処理部1101と、表示制御部1102と、情報取得部1103と、を有する。
【0057】
分析処理部1101は、試料108からの反射光に基づき分光器102で得られた分光スペクトルの情報に基づいて、試料108の組成を分析する。
【0058】
加えて、分析処理部1101は、分析結果を、外部機器(別のスマートフォンやPCなど)との間で共有可能な態様でEEPROM404に記憶する。
【0059】
表示制御部1102は、分析処理部1101による分析結果を、ディスプレイ112に表示する。また、表示制御部1102は、試料108の分析に係る情報を、分析結果に対応付けてディスプレイ112に表示する。
【0060】
情報取得部1103は、試料108の分析に係る情報を取得する。
【0061】
例えば、情報取得部1103は、試料108の分析に係る情報として、試料108を撮影した撮影データを取得する。この場合、表示制御部1102は、試料108を撮影した撮影データを、分析結果に対応付けてディスプレイ112に表示する。
【0062】
また、例えば、情報取得部1103は、試料108の分析に係る情報として、試料108の分析に係るテキストデータを取得する。この場合、表示制御部1102は、試料108の分析に係るテキストデータを、分析結果に対応付けてディスプレイ112に表示する。また、例えば情報取得部1103は、試料108の分析に係る情報として、試料108の分析に係る音声データを取得する。この場合、情報取得部1103は、試料108の分析に係る音声データを、テキストデータに変換する。表示制御部1102は、情報取得部1103が変換したテキストデータを、分析結果に対応付けてディスプレイ112に表示する。あるいは、表示制御部1102は、音声データを出力できるように、音声データのリンクを分析結果に対応付けてディスプレイ112に表示するようにしてもよい。
【0063】
(検査の流れ)
次に、このような分析システムを用いて樹脂を含む試料108の組成を判定するための検査方法について説明する。
【0064】
まず、作業者は、分光器102の電源をオンにするとともに、携帯端末110を起動して、例えばアプリアイコンのタップによってアプリケーションプログラムを起動させる。
【0065】
次いで、作業者は、樹脂を含む試料108に分光器102の窓部211を対向させ、分光器102の筐体217に配設された測定開始ボタンを押す。これにより、分光器102の光源216から発する近赤外線光が試料108を照射する。(照射工程)
【0066】
なお、この照射工程は筐体217に配設された測定開始ボタンを押すことで行ってもよいが、携帯端末110が有するボタンを押すことで行ってもよいし、携帯端末110のディスプレイ112に表示される測定開始ボタンB1(
図9参照)などを押すことで行ってもよい。
【0067】
次に、照射光を試料108に照射することにより生じる反射光を、入射スリット201を介して光検出器214に導光する。光検出器214の出力する電気信号は処理部215aに供給される。繰り返し測定誤差を小さくするために複数回、このような動作が繰り返し行われてもよい。繰り返し動作が行われることで測定精度が向上する。
【0068】
処理部215aは、入力される電気信号に基づき、分光スペクトルを取得する演算を行う(分光スペクトルを取得)。処理部215aは、この分光スペクトルを、通信回路104により、携帯端末110に送信する。
【0069】
ここで、
図8は携帯端末110における処理の流れを示すフローチャートである。
図8に示すように、携帯端末110の分析処理部1101は、分光器102から受信した分光スペクトルに対して、平均化、平滑化、正規化、微分、散乱補正、ベースライン補正、ピークシフト補正、又はそれらの組み合わせを含む処理を施し、各波長点に対応する複数のパラメータ値を算出する「処理工程」を行う(ステップS1)。
【0070】
携帯端末110の分析処理部1101は、処理工程の次に、解析工程を行う(ステップS2)。解析工程においては、携帯端末110の分析処理部1101は、プロセッサ116の記憶部であるEEPROM404に記憶された複数の基準スペクトル(基準樹脂データ)を、処理工程において算出したパラメータ値にそれぞれ適用して、樹脂を含む試料108の組成と複数の候補組成との類似度、言い換えれば確からしさを表す値を算出する。
【0071】
類似度は、例えば相関係数値である。類似度は、主成分分析のスコア値等を使用することもできる。プロセッサ116の記憶部であるEEPROM404には、主に家電又はOA機器で使用される樹脂の素材に由来する基準スペクトルが記憶されている。例えば、家電又はOA機器で使用される樹脂の素材としての試料108は、汎用樹脂を中心に、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ABS(アクリロニトリル、ブタジエン、スチレン共重合合成樹脂)、PC(ポリカーボネート)等の樹脂である。なお、PCとPSの混合物、又は、PCとABSの混合物も一般的である。
【0072】
次に、携帯端末110の分析処理部1101は、判定工程を行う(ステップS3)。判定工程においては、分析処理部1101が、解析工程で算出した類似度の中で最も高い類似度が得られた候補組成を、樹脂を含む試料108の組成として判定する。
【0073】
次に、携帯端末110の分析処理部1101は、解析及び判定された結果である測定データを、EEPROM404に外部機器(別のスマートフォンやPCなど)との間で共有可能な態様で保存する(ステップS4)。
【0074】
なお、携帯端末110は、外部機器との間でのBluetooth接続などによる送受信により、EEPROM404に保存したデータ(測定データ、基準樹脂データ)のエクスポート、EEPROM404へのデータ(測定データ、基準樹脂データ)のインポートが可能である。
【0075】
なお、本実施形態においては、測定データを、携帯端末110のEEPROM404に保存するようにしたが、これに限るものではなく、外部記憶装置やサーバなどに保存するようにしてもよい。
【0076】
続いて、携帯端末110の表示制御部1102は、このように解析及び判定された結果を、携帯端末110のディスプレイ112に測定完了画面D1(
図9参照)として表示する(ステップS5)。
【0077】
ここで、
図9は測定完了画面D1の一例を示す図である。
図9に示すように、測定完了画面D1は、測定日時aに加え、判定結果として、測定された樹脂の名称bを表示する。
図9に示す例では、例えば試料108の組成がABS樹脂と判定されたことを示している。加えて、
図9に示す例では、測定された樹脂の名称bの下に、測定された樹脂との類似度を示す相関係数値cを表示する。また、
図9に示す例では、上述した測定開始ボタンB1も表示される。
【0078】
また、
図9に示す測定完了画面D1は、[詳細を見る]アイコンdと、[写真を添付]アイコンeと、を表示する。
【0079】
なお、表示制御部1102は、携帯端末110の音量を消音していないときは、設定された音量で、測定された樹脂の名称bをスピーカ416から音声出力するようにしてもよい。
【0080】
次に、測定結果の詳細確認について説明する。
【0081】
作業者が測定完了画面D1の[詳細を見る]アイコンdをタップすると、携帯端末110の表示制御部1102は、携帯端末110のディスプレイ112に測定結果詳細画面D2を表示する(
図10参照)。
【0082】
ここで、
図10は測定結果詳細画面D2の一例を示す図である。
図10に示すように、測定結果詳細画面D2は、測定完了画面D1で説明した測定日時a、測定された樹脂の名称b、相関係数値cに加え、判定結果の一覧fと、測定された樹脂のスペクトル波形のスペクトルグラフgと、を表示する。測定結果詳細画面D2は、上下にスクロールしてデータを確認可能となっている。
【0083】
図10に示す例では、判定結果の一覧fとして、ABS樹脂のほかに、PVC(ポリ塩化ビニル)、PE(ポリエチレン)が、類似度とともに候補として挙げられている。
【0084】
図10に示す例では、測定された樹脂のスペクトル波形のスペクトルグラフgは、横軸を波長とし、縦軸を分析処理部1101での演算によって得られた値(吸光度)としたものである。なお、作業者がスペクトルグラフgをタップすると、携帯端末110の表示制御部1102は、グラフを拡大/縮小して表示する。
【0085】
また、
図10に示す測定結果詳細画面D2は、一覧ボタンB2を有している。作業者が一覧ボタンB2をタップすると、携帯端末110の表示制御部1102は、測定データの一覧をディスプレイ112に表示する。
【0086】
加えて、
図10に示す測定結果詳細画面D2は、写真を追加または変更するための[写真を撮る]アイコンhと、写真表示欄iと、メモを追加または編集するための[メモ]アイコンjと、メモ欄kと、を表示する。これらは画面の一例であり、[メモ]アイコンjは、
図9に示した画面上にあってもよい。
【0087】
次に、測定した樹脂の写真添付について説明する。
【0088】
作業者が測定完了画面D1の[写真を添付]アイコンeをタップ、または、測定結果詳細画面D2の[写真を撮る]アイコンhをタップすると、携帯端末110の表示制御部1102は、携帯端末110のディスプレイ112に写真添付画面D3を表示する(
図11参照)。
【0089】
ここで、
図11は写真添付画面D3の一例を示す図である。
図11に示すように、写真添付画面D3は、[写真を撮る]アイコンlと、[アルバムの写真]アイコンmと、を表示する。
【0090】
作業者が[写真を撮る]アイコンlをタップすると、携帯端末110の情報取得部1103は、携帯端末110のカメラであるCMOSセンサ413を起動させる。作業者は、携帯端末110のCMOSセンサ413により、測定した樹脂を撮影する。携帯端末110の情報取得部1103は、撮影データをEEPROM404に保存する。携帯端末110の表示制御部1102は、測定した樹脂を撮影した撮影データを、測定結果詳細画面D2の写真表示欄iに表示する。
【0091】
一方、作業者が[アルバムの写真]アイコンmをタップすると、携帯端末110の情報取得部1103は、携帯端末110のEEPROM404に保存されている写真(撮影データ)の中から所望の写真(撮影データ)を選択可能とする。携帯端末110の表示制御部1102は、選択した撮影データを、測定結果詳細画面D2の写真表示欄iに表示する。
【0092】
ここで、
図12は測定結果詳細画面D2の別の一例を示す図である。
図12に示すように、測定結果詳細画面D2の写真表示欄iには、測定した樹脂を撮影した撮影データが表示される。
【0093】
次に、測定結果に対するメモの追加について説明する。
【0094】
作業者が測定完了画面D1の[メモ]アイコンjをタップすると、携帯端末110の表示制御部1102は、携帯端末110のディスプレイ112にメモ入力画面D4を表示する(
図13参照)。
【0095】
ここで、
図13はメモ入力画面D4の一例を示す図である。
図13に示すように、メモ入力画面D4は、メモ入力欄nと、保存用アイコンoと、を表示する。
【0096】
作業者がメモ入力画面D4のメモ入力欄nをタップすると、携帯端末110の情報取得部1103は、キーボードを表示する。作業者は、表示されたキーボードを用いて、測定結果に対して記録したい内容を入力する。入力内容としては、測定日時、測定場所、商談記録(面談先、場所など)、樹脂に記されたナンバーなどである。メモ入力欄nには、例えば、200文字まで入力可能とする。
【0097】
作業者がメモ入力画面D4のメモ入力欄nへの入力完了後に保存用アイコンoをタップすると、携帯端末110の情報取得部1103は、入力内容を試料108の分析に係るテキストデータとしてEEPROM404に保存する。
【0098】
また、例えば情報取得部1103が、試料108の分析に係る情報として、試料108の分析に係る音声データを取得する場合には、
図13に示すメモ入力画面D4に、音声入力(録音)用のボタンを備えてもよい。作業者がメモ入力画面D4の音声入力(録音)用のボタンをタップすると、携帯端末110の情報取得部1103は、マイク415から入力される試料108の分析に係る音声データを、テキストデータに変換する。表示制御部1102は、情報取得部1103が変換したテキストデータを、EEPROM404に保存する。なお、
図9や
図10に示す画面上に、音声入力(録音)用のボタンがあってもよい。
【0099】
なお、作業者が測定結果詳細画面D2のメモ欄kをタップすると、携帯端末110の表示制御部1102は、入力した内容の全文をメモとしてディスプレイ112に表示する。
【0100】
このように本実施形態によれば、試料108の分析に係る情報を、分析結果とともにエビデンスとして残すことができる。
【0101】
例えば、試料108の分析に係る情報として、試料108を撮影した撮影データを取得し、分析結果に対応付けてディスプレイ112に表示することにより、測定履歴に測定時の撮影データを添付することができるので、試料108である廃プラスチックの状態(汚れ、色、形状、混合物など)の確認を行うことができる。すなわち、廃プラスチックの状態によって適切な取引価格の実現(売り手は高く、買い手は適正な価格に設定できる)が可能になる。
【0102】
また、試料108の分析に係る情報として、試料108の分析に係るテキストデータを取得し、分析結果に対応付けてディスプレイ112に表示することにより、分析にかかるメモを残すことができるので、測定時の記録を残すことができる。これにより、遠隔での物品確認、取引の可否判断などが容易になる。
【0103】
また、本実施形態によれば、分析結果を、外部機器との間で共有可能な態様で記憶部(例えば、EEPROM404)に記憶するようにしたことにより、排出元および受け入れ先(リサイクル業者等)での廃プラスチックのデータの共有が可能になり、複数の機器で分析結果を共有することができる。これにより、双方の取引の安心および安全の確保が可能となる。また、データの共有による排出先、受け入れ先のマッチングの実現を図ることもできる。さらに、データベースの構築も容易となる。
【0104】
上述のように本実施形態によれば、従来の樹脂の取引では、取引対象物となる試料108に不純物が混ざっていても、引き取った側が泣き寝入りするしかなかったが、測定時の写真(撮影データ)やメモ(テキストデータ)を残すことでエビデンスとなり、エビデンスがあることで高価で取引ができるとともに、ビジネスの安全性を確保することができる。
【0105】
なお、本実施形態においては、携帯端末110が、分析処理部1101と表示制御部1102と情報取得部1103とを有するものとしたが、これに限るものではなく、分光器102が、分析処理部1101と表示制御部1102と情報取得部1103との一部または全部を有するものであってもよい。
【0106】
最後に、上述の実施の形態は、一例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことも可能である。また、実施の形態及び実施の形態の変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0107】
100 分析システム
102 分光器
108 試料
110 携帯端末
112 表示部
404 記憶部
1101 分析処理部
1102 表示制御部
1103 情報取得部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0108】