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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133375
(43)【公開日】2023-09-22
(54)【発明の名称】偏光板及びこれを含む画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20230914BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20230914BHJP
   C09J 4/02 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
G02B5/30
C09J163/00
C09J4/02
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023116945
(22)【出願日】2023-07-18
(62)【分割の表示】P 2021157847の分割
【原出願日】2016-11-02
(31)【優先権主張番号】10-2015-0155303
(32)【優先日】2015-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】崔 允碩
(72)【発明者】
【氏名】趙 天煕
(72)【発明者】
【氏名】金 孝東
(72)【発明者】
【氏名】朴 ▲ミン▼奎
(57)【要約】
【課題】熱衝撃耐久性に優れ、偏光子のクラックを顕著に低減できる偏光板を提供すること。
【解決手段】偏光子及び前記偏光子の少なくとも一面に接着層を介して接着された偏光子保護フィルムを含み、下記の数式1で表される弾性率係数が13.0乃至29.0MPa/(N/2mm)である偏光板:
[数式1]
弾性率係数={(A+B)/C}/100
(式中、Aは偏光子保護フィルムの25℃引張弾性率(MPa)であり、Bは接着層の30℃貯蔵弾性率(MPa)であり、Cは80℃で1時間静置された偏光子の吸収軸方向の収縮力(N/2mm)である)。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子及び前記偏光子の少なくとも一面に接着層を介して接着された偏光子保護フィルムを含み、下記の数式1で表される弾性率係数が13.0乃至29.0MPa/(N/2mm)である偏光板:
[数式1]
弾性率係数={(A+B)/C}/100
(式中、Aは偏光子保護フィルムの25℃引張弾性率(MPa)であり、Bは接着層の30℃貯蔵弾性率(MPa)であり、Cは80℃で1時間静置された偏光子の吸収軸方向の収縮力(N/2mm)である)。
【請求項2】
前記Aは1000乃至4000MPaである、請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記Bは1000乃至4000MPaである、請求項1又は2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記Cは1.0乃至2.5N/2mmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項5】
前記接着層は光ラジカル重合性接着剤組成物または光カチオン重合性接着剤組成物で形成されたものである、請求項1~4のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の偏光板を含む画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板及びこれを含む画像表示装置に関し、より詳細には、熱衝撃に対する耐久性に優れた偏光板及びこれを含む画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)、電界発光(EL)表示装置、プラズマ表示装置(PDP)、電界放出表示装置(FED)、OLEDなどのような各種の画像表示装置に用いられている偏光板は、一般的にポリビニルアルコール系(polyvinyl alcohol、PVA)フィルムにヨウ素系化合物または二色性偏光物質が吸着配向された偏光子を含み、偏光子の一面には偏光子保護フィルムが順に積層されており、偏光子の他の一面には偏光子保護フィルム、他の部材と接合される粘着剤層と離型フィルムが順に積層された多層構造を有する。
【0003】
偏光板を構成する偏光子は画像表示装置に適用され、色再現性に優れた画像を提供するために基本的に高い透過率及び偏光度を兼備することが要求される。これを具現するために、ポリビニルアルコール系フィルム自体を改質するか、または昇華性があるヨウ素系偏光素子の代わりに非昇華性二色性染料を使用する方法を用いて偏光子を製造した。
【0004】
通常、偏光子には製造工程において水洗及び乾燥後、直ちに保護フィルムが接合される。これは、乾燥後の偏光子は物理的な強度が弱く、一旦これを巻き取ると、加工方向に破れやすいなどの問題があるためである。よって、通常は乾燥後に偏光子には直ちにポリビニルアルコール系樹脂の水溶液である水系の接着剤が塗布され、この接着剤を介在させて偏光子の両面に同時に保護フィルムが接合される。
【0005】
このような偏光板は、製造工程中、運送中、使用中の環境など多様な温度環境に露出され得るので、このような環境でもクラックなどの欠陥が発生しないように十分な耐久性を示さなければならない。
【0006】
よって、偏光板は製造後に低温環境と高温環境に交互に露出させる熱衝撃耐久性実験を行うが、このような熱衝撃耐久性実験は通常低温と高温の環境に30分ずつ交互に露出させ、このような過程を1サイクルとし、100回以上のサイクルで行われる。
【0007】
この熱衝撃耐久性実験は、通常の偏光板の場合、実験中に偏光子にクラックが発生するほどの厳しい条件の実験である。
【0008】
このようなクラックを抑制することのできるほど優れた熱衝撃耐久性を有する偏光板の開発が求められるが、そのような要求を十分に満足させる偏光板はまだ知られていない。
【0009】
韓国特許出願公開第2015-0087062号には熱衝撃時におけるクラック長さを低減できる偏光板が開示されているが、上記の問題点に対する満足するほどの代案を提示できていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国特許出願公開第2015-0087062号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、熱衝撃耐久性に優れ、偏光子のクラックを顕著に低減できる偏光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1.偏光子及び前記偏光子の少なくとも一面に接着層を介して接着された偏光子保護フィルムを含み、下記の数式1で表される弾性率係数が13.0乃至29.0MPa/(N/2mm)である偏光板:
[数式1]
弾性率係数={(A+B)/C}/100
(式中、Aは偏光子保護フィルムの25℃引張弾性率(MPa)であり、Bは接着層の30℃貯蔵弾性率(MPa)であり、Cは80℃で1時間静置された偏光子の吸収軸方向の収縮力(N/2mm)である)。
【0013】
2.前記Aは1000乃至4000MPaである、上記1に記載の偏光板。
【0014】
3.前記Bは1000乃至4000MPaである、上記1又は2に記載の偏光板。
【0015】
4.前記Cは1.0乃至2.5N/2mmである、上記1~3のいずれか一項に記載の偏光板。
【0016】
5.前記接着層は光ラジカル重合性接着剤組成物または光カチオン重合性接着剤組成物で形成されたものである、上記1~4のいずれか一項に記載の偏光板。
【0017】
6.上記1~5のいずれか一項に記載の偏光板を含む画像表示装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明の偏光板は、熱衝撃耐久性が顕著に優れ、高温及び低温環境に露出する場合にもクラック発生可能性が顕著に低い。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、偏光子及び前記偏光子の少なくとも一面に接着層を介して接着された偏光子保護フィルムを含み、特定の関係式で表される弾性率係数が13.0乃至29.0MPa/(N/2mm)であることにより、熱衝撃に対する耐久性に優れた偏光板及びこれを含む画像表示装置に関する。
【0020】
以下、本発明を詳細に説明することとする。
【0021】
本発明の偏光板は、偏光子及び前記偏光子の少なくとも一面に接着層を介して接着された偏光子保護フィルムを含み、下記の数式1で表される弾性率係数が13.0乃至29.0MPa/(N/2mm)である:
[数式1]
弾性率係数={(A+B)/C}/100
(式中、Aは偏光子保護フィルムの25℃引張弾性率(MPa)であり、Bは接着層の30℃貯蔵弾性率(MPa)であり、Cは80℃で1時間静置された偏光子の吸収軸方向の収縮力(N/2mm)である)
【0022】
本発明の偏光板は、偏光子の吸収軸方向の収縮力、偏光子保護フィルムの引張弾性率及び接着層の貯蔵弾性率が上記のような特定の関係(弾性率係数が13.0乃至29.0MPa/(N/2mm))を満足することにより、熱衝撃が加えられてもクラック発生が少なくなる。高温及び低温環境に露出する場合、高温になるときに偏光フィルムの収縮が起こり、低温に戻るときに収縮した偏光フィルムが膨張し、元の状態に戻ろうとするときにクラックが生じやすい。そのため高温での収縮によって蓄積される応力に対する、常温付近での偏光子保護フィルムと接着層の硬さがクラック発生を抑制する上で重要な特性となる。
【0023】
本発明による弾性率係数が13.0MPa/(N/2mm)未満であるかまたは29.0MPa/(N/2mm)を超えると、熱衝撃時に偏光子にクラックが発生する場合が顕著に増加する。弾性率係数が13.0MPa/(N/2mm)未満である場合、偏光子保護フィルムと接着層による偏光子の収縮抑制が不十分となりクラックが発生しやすくなり、弾性率係数が29.0MPa/(N/2mm)を超える場合、偏光子保護フィルムと接着層が硬く、偏光子の収縮による歪みが緩和されずクラックが発生しやすくなる。
【0024】
<偏光子>
本発明による偏光子は、前記弾性率係数を満足できる吸収軸方向の収縮力を有する偏光子であれば特に制限されず、例えば80℃で1時間静置時に吸収軸方向の収縮力が、2.5N/2mm以下の収縮力を有するものであってもよい。2.5N/2mm以下の収縮力を有する場合に熱衝撃に対する耐久性が一層改善され得る。また、吸収軸方向の収縮力の下限値は、80℃で1時間静置時に1.0N/2mm以上であってもよい。
【0025】
本発明による偏光子の吸収軸方向の収縮力は、偏光子の製造時に用いられる化合物または延伸比を調節して制御することができ、好ましくは最も大きい延伸及び架橋が行われる架橋ステップで行うことができる。例えば偏光子の吸収軸方向の収縮力は架橋用水溶液のホウ素化合物の含量または架橋ステップの延伸比を調節することにより制御することができる。
【0026】
本発明の偏光子の厚みは、5~30μmであってもよく、好ましくは10~28μmであってもよく、より好ましくは15~26μmであってもよい。偏光子の厚みが上記範囲であると、偏光子の吸収軸方向における低収縮力と、ハンドリング性とを両立することができる。
【0027】
以下、本発明による偏光子の製造方法を説明することとする。
【0028】
本発明による偏光子は、偏光子形成用フィルムから製造される。偏光子を製造するための偏光子形成用フィルムは、偏光板の製造に用いられる高分子フィルムであれば、当該分野に公知の、二色性物質(例えばヨウ素)によって染色できるフィルムを特に制限なく用いることができ、例えばポリビニルアルコールフィルム、部分的に鹸化されたポリビニルアルコールフィルム;ポリエチレンテレフタレートフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム、セルロースフィルム、これらの部分的に鹸化されたフィルムなどのような親水性高分子フィルム;または脱水処理されたポリビニルアルコール系フィルム、脱塩酸処理されたポリ塩化ビニル系フィルムなどのようなポリエン配向フィルム;などを用いることができる。これらの中で、面内で偏光度の均一性を強化する効果に優れているだけでなく、ヨウ素に対する染色親和性に優れているという点で、ポリビニルアルコール系フィルムが好ましい。
【0029】
本発明による偏光子の製造方法は、偏光子形成用フィルムの膨潤ステップ、染色ステップ、架橋ステップ、補色ステップ、延伸ステップ、水洗ステップ及び乾燥ステップを含むことができ、延伸方法によって分類することができる。例えば、乾式延伸方法、湿式延伸方法、または前記の2種類の延伸方法を混合したハイブリッド延伸方法などが挙げられる。以下では湿式延伸方法を一例として本発明の偏光子の製造方法を説明するが、これに制限されるものではない。
【0030】
上記ステップの中で乾燥ステップを除く残りのステップは、それぞれ様々な種類の溶液の中から選択された1種以上の溶液で満たされる恒温水槽(bath)内に偏光子形成用フィルムを浸漬した状態で行うことができる。
【0031】
<膨潤ステップ>
膨潤ステップは、未延伸の偏光子形成用フィルムを染色する前に膨潤用水溶液で満たされた膨潤槽に浸漬し、偏光子形成用フィルムの表面上に堆積したほこりまたはブロッキング防止剤のような不純物を取り除き、偏光子形成用フィルムを膨潤させる、延伸効率を向上させ、染色不均一性を防止し、偏光子の物性を向上させるためのステップである。
【0032】
膨潤用水溶液としては、当該分野に公知の膨潤用水溶液を特に制限なく用いることができ、例えば水(純水、脱イオン水)を単独で用いてもよく、これに少量のグリセリンまたはヨウ化カリウムが添加される場合、高分子フィルムの膨潤と共に加工性も向上され得る。膨潤用水溶液100重量%に対してグリセリンの含量は5重量%以下であり、ヨウ化カリウムの含量は10重量%以下であるのが好ましい。
【0033】
膨潤槽の温度は特に制限されないが、20乃至45℃であってもよく、例えば25乃至40℃であってもよい。
【0034】
膨潤ステップの遂行時間(膨潤槽浸漬時間)は、当該分野に公知の遂行時間を特に制限なく適用することができ、例えば180秒以下であってもよく、好ましくは90秒以下であってもよい。浸漬時間が上記の範囲の場合には、膨潤が過度に飽和状態になることを抑制することができ、偏光子形成用フィルムの軟化による破断が防止され、染色ステップでヨウ素の吸着が均一になり、偏光度が向上され得る。
【0035】
膨潤ステップと共に延伸ステップを行うことができ、このとき、延伸比は約1.1乃至3.5倍であってもよいが制限されず、好ましくは1.5乃至3.0倍であってもよい。前記延伸比が1.1倍未満であるとしわが発生する可能性があり、3.5倍を超える場合には初期光学特性が脆弱になり得る。
【0036】
<染色ステップ>
染色ステップは、偏光子形成用フィルムを二色性物質、例えばヨウ素を含む染色用水溶液で満たされた染色槽に浸漬させ、偏光子形成用フィルムにヨウ素を吸着させるステップである。
【0037】
染色用水溶液は、当該分野に公知の染色用水溶液を特に制限なく用いることができ、水、水溶性有機溶媒またはこれらの混合溶媒とヨウ素とを含むことができる。ヨウ素の含量は染色用水溶液中に0.4乃至400mmol/Lであってもよいが、これに制限されず、好ましくは0.8乃至275mmol/L、最も好ましくは1乃至200mmol/Lであってもよい。
【0038】
染色用水溶液は、染色効率を向上され得るように、溶解補助剤としてヨウ化物をさらに含んでいてもよい。ヨウ化物としては、当該分野に公知のヨウ化物を制限なく用いることができ、例えばヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタンからなる群より選択される少なくとも1つを含むことができ、これらの中でヨウ化カリウムが、水に対する溶解度が大きいという点で好ましい。ヨウ化物の含量は、水100重量%に対して0.01乃至10重量%であってもよいが制限されず、好ましくは0.1乃至5重量%であってもよい。
【0039】
また、偏光子形成用フィルム内におけるヨウ素錯体の含量を増加させるために、染色槽にホウ酸が水100重量%に対して0.3乃至5重量%で添加されてもよいが、これに制限されない。染色槽のホウ酸が0.3重量%未満である場合には、PVA-I 錯体及びPVA-I 錯体含量の増加に効果がない可能性があり、染色槽のホウ酸が5重量%より高い濃度である場合には、フィルムの破断の危険性が高くなり得る。
【0040】
染色槽の温度は5乃至42℃であってもよいが、これに制限されず、好ましくは10乃至35℃であってもよい。また、染色槽内での偏光子形成用フィルムの浸漬時間は特に制限されず、1乃至20分であってもよく、好ましくは2乃至10分であってもよい。
【0041】
本発明においては、染色ステップと共に延伸ステップを行うことができ、このとき、延伸比は1.01乃至2.0倍であってもよいが、これに制限されるものではなく、好ましくは1.1乃至1.8倍であってもよい。
【0042】
また、前記膨潤及び前記染色ステップを含む前記染色ステップまでの累積延伸比は1.2乃至4.0倍であってもよい。前記累積延伸比が1.2倍未満であるとフィルムのしわが発生して外観不良が発生する可能性があり、4.0倍を超える場合には初期光学特性が脆弱になり得る。
【0043】
<架橋ステップ>
架橋ステップは、物理的に吸着されているヨウ素分子による染色性が外部環境によって低下しないように、染色された偏光子形成用フィルムを架橋用水溶液に浸漬させ、吸着されたヨウ素分子を固定させるステップである。
【0044】
二色性染料であるヨウ素は架橋反応が不十分な場合、湿熱環境によりヨウ素分子が脱離することがあり、十分な架橋反応が要求される。また、偏光子形成用フィルムの分子と分子との間に位置するヨウ素分子を配向させ、光学特性を向上させるために、最も大きい延伸比で延伸することを架橋ステップにおいて行うことができる。
【0045】
本発明においては、偏光子の製造方法は、例えば第1及び第2架橋ステップで構成された架橋ステップを行うことができ、前記第1及び第2架橋ステップのうちの1つ以上のステップは、ホウ素化合物を含有する架橋用水溶液を用いることができる。これによって偏光子の光学特性及び色の耐久性が向上され得る。
【0046】
架橋用水溶液は、当該分野に公知の架橋水溶液を特に制限なく用いることができ、例えば溶媒である水と、ホウ酸又はホウ酸ナトリウムなどの、ホウ素化合物とを含んでいてもよく、水と共に相互溶解可能な有機溶媒及びヨウ化物をさらに含んでいてもよい。
【0047】
ホウ素化合物は、短い架橋結合と剛直性を偏光子に付与し、工程中にフィルムにしわが発生するのを抑制することにより、フィルムの取扱性を向上させることができ、偏光子のヨウ素配向を形成する役割をすることができる。また、偏光子の吸収軸方向の収縮力を架橋用水溶液のホウ素化合物の含量を調節することにより制御することができる。具体的には、ホウ素化合物の含量を高くすると吸収軸方向の収縮力を高くすることができ、低くすると吸収軸方向の収縮力を低くすることができる。
【0048】
前記ホウ素化合物の含量は、当該分野に公知の含量を適用することができ、例えば水100重量%に対して1乃至10重量%であってもよく、好ましくは2乃至6重量%であってもよい。その含量が1重量%未満である場合、ホウ素化合物の架橋効果が減少して偏光子に剛直性を付与し難い場合があり、10重量%を超える場合、無機系架橋剤の架橋反応が過度に活性化され、有機系架橋剤の架橋反応が効果的に進行し難い場合がある。
【0049】
本ステップにおいて、ヨウ化物は、偏光子の面内での偏光度の均一性を保持するために、また、染着されたヨウ素の脱着を防止するために用いることができる。前記ヨウ化物は、前記染色ステップで用いられたものと同じものであってもよく、その含量は水100重量%に対して0.05乃至15重量%であってもよいが制限されず、好ましくは0.5乃至15重量%であってもよい。その含量が0.05重量%未満であるとフィルム内のヨウ素イオンが抜け出て偏光子の透過率を増加させる可能性があり、15重量%を超える場合には、水溶液内のヨウ素イオンがフィルムに浸透して偏光子の透過率を減少させ得る。
【0050】
本発明において、架橋槽の温度は20乃至70℃であってもよいが、これに制限されない。前記架橋槽における偏光子形成用フィルムの浸漬時間は1秒乃至15分であってもよいが、これに制限されず、好ましくは5秒乃至10分であってもよい。
【0051】
本発明の一実施例による偏光子の製造方法において、架橋ステップで延伸ステップを同時に行ってもよく、前述したように本架橋ステップで最も大きい延伸比で延伸されてもよく、その後に応力緩和が行われることが収縮力を低下させる側面から好ましい。例えば、架橋ステップは第1架橋ステップ及び第2架橋ステップを含むことができ、前記第1架橋ステップは高延伸ステップであり、前記第2架橋ステップは応力緩和ステップであってもよい。
【0052】
例えば、前記第1架橋ステップの延伸比は2.0乃至3.0倍であってもよく、好ましくは2.2乃至2.8倍であってもよい。
【0053】
また、前記第2架橋ステップの延伸比は、0.85乃至1.0倍であってもよい。
【0054】
また、前記第1及び第2架橋ステップの累積延伸比は1.5乃至3.0倍であってもよいが、これに制限されず、好ましくは1.98乃至2.8倍であってもよい。前記累積延伸比が1.5倍未満であると、ヨウ素の配向効果が不十分となる可能性があり、3.0倍を超える場合には延伸による応力が上昇して収縮力が増加し得る。
【0055】
<補色ステップ>
本発明の偏光子の製造方法は、必要に応じて補色ステップをさらに含んでいてもよい。補色ステップを通じて、ヨウ素錯体が物理的に吸着されている偏光子形成用フィルムにおける分子と分子との間に位置するヨウ素錯体をホウ酸架橋の近くに配向させてヨウ素錯体を安定化させることができる。また、補色ステップを通じて、前記架橋ステップにおけるヨウ素錯体の染色が不十分な偏光子形成用フィルムに対して、色を補正することができる。
【0056】
前記補色ステップの補色用水溶液は、例えば溶媒である水と、ホウ酸などのホウ素化合物とを含み、水と共に相互溶解可能な有機溶媒及びヨウ化物をさらに含んでいてもよい。
【0057】
本発明において、ホウ素化合物は、短い架橋結合と剛直性を偏光子に付与し、工程中にフィルムにしわが発生するのを抑制することにより、フィルムの取扱性を向上させ、偏光子のヨウ素配向を形成する役割をすることができる。
【0058】
前記ホウ素化合物の含量は水100重量%に対して1乃至10重量%であってもよいが、これに制限されず、好ましくは2乃至6重量%であってもよい。その含量が1重量%未満である場合、ホウ素化合物の架橋効果が減少して偏光子に剛直性を付与し難い場合があり、10重量%を超える場合、無機系架橋剤の架橋反応が過度に活性化され、有機系架橋剤の架橋反応が効果的に進行し難い場合がある。
【0059】
本ステップにおいて、ヨウ化物は、偏光子の面内での偏光度の均一性を保持するために、また、染着されたヨウ素の脱着を防止するために用いることができる。前記ヨウ化物は、前記染色ステップで用いられたものと同じものを用いてもよく、その含量は水100重量%に対して0.05乃至15重量%であってもよいが、これに制限されず、好ましくは0.5乃至11重量%であってもよい。その含量が0.05重量%未満であるとフィルム内のヨウ素イオンが抜け出て偏光子の透過率を増加させる可能性があり、15重量%を超える場合には、水溶液内のヨウ素イオンがフィルムに浸透して偏光子の透過率を減少させ得る。
【0060】
本発明において、補色槽の温度は20乃至70℃であってもよい。補色槽における偏光子形成用フィルムの浸漬時間は1秒乃至15分であってもよいが、これに制限されず、好ましくは5秒乃至10分であってもよい。
【0061】
前記補色ステップと共に延伸ステップを行うことができ、このとき、補色ステップの延伸比は1.01乃至1.25倍であってもよいが、これに制限されず、好ましくは1.05乃至1.20倍であってもよい。
【0062】
前記延伸比が1.01倍未満であるとヨウ素錯体の安定化効果及び偏光子形成用フィルムの配向効果が不十分となる可能性があり、1.25倍を超える場合には過度な延伸によってフィルムの破断が発生する場合があり、生産効率性が低下し得る。
【0063】
<延伸ステップ>
本発明において、延伸ステップは前述したように他の工程と同時に行われてもよく、別途に行われてもよい。延伸ステップは少なくとも1回行われてもよく、複数回で行われてもよい。複数回行われる場合には偏光子の製造工程中の任意のステップで分けて行われてもよい。
【0064】
本発明において、偏光子の延伸(吸収軸)方向の収縮力は延伸比で調節することができ、好ましくは前述したように架橋ステップにおける延伸比で調節できる。
【0065】
本発明の製造方法において、偏光子の総累積延伸比は5.0乃至7.0倍となるのが好ましく、5.3乃至6倍であるのがより好ましい。
【0066】
本明細書において、「累積延伸比」は、各ステップにおける延伸比の積の値を意味する。
【0067】
<水洗ステップ>
本発明の偏光子の製造方法は必要に応じて、架橋及び延伸が完了した偏光子形成用フィルムを、水洗用水溶液で満たされた水洗槽に浸漬させ、水洗ステップまでのステップで偏光子形成用フィルムに付着した、ホウ酸のような不要な残留物を取り除く水洗ステップをさらに含んでいてもよい。
【0068】
本発明において、水洗用水溶液は、当該分野に公知の水洗用水溶液を特に制限なく用いることができ、例えば水であってもよく、これにヨウ化物がさらに添加されてもよいが、これらに制限されない。
【0069】
本発明において、水洗槽の温度は10乃至60℃であってもよいが、これに制限されず、好ましくは15乃至40℃であってもよい。
【0070】
前記水洗ステップは省略可能であり、前記染色ステップまたは前記架橋ステップのような水洗ステップより前のステップが完了するたびに行うこともできる。また、1回以上繰り返してもよく、その繰り返し回数は特に制限されない。
【0071】
<乾燥ステップ>
本発明の製造方法において、乾燥ステップは、水洗された偏光子形成用フィルムを乾燥させるステップであって、乾燥によるネックイン(neck-in)で、染着されたヨウ素分子の配向をより向上させ、光学特性に優れた偏光子を得るステップである。なお、ネックインとは、フィルムの幅が狭くなることである。
【0072】
乾燥方法としては、当該分野に公知の乾燥方法を制限なく併用することができ、例えば自然乾燥、熱風乾燥、エア乾燥、加熱乾燥、遠赤外線乾燥、マイクロ波乾燥などの方法を用いることができ、最近ではフィルム内にある水のみを活性化させて乾燥させるマイクロ波乾燥が新たに用いられており、通常は熱風乾燥が主に用いられている。
【0073】
熱風乾燥の遂行温度は特に限定されないが、偏光子の劣化を防止するために、比較的低い温度で行われることが好ましく、例えば20乃至90℃であってもよく、好ましくは80℃以下であってもよい。
【0074】
前記熱風乾燥の遂行時間は特に限定されず、例えば1乃至10分間行うことができる。
【0075】
<偏光子保護フィルム>
本発明による偏光子保護フィルムは、前記弾性率係数を満足できる引張弾性率を有する偏光子保護フィルムであれば特に制限されず、例えば25℃で1000乃至4000MPaの引張弾性率を有するものであってもよい。上記の範囲の引張弾性率を有する場合に熱衝撃に対する耐久性が一層改善され得る。保護フィルムの引張弾性率が1000MPa未満であれば保護フィルムと偏光子との間に位置する接着層との弾性率差によって亀裂不良がよりひどくなり、4000MPaを超えると外部ストレスにより保護フィルムの割れ現象が発生し得る。
【0076】
偏光子保護フィルムの引張弾性率は保護フィルムの素材によって決定される。偏光子保護フィルムの素材は求められる引張弾性率の他に、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れたフィルムであれば特に限定されず、例えばアクリル系樹脂フィルム、セルロース系樹脂フィルム、ポリオレフィン系樹脂フィルム及びポリエステル系樹脂フィルムからなる群より選択された少なくとも1種を含む各種の透明樹脂フィルムを用いることができる。
【0077】
前記保護フィルムの具体的な例としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートなどのアクリル系樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルム;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートなどのセルロース系樹脂フィルム;ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロ系またはノルボルネン構造を有するポリオレフィン系、エチレン-プロピレン共重合体などのポリオレフィン系樹脂フィルム;などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0078】
前記保護フィルムの厚みは特に限定されないが、10乃至200μmであってもよく、好ましくは10乃至150μmであるのがよい。偏光子の両面に偏光子保護フィルムが積層される場合、各保護フィルムは互いに同一であるかまたは異なる厚みを有するものであってもよい。
【0079】
<接着層>
本発明による接着層は接着剤組成物を硬化して形成され、偏光子と保護フィルムを接合させる。
【0080】
本発明による接着層は、前記弾性率係数を満足できる貯蔵弾性率を有する接着層であれば特に制限されず、例えば30℃で1000乃至4000MPaの貯蔵弾性率を有するものであってもよい。上記の範囲の貯蔵弾性率を有する場合に熱衝撃に対する耐久性が一層改善され得る。貯蔵弾性率が1000MPa未満であるかまたは4000MPaを超える場合には熱衝撃時にクラックが発生する恐れがある。接着層の貯蔵弾性率の調節は、接着剤組成物の各成分の種類及び含量で調節できる。
【0081】
接着層の厚みは特に限定されないが、0.01~10μmであることが好ましく、0.5~5μmであることがより好ましい。接着層の厚みが上記範囲であると異物が視認されにくく、十分に接着剤組成物が硬化され密着性が良好である。接着層の厚みは、後述する接着剤組成物の塗工厚みを調節することによって調節することができる。
【0082】
本発明による接着剤組成物は、光硬化性接着剤組成物または熱硬化性接着剤組成物であってもよく、生産性などを考慮するとき、光硬化性接着剤組成物が好ましい。
【0083】
光硬化性接着剤組成物は、光重合性化合物及び光重合開始剤を含むことができる。
【0084】
光重合性化合物は光ラジカル重合性化合物または光カチオン重合性化合物であってもよい。
【0085】
光ラジカル重合性化合物としては、1乃至6官能性単量体が挙げられ、具体的にはメチル(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、2-ドデシルチオエチルメタクリレート、オクチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、グリシジルメタアクリレート、テトラフルフリル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどの1官能性単量体;1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA-エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ビス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリルオキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジアクリレート、エチレンオキサイド変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールアクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジアクリレート、アダマンタンジアクリレートなどの2官能性単量体;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリルオキシエチル)イソシアヌレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレートなどの3官能性単量体;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能性単量体;プロピオン酸変性ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能性単量体;及びカプロラクトン変性ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの6官能性単量体などが挙げられ、これらの中で、1乃至3官能性単量体が好ましい。これらは単独または2種以上を混合して用いてもよい。
【0086】
光カチオン重合性化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂;脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、多官能性エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂;水素化されたビスフェノールA型エポキシ樹脂などのアルコール型エポキシ樹脂;臭化エポキシ樹脂などのハロゲン化エポキシ樹脂;ゴム変性ウレタン樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、エポキシ基含有ポリエステル樹脂、エポキシ基含有ポリウレタン樹脂、エポキシ基含有アクリル樹脂などのエポキシ基含有化合物;フェノキシメチルオキセタン、3,3-ビス(メトキシメチル)オキセタン、3,3-ビス(フェノキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-{[3-(トリエトキシシリル)プロポキシ]メチル}オキセタン、フェノールノボラックオキセタン、1,4-ビス{[(3-エチル3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン等のオキセタニル基含有化合物などが挙げられ、これらは単独または2種以上を混合して用いてもよい。
【0087】
光重合開始剤は硬化反応の効率を向上させるためのものであって、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、ベンゾインアルキルエーテル系などの光ラジカル重合開始剤;芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨウ素アルミニウム塩、ベンゾインスルホン酸エステルなどが挙げられる。また、光カチオン重合開始剤としては、市販されている製品であるオプトマー-SP-151、オプトマー-SP-170、オプトマー-SP-171(旭電化工業社)、イルガキュア-261(チバ社)、シエイドSI-60L、UVI-6990(ユニオンカーバイド社)、BBI-1C3、MPI-103、TPS-103、DTS-103、NAT-103、NDS-103(みどり化学社)、CPI-110A(サンアプロ社)などを挙げることもできる。これらは単独または2種以上を混合して用いてもよい。
【0088】
光重合開始剤の含量は特に限定されず、例えば光重合性化合物100重量部に対して0.5乃至10重量部で含むことができる。含量が上記の範囲内である場合、適正な硬化速度を有し、優れた耐久性を有するようにする。
【0089】
<偏光板の製造方法>
偏光板の製造は、偏光子と偏光子保護フィルムとを前記接着剤組成物を用いて接合することにより行うことができる。接着剤組成物を用いた偏光子と保護フィルムとの接合は適切な方法で行うことができ、例えば流延法、マイヤーバーコーティング法、グラビアコーティング法、スピンコーティング法、ダイコーティング法、浸漬コーティング法、噴霧法などによって偏光子及び/または保護フィルムの接着面に接着剤組成物を塗布し、両者を重畳させる方法が挙げられる。流延法とは、被塗布物である偏光子または保護フィルムを概ね垂直な方向、概ね水平方向、または両者間の斜め方向に移動させながら、その表面に接着剤組成物を塗布する方法である。
【0090】
接着剤組成物の塗工厚みは特に限定されず、例えば0.01乃至10μm、好ましくは0.5乃至5μmで塗工することができる。
【0091】
接着剤組成物を塗布した後、偏光子と保護フィルムとをニップロールによって挟んで接合させる。
【0092】
また、接着性を向上させるために、必要に応じて偏光子及び/または保護フィルムの表面にプラズマ処理、コロナ処理、紫外線照射処理、フレーム処理、鹸化処理などの表面処理を適切に実施することができる。鹸化処理としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリの水溶液に浸漬する方法が挙げられる。
【0093】
偏光子と偏光子保護フィルムを積層した後には乾燥処理が実施される。乾燥処理は、例えば熱風を噴霧することにより行われるが、その際の温度は50乃至100度の範囲で適切に選択される。乾燥時間は通常30乃至1,000秒である。
【0094】
本発明による偏光板は、通常の液晶表示装置だけでなく、有機電界発光表示装置(OLED)、プラズマ表示装置、電界放出表示装置などの各種の画像表示装置に適用可能である。
【0095】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、これらの実施例は本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではなく、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で実施例に対する様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、これらの変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然のことである。
【0096】
<実施例1>
<接着剤組成物>
フェノキシグリシジルエーテル47重量部、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート50重量部、光重合開始剤(CPI-110A、サンアプロ社)3重量部を配合して光硬化性樹脂組成物を製造した。本接着剤組成物の硬化後の貯蔵弾性率は1500MPaである。
【0097】
<偏光子>
鹸化度が99.9%以上である透明な未延伸のポリビニルアルコールフィルム(PE60、KURARAY社)を25℃の水(脱イオン水)で1分20秒間浸漬して膨潤させた(膨潤ステップ)後、ヨウ素1.25mM/Lと水100重量%に対してヨウ化カリウム1.25重量%、ホウ酸0.3重量%が含有された30℃の染色用水溶液に2分30秒間浸漬して染色した(染色ステップ)。このとき、膨潤及び染色ステップで、それぞれ1.7184倍、1.5214倍の延伸比で延伸して、染色槽までの累積延伸比が2.614倍になるように延伸した。
【0098】
次いで、水100重量%に対してヨウ化カリウム15.0重量%、ホウ酸2重量%が含有された56℃の架橋用水溶液に26秒間浸漬して架橋させながら(第1架橋ステップ)、2.5倍の延伸比で延伸した。その後に、水100重量%に対してヨウ化カリウム15.0重量%、ホウ酸2重量%が含有された56℃の架橋用水溶液に20秒間浸漬して架橋させながら(第2架橋ステップ)、0.85倍の延伸比で延伸した。
【0099】
次いで、水100重量%に対してヨウ化カリウム5重量%、ホウ酸2重量%が含有された40℃の補色用水溶液に10秒浸漬しながら(補色ステップ)、1.08倍に延伸した。
【0100】
このとき、膨潤、染色、架橋、及び補色ステップの総累積延伸比が6倍になるようにした。架橋が完了した後、ポリビニルアルコールフィルムは脱イオン水で水洗した(水洗ステップ)後、80℃のオーブンで5分間乾燥させて(乾燥ステップ)透過率42.5%の偏光子を製造した。偏光子の厚みは23μmであった。
【0101】
<偏光板>
引張弾性率が3900MPaのコロナ処理された厚み60μmのトリアセチルセルロース系フィルム(富士フイルム社)上に上記接着剤組成物を塗布し、上記ヨウ素が吸着配向された偏光子の片面に上記接着剤組成物の厚みが2乃至3μmになるように、ニップロールを用いて偏光子とトリアセチルセルロース系フィルムを挟んで接合させてから、高圧水銀ランプ(UVA積算光量500mJ/cm)でUV硬化させた後、粘着剤を接合して偏光板を製造した。
【0102】
<実施例2乃至7及び比較例1乃至3>
下記の表1に記載されたように、保護フィルム及び接着層の弾性率及び偏光子の吸収軸方向の収縮力を調節したことを除いては、実施例1と同様の方法で偏光板を製造した。
保護フィルムの弾性率は製品毎に測定された値である。
【0103】
接着層の弾性率を、実施例5では実施例1の光重合開始剤(CPI-110A、サンアプロ社)を4重量部に変更し、実施例6では実施例1の光重合開始剤(CPI-110A、サンアプロ社)を5重量部に変更して調節した。
【0104】
偏光子の吸収軸方向の収縮力を、架橋用水溶液のホウ酸含量を変更して調節した。表1のホウ酸含量は第1架橋ステップ及び第2架橋ステップの架橋用水溶液のホウ酸含量を意味する。
【0105】
【表1】
【0106】
<試験例>
上記の実施例及び比較例において製造された偏光子及び偏光板の物性を下記の方法で測定した。
【0107】
<1.保護フィルムの引張弾性率の測定>
保護フィルムを25mm×100mmのサイズに切断した後、標点距離を50mmとし、引張試験機(引張試験機、Shimadzu社)で長手方向引張試験を実施し、S-S curve初期曲線の接線方向に対して強度を測定し、引張弾性率を、強度値を断面積で割ることにより求めた。このとき、25℃、4mm/minの速度で測定をおこなった。
【0108】
<2.接着層の貯蔵弾性率の測定>
コロナ処理されていないシクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(ゼオン社)2枚のうちの1枚の表面に接着剤組成物を10μmの厚みにバーコーティングで塗工した。その後、ラミネータを用いて接着剤組成物がコーティングされている面にもう1枚のコロナ処理されていないCOPフィルムを接合して、高圧水銀ランプ(UVA積算光量が500mJ/cm)でUV硬化を行い、厚さ4μmの接着剤フィルムを作成した。
その後、接着剤フィルムをCOPフィルムから剥離して5.0cm×0.5cmのサイズに切断した後、DMA Q800(Dynamic mechanical analyzer、TA社)で30℃の貯蔵弾性率を測定した(温度条件は常温から200℃)。このとき、測定前に偏光子を平坦な状態に維持するために最小限の荷重を偏光子の厚み方向にかけて測定した。
【0109】
<3.偏光子の収縮力の測定>
ここでは、偏光子の透過軸方向の幅2mmあたりの、吸収軸方向の収縮力を測定した。実施例及び比較例において製造された偏光子を2mm(透過軸方向)×50mm(吸収軸方向)のサイズに切断した後、標点距離を15mmとし、80℃で1時間等温状態のまま静置し、DMA Q800(Dynamic mechanical analyzer、TA社)で長手方向(吸収軸方向)の収縮力を測定した。このとき、測定前に偏光子を平坦な状態に維持するために最小限の荷重を偏光子の厚み方向にかけて測定した。
【0110】
<4.熱衝撃耐久性の測定>
実施例及び比較例において製造された偏光板を15.0cm(吸収軸(MD)方向)×11cm(透過軸(TD)方向)のサイズに切断した後、粘着剤を用いてガラス板に接合して、オートクレーブ(50℃、20分、5気圧)処理を行った。24時間放置後、熱衝撃試験を行なった(-40℃、30分及び85℃、30分、60分を1サイクル)。オーブンに製造されたサンプルを投入して100サイクルを完了した後、偏光子のクラック発生の有無を確認した(サンプル数は各実施例または比較例毎に5個準備した)。
【0111】
【表2】
【0112】
表2を参照すると、本発明の弾性率係数の範囲を満足する偏光板は熱衝撃時にも偏光子にクラックが全く発生しないことが確認できる。