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特開2023-133763トラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造、トラフ線路におけるケーブルセンサの配線構造、トラフ線路の監視方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133763
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】トラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造、トラフ線路におけるケーブルセンサの配線構造、トラフ線路の監視方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 9/04 20060101AFI20230920BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20230920BHJP
   G02B 6/00 20060101ALI20230920BHJP
   G01D 5/353 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
H02G9/04
H02G1/06
G02B6/00 B
G01D5/353 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022038941
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】和田 直人
(72)【発明者】
【氏名】小澤 聡
(72)【発明者】
【氏名】萩原 卓三
(72)【発明者】
【氏名】三浦 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】山下 鉄広
【テーマコード(参考)】
2F103
2H038
5G352
5G369
【Fターム(参考)】
2F103BA19
2F103CA01
2F103CA03
2F103EB01
2F103EB11
2F103EC09
2F103ED27
2F103FA04
2F103FA16
2H038AA02
2H038AA03
5G352CA08
5G352CG03
5G369AA16
5G369AA19
5G369BA03
5G369DB01
5G369DB05
5G369DB07
(57)【要約】
【課題】 トラフ内のケーブルの盗難を事前に確実に検知することが可能なトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造等を提供する。
【解決手段】 トラフは、トラフ本体3とトラフ蓋5からなる。トラフ本体3は、内部にケーブルが収容される。トラフ蓋5の上面には、トラフ蓋5の長手方向に対してケーブルセンサ1が設けられる。ケーブルセンサ1は、光ファイバケーブルである。光ファイバケーブルは、監視区間が長いため、通常のシングルモード光ファイバが用いられる。ケーブルセンサ1は、少なくとも一方の端部から光が入射されており、反射光の光強度や、他端からの出射光の光強度等を測定することで、ケーブルセンサ1に局部的な曲りや切断がないかを検知することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にケーブルが収納されたトラフ本体に固定されるトラフ蓋と、
前記トラフ蓋の長手方向に配置されるケーブルセンサと、
を具備することを特徴とするトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造。
【請求項2】
前記ケーブルセンサは前記トラフ蓋の上面に設けられることを特徴とする請求項1記載のトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造。
【請求項3】
前記トラフ蓋には、前記ケーブルセンサが収容される収納部が設けられることを特徴とする請求項2に記載のトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造。
【請求項4】
前記収納部は、前記トラフ本体の長手方向に略直線状に形成される複数の凸状部であり、前記ケーブルセンサは、互いに対向する前記凸状部の間に形成される溝部に収容されることを特徴とする請求項3に記載のトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造。
【請求項5】
前記収納部の、前記トラフ蓋の長手方向の先後端部近傍に、前記溝部の幅が広くなる拡幅部が設けられることを特徴とする請求項4に記載のトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造。
【請求項6】
前記収納部の開口部を保護テープで覆うか、前記収納部に固定部材が固定され、前記収納部の開口が塞がれることを特徴とする請求項3から請求項5のいずれかに記載のトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造。
【請求項7】
前記保護テープまたは前記固定部材の天面に凹凸部が形成されるか、文字が印刷されることを特徴とする請求項6に記載のトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造。
【請求項8】
前記トラフ蓋の上面には滑り止め突起を有し、前記凸状部の高さは、前記滑り止め突起の高さと等しいか、前記滑り止め突起より低いことを特徴とする請求項4または請求項5に記載のトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造。
【請求項9】
前記トラフ蓋の上面には滑り止め突起を有し、前記固定部材の高さは、前記滑り止め突起の高さと等しいか、前記滑り止め突起より低いことを特徴とする請求項6記載のトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造。
【請求項10】
前記トラフ蓋の上面には、複数の凸部が設けられ、前記ケーブルセンサが、前記凸部と干渉しないように前記凸部同士の間に配置されることを特徴とする請求項2記載のトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造。
【請求項11】
前記凸部は、前記トラフ蓋の幅方向の略中央に、4隅が開口した略四角形状が前記トラフ本体の長手方向に繰り返して配置され、前記ケーブルセンサは、前記凸部が形成する略四角形状の対角線方向に配置され、保護部材が前記略四角形状に嵌まるように形成されることを特徴とする請求項10記載のトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造。
【請求項12】
前記ケーブルセンサの長手方向の少なくとも一部が、保護部材で覆われることを特徴とする請求項10または請求項11に記載のトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造。
【請求項13】
前記トラフ本体及び前記トラフ蓋は樹脂製であることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれかに記載のトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造。
【請求項14】
前記ケーブルセンサは、光ファイバケーブルであることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれかに記載のトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造。
【請求項15】
前記トラフ蓋の所定位置に、前記光ファイバケーブルの接続部が収納される、ケーブル接続部収納部が設けられることを特徴とする請求項14記載のトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造。
【請求項16】
前記光ファイバケーブルは、光ファイバ心線と、前記光ファイバ心線を保護する抗張力体と、を具備することを特徴とする請求項14または請求項15記載のトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造。
【請求項17】
前記光ファイバケーブルは、保護管に挿入されたものであることを特徴とする請求項14または請求項15記載のトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造。
【請求項18】
前記トラフ蓋の長手方向の端部近傍に、前記ケーブルセンサの浮き上がりを防止するための保持部が形成されることを特徴とする請求項14から請求項17のいずれかに記載のトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造。
【請求項19】
前記保持部は、前記トラフ蓋を前記トラフ本体に固定するための金属製固定部材であることを特徴とする請求項18記載のトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造。
【請求項20】
前記ケーブルセンサは、通電ケーブルであることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれかに記載のトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造。
【請求項21】
請求項14から請求項19のいずれかに記載のトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造を具備し、
複数の前記トラフ本体が連結されて形成されたトラフ線路に、前記光ファイバケーブルが配線されることを特徴とするトラフ線路におけるケーブルセンサの配線構造。
【請求項22】
監視対象であり、内部にケーブルが収納されたトラフ線路の、トラフ蓋の長手方向に配置した光ファイバケーブルの一方の端部から、所定波長の光を、前記光ファイバケーブルに連続的に入射して、前記光ファイバケーブルの反対側の端部から出射される光を受光装置に導いて光強度を常時測定することで、前記光ファイバケーブルの局部的曲がりまたは破断を検知し、前記トラフ線路のトラフ蓋が開けられることを監視することを特徴とするトラフ線路の監視方法。
【請求項23】
監視対象であり、内部にケーブルが収納されたトラフ線路の、トラフ蓋の長手方向に配線された光ファイバケーブルの心線の一方の端部とOTDR装置を接続し、前記OTDR装置から発信されたパルス波の前記光ファイバケーブルからの後方散乱光の強度変化を測定し、トラフ線路の前記光ファイバケーブルの局部的曲がりまたは破断の発生位置を検知することで、前記トラフ線路のトラフ蓋が開けられることを監視することを特徴とするトラフ線路の監視方法。
【請求項24】
監視対象であり、内部にケーブルが収納された複数のトラフ線路の、トラフ蓋の長手方向に配置したそれぞれの光ファイバケーブルの1心の心線を用い、前記光ファイバケーブルのそれぞれの端部は、光カプラを介して複数の心線に分岐され、分岐された一つの前記心線の端部はOTDR装置と接続され、分岐された他の前記心線の端部に配置した光源から前記OTDR装置に用いるパルス波とは波長の異なる連続光を、前記光カプラを通じて前記それぞれの光ファイバケーブルの一方の端部側から連続的に入射して、前記光ファイバケーブルの他方の端部側において、前記連続光のみを前記光カプラにより分波して受光装置に導いて光強度を常時測定することで、前記それぞれの光ファイバケーブルの局部的曲がりまたは破断が発生した光ファイバケーブルを検知し、
前記局部的曲がりまたは破断が検知された特定のトラフ線路の光ファイバケーブルの心線にOTDR装置を、光スイッチにより接続して、
前記OTDR装置から発信されたパルス波の前記光ファイバケーブルからの後方散乱光の強度変化を測定することで、トラフ線路の前記光ファイバケーブルの局部的曲がりまたは破断の発生位置を検知し、
前記トラフ線路のトラフ蓋が開けられることを監視することを特徴とするトラフ線路の監視方法。
【請求項25】
監視対象であり、内部にケーブルが収納された複数のトラフ線路の、トラフ蓋の長手方向に配置したそれぞれの光ファイバケーブルの2心の心線を用い、一方の前記心線の一方の端部に配置した光源から所定波長の連続光を、前記それぞれの光ファイバケーブルに連続的に入射して、反対の端部に配置した受光装置に導いて、前記連続光の光強度を常時測定することで、前記それぞれの光ファイバケーブルの局部的曲がりまたは破断を検知し、
局部的曲がりまたは破断が検知された特定の前記トラフ線路の光ファイバケーブルの他方の前記心線とOTDR装置を、光スイッチにより接続し、
前記OTDR装置から発信されたパルス波の前記光ファイバケーブルからの後方散乱光の強度変化を測定することで、トラフ線路の前記光ファイバケーブルの局部的曲がりまたは破断の発生位置を検知し、
前記トラフ線路のトラフ蓋が開けられることを監視することを特徴とするトラフ線路の監視方法。
【請求項26】
前記光スイッチを切り換えることで、複数の前記トラフ線路のそれぞれの前記光ファイバケーブルについて前記OTDR装置による測定を所定時間毎に順に行い、それぞれの前記トラフ線路における所定時間毎に測定した最新の測定値と、所定時間前の測定値とを対比して、それぞれの測定位置における前記最新の測定値と前記所定時間前の測定値の後方散乱光の強度の差が、あらかじめ設定した強度レベルである閾値以上であれば、損傷または破断有りと判断し、閾値未満であれば損傷または破断無と判断することを特徴とする請求項24または請求項25に記載のトラフ線路の監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部にケーブルが敷設されるトラフ線路における、トラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造、これを用いたトラフ線路におけるケーブルセンサの配線構造、及びトラフ線路の監視方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、線路や道路脇に、例えば樹脂製のトラフが敷設され、内部に各種のケーブルが収納される。このようなトラフ本体には、通常、トラフ蓋が固定され、内部への異物の侵入や、ケーブル等へのいたずらやケーブル等の盗難などが防止される。
【0003】
このように、トラフ本体とトラフ蓋とを固定する方法としては、弾性を有する金属製の固定部材を用いる方法がある。この場合、例えば、固定部材の両側の対向する位置に、着脱具の先端部を挿入するための孔が設けられ、専用工具を孔に挿入しないと開閉することができないものがある。また、この固定部材の両側部の端部近傍の内側に、小さな突起が複数個設けることで、固定部材が着脱し難くなり、盗難防止効果を向上することができる(特許文献1)。
【0004】
また、トラフ本体の側壁の上端近傍に、突起部を形成し、トラフ蓋固定用の固定金具を取付ける方法がある。トラフ蓋を閉じた状態で、上方から蓋と固定金具を貫通して、固定金具に設けたナット部にボルトを固定することによりトラフ蓋がトラフ本体に固定される(特許文献2)。
【0005】
また、トラフ本体内のケーブルの盗難等を防止する方法としては、この他に、侵入検知フェンスセンサを用いる方法がある。トラフ線路が敷設された、侵入が制限された区域に、侵入検知フェンスセンサを配置することで、人が当該区域に侵入したことを検知することができる。
【0006】
このような、侵入検知フェンスセンサは、例えば、光ケーブルと、この光ケーブルに外力が加わって変位した場合に、光ケーブルの心線部を強制的に屈曲させる可動体を用いたものがある。光ケーブルの心線部が屈曲する際に生じる光伝送損失が一定値以上となった場合に、侵入を検知した信号を出力するものである(特許文献3)。
【0007】
また、振動式光ファイバフェンスセンサを用い、侵入者がフェンスを乗り越える時に発生する振動を検知して振動式の侵入者検知システムがある。この方式では、フェンスにセンサーを設置した区間での振動を検知する。このシステムでは、検知区間に設けた2つのケーブルセンサを使用して、外力の影響で光の受光量が変動することで、侵入を検知して、侵入区間を特定するものである(特許文献4)。
【0008】
また、多数の光ファイバ線路から構成される光通信システムにおいて、複数の光ファイバ線路における障害点の探索が可能な光線路監視方法がある。この方法は、出射する検査光の波長を変化自在なOTDR(Optical Time Domain Reflectometer)を用い、それぞれの光ファイバ線路に所定の波長域通過型の誘電体多層膜フィルタを配置し、各光ファイバ線路から反射してくる検査光をOTDR装置で順次受光し、受光した検査光の反射光レベルから、各光ファイバ線路を監視するものである(特許文献5)。
【0009】
また、波長可変光源等を用いたOTDR監視システムがある。この方法は、システム加入者の光通信端末と光分岐結合器を結ぶ光ファイバ線路のそれぞれに、試験用の1波長の光のみを反射する光部品を配置する。これにより、多数のシステム加入者の光通信端末との間を結ぶ複数本の光ファイバ線路の障害点を特定することができる(特許文献6)。
【0010】
また、監視用光ファイバに所定の光損失を発生する光損失部を形成して、光損失部の位置を識別する光ファイバ路線監視システムがある。この方法は、光ファイバ路線の所定の箇所に複数個のクロージャ部品を順次配置し、クロージャ部品内の監視用光ファイバに所定の値の光損失を発生する光損失部を形成する。これにより、全ての光ファイバ接続点の位置情報を明確に得ることができる(特許文献7)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10-164723号公報
【特許文献2】国際公開公報2011/104863
【特許文献3】特開2006-53888号公報
【特許文献4】特開2000-182158号公報
【特許文献5】特開平6-117961号公報
【特許文献6】特開平6-350530号公報
【特許文献7】特開2008-32592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1、2のように、トラフ本体にトラフ蓋を固定することで、トラフ蓋を開けることが困難となり、内部のケーブル等の盗難が困難となる。また、さらに、特許文献2のように、トラフ本体にトラフ蓋を強固にボルトで固定するだけでなく、ボルト頭部の嵌合部の形状を特殊な形状とすることで、専用工具を用いないとトラフ蓋を外すことができないため、さらに有効である。
【0013】
しかし、特許文献1、2は、トラフ蓋が開けられることを物理的に困難とするのみであり、トラフ蓋が開けられてしまえば、トラフ本体内のケーブルを盗難から守ることは必ずしも十分に実現されていない。また、盗難自体を監視することもできない。
【0014】
一方、特許文献3、4に記載の侵入検知用フェンスセンサは、侵入が制限された区域に、人が侵入したことを検知するものである。このため、ケーブルの盗難を事前に知ることができる。
【0015】
しかし、特許文献3、4の方法は、直接ケーブルの盗難を検知するものではなく、また、フェンスがない部分には、このシステムを設置することができない。例えば、フェンスに敷設された工事用開閉口から侵入者が出入りしたり、大きな外力が加わらない状態では、人の侵入を検知することができない。
【0016】
一方、特許文献5~7は、監視対象とするケーブルを監視する場合の測定上の問題点を解決することを目的とするものである。特許文献5~7は、光ファイバケーブルの盗難を防止するために、現用の通信用光ケーブルを用いて監視を行うため、使用中のケーブルが損傷するか、切断により破断するかしないないと検知できない。したがって、泥棒がケーブルを切断する前に盗難を検知することはできない。
【0017】
また、既設のケーブルを利用する特許文献5~7監視方法では、トラフ内部に通信用光ケーブルが敷設されていることを前提とするため、トラフ内に通信用光ケーブルが敷設されていない場合には利用できない。また、トラフ内に通信用光ケーブルが敷設されていても、通信用光ケーブルは経済的価値が低く、通信用光ケーブルが盗難の対象にならず、電力ケーブルのみが盗難の対象となる場合が多いことから、電力ケーブルのみが盗まれた場合には検知できない。
【0018】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、トラフ内のケーブルの盗難を事前に確実に検知することが可能なトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造、これを用いたトラフ線路におけるケーブルセンサの配線構造及びトラフ線路の監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、内部にケーブルが収納されたトラフ本体に固定されるトラフ蓋と、前記トラフ蓋の長手方向に配置されるケーブルセンサと、を具備することを特徴とするトラフ蓋へのケーブルセンサの取付け構造である。
【0020】
前記ケーブルセンサは前記トラフ蓋の上面に設けられてもよい。
【0021】
前記トラフ蓋には、前記ケーブルセンサが収容される収納部が設けられてもよい。
【0022】
前記収納部は、前記トラフ本体の長手方向に略直線状に形成される複数の凸状部であり、前記ケーブルセンサは、互いに対向する前記凸状部の間に形成される溝部に収容されてもよい。
【0023】
前記収納部の、前記トラフ蓋の長手方向の先後端部近傍に、前記溝部の幅が広くなる拡幅部が設けられてもよい。
【0024】
前記収納部の開口部を保護テープで覆うか、前記収納部に固定部材が固定され、前記収納部の開口が塞がれてもよい。ここで、保護テープや固定部材は、ケーブルセンサを前記収納部に固定するための部材である。
【0025】
前記保護テープまたは前記固定部材の天面に凹凸部が形成されるか、文字が印刷されてもよい。
【0026】
前記トラフ蓋の上面には滑り止め突起を有し、前記凸状部の高さは前記滑り止め突起の高さと等しいか、前記滑り止め突起より低くてもよい。
【0027】
前記トラフ蓋の上面には滑り止め突起を有し、前記固定部材の高さは前記滑り止め突起の高さと等しいか、前記滑り止め突起より低くてもよい。
【0028】
前記トラフ蓋の上面には、複数の凸部が設けられ、前記ケーブルセンサが、前記凸部と干渉しないように前記凸部同士の間に配置されてもよい。
【0029】
この場合、前記凸部は、前記トラフ蓋の幅方向の略中央に、4隅が開口した略四角形状が前記トラフ本体の長手方向に繰り返して配置され、前記ケーブルセンサは、前記凸部が形成する略四角形状の対角線方向に配置され、保護部材が前記略四角形状に嵌まるように形成されてもよい。
【0030】
この場合、さらに、前記ケーブルセンサの長手方向の少なくとも一部が、保護部材で覆われてもよい。ここで、保護部材は前記ケーブルセンサを少なくとも保護する役割を果たすものである。
【0031】
前記トラフ本体及び前記トラフ蓋は樹脂製であってもよい。
【0032】
前記ケーブルセンサは、光ファイバケーブルであってもよい。
【0033】
この場合、前記トラフ蓋の所定位置に、前記光ファイバケーブルの接続部が収納される、ケーブル接続部収納部が設けられてもよい。
【0034】
前記光ファイバケーブルは、光ファイバ心線と、前記光ファイバ心線を保護する抗張力体と、を具備してもよい。
【0035】
前記光ファイバケーブルは、保護管に挿入されたものであってもよい。保護管は強度や耐久性、耐候性の観点からすると金属製が望ましい。
【0036】
前記トラフ蓋の長手方向の端部近傍に、前記ケーブルセンサの浮き上がりを防止するための保持部が形成されてもよい。
【0037】
この場合、前記保持部は、前記トラフ蓋を前記トラフ本体に固定するための金属製固定部材であってもよい。
【0038】
前記ケーブルセンサは、通電ケーブルであってもよい。
【0039】
第1の発明によれば、トラフ蓋にケーブルセンサが配置されるため、泥棒がトラフ本体内のケーブルを盗難するために、トラフ蓋を開けようとすると、ケーブルセンサの切断や曲りが生じることで、トラフ蓋が開けられることを検知することができる。このため、ケーブルが切断される前に盗難を検知することができる。また、特殊なフェンスなどを要しないため、設置場所を選ぶこともない。
【0040】
また、トラフ蓋の上面にケーブルセンサを設けることで、ケーブルセンサの設置が容易である。
【0041】
また、トラフ蓋にケーブルセンサを収容する収納部を設けることで、ケーブルセンサの敷設が容易であり、ケーブルセンサを保護することができる。
【0042】
また、収納部が、凸状部の間の溝部であれば、ケーブルセンサの敷設が容易であり、また、凸状部によって、ケーブルセンサが作業者等によって直接踏まれることを防止し、ケーブルセンサを保護することができる。
【0043】
また、ケーブルセンサが、溝部に圧入されていれば、ケーブルセンサが、溝部内で動くことがない。このため、より確実に、ケーブルセンサを保持することができる。
【0044】
また、トラフ蓋の長手方向の先後端部近傍に、溝部の幅が広くなる拡幅部を設けることで、トラフ同士が角度をつけて連結されたトラフ線路とした際、連結部において、ケーブルセンサの局部的な曲りを抑制することができる。
【0045】
また、収納部の開口部を保護テープで覆うことで、収納部への異物の混入を防止し、内部のケーブルセンサをより確実に保護することができる。
【0046】
同様に、収納部に固定部材を設け、収納部を固定部材で覆うことで、収納部への異物の混入を防止し、内部のケーブルセンサをより確実に保護することができる。
【0047】
この際、固定部材によって、内部のケーブルセンサを押圧することで、ケーブルセンサが、溝部内で動くことがない。このため、より確実に、ケーブルセンサを保持することができる。
【0048】
また、保護テープまたは固定部材の天面に凹凸部を形成するか、文字を印刷することで、ケーブルセンサがあることを作業者や侵入者に対して、知らせることができる。
【0049】
また、トラフ蓋の上面に滑り止め突起が設けられる場合に、凸状部の高さを滑り止め突起の高さ以下とすることで、トラフ蓋上を作業者が歩行した際に、作業者が滑り止め突起を確実に踏むことができる。このため、作業者が、長手方向に配置された凸状部のみを踏み、トラフ蓋上で滑ることを防止することができる。
【0050】
同様に、固定部材の高さを、滑り止め突起の高さ以下とすることで、トラフ蓋上を作業者が歩行した際に、作業者が滑り止め突起を確実に踏むことができ、作業者が、トラフ蓋上で滑ることを防止することができる。
【0051】
また、トラフ蓋の上面に、複数の凸部が設けられる場合において、ケーブルセンサを凸部と干渉しないように凸部同士の間に配置することで、ケーブルセンサが凸部を乗り越えることがなく、作業者等によってケーブルセンサが直接踏みつけられることを抑制することができる。
【0052】
この場合、ケーブルセンサが、トラフ蓋の幅方向の略中央に複数対向して設けられた凸部間に配置されれば、ケーブルセンサを凸部と干渉することなく、トラフ蓋の略中央に配置することができる。
【0053】
ここで、凸部は、トラフ長手方向に対して所定角度で形成されていれば、滑り止め効果を有するが、凸部が長手方向に略平行に形成されている場合には、滑り止め効果がない。そこで、この場合には、凸部の天面には滑り止め用の凹凸が形成されていることが望ましい。このように、凸部の天面に滑り止め用の凹凸が形成されていれば、凸部がいかなる方向に形成されていても、滑り止め効果を得ることができる。滑り止め用の凹凸は、トラフ幅方向に略平行に繰り返して形成されていることが望ましい。
【0054】
また、凸部が、4隅が開口した略四角形状がトラフ本体の長手方向に繰り返して配置され、ケーブルセンサがこの四角形状の対角線方向に配置されれば、ケーブルセンサを、凸部と干渉することなく凸部間に配置することができる。
【0055】
また、ここで、トラフ蓋の表面に収納部などを設けずに、トラフ蓋の表面にケーブルセンサを設ける場合には、保護部材11をこの四角形状に嵌るように配置することもできる。このように配置することで、ケーブルセンサの保護と同時に、ケーブルセンサがトラフ蓋から脱落したり、動いたりすることを防止することができる。以上のように、ケーブルセンサの少なくとも一部が保護部材で保護されることで、ケーブルセンサがトラフ蓋から脱落したり、ケーブルセンサの位置が動いたりすることを防止することができる。
【0056】
また、トラフ本体及びトラフ蓋が樹脂製であれば、軽量であり、トラフ線路の敷設作業が容易である。
【0057】
また、ケーブルセンサが、光ファイバケーブルであれば、光の強度などを検知することで、ケーブルセンサの切断や曲りを検出することができる。
【0058】
この場合に、トラフ蓋の所定位置に、光ファイバケーブルの接続部を収納するためのケーブル接続部収納部が設けられれば、光ファイバケーブルの接続部をトラフ蓋に収納することができる。このため、長いトラフ線路にも適用可能であるとともに、ケーブル接続部を保護することができる。また、ケーブル接続部が、トラフ蓋上を歩行する作業者等の邪魔になることもない。
【0059】
また、光ファイバケーブルが、抗張力体を具備すれば、光ファイバケーブルを敷設する際などの取り扱い時において、光ファイバケーブルの断線等を防止し、光ファイバケーブルの取扱い性が優れる。
【0060】
同様に、光ファイバケーブルが、保護管に挿入されれば、光ファイバケーブルを敷設する際などの取り扱い時において、光ファイバケーブルの断線等を防止し、光ファイバケーブルの取扱い性が優れる。保護管は、金属製でなくても良いが、強度や耐久性、耐候性の観点では、金属製が望ましい。
【0061】
また、トラフ蓋の長手方向の端部近傍に、ケーブルセンサの浮き上がりを防止するための保持部を形成すれば、トラフ蓋を開いた際に、ケーブルセンサを確実に屈曲させることができる。このため、トラフ蓋が開けられたことを確実に検知することができる。
【0062】
この場合、トラフ蓋をトラフ本体に固定するための金属製固定部材を保持部として利用することで、新たな部材を用いる必要がなく、作業性も良好である。
【0063】
また、本発明では、ケーブルセンサが通電ケーブルであってもよい。この場合でも、通電ケーブルが切断され、通電が遮断されることで、トラフ蓋が開けられたことを検知することができる。
【0064】
第2の発明は、第1の発明にかかるトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造を具備し、複数の前記トラフ本体が連結されたトラフ線路に、前記光ファイバケーブルが配線されることを特徴とするトラフ線路におけるケーブルセンサの配線構造である。
【0065】
また、第1の発明にかかるトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造を具備し、複数の前記トラフ本体が連結されて形成されたトラフ線路に、前記通電ケーブルが配線されることを特徴とするトラフ線路におけるケーブルセンサの配線構造とすることもできる。
【0066】
第2の発明によれば、長いトラフ線路の全体に対して、ケーブルの盗難を監視することができる。
【0067】
第3の発明は、監視対象であり、内部にケーブルが収納されたトラフ線路の、トラフ蓋の長手方向に配置した光ファイバケーブルの一方の端部から、所定波長の光を、前記光ファイバケーブルに連続的に入射して、前記光ファイバケーブルの反対側の端部から出射される光を受光装置に導いて光強度を常時測定することで、前記光ファイバケーブルの局部的曲がりまたは破断を検知し、前記トラフ線路のトラフ蓋が開けられることを監視することを特徴とするトラフ線路の監視方法である。
【0068】
この方法によれば、連続光の強度変化によって、光ファイバケーブルの局部的曲がりまたは破断を検知することができるため、トラフ線路のトラフ蓋が開けられることを監視することができる。
【0069】
また、本発明は、監視対象であり、内部にケーブルが収納されたトラフ線路の、トラフ蓋の長手方向に配線された光ファイバケーブルの心線の一方の端部とOTDR装置を接続し、前記OTDR装置から発信されたパルス波の前記光ファイバケーブルからの後方散乱光の強度変化を測定し、トラフ線路の前記光ファイバケーブルの局部的曲がりまたは破断の発生位置を検知することで、前記トラフ線路のトラフ蓋が開けられることを監視することを特徴とするトラフ線路の監視方法である。
【0070】
この方法によれば、OTDR装置を用いることで、光ファイバケーブルの局部的曲がりまたは破断を検知することができるとともに、その位置を知ることもできるため、トラフ蓋が開けられる位置も知ることができる。
【0071】
また、本発明は、監視対象であり、内部にケーブルが収納された複数のトラフ線路の、トラフ蓋の長手方向に配置したそれぞれの光ファイバケーブルの1心の心線を用い、前記光ファイバケーブルのそれぞれの端部は、光カプラを介して複数の心線に分岐され、分岐された一つの前記心線の端部はOTDR装置と接続され、分岐された他の前記心線の端部に配置した光源から前記OTDR装置に用いるパルス波とは波長の異なる連続光を、前記光カプラを通じて前記それぞれの光ファイバケーブルの一方の端部側から連続的に入射して、前記光ファイバケーブルの他方の端部側において、前記連続光のみを前記光カプラにより分波して受光装置に導いて光強度を常時測定することで、前記それぞれの光ファイバケーブルの局部的曲がりまたは破断が発生した光ファイバケーブルを検知し、前記局部的曲がりまたは破断が検知された特定のトラフ線路の光ファイバケーブルの心線にOTDR装置を光スイッチにより接続して、前記OTDR装置から発信されたパルス波の前記光ファイバケーブルからの後方散乱光の強度変化を測定することで、トラフ線路の前記光ファイバケーブルの局部的曲がりまたは破断の発生位置を検知することで、前記トラフ線路のトラフ蓋が開けられることを監視することを特徴とするトラフ線路の監視方法である。
【0072】
この方法によれば、1心の光ファイバ心線を用い、光カプラによって、連続光と、OTDR装置を用いたパルス光の、両者を測定することができる。このため、光ファイバケーブルの局部的曲がりまたは破断を連続光によっていち早く検知することができるとともに、OTDR装置によって、その位置を知ることもできる。
【0073】
また、本発明は、監視対象であり、内部にケーブルが収納された複数のトラフ線路の、トラフ蓋の長手方向に配置したそれぞれの光ファイバケーブルの2心の心線を用い、一方の前記心線の一方の端部に配置した光源から所定波長の連続光を、前記それぞれの光ファイバケーブルに連続的に入射して、反対の端部に配置した受光装置に導いて、前記連続光の光強度を常時測定することで、前記それぞれの光ファイバケーブルの局部的曲がりまたは破断を検知し、
局部的曲がりまたは破断が検知された特定の前記トラフ線路の光ファイバケーブルの他方の前記心線とOTDR装置を接続し、前記OTDR装置から発信されたパルス波の前記光ファイバケーブルからの後方散乱光の強度変化を測定することで、トラフ線路の前記光ファイバケーブルの局部的曲がりまたは破断の発生位置を検知し、前記トラフ線路のトラフ蓋が開けられることを監視することを特徴とするトラフ線路の監視方法である。
【0074】
この方法によれば、2心の光ファイバ心線を用い、一方は連続光を検出し、他方がOTDR装置を用いたパルス光を検出するため、その両者を測定することができる。このため、光ファイバケーブルの局部的曲がりまたは破断を連続光によっていち早く検知することができるとともに、OTDR装置によって、その位置を知ることもできる。
【0075】
また、監視対象の前記トラフ線路が複数設けられ、それぞれの前記トラフ線路の前記トラフ蓋に前記光ファイバケーブルが配置され、光スイッチによって、前記OTDR装置と、それぞれの前記トラフ線路の前記光ファイバケーブルとが接続され、複数の前記トラフ線路の内、前記光ファイバケーブルの局部的曲がりまたは破断を検知したトラフ線路を特定することで、いずれの前記トラフ線路のトラフ蓋が開けられるかを監視してもよい。
【0076】
このようにすることで、複数のトラフ線路を、連続光によって監視し、光ファイバケーブルの局部的曲がりまたは破断を検知したトラフ線路を特定した後、当該トラフ線路の異常位置を、OTDR装置によって検知することができる。このため、一つのOTDR装置によって、効率よく、複数のトラフ線路を監視することができる。
【0077】
前記光スイッチを切り換えることで、複数の前記トラフ線路のそれぞれの前記光ファイバケーブルについて前記OTDR装置による測定を所定時間毎に順に行い、それぞれの前記トラフ線路における所定時間毎に測定した最新の測定データと、所定時間前の測定値とを対比して、それぞれの測定位置における対比した後方散乱光の強度の差が、あらかじめ設定した強度レベルである閾値以上であれば、損傷または破断有りと判断し、閾値未満であれば損傷または破断無と判断してもよい。
【0078】
このようにすることで、確実に、OTDR装置を用いて異常を検知することができるとともに、異常が発生した位置を特定することができる。
【0079】
第3の発明によれば、トラフ蓋にケーブルセンサを取り付けたトラフ線路を、OTDR装置などを用いて監視することで、トラフ内に敷設したケーブルの盗難を確実に監視することができる。
【発明の効果】
【0080】
本発明によれば、トラフ内のケーブルの盗難を事前に確実に検知することが可能なトラフ蓋へのケーブルセンサの取り付け構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1】ケーブルセンサ取り付け構造10を示す斜視図。
図2】(a)はケーブルセンサ取り付け構造10を示す平面図、(b)は(a)のA-A線断面図。
図3】(a)はケーブルセンサ取り付け構造10aを示す平面図、(b)は(a)のC-C線断面図。
図4】(a)はケーブルセンサ取り付け構造10jを示す平面図、(b)は(a)のH-H線断面図。
図5】(a)はケーブルセンサ取り付け構造10bを示す平面図、(b)は(a)のE-E線断面図。
図6】(a)は、ケーブルセンサ取り付け構造10bの、収納部12近傍の拡大図、(b)は、ケーブルセンサ取り付け構造10cの、収納部12近傍の拡大図、(c)は、ケーブルセンサ取り付け構造10dの、収納部12近傍の拡大図。
図7】(a)は、ケーブルセンサ取り付け構造10eの、収納部12近傍の拡大図、(b)は、ケーブルセンサ取り付け構造10fの、収納部12近傍の拡大図、(c)は、ケーブルセンサ取り付け構造10gの、収納部12近傍の拡大図。
図8】(a)はケーブルセンサ取り付け構造10hを示す平面図、(b)はケーブルセンサ取り付け構造10iを示す平面図。
図9】(a)はケーブルセンサ配線構造30を示す側面図、(b)はトラフ蓋5が開けられた状態を示す側面図。
図10】(a)はケーブルセンサ配線構造30のトラフ蓋5が開けられた状態を示す側面図、(b)はケーブルセンサ配線構造30のトラフ蓋5が開けられた状態を示す側面図。
図11】(a)はケーブルセンサ配線構造30aのトラフ蓋5が開けられた状態を示す側面図、(b)は(a)のG-G線断面図。
図12】(a)、(b)は、トラフ線路監視システム40を示す構成図。
図13】(a)はトラフ線路監視システム40aを示す構成図、(b)はトラフ線路監視システム40bを示す構成図。
図14】(a)はトラフ線路監視システム40cを示す構成図、(b)はトラフ線路監視システム40dを示す構成図。
図15】(a)はトラフ線路監視システム40eを示す構成図、(b)はトラフ線路監視システム40fを示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0082】
<ケーブルセンサ取り付け構造>
(第1実施形態)
以下、本発明の実施の形態にかかるケーブルセンサ取り付け構造について説明する。図1はケーブルセンサ取り付け構造10を示す斜視図であり、図2(a)はケーブルセンサ取り付け構造10を示す平面図、図2(b)は図2(a)のA-A線断面図である。
【0083】
トラフは、トラフ本体3とトラフ蓋5からなる。トラフ本体3およびトラフ蓋5は、例えば樹脂製であり、プレス成型や射出成型によって成型される。
【0084】
トラフ本体3は、内部に図示を省略したケーブルが収容される。また、トラフ本体3の長手方向の両端には、それぞれ嵌合部が設けられ、トラフ本体3同士を連結することができる。
【0085】
トラフ蓋5は、トラフ本体3の上方の開口部を塞ぐように配置される。トラフ蓋5の長手方向の両端には、それぞれ嵌合部が設けられ、トラフ蓋5同士を連結することができる。なお、トラフ本体3およびトラフ蓋5が、長手方向に複数連結されたものを、トラフ線路と称する。
【0086】
トラフ蓋5は、トラフ本体3に対して固定可能である。例えば、トラフ本体3に設けられた係止部7を用い、トラフ蓋5の上方から、金属製の固定部材等(図示せず)を配置し、固定部材の端部を係止部7に係止することで、トラフ蓋5をトラフ本体3に固定することができる。なお、トラフ本体3へのトラフ蓋5の固定方法は、ボルトなどを用いた方法等、公知の手法を適用可能である。
【0087】
トラフ蓋5の上面には、複数の滑り止め突起9が設けられる。滑り止め突起9は、トラフ蓋5の上面に形成された所定の長さを有する凸部である。滑り止め突起9は、図示したように、トラフ蓋5の幅方向の略中央に、4隅が開口した略四角形状がトラフ蓋5の長手方向に繰り返して配置される。なお、滑り止め突起9(凸部)の形状や配置は図示した例には限られない。また、トラフ蓋5の上面には、必ずしも滑り止め突起9がなくてもよく、滑り止め突起9以外の凸部を形成してもよい。
【0088】
ここで、本発明における凸部とは上記のように、滑り止め突起以外のものも含むものである。たとえば、トラフ長手方向に平行または略平行に所定長さで、凸部を形成することがある。この場合に、凸部は滑り止め突起としての効果はほとんど認められないが、トラフ断面の断面係数を向上させトラフの耐荷重性を向上させることができるが、凸部にはこのような凸部も含まれる。
【0089】
トラフ蓋5の上面には、トラフ蓋5の長手方向に対してケーブルセンサ1が設けられる。なお、本実施形態では、ケーブルセンサ1は、光ファイバケーブルである。光ファイバケーブルは、監視区間が長いため、通常のシングルモード光ファイバが用いられる。なお、ケーブルセンサ1の詳細な構成については後述する。
【0090】
ケーブルセンサ1は、トラフ蓋5の上面において、トラフ蓋5の幅方向の略中央に配置される。すなわち、ケーブルセンサ1は、滑り止め突起9(凸部)と干渉しないように、複数対向して設けられた滑り止め突起9(凸部)同士の間に配置される。したがって、ケーブルセンサ1は、トラフ蓋の長手方向の任意の位置における幅方向断面において、滑り止め突起9(凸部)と干渉することがなく、滑り止め突起が形成されていない空間をトラフ蓋上に確保して、その空間に配置される。なお、図示した例では、ケーブルセンサ1は、滑り止め突起9(凸部)が形成する略四角形状の対角線方向に配置される。
【0091】
なお、ケーブルセンサ1の配置は、図示した例には限られない。例えば、ケーブルセンサ1は、トラフ蓋5の上面の中央からずれた位置に配置されてもよい。また、ケーブルセンサ1は、トラフ蓋5の上面ではなく、側面や内面に配置されてもよい。
【0092】
図2(b)に示すように、ケーブルセンサ1は、滑り止め突起9の高さ(図中B)と同じか、それよりも低い位置に配置されることが望ましい。すなわち、滑り止め突起9の高さ(図中B)よりも、ケーブルセンサ1が上方にはみ出さないことが望ましい。このようにすることで、トラフ蓋5上を作業者が歩行した際に、歩行者がケーブルセンサ1を直接踏むことを抑制することができる。また、作業者は、確実に滑り止め突起9を踏むことができるため、トラフ蓋5上での滑りを抑制することができる。
【0093】
ケーブルセンサ1は、少なくとも一方の端部から光が入射されており、反射光の光強度や、他端からの出射光の光強度等を測定することで、ケーブルセンサ1に局部的な曲りや切断がないかを検知することができる。なお、トラフ線路の監視方法の詳細は後述する。
【0094】
本実施形態によれば、トラフ線路20の上面にケーブルセンサ1を配置することで、トラフ蓋5を開ける際には、ケーブルセンサ1の屈曲や切断を伴う。このため、ケーブルセンサ1の屈曲や切断を検知することで、トラフ蓋5が開けられることを監視することができる。このため、内部のケーブルの盗難を確実に、より早いタイミングで検知することができる。
【0095】
また、ケーブルセンサ1は、トラフ蓋5の上面に配置されるため、ケーブルセンサ1の敷設が容易である。また、ケーブルセンサ1が滑り止め突起9と干渉しないように配置されるため、ケーブルセンサ1が、滑り止め突起9の上に乗りあげることがない。このため、トラフ蓋5上を歩行する作業者が、ケーブルセンサ1を踏みつけ、ケーブルセンサ1が損傷することを防止することができる。
【0096】
(第2実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図3(a)は、第2の実施形態にかかるケーブルセンサ取り付け構造10aを示す平面図、図3(b)は図3(a)のC-C線断面図である。なお、以下の説明において、ケーブルセンサ取り付け構造10と同一の機能を奏する構成については、図1図2と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0097】
ケーブルセンサ取り付け構造10aは、ケーブルセンサ取り付け構造10とほぼ同様の構成であるが、保護部材11が設けられる点で異なる。保護部材11は、ケーブルセンサ1を覆う部材である。保護部材11は、例えば、樹脂や金属など、ケーブルセンサ1をトラフ蓋5の上面に保持し、部分的に保護するものである。保護部材11は、トラフ蓋5の上面に接着等によって固定される。
【0098】
なお、保護部材11は、ケーブルセンサ1の長手方向の全体を覆うように配置されなくてもよい。例えば、ケーブルセンサ1の長手方向の少なくとも一部を覆うように配置されればよいが、長手方向の全体を覆うように配置されることが望ましい。
【0099】
前述したように、ケーブルセンサ1は、トラフ蓋5の上面において、滑り止め突起9と干渉しないように、トラフ蓋5の長手方向に沿って配置される。この際、例えば、4つの滑り止め突起9によって、略四角形状が形成され、ケーブルセンサ1は、この四角形状の対角線を貫くように配置される。保護部材11は、例えば、この四角形状に嵌る形状に形成され配置される。
【0100】
なお、図3(b)に示すように、保護部材11をトラフ蓋5上配置した際、保護部材11の上面が、滑り止め突起9の高さ(図中B)と同じか、それよりも低い位置に配置されることが望ましい。すなわち、滑り止め突起9の高さ(図中B)よりも、保護部材11が上方にはみ出さないことが望ましい。このようにすることで、トラフ蓋5上を作業者が歩行した際に、歩行者が保護部材11を直接踏んでつまずいたりすることを防止することができる。また、作業者は、保護部材11を直接踏んだとしても、確実に滑り止め突起9を踏むことができるため、トラフ蓋5上での滑りを抑制することができる。ここで、トラフ蓋5上の滑り止め突起は、トラフ蓋に突起を設けない場合に比べて、トラフ蓋の断面が補強され、トラフ蓋の剛性を高める効果がある。
【0101】
また、図示した例では、保護部材11の下面には、ケーブルセンサ1との干渉を避けるための溝が形成される例を示したが、本実施形態はこれに限られない。例えば、発泡樹脂シート製のシール状の保護部材11を用いれば、保護部材11をケーブルセンサ1の厚みに応じた形状に変形させてトラフ蓋5上に貼り付けることができる。
【0102】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、ケーブルセンサ1の一部が、保護部材11で保護されることで、ケーブルセンサ1がトラフ蓋5から脱落したり、ケーブルセンサ1の位置が動いたりすることを防止することができる。
【0103】
尚、図4(a)に示すケーブルセンサ取り付け構造10jに示すように、所定間隔を開けて保護部材11を設けた後、保護部材11の間に、保護部材11aをケーブルセンサ1に被せてもよい。図4(b)は、図4(a)のH-H線断面図である。保護部材11aは、開口部が形成された断面が略コの字型の部材である。保護部材11aは、開口部をトラフ蓋表面に向けてケーブルセンサ1に被せられる。ケーブルセンサ1に保護部材11aを被せる場合には、保護部材11aの開口部の形状は、ケーブルセンサ1の断面形状と略相似形であり、開口部寸法がケーブルセンサ1の横幅より少し小さく設定されていて、ケーブルセンサ1に圧入して被せることが望ましい。このようにすることで、ケーブルセンサの保護部材11では保護されていない部分を保護部材11aで保護することができ、ケーブルセンサの保護部材11aで被覆される被覆長さを増加させ、必要に応じてケーブルセンサ全長の保護を行うことができる。尚、ケーブルセンサを保護部材11aで保護した場合には、保護部材11aをケーブルセンサに被せただけでは、ケーブルセンサをトラフ蓋5に固定する効果はない。
【0104】
なお、保護部材11aの開口部先端面に接着剤を塗布することで、保護部材11aをトラフ蓋に固定することができる。また、トラフ蓋上に保護部材11aを固定する場合には、接着材を用いずにステープラー等で固定することもできる。ここで、略四角形状の凸部に嵌まる形状の保護部材11と保護部材11aを適宜組み合わせることで、ケーブルセンサ全長を保護することができる。
【0105】
(第3実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図5(a)は、第3の実施形態にかかるケーブルセンサ取り付け構造10bを示す平面図、図5(b)は図5(a)のE-E線断面図である。ケーブルセンサ取り付け構造10bは、ケーブルセンサ取り付け構造10とほぼ同様の構成であるが、収納部12が設けられる点で異なる。
【0106】
収納部12は、ケーブルセンサ1が収容される部位である。収納部12は、トラフ蓋5の上面に形成された複数の凸状部13と、互いに対向する凸状部13の間に形成される溝部14とからなる。複数(図では一対)の凸状部13は、互いに隙間をあけて、トラフ蓋5の長手方向に沿って直線状に形成される。凸状部13同士の間が溝部14となる。溝部14の幅は、ケーブルセンサ1が収容可能なように、ケーブルセンサ1の幅よりもわずかに大きく設定される。
【0107】
凸状部13の上面には、凸状部の形成方向であるトラフ長手方向に対して垂直な方向に、滑り止め用の凹凸を形成することが望ましい。また、凸状部13は、長手方向に所定長さ毎に、水抜き用の切れ目を入れることもできる。このようにすることで、凸状部13間にたまった水を水抜きすることができる。
【0108】
なお、収納部12は、図示したように、トラフ蓋5の上面において、トラフ蓋5の幅方向の略中央に形成される場合には限られないが、ケーブルセンサ1をトラフ蓋5の幅方向の上面中央に形成することで、トラフ蓋5全体の剛性を高めることができる。また、収納部12の凸状部13の天面に滑り止め用の凹凸を形成することで、凸状部13がトラフ蓋長手方向に形成されていても、歩行者が歩行時に滑ることがない。
【0109】
図6(a)は、ケーブルセンサ取り付け構造10bの収納部12近傍の拡大図である。凸状部13の上面は、滑り止め突起9の高さ(図中B)と同じか、それよりも低い位置に配置されることが望ましい。すなわち、滑り止め突起9の高さ(図中B)よりも、凸状部13が上方にはみ出さないことが望ましい。このようにすることで、トラフ蓋5上を作業者が歩行した際に、作業者は、確実に滑り止め突起9を踏むことができるため、トラフ蓋5上での滑りを抑制することができる。
【0110】
同様に、ケーブルセンサ1を溝部14に配置した際に、ケーブルセンサ1の上面が、凸状部13の高さと同じか、それよりも、低い位置に配置されることが望ましい。すなわち、凸状部13よりも、ケーブルセンサ1が上方にはみ出さないことが望ましい。このようにすることで、トラフ蓋5上を作業者が歩行した際に、歩行者がケーブルセンサ1を直接踏むことを抑制することができる。
【0111】
なお、溝部14の底面は、収納部12以外の部位のトラフ蓋5の上面と同一面上でなくてもよい。すなわち、凸状部13の上面からの溝部14の深さは、トラフ蓋5に対する凸状部13の高さと同一でなくてもよい。例えば、凸状部13の高さよりも溝部14を浅くすれば、トラフ蓋5の厚みを厚くすることができる。また、凸状部13の高さよりも溝部14を深くすれば、凸状部13の高さを低くしても、ケーブルセンサ1が凸状部13よりも上方にはみ出すことがない。
【0112】
ここで、前述した様に、本実施形態では、ケーブルセンサ1は光ファイバケーブル2である。光ファイバケーブル2は、光ファイバ心線16と抗張力体15とを具備する。抗張力体15は、光ファイバ心線16を保護する部材である。光ファイバケーブル2は、例えば、光ファイバ心線16と抗張力体15とが、樹脂製の外被によって一体化されている。
【0113】
このように、抗張力体15を具備することで、敷設工事などの取扱い時などにおいて、光ファイバ心線16を所定位置に敷設するため張力を掛けて敷設しても、光ファイバ心線16の断線や伸びなどを防止することができる。なお、光ファイバケーブル2の断面構造は、図示した例には限られない。また、光ファイバケーブル2は、光ファイバ心線16が1心であってもよく、多心であってもよい。
【0114】
第3の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、トラフ蓋5にケーブルセンサ1を収容する収納部12を設けることで、ケーブルセンサ1の敷設が容易であり、ケーブルセンサ1を保護することができる。特に、収納部12が、凸状部13と溝部14で構成されるため、ケーブルセンサ1が作業者等によって直接踏まれることを防止し、ケーブルセンサ1を保護することができる。
【0115】
(第4実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図6(b)は、第4の実施形態にかかるケーブルセンサ取り付け構造10cにおける、収納部12近傍の拡大断面図である。ケーブルセンサ取り付け構造10cは、ケーブルセンサ取り付け構造10bとほぼ同様の構成であるが、光ファイバケーブル2aが金属保護管17に挿入される点で異なる。
【0116】
前述した様に、ケーブルセンサ1が、光ファイバケーブルである場合には、取扱い時や設置後における破断や損傷を防止することが望ましい。本実施形態では、光ファイバケーブル2aは、金属保護管17に挿入される。このため、敷設工事などで、光ファイバケーブルを所定位置に敷設するため、張力を掛けて敷設しても、内部の光ファイバケーブル2aを確実に保護することができる。
【0117】
なお、金属保護管17は、容易に屈曲可能なものが望ましい。このようにすることで、敷設作業が容易である。また、トラフ蓋5を開ける際に、金属保護管17とともに内部の光ファイバケーブル2aが屈曲又は切断されるため、トラフ蓋5が開けられることを監視することができる。
【0118】
なお、光ファイバケーブル2aは、前述した様に、抗張力体15を有してもよく、抗張力体15を有さないものでも良い。また、前述した様に、光ファイバケーブル2aは、1心であってもよく、多心であってもよい。また、金属保護管17に、複数本の光ファイバケーブル2aを挿入してもよい。
【0119】
第4の実施の形態によれば、第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、金属保護管17によって、光ファイバケーブル2aを確実に保護することができる。
【0120】
(第5実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。図6(c)は、第5の実施形態にかかるケーブルセンサ取り付け構造10dにおける、収納部12近傍の拡大断面図である。ケーブルセンサ取り付け構造10dは、ケーブルセンサ取り付け構造10bとほぼ同様の構成であるが、ケーブルセンサ1が、通電ケーブル4である点で異なる。
【0121】
ケーブルセンサ取り付け構造10dでは、通電ケーブル4が敷設されてケーブルセンサ1として機能する。通電ケーブル4の抵抗または通電時の電流を監視し、通電ケーブル4が切断されて通電が遮断されると、この変化によってケーブルセンサ1が切断されたことを検知することができる。
【0122】
第5の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。このように、本発明では、ケーブルセンサ1は、通電ケーブルであってもよく、光ファイバケーブルでもよい。なお、以下の説明では、ケーブルセンサ1が光ファイバケーブルであるとして説明する。
【0123】
(第6実施形態)
次に、第6の実施形態について説明する。図7(a)は、第6の実施形態にかかるケーブルセンサ取り付け構造10eにおける、収納部12近傍の拡大断面図である。ケーブルセンサ取り付け構造10eは、ケーブルセンサ取り付け構造10bとほぼ同様の構成であるが、ケーブルセンサ1が、収納部12に圧入される点で異なる。
【0124】
ケーブルセンサ取り付け構造10eでは、溝部14の幅がケーブルセンサ1の幅以下で設定される。したがって、ケーブルセンサ1を溝部14に収容するためには、ケーブルセンサ1を溝部14に押込み、圧入することができる。このようにすることで、ケーブルセンサ1が溝部14内に確実に保持される。したがって、ケーブルセンサ1の浮き上がりや収納部12から脱落したり、ケーブルセンサ1の位置が動いたりすることを防止することができる。
【0125】
第6の実施の形態によれば、第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、ケーブルセンサ1を確実に収納部12に収容することができる。
【0126】
(第7実施形態)
次に、第7の実施形態について説明する。図7(b)は、第7の実施形態にかかるケーブルセンサ取り付け構造10fにおける、収納部12近傍の拡大断面図である。ケーブルセンサ取り付け構造10fは、ケーブルセンサ取り付け構造10bとほぼ同様の構成であるが、収納部12の上面に、保護テープ19が設けられる点で異なる。
【0127】
保護テープ19は、一対の凸状部13にまたがるように凸状部13上に貼り付けられ、トラフ蓋5の長手方向に沿って溝部14を塞ぐものである。すなわち、保護テープ19によって、収納部12の開口部が塞がれる。このため、ケーブルセンサ1が外部に露出することがない。
【0128】
なお、保護テープ19の上面は、滑り止め突起9の高さ(図中B)と同じか、それよりも低い位置に配置されることが望ましい。すなわち、滑り止め突起9の高さ(図中B)よりも、保護テープ19が上方にはみ出さないことが望ましい。このようにすることで、トラフ蓋5上を作業者が歩行した際に、作業者は、確実に滑り止め突起9を踏むことができるため、トラフ蓋5上での滑りを抑制することができる。
【0129】
また、保護テープ19の天面には凹凸部が形成されてもよい。また、保護テープ19の天面に文字が印刷されてもよい。このように、保護テープ19の天面に、凹凸形状を形成したり文字を印刷することで、内部にケーブルセンサ1が収容されていることを、作業者等が知ることができるとともに、泥棒への警告として機能させることができる。
【0130】
第7の実施の形態によれば、第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、保護テープ19によってケーブルセンサ1を保護することができる。また、保護テープ19によって、収納部12に異物等が侵入することを防止することができる。
【0131】
(第8実施形態)
次に、第8の実施形態について説明する。図7(c)は、第8の実施形態にかかるケーブルセンサ取り付け構造10gにおける、収納部12近傍の拡大断面図である。ケーブルセンサ取り付け構造10gは、ケーブルセンサ取り付け構造10fとほぼ同様の構成であるが、収納部12の上面に、固定部材21が設けられる点で異なる。
【0132】
固定部材21は、一対の凸状部13にまたがるように凸状部13上に固定され、トラフ蓋5の長手方向に沿って溝部14を塞ぐものである。すなわち、固定部材21によって、収納部12の開口部が塞がれる。このため、ケーブルセンサ1が外部に露出することがない。
【0133】
固定部材21は、例えば、樹脂製などの部材であり、収納部12に固定され、内部のケーブルセンサ1を保護するものである。なお、収納部12への固定部材21の固定方法は、図示したように、一対の凸状部13の側面まで被さるようにして、凸状部13に固定部材21を嵌めこんでもよく、他の方法であってもよい。
【0134】
なお、固定部材21の上面は、滑り止め突起9の高さ(図中B)と同じか、それよりも低い位置に配置されることが望ましい。すなわち、滑り止め突起9の高さ(図中B)よりも、固定部材21が上方にはみ出さないことが望ましい。このようにすることで、トラフ蓋5上を作業者が歩行した際に、作業者は、確実に滑り止め突起9を踏むことができるため、トラフ蓋5上での滑りを抑制することができる。
【0135】
また、固定部材21を収納部12に配置した際、固定部材21の下面で、ケーブルセンサ1の上面を押圧してもよい。例えば、ケーブルセンサ1の高さと溝部14の深さを略一致させて、固定部材21を収納部12に配置した際に、固定部材21の下面がケーブルセンサ1に接触するようにしてもよい。また、固定部材21の下面に、溝部14の幅に対応する凸部を形成し、凸部が溝部14に嵌りこみ、内部のケーブルセンサ1を押圧するように固定部材を中央に凸部を有するT字状に形成しても良い。このようにすることで、ケーブルセンサ1が溝部14内で動くことを防止することができる。
【0136】
なお、固定部材21の天面に対しても、凹凸形状の形成や文字を印刷することで、内部にケーブルセンサ1が収容されていることを、作業者等が知ることができるとともに、泥棒への警告として機能させることができる。
【0137】
第8の実施の形態によれば、第7の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、固定部材21によってケーブルセンサ1を保護することができる。また、固定部材21によって、収納部12に異物等が侵入することを防止することができる。
【0138】
(第9実施形態)
次に、第9の実施形態について説明する。図8(a)は、第9の実施形態にかかるケーブルセンサ取り付け構造10hの平面図である。ケーブルセンサ取り付け構造10hは、ケーブルセンサ取り付け構造10bとほぼ同様の構成であるが、収納部12の一部に、拡幅部23が設けられる点で異なる。
【0139】
トラフ蓋5の長手方向の先後端部近傍における収納部12には、溝部14の幅が端部側に向かって広くなるように拡幅部23が設けられる。すなわち、トラフ蓋5の長手方向の先後端部近傍では、凸状部13同士の間隔が広くなる。
【0140】
前述したように、トラフ本体3およびトラフ蓋5は、長手方向に複数連結されてトラフ線路を構成する。この際、トラフ線路は、必ずしも直線状の部位のみではなく、一部に曲り部が形成される。この場合には、トラフ本体3同士およびトラフ蓋5同士が、所定の角度をもって連結される。
【0141】
トラフ蓋5が所定の角度で連結されると、トラフ蓋5の連結部において、ケーブルセンサ1が屈曲する。この際、拡幅部23が形成されることで、ケーブルセンサ1の曲りをなだらかにすることができる。すなわち、ケーブルセンサ1の局部的な曲りを抑制することができる。このため、異常時において生じる局部的な屈曲を確実に検出することができる。ここで、図8(a)では、所定角度で拡幅する拡幅部を示したが、拡幅部の形状は、図示した形状に限らず略矩形状に拡幅する拡幅部や、拡幅部が徐々に拡幅部の寸法が大きくなる曲線状のものなど種々の形状が適用できる。
【0142】
第9の実施の形態によれば、第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、トラフ線路が曲がっている部位においても、ケーブルセンサ1が局部的に曲がることを抑制することができる。
【0143】
(第10実施形態)
次に、第10の実施形態について説明する。図8(b)は、第10の実施形態にかかるケーブルセンサ取り付け構造10iの平面図である。ケーブルセンサ取り付け構造10iは、ケーブルセンサ取り付け構造10bとほぼ同様の構成であるが、収納部12の一部に、ケーブル接続部27を収納するケーブル接続部収納部25が設けられる点で異なる。
【0144】
監視対象となるトラフ線路が長い場合には、複数本のケーブルセンサ1を接続して用いる場合がある。例えば、ケーブルセンサ1が光ファイバケーブル2である場合には、光ファイバケーブル2同士が接続される。すなわち、ケーブルセンサ1の一部に、ケーブル接続部27が形成される。
【0145】
ケーブル接続部27には、接続部の補強を行う補強部材などが設けられるため、接続部以外におけるケーブルセンサ1よりも大きなサイズとなる。したがって、ケーブル接続部27が収納部12の溝部14内に収まらない場合がある。本実施形態では、溝部14と連続するケーブル接続部収納部25が形成される。ケーブル接続部収納部25は、溝部14の幅よりも広く、深さが深い。このため、ケーブル接続部27を収容しても、ケーブル接続部27が、収納部12からはみ出すことがない。
【0146】
また、ケーブル接続部収納部25を形成するトラフ蓋5の全体厚さあるいはケーブル接続部収納部25外縁近傍のトラフ蓋5の厚さを、ケーブル接続部収納部25を形成しないトラフ蓋5の厚さに対して厚く設定してもよい。これにより、ケーブル接続部収納部25の幅と深さを大きくしてもトラフ蓋5の剛性を低下させることがない。トラフ蓋5の厚さを厚くするかどうかは、ケーブル接続部27の幅と深さの両者を考慮して決定すれば良い。
【0147】
なお、ケーブル接続部27は、一般的にはコネクタ接続、融着接続、クロージャ接続など種々の接続が考えられるが、本実施形態の場合には、トラフ蓋5のケーブル接続部収納部25に収容するため、コネクタ接続が好ましい。また、接続の確実性や接続部の寸法などを考慮すると融着接続を行うことが望ましい。また、ケーブルセンサ1をトラフ蓋5から取り出して接続することもできる。この場合には、クロージャ接続などを行うことができる。このように、ケーブルセンサ1を繰り返し接続することで、ケーブルセンサ1を接続して監視に必要な長さとすることができる。
【0148】
なお、ケーブル接続部収納部25の位置は、図示したように、トラフ蓋5の長手方向の略中央でなくてもよい。また、ケーブル接続部収納部25は複数形成されてもよい。また、ケーブル接続部収納部25が収納部12の直線上に配置されず、ずれた位置に配置されてもよい。
【0149】
第10の実施の形態によれば、第3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、ケーブル接続部27を確実に収容することができる。
【0150】
(第11実施形態)
次に、第11の実施形態について説明する。図9(a)は、ケーブルセンサ配線構造30を示す側面図である。なお、以下の図において、トラフ蓋5の図示を簡略化し、連結用の嵌合部や、滑り止め突起9および収納部12等の図示を省略する。
【0151】
ケーブルセンサ配線構造30は、複数のトラフ本体3およびトラフ蓋5が長手方向に連結されたトラフ線路20において、本発明にかかるいずれかのケーブルセンサ取り付け構造を具備するものである。すなわち、トラフ線路20におけるトラフ蓋5に、ケーブルセンサ1が配置されるものである。
【0152】
前述した様に、泥棒がトラフ蓋5を開けるためには、事前にケーブルセンサ1を切断するか、または、図9(b)に示すように、ケーブルセンサ1とともにトラフ蓋5を開けることとなる(図中F)。ケーブルセンサ1とともにトラフ蓋5を開ける場合には、ケーブルセンサ1に局部的な屈曲部(図中G)が形成される。
【0153】
このため、ケーブルセンサ1の切断や局部的な曲りを検知することで、トラフ蓋5が開けられることを検知することができる。したがって、泥棒が、内部のケーブルにアクセスする前に、トラフ線路20の異常を検知することができる。
【0154】
一方、図10(a)に示すように、トラフ蓋5を開けた際に、ケーブルセンサ1が隣り合うトラフ蓋5の上面から浮き上がると、局部的な屈曲部が形成されなくなる。すなわち、ケーブルセンサ1の屈曲がなだらかとなるため、異常を検知するために必要な屈曲を得ることができない。
【0155】
そこで、本実施形態におけるケーブルセンサ取り付け構造では、図10(b)に示すように、トラフ蓋5の長手方向の端部近傍に、ケーブルセンサ1の浮き上がりを防止するための保持部29が形成される。保持部29は、例えば、ケーブルセンサ1を上方から押さえ、トラフ蓋5から浮き上がりを防止可能であれば、金属や樹脂で形成することができる。保持部29は、強度や耐久性の点では、金属製であることが望ましい。保持部29としては、例えば、トラフ蓋5の上面にケーブルセンサ1を固定するための、ステープラーや樹脂などが適用可能である。
【0156】
なお、図10(b)における保持部29は概念図である。図10(b)では、保持部29がトラフ蓋5の上面に突出するように図示されているが、前述した様に、保持部29は、滑り止め突起9よりも上方にはみ出さないことが望ましい。
【0157】
第11の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、トラフ蓋5が開けられた際に、確実にケーブルセンサ1を屈曲させることができる。このため、トラフ蓋5が開けられることを確実に検知することができる。
【0158】
(第12実施形態)
次に、第12の実施形態について説明する。図11(a)は、ケーブルセンサ配線構造30aを示す側面図であり、図11(b)は、図11(a)のG-G線断面図である。ケーブルセンサ配線構造30aは、ケーブルセンサ配線構造30とほぼ同様の構成であるが、保持部29aが用いられる点で異なる。
【0159】
本実施形態におけるケーブルセンサ取り付け構造では、トラフ蓋5をトラフ本体3に固定するための固定部材31が保持部29aとして利用される。固定部材31は、板状の金属板を屈曲して形成され、天板部の両端部が天板部に対して略垂直に曲げられて一対の脚状部が形成される。すなわち、固定部材31は略U字状となる。
【0160】
それぞれの脚状部の先端は折曲げられて係止爪33となる。トラフ蓋5をトラフ本体3上に配置した状態で、固定部材31を上方から取り付け、係止爪33をトラフ本体3の係止部7に引っかけることで、トラフ蓋5がトラフ本体3に固定される。
【0161】
本実施形態では、固定部材31とトラフ蓋5の隙間にケーブルセンサ1が配置される。したがって、ケーブルセンサ1が、固定部材31によって、上方に浮か上がることが防止される。すなわち、保持部29aが固定部材31であれば、従来から使用される部材によって、ケーブルセンサ1の浮き上がりを防止することができる。また、固定部材31が所定幅を有するSUS等の金属製の薄板部材で形成される場合には、この固定部材31にリード線を固定して、さらにこのリード線をトラフ線路脇に存在する金属部材に地面アースすることにより、固定部材31により、作業者がトラフ上を歩行した時に帯電する静電気を除去することができる。
【0162】
このように、ケーブルセンサ1は固定部材31によりトラフ蓋5上に強固に固定されているので、内部のケーブルを盗もうとして、トラフ蓋5の一方の端部を持ち上げた際、持ち上げたトラフ蓋5と、持ち上げていない隣のトラフ蓋5の間において、固定部材31によりケーブルセンサ1が拘束を受けているため、ケーブルセンサ1に生じる曲げ歪みを分散させることができずに、ケーブルセンサ1の特定部位に歪みが集中することで局部的な曲げを生じさせることができる。このように、ケーブルセンサ1が局部的に大きな曲げ応力を受けることから、たとえケーブルセンサ1が切断されなくても、後述するOTDR装置によって、ケーブルセンサ1による後方散乱光の曲げ損失が増大し、OTDR監視装置での検出感度が増加する。なお、隣接する2つのトラフ蓋5を同時に持ち上げた時にも、同様の効果が得られる。
【0163】
第12の実施の形態によれば、第11の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、固定部材31を保持部29aとして利用することで、トラフ蓋5が開けられた際に、確実にケーブルセンサ1を屈曲させることができる。
【0164】
<トラフ線路の配線構造>
なお、以上説明した、それぞれのケーブルセンサ取り付け構造の各構成は、互いに組み合わせることができる。
ここで、前述のように、内部にケーブルが収納されたトラフ本体に固定されるトラフ蓋へのケーブルセンサ取り付け構造が、複数のトラフ本体が連結されて形成された監視対象のトラフ線路に形成されることで、トラフ線路の配線構造を得ることができる。
【0165】
<トラフ線路監視方法>
(第1実施形態)
次に、前述したケーブルセンサ取り付け構造を具備するトラフ線路20(ケーブルセンサの配線構造)を用いた、トラフ線路監視システムについて説明する。図12(a)は、トラフ線路監視システム40を示す構成図である。なお、以下の図において、ケーブルセンサ1をトラフ線路20から離して図示する場合があるが、いずれのケーブルセンサもトラフ蓋5上に配置されるものとする。また、以下の説明では、特に説明がない限り、ケーブルセンサ1は、光ファイバケーブルである例について示す。
【0166】
トラフ線路監視システム40は、監視対象であるトラフ線路20にケーブルセンサ1が配置される。トラフ線路20の内部にはケーブルが収納される。トラフ蓋5の長手方向に配置されるケーブルセンサ1の一方の端部には、光源35が光接続される。また、ケーブルセンサ1の他方の端部には、受光装置37が光接続される。なお、受光装置37とケーブルセンサ1は、例えばコネクタ接続(SPC:Super Physical Contact研磨)される。
【0167】
光源35は、ケーブルセンサ1の一方の端部から、所定波長の光を、ケーブルセンサ1に連続的に入射する。入射された連続光は、ケーブルセンサ1の反対側の端部から出射される。この光は、受光装置37に導かれて、光強度が常時測定される。
【0168】
前述したように、トラフ線路20において、いずれかのトラフ蓋5を開けようとすると、ケーブルセンサ1を切断するか、ケーブルセンサ1に局部的な曲げを与える必要がある。このようにケーブルセンサ1の切断や局部的な屈曲が生じると、受光装置37で受光する光強度が小さくなる。したがって、受光装置37で光強度を測定することで、ケーブルセンサ1の局部的曲がりまたは破断を検知し、トラフ線路20におけるトラフ蓋5が開けられることを監視することができる。
【0169】
なお、本実施形態では、ケーブルセンサ1の局部的曲がりまたは破断の有無を知ることができるが、その位置を検知することができない。図12(b)には、監視対象とする区間を多区間に区分し、トラフ線路監視システム40を区間ごとに配置することで、ケーブルセンサ1に損傷または破断が生じた区間を絞り込むことができる。たとえば、監視対象とする複数のトラフ線路20のそれぞれについて、監視する区間を多区間に区分し、トラフ線路監視システム40を区間ごとに配置することで、ケーブルセンサ1に損傷または破断が生じたトラフ線路20を特定し、さらに損傷または破断が生じた区間を絞り込むことが可能になる。
【0170】
通常、ケーブルの盗難の場合には、現場に駆け付けるまでの時間が可能な限り短いことが要求される。このため、ケーブルセンサ1に損傷または破断が生じた位置を特定の区間に絞り込むことで、トラフ内のケーブルの盗難発生の区間を知ることができる。例えば、異常を検知した区間が3~4Km程度の範囲であれば、関係者がすぐに駆けつけることができる。また、トラフ蓋5上のケーブルセンサ1が損傷または破壊された時点でその情報を得ることで、トラフ内に敷設されたケーブルが盗まれる前に、該当箇所の確認に向かうことができる。このため、盗難のリスクを低減することができる。
【0171】
なお、複数のトラフ線路20を監視する場合には、それぞれのトラフ線路20に対して、トラフ線路監視システム40を配置すればよい。それぞれのトラフ線路20のトラフ蓋5にケーブルセンサ1を配置することで、複数のトラフ線路20の内、ケーブルセンサ1の局部的曲がりまたは破断を検知したトラフ線路20を特定することができる。
【0172】
本実施形態によれば、ケーブルセンサ1の屈曲や切断を検知することで、トラフ蓋5が開けられることを監視することができる。このため、内部のケーブルの盗難を確実に、より早いタイミングで検知することができる。
【0173】
(第2実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。図13(a)は、第2の実施形態にかかるトラフ線路監視システム40aを示す構成図である。なお、以下の説明にいて、トラフ線路監視システム40と同一の機能を奏する構成については、図12と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0174】
トラフ線路監視システム40aは、トラフ線路監視システム40と略同様の構成であるが、OTDR装置39が用いられる点で異なる。トラフ線路監視システム40aにおいては、ケーブルセンサ1の一方の端部にOTDR装置39が接続される。なお、OTDR装置39とケーブルセンサ1は、例えばコネクタ接続(SPC研磨)される。
【0175】
OTDR装置39は、パルス波を発生する発信装置と、受光装置と受光された光の光強度を連続的に測定し、光強度と時間の関係を計測、演算する装置から構成され、光強度と距離の関係を求めることができる装置である。通常OTDR装置39から発信されたパルス光は、光ファイバケーブルに送られ、OTDR装置39で、光ファイバケーブル内で散乱された後方散乱光の強度を測定することで、光ファイバケーブルの損傷などの監視を行うことができる。
【0176】
このように、OTDR装置39は、光ファイバの片端から光パルスを入射し、光ファイバ長手方向の各点で散乱されて入射端に戻ってくる光強度の距離分布を解析することによって、光ファイバの屈曲や破断の有無と、その位置までの距離を測定するものである。
【0177】
ここで、ケーブルセンサが敷設された光ファイバケーブル線路から得られる後方散乱光の強度が非常に微弱である。このため、光ファイバケーブル線路を後方散乱光が往復する時間よりも長い周期でパルス光を繰り返し発振して、監視対象とする光ファイバケーブル線路に入射させる方法が採られる。この場合、戻り光としての後方散乱強度を加重平均することで、後方散乱光の信号強度の、SNR比を高めて検出することができる。そのため、測定対象とする光ファイバケーブル線路の長さにより、入射光が光ファイバケーブル線路の端部まで到達して、線路の端部からの戻り光が受光部に到達するまで時間が異なることから、OTDR測定の測定時間が異なる。
【0178】
この測定においては、例えば、光ファイバケーブルが敷設された線路における後方散乱光が連続的に検出され、光ファイバの接続部、局部的曲がり部、光線路の端末部からのそれぞれの後方散乱光を検出することができる。ここで、接続部がコネクタ接続の場合は、コネクタ接続部は反射強度が高いので通常後方散乱光強度がその位置において急峻な増加を示す。このため、コネクタ接続部には反射ピークが観測される。一方、融着接続の場合は、融着接続部では損失が発生することから、後方散乱光の強度の低下が観測される。また、局部的曲がり部は、曲がりによる放射損失の影響で後方散乱光強度が低下することから曲がり部近傍において局部的な光強度の低下が観測される。
【0179】
また、窃盗目的で、光ファイバケーブルが切断された場合、切断部位の表面は、切断面が不規則な凹凸形状に切断され、そこから漏光が起こるので、後方散乱光の強度は低下する。また、その先は、光ファイバケーブルが切断されているので、切断された先のケーブルから後方散乱光がOTDR装置に戻ることもなく、切断部位より先の後方散乱光の強度はノイズレベルと同等になる。端末部はコネクタ接続部と同様に反射強度が強いことから、ピーク形状にて検出される。
【0180】
なお、ケーブル盗難と地震の場合の測定データによる区別は、地震の場合には、ケーブルが破断するだけでなく、破断部位以外にも影響が及ぶ場合が多く破断部位以外の接続部や曲がり部などに測定データの変動が起こることが考えられる。これらの複数のデータの影響を評価することで、盗難と地震による影響を区別することができる。
【0181】
このように、本実施形態では、OTDR装置39から発信されたパルス波のケーブルセンサ1からの後方散乱光の強度変化を測定し、トラフ線路20のケーブルセンサ1の局部的曲がりまたは破断の発生位置を検知することで、トラフ蓋5が開けられることを監視することができる。
【0182】
なお、OTDR装置39を使ったトラフ線路監視システム40aにおいては、OTDR装置39で収集した各トラフ線路のケーブルセンサ1の情報をサーバで一括管理し、サーバに登録されたクライアント端末からネットワークを介してその情報を閲覧することができる。またクライアント端末からOTDR装置39に必要な測定条件や判定条件等の設定をすることができる。また、ケーブルセンサ1に破断等の異常が発生した場合にはメールサーバを介して予め登録されているメールアドレスにその情報をEメールで発信することができ、即時にその異常を知ることができる。
【0183】
なお、例えば、横河電気社製のOTDR装置を使用した場合には、SNR=1、パルス幅20μs、測定距離200km、サンプリング分解能8m、であり、ケーブルセンサの屈曲位置を測定する測定時間は3分程度である。
【0184】
第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、OTDR装置39を用いることで、ケーブルセンサ1の局部的曲りや破断の有無のみではなく、その位置まで検知することができる。
【0185】
(第3実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。図13(b)は、第3の実施形態にかかるトラフ線路監視システム40bを示す構成図である。トラフ線路監視システム40bは、トラフ線路監視システム40aと略同様の構成であるが、トラフ線路20が複数配置される点で異なる。
【0186】
それぞれのトラフ線路20のトラフ蓋5には、ケーブルセンサ1がそれぞれ配置される。また、それぞれのトラフ線路20のケーブルセンサ1は、光スイッチ41を介してOTDR装置39と接続される。光スイッチ41は、OTDR装置39と接続されるケーブルセンサ1を選択可能である。例えば、光スイッチ41は、図示を省略した制御装置によって、所定時間ごとに、監視するトラフ線路20を切り替えることができる。
【0187】
なお、光スイッチ41は、例えば、光路を機械的に接続したり、遮断したりする機械式の光スイッチを使用することができる。この方式の光スイッチは、電磁石を利用してやプリズム、ロッドレンズ、鏡、光ファイバケーブル等を適宜移動して光路を機械的に切り変える。また、光スイッチ41には、1×Nスイッチを利用することができる。
【0188】
このように、複数のトラフ線路20について所定時間毎に光スイッチ41で切り替えて、各トラフ線路20のそれぞれのケーブルセンサ1に対して後方散乱光の強度の測定することで、1台のOTDR装置39で、複数のトラフ線路20を監視することができる。すなわち、複数のトラフ線路20の内、ケーブルセンサ1の局部的曲がりまたは破断を検知したトラフ線路20を特定することができる。
【0189】
また、それぞれのトラフ線路20のケーブルセンサ1の各測定位置に対し、所定時間毎に反射強度データを比較することもできる。例えば、ケーブルセンサ1の各位置における最新の測定データとその所定時間前の測定データを比較することにより、各位置における測定データの差を知ることができる。この場合、この差があらかじめ設定した閾値よりも大きい場合には、トラフ蓋5に設置したケーブルセンサ1に損傷または破断などの何らかの異常が起こったものと判断することができる。
【0190】
すなわち、それぞれの測定位置における対比した後方散乱光の強度の差が、あらかじめ設定した強度レベルである閾値以上であれば、ケーブルセンサ1に損傷または破断有りと判断し、閾値未満であればケーブルセンサ1に損傷または破断無と判断する。また、このように、所定区間のケーブルの監視を繰り返し行ない、最新の測定データと直前の測定データの比較を行うことで、トラフ線路20の光ファイバケーブルの環境温度変化による季節変動の影響を除去することができる。
【0191】
第3の実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、一台のOTDR装置39によって、複数のトラフ線路20を監視することができる。
【0192】
(第4実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。図14(a)は、第4の実施形態にかかるトラフ線路監視システム40cを示す構成図である。トラフ線路監視システム40cは、トラフ線路監視システム40と略同様の構成であるが、ケーブルセンサ1が、2心の光ファイバ心線16a、16bから構成される点で異なる。
【0193】
光ファイバ心線16aの一方の端部には、光源35が接続される。また、光ファイバ心線16aの他方の端部には、受光装置37が接続される。光ファイバ心線16aによって、ケーブルセンサ1の破断または局部的な曲りを検知することができる。
【0194】
また、光ファイバ心線16bの一方の端部にはOTDR装置が接続される。光ファイバ心線16bによって、ケーブルセンサ1の破断または局部的な曲りの有無と、その位置を検知することができる。
【0195】
前述したように、ケーブルの盗難に対しては、より短時間で検知する必要がある。光ファイバ心線16aによる監視は、ケーブルセンサ1の破断や局部的曲りの発生を瞬時に検知することができる。一方、光ファイバ心線16bによるOTDR装置39を用いた監視は、検知に多少の時間を要する。しかしながら、OTDR装置39によれば、ケーブルセンサ1の破断や局部的曲りの位置を検知することができる。
【0196】
このように、光ファイバ心線16a、16bを併用し、連続光の測定とOTDR装置39を組み合わせることで、効率良くトラフ線路20を監視することができる。
【0197】
なお、ケーブルセンサ1で検知された異常が、地震などの自然災害によるものか、窃盗などによるケーブルの切断によるものかは、その近傍の接続点や曲がり部など指標となり得る部位のOTDRデータと比較することで判断できる。例えば、ケーブルセンサ1の損傷や破断が窃盗などが原因で生じた場合には、異常部から所定距離だけ離れた位置の最新の測定データと前記所定距離だけ離れた同一部位における直前の測定データとを比較しても、測定結果にはほとんど変化が見られない。
【0198】
一方、前述した所定距離離れた部位の最新の測定データと直前の測定データを比較して所定値以上の有意差が存在する場合には、地震などの自然災害により上記のような差異が生じたものと考えられる。このように、地震などによる異常の場合には、所定距離離れた複数個所にケーブルセンサ1の損傷や破断などの異常が検知されることから、地震による損傷または破断と、窃盗による損傷を区別することができる。このような判断基準で、自然災害による光ファイバケーブルの損傷または破壊と窃盗などによる光ファイバケーブルの損傷または破壊とを区別して、関係者に通報を行うことができる。
【0199】
なお、図14(b)に示すトラフ線路監視システム40dのように、複数のトラフ線路20に対しても、OTDR装置39と連続光の受光との併用を行うこともできる。この場合には、連続光を直接受光する光源35および受光装置37は、トラフ線路20ごとに設置することができる。一方、高価なOTDR装置39は、光スイッチ41によって、監視するトラフ線路20を切り替えて使用することができる。
【0200】
この場合には、複数のトラフ線路20に対し、まず、光ファイバ心線16aを用いて、異常の有無を監視し、異常のあるトラフ線路20を特定することができる。次に、光スイッチ41によって、特定されたトラフ線路20に対してOTDR測定を行い、ケーブルセンサ1の損傷または破断位置を特定することができる。
【0201】
第4の実施の形態によれば、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、受光装置37による異常検知によって、異常を瞬時に検知することができるとともに、異常のあるトラフ線路20に対してOTDR測定を行うことで、異常の位置を知ることができる。
【0202】
(第5実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。図15(a)は、第5の実施形態にかかるトラフ線路監視システム40eを示す構成図である。トラフ線路監視システム40eは、トラフ線路監視システム40cと略同様の構成であるが、ケーブルセンサ1が、一本の光ファイバ心線から構成される点で異なる。
【0203】
トラフ線路監視システム40eは、ケーブルセンサ1の両側において、それぞれ、1本(1心)の光ファイバ心線が光カプラ43によって分岐される。ケーブルセンサ1の一方の端部側において、複数の光ファイバ心線に分岐される一つの光ファイバ心線の端部にはOTDR装置39が接続される。また、分岐された他の光ファイバ心線の端部には、光源35が接続される。ケーブルセンサ1の他方の端部側において、分岐される一つの光ファイバの端部には受光装置37が接続される。
【0204】
光源35からは、OTDR装置39で用いられるパルス波とは波長の異なる連続光が出射され、光カプラ43を通じて光ファイバ心線に合流される。たとえば、光源35は、1.31μm帯の波長の光源を使用し、OTDR装置39には1.55μm帯の光を使用すれば良い。
【0205】
光源35によって、ケーブルセンサ1の一方の端部側から連続的に光が入射され、ケーブルセンサ1の他方の端部側において、この連続光のみが光カプラ43により分波して受光装置37に導かれる。このように、連続光の光強度を常時測定することで、ケーブルセンサ1の局部的曲がりまたは破断の発生を検知する。
【0206】
同様に、OTDR装置39によって、ケーブルセンサ1の一方の端部側からパルス光が入射され、この反射光を光カプラ43により分波してOTDR装置39で光強度が測定される。このように、OTDR装置39によってケーブルセンサ1の局部的曲がりまたは破断の発生位置を検知する。
【0207】
なお、図15(b)に示すトラフ線路監視システム40fのように、複数のトラフ線路20に対しても、OTDR装置39と連続光の受光との併用を行うことができる。この場合には、連続光を直接受光する光源35および受光装置37は、トラフ線路20ごとに設置することができる。一方、高価なOTDR装置39は、光スイッチ41によって、監視するトラフ線路20を切り替えて使用することができる。
【0208】
第5の実施の形態によれば、第4の実施の形態と同様の効果を得ることができる。また、1心の光ファイバケーブルによって、受光装置37による異常検知と、OTDR装置39による異常検知とを行うことができる。
【0209】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0210】
1………ケーブルセンサ
2、2a………光ファイバケーブル
3………トラフ本体
4………通電ケーブル
5………トラフ蓋
7………係止部
9………滑り止め突起
10、10a、10b、10c、10d、10e、10f、10g、10h、10i、10j………ケーブルセンサ取り付け構造
11、11a………保護部材
12………収納部
13………凸状部
14………溝部
15………抗張力体
16、16a、16b………光ファイバ心線
17………金属保護管
19………保護テープ
20………トラフ線路
21………固定部材
23………拡幅部
25………ケーブル接続部収納部
27………ケーブル接続部
29、29a………保持部
30、30a………ケーブルセンサ配線構造
31………固定部材
33………係止爪
35………光源
37………受光装置
39………OTDR装置
40、40a、40b、40c、40d、40e、40f………トラフ線路監視システム
41………光スイッチ
43………光カプラ
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