(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133857
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】センサ装置、ロボットハンド及びグローブ
(51)【国際特許分類】
G01K 7/22 20060101AFI20230920BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20230920BHJP
G01K 7/16 20060101ALI20230920BHJP
B25J 19/02 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
G01K7/22 A
G01L5/00 101Z
G01K7/16 M
G01K7/22 L
B25J19/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039084
(22)【出願日】2022-03-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成31年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/フィジカル空間デジタルデータ処理基盤」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】近藤 均
【テーマコード(参考)】
2F051
2F056
3C707
【Fターム(参考)】
2F051AA10
2F051AB07
2F051BA05
2F056QF07
2F056QF10
3C707KS31
3C707KX08
(57)【要約】
【課題】温度の検出感度を向上することができるセンサ装置、ロボットハンド及びグローブを提供する。
【解決手段】センサ装置は、第1の面を有する第1の基板と、前記第1の面上に形成された第1の電極層と、前記第1の面上に形成され、前記第1の電極層から電気的に絶縁された第2の電極層と、前記第1の面上に形成され、導電素子を内部に含み、温度変化により電気抵抗が変化する感温材料と、を含み、前記感温材料は、前記第1の電極層に接続される第1の領域と、前記第2の電極層に接続される第2の領域と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面を有する第1の基板と、
前記第1の面上に形成された第1の電極層と、
前記第1の面上に形成され、前記第1の電極層から電気的に絶縁された第2の電極層と、
前記第1の面上に形成され、導電素子を内部に含み、温度変化により電気抵抗が変化する感温材料と、
を含み、
前記感温材料は、
前記第1の電極層に接続される第1の領域と、
前記第2の電極層に接続される第2の領域と、
を有することを特徴とするセンサ装置。
【請求項2】
前記第1の領域から前記第2の領域への電流経路の長さは、前記感温材料の膜厚よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項3】
前記第1の領域から前記第2の領域への電流経路の断面積は、前記感温材料の前記第1の面上での面積よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載のセンサ装置。
【請求項4】
前記第1の電極層を複数有し、
前記第1の領域は、前記複数の第1の電極層のうちの一つに接続され、
前記第2の電極層は、平面視で、前記複数の第1の電極層のうちの他の一つと交差し、
前記第2の電極層と、前記複数の第1の電極層のうちの他の一つとの間に設けられた絶縁層を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項5】
前記第1の面に対向する第2の面を有する第2の基板と、
前記第2の面上に形成され、平面視で前記第1の電極層と交差する第3の電極層と、
前記第1の電極層と前記第3の電極層との間に設けられ、外部からの刺激により前記第1の電極層と前記第3の電極層との間の導通状態を変化させる第1の材料と、
を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項6】
前記第1の材料は、圧力変化により電気抵抗が変化する感圧材料であることを特徴とする請求項5に記載のセンサ装置。
【請求項7】
前記第1の基板と前記第2の基板との間で前記感温材料の周囲に設けられ、前記感温材料の厚さ以上の厚さを有するスペーサ層を有することを特徴とする請求項5又は6に記載のセンサ装置。
【請求項8】
前記第1の材料と前記第3の電極層との間に設けられ、前記第1の材料と同種の外部からの刺激により前記第1の電極層と前記第3の電極層との間の導通状態を変化させる第2の材料を有することを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1項に記載のセンサ装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のセンサ装置を備えたことを特徴とするロボットハンド。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載のセンサ装置を備えたことを特徴とするグローブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ装置、ロボットハンド及びグローブに関する。
【背景技術】
【0002】
IoT(Internet of Things)の進展に伴い、あらゆるモノへのセンサの装着が求められており、中でも物体(の状態)認識に適したシート状の多点検出センサのニーズが高まっている。
【0003】
更に複数種類の物理量(例えば温度と圧力)を同時に検出したいというニーズもある。そこで、多点の温度センサ及び圧力センサを積層して、温度分布及び圧力分布を同時に検出できるセンサシートが提案されている(例えば、特許文献1)。このようなセンサシートは、マルチモーダルセンサシートとよばれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のセンサシート等のセンサ装置においては、温度検出の高感度化に検討の余地がある。
【0005】
本発明は、温度の検出感度を向上することができるセンサ装置、ロボットハンド及びグローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の一態様によれば、センサ装置は、第1の面を有する第1の基板と、前記第1の面上に形成された第1の電極層と、前記第1の面上に形成され、前記第1の電極層から電気的に絶縁された第2の電極層と、前記第1の面上に形成され、導電素子を内部に含み、温度変化により電気抵抗が変化する感温材料と、を含み、前記感温材料は、前記第1の電極層に接続される第1の領域と、前記第2の電極層に接続される第2の領域と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、温度の検出感度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係るセンサ装置を示す上面図である。
【
図2】第1実施形態に係るセンサ装置に含まれる単位センサシートを示す上面図である。
【
図3】第1実施形態に係るセンサ装置に含まれる配線基板を示す上面図である。
【
図4】第1実施形態に係るセンサ装置を示す断面図(その1)である。
【
図5】第1実施形態に係るセンサ装置を示す断面図(その2)である。
【
図6】第1のセンサ層の構成例を示す斜視図である。
【
図7】第2実施形態に係るセンサ装置を示す上面図である。
【
図9】第3実施形態に係るセンサ装置に含まれる単位センサシートを示す上面図である。
【
図10】第4実施形態に係るセンサ装置に含まれる単位センサシートを示す上面図である。
【
図11】第5実施形態に係るセンサ装置に含まれる配線基板を示す上面図である。
【
図12】第6実施形態に係るロボットハンドを示す図である。
【
図13】第7実施形態に係るグローブを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。尚、本願においては、X1-X2方向、Y1-Y2方向、Z1-Z2方向を相互に直交する方向とする。また、X1-X2方向及びY1-Y2方向を含む面をXY面と記載し、Y1-Y2方向及びZ1-Z2方向を含む面をYZ面と記載し、Z1-Z2方向及びX1-X2方向を含む面をZX面と記載する。
【0010】
(第1実施形態)
第1実施形態について説明する。第1実施形態はセンサ装置に関する。
図1は、第1実施形態に係るセンサ装置を示す上面図である。
図2は、第1実施形態に係るセンサ装置に含まれる単位センサシートを示す上面図である。
図3は、第1実施形態に係るセンサ装置に含まれる配線基板を示す上面図である。
図4及び
図5は、第1実施形態に係るセンサ装置を示す断面図である。
図4は、
図1中のA-A線に沿った断面図に相当し、
図5は、
図1中のB-B線に沿った断面図に相当する。
【0011】
図1、
図4及び
図5に示すように、第1実施形態に係るセンサ装置1は、単位センサシート20及び配線基板30を有する。センサ装置1は、シート状に構成されている。
【0012】
図2に示すように、単位センサシート20は、平面形状が正方形状又は長方形状の基板21を有する。基板21の一方の面21A(第1の面)に、Y1-Y2方向に沿って長く形成された第1の電極層22が複数設けられている。複数の第1の電極層22はX1-X2方向に配列されている。第1の電極層22の上に、第1の電極層22の一部を覆う第2のセンサ層24が形成されている。第1の電極層22の幅方向で第2のセンサ層24は第1の電極層22を横切る。第2のセンサ層24としては、外部から刺激(圧力、熱、光等)が加わることによって、電気的特性(電気抵抗、静電容量など)が変化するものが用いられる。触覚センシング等においては、第2のセンサ層24として、例えば、圧力によって電気抵抗が変化する感圧材料が特に好適に使用される。基板21の面21Aに、第1の電極層22と接しない第2の電極層23が形成されている。第1の電極層22及び第2の電極層23に跨るように第1のセンサ層25が形成されている。第1のセンサ層25は、第1の電極層22に接続される第1の領域25Sと、第2の電極層23に接続される第2の領域25Tとを有する。第1のセンサ層25としては、例えば、外部から熱が加わることによって、電気的特性(電気抵抗、静電容量など)が変化するものが用いられる。触覚センシング等においては、第1のセンサ層25として、例えば、温度によって電気抵抗が変化する感温材料が特に好適に使用される。基板21は第1の基板の一例であり、面21Aは第1の面の一例である。
【0013】
図3に示すように、配線基板30は、平面形状が正方形状又は長方形状の基板31を有する。基板31の一方の面31Aに、X1-X2方向に沿って長く形成された第3の電極層32が複数設けられている。複数の第3の電極層32はY1-Y2方向に配列されている。基板31の面31Aに、第3の電極層32と接しない第4の電極層33が形成されている。このように、配線基板30は単位センサシート20を接続可能に構成されている。本開示において、「接続」とは通電可能状態であることを意味しており、よって、「単位センサシート20を接続」とは単位センサシート20が通電可能状態であることを意味する。第3の電極層32のX2側の端部の形状は、第3の電極層32に対して、不図示の駆動回路から駆動信号が入力できるように、駆動回路との接続が可能な配線パターン34となっている。同様に、第4の電極層33のY2側の端部の形状は、第4の電極層33に対して、不図示の駆動回路から駆動信号が入力できるように、駆動回路との接続が可能な配線パターン35となっている。基板31は第2の基板の一例であり、面31Aは第2の面の一例である。
【0014】
なお、
図1は、配線基板30を上側、単位センサシート20を下側にし、配線基板30の基板31を透過した状態を示している。
図3も、配線基板30の基板31を透過した状態を示している。
【0015】
センサ装置1では、基板21の面21Aと基板31の面31Aとが、第1の電極層22と第3の電極層32とが平面視上で直交し、かつ少なくともその交点に第2のセンサ層24が配置されるように対向している。そして、この状態で、第1の電極層22と第4の電極層33とが導電性接合部材41により電気的に接続され、第2の電極層23と第3の電極層32とが導電性接合部材42により電気的に接続されている。この状態では、例えば、単位センサシート20の第2のセンサ層24と、配線基板30の第3の電極層32とが接触している。
【0016】
次に、第1実施形態における各部の構成材料について説明する。
【0017】
基板21及び基板31は、ガラスや樹脂等により形成される基板であってもよいが、可撓性を有する樹脂フィルムが好ましい。例えば、厚さが50μm~200μmのPEN(polyethylene naphthalate)、ポリイミド(polyimide)、PET(polyethylene terephthalate)等の樹脂フィルムや伸縮性を有する樹脂フィルムが好適に使用される。
【0018】
単位センサシート20の第1の電極層22、第2の電極層23、配線基板30の第3の電極層32及び第4の電極層33は、例えば、銀や銅を含む導電性ペーストをスクリーン印刷やインクジェット等により印刷し、焼結することにより形成される。
【0019】
単位センサシート20の第2のセンサ層24として触覚センシング等に特に好適に使用される感圧層は、シリコーンゴムなどの弾性体と、弾性体に添加された導電性カーボンなどの複数の導電性粒子を含む感圧導電体により形成される。圧力が加わることにより、加えられた圧力に応じて、第2のセンサ層24と第3の電極層32との接触抵抗が変化し、検出電流値が変化する。これにより圧力検知を行うことができる。
【0020】
第1のセンサ層25として触覚センシング等に特に好適に使用される感温層は、無機又は有機半導体からなるサーミスタ(NTC:negative temperature coefficient)やポリマーPTC(positive temperature coefficient)等により形成される。ポリマーPTCは、熱膨張性を有する絶縁性樹脂と、複数の導電性粒子とを含有する材料である。熱を付与することにより、絶縁性樹脂が熱膨張し、絶縁性樹脂中の導電性粒子間の距離が大きくなることで、抵抗が上がる(検出電流値が下がる)現象を利用して温度検知を行うことができる。絶縁性樹脂としては、特に制限はされず、一般的なポリマーPTCに用いられる公知のものを用いることができる。具体例として、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂、アクリル樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、フッソ樹脂等の熱可塑性樹脂が挙げられる。また、導電性粒子の具体例としては、グラファイト、導電性カーボン等の炭素系粒子が挙げられる。第2のセンサ層24及び第1のセンサ層25は、スクリーン印刷やインクジェット印刷等によって形成される。
【0021】
導電性接合部材41及び42は、異方性導電膜(ACF:Anisotropic Conductive Film)や導電バンプ、銅コアはんだボール等の導電性を有する接合材料により形成されている。
【0022】
導電バンプや銅コアはんだボールを用いる場合、接合強度を向上させるためにそれらの周囲に絶縁性樹脂を設けてもよい。第2のセンサ層24が感圧層の場合には、導電性接合部材41及び42の厚さは第2のセンサ層24の厚さと同等以上であることが望ましい。導電性接合部材41及び42の厚さが第2のセンサ層24の厚さより小さいと、接合した後に第2のセンサ層24を圧縮する力が働き、外部から圧力を加えない初期状態でも出力値が検出される(バックグラウンドノイズとなる)、あるいは第2のセンサ層24の復元力が接合部に作用して接合強度を低下させるなどの弊害が発生するためである。感圧層の厚さは数10μm程度と比較的厚いため、異方性導電膜より導電バンプや銅コアはんだボールの方が適している。製造プロセスが簡便であることから、導電バンプを特に好ましく用いることができる。
【0023】
ここで、第1のセンサ層25の電流(定電圧を印加して抵抗変化を検出する電流)経路について、
図1に示されている4つの第1のセンサ層25(25a、25b、25c、25d)のうち、第1のセンサ層25aを代表例として用いて説明する。第1のセンサ層25aには、配線パターン34b及び35dが電気的に接続されている。配線パターン34bに印加される電圧を配線パターン35dに印加される電圧より高く設定すると、電流は、配線パターン34bから第3の電極層32、導電性接合部材42、第2の電極層23、第1のセンサ層25a、第1の電極層22、導電性接合部材41、第4の電極層33の順に流れ、配線パターン35dから不図示の駆動回路に流入する。このとき、電流は、第2の電極層23と第1の電極層22との間で、第1のセンサ層25a内を面内方向に流れるため、第1のセンサ層25aの感度を高くすることができる。
【0024】
ここで、第1のセンサ層25として、好適に用いられるポリマーPTCを例に、電流経路と感度の関係について説明する。前述の通り、ポリマーPTCは、温度が高くなると樹脂が膨張して、導電性粒子間の距離が大きくなることによって抵抗が高くなるという原理で温度検知を行っている。
図6(A)及び(B)は、第1のセンサ層25の構成例を示す斜視図である。ここでは、第1のセンサ層25は、例えば、平面形状が、直交する2辺の長さがそれぞれa、bの長方形で、厚さがcの直方体形状を有することとする。また、長さa及びbは、厚さcよりも十分に長いこととする。典型的には、長さaは数100μm~数mm、長さbは数100μm、厚さcは数10μmで設計される。
図6(A)は、電流経路Pが膜厚方向である場合の第1のセンサ層25の構成例を示し、
図6(B)は、電流経路Pが面内方向である場合の第1のセンサ層25の構成例を示す。
【0025】
第1のセンサ層25内の電流経路Pが膜厚方向である場合、
図6(A)に示すように、電流経路Pに垂直な断面積(a×b)が大きく、導電パス(c)が短い。このため、過電流が流れないように絶縁性樹脂252中の導電性粒子251の濃度を低くする必要がある。この場合、濃度制御のマージンが狭い。また、導電パス方向の断面積当りの実効的な絶縁性樹脂252の厚さが小さいため、温度による抵抗変化を大きくすることができず、高感度化が困難である。
【0026】
一方、第1のセンサ層25内の電流経路Pが面内方向である場合、
図6(B)に示すように、電流経路Pに垂直な断面積(b×c)が小さく、導電パス(a)が長い。すなわち、電流経路Pの長さが第1のセンサ層25の膜厚よりも大きく、電流経路Pの断面積が第1のセンサ層25の面21A上での面積よりも小さい。このため、絶縁性樹脂252中の導電性粒子251の濃度を高くすることができる。従って、濃度制御のマージンを広く確保できる。また、導電パス方向の断面積当りの実効的な絶縁性樹脂252の厚さが大きいため、温度による抵抗変化を大きく、すなわち感度を高くすることができる。
【0027】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。第2実施形態はセンサ装置に関する。
図7は、第2実施形態に係るセンサ装置を示す上面図である。
図7は、
図1と同様に、配線基板30を上側、単位センサシート20を下側にし、配線基板30の基板31を透過した状態を示している。
【0028】
図7に示すように、第2実施形態に係るセンサ装置2では、1枚の配線基板30に4個の単位センサシート20(20A、20B、20C、20D)が接続されている。単位センサシート20Aと単位センサシート20BとがY1-Y2方向に並び、単位センサシート20Cと単位センサシート20DとがY1-Y2方向に並ぶ。単位センサシート20Aは単位センサシート20BのY1側にあり、単位センサシート20Cは単位センサシート20DのY1側にある。単位センサシート20Aと単位センサシート20CとがX1-X2方向に並び、単位センサシート20Bと単位センサシート20DとがX1-X2方向に並ぶ。単位センサシート20Aは単位センサシート20CのX1側にあり、単位センサシート20Bは単位センサシート20DのX1側にある。各単位センサシート20と配線基板30とは、第1実施形態と同様に、接続されている(
図1、
図4及び
図5参照)。
【0029】
基板31の一方の面31Aに設けられた第3の電極層32は平面視上、単位センサシート20A及び20BのX2側と単位センサシート20C及び20DのX1側とに跨るように形成されている。また、基板31の一方の面31Aに設けられた第4の電極層33は平面視上、単位センサシート20A及び20CのY2側と単位センサシート20B及び20DのY1側とに跨るように形成されている。これにより、配線パターン34及び配線パターン35に印加される駆動信号によるマトリクス駆動が可能になる。具体的には、配線パターン34に選択信号を線順次に印加し、配線パターン35から選択時の出力値(電流値)を読み出すことで、出力値の二次元マップを生成することができる。なお、単位センサシート20の数は、4個に限定されるものではなく、単位センサシート20の配置も矩形に限らず、異形配列であってもよい。その場合、マトリクス駆動が可能なように配線基板30の配線パターンが引き回されていることが望ましい。
【0030】
ここで、第2実施形態で得られる二次元マップの例について説明する。
図8は、二次元マップの一例を示す図である。第2実施形態に係るセンサ装置2からは、例えば64点(8行8列)の出力値が得られるが、64点のうち、16点は第1のセンサ層25の出力値であり、残りの48点は第2のセンサ層24の出力値である。
図8に示す二次元マップには、出力値の分布を示しており、白丸が第2のセンサ層24の出力値の位置を、黒丸が第1のセンサ層25の出力値の位置を表している。第2のセンサ層24及び第1のセンサ層25の数量比や配置は、センサ種や検知の目的によって、適宜選択することができる。第2のセンサ層24が感圧層で、第1のセンサ層25が感温層である触覚センシングの場合には、人の皮膚感覚能(圧力を感じる痛点と温度を感じる温・冷点)に倣えば、前者の数は後者の数の3~5倍であることが好適である。なお、単位センサシート20の数や、単位センサシート20内のセンシング点(単位センサシート20の第1の電極層22と配線基板30の第3の電極層32とが平面視上直交する点)の数は、本実施形態の例に限るものではなく、適宜変更が可能である。その場合でも、同様の駆動方法によって出力値の二次元マップを得ることができる。
【0031】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。第3実施形態は、主として単位センサシートの構成の点で第1実施形態と相違する。
図9は、第3実施形態に係るセンサ装置に含まれる単位センサシートを示す上面図である。
【0032】
図9に示すように、第3実施形態に係るセンサ装置に含まれる単位センサシート20は絶縁層26を有する。また、第2の電極層23の一部が、平面視上、第1の電極層22と交差する。絶縁層26は、少なくとも、平面視で交差する第1の電極層22と第2の電極層23との間に設けられている。
【0033】
他の構成は第1実施形態と同様である。
【0034】
第3実施形態によれば、第1のセンサ層25を、X1側端又はX2側端の第1の電極層22とは別の第1の電極層22に接続されるように配置することができる。つまり、平面視上、第1の電極層22と第2の電極層23とが重なる部分が存在していても、これらの間に絶縁層26が設けられていることで、第1の電極層22と第2の電極層23との短絡を防止することができる。従って、第1のセンサ層25の配置の自由度を向上することができる。
【0035】
なお、絶縁層26の材料としては、特に限定はされず、一般的な層間絶縁層として公知の無機系あるいは有機系の絶縁性材料を用いることができるが、スクリーン印刷やインクジェット印刷などで簡便に形成できることから有機系の絶縁性材料が特に好適である。
【0036】
(第4実施形態)
第4実施形態について説明する。第4実施形態は、主として単位センサシートの構成の点で第3実施形態と相違する。
図10は、第4実施形態に係るセンサ装置に含まれる単位センサシートを示す上面図である。
【0037】
図10に示すように、第4実施形態に係るセンサ装置に含まれる単位センサシート20はスペーサ層27を有する。スペーサ層27は、第1のセンサ層25の周囲に設けられており、第1のセンサ層25の厚さと同等以上の厚さを有する。
【0038】
他の構成は第3実施形態と同様である。
【0039】
第2のセンサ層24が感圧層の場合、センサ装置に圧力が印加された時に第2のセンサ層24に優先的に圧力がかかるように、第1のセンサ層25の厚さが第2のセンサ層24の厚さより小さいことが好ましい。ただし、第1のセンサ層25の厚さが第2のセンサ層24の厚さより小さい場合でも、第2のセンサ層24と第1のセンサ層25との間の距離や、基板21の材質によっては、第1のセンサ層25にも予期しない圧力が付与されるおそれがある。そして、第1のセンサ層25が感温層で、特にポリマーPTCにより形成されている場合には、第1のセンサ層25の出力値が圧力の影響を受ける可能性がある。これに対し、第1のセンサ層25の周囲に、第1のセンサ層25の厚さと同等以上の厚さを有するスペーサ層27が設けられていると、第1のセンサ層25に圧力が付与されることを確実に防止することができる。このため、精度の高いセンシングが可能となる。
【0040】
なお、スペーサ層27の材料としては、特に限定はされず、公知の無機系あるいは有機系の絶縁性材料を用いることができるが、スクリーン印刷やインクジェット印刷などで簡便に形成できることから有機系の絶縁性材料が特に好適である。
【0041】
(第5実施形態)
第5実施形態について説明する。第5実施形態は、主として配線基板の構成の点で第1実施形態と相違する。
図11は、第5実施形態に係るセンサ装置に含まれる配線基板を示す上面図である。
図11は、
図3と同様に、配線基板30の基板31を透過した状態を示している。
【0042】
図11に示すように、第5実施形態に係るセンサ装置に含まれる配線基板30は第3のセンサ層36を有する。第3のセンサ層36は、第3の電極層32の一部を覆うように形成されている。第3の電極層32の幅方向で第3のセンサ層36は第3の電極層32を横切る。第3のセンサ層36は、第2のセンサ層24と同一の材料、例えば感圧材料から構成される。第5実施形態に係るセンサ装置では、第3のセンサ層36と第2のセンサ層24とが直接重なり合う。
【0043】
他の構成は第1実施形態と同様である。
【0044】
前述のように、第2のセンサ層24が感圧層の場合、センサ装置に圧力が印加された時に第2のセンサ層24に優先的に圧力がかかるように、第1のセンサ層25の厚さが第2のセンサ層24の厚さより小さいことが好ましい。ただし、材料に対する要求仕様によっては、第1のセンサ層25の厚さが第2のセンサ層24の厚さより小さくなるように形成することが困難な場合がある。その場合でも、第3の電極層32の幅方向で第3の電極層32を横切るように第3のセンサ層36が設けられていると、第2のセンサ層24と第3の電極層32との積層体が一つの感圧層として機能し得るため、第1のセンサ層25の厚さを第2のセンサ層24及び第3のセンサ層36の合計の厚さより小さく形成すればよい。従って、製造マージンを広げることができる。
【0045】
なお、第3のセンサ層36は、上記の目的から、平面視上、第2のセンサ層24と重なる位置に形成されている。
【0046】
第3実施形態又は第4実施形態の単位センサシート20を第2実施形態に適用してもよく、第5実施形態の配線基板30を第2実施形態に適用してもよい。また、第3実施形態又は第4実施形態の単位センサシート20を第2実施形態に適用し、更に第5実施形態の配線基板30を第2実施形態に適用してもよい。また、第3実施形態又は第4実施形態の単位センサシート20と第5実施形態の配線基板30と組み合わせてもよい。
【0047】
(第6実施形態)
第6実施形態について説明する。第6実施形態はロボットハンドに関する。
図12は、第6実施形態に係るロボットハンドを示す図である。
【0048】
図12に示すように、第6実施形態に係るロボットハンド6は、グリッパー511と、センサ装置510とを有する。センサ装置510は、第1~第5実施形態のいずれかに係るセンサ装置である。センサ装置510は、グリッパー511の先端付近の内側に取り付けられている。グリッパー511は空気圧によって背中の蛇腹が伸縮して、物体等を掴んだり離したりすることができるように構成されている。グリッパー511の先端付近の内側に取り付けられたセンサ装置510によって、ロボットハンド6が物体等を握った際の圧力や温度を検知(触覚センシング)することが可能となる。
【0049】
なお、センサ装置510を構成する配線基板の配線パターンの端部は、不図示のフレキシブル配線基板等を介して不図示の駆動回路に接続されている。
【0050】
(第7実施形態)
第7実施形態について説明する。第7実施形態はグローブに関する。
図13は、第7実施形態に係るグローブを示す図である。
【0051】
図13に示すように、第7実施形態に係るグローブ7はセンサ装置610を有する。センサ装置610は、配線基板630と、複数の単位センサシート620とを有する。第2実施形態と同様に、1枚の配線基板630に複数の単位センサシート620が接続されている。配線基板630は、第1又は第5実施形態の配線基板30と同様の構成を備える。単位センサシート620は、第1、第3又は第4実施形態の単位センサシート20と同様の構成を備える。配線基板630は、配線パターン34と同様の構成の配線パターン634と、配線パターン35と同様の構成の配線パターン635とを有する。センサ装置610はグローブ7の手のひら側に設置されており、グローブ7により物体等を握った際の圧力や温度を検知(触覚センシング)することが可能である。
【0052】
なお、配線基板630の配線パターン634および635の端部は、不図示のフレキシブル配線基板等を介して不図示の駆動回路に接続されている。
図13においては、配線基板630の配線の引き回しによって、8個の単位センサシート620がX=2、Y=4のマトリクス状に駆動されるようになっている。実際の駆動マトリクス数は各単位センサシート620当たりの第1の電極層の数と第3の電極層の数とを、単位センサシートの数に乗じたものになる。
【0053】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0054】
1、2、510、610 センサ装置
6 ロボットハンド
7 グローブ
20、620 単位センサシート
21 基板
21A 面
22 第1の電極層
23 第2の電極層
24 第2のセンサ層
25 第1のセンサ層
25S 第1の領域
25T 第2の領域
26 絶縁層
27 スペーサ層
30、630 配線基板
31 基板
31A 面
32 第3の電極層
33 第4の電極層
36 第3のセンサ層
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】