(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133069
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】液体吐出装置、および液体吐出方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20230914BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20230914BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230914BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
B41J2/165 303
B41J2/165 101
B41J2/175 119
B41J2/01 451
B41J2/165 207
B41J2/17 203
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117482
(22)【出願日】2022-07-22
(31)【優先権主張番号】P 2022038424
(32)【優先日】2022-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】永井 幸治
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB13
2C056EB38
2C056EB56
2C056EB59
2C056EC26
2C056EC54
2C056JA13
2C056JC13
2C056JC23
(57)【要約】
【課題】液体残量の検出精度に優れた液体吐出装置を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様に係る液体吐出装置は、液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドに供給する前記液体を貯留するカートリッジと、前記ヘッド内から前記液体を吸引することにより、前記ヘッドの状態を維持する維持手段と、少なくとも前記維持手段による維持動作に関する情報を含む動作情報に基づき、前記カートリッジにおける液体残量の補正値情報を出力する第1出力手段と、前記ヘッドによる吐出および前記維持手段による維持において消費される液体量の情報である消費液体量情報と、前記補正値情報と、に基づき、液体残量情報を出力する第2出力手段と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するヘッドと、
前記ヘッドに供給する前記液体を貯留するカートリッジと、
前記ヘッド内から前記液体を吸引することにより、前記ヘッドの状態を維持する維持手段と、
少なくとも前記維持手段による維持動作に関する情報を含む動作情報に基づき、前記カートリッジにおける液体残量の補正値情報を出力する第1出力手段と、
前記ヘッドによる吐出および前記維持手段による維持において消費される液体量の情報である消費液体量情報と、前記補正値情報と、に基づき、液体残量情報を出力する第2出力手段と、を備える、液体吐出装置。
【請求項2】
前記動作情報と前記補正値情報との関係を示す第1対応情報、および前記消費液体量情報と前記補正値情報と前記液体残量情報との関係を示す第2対応情報の少なくとも1つを記憶する記憶手段をさらに備え、
前記第1出力手段は、前記動作情報に基づき、前記記憶手段を参照して前記補正値情報を取得し、
前記第2出力手段は、前記消費液体量情報と、前記補正値情報と、に基づき、前記記憶手段を参照して前記液体残量情報を取得する、請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
記録媒体に画像を形成し、
前記動作情報は、前記画像が形成された前記記録媒体の枚数、前記液体吐出装置の稼働時間、前記維持動作の回数、および前記維持動作により排出される前記液体の第1排出量の少なくとも1つの情報を含む、請求項1または請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記動作情報は、前記ヘッドによる吐出動作に関する情報をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記ヘッドの状態を維持するための吐出である空吐出を前記ヘッドに実行させることができ、
前記動作情報は、前記液体の空吐出の回数、および前記空吐出により排出される前記液体の第2排出量の少なくとも1つの情報を含む、請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記ヘッドの吐出動作に関する情報は、画像形成のために前記ヘッドから吐出することにより消費される液体量、および空吐出のために前記ヘッドから吐出されることにより消費される液体量の少なくとも1つを含む、請求項4に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
画像形成のために前記ヘッドから吐出されることにより消費される液体量と、前記ヘッドによる前記液体の吐出状態を維持する動作により排出され、廃液タンクに貯留される液体量を表示する表示部を備える、請求項1または請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
液体吐出装置による液体吐出方法であって、前記液体吐出装置が、
ヘッドにより、液体を吐出し、
カートリッジにより、前記ヘッドに供給する前記液体を貯留し、
維持手段により、前記ヘッド内から前記液体を吸引することにより、前記ヘッドの状態を維持し、
第1出力手段により、少なくとも前記維持手段による維持動作に関する情報を含む動作情報に基づき、前記カートリッジにおける液体残量の補正値情報を出力し、
第2出力手段により、前記ヘッドによる吐出および前記維持手段による維持において消費される液体量の情報である消費液体量情報と、前記補正値情報と、に基づき、液体残量情報を出力する、液体吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、および液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヘッドからインクを吐出するインクジェット方式の液体吐出装置において、ヘッドに供給するインクを貯留するカートリッジ内のインク残量を吐出回数等から得られるインク消費量情報に基づき検出する技術が知られている。
【0003】
また、インク消費量情報に基づきインク残量を検出する技術において、ヘッドのクリーニングの実行回数とインク吐出量との関係を示すテーブルを用いて補正値を乗ずることにより、インク残量の検出値を補正する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、ユーザによる使用状況によっては液体吐出装置の状態が異なることにより、装置状態に応じた補正値を算出できず、インク等の液体の残量の検出精度が低下する場合があった。
【0005】
本発明は、液体残量の検出精度に優れた液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る液体吐出装置は、液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドに供給する前記液体を貯留するカートリッジと、前記ヘッド内から前記液体を吸引することにより、前記ヘッドの状態を維持する維持手段と、少なくとも前記維持手段による維持動作に関する情報を含む動作情報に基づき、前記カートリッジにおける液体残量の補正値情報を出力する第1出力手段と、前記ヘッドによる吐出および前記維持手段による維持において消費される液体量の情報である消費液体量情報と、前記補正値情報と、に基づき、液体残量情報を出力する第2出力手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、液体残量の検出精度に優れた液体吐出装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る液体吐出装置の構成例の図である。
【
図2】実施形態に係る液体吐出装置のハードウェア構成例のブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係る制御部の機能構成例のブロック図である。
【
図4】画像形成枚数と維持での消費インク量との関係例の図である。
【
図5】画像形成枚数情報と補正値情報との関係例の図である。
【
図6】装置の稼働時間情報と補正値情報との関係例の図である。
【
図7】維持動作回数情報と補正値情報との関係例の図である。
【
図8】空吐出回数情報と補正値情報との関係例の図である。
【
図9】第1実施形態に係る液体吐出装置の動作の第1例を示すフロー図である。
【
図10】第1実施形態に係る液体吐出装置の動作の第2例を示すフロー図である。
【
図11】第2実施形態に係る制御部の機能構成例のブロック図である。
【
図12】画像形成枚数と消費インク量との関係例の図である。
【
図13】ヘッド駆動累積時間と補正値情報との関係例を示す図である。
【
図14】累積吐出液滴量と補正値情報との関係例を示す図である。
【
図15】第2実施形態に係る液体吐出装置の動作例を示すフロー図である。
【
図16】操作パネルへの表示画面の一例を示す図である。
【
図17】外部PCに表示させるステータス画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る液体吐出装置について図面を参照しながら詳細に説明する。但し、以下に示す形態は、本実施形態の技術思想を具現化するための液体吐出装置を例示するものであって、以下に限定するものではない。また、実施形態に記載されている構成部の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさ、位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。また、以下の説明において、同一の名称、符号については同一もしくは同質の部材を示しており詳細説明を適宜省略する。
【0010】
[第1実施形態]
<液体吐出装置100の構成例>
図1は、実施形態に係る液体吐出装置100の構成の一例を示す図である。液体吐出装置100はシリアル型インクジェット記録装置である。なお、インクは液体の一例である。
【0011】
液体吐出装置100は、メインガイドロッド31と、サブ板金ガイド32と、キャリッジ33と、維持回復機構81と、を備える。メインガイドロッド31は、装置本体の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である。液体吐出装置100は、メインガイドロッド31及びサブ板金ガイド32によりキャリッジ33を摺動可能に保持し、主走査モータによってタイミングベルトを介して、キャリッジ33の主走査方向Aに移動走査する。
【0012】
キャリッジ33は、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)等の各色のインクを吐出するヘッド34a、34b、34cおよび34d(区別しないときはヘッド34という。)を備える。ヘッド34は、インクを吐出する。ヘッド34は、複数のノズルが主走査方向と直交する副走査方向Bに配列したノズル列を備え、インク吐出方向を下方に向けて装着されている。
【0013】
キャリッジ33は、ヘッド34に対応して各色のインクを供給するため、サブタンクを搭載している。サブタンクには、カートリッジ装填部1に着脱可能に装着される各色のカートリッジ10y、10c、10mおよび10kから、供給ポンプユニットにより、各色の供給チューブ36を介して各色のインクが補充供給される。カートリッジ10y、10c、10mおよび10k(区別しないときはカートリッジ10という。)は、ヘッド34に供給するインクを貯留する。キャリッジ33上には搬送メディア有無を検知する用紙検知センサ37が搭載されている。
【0014】
維持回復機構81は、キャリッジ33の主走査方向Aにおける一方側の非印字領域に設けられ、ヘッド34による吐出の状態を維持し、回復させるための構成部である。維持回復機構81は、ヘッド34の各ノズル面をキャピングするためのキャップ82a、82b、82cおよび82dと、ノズル面を払拭(ワイピング)するための払拭ユニット83と、を備えている。
【0015】
キャップ82aは、吸引機構を備えた吸引キャップであり、中に繊維状の吸収体を備えている。キャップ82aは、ヘッド34内からインクを吸引することにより、ヘッド34の状態を維持する維持手段の一例である。
【0016】
キャップ82b、82cおよび82dは、ヘッド34の保湿のみを行う保湿キャップである。液体吐出装置100は、ヘッド34の状態を維持するための維持動作の実行時には、対象とするヘッド34をキャップ82a上に移動し、吸引または空吐出処理を行う。
【0017】
例えば液体吐出装置100は、ヘッド34dの状態を維持する場合には、キャリッジ33の移動によりヘッド34dをキャップ82a上に配置し、維持動作を実行する。吸引や空吐出によりキャップ82a上に排出されたインクは、キャップ82aを介して吸引ポンプにより吸引され、ヘッド34dの維持回復機構81の下方側に備えられた廃液タンクに送液される。廃液タンクは、維持回復動作によって生じる廃液を収容するための交換可能なタンクである。
【0018】
<制御部101のハードウェア構成例>
図2は、液体吐出装置100が備える制御部101のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【0019】
制御部101は、CPU(Central Processing Unit)102と、ROM(Read Only Memory)103と、RAM(Random Access Memory)104と、NVRAM(Non‐Volatile RAM:不揮発性メモリ)105と、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)106と、を備える。また、制御部101は、I/F107と、印刷制御部108と、主走査モータ駆動部109と、副走査モータ駆動部110と、維持制御部111と、I/O113と、を備える。
【0020】
CPU102、ROM103、RAM104、NVRAM105、ASIC106、I/F107、印刷制御部108、主走査モータ駆動部109、副走査モータ駆動部110、維持制御部111、およびI/O113は、システムバスを介して相互に通信可能に接続している。また、制御部101は、操作パネル114と接続している。
【0021】
CPU102は、液体吐出装置100全体の制御を司る。ROM103は、CPU102が実行するプログラムや、その他補正に関するルックアップテーブル等の固定データ等を格納する。RAM104は、画像データ等を一時格納する。NVRAM105は、液体吐出装置100の各種動作情報や、インク等のサプライ消費量等の、液体吐出装置100の稼働によって変化するデータを格納保持する。不揮発性メモリは、液体吐出装置100の電源が遮断されている間もデータを保持できる。
【0022】
ASIC106は、画像形成するための印刷画像データに原稿画像データを変換する各種信号処理や並び替え等の画像処理を行うとともに、記録媒体の色情報に基づいて画像データを補正する。またASIC106は、その他装置全体を制御するための入出力信号を処理する。
【0023】
I/F107は、ホスト側との間でデータや信号を送受するインタフェースである。具体的には、I/F107は、情報処理装置、画像読取装置、撮像装置等のホストのプリンタドライバが生成した印刷データ等を、ケーブルやネットワーク等を介して受信する。つまり、制御部101に対する印刷データの生成出力は、ホスト側のプリンタドライバによって行なわれてもよい。CPU102は、I/F107に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析する。そして、ASIC106にて画像処理やデータの並び替え処理等が行なわれ、画像データが印刷制御部108やヘッドドライバ116に転送される。
【0024】
印刷制御部108は、ヘッド34を駆動させるための駆動波形を生成する。また印刷制御部108は、ヘッド34がノズルから液体を吐出するための圧力を発生する圧力発生手段を選択駆動させる画像データおよびそれに伴う各種データまたはノズル安定性のための画像形成を伴わない空吐出データを、ヘッドドライバ116に出力する。
【0025】
印刷制御部108は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータ構成となっていてもよい。印刷制御部108は、CPUがROM等に記憶されたプログラムを実行することによって所望の機能を実現する。印刷制御部108のCPUが実行するプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成しても良い。
【0026】
さらに、印刷制御部108のCPUが実行するプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることで提供するように構成してもよい。また、印刷制御部108のCPUが実行するプログラムを、インターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成してもよい。
【0027】
主走査モータ駆動部109は、主走査モータ117を駆動させる。主走査モータ117は、自身の駆動によりヘッド34を備えたキャリッジ33を主走査方向に移動させる。
【0028】
副走査モータ駆動部110は、副走査モータ118を駆動する。副走査モータ118は、駆動により、液体吐出ヘッド122による液体の吐出対象となる対象物を搬送する搬送ローラ123を動作させる。
【0029】
維持制御部111は、ヘッド34や、ヘッド34のノズルが汚損または乾燥した場合等に、維持回復機構81にインクを吸引する維持動作を実行させる。維持制御部111は、インクの吸引の他、ワイピングやヘッド34による空吐出等の維持動作を実行させることもできる。ここで、空吐出とは、ヘッド34の状態を維持するための吐出であって、記録媒体への画像形成には寄与しない吐出をいう。
【0030】
<制御部101の機能構成例>
図3は、制御部101の機能構成の一例を示すブロック図である。制御部101は、第1出力部11と、第2出力部12と、記憶部13と、を備える。制御部101は、第1出力部11および第2出力部12の各機能をCPU102がROM103等に記憶されたプログラムを実行すること等により実現する。制御部101は、記憶部13の機能をNVRAM105等により実現する。
【0031】
制御部101は、ヘッド34に供給するインクを貯留するカートリッジ10内のインクの残量を検出し、インク残量に関する情報であるインク残量情報Hを出力する。本実施形態では特に、制御部101は、ヘッド34内からインクを吸引するキャップ82aの劣化に応じてインク残量情報Hを補正できる。
【0032】
記憶部13は、動作情報Eと補正値情報Cとの関係を示す第1対応情報51、および消費インク量情報Gと補正値情報Cとインク残量情報Hとの関係を示す第2対応情報52の少なくとも1つを記憶する記憶手段の一例である。本実施形態では、記憶部13は、第1対応情報51および第2対応情報52の両方を記憶している。
【0033】
第1出力部11は、少なくともキャップ82aによる維持動作に関する情報を含む動作情報Eに基づき、カートリッジ10におけるインク残量の補正値情報Cを出力する第1出力手段の一例である。第1出力部11は、動作情報Eに基づき、記憶部13を参照して補正値情報Cを取得し、動作情報Eに基づいて演算により取得した補正値情報Cを第2出力部12に出力する。
【0034】
本実施形態では、動作情報Eは、画像形成枚数情報Nn、稼働時間情報Tn、維持動作回数情報Mnおよび第1排出量情報P1を含む。画像形成枚数情報Nnは、液体吐出装置100により画像が形成された記録媒体の枚数に関する情報である。稼働時間情報Tnは、液体吐出装置100が稼働した時間に関する情報である。維持動作回数情報Mnは、維持動作の実行回数に関する情報である。第1排出量情報P1は、維持動作により排出されるインク量に関する情報である。なお、動作情報Eは、画像形成枚数情報Nn、稼働時間情報Tn、維持動作回数情報Mnおよび第1排出量情報P1の全てを必ずしも含まなくてもよく、少なくとも1つを含めばよい。
【0035】
また本実施形態では、液体吐出装置100は、空吐出をヘッド34に実行させることができ、動作情報Eは、ヘッド34による吐出動作に関する情報として、空吐出回数情報Fnおよび第2排出量情報P2を含む。空吐出回数情報Fnは、ヘッド34により空吐出を行った回数に関する情報である。第2排出量情報P2は、空吐出により排出されるインク量に関する情報である。なお、動作情報Eは、空吐出回数情報Fnおよび第2排出量情報P2の全てを必ずしも含まなくてもよく、少なくとも1つを含めばよい。
【0036】
第2出力部12は、ヘッド34による吐出およびキャップ82aによる維持において消費されるインク量の情報である消費インク量情報Gと、補正値情報Cと、に基づき、インク残量情報Hを出力する第2出力手段の一例である。
【0037】
例えば、第2出力部12は、ヘッド34によるインクの吐出回数をソフトウェアによりカウントし、カウント結果である累積吐出回数に吐出1回当たりのインク吐出量を乗じることによりインクの累積吐出量を算出する。また第2出力部12は、キャップ82aによる維持動作の実行回数をソフトウェアによりカウントし、カウント結果である累積排出回数に維持動作1回当たりのインク排出量を乗じることによりインクの累積排出量を算出する。第2出力部12は、これらの累積吐出量と累積排出量を加算することにより、消費インク量情報Gを演算により取得できる。
【0038】
第2出力部12は、消費インク量情報Gと、補正値情報Cと、に基づき、記憶部13を参照してインク残量情報Hを取得し、取得したインク残量情報Hを外部機器に出力できる。外部機器は例えば操作パネル114であり、液体吐出装置100は、インク残量情報Hを操作パネル114に表示し、ユーザに認識させることができる。但し、外部機器は操作パネル114に限らず、外部PC(Personal Computer)等であってもよい。なお、本明細書において、ユーザには、液体吐出装置100の使用者、管理者等が含まれる。
【0039】
<液体吐出装置100の状態に応じた消費インク量変化>
図4は、画像形成枚数と維持での消費インク量との関係の一例を示す図である。画像形成枚数は、液体吐出装置100により画像を形成した記録媒体の枚数を意味する。実線のグラフにより示した理論値41は、ヘッド34による吐出回数やキャップ82aによる維持動作の実行回数をソフトウェアによりカウントすることによって求めた消費インク量の理論値を表す直線を示している。破線のグラフにより示した実測値42は、消費インク量を実際に測定した実測値において、消費インク量が減少している部分について直線近似した直線を示している。
【0040】
理論値41は、維持動作における吸引等により消費されるインク量を予め定めた値であるため、液体吐出装置100の画像形成枚数が増加しても変化することは無い。これに対し、実測値42は、画像形成枚数の増加に伴って減少する。これは、キャップ82aに経時劣化が生じて吸引量が減少するためである。
【0041】
液体吐出装置100による画像形成枚数が増加すると、自動で行われる維持動作や空吐出の実行回数が増えたり、またユーザの指示により行われる維持動作の実行回数が増えたりすること等により、キャップ82aに経時劣化が生じる。また画像形成を行わなくても、放置時におけるヘッド34の乾燥を防止するための維持動作が自動で行われるため、稼働時間が長くなると、維持動作や空吐出の実行回数が増加し、キャップ82a等に経時劣化が生じる。
【0042】
維持動作や空吐出による廃液は維持回復機構81のキャップ82a上において行われる。例えば、維持動作の実行回数の増加に従い、吸収体上に排出されたインクが増粘し、通過性が低下することによりキャップ82aは劣化する。あるいは空吐出されたインクがキャップ82aのゴム部材に飛散し、硬化することにより、キャップ82aは劣化する。また、ヘッド34とキャップ82aの密着性が低下し、吸引量が低下することによりキャップ82aは劣化する。さらにキャップ82aを構成する素材であるゴム自体も経時劣化により硬化し、吸引量が低下することによりキャップ82aが劣化する。
【0043】
以上のように、液体吐出装置100の状態、例えばキャップ82aの劣化状態に応じて吸引量が減少することによって、消費インク量は減少する。画像形成枚数が増加するほど、実測値42は理論値41よりも少なくなる。このため、ヘッド34による吐出およびキャップ82aによる維持動作において消費されるインク量を、吐出回数および維持動作の実行回数に基づいて検出すると検出誤差が生じる。
【0044】
本実施形態では、制御部101は、ヘッド34内からインクを吸引するキャップ82aの劣化に応じたインク量変化を、動作情報Eに基づいて補正することにより、インク残量情報Hを補正する。例えば動作情報Eの一例としての画像形成枚数情報Nnに応じた実測値42の変化情報を予め第1対応情報51として記憶部13に記憶しておく。そして、画像形成枚数情報Nnに応じて消費インク量情報Gを、補正値情報Cを用いて補正することにより、正確なインク残量情報Hを取得可能となる。なお、
図4では、画像形成枚数情報Nnに応じた消費インク量変化のグラフを示したが、液体吐出装置100の稼働時間に応じた消費インク量変化も同様のグラフとなる。
【0045】
<第1対応情報51について>
図5から
図8は、いずれも動作情報Eと補正値情報Cとの対応関係を示す第1対応情報51を例示する図である。
図5は、画像形成枚数情報Nnと補正値情報Cとの関係を示す図である。
図6は、稼働時間情報Tnと補正値情報Cとの関係を示す図である。
図7は、維持動作回数情報Mnと補正値情報Cとの関係を示す図である。
図8は、空吐出回数情報Fnと補正値情報Cとの関係を示す図である。
【0046】
画像形成枚数情報Nn、稼働時間情報Tn、維持動作回数情報Mnおよび空吐出回数情報Fnは、いずれも動作情報Eの一例である。なお、
図5から
図8では、一例として情報数を10とし、0から10までの添字nを用いて情報を区別しているが、情報の数は10に限らず、10よりも小さくてもよいし、大きくてもよい。
【0047】
維持動作回数情報Mnは、維持動作1回当たりのインク排出量を乗じることにより、第1排出量情報P1に置換可能である。同様に、空吐出回数情報Fnは、空吐出1回当たりのインク排出量を乗じることにより、第2排出量情報P2に置換可能である。
【0048】
初期の消費インク量のソフトカウント値として吸引量Xが定められている時、維持動作時のキャップ82aの吸引によるカートリッジ10の消費インク量のソフトカウント値SCはSC=Xで表される。例えば画像形成枚数情報Nnを動作情報Eとし、経時劣化の影響を考慮した補正値情報Cとして、A0、A1、・・・、Anを用いる場合、消費インク量SCnは、SCn=An・Xと表される。画像形成枚数情報Nnや稼働時間情報Tnを動作情報Eとした場合には、画像形成枚数や稼働時間に応じた維持動作と空吐出の両者によるヘッド34の汚損具合を推定できる。
【0049】
図5および
図6では、画像形成枚数情報Nnや稼働時間情報Tnの動作情報Eに対して、1つの補正値情報Cを持つ例を示したが、複数の補正値情報Cを選択できるようにしてもよい。
【0050】
キャップ82a等を含む維持回復機構81は、液体吐出装置100ごとで個体差があり、液体吐出装置100の設置場所の温湿度環境等によっても異なる。このため補正値情報Cは、温湿度環境等に応じて複数の補正値情報Cのうちから選択可能であってもよい。
図7は、維持動作回数情報Mnごとに複数の補正値情報Cが対応付けられた例を示している。
図8は、空吐出回数情報Fnごとに複数の補正値情報Cが対応付けられた例を示している。
図7および
図8は、複数の補正値情報Cとして0行目から4行目までの4つの補正値情報Cを示している。
【0051】
例えば、0行目の補正値情報Cは劣化程度が最も小さい補正に対応し、行数が増えるほど補正値情報Cは劣化程度が大きい補正に対応するものとする。そして、第1出力部11は、劣化程度が小さいことが予測される場合には、補正値情報Cとして例えば0行目を選択でき、劣化程度が大きいことが予測される場合には、補正値情報Cとして例えば3行目を選択できる。
【0052】
複数の補正値情報Cは、劣化程度に応じて、ユーザやサービスマンが選択可能であってもよいし、液体吐出装置100の平均的な使用環境情報から、液体吐出装置100が補正値を自動選択可能であってもよい。
【0053】
初期の消費インク量のソフトカウント値として吸引量Xが定められている時、維持動作回数情報Mn、第1排出量情報P1、空吐出回数情報Fn、第2排出量情報P2を動作情報Eとして用いる場合の消費インク量のソフトカウント値SCmnはSCmn=Cmn・X+Dmn・Xとして表される。画像形成枚数情報Nnや稼働時間情報Tnを動作情報Eとした場合には、画像形成枚数や稼働時間に応じた維持動作と空吐出の両者による汚損具合を推定できる。維持動作回数情報Mnや空吐出回数情報Fnを動作情報Eとすると、汚損は両者により引き起こされるため、両者を加算することにより詳細な推定が可能となる。
【0054】
<液体吐出装置100の動作例>
図9は、液体吐出装置100によるインク残量の検出動作の第1例を示すフローチャートである。
図9は、画像形成枚数情報Nnを動作情報Eとしたとき、インク残量情報Hを取得し、インク残量の検出値として出力する動作を示している。
【0055】
まず、ステップS91において、液体吐出装置100は、維持動作を開始するか否かを制御部101により判定する。
【0056】
ステップS91において、維持動作を開始しないと判定された場合には(ステップS91、NO)、液体吐出装置100は、動作を終了する。一方、維持動作を開始すると判定された場合には(ステップS91、YES)、液体吐出装置100は、ステップS92において、制御部101により、動作情報Eとして画像形成枚数情報Nnを取得する。
【0057】
続いて、ステップS93において、液体吐出装置100は、制御部101により、画像形成枚数情報Nnが示す画像形成枚数が所定の画像形成枚数を超えたか否かを判定する。
【0058】
ステップS93において、超えたと判定された場合には(ステップS93、YES)、液体吐出装置100は、ステップS94に動作を移行し、超えていないと判定された場合には(ステップS93、NO)、液体吐出装置100は、ステップS95に動作を移行する。
【0059】
続いて、ステップS94において、液体吐出装置100は、制御部101の第1出力部11により、画像形成枚数情報Nnに基づき、記憶部13における第1対応情報51を参照して、補正値情報Cを取得する。
【0060】
続いて、ステップS95において、液体吐出装置100は、制御部101の第2出力部12により、ソフトウェアカウントにより求めた消費インク量情報Gと、補正値情報Cと、に基づき、記憶部13における第2対応情報52を参照して、インク残量情報Hを取得する。液体吐出装置100は、取得したインク残量情報Hを外部機器に出力する。
【0061】
以上のようにして、液体吐出装置100は、インク残量を検出できる。なお、
図9では、画像形成枚数情報Nnを動作情報Eとする動作を例示したが、動作情報Eは稼働時間情報Tnであってもよい。
【0062】
図10は、液体吐出装置100によるインク残量の検出動作の第2例を示すフローチャートである。
図10は、維持動作及び空吐出においてインク残量情報Hを取得し、インク残量の検出値として出力する動作を示している。
【0063】
まず、ステップS101において、液体吐出装置100は、維持動作を開始するか否かを制御部101により判定する。
【0064】
ステップS101において、維持動作を開始しないと判定された場合には(ステップS101、NO)、液体吐出装置100は、ステップS104に動作を移行する。一方、維持動作を開始すると判定された場合には(ステップS101、YES)、液体吐出装置100は、ステップS102において、制御部101の第1出力部11により、動作情報Eとして維持動作回数情報Mnを取得する。
【0065】
続いて、ステップS103において、液体吐出装置100は、制御部101の第1出力部11により、維持動作回数情報Mnに基づき、記憶部13における第1対応情報51を参照して、補正値情報Cを取得する。
【0066】
続いて、ステップS104において、液体吐出装置100は、制御部101により、空吐出を行うか否かを判定する。
【0067】
ステップS104において、行わないと判定された場合には(ステップS104、NO)、液体吐出装置100は、ステップS107に動作を移行する。一方、行うと判定された場合には(ステップS104、YES)、液体吐出装置100は、ステップS105において、制御部101の第1出力部11により、動作情報Eとして空吐出回数情報Fnを取得する。
【0068】
続いて、ステップS106において、液体吐出装置100は、制御部101の第1出力部11により、空吐出回数情報Fnに基づき、記憶部13における第1対応情報51を参照して、補正値情報Cを取得する。
【0069】
続いて、ステップS107において、液体吐出装置100は、制御部101の第2出力部12により、ソフトウェアカウントにより求めた消費インク量情報Gと、補正値情報Cと、に基づき、記憶部13における第2対応情報52を参照して、インク残量情報Hを取得する。液体吐出装置100は、取得したインク残量情報Hを外部機器に出力する。
【0070】
以上のようにして、液体吐出装置100は、インク残量を検出できる。
【0071】
<液体吐出装置100の作用効果>
以上説明したように、液体吐出装置100は、ヘッド34と、カートリッジ10と、キャップ82a(維持手段)と、第1出力部11(第1出力手段)と、第2出力部12(第2出力手段)と、を備える。第1出力部11は、少なくともキャップ82aによる維持動作に関する情報を含む動作情報Eに基づき、カートリッジ10におけるインク残量の補正値情報Cを出力する。第2出力部12は、ヘッド34による吐出およびキャップ82aによる維持において消費される消費インク量情報Gと、補正値情報Cと、に基づき、インク残量情報Hを出力する。
【0072】
例えば、キャップ82aの経時劣化によって、キャップ82aによるインクの吸引量が減少すると、ソフトウェアカウント等に基づいて検出されるインク残量に誤差が生じる場合がある。本実施形態では、ソフトウェアカウント等に基づいて取得される消費インク量情報Gと、動作情報Eに基づいて取得される補正値情報Cと、に基づき、インク残量情報Hを取得するため、キャップ82aの経時劣化によるインク残量の検出誤差を低減できる。これにより、本実施形態では、インク残量の検出精度に優れた液体吐出装置100を提供できる。
【0073】
また、液体吐出装置100は、動作情報Eと補正値情報Cとの関係を示す第1対応情報51、および消費インク量情報Gと補正値情報Cとインク残量情報Hとの関係を示す第2対応情報52の少なくとも1つを記憶する記憶部13(記憶手段)をさらに備える。第1出力部11は、動作情報Eに基づき、記憶部13を参照して補正値情報Cを取得でき、第2出力部12は、消費インク量情報Gと、補正値情報Cと、に基づき、記憶部13を参照してインク残量情報Hを取得できる。なお、液体吐出装置100は、記憶部13を必ずしも備えなくてもよく、外部装置が備える記憶部13を参照して、補正値情報Cおよびインク残量情報Hをそれぞれ取得することもできる。
【0074】
また、本実施形態では、動作情報Eは、画像形成枚数情報Nn、稼働時間情報Tn、維持動作回数情報Mnおよび第1排出量情報P1を含む。本実施形態では、様々な情報に基づいてインク残量情報Hを取得することにより、インク残量の検出精度を向上させ、また検出のロバスト性を向上させることができる。動作情報Eは、画像形成枚数情報Nn、稼働時間情報Tn、維持動作回数情報Mnおよび第1排出量情報P1の全てを含まず、少なくとも1つを含んでもよい。
【0075】
また、本実施形態では、動作情報Eは、空吐出回数情報Fnおよび第2排出量情報P2を含む。これにより、さらに様々な情報に基づいてインク残量情報Hを取得できるため、インク残量の検出精度を向上させ、また検出のロバスト性を向上させることができる。動作情報Eは、空吐出回数情報Fnおよび第2排出量情報P2の両方を含まず、少なくとも1つを含んでもよい。
【0076】
[第2実施形態]
第2実施形態に係る液体吐出装置100aについて説明する。なお、第1実施形態と同じ構成部には同じ符号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0077】
<制御部101aの機能構成例>
図11は、液体吐出装置100aが有する制御部101aの機能構成の一例を示すブロック図である。制御部101aは、記憶部13aと、第3出力部14と、第2出力部12aと、を有する。制御部101aは、第1実施形態に係る制御部101の機能に加えて、ヘッド34の状態変化に応じてインク残量情報Hを補正することができる。
【0078】
記憶部13aは、ヘッド34の吐出動作に関する情報を含む動作情報Iと補正値情報Dとの関係を示す情報である第3対応情報53を記憶する。
【0079】
第3出力部14は、動作情報Iに基づき、記憶部13aを参照して補正値情報Dを取得し、取得した補正値情報Dを第2出力部12aに出力する。なお、第3出力部14は、記憶部13aを参照せずに、動作情報Iに基づいて演算により補正値情報Dを取得してもよい。第2出力部12aは、補正値情報Dに基づいて、インク残量情報Hを出力する。
【0080】
動作情報Iは、ヘッド駆動累積時間情報THn、累積吐出液滴量情報MHn等を含む。ヘッド駆動累積時間情報THnは、インクを吐出するためにヘッド34を駆動させた時間に関する情報である。ヘッド駆動累積時間情報THn、画像形成のためにヘッド34から吐出されることにより消費されるインク量に対応する。累積吐出液滴量情報MHnは、ヘッド34から吐出されたインク量に関する情報である。累積吐出液滴量情報MHnは、空吐出のためにヘッド34から吐出されることにより消費されるインク量に対応する。動作情報Iは、ヘッド駆動累積時間情報THnおよび累積吐出液滴量情報MHnのうち、少なくとも1つを含んでもよい。また、動作情報Iは、ヘッド駆動累積時間情報THnおよび累積吐出液滴量情報MHnの他、ヘッド駆動周波数に関する情報、大滴、中滴、小滴等の吐出するインク滴の種類に関する情報等を含んでもよい。
【0081】
<画像形成枚数と消費インク量との関係>
図12~
図14を参照して、画像形成枚数と消費インク量との関係を説明する。
図12は、液体吐出装置100aによる画像形成枚数と消費インク量との関係の一例を示す図である。
図13および
図14は、動作情報Iと補正値情報Dとの対応関係を示す第3対応情報53を例示する図である。
図13は、ヘッド駆動累積時間情報THnと補正値情報Dとの関係を示す図である。
図14は、累積吐出液滴量情報MHnと補正値情報Dとの関係を示す図である。
【0082】
図12において、横軸の画像形成枚数は、液体吐出装置100aにより画像を形成した記録媒体の枚数を意味する。実線のグラフにより示した理論値300は、ヘッド34による吐出回数をソフトウェアによりカウントすることによって求めた消費インク量の理論値を表す。一点鎖線のグラフにより示した第1実測値301は、消費インク量の実測値において、消費インク量が増加している部分を直線近似したものを表す。破線のグラフにより示した第2実測値302は、消費インク量の実測値において、消費インク量が減少している部分を直線近似したものを表す。
【0083】
理論値300は、吐出により消費されるインク量を予め定めた値であるため、液体吐出装置100の画像形成枚数が増加しても変化しない。これに対し、第1実測値301では、画像形成枚数の増加に伴って消費インク量が増加する。例えば画像形成によりヘッド34の駆動時間が長くなったり、吐出したインク量が多くなったりすると、その間、ヘッド34の自動クリーニングにおいて払拭ユニット83によるワイピングが複数回行われる。このワイピングにより、ヘッド34の表面に形成された撥水膜が劣化し、ヘッド34のノズルにおいて、インクと大気との界面であるメニスカスの形成が適正に行われなくなる。この結果、ノズル近傍にインク溜まりができたり、吐出の際にインク滴が球体にならず、飛沫になったりすることにより、第1実測値301では、画像形成枚数の増加に伴って消費インク量が増加する。
【0084】
一方、第2実測値302では、画像形成枚数の増加に伴って消費インク量が減少する。例えば液体吐出装置100aの使用頻度が低いことにより画像形成枚数が少なくなる。あるいは、長期間にわたって使用頻度が少ない場合には、吐出による消費インク量と、消費に伴ってカートリッジから供給される新鮮なインク量が少なくなる。このため、ノズル内でインクが乾燥し、増粘または固化したインクがノズル内部や周囲に堆積することにより、インクの流路が狭くなって吐出量が少なくなる。画像形成枚数の増加に伴う消費インク量の減少は、画像形成枚数と液体吐出装置100aの稼働時間の両方が関係しており、単位時間当たりの画像形成枚数が少ない条件で生じる。第1実測値301と第2実測値302とでは、画像形成枚数が同じであっても、その枚数を形成するために要した時間が異なっている。第2実測値302において所定枚数の画像形成のために要した時間は、第1実測値301において所定枚数の画像形成のために要した時間よりも長い。
【0085】
図11に示した制御部101aは、消費インク量が第1実測値301または第2実測値302のどちらの傾向であるかを判定できる。例えば、制御部101aは、液体吐出装置100aの使用履歴情報から単位時間当たりの画像形成枚数を算出する。制御部101aは、算出した画像形成枚数が所定の画像形成枚数閾値を超えている場合には、消費量が増加する第1実測値301の傾向であると判定し、画像形成閾値未満である場合には、消費量が減少する第2実測値302の傾向であると判定する。このような傾向の判定は、任意のタイミングに行われてもよいし、定期的に行われてもよい。
【0086】
制御部101aは、
図13に示すように、稼働時間情報Tnとヘッド駆動累積時間情報THnの関係において、傾向判定のために、R1=(TH1-TH0)/(T1-T0)、R2=(TH2-TH1)/(T2-T1)、・・・R10=(TH10-TH9)/(T10-T9)のように、所定の稼働時間範囲内に駆動されたヘッド駆動累積時間の割合Rを取得してRAM104等に記憶する。ここでは例としてT10までを示しているが、実際にはT10まで計算しなくてもよいし、T10以上であってもよい。制御部101aは、割合Rの各値または累積和が予め定めた稼働時間または画像形成枚数の閾値を上回っていれば第1実測値301の傾向であると判定し、下回っていれば第2実測値302の傾向であると判定できる。
【0087】
上記と同様に、制御部101aは、
図14に示すように、稼働時間情報Tnとヘッド34の累積吐出液滴量情報MHnとの関係において、R1=(MH1-MH0)/(T1-T0)、R2=(MH2-MH1)/(T2-T1)、・・・R10=(MH10-MH9)/(T10-T9)のように、所定の稼働時間範囲内に駆動されたヘッド34の累積吐出液滴量の割合Rを取得してRAM104等に記憶する。制御部101aは、この割合Rに基づき、第1実測値301の傾向であるか、または第2実測値302の傾向であるかを判定できる。
【0088】
ヘッド34の状態変化の一例として、制御部101aは、ヘッド34から吐出されるインク量変化を動作情報Iに基づいて補正することにより、インク残量情報Hを補正する。例えば制御部101aは、動作情報Iの一例として、ヘッド34における消費インク量の傾向と画像形成枚数情報Nnに応じた第1実測値301または第2実測値302の変化情報を予め第1対応情報51として記憶部13aにより記憶する。そしてヘッド駆動累積時間情報THnや累積吐出液滴量情報MHnに応じて消費インク量情報Gを、ヘッド型のインク吐出における補正値情報Dを用いて補正することにより、正確なインク残量情報Hを取得できる。
【0089】
補正されるヘッド34からのインク吐出量は、画像形成するための吐出だけでない。このインク吐出量には、液体吐出装置100aを放置した後、再び画像形成を行う前に増粘インクを排出するための空吐出、画像形成中または画像形成後にノズルごとの使用頻度差を解消するための空吐出、クリーニングまたはリフレッシュ動作におけるノズルのメニスカス形成のための空吐出等の維持動作に関わる吐出も含まれる。換言すると、補正されるヘッド34からのインク吐出量は、ヘッド34からの全てのインク吐出量に対応する。
【0090】
図13および
図14において、制御部101aは、単位時間当たりのヘッド34の駆動時間や、単位時間当たりのヘッド34の吐出液滴量が所定の閾値を超えているか否かにより、消費インク量が増加する傾向であるか、または消費インク量が減少する傾向であるかを判定し、この判定結果に応じて、ROM内に格納されている補正値情報Dを取得してもよい。
図13の例では、ヘッド34の累積駆動時間に応じて、
図14の例では、ヘッド34の累積吐出液滴量に応じてヘッド34からのインク吐出量情報が補正されている。また、制御部101aは、例えばある時点までは消費インク量が増加する傾向であり、以降は消費インク量が減少する傾向であると判定された場合においても、それまでの消費インク量と、傾向に応じた消費量情報と、を用いて最終的な補正値情報Dを算出してもよい。
【0091】
<液体吐出装置100aの動作例>
図15は、液体吐出装置100aの動作の一例を示すフローチャートである。
図15は、ヘッド34からのインク吐出においてインク残量情報Hを取得し、インク残量の検出値として出力する動作を示している。
【0092】
まず、ステップS151において、液体吐出装置100aは、制御部101aにより、吐出動作を開始するか否かを判定する。
【0093】
ステップS151において開始しないと判定された場合には(ステップS151、NO)、液体吐出装置100aは、ステップS159に動作を移行する。一方、開始すると判定された場合には(ステップS151、YES)、ステップS152において、液体吐出装置100aは、制御部101aにより、吐出が画像形成のための吐出であるか否かを判定する。
【0094】
ステップS152において、画像形成のための吐出であると判定された場合には(ステップS111、YES)、S153において、液体吐出装置100aは、制御部101aにより、RAM104に格納された画像形成に使用される画像データを取得し、この画像データから消費インク量を算出する。
【0095】
続いて、ステップS154において、液体吐出装置100aは、第3出力部14により、動作情報Iとして例えばヘッド駆動累積時間情報THnを取得する。
【0096】
続いて、ステップS155において、液体吐出装置100aは、第3出力部14により、ヘッド駆動累積時間情報THnに基づき、記憶部13における第3対応情報53を参照して、補正値情報Dを取得する。
【0097】
一方、ステップS152において、画像形成のための吐出ではないと判定された場合には(ステップS152、NO)、S156において、液体吐出装置100aは、制御部101aにより、ROM103に格納された各空吐出における消費インク量データから、空吐出情報としての消費インク量を算出する。
【0098】
続いて、ステップS157において、液体吐出装置100aは、第3出力部14により、動作情報Iとして例えばヘッド駆動累積時間情報THnを取得する。
【0099】
続いて、ステップS158において、液体吐出装置100aは、第3出力部14により、ヘッド駆動累積時間情報THnに基づき、記憶部13における第3対応情報53を参照して、補正値情報Dを取得する。
【0100】
続いて、ステップS159において、液体吐出装置100aは、第2出力部12aにより、ソフトウェアカウントにより求めた消費インク量情報Gと、補正値情報Dと、に基づき、記憶部13における第2対応情報52を参照して、インク残量情報Hを取得する。液体吐出装置100aは、取得したインク残量情報Hを外部に出力する。
【0101】
以上のようにして、液体吐出装置100aは、インク残量を検出できる。
【0102】
<インク量情報の表示画面例>
図16および
図17を参照して、インク量に関する情報の表示画面について説明する。
図16は、液体吐出装置100aの操作パネル114への表示画面141の一例を示す図である。
図17は、外部PCにインストールされたプリンタドライバにより、外部PCに表示されるステータス画面142の一例を示す図である。
【0103】
表示画面141を表示する操作パネル114は、画像形成のためにヘッド34から吐出されることにより消費されるインク量と、ヘッド34によるインクの吐出状態を維持する動作により排出され、廃液タンクに貯留されるインク量を表示する表示部の一例である。但し、表示画面141は、操作パネル114以外の表示部に表示されてもよい。
【0104】
図16に示すように、表示画面141は、現在のインク量を示す第1画面411と、維持動作により排出される廃インクを貯留する廃液タンクの廃液量を示す第2画面412と、を含む。第1画面411は、画像形成後の情報を表示する印刷後情報ボタン413を含む。第2画面412は、第1補正ONボタン414と、第1補正OFFボタン415と、を含む。
【0105】
印刷後情報ボタン413が操作されると、画像・像の形成によるインク消費または維持動作による廃液量の増加を予測したインク情報が表示画面141に表示される。
図16では、インク残量が変化した例が表示されている。ヘッド34の経時変化の状態により算出された補正量に基づき、このインク残量が予測される。ヘッド34の経時変化による補正を行わない場合には、自動補正OFF415の操作により、自動補正の計算が行われない設定となり、この場合のインク残量情報をインク量情報として表示することができる。ヘッド34の経時変化による補正を行う場合には、自動補正ON414の操作により、自動補正の計算が行われる設定となる。
【0106】
図17に示すように、ステータス画面142は、現在のインク量を示す第3画面421と、維持動作により排出される廃インクを貯留する廃液タンクの廃液量を示す第4画面422と、第2補正ONボタン423と、第2補正OFFボタン424と、を含む。液体吐出装置100aは、第2補正ONボタン423および第2補正OFFボタン424補正OFFの操作に応じて、補正を行う場合と行わない場合との間で切り替えて、インク量を算出し、表示させることができる。
【0107】
<液体吐出装置100aの作用効果>
例えば、ヘッド34の経時劣化によってインク吐出量が変化すると、ソフトウェアカウント等に基づいて検出されるインク残量に誤差が生じる場合がある。本実施形態では、ソフトウェアカウント等に基づいて取得される消費インク量情報Gと、動作情報Iに基づいて取得される補正値情報Dと、に基づき、インク残量情報Hを取得するため、ヘッド34の経時劣化によるインク残量の検出誤差を低減できる。これにより、本実施形態では、インク残量の検出精度に優れた液体吐出装置100aを提供できる。
【0108】
また、本実施形態では、液体吐出装置100aの状態に応じて算出された消費インク量や廃液量情報をユーザに通知することができる。さらに、本実施形態では、ユーザが補正の有無を選択できるようにすることで、液体吐出装置100aの状態やばらつきに応じて生じる誤差の影響を抑制することができる。
【0109】
[その他の好適な実施形態]
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されない。すなわち、本発明の範囲内で種々の変形および改良が可能である。
【0110】
実施形態に係る液体は、画像形成用のインクに限らず、他の液体であってもよい。他の液体は、例えば三次元造形のために用いられる液体等である。実施形態において、ヘッド34から吐出される液体は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどでもよい。
【0111】
記録媒体は、液体が付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、車体、建材、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0112】
実施形態に係る液体吐出装置として、ここでは、ヘッドが移動するシリアル型インクジェット記録装置を説明したが、実施形態は、ヘッドが移動しないライン型インクジェット記録装置にも適用可能である。
【0113】
また実施形態は、液体吐出方法も含む。例えば液体吐出方法は、液体吐出装置による液体吐出方法であって、前記液体吐出装置が、ヘッドにより、インクを吐出し、カートリッジにより、前記ヘッドに供給する前記インクを貯留し、維持手段により、前記ヘッド内から前記インクを吸引することにより、前記ヘッドの状態を維持し、第1出力手段により、少なくとも前記維持手段による維持動作に関する情報を含む動作情報に基づき、前記カートリッジにおけるインク残量の補正値情報を出力し、第2出力手段により、前記ヘッドによる吐出および前記維持手段による維持において消費されるインク量の情報である消費インク量情報と、前記補正値情報と、に基づき、インク残量情報を出力する。このような液体吐出方法により、上述した液体吐出装置と同様の効果を得ることができる。
【0114】
実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【0115】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 液体を吐出するヘッドと、前記ヘッドに供給する前記液体を貯留するカートリッジと、前記ヘッド内から前記液体を吸引することにより、前記ヘッドの状態を維持する維持手段と、少なくとも前記維持手段による維持動作に関する情報を含む動作情報に基づき、前記カートリッジにおける液体残量の補正値情報を出力する第1出力手段と、前記ヘッドによる吐出および前記維持手段による維持において消費される液体量の情報である消費液体量情報と、前記補正値情報と、に基づき、液体残量情報を出力する第2出力手段と、を備える、液体吐出装置である。
<2> 前記動作情報と前記補正値情報との関係を示す第1対応情報、および前記消費液体量情報と前記補正値情報と前記液体残量情報との関係を示す第2対応情報の少なくとも1つを記憶する記憶手段をさらに備え、前記第1出力手段は、前記動作情報に基づき、前記記憶手段を参照して前記補正値情報を取得し、前記第2出力手段は、前記消費液体量情報と、前記補正値情報と、に基づき、前記記憶手段を参照して前記液体残量情報を取得する、前記<1>に記載の液体吐出装置である。
<3> 記録媒体に画像を形成し、前記動作情報は、前記画像が形成された前記記録媒体の枚数、前記液体吐出装置の稼働時間、前記維持動作の回数、および前記維持動作により排出される前記液体の第1排出量の少なくとも1つの情報を含む、前記<1>または前記<2>に記載の液体吐出装置である。
<4> 前記動作情報は、前記ヘッドによる吐出動作に関する情報をさらに含む、前記<1>から前記<3>のいずれか1つに記載の液体吐出装置である。
<5> 前記ヘッドの状態を維持するための吐出である空吐出を前記ヘッドに実行させることができ、前記動作情報は、前記液体の空吐出の回数、および前記空吐出により排出される前記液体の第2排出量の少なくとも1つの情報を含む、前記<4>に記載の液体吐出装置である。
<6> 前記ヘッドの吐出動作に関する情報は、画像形成のために前記ヘッドから吐出することにより消費されるインク量、および空吐出のために前記ヘッドから吐出されることにより消費されるインク量の少なくとも1つを含む、前記<4>に記載の液体吐出装置である。
<7> 画像形成のために前記ヘッドから吐出することにより消費されると予測される液体量と、前記ヘッドによる前記液体の吐出状態を維持する動作により排出され、廃液タンクに貯留される液体量を表示する表示部を備える、前記<1>から前記<6>のいずれか1つに記載の液体吐出装置である。
<8> 液体吐出装置による液体吐出方法であって、前記液体吐出装置が、ヘッドにより、液体を吐出し、カートリッジにより、前記ヘッドに供給する前記液体を貯留し、維持手段により、前記ヘッド内から前記液体を吸引することにより、前記ヘッドの状態を維持し、第1出力手段により、少なくとも前記維持手段による維持動作に関する情報を含む動作情報に基づき、前記カートリッジにおける液体残量の補正値情報を出力し、第2出力手段により、前記ヘッドによる吐出および前記維持手段による維持において消費される液体量の情報である消費液体量情報と、前記補正値情報と、に基づき、液体残量情報を出力する、液体吐出方法である。
【符号の説明】
【0116】
1 カートリッジ装填部
10、10k、10c、10m、10y カートリッジ
11 第1出力部(第1出力手段)
12 第2出力部(第2出力手段)
13 記憶部(記憶手段)
14 第3出力部
21A、21B 側板
31 メインガイドロッド
32 サブ板金ガイド
33 キャリッジ
34、34a、34b、34c、34d ヘッド
36 供給チューブ
37 用紙検知センサ
41 理論値
42 実測値
81 維持回復機構
82a、82b、82c、82d キャップ
83 払拭ユニット
100、100a 液体吐出装置
101、101a 制御部
102 CPU
103 ROM
104 RAM
105 NVRAM
106 ASIC
107 I/F
108 印刷制御部
109 主走査モータ駆動部
110 副走査モータ駆動部
111 維持制御部
114 操作パネル
116 ヘッドドライバ
117 主走査モータ
118 副走査モータ
123 搬送ローラ
300 理論値
301 第1実測値
302 第2実測値
141 表示画面
142 ステータス画面
411 第1画面
412 第2画面
413 印刷後情報ボタン
414 第1補正ONボタン
415 第1補正OFFボタン
421 第3画面
422 第4画面
423 第2補正ONボタン
424 第2補正OFFボタン
A 主走査方向
B 副走査方向
C 補正値情報
E 動作情報
G 消費インク量情報
H インク残量情報
Fn 空吐出回数情報
Mn 維持動作回数情報
Nn 画像形成枚数情報
Tn 稼働時間情報
【先行技術文献】
【特許文献】
【0117】