(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133656
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/40 20060101AFI20230920BHJP
B65D 47/06 20060101ALI20230920BHJP
B65D 47/20 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B65D47/40 200
B65D47/06 400
B65D47/20 111
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038739
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 雄斗
(72)【発明者】
【氏名】坂上 耕一
(72)【発明者】
【氏名】堀 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】森 啓晃
(72)【発明者】
【氏名】平野 健
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA02
3E084CA01
3E084CB02
3E084DA01
3E084DB12
3E084EA02
3E084EB02
3E084FB01
3E084GA01
3E084GA08
3E084GB01
3E084GB12
3E084HB02
3E084HD01
3E084HD04
3E084LB01
3E084LF07
(57)【要約】
【課題】液戻りを確実に行うとともに、空気の遮断を確実に行うことができるキャップを提供する。
【解決手段】弁体13は、中栓開口11の軸心方向において開弁位置と閉弁位置とにわたって変位し、中栓上面52と中栓上面52に対向する弁体下面53とが当接するシール部161,162を中栓開口11の半径方向において内側位置と外側位置とに有し、内側位置と外側位置の両シール部161,162は液封構造を有し、かつ少なくとも内側位置のシール部161が液戻し構造を有し、液封構造は、中栓上面52と弁体下面53とが当接する部位に隣接して、中栓上面52と弁体下面53の間に表面張力で液を保持する隙間25、26,35,36を中栓開口11の周囲に有し、液戻し構造は、中栓開口11の半径方向においてシール部161を介した内側域と外側域を連通し、毛管力で液を吸い込む毛管路523を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に装着するキャップ本体と、キャップ本体の内部に配置する中栓と弁体を有し、
中栓は、容器の口部を塞ぐ位置に配置し、容器内の内容物の液体が流れ出る中栓開口を有し、
弁体は、中栓開口および開口周囲の中栓上面を覆って配置し、中栓開口の軸心方向において開弁位置と閉弁位置とにわたって変位し、
中栓上面と中栓上面に対向する弁体下面とが当接するシール部を、中栓開口を囲んで環状に、かつ中栓開口の半径方向において内側位置と外側位置とに有し、
内側位置と外側位置の両シール部は液封構造を有し、かつ少なくとも内側位置のシール部が液戻し構造を有し、
液封構造は、中栓上面と弁体下面とが当接する部位に隣接して、中栓上面と弁体下面の間に表面張力で液を保持する隙間を中栓開口の周囲に有し、
液戻し構造は、中栓開口の半径方向においてシール部を介した内側域と外側域を連通し、毛管力で液を吸い込む毛管路を有することを特徴とするキャップ。
【請求項2】
液戻し構造は、中栓上面に形成し、中栓開口の半径方向に延び、かつ中栓開口の軸心周りに扇状に広がる形状をなす凹部を有し、毛管路は、凹部と凹部に重なる弁体下面との間に生じることを特徴とする請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
液戻し構造は、中栓上面に形成し、中栓開口の半径方向に延びる凸部を有し、毛管路は、中栓開口の周方向において凸部の両側に、凸部に重なる弁体下面と中栓上面との間に生じることを特徴とする請求項1または2に記載のキャップ。
【請求項4】
液戻し構造は、中栓上面に形成し、中栓開口の半径方向に延びる複数の凸部を有し、毛管路は、凸部間に重なる弁体下面と中栓上面との間に生じることを特徴とする請求項1または2に記載のキャップ。
【請求項5】
凸部は、中栓開口の軸心周りに扇状に広がる形状をなすことを特徴とする請求項3または4に記載のキャップ。
【請求項6】
液戻し構造の毛管路は、中栓上面に形成した粗面域と、粗面域に重なる弁体下面との間に生じることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に装着するキャップに関し、キャップに内蔵する逆止弁の技術に係るものである。
【背景技術】
【0002】
従来、醤油等の内容物を充填した容器において内容物の酸化を抑制する技術がある。これは、二重容器の内容器に醤油等の内容物を納め、内容器の口部にキャップを装着し、キャップの内部に配置した逆止弁の中栓開口を弁体で封止するものである。
【0003】
このような容器およびキャップの構造を示した先行技術文献には、例えば特許文献1に記載するものがある。
【0004】
これは、二重容器の内容器の口部に中栓部材を装着し、中栓部材に設けた連通筒部内に弁体部を配置したものであり、弁体部が連通筒部内において容器軸心方向に沿って摺動する。弁体部は、容器軸心と同軸に配置された有底筒状をなし、容器軸心方向の上側端部に径方向外方に拡がる環状のフランジ部を有する。連通筒部の環状の上端面が弁座をなし、弁体部のフランジ部と当接して封止する。そして、弁体部が連通筒部内において容器軸心方向に沿って摺動することで、フランジ部と連通筒部の弁座間を開閉する。
【0005】
また、特許文献2に記載するものは、容器本体が外容器と内容器からなる二重構造を有し、外容器の口部に装着したキャップの内部に逆止弁を配置している。逆止弁は、内容器の口部に装着する中栓と、中栓を覆って配置する弁部材を備えている。弁部材は、中栓に対向して配置する弁体を有し、中栓は液体が通過する開口を有し、開口の周囲が弁座をなす。弁体は、弁座に対向して配置し、開口を囲み弁体の周縁部に沿って形成したシール部を有している。
【0006】
さらに、シール部の内周面と中栓の弁座との間、およびシール部の外周面と中栓の弁座との間に液体を層状に保持して液封し、内容器に空気が侵入することを遮断する。
【0007】
また、特許文献3に記載するものは、使用後に、吐出されなかった内容物の一部を容器内に戻すものである。
【0008】
このため、キャップ本体は、容器内の内容物を吐出する容器口部に連通する連通孔と、連通孔の周辺に設けた環状弁座と、環状弁部が環状弁座に着座または離脱することで連通孔を開閉する逆止弁を備えており、環状弁座に径方向に延びてなだらかな曲面をなす凸部を有し、凸部の周辺において環状弁部と環状弁座との間に隙間を生じさせ内容物を容器内に戻している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第6450243号
【特許文献2】特開2019-43644
【特許文献3】特開2017-193352
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、特許文献3に記載するものは、容器への内圧が解除されて、逆止弁の環状弁部が環状弁座に着座する初期段階において、環状弁部と環状弁座との間の凸部周辺に隙間が現出するが、この隙間は僅かな時間後に無くなる。
【0011】
環状弁部と環状弁座との間の凸部周辺の隙間の開口面積は次第に減少し、環状弁部の表面が、凸部に沿って馴染むように環状弁座にほぼ密着し、凸部周辺の隙間が閉塞されて、容器内を密封状態に維持する。
【0012】
しかし、この僅かな時間に、キャップ内に残存する内容物の全てを、環状弁部と環状弁座との間の凸部周辺に現出した隙間から容器内に戻すことは困難である。
【0013】
本発明は上記した課題を解決するものであり、液戻りを確実に行うとともに、空気の遮断を確実に行うことができるキャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記した課題を解決するために、本発明のキャップは、容器の口部に装着するキャップ本体と、キャップ本体の内部に配置する中栓と弁体を有し、中栓は、容器の口部を塞ぐ位置に配置し、容器内の内容物の液体が流れ出る中栓開口を有し、弁体は、中栓開口および開口周囲の中栓上面を覆って配置し、中栓開口の軸心方向において開弁位置と閉弁位置とにわたって変位し、中栓上面と中栓上面に対向する弁体下面とが当接するシール部を、中栓開口を囲んで環状に、かつ中栓開口の半径方向において内側位置と外側位置とに有し、内側位置と外側位置の両シール部は液封構造を有し、かつ少なくとも内側位置のシール部が液戻し構造を有し、液封構造は、中栓上面と弁体下面とが当接する部位に隣接して、中栓上面と弁体下面の間に表面張力で液を保持する隙間を中栓開口の周囲に有し、液戻し構造は、中栓開口の半径方向においてシール部を介した内側域と外側域を連通し、毛管力で液を吸い込む毛管路を有することを特徴とする。
【0015】
本発明のキャップにおいて、液戻し構造は、中栓上面に形成し、中栓開口の半径方向に延び、かつ中栓開口の軸心周りに扇状に広がる形状をなす凹部を有し、毛管路は、凹部と凹部に重なる弁体下面との間に生じることを特徴とする。
【0016】
本発明のキャップにおいて、液戻し構造は、中栓上面に形成し、中栓開口の半径方向に延びる凸部を有し、毛管路は、中栓開口の周方向において凸部の両側に、凸部に重なる弁体下面と中栓上面との間に生じることを特徴とする。
【0017】
本発明のキャップにおいて、液戻し構造は、中栓上面に形成し、中栓開口の半径方向に延びる複数の凸部を有し、毛管路は、凸部間に重なる弁体下面と中栓上面との間に生じることを特徴とする。
【0018】
本発明のキャップにおいて、凸部は、中栓開口の軸心周りに扇状に広がる形状をなすことを特徴とする。
【0019】
本発明のキャップにおいて、液戻し構造の毛管路は、中栓上面に形成した粗面域と、粗面域に重なる弁体下面との間に生じることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
上記構成において、弁体が開弁位置にあると、内側位置と外側位置のシール部において、中栓上面と弁体下面が離隔して両者の間の流路が開放され、中栓開口から流れ出る内容物の液体は中栓上面と弁体下面の間の流路を通って速やかに外部へ流れ出る。
【0021】
弁体が開弁位置から閉弁位置に戻る過程で、内側位置と外側位置のシール部において中栓上面と弁体下面が接近して両者の間の流路が狭くなり、液体の流れに対してシール部が抵抗として作用し、中栓上面と弁体下面の間に残る液体が内側位置と外側位置のシール部の間に残留する。
【0022】
弁体が閉弁位置にあると、内側位置と外側位置のシール部において中栓上面と弁体下面が当接して両者の間の流路が閉塞される。この状態で、内側位置と外側位置のシール部の液封構造をなす隙間、すなわち、中栓上面と弁体下面とが当接する部位に隣接する中栓上面と弁体下面の間の隙間に表面張力で液を保持し、中栓開口の周囲を液封する。
【0023】
一方、内側位置のシール部では液戻し構造をなす毛管路が、中栓開口の半径方向においてシール部を介した内側域と外側域を連通し、その毛管力で内側位置と外側位置のシール部の間に残留する液体を吸い込み、吸い込まれた液体が毛管路から液封構造の隙間に流れ出て、液封構造の隙間に保持できない余剰な液体が中栓開口の側に滴り落ちて容器内に戻る。この現象は内側位置と外側位置のシール部の間に残留する液体が毛管路に接する間中継続し、内側位置と外側位置のシール部の間に残留する液体が毛管路と非接触となると途絶えて毛管路に液体が残留し、液封状態となる。
【0024】
よって、弁体の閉弁位置においてシール部に恒常的に存在し続ける液戻し構造によって、内側位置と外側位置のシール部の間に残留する液体を容器内に確実に戻すことができるとともに、液封構造による液封によって外部の空気が容器内に侵入することを確実に遮断でき、容器の内容物の液体と外部の空気との接触を確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施の形態におけるキャップを示す断面図
【
図10】同中栓に弁部材を組み付けた逆止弁を示す断面図
【
図11】同実施の形態の逆止弁の作動を示し、(a)は閉弁状態を示す図、(b)は中間状態を示す図、(c)は開弁状態を示す図
【
図12】同逆止弁を示し、閉弁状態を示す拡大断面図
【
図13】本発明の他の実施の形態における中栓の要部を示す平面図
【
図15】本発明のさらに他の実施の形態における中栓の要部を示す平面図
【
図17】本発明のさらに他の実施の形態における中栓の要部を示す平面図
【
図19】本発明のさらに他の実施の形態における中栓の要部を示す平面図
【
図21】本発明のさらに他の実施の形態における中栓の要部を示す平面図
【
図23】本発明のさらに他の実施の形態における中栓の要部を示す平面図
【
図25】本発明のさらに他の実施の形態における中栓の要部を示す平面図
【
図27】本発明のさらに他の実施の形態における中栓の要部を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施例1)
図1から
図12に示すように、本実施の形態では、容器本体1が外容器2と内容器3からなる二重構造を有している。容器本体1の口部にはキャップ4を装着している。キャップ4は、キャップ本体5と蓋61からなり、キャップ本体5と蓋61がヒンジ62を介して一体に成型されている。ここでは、蓋61の詳細な説明を省略する。
【0027】
キャップ本体5は、外容器2の口部外周に螺合装着しており、頂部に形成した注ぎ口部6に吐出口7を有している。キャップ4の内部には逆止弁8を配置している。
(逆止弁)
逆止弁8は中栓9と弁部材10を備えており、
図2から
図4に示すように、内容器3の口部を塞ぐ位置に配置する中栓9は、醤油等の内容物の液体が通過する中栓開口11を有し、中栓開口11を囲む外周縁に外側弁座121を有する。中栓9は外側弁座121の外周に環状溝9aを有し、環状溝9aの外周に拡がる外縁部9bに複数の切欠き部9cを有している。切欠き部9cはキャップ本体5の内部に形成した突起(図示省略)と係合し、中栓開口11の軸心廻りにおいて中栓9を位置決めする。
【0028】
また、中栓9の環状溝9aの内周面には弁部材10を位置決めする突起9dが形成されている。
(弁部材)
図5から
図10に示すように、弁部材10は、中栓9の中栓開口11および外側弁座121を覆って配置するものであり、弁体13と弁体支持部14と空気弁部15を有している。
【0029】
弁体13は、中栓9の中栓開口11に対向し、中栓開口11の軸心方向において開弁位置と閉弁位置とにわたって弾性変位する。弁体支持部14は、弁体13と一体をなし弁体13の外周縁を支持しており、中栓9の環状溝9aに嵌合装着している。弁体支持部14は内周面に中栓9の突起9dに嵌合する凹部14aを有している。
【0030】
中栓9と弁体13の間には、中栓開口11の半径方向において内側位置と外側位置とにシール部161、162を設けており、シール部161、162は中栓開口11を囲んで環状をなす。また、弁体13は中栓9の中栓開口11の半径方向において外側位置のシール部162よりも外側の位置に形成した液穴17を有している。液穴17は、外側位置のシール部162に沿った複数個所において、弁体13と弁体支持部14の肩部とにわたって開口している。
(シール部)
図6および
図10に示すように、内側位置のシール部161において、中栓9は、中栓上面52の中栓開口11の近傍が、中栓開口11の周囲に沿って環状の内側弁座122をなす。弁体13は、中栓9の中栓開口11の軸心に沿った断面において、中栓9に対向する弁体下面53に、弁体下面53から中栓上面52に向けて隆起し、中栓上面52に当接する内側弁体シール541を有している。
【0031】
外側位置のシール部162では、中栓9の中栓開口11の軸心に沿った断面において、弁体13が外側弁座121に向けて突出する外側弁体シール542を有しており、外側弁体シール542は弁体13の一部を湾曲形状に形成したものである。すなわち、外側弁体シール542は、外側弁座121に対向する弁体13の弁体下面53において外側弁座121に向けて湾曲形状に突出し、弁体13の外面側において溝状に窪んだ形状をなす。
【0032】
外側弁体シール542は、湾曲形状の頂点を含むシール面20が、外側弁座121の弁座面21に当接離間可能である。
(液封構造/液戻し構造)
内側位置と外側位置の両シール部161、162は液封構造を有し、ここでは内側位置のシール部161が液戻し構造を有する。外側位置のシール部162に液戻し構造を設けることも可能である。
【0033】
液封構造は、中栓上面52と弁体下面53とが当接する部位に隣接して、中栓上面52と弁体下面53の間に表面張力で液を保持する隙間を中栓開口11の周囲に形成したものである。
【0034】
すなわち、
図12に示すように、閉弁状態の逆止弁8は、外側弁体シール542のシール面20が外側弁座121の弁座面21に圧接する圧接領域と、シール面20と弁座面21が離間する非圧接領域を形成し、圧殺領域と非圧接領域との境の近傍において、非圧接領域の内側シール面20aと弁座面21の間に形成する内側液封用隙間25と、外側湾曲部18の外側シール面20bと弁座面21の間に形成する外側液封用隙間26を有する。
【0035】
また、閉弁状態の逆止弁8は、内側弁体シール541のシール面30が内側弁座122の弁座面22に圧接する圧接領域と、シール面30と弁座面22が離隔する非圧接領域を形成し、圧殺領域と非圧接領域との境の近傍において、非圧接領域の内側シール面30aと弁座面22の間に形成する内側液封用隙間35と、外側シール面30bと弁座面22の間に形成する外側液封用隙間36を有する。
【0036】
液戻し構造は、中栓開口11の半径方向において内側位置のシール部161を介した内側域と外側域を連通する毛管路を、内側弁体シール541のシール面30と内側弁座122の弁座面22の間に有し、毛管力で液体を毛管路に吸い込む。
【0037】
ここでは、液戻し構造の毛管路が、中栓上面52の弁座面22に形成した凹部521によって形成される。凹部521は中栓開口11の半径方向に延びて、半径方向内側であるほどに浅くなり、かつ中栓開口11の軸心周りに扇状に60°に広がる形状をなす。そして、凹部521の底面と凹部521を覆う弁体下面53に設けた内側弁体シール541のシール面30との間に生じる隘路522が毛管路を形成する。
(空気弁部)
図1に示すように、キャップ本体5は、天部に形成した吸気部22に吸気口23が開口しており、吸気口23が外容器2と内容器3の間に連通している。
【0038】
図7に示すように、弁部材10の空気弁部15は、弁体支持部14の外周縁からキャップ本体5の半径方向外側へ伸びる扇形状をなし、吸気口23を閉塞する閉弁位置と吸気口23を開放する開弁位置とにわたって変位し、吸気口23を開閉する。空気弁部15は吸気口23に対向する表面側が平坦面をなし、背面側に格子状のリブ15aを備えている。
【0039】
以下、上記の構成における作用について説明する。内容器3の内容物を吐出する際には、外容器2に圧搾力を加え、この圧搾力を外容器2と内容器3の間の空気層を介して内容器3に与えて内容器3を搾る。
【0040】
内容器3の内圧の高まりにより弁体13は、
図11(a)に示す閉弁状態から
図11(b)に示す中間状態へ遷移して、中栓9の中栓開口11から離間する方向に移動する。この過程の途中で内側位置のシール部161において内側弁体シール541が内側弁座122から離間し始める。
【0041】
さらに、弁体13は、
図11(b)に示す中間状態から
図11(c)に示す開弁状態に遷移し、弁体13の移動に伴って外側位置のシール部162において外側弁体シール542が外側弁座121から離隔して開弁位置に移動する。
【0042】
弁体13が開弁位置にあると、内側位置のシール部161において、中栓上面52の弁座面22から弁体下面53の内側弁体シール541が離隔し、外側位置のシール部162において、中栓上面52の弁座面21から弁体下面53の外側弁体シール542が離隔し、シール部161、162の流路が開放される。
【0043】
中栓開口11から流れ出る内容物の液体は、シール部161、162において、内側弁体シール541と内側弁座122の間、および外側弁体シール542と外側弁座121の間を通り、中栓上面52と弁体下面53の間の流路を通ってキャップ4の吐出口7から速やかに外部へ流れ出る。
【0044】
外容器2に加える圧搾力を解除すると、弾性変形した外容器2が復元力により元の形状に戻ることで外容器2の内部空間が広がって負圧となる。このため、
図1に一点鎖線で示すように、空気弁部15が開いて吸気口23を通して外容器2と内容器3の間に空気が流入する。
【0045】
また、弁体13は、自身の復元力で閉弁方向に移動するとともに、加圧力が解除された内容器3の内部が負圧となることで、容器内外の圧力差を駆動圧として、中栓9の中栓開口11に接近する方向に押圧される。弁体13の移動に伴って、内側位置のシール部161では、内側弁体シール541が内側弁座122に当接する位置に移動し、シール面30と弁座面22の間を封止する。また、外側位置のシール部162では、外側弁体シール542が外側弁座121に当接する位置に移動し、シール面20と弁座面21の間を封止する。
【0046】
このとき、弁体13が開弁位置から閉弁位置に戻る過程で、内側位置と外側位置のシール部161、162において中栓上面52と弁体下面53が接近し、内側弁座122と内側弁体シール541の間、および外側弁座121と外側弁体シール542の間で流路が狭くなり、液体の流れに対してシール部161、162が抵抗として作用し、中栓上面52と弁体下面53の間に残る液体が内側位置と外側位置のシール部161、162の間に残留する。
【0047】
弁体13が閉弁位置にあると、内側位置と外側位置のシール部161、162において中栓上面52の内側弁座122および外側弁座12と、弁体下面53の内側弁体シール541および外側弁体シール542の間の流路が閉塞される。
【0048】
この状態で、内側位置と外側位置のシール部161、162の液封構造をなす隙間、すなわち、内側液封用隙間25、35および外側液封用隙間26、36に、表面張力で液体を保持し、中栓開口11の周囲を二重に液封する。
【0049】
一方、内側位置のシール部161では液戻し構造の隘路522からなる毛管路において、中栓開口11の半径方向においてシール部161を介した内側域と外側域が連通し、その毛管力で内側位置と外側位置のシール部161、162の間に残留する液体を吸い込む。吸い込まれた液体は、毛管路をなす隘路522から液封構造の内側液封用隙間25に流れ出て、液封構造の内側液封用隙間25に保持できない余剰な液体が中栓開口11の側に滴り落ちて容器内に戻る。
【0050】
この現象は内側位置と外側位置のシール部161、162の間に残留する液体が毛管路をなす隘路522に接する間中継続し、内側位置と外側位置のシール部161、162の間に残留する液体が毛管路の隘路522と非接触となると途絶えて毛管路の隘路522に液体が残留し、液封状態となる。
【0051】
よって、弁体13の閉弁位置において内側位置のシール部161に恒常的に存在し続ける液戻し構造によって、内側位置と外側位置のシール部161、162の間に残留する液体を容器内に確実に戻すことができるとともに、液封構造による液封によって外部の空気が容器内に侵入することを確実に遮断でき、容器の内容物の液体と外部の空気との接触を確実に防止できる。
(実施例2)
図13に示すように、この実施例2では、液戻し構造の毛管路が、中栓上面52の弁座面22に形成した凹部525によって形成される。凹部525は、実施例1のものと基本的な構造は同様であり、中栓開口11の半径方向の内側が中栓開口11に連通している。
【0052】
図14に示すように、凹部525の底面と凹部525を覆う弁体下面53に設けた内側弁体シール541のシール面30との間に生じる隘路522が毛管路を形成する。
(実施例3)
図15に示すように、この実施例3では、液戻し構造の毛管路が、中栓上面52の弁座面22に形成した凹部525および凸部526によって形成される。凹部525は実施例1のものと基本的な構造は同様であり、中栓開口11の半径方向の内側が中栓開口11に連通している。
【0053】
中栓上面52に形成する一対の凸部526は、それぞれが中栓開口11の半径方向に延びて、かつ中栓開口11の軸心周りに扇状に5.25°で広がる形状をなし、凸部526の相互間が中栓開口11の軸心周りに114.75°開いている。一対の凸部526は中栓開口11を介した反対側の領域に形成する。ここでは複数であるが、単数とすることも可能である。
【0054】
そして、
図16に示すように、凸部526の中栓開口11の周方向の両側において、凸部526に重なる弁体下面53の内側弁体シール541のシール面30と中栓上面52との間に生じる隘路523が毛管路をなす。
(実施例4)
図17に示すように、この実施例4では、液戻し構造の毛管路が、中栓上面52の弁座面22に形成した凹部521および凸部526によって形成される。凹部521は実施例1のものと構造が同様である。
【0055】
中栓上面52に形成する一対の凸部526は、それぞれが中栓開口11の半径方向に延びて、かつ中栓開口11の軸心周りに扇状に5.25°で広がる形状をなし、凸部526の相互間が中栓開口11の軸心周りに114.75°開いている。一対の凸部526は中栓開口11を介した反対側の領域に形成する。
【0056】
そして、
図18に示すように、凸部526の中栓開口11の周方向の両側において、凸部526に重なる弁体下面53の内側弁体シール541のシール面30と中栓上面52との間に生じる隘路523が毛管路をなす。
(実施例5)
図19に示すように、この実施例5では、液戻し構造の毛管路が、中栓上面52の弁座面22に形成した凹部521および凸部526によって形成される。凹部521は実施例1のものと構造が同様である。
【0057】
中栓上面52に形成する一対の凸部526は、それぞれが中栓開口11の半径方向に延びて、かつ中栓開口11の軸心周りに扇状に20°で広がる形状をなし、凸部526の相互間が中栓開口11の軸心周りに100°開いている。一対の凸部526は中栓開口11を介した反対側の領域に形成する。
【0058】
そして、
図20に示すように、凸部526の中栓開口11の周方向の両側において、凸部526に重なる弁体下面53の内側弁体シール541のシール面30と中栓上面52との間に生じる隘路523が毛管路をなす。
(実施例6)
図21に示すように、この実施例6では、液戻し構造の毛管路が、中栓上面52の弁座面22に形成した凹部521および凸部526によって形成される。凹部521は実施例1のものと構造が同様である。
【0059】
中栓上面52に形成する一対の凸部526は、それぞれが中栓開口11の半径方向に延びて、かつ中栓開口11の軸心周りに扇状に20°で広がる形状をなし、凸部526の相互間が中栓開口11の軸心周りに100°開いている。一対の凸部526は中栓開口11を介した反対側の領域に形成する。中栓開口11の周囲の中栓上面52に粗面域527を設けている。粗面域527は一対の凸部526を含み、中栓開口11の軸心周りに扇状に240°で広がる形状をなす。
【0060】
そして、
図22に示すように、凸部526の中栓開口11の周方向の両側において、凸部526に重なる弁体下面53の内側弁体シール541のシール面30と中栓上面52との間に生じる隘路523が毛管路をなす。
(実施例7)
図23に示すように、この実施例7では、液戻し構造の毛管路が、中栓上面52の弁座面22に形成した凹部521および凸部526によって形成される。凹部521は実施例1のものと構造が同様である。
【0061】
中栓上面52に形成する四個の凸部526は、それぞれが中栓開口11の半径方向に延びて、そのうちの一対が中栓開口11の軸心周りに扇状に30°で広がる形状をなし、他の一対が中栓開口11の軸心周りに扇状に37.5°で広がる形状をなす。凸部526の相互間が中栓開口11の軸心周りに15°開いている。全ての凸部526は中栓開口11を介した反対側の領域に形成する。
【0062】
そして、
図24に示すように、凸部526の相互間において、凸部526に重なる弁体下面53の内側弁体シール541のシール面30と中栓上面52との間に生じる隘路523が毛管路をなす。
(実施例8)
図25に示すように、この実施例8では、液戻し構造の毛管路が、中栓上面52の弁座面22に形成した凹部521および凸部526によって形成される。凹部521は実施例1のものと構造が同様である。
【0063】
中栓上面52に形成する八個の凸部526は、それぞれが中栓開口11の半径方向に延びて、中栓開口11の軸心周りに扇状に15°で広がる形状をなし、凸部526の相互間が中栓開口11の軸心周りに10°開いている。全ての凸部526は中栓開口11を介した反対側の領域に形成する。
【0064】
そして、
図26に示すように、凸部526の相互間において、凸部526に重なる弁体下面53の内側弁体シール541のシール面30と中栓上面52との間に生じる隘路523が毛管路をなす。
(実施例9)
図27に示すように、この実施例9では、液戻し構造の毛管路が、中栓上面52の弁座面22に形成した凹部521および凸部526によって形成される。凹部521は実施例1のものと構造が同様である。
【0065】
中栓上面52に形成する一対二組の凸部526は、それぞれが中栓開口11の半径方向に延びて、中栓開口11の軸心周りに扇状に5.25°で広がる形状をなし、一対の凸部526の相互間が中栓開口11の軸心周りに34.75°開き、一対の凸部526と一対の凸部526の相互間が中栓開口11の軸心周りに114.75°開いている。全ての凸部526は中栓開口11を介した反対側の領域に形成する。
【0066】
そして、
図28に示すように、一対の凸部526の相互間において、凸部526に重なる弁体下面53の内側弁体シール541のシール面30と中栓上面52との間に生じる隘路523が毛管路をなす。
【符号の説明】
【0067】
1 容器本体
2 外容器
3 内容器
4 キャップ
5 キャップ本体
6 注ぎ口部
7 吐出口
8 逆止弁
9 中栓
9a 環状溝
9b 外縁部
9c 切欠き部
9d 突起
10 弁部材
11 中栓開口
13 弁体
14 弁体支持部
14a 凹部
15 空気弁部
17 液穴
20 シール面
20b 外側シール面
20a 内側シール面
21 弁座面
22 弁座面
25 内側液封用隙間
26 外側液封用隙間
30 シール面
30a 内側シール面
30b 外側シール面
35 内側液封用隙間
36 外側液封用隙間
52 中栓上面
53 弁体下面
61 蓋
62 ヒンジ
121 外側弁座
122 内側弁座
161 内側位置のシール部
162 外側位置のシール部
521、525 凹部
522、523 隘路
526 凸部
527 粗面域
541 内側弁体シール
542 外側弁体シール