(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023133983
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】切削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 55/02 20060101AFI20230920BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20230920BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20230920BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B24B55/02 D
B24B27/06 M
B23Q11/00 L
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039272
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】竹之内 研二
【テーマコード(参考)】
3C047
3C158
5F063
【Fターム(参考)】
3C047FF06
3C047GG01
3C158AA03
3C158AA14
3C158AA16
3C158AB04
3C158AC04
3C158BA05
3C158CB01
3C158CB05
3C158DA17
5F063AA21
5F063FF22
5F063FF28
(57)【要約】
【課題】高価な昇圧ポンプ等を使用することなく、アシスト液を連続的に切削部位に供給することができる切削装置を提供する。
【解決手段】被加工物を保持するチャックテーブル8aと、チャックテーブル8aに保持された被加工物を切削する切削ブレード93を回転可能に備えた切削手段9と、を含み構成された切削装置1であって、切削手段9に配設され、切削ブレード93と被加工物に切削水L1を噴射する切削水噴射ノズル97a、97bと、切削水噴射ノズル97a、97bに隣接して配設され切削水噴射ノズル97a、97bから噴射された切削水L1にアシスト液L2を混入するアシスト液混入ノズル98と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、を含み構成された切削装置であって、
該切削手段は、切削ブレードと被加工物に切削水を噴射する切削水噴射ノズルと、該切削水噴射ノズルに隣接して配設され該切削水噴射ノズルから噴射された切削水にアシスト液を混入するアシスト液混入ノズルと、を含む切削装置。
【請求項2】
該アシスト液は、有機酸と酸化剤とを含む混合液である請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
該アシスト液は、さらに防食剤を含む請求項2に記載の切削装置。
【請求項4】
該アシスト液は、界面活性剤である請求項1に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、を含み構成された切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが、分割予定ラインによって区画されて表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
ダイシング装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、切削ブレードと被加工物とに切削水を供給する切削水噴射ノズルと、を含み構成されていて、ウエーハを高精度に切削することができる。
【0004】
また、ウエーハの分割予定ラインには、半導体デバイスの電気特性を評価するためのTEG(Test Element Group)と呼ばれる特性評価用の金属素子(例えば銅からなる)が複数形成されている場合があり、分割予定ラインに沿ってウエーハを切削する際に該金属素子を切削することでバリが発生し、デバイスの品質を低下させるという問題がある。そこで、有機酸、酸化剤、さらには防食剤を含むアシスト液を切削水に混入することで混合液を形成し、該混合液を切削部に供給して、該分割予定ラインを切削する際に切削箇所の金属表面を改質して延性を抑制して、バリの発生を抑制する切削方法が本出願人により提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、切削部に供給される切削水は、高い圧力(例えば3~5気圧)に昇圧されて切削部位に供給されるものであることから、上記した特許文献1に記載の技術では、高い圧力に昇圧された切削水が流れる切削水供給経路に該アシスト液の流量を調整して圧入するために、該アシスト液を昇圧して混合することになる。そのため、上記した従来の構成を実現するためには、高価な昇圧ポンプを必要とし、該昇圧ポンプによって昇圧された圧力に耐えられる高い強度の配管や、該配管の連結部における漏洩を確実に防止するシール構造とを確保しなければならず、コストが高くなってしまうという問題がある。このような問題は、上記の有機酸、酸化剤、さらには防食剤等を含む液体をアシスト液として使用する場合に限定されず、切削液として界面活性剤を使用する場合にも同様の問題が発生し得る。
【0007】
また、該アシスト液を昇圧する昇圧ポンプとしては、ダイヤフラム式ポンプ、プランジャ式ポンプ等が選択されるが、これらの昇圧ポンプから圧送されるアシスト液の圧力は断続的な特性となるため、切削水へのアシスト液の混合が不連続となり、切削水噴射ノズルから切削水と共に噴射されるアシスト液が断続的となって、加工品質が安定しないという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、高価な昇圧ポンプ等を使用することなく、アシスト液を連続的に切削部位に供給することができる切削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、を含み構成された切削装置であって、該切削手段は、切削ブレードと被加工物に切削水を噴射する切削水噴射ノズルと、該切削水噴射ノズルに隣接して配設され該切削水噴射ノズルから噴射された切削水にアシスト液を混入するアシスト液混入ノズルと、を含む切削装置が提供される。
【0010】
該アシスト液は、有機酸と酸化剤とを含む混合液であることが好ましく、該アシスト液は、さらに防食剤を含むことが好ましい。また、該アシスト液は、界面活性剤であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の切削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、を含み構成された切削装置であって、該切削手段は、切削ブレードと被加工物に切削水を噴射する切削水噴射ノズルと、該切削水噴射ノズルに隣接して配設され該切削水噴射ノズルから噴射された切削水にアシスト液を混入するアシスト液混入ノズルと、を含んでいることから、アシスト液を切削水に圧入するための高価な昇圧ポンプや、昇圧に耐えられる配管、シール構造等を配設する必要がなく、コストが高くなるという問題が解消する。また、昇圧ポンプを採用するとアシスト液の混入が不連続となり、切削水噴射ノズルから噴射される切削水に混入されるアシスト液が断続的に噴射されて、加工品質が安定しないという問題も解消される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】(a)
図1に示す切削装置に装着される切削手段の一部を拡大して示す斜視図、(b)(a)に示す切削手段の一部を分解して示す斜視図である。
【
図3】
図2に示す切削手段により切削加工を実施する態様を示す側面図である。
【
図4】本発明の切削手段の別の実施形態を示す分解斜視図である。
【
図5】
図4に示す切削手段により切削加工を実施する態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に基づいて構成される切削装置に係る実施形態について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0014】
図1には、本実施形態の切削装置1の全体斜視図が示されている。切削装置1によって加工される被加工物は、例えばシリコン(Si)で形成されたウエーハWであり、テープTを介して環状のフレームFに支持されている。以下に説明する本実施形態の切削装置により、ウエーハWを切削して個々のデバイスチップに分割する態様について説明する。
【0015】
切削装置1は、被加工物である複数のウエーハWを収容するカセット4(2点鎖線で示す)と、カセット4に収容されたウエーハWを搬出して仮置きする仮置きテーブル5と、仮置きテーブル5に、カセット4からウエーハWを搬出する搬出入手段6と、仮置きテーブル5に搬出されたウエーハWを保持手段8のチャックテーブル8aに旋回してチャックテーブル8aの保持面8bに載置する搬送手段7と、チャックテーブル8aの保持面8bに吸引保持されたウエーハWを切削する切削手段9と、切削手段9により切削加工されたウエーハWを洗浄する洗浄手段10(詳細は省略している)と、切削加工されたウエーハWをチャックテーブル8aから洗浄手段10へ搬送する洗浄搬送手段11と、チャックテーブル8a上のウエーハWを撮像する撮像手段12と、図示を省略する制御手段と、を備えている。カセット4は、図示しない昇降手段によって上下に移動可能に配設されたカセットテーブル4a上に載置されており、カセット4からウエーハWを搬出入手段6によって搬出する際には、カセット4の高さが適宜調整される。装置ハウジング2内には、保持手段8のチャックテーブル8aをX軸方向に加工送りする加工送り手段(図示は省略する)が配設されている。
【0016】
図2を参照しながら、
図1に示す切削装置1に配設された切削手段9についてより具体的に説明する。
図2(a)は、切削手段9の主要部を拡大して示した斜視図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示す切削手段9の一部を分解した斜視図を示している。
図2(a)、(b)から理解されるように、切削手段9は、矢印Yで示すY軸方向に延びる回転軸ハウジング91と、回転軸ハウジング91によって回転自在に支持される回転軸92と、回転軸92の先端側に着脱自在に支持される環状の切削ブレード93と、回転軸ハウジング91の先端に装着され切削ブレード93及び該切削ブレード93を挟持するフランジユニット94を覆うカバー体95と、を備えている。なお、回転軸92は、図示を省略する回転軸92の後端側に配設された電動モータによって回転駆動される。また、切削手段9は、図示を省略する移動手段を備えている。該移動手段は、切削手段9をY軸方向に割り出し送りする割り出し送り手段と、切削手段9をZ軸方向の下方に移動させて切込み送りする切込み送り手段とを備えている。
【0017】
図2(b)に示すように、カバー体95は、回転軸ハウジング91の先端に固定される第1のカバー部材95aと、第1のカバー部材95aの前面のねじ穴95hに対してねじ99aを螺合して固定される第2のカバー部材95bと、第1のカバー部材95aの上面のねじ穴95iに対して上方からねじ99bによって固定される切削ブレード検出ブロック95cとを備えている。ブレード検出ブロック95cには、切削ブレード93の外周端部側の摩耗や欠けを検出するためのブレードセンサ(図示は省略)が配設されている。
【0018】
第1のカバー部材95aは、上面に配設された切削水供給口96aと、該切削水供給口96aから導入された切削水L1を、切削ブレード93により被加工物を切削する切削部に噴射する切削水噴射ノズル97aとを備え、第2のカバー部材95bは、上面に配設された切削水供給口96bと、該切削水供給口96bから導入された切削水L1を、該切削部に噴射する切削水噴射ノズル97bと、を備えている。
図2(b)から理解されるように、切削水噴射ノズル97a、97bは、切削ブレード93を、切削ブレード93の前面側(回転軸92の先端側)及び後面側(回転軸92の後端側)とで対向するように配設されており、切削ブレード93によって被加工物を切削する際に、切削部に対して切削水L1を噴射するように噴射孔が形成されている。さらに、本実施形態では、第1のカバー部材95aに、切削水噴射ノズル97a、97bに隣接するように位置付けられ、切削水噴射ノズル97a、97bから噴射された切削水L1に後述するアシスト液L2を混入するアシスト液混入ノズル98(破線で示す)が配設されている。アシスト液L2は、第1のカバー部材95aの上面に配設されたアシスト液供給口98aから導入される。なお、本発明のアシスト液L2とは、切削水L1に混入されることで、被加工物を切削する際に加工品質を高めるように機能する液体である(追って詳述する)。
【0019】
図3には、切削手段9によってウエーハWを切削加工する際の実施態様を示す側面図が示され、説明の都合上、カバー体95の第2のカバー部材95bを省略すると共に、アシスト液混入ノズル98が形成された第1のカバー部材95aの一部を断面で示している。
図3に示すように、切削水噴射ノズル97aに切削水L1を導入する切削水供給口96aには、切削水供給手段20が接続されている。切削水供給手段20は、例えば切削水L1として純水を貯留する切削水源22と、切削水供給路24と、切削水L1を昇圧するポンプ25と、を備えている。該ポンプ25を作動することにより、切削水供給路24が開かれ、切削水供給路24上の切削水L1を例えば3~5気圧に昇圧して、切削水供給口96aに供給する。なお、図示は省略しているが、第2のカバー部材95bに配設された切削水供給口96bにも該切削水供給手段20から切削水L1が供給される。
【0020】
アシスト液混入ノズル98のアシスト液供給口98aには、アシスト液供給手段30からアシスト液L2が供給される。アシスト液供給手段30は、例えば、アシスト液L2を貯留するアシスト液貯留タンク32と、アシスト液供給路34と、アシスト液供給路34を開閉する開閉弁36と、を備えている。該アシスト液供給手段30には、切削水供給手段20に配設されたポンプ25のような昇圧手段は配設されておらず、本実施形態では、開閉弁36を開とすることにより、アシスト液貯留タンク32からアシスト液L2が自重で供給されて、アシスト液混入ノズル98の先端部98bから噴射されるようになっている。上記のアシスト液貯留タンク32に貯留されるアシスト液L2について、より具体的に説明する。
【0021】
本実施形態に係る切削装置1のアシスト液供給手段30から供給されるアシスト液L2は、例えば、有機酸と酸化剤とを含む混合液である。該混合液中に含まれる有機酸により、例えばウエーハWの分割予定ライン上に配設される金属素子を改質して延性を抑えることができ、ウエーハWを切削する際に供給されことで、金属素子に起因するバリ(突起物)の発生が抑制される。また、酸化剤を混合液に含めることで、金属素子の表面を酸化して金属素子の延性を下げ、金属素子の加工性を向上させることができる。
【0022】
アシスト液L2に含まれる有機酸としては、例えば、アミノ酸、アミノポリ酸、カルボン酸等から適宜選択され、酸化剤としては、例えば、過酸化水素、硝酸塩、ヨウ素酸塩等から適宜選択されることが好ましい。
【0023】
また、アシスト液L2には、防食剤が混合されても良い。防食剤を混合することで、切削部に存在する金属素子の腐食(溶出)を防止できる。該防食剤としては、例えば、分子内に3つ以上の窒素原子を有し、且つ、縮環構造を有する複素芳香環化合物、又は、分子内に4つ以上の窒素原子を有する複素芳香環化合物を用いることが好ましい。具体的には、テトラゾール誘導体、1,2,3-トリアゾール誘導体、及び1,2,4-トリアゾール誘導体であることが好ましい。
【0024】
さらに、アシスト液L2として、界面活性剤が使用されていてもよい。界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、合成洗剤等を使用することができ、界面活性剤が切削部に供給されることで、切削加工が良好に実施されると共に、切削水L1に混入して切削部に供給することで、切削水L1の導電性を確保し、ウエーハW上のデバイスの静電破壊が回避され、加工品質の向上に寄与する。
【0025】
上記した切削装置1の切削手段9よって切削加工を実施するに際し、まず、カセット4に収容されたウエーハWを、搬出入手段6によって仮置きテーブル5に搬出し、搬送手段7によって、
図1において搬出入位置に位置付けられたチャックテーブル8a上に搬送する。チャックテーブル8aにウエーハWを載置し吸引保持したならば、ウエーハWを、X軸移動手段により撮像手段12の直下に位置付けて撮像し、切削加工すべき領域であるウエーハWの所定の分割予定ライン(図示を省略する)を検出してX軸方向に整合させる。次いで、切削を開始する分割予定ラインと切削手段9の切削ブレード93との位置合わせを実施して、切削手段9を所定の加工開始位置に位置付ける。
【0026】
次いで、
図3に示すように、切削手段9の切削ブレード93をR1で示す方向に高速回転させ、X軸方向に整合させた該分割予定ラインに位置付け、上記した切削水供給手段20を作動して、切削水噴射ノズル97a、97bから切削水L1を供給する。これと同時に、アシスト液供給手段30を作動して、切削部に供給された切削水L1に対して、アシスト液混入ノズル98の先端部98bから上記のアシスト液L2を供給する。そして、上記の切込み送り手段を作動してウエーハWの表面Wa側から切り込ませると共に、上記したチャックテーブル8aと共にウエーハWを図中矢印Xで示すX軸方向に加工送りして切削溝100を形成する。さらに、該切削溝100を形成した分割予定ラインにY軸方向で隣接する未加工の分割予定ライン上に切削手段9の切削ブレード93を割り出し送りして、上記と同様にして切削溝100を形成する。これらを繰り返すことにより、X軸方向に沿うすべての分割予定ラインに沿って切削溝100を形成する。次いで、チャックテーブル8aを90度回転し、先に切削溝100を形成した方向と直交する方向をX軸方向に整合させ、上記した切削加工を、新たにX軸方向に整合させたすべての分割予定ラインに対して実施し、ウエーハWに形成されたすべての分割予定ラインに沿って切削溝100を形成する。このように分割工程を実施して分割予定ラインに沿ってウエーハWを個々のデバイスチップに分割する。
【0027】
上記した実施形態によれば、切削水噴射ノズル97a、97bから切削部に噴射された切削水L1に対し、切削水噴射ノズル97a、97bに隣接して配設されたアシスト液混入ノズル98からアシスト液L2を良好に混入することができ、アシスト液L2を切削水L1に圧入するための高価な昇圧ポンプや、昇圧に耐えられる配管、シール構造等を配設する必要がなく、コストが高くなるという問題が解消する。また、断続的な圧送となる昇圧ポンプを使用する必要がなくなることから、切削水噴射ノズルから噴射される切削水L1に混入されるアシスト液L2が断続的に噴射されて、加工品質が安定しないという問題も解消される。さらには、アシスト液供給路34上に開閉弁36が配設されることによって、アシスト液混入ノズル98から切削水L1に混入されるアシスト液L2が適量に調整される。
【0028】
本発明は、上記した実施形態に限定されない。上記した実施形態の切削手段9のカバー体95に配設したアシスト液混入ノズル98に替えて、
図4に示すように、切削ブレード93’を挟持するフランジユニット94’の支持面に噴出路98’を配設した切削手段9’を採用してもよい。噴出路98’は、フランジユニット94’によって切削ブレード93’を挟持することで、本発明のアシスト液混入ノズルとして機能するものであり、該噴出路98’の構成、及び作用について、
図4に加え、
図5も参照しながら、詳細に説明する。なお、
図4、5に示す切削手段9’以外の構成は、
図1に基づき説明した切削装置1と同一の構成を備えるものであることから省略すると共に、説明の都合上、切削ブレード93’やフランジユニット94’を覆うカバー体95も省略している。
【0029】
図4から理解されるように、切削手段9’は、回転軸ハウジング91’と、回転軸ハウジング91’によって回転自在に支持される回転軸92’と、回転軸92’の先端部92a’に着脱自在に支持される環状の切削ブレード93’と、該フランジユニット94’と協働して回転軸92’の先端部92a’に切削ブレード93’を固定するためのリング状のナット92b’とを備えている。
【0030】
図4から理解されるように、フランジユニット94’は、固定フランジ94a’と、着脱フランジ94b’とを含む。固定フランジ94a’の切削ブレード93’の支持面には、外周側に放射状に延びる複数の噴出路98’が形成されている。着脱フランジ94b’は、回転軸92’に対して着脱可能に構成され、固定フランジ94a’と協働して切削ブレード93’を挟持する。さらに、着脱フランジ94b’の切削ブレード93’を支持する支持面には、固定フランジ94a’と同様に、外周側に放射状に延びる複数の噴出路98’が形成されている。なお、
図4では、着脱フランジ94b’側の噴出路98’が形成された支持面は見えていないが、着脱フランジ94b’に対向して配設される固定フランジ94a’の噴出路98’と同様の形態で形成されている。
【0031】
回転軸92’の先端部92a’側において、固定フランジ94a’が配設された位置からさらに先端側の外周面には、雄ねじ92c’が形成されている。また、
図4に示すように、回転軸ハウジング91’には、アシスト液供給口91a’が形成されている。アシスト液供給口91a’には、
図3に基づき説明したアシスト液供給手段30のアシスト液供給路34が接続され、回転軸ハウジング91’の内部にアシスト液供給手段30からのアシスト液L2が導入される。切削手段9’の概略断面を示す
図5から理解されるように、回転軸92’の外周面において、アシスト液供給口91a’と対向する位置には、環状溝92d’が形成されている。回転軸92’の内部には、長手方向に沿って連通路92e’が形成されている。該環状溝92d’と連通路92e’とは、環状溝92d’の底部に形成された複数の孔92f’により接続されている。
【0032】
回転軸92’の先端部92a’における、固定フランジ94a’と雄ネジ92c’との間の外周面には、環状溝92g’が形成されており、該環状溝92g’の底部には、上記の連通路92e’と該環状溝92g’とを連通する孔92h’が、放射状に均等間隔で複数個、例えば6個形成されている。また、
図4に示すように、該環状溝92g’の底部において、隣接する孔92h’の中間位置には、該環状溝92g’の深さに対応する高さの凸部92i’が形成されている。該凸部92i’は、該環状溝92g’において均等間隔で複数形成され、本実施形態では、孔92h’と同数(6個)形成されている。
図4に示すように、回転軸92’の端部に切削ブレード93’を固定すべく、回転軸92’の先端部92a’側(図中左方側)から切削ブレード93’の開口部93a’を位置付けて装着し、固定フランジ94a’に当接させる。これにより、切削ブレード93’は、上記の環状溝92g’上に位置付けられ(
図5も併せて参照)、切削ブレード93’の開口部93a’が上記の凸部92i’によって支持される。さらに、回転軸92’の先端部92a’側に、着脱フランジ94b’の開口部94c’を位置付けて装着し、ナット92b’を回転軸92’の雄ねじ92c’に螺合して締結する。これにより、固定フランジ94a’において噴出路98’が形成された支持面と、着脱フランジ94b’において噴出路98’が形成された支持面とにより切削ブレード93’が挟持されて固定される。
【0033】
上記した構成において、アシスト液供給口91a’からアシスト液L2が導入されることで、アシスト液L2は、回転軸92’の環状溝92d’、孔92f’、連通路92e’、孔92h’、環状溝92g’を経由して固定フランジ94a’の噴出路98’と、着脱フランジ94b’の噴出路98’とに導入されて、切削ブレード93’に沿って放射状に噴出される。
【0034】
上記した切削手段9’を使用して、ウエーハWを、先に説明した実施形態の手順に沿って切削して分割予定ライン上に切削溝100を形成する際には、
図2に基づき説明した切削水噴射ノズル97a、97bから、切削水L1を高圧で噴射すると共に、
図5に示すように、高速回転する切削ブレード93’の外周面に沿って、アシスト液混入ノズルとして機能する噴出路98’から放射状にアシスト液L2が噴射される。これにより、切削水噴射ノズル97a、97bから切削部に噴射された切削水L1に対してアシスト液L2が混入される。
【0035】
上記した切削手段9’によっても、切削水噴射ノズル97a、97bから切削部に噴射された切削水L1に対し、切削水噴射ノズル97a、97bに隣接するように位置付けられたアシスト液混入ノズルとして機能する噴出路98’からアシスト液L2が混入される。したがって、アシスト液L2を切削水L1に圧入するための高価な昇圧ポンプや、昇圧に耐えられる配管、シール構造等を配設する必要がなく、コストが高くなるという問題が解消する。また、昇圧ポンプを採用するとアシスト液L2の混入が不連続となり、切削水噴射ノズルから噴射される切削水L1に混入されるアシスト液L2が断続的に噴射されて、加工品質が安定しないという問題も解消される。
【符号の説明】
【0036】
1:切削装置
2:装置ハウジング
4:カセット
4a:カセットテーブル
5:仮置きテーブル
6:搬出入手段
7:搬送手段
8:保持手段
8a:チャックテーブル
8b:保持面
9:切削手段
91:回転軸ハウジング
92:回転軸
93:切削ブレード
94:フランジユニット
95:カバー体
95a:第1のカバー部材
95b:第2のカバー部材
95h、95i:ねじ穴
96a、96b:切削水供給口
97a、97b:切削水噴射ノズル
98:アシスト液混入ノズル
98a:アシスト液供給口
98b:先端部
99a、99b:ねじ
9’:切削手段
91’:回転軸ハウジング
91a’:アシスト液供給口
92’:回転軸
92a’:先端部
92b’:ナット
92c’:雄ねじ
92d’:環状溝
92e’:連通路
92f’:孔
92g’:環状溝
92h’:孔
92i:凸部
93’:切削ブレード
94’:フランジユニット
94a’:固定フランジ
94b’:着脱フランジ
98’:噴出路(アシスト液混入ノズル)
10:洗浄手段
11:洗浄搬送手段
12:撮像手段
20:切削水供給手段
22:切削水源
24:切削水供給路
25:ポンプ
30:アシスト液供給手段
32:アシスト液貯留タンク
34:アシスト液供給路
36:開閉弁
100:切削溝
W:ウエーハ
T:テープ
F:フレーム