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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134047
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/04 20060101AFI20230920BHJP
   B24B 49/18 20060101ALI20230920BHJP
   B24B 49/10 20060101ALI20230920BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20230920BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20230920BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20230920BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
B24B49/04 Z
B24B49/18
B24B49/10
B24B41/06 L
B24B7/04 B
B23Q17/20 A
H01L21/78 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039377
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】山本 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】藤村 聖
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C043
5F063
【Fターム(参考)】
3C029BB06
3C034AA08
3C034BB73
3C034BB92
3C034CA02
3C034CA14
3C034CB12
3C034CB13
3C034DD07
3C034DD10
3C043BA01
3C043BA03
3C043BA09
3C043BA12
3C043BA15
3C043BA16
3C043BA18
3C043CC04
3C043CC13
3C043DD02
3C043DD03
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
3C043EE03
5F063AA01
5F063DD09
(57)【要約】
【課題】追加の構成要素を設けることなく、研削砥石の自生発刃が適度に生じるように被加工物の研削条件を調整することが可能な研削装置を提供する。
【解決手段】被加工物の消耗率又は研削砥石の消耗率の少なくとも一方が報知されるように研削装置を構成する。この場合、被加工物の消耗率又は研削砥石の消耗率の少なくとも一方を参照して、研削装置のオペレータが被加工物の研削条件を調整することができる。そのため、この研削装置においては、追加の構成要素を設けることなく、研削砥石の自生発刃が適度に生じるように被加工物の研削条件を調整することが可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された該被加工物を研削する研削砥石を有する研削ホイールが装着されている研削ユニットと、
該チャックテーブルに保持された該被加工物の厚みを測定する測定ユニットと、
該チャックテーブルと該研削ユニットとを相対的に移動させる移動機構と、
該被加工物又は該研削砥石の少なくとも一方に関する情報を報知する報知ユニットと、
該研削ユニット、該移動機構及び該報知ユニットを制御する制御ユニットと、を含み、
該制御ユニットは、
該研削ホイールを回転させるように該研削ユニットを制御しながら該チャックテーブルと該研削ユニットとを接近させるように該移動機構を制御して、該被加工物を該研削砥石で研削する駆動部と、
該研削砥石による該被加工物の研削の際に該測定ユニットによって測定される該被加工物の厚みに基づいて該被加工物の厚みの減少量を算出するとともに、該研削砥石による該被加工物の研削の際の該チャックテーブルと該研削ユニットとの相対的な移動量と、該厚みの減少量と、に基づいて該被加工物の消耗率又は該研削砥石の消耗率の少なくとも一方を算出する算出部と、
該報知ユニットを制御して、該算出部によって算出された該被加工物の消耗率又は該研削砥石の消耗率の少なくとも一方を報知する報知部と、を含む研削装置。
【請求項2】
該制御ユニットは、
該被加工物の消耗率又は該研削砥石の消耗率の少なくとも一方の好適な範囲を記憶する記憶部と、
該算出部によって算出された該被加工物の消耗率又は該研削砥石の消耗率の少なくとも一方が該好適な範囲に属するか否かを判定する判定部と、をさらに含み、
該被加工物の消耗率又は該研削砥石の消耗率の少なくとも一方が該好適な範囲に属さないと該判定部が判定した場合に、該報知部が該報知ユニットを制御して警告を報知する、又は、該駆動部が該研削ユニット又は該移動機構の少なくとも一方を制御して該被加工物の研削条件を変更する請求項1に記載の研削装置。
【請求項3】
該被加工物の消耗率は、該厚みの減少量を該移動量で除算することによって算出される請求項1又は2に記載の研削装置。
【請求項4】
該研削砥石の消耗率は、該移動量から該厚みの減少量を減算して得られる長さを該移動量で除算することによって算出される請求項1乃至3のいずれかに記載の研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)等のデバイスのチップは、携帯電話及びパーソナルコンピュータ等の各種電子機器において不可欠の構成要素である。このようなチップは、例えば、表面側に複数のデバイスが形成されているウェーハ等を含む被加工物を個々のデバイスを含む領域毎に分割することで製造される。
【0003】
この被加工物は、製造されるチップの小型化を目的として、その分割に先立って薄化されることがある。被加工物を薄化する方法としては、例えば、環状に離散して配置され、かつ、それぞれが直方体状の形状を有する研削ホイールを用いた研削が挙げられる。
【0004】
また、複数の研削砥石のそれぞれは、ビトリファイドボンド又はレジンボンド等の結合材に分散されたダイヤモンド又は立方晶窒化ホウ素(cBN:cubic Boron Nitride)等の砥粒を有する。そして、研削ホイールを用いた被加工物の研削は、例えば、以下の順序で行われる。
【0005】
まず、その裏面が露出されるように被加工物を保持する。次いで、研削ホイールと被加工物との双方を回転させながら、複数の研削砥石のいずれかの研削面と被加工物の裏面の中心とを接触させる。次いで、研削ホイールと被加工物との双方を回転させたまま、被加工物の厚さが所定の厚さに至るまで研削ホイールを被加工物の表面に近付ける。
【0006】
このような研削を行うための研削装置は、一般的に、被加工物を保持するチャックテーブルと、研削ホイールが先端に装着されるスピンドルを有する研削ユニットと、チャックテーブルに保持された被加工物の厚みを測定する測定ユニットとを備える。
【0007】
また、このような研削の加工精度を向上させるためには、研削砥石の自生発刃が生じるように被加工物が研削されることが重要である。すなわち、被加工物の研削中に研削砥石自身が削られることによって、摩耗した砥粒を研削面から脱落させるとともに新たな砥粒を研削面に露出させることが重要である。
【0008】
他方、研削砥石の自生発刃が過剰に生じると、被加工物の加工効率が低下するとともに加工コストが増大する。そのため、研削装置においては、研削砥石の自生発刃が適度に生じるように被加工物の研削条件を調整して被加工物を研削することが好ましい。
【0009】
このような調整の方法としては、例えば、被加工物に加わる荷重を荷重検出手段によって検出し、この荷重が所定のしきい値を超えないように被加工物を研削することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2013-226625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述のように被加工物の研削条件を調整するためには、研削装置に荷重検出手段を設けることが必要になる。しかしながら、荷重検出手段のような追加の構成要素を研削装置に設ける場合には、研削装置の構造が複雑化するとともに、その製造コストが増大する。
【0012】
この点に鑑み、本発明の目的は、追加の構成要素を設けることなく、研削砥石の自生発刃が適度に生じるように被加工物の研削条件を調整することが可能な研削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された該被加工物を研削する研削砥石を有する研削ホイールが装着されている研削ユニットと、該チャックテーブルに保持された該被加工物の厚みを測定する測定ユニットと、該チャックテーブルと該研削ユニットとを相対的に移動させる移動機構と、該被加工物又は該研削砥石の少なくとも一方に関する情報を報知する報知ユニットと、該研削ユニット、該移動機構及び該報知ユニットを制御する制御ユニットと、を含み、該制御ユニットは、該研削ホイールを回転させるように該研削ユニットを制御しながら該チャックテーブルと該研削ユニットとを接近させるように該移動機構を制御して、該被加工物を該研削砥石で研削する駆動部と、該研削砥石による該被加工物の研削の際に該測定ユニットによって測定される該被加工物の厚みに基づいて該被加工物の厚みの減少量を算出するとともに、該研削砥石による該被加工物の研削の際の該チャックテーブルと該研削ユニットとの相対的な移動量と、該厚みの減少量と、に基づいて該被加工物の消耗率又は該研削砥石の消耗率の少なくとも一方を算出する算出部と、該報知ユニットを制御して、該算出部によって算出された該被加工物の消耗率又は該研削砥石の消耗率の少なくとも一方を報知する報知部と、を含む研削装置が提供される。
【0014】
好ましくは、該制御ユニットは、該被加工物の消耗率又は該研削砥石の消耗率の少なくとも一方の好適な範囲を記憶する記憶部と、該算出部によって算出された該被加工物の消耗率又は該研削砥石の消耗率の少なくとも一方が該好適な範囲に属するか否かを判定する判定部と、をさらに含み、該被加工物の消耗率又は該研削砥石の消耗率の少なくとも一方が該好適な範囲に属さないと該判定部が判定した場合に、該報知部が該報知ユニットを制御して警告を報知する、又は、該駆動部が該研削ユニット又は該移動機構の少なくとも一方を制御して該被加工物の研削条件を変更する。
【0015】
なお、該被加工物の消耗率は、該厚みの減少量を該移動量で除算することによって算出される。
【0016】
また、該研削砥石の消耗率は、該移動量から該厚みの減少量を減算して得られる長さを該移動量で除算することによって算出される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の研削装置は、被加工物の消耗率又は研削砥石の消耗率の少なくとも一方が報知されるように構成される。この場合、被加工物の消耗率又は研削砥石の消耗率の少なくとも一方を参照して、研削装置のオペレータが被加工物の研削条件を調整することができる。そのため、本発明の研削装置においては、追加の構成要素を設けることなく、研削砥石の自生発刃が適度に生じるように被加工物の研削条件を調整することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、研削装置の一例を模式的に示す斜視図である。
図2図2は、研削装置の一例を模式的に示す断面図である。
図3図3は、研削装置の制御ユニットの一例を模式的に示す機能ブロック図である。
図4図4は、研削装置の制御ユニットの別の例を模式的に示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。図1は、研削装置の一例を模式的に示す斜視図であり、また、図2は、図1に示される研削装置の一例を模式的に示す断面図である。なお、図1及び図2に示されるX軸方向(前後方向)及びY軸方向(左右方向)は、水平面上において互いに直交する方向であり、また、Z軸方向(上下方向)は、X軸方向及びY軸方向に直交する方向(鉛直方向)である。
【0020】
図1及び図2に示される研削装置2は、各構成要素を支持する基台4を有する。この基台4の上面には、X軸方向に沿って延在する直方体状の溝4aが形成されている。そして、溝4aの底面には、後述するチャックテーブル22をX軸方向に沿って移動させるX軸方向移動機構5が設けられている。
【0021】
このX軸方向移動機構5は、それぞれがX軸方向に沿って延在する一対のガイドレール6を有する。一対のガイドレール6の上側には、X軸方向に沿ってスライド可能な態様で直方体状のX軸移動プレート8が取り付けられている。また、一対のガイドレール6の間には、X軸方向に沿って延在するねじ軸10が配置されている。
【0022】
そして、ねじ軸10の後端部には、ねじ軸10を回転させるためのパルスモータ12が連結されている。また、ねじ軸10のねじ山が形成された外周面上には、ねじ軸10の回転に応じて循環するボールを収容するナット部14が設けられ、ボールねじが構成されている。
【0023】
また、ナット部14は、X軸移動プレート8の下面側に固定されている。そのため、パルスモータ12でねじ軸10を回転させれば、ナット部14とともにX軸移動プレート8がX軸方向に沿って移動する。また、X軸移動プレート8の上には、下端部に従動プーリ16が連結されている回転体と、駆動プーリ(不図示)に連結されているモータ等の回転駆動源(不図示)とが設けられている。
【0024】
また、従動プーリ16と駆動プーリとには、無端ベルト(不図示)が架けられている。さらに、X軸移動プレート8の上には、1つの固定軸(不図示)と、それぞれのZ軸方向に沿った長さが可変な2つの可動軸18とを有する傾き調整機構が設けられている。また、固定軸と2つの可動軸18とは、テーブルベース20の下面側に連結され、テーブルベース20を支持する。
【0025】
このテーブルベース20の中央には貫通孔(不図示)が形成されており、この貫通孔には、下端部に従動プーリ16が連結されている回転体が通されている。そして、この回転体の上端部は、円板状のチャックテーブル22の下面側に連結されている。そのため、従動プーリ16に架けられている無端ベルトを回転させるように駆動プーリに連結されている回転駆動源を動作させると、チャックテーブル22の周方向に沿ってチャックテーブル22が回転する。
【0026】
また、チャックテーブル22は、ベアリング(不図示)を介してテーブルベース20に支持されている。そのため、上述のとおりチャックテーブル22を回転させても、テーブルベース20が回転することはない。他方、傾き調整機構において2つの可動軸18のそれぞれのZ軸方向に沿った長さが調整されると、テーブルベース20のみならず、チャックテーブル22の傾きも調整される。
【0027】
チャックテーブル22は、セラミックス等からなる円板状の枠体24を有する。この枠体24は、円板状の底壁と、この底壁から立設する円筒状の側壁とを有する。すなわち、枠体24の上面側には、底壁及び側壁によって画定される円板状の凹部が形成されている。
【0028】
なお、枠体24の側壁の内径は、後述する被加工物11の直径よりも僅かに短く、かつ、その外径は、被加工物11の直径よりも僅かに長い。また、枠体24の底壁には凹部の底面において開口する流路(不図示)が形成されており、この流路はエジェクタ等の吸引源(不図示)と連通する。
【0029】
さらに、枠体24の上面側に形成されている凹部には、この凹部の直径と概ね等しい直径を有する円板状のポーラス板26が固定されている。このポーラス板26は、例えば、多孔質セラミックスからなる。また、ポーラス板26の上面及び枠体24の側壁の上面は、円錐の側面に対応する形状(中心が外周よりも突出する形状)を有する。
【0030】
そして、枠体24の内部に形成されている流路に連通する吸引源を動作させると、ポーラス板26の上面近傍の空間に吸引力が作用する。そのため、ポーラス板26の上面及び枠体24の側壁の上面は、チャックテーブル22の保持面22aとして機能する(図1参照)。
【0031】
例えば、被加工物11がチャックテーブル22の保持面22aに置かれた状態で吸引源を動作させることによって、被加工物11がチャックテーブル22に保持される。この被加工物11は、例えば、シリコン等の半導体材料からなり、その表面13a側に複数のデバイスが形成されているウェーハ13を有する。
【0032】
また、ウェーハ13の表面13aには、例えば、樹脂からなり、ウェーハ13の裏面13b側を研削する際のデバイスの破損を防止する保護テープ15が貼着されている。そして、被加工物11は、保護テープ15を介してウェーハ13が保持されるように、すなわち、ウェーハ13の裏面13bが露出されるようにチャックテーブル22に保持される。
【0033】
さらに、チャックテーブル22の周囲には、その保持面22aが露出するようにチャックテーブル22を囲む直方体状のテーブルカバー28が設けられている。このテーブルカバー28の幅(Y軸方向に沿った長さ)は基台4の上面に形成されている溝4aの幅と概ね等しい。また、テーブルカバー28の前後には、X軸方向に沿って伸縮可能な防塵防滴カバー30が設けられている。
【0034】
また、基台4の上面のうち溝4aの後方に位置する領域には、四角柱状の支持構造32が設けられている。この支持構造32の前面には、Z軸方向移動機構33が設けられている。このZ軸方向移動機構33は、それぞれがZ軸方向に沿って延在する一対のガイドレール34を有する。そして、一対のガイドレール34のそれぞれの前側には、Z軸方向に沿ってスライド可能な態様でスライダ36が設けられている(図2参照)。
【0035】
また、スライダ36の前端部は、直方体状のZ軸移動プレート38の後面側に固定されている。さらに、一対のガイドレール34の間には、Z軸方向に沿って延在するねじ軸40が配置されている。そして、ねじ軸40の上端部には、ねじ軸40を回転させるためのパルスモータ42が連結されている。
【0036】
また、ねじ軸40のねじ山が形成された外周面上には、ねじ軸40の回転に応じて循環するボールを収容するナット部44が設けられ、ボールねじが構成されている。また、ナット部44は、Z軸移動プレート38の後面側に固定されている。そのため、パルスモータ42でねじ軸40を回転させれば、ナット部44とともにZ軸移動プレート38がZ軸方向に沿って移動する。
【0037】
Z軸移動プレート38の前側には、研削ユニット46が設けられている。この研削ユニット46は、Z軸移動プレート38の前面に固定されている円筒状の保持部材48を有する。そして、保持部材48の内側には、Z軸方向に沿って延在する円筒状のスピンドルハウジング50が設けられている。
【0038】
また、スピンドルハウジング50の内側には、Z軸方向に沿って延在する円柱状のスピンドル52が設けられている(図2参照)。このスピンドル52は、回転可能な態様でスピンドルハウジング50に支持され、その上端部は、モータ等の回転駆動源54に連結されている。
【0039】
また、スピンドル52の下端部は、スピンドルハウジング50から露出し、円板状のホイールマウント56に固定されている。そして、ホイールマウント56の下面側には、ボルト等の固定部材(不図示)を用いて、ホイールマウント56の直径と概ね等しい外径を有する環状の研削ホイール58が装着されている。すなわち、研削ユニット46においては、研削ホイール58が交換可能である。
【0040】
この研削ホイール58は、複数の研削砥石58aと、複数の研削砥石58aが環状に離散して配置されている下面を有するホイール基台58bとを有する。そして、回転駆動源54を動作させると、Z軸方向に沿った直線を回転軸として、スピンドル52とともにホイールマウント56及び研削ホイール58が回転する。
【0041】
なお、複数の研削砥石58aは、ビトリファイドボンド又はレジンボンド等の結合材に分散されたダイヤモンド又はcBN等の砥粒を有する。また、ホイール基台58bは、例えば、ステンレス鋼又はアルミニウム等の金属材料からなる。さらに、研削ホイール58の近傍には、複数の研削砥石58aによって被加工物11を研削する際に純水等の液体(研削水)を加工点に供給する研削水供給ノズルが設けられている。
【0042】
また、基台4の上面のうち溝4aの側方に位置し、かつ、研削ユニット46に近接する領域には、測定ユニット60が設けられている。この測定ユニット60は、例えば、それぞれの測定子が接触する位置の高さを測定する一対のハイトゲージ60a,60bを有する。
【0043】
ハイトゲージ60aの測定子は、チャックテーブル22に保持された被加工物11に含まれるウェーハ13の裏面13bに接触するように配置可能である。また、ハイトゲージ60bの測定子は、チャックテーブル22の保持面22a(具体的には、枠体24の側壁の上面)に接触するように配置可能である。
【0044】
そのため、ウェーハ13の裏面13b側の研削に先立って、又は、その最中に、このように各ハイトゲージ60a,60bの測定子を配置することによって、測定ユニット60において被加工物11の厚みを測定することができる。
【0045】
さらに、研削装置2には、上述した構成要素を覆うカバー(不図示)が設けられている。そして、このカバーの前面には、タッチパネル62が配置されている。このタッチパネル62は、例えば、静電容量方式又は抵抗膜方式のタッチセンサ等の入力ユニットと、液晶ディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等の表示ユニット(報知ユニット)とによって構成され、ユーザインターフェースとして機能する。
【0046】
また、研削装置2は、上述した構成要素を制御する制御ユニットを内蔵する。図3は、研削装置2の制御ユニットの一例を模式的に示す機能ブロック図である。図3に示される制御ユニット64は、CPU(Central Processing Unit)等によって構成される処理部66と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)又はSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリ及びSSD(Solid State Drive)(NAND型フラッシュメモリ)又はHDD(Hard Disk Drive)(磁気記憶装置)等の不揮発性メモリによって構成される記憶部68とを有する。
【0047】
記憶部68は、処理部66において用いられる各種の情報(データ及びプログラム等)を記憶する。例えば、この記憶部68には、被加工物11の消耗率又は研削砥石58aの消耗率の少なくとも一方の好適な範囲が記憶されている。なお、被加工物11の消耗率は、研削砥石58aによってウェーハ13の裏面13b側を研削した時の被加工物11の厚みの減少量と研削砥石58aの厚みの減少量との総量に占める被加工物11の厚みの減少量の割合である。
【0048】
同様に、研削砥石58aの消耗率は、当該総量に占める研削砥石58aの厚みの減少量の割合である。具体的には、研削砥石58aによる被加工物11の研削の際の研削ユニット46の移動量(下降量)をΔZとし、かつ、被加工物11の厚さの減少量をΔTとすると、被加工物11の消耗率と研削砥石58aの消耗率とは以下のように算出される。
【0049】
まず、被加工物11の消耗率は、厚みの減少量ΔTを移動量ΔZで除算することによって算出される。すなわち、被加工物11の消耗率はΔT/ΔZと表現できる。また、研削砥石58aの消耗率は、移動量ΔZから厚みの減少量ΔTを減算して得られる長さを移動量ΔZで除算することによって算出される。すなわち、研削砥石58aの消耗率は(ΔZ-ΔT)/ΔZと表現できる。
【0050】
また、処理部66は、記憶部68に記憶された各種のプログラムを読みだして実行し、研削装置2の構成要素を制御する。例えば、処理部66は、駆動部70と、算出部72と、報知部74とを有する。
【0051】
駆動部70は、研削装置2の構成要素の移動又は回転を制御する。すなわち、駆動部70は、X軸方向移動機構5(具体的には、パルスモータ12)と、Z軸方向移動機構33(具体的には、パルスモータ42)と、傾き調整機構(具体的には、可動軸18)と、チャックテーブル22を回転させる回転駆動源と、研削ホイール58を回転させる回転駆動源54とを制御する。
【0052】
算出部72は、被加工物11の消耗率又は研削砥石58aの消耗率の少なくとも一方を算出する。具体的には、算出部72は、測定ユニット60によって測定される、研削砥石58aによる被加工物11の研削前後の被加工物11の厚みに基づいて被加工物11の厚みの減少量ΔTを算出する。そして、算出部72は、研削砥石58aによる被加工物11の研削前後の研削ユニット46の移動量(降下量)ΔZと、厚みの減少量ΔTとに基づいて被加工物11の消耗率又は研削砥石58aの消耗率の少なくとも一方を算出する。
【0053】
報知部74は、被加工物11又は研削砥石58aの少なくとも一方に関する情報を報知するようにタッチパネル62を制御する。例えば、報知部74は、算出部72によって算出された被加工物11の消耗率又は研削砥石58aの消耗率の少なくとも一方が表示されるようにタッチパネル62を制御する。さらに、報知部74は、この表示と並ぶように、記憶部68に記憶された被加工物11の消耗率又は研削砥石58aの消耗率の少なくとも一方の好適な範囲が表示されるようにタッチパネル62を制御してもよい。
【0054】
上述した研削装置2は、被加工物11の消耗率又は研削砥石58aの消耗率の少なくとも一方がタッチパネル62において報知されるように構成される。この場合、被加工物11の消耗率又は研削砥石58aの消耗率の少なくとも一方を参照して、研削装置2のオペレータが被加工物11の研削条件を調整することができる。
【0055】
具体的には、オペレータがタッチパネル62を操作することによって、チャックテーブル22の回転速度、研削ホイール58の回転速度及び/又は研削ユニット46の下降速度等を変更することができる。例えば、タッチパネル62に表示されている研削砥石58aの消耗率の好適な範囲と比較して研削砥石58aの消耗率が低い場合、当該回転速度の低下及び/又は当該下降速度の増加等が行われるようにオペレータがタッチパネル62を操作することができる。
【0056】
他方、タッチパネル62に表示されている研削砥石58aの消耗率の好適な範囲と比較して研削砥石58aの消耗率が高い場合、当該回転速度の増加及び/又は当該下降速度の低下等が行われるようにオペレータがタッチパネル62を操作することができる。これにより、研削装置2においては、被加工物11に加わる荷重等を検出するための追加の構成要素を設けることなく、研削砥石の自生発刃が適度に生じるように被加工物11の研削条件を調整することが可能である。
【0057】
なお、上述した内容は本発明の一態様であって、本発明の内容は上述した内容に限定されない。例えば、本発明の研削装置において研削される被加工物は、ウェーハ13を含むものに限定されず、研削砥石のドレッシングのために利用されるドレッシングボードを含むものであってもよい。
【0058】
また、本発明の研削装置には、タッチパネル62に換えて又は加えて、別の入力ユニット及び/又は報知ユニットが設けられていてもよい。当該別の入力ユニットとしては、例えば、キーボード、マウス、タッチパッド又はマイクロフォンが挙げられる。また、当該別の報知ユニットとしては、例えば、プリンタ、スピーカ又は警告灯(パイロットランプ)が挙げられる。
【0059】
また、本発明の研削装置においては、チャックテーブル22と研削ユニット46とを相対的に移動させる移動機構に制限はない。例えば、本発明の研削装置においては、X軸方向移動機構5及びZ軸方向移動機構33に換えて、チャックテーブル22をZ軸方向に移動させるZ軸方向移動機構と、研削ユニット46をX軸方向に移動させるX軸方向移動機構とが設けられていてもよい。
【0060】
また、本発明の研削装置においては、被加工物11の厚みを測定する測定ユニットに制限はない。例えば、本発明の研削装置においては、測定ユニット60に換えて、非接触で被加工物11の厚みを測定する測定ユニットが設けられていてもよい。
【0061】
また、本発明の研削装置の制御ユニットは、制御ユニット64に含まれる機能部に換えて又は加えて、別の機能部を有してもよい。図4は、本発明の研削装置の制御ユニットの別の例を模式的に示す機能ブロック図である。端的には、図4に示される制御ユニット76は、制御ユニット64の機能部に加えて判定部78を有する。
【0062】
判定部78は、算出部72によって算出された被加工物11の消耗率又は研削砥石58aの消耗率の少なくとも一方が記憶部68に記憶された好適な範囲に属するか否かを判定する。そして、被加工物11の消耗率又は研削砥石58aの消耗率の少なくとも一方が好適な範囲に属さないと判定部78が判定した場合には、制御ユニット76に含まれる別の機能部が研削装置の構成要素をさらに動作させる。
【0063】
例えば、この場合には、報知部74が報知ユニットを制御して警告を報知する。具体的には、警告メッセージの表示、警告音の発報及び/又は警告灯の点灯等が行われるように報知部74が報知ユニット(具体的には、タッチパネル62、スピーカ及び/又は警告灯)を制御する。このように警報が報知される場合には、被加工物11の研削条件を変更することを研削装置2のオペレータに強く促すことができる。
【0064】
あるいは、被加工物11の消耗率又は研削砥石58aの消耗率の少なくとも一方が好適な範囲に属さないと判定部78が判定した場合には、駆動部70が被加工物11の研削条件を変更してもよい。具体的には、駆動部70が、チャックテーブル22の回転速度、研削ホイール58の回転速度及び/又は研削ユニット46の下降速度等を変更するように移動ユニット(具体的には、チャックテーブル22を回転させる回転駆動源、回転駆動源54及び/又はパルスモータ42)を制御する。
【0065】
この場合、研削砥石58aの自生発刃が適度に生じるように被加工物11の研削条件が自動的に調整することができる。その他、上述した実施形態にかかる構造及び方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0066】
2 :研削装置
4 :基台(4a:溝)
5 :X軸方向移動機構
6 :ガイドレール
8 :X軸移動プレート
10:ねじ軸
11:被加工物
12:パルスモータ
13:ウェーハ(13a:表面、13b:裏面)
14:ナット部
15:保護テープ
16:従動プーリ
18:可動軸
20:テーブルベース
22:チャックテーブル(22a:保持面)
24:枠体
26:ポーラス板
28:テーブルカバー
30:防塵防滴カバー
32:支持構造
33:Z軸方向移動機構
34:ガイドレール
36:スライダ
38:Z軸移動プレート
40:ねじ軸
42:パルスモータ
44:ナット部
46:研削ユニット
48:保持部材
50:スピンドルハウジング
52:スピンドル
54:回転駆動源
56:ホイールマウント
58:研削ホイール(58a:研削砥石、58b:ホイール基台)
60:測定ユニット(60a,60b:ハイトゲージ)
62:タッチパネル
64:制御ユニット
66:処理部
68:記憶部
70:駆動部
72:算出部
74:報知部
76:制御ユニット
78:判定部
図1
図2
図3
図4