(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134164
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】鉛ボタン処理装置
(51)【国際特許分類】
G01N 1/34 20060101AFI20230920BHJP
【FI】
G01N1/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039532
(22)【出願日】2022-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000220767
【氏名又は名称】東京窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岩本 竜也
(72)【発明者】
【氏名】平嶋 純也
(72)【発明者】
【氏名】堀 智洋
(72)【発明者】
【氏名】山口 松雄
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA11
2G052AB01
2G052AB27
2G052AD32
2G052CA03
2G052CA16
2G052DA06
2G052DA24
2G052EB06
(57)【要約】
【課題】キューペル上への鉛ボタンの載置を、安全、確実に、且つ、良好な作業効率で実施することが可能な鉛ボタン処理装置を提供する。
【解決手段】複数の処理対象の鉛ボタンを設けるための、それぞれ上方及び下方が開放した複数の鉛ボタン配置孔を有する鉛ボタン配置部、及び、鉛ボタン配置部の下方に出し入れ自在に設けられて鉛ボタン配置部の底面を構成する板状部、を備えた鉛ボタン処理治具と、鉛ボタン処理治具を支持しつつ、鉛ボタン処理治具を水平方向に移動可能に構成されたアーム部、及び、アーム部を上下方向に移動させるハンドルを備えた本体部と、を備えた鉛ボタン処理装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の処理対象の鉛ボタンを設けるための、それぞれ上方及び下方が開放した複数の鉛ボタン配置孔を有する鉛ボタン配置部、及び、
前記鉛ボタン配置部の下方に出し入れ自在に設けられて前記鉛ボタン配置部の底面を構成する板状部、
を備えた鉛ボタン処理治具と、
鉛ボタン処理治具を支持しつつ、前記鉛ボタン処理治具を水平方向に移動可能に構成されたアーム部、及び、前記アーム部を上下方向に移動させるハンドルを備えた本体部と、
を備えた鉛ボタン処理装置。
【請求項2】
前記鉛ボタン配置孔は、前記鉛ボタン配置部において縦横にそれぞれ複数個が整列配置されている、請求項1に記載の鉛ボタン処理装置。
【請求項3】
前記板状部は、それぞれ並列して伸びるように形成された複数の長尺状の開口部を有する、請求項1または2に記載の鉛ボタン処理装置。
【請求項4】
前記本体部は台車機構を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の鉛ボタン処理装置。
【請求項5】
前記本体部は、前記鉛ボタン処理装置の外部に固定して設けられた位置決め治具が差し込まれる位置決めガイド部を更に有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の鉛ボタン処理装置。
【請求項6】
複数個のキューペルを配置したキューペル配置部材を支持するための支持台を更に備えた、請求項1~5のいずれか一項に記載の鉛ボタン処理装置。
【請求項7】
前記支持台は、前記アーム部を収容可能に構成された溝部が設けられている、請求項6に記載の鉛ボタン処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛ボタン処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
Au、Agなどの貴金属の微量分析方法としては乾式試金法が知られている。乾式試金法は試料を酸化鉛(II)及び融剤と混合し、融解試料を調整した後、ルツボ融解を行い、貴金属を鉛塊中に捕集し、他の試料成分と分離する。次に、この鉛塊を成型して鉛ボタンを作製し、当該鉛ボタンを灰吹することによって鉛をキューペル(灰皿)に染み込ませ、貴金属だけを取り出してから定量する(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】日本工業規格M8111「鉱石中の金及び銀の定量方法」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
日本工業規格M8111の手順では、鉛ボタンの灰吹処理として、まず灰吹炉内に設けられている複数のキューペルを予熱する。次に、灰吹炉内に設けられている複数のキューペル上に、金属製のトングなどで掴んだ鉛ボタンを投下し、鉛ボタンを溶解させる。
【0005】
しかしながら、灰吹炉内の予熱されたキューペルに鉛ボタンを載置する作業は作業者の火傷の恐れがある。また、適切でないキューペルに鉛ボタンを載置することで分析ミスが生じる恐れもある。
【0006】
そこで、本発明の実施形態は、キューペル上への鉛ボタンの載置を、安全、確実に、且つ、良好な作業効率で実施することが可能な鉛ボタン処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために研究を重ねたところ、灰吹炉内で予熱した複数のキューペルを炉外に取り出した上で、当該複数のキューペルに処理対象の鉛ボタンを一括で載置することが可能な構成を有する鉛ボタン処理装置を用いることで、上記課題を解決することができることを見出した。
【0008】
以上の知見を基礎として完成した本発明は、以下の(1)~(7)によって規定される。
(1)複数の処理対象の鉛ボタンを設けるための、それぞれ上方及び下方が開放した複数の鉛ボタン配置孔を有する鉛ボタン配置部、及び、
前記鉛ボタン配置部の下方に出し入れ自在に設けられて前記鉛ボタン配置部の底面を構成する板状部、
を備えた鉛ボタン処理治具と、
鉛ボタン処理治具を支持しつつ、前記鉛ボタン処理治具を水平方向に移動可能に構成されたアーム部、及び、前記アーム部を上下方向に移動させるハンドルを備えた本体部と、
を備えた鉛ボタン処理装置。
(2)前記鉛ボタン配置孔は、前記鉛ボタン配置部において縦横にそれぞれ複数個が整列配置されている、(1)に記載の鉛ボタン処理装置。
(3)前記板状部は、それぞれ並列して伸びるように形成された複数の長尺状の開口部を有する、(1)または(2)に記載の鉛ボタン処理装置。
(4)前記本体部は台車機構を有する、(1)~(3)のいずれかに記載の鉛ボタン処理装置。
(5)前記本体部は、前記鉛ボタン処理装置の外部に固定して設けられた位置決め治具が差し込まれる位置決めガイド部を更に有する、(1)~(4)のいずれかに記載の鉛ボタン処理装置。
(6)複数個のキューペルを配置したキューペル配置部材を支持するための支持台を更に備えた、(1)~(5)のいずれかに記載の鉛ボタン処理装置。
(7)前記支持台は、前記アーム部を収容可能に構成された溝部が設けられている、(6)に記載の鉛ボタン処理装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、キューペル上への鉛ボタンの載置を、安全、確実に、且つ、良好な作業効率で実施することが可能な鉛ボタン処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る鉛ボタン処理装置10の外観模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る鉛ボタン処理装置10の外観模式図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る板状部15の外観模式図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るアーム部支持部21の断面模式図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る鉛ボタン処理装置10及び位置決め治具29の外観模式図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る支持台35の断面模式図を示す。
【
図7】本発明の実施形態に係る鉛ボタン処理装置10の外観模式図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る鉛ボタン処理装置10の外観模式図である。
【
図9】本発明の実施形態に係るキューペル43に入れた立方体形状の鉛ボタン42の外観観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[鉛ボタン処理装置の構成]
図1及び
図2は、それぞれ本発明の実施形態に係る鉛ボタン処理装置10の外観模式図である。鉛ボタン処理装置10は、鉛ボタン処理治具11、アーム部12を備えた本体部13を備えている。
図1は鉛ボタン処理治具11をアーム部12に取り付けていない状態を示しており、
図2は鉛ボタン処理治具11をアーム部12に取り付けた状態を示している。本発明の実施形態に係る鉛ボタン処理装置10を構成する各部材の材質は、耐熱性、耐食性または強度等の観点から適宜選択することができる。
【0012】
鉛ボタン処理治具11は、鉛ボタン配置部14及び板状部15を備えている。鉛ボタン配置部14は、所定の厚みを有する四角形の平板状に形成されている。鉛ボタン配置部14の厚みは、処理対象の鉛ボタンを配置するのに十分な厚みであれば特に限定されないが、例えば5~20mmとすることができる。鉛ボタン処理治具11の縦横の大きさは特に限定されず、使用する灰吹炉の内寸、一度に灰吹を行う個数、キューペルの大きさ等によって適宜設計することができる。鉛ボタン配置部14の外形は、四角形の平板状に限定されず、その他の多角形、円形または楕円形の平板状等、適宜設計することができる。
【0013】
鉛ボタン配置部14は、複数の処理対象の鉛ボタンを設けるための複数の鉛ボタン配置孔16を有する。鉛ボタン配置孔16は上方及び下方が開放しており、上方からは処理対象の鉛ボタンが投入され、下方からは後述のように鉛ボタンが投下される。鉛ボタン配置孔16は平面視したときに四角形となるように形成されている。鉛ボタン配置孔16の外形はこのような四角形に限定されず、平面視したときにその他の多角形、円形または楕円形等になるように適宜設計することができる。
【0014】
鉛ボタン配置孔16を平面視したときの縦横の大きさは、処理対象の鉛ボタンを配置するのに十分な大きさであれば特に限定されず、キューペルの大きさや並べ方によって適宜設計することができるが、例えば、直径30mmのキューペルを隙間なく並べた場合、縦横をそれぞれ20~30mmずつの大きさとすることができる。鉛ボタン配置孔16の個数は、サンプル数、使用する灰吹炉の内寸、キューペルの大きさ等によって適宜設計することができる。
【0015】
鉛ボタン配置孔16は、鉛ボタン配置部14において縦横にそれぞれ複数個が整列配置されているのが好ましい。このような構成によれば、鉛ボタン配置部14により多くの鉛ボタン配置孔16を配置することができる。また、後述のようにキューペルの上方から鉛ボタンを投下する際に、狙ったキューペル内に正確に投下しやすくなる。
図1に示す実施形態では、平面視で四角形の鉛ボタン配置孔16が、鉛ボタン配置部14において縦横にそれぞれ7個ずつ、合計49個が整列配置されている。
【0016】
鉛ボタン配置部14には、90度程度の折曲部を有する板状部材で構成された引掛部17が設けられている。引掛部17は鉛ボタン配置部14の端部において、互いに向かい合うように一対ずつ合計4個設けられている。一対の引掛部17は、その折り曲がった先端が互いに対向するように設けられており、後述のようにアーム部12に折り曲がった先端を引っ掛けるようにして取り付けることができる。
【0017】
板状部15は、鉛ボタン配置部14の下方に出し入れ自在に設けられて鉛ボタン配置部14の底面を構成する。すなわち、鉛ボタン配置部14の下方に板状部15を設けたとき、鉛ボタン配置部14の鉛ボタン配置孔16の下方が板状部15で塞がれ、当該空間に鉛ボタンを配置することが可能となる。板状部15の形状は特に限定されないが、平面視したときの外形が鉛ボタン配置部14の外形と同様であるのが好ましい。このような構成によれば、鉛ボタン配置部14の下方に設けた際に、板状部15と鉛ボタン配置部14とでコンパクトな板状の積層体となり、ハンドリングが容易となる。鉛ボタン配置部14と板状部15とには、互いに積層させたときに厚み方向に貫通するような孔が設けてあり、当該孔に固定ピン18を差し込んで互いに固定することができる。板状部15の厚みは特に限定されないが、例えば1~5mmとすることができる。
【0018】
板状部15は、鉛ボタン配置部14と積層させて平面視したときに、鉛ボタン配置部14の端部から突出するような係合部19を有している。係合部19は筒状の突起を有しており、当該突起に後述の引掛棒20を引っ掛けてスライドさせることで、容易に板状部15を鉛ボタン配置部14の下方において位置をずらす、または引き出すことができる。
【0019】
板状部15は、
図3に示すように、それぞれ並列して伸びるように形成された複数の長尺状の開口部44を有してもよい。このような構成によれば、板状部15が鉛ボタン配置部14の下方に配置されているとき、板状部15の開口部44以外の部分で鉛ボタンを支えることができる。一方、板状部15を鉛ボタン配置部14の下方から引き出すとき、板状部15全体を引き出す必要がなく、並列して伸びる複数の長尺状の開口部44を一列分だけスライドさせて、鉛ボタン配置孔16の下方まで移動させるだけで、鉛ボタン配置孔16に配置された鉛ボタンが底面からの支持を失って落下する。このため、複数の鉛ボタンを迅速に且つほぼ同時に落下させることができ、処理効率が向上する。
【0020】
アーム部12は、鉛ボタン処理装置10の本体部13に対し、水平方向に移動可能に取り付けられている。アーム部12は、互いに所定の間隔を空けて平行に伸びるように一対設けられている。アーム部12は、鉛ボタン処理治具11を支持しつつ、鉛ボタン処理治具11を水平方向に移動可能に構成されている。アーム部12の水平方向への移動機構は本体部13に設けられており、後述する。
【0021】
各アーム部12の長さ及び幅は、鉛ボタン処理治具11を支持するのに十分な長さ及び幅を有している限り、特に限定されないが、例えば長さ10~100cm、幅2~10cmとすることができる。
【0022】
アーム部12の一方の端部はアーム部支持部21で支持されている。アーム部支持部21は
図4に示すように、アーム部12を嵌め込んで支持する複数の嵌め込み溝41を有しており、これらの嵌め込み溝41を適宜選択してアーム部12を嵌め込むことで、2本のアーム部12の間隔を調節することができる。
【0023】
本体部13は、アーム部12を取り付けてスライドさせるアーム部移動部22と、アーム部移動部22を載せる載置台23とを備えている。昇降ハンドル25を回すことで、アーム部12に連結した昇降軸24を上下に移動させる昇降機構を備えている。昇降ハンドル25が有する昇降機構は、このような形態に限定されず、公知の昇降機構を採用することができる。アーム部移動部22は、アーム部12に連結したスライド軸26を横方向(アーム部12が伸びる方向)に移動させるスライド機構を備えている。スライド軸26はスライドハンドル27を水平方向に動かすことで、横方向に移動させる構成となっている。アーム部移動部22が有するスライド機構は、このような形態に限定されず、公知のスライド機構を採用することができる。アーム部12は、キャスター28により鉛ボタン処理装置10を移動させる際、スライドハンドル27をロックすることでアーム部12を固定し、アーム部12の横滑りを防止して、安全な移動を可能とする。
【0024】
載置台23は、アーム部移動部22が載置されており、アーム部移動部22を安定して支持可能に構成されている。本発明の実施形態ではキャスター28を有する台車機構を有している。載置台23が台車機構を有していることで、鉛ボタン処理装置10の移動を容易に行うことができる。
【0025】
鉛ボタン処理装置10は、鉛ボタンの効率的な処理のために灰吹炉の搬入口付近で操作することが好ましいが、その際、灰吹炉に対して適切な位置に固定しておくと、処理の度に鉛ボタン処理装置10の適切な位置を探す手間が省ける。このような観点から、
図5に示すように、鉛ボタン処理装置10の外部に位置決め治具29を固定して設けることが好ましい。位置決め治具29は、例えば、灰吹炉の搬入口付近の支柱や壁面の所定位置に設けても良い。位置決め治具29は、灰吹炉の支柱や壁面等、外部の所定位置に固定するための固定部30と、固定部30から水平方向に突出するように設けられた、鉛ボタン処理装置10の本体部13を導き入れるためのガイドレール31を備えている。
【0026】
鉛ボタン処理装置10の本体部13は、載置台23に位置決めガイド部32を備えることが好ましい。位置決めガイド部32は、位置決め治具29のガイドレール31に載せて押し込んで固定することが可能なように、ガイドローラーで構成されている。
図1では、位置決めガイド部32を位置決め治具29のガイドレール31に載せて押し込んで固定した状態を示している。鉛ボタン処理装置10の位置決めガイド部32は、位置決め治具29のガイドレール31の構造に合わせてガイドローラーで構成されているが、形態はこれに限定されず、位置決め治具29の構造に合わせて、位置決め治具29と安定して固定することが可能な構造に適宜設計することができる。
【0027】
図7は、複数個のキューペルを配置したキューペル配置部材34を支持台35に設置する際の鉛ボタン処理装置10の外観模式図である。支持台35は、灰吹炉内でキューペル配置部材34を支持する。キューペル配置部材34は、上方が開放した容器を構成しており、所望する数のキューペルを配置することが可能な大きさに形成されている。キューペル配置部材34に配置される複数のキューペルは、後述のように本体部13のアーム部12に取り付けた鉛ボタン処理治具11に設けた複数の鉛ボタンの配置と対応するように、縦横に整列されている。
図7に示す例では、鉛ボタンが縦横に7個ずつ並列配置された鉛ボタン処理治具11に対応するように、キューペル配置部材34内にキューペルが縦横に7個ずつ並列配置されている。
【0028】
図6に、支持台35の断面模式図を示す。支持台35は、溝部40が設けられている。溝部40は、互いに平行に伸びるように2本形成されており、当該溝部40に対し、平行に伸びる2本のアーム部12を上方から下ろして収容する、または、当該アーム部12を横からスライドさせて差し込んで収容することが可能なように構成されている。支持台35が溝部40を有することで、アーム部12によって支持台35上にキューペル配置部材34を載置することができ、また、支持台35上のキューペル配置部材34を持ち上げて移動することができる。
【0029】
[鉛ボタン]
図9は、鉛ボタン42を入れたキューペル43の一例を示す外観観察写真である。当該例では、鉛ボタン42が立方体に形成されている。本発明の実施形態に係る鉛ボタン処理装置10の処理対象となる鉛ボタン42の組成及び形状は、特に限定されず、公知の方法を用いて適宜調製及び設計することができる。鉛ボタン42の製造方法としては、例えば、まずルツボ内に分析対象の試料を入れ、更に酸化鉛(II)及び融剤を入れる。次に、ルツボ内の試料、酸化鉛(II)及び融剤を撹拌させて混合する。
【0030】
分析対象の試料としては、特に限定されないが、例えば、有価金属を含む鉱石やリサイクル原料、銅などの非鉄金属製錬において、自溶炉から電解槽における処理工程で生じる有価金属を含む試料などであってもよい。当該試料はAg、Au、Pt、Pd、Rh、Ru及びIr等の貴金属を含んでいてもよい。
【0031】
融剤については、概略の試料組成から貴金属の含有量を推定し、秤量した試料の還元力、酸化力等を求め、秤量した試料から所定量の鉛ボタンを形成するのに適した量を調合する。融剤としては、例えば、ホウ砂、ケイ砂、炭酸ソーダ、酸化マンガン等の酸化鉱、硫化鉱、硝酸カリウム等を用いることができる。また、必要に応じて、小麦粉、デンプン、鉄材等を還元剤として用いることができる。
【0032】
このようにして、酸化鉛(II)及び融剤を含む調製した試料を設けたルツボを準備した後、ルツボ内の試料を食塩等によって被覆する。次に、当該ルツボを融解炉に入れて、試料を融解する。融解の条件は、ルツボ内の試料の組成または量、ルツボの数、所望する処理効率などによって適宜設定することができ、例えば、880~1100℃で100分間の融解を行うことができる。
【0033】
融解後、融解炉内のルツボを融解炉から取り出した後、ルツボ内の試料を個々の鋳型へ鋳込み、鋳込み後の試料を所望の形状に成型して鉛ボタンを作製する。次に、鋳込みにより生成した鉛塊を鋳型から取り出し、所定の形状、例えば立方体、直方体、円錐状等に成型することで、鉛ボタンを製造することができる。
【0034】
[鉛ボタン処理装置を用いた鉛ボタンの処理方法]
次に、本発明の実施形態に係る鉛ボタン処理装置10を用いた鉛ボタンの処理方法について説明する。
<1.キューペル配置部材の灰吹炉への搬入>
まず、鉛ボタン処理装置10の2本のアーム部12の上に、空のキューペルを縦横所定の数だけ並列配置したキューペル配置部材34を載せる。このとき、鉛ボタン処理装置10の所定の位置に、位置決めガイド等を設けておくと、当該位置決めガイドにキューペル配置部材34を当接させる等によって正確な位置に迅速に載せることができる。
次に、本体部13を押して灰吹炉傍に取り付けた位置決め治具29のガイドレール31に本体部13の位置決めガイド部32を載せて押し込んで固定する。このとき、支持台35に隣接する位置に本体部13が設置されている。
次に、昇降ハンドル25を回してアーム部12の高さを調節し、支持台35の溝部40の高さに合わせる。次に、スライドハンドル27を回してアーム部12を支持台35方向へスライドさせ、アーム部12を溝部40に差し込んで収容する。このとき、昇降ハンドル25を回してアーム部12の高さを支持台35より高い位置まで調節し、スライドハンドル27を回してアーム部12を支持台35の上方までスライドさせた後、昇降ハンドル25を回してアーム部12を下ろして、アーム部12を溝部40に収容してもよい。アーム部12を溝部40に収容した後、昇降ハンドル25を回してアーム部12の高さを下げて、キューペル配置部材34から離す。これにより、キューペル配置部材34が支持台35のみで支持される(
図7の模式図はこの状態を示す)。
次に、スライドハンドル27を回してアーム部12を溝部40から引き抜く。
次に、キューペル配置部材34を載置した支持台35を灰吹炉へ搬入する。
【0035】
<2.灰吹炉内でのキューペルの予熱>
次に、上述のように灰吹炉に設置したキューペル配置部材34内のキューペルを予熱する。灰吹炉内でのキューペルの予熱温度は、特に限定されないが、キューペルの表面に付着する不純物や水分を予め十分に除去するという観点から、790℃~950℃の温度となるように予熱することが好ましい。
【0036】
<3.キューペル配置部材の灰吹炉からの搬出>
キューペルの予熱が終了した後、支持台35を灰吹炉外へ取り出し、元の位置(本体部13に隣接する位置)まで戻す。
【0037】
<4.キューペル配置部材のキューペル内への鉛ボタンの投入>
次に、鉛ボタン処理治具11をアーム部12に取り付ける。鉛ボタン処理治具11の取り付けは、灰吹炉でキューペルを予熱している間に行うことが好ましい。このようなタイミングで行うことで、予熱したキューペル内に鉛ボタンを迅速に投入することができる。鉛ボタン処理治具11の複数の鉛ボタン配置孔16には、それぞれあらかじめ処理対象の鉛ボタンが配置されている。なお、鉛ボタン処理治具11の鉛ボタン配置孔16に処理対象の鉛ボタンを入れた状態で、鉛ボタン処理治具11をアーム部12に取り付けてもよく、鉛ボタン処理治具11をアーム部12に取り付けた後に、鉛ボタン処理治具11の鉛ボタン配置孔16に処理対象の鉛ボタンを入れてもよい。
次に、昇降ハンドル25を回してアーム部12の高さを調節し、支持台35上のキューペル配置部材34の上方の所定の高さに合わせる。次に、スライドハンドル27を回してアーム部12をスライドさせ、支持台35上のキューペル配置部材34の上方までスライドさせる(
図8の模式図はこの状態を示す)。
次に、引掛棒20を板状部15の係合部19に引掛けて板状部15をスライドさせる。このとき、板状部15に形成された、並列して伸びる複数の長尺状の開口部44を一列分だけスライドさせて、開口部44を鉛ボタン配置孔16の下方まで移動させるだけで、鉛ボタン配置孔16に配置された鉛ボタンが底面からの支持を失って一度にキューペル内に落下する。
次に、板状部15を元の位置に戻し、スライドハンドル27を回してアーム部12を昇降軸24側へスライドさせて戻す。
【0038】
<5.鉛ボタン入りキューペル配置部材の灰吹炉への搬入>
次に、鉛ボタンが投入されたキューペル配置部材34を載置した支持台35を灰吹炉へ搬入する。
【0039】
<6.鉛ボタンの灰吹>
次に、上述のように灰吹炉に設置したキューペル配置部材34内のキューペルに投入された鉛ボタンを融解する。融解の条件は特に限定されず、鉛ボタンの構成材料によって適宜設定することができるが、例えば、790~950℃で20~60分の加熱処理によって行うことができる。
次に、灰吹炉内へ空気を導入し、キューペル内の融解した鉛ボタンを灰吹してビードを作製する。
【0040】
<7.灰吹後のキューペル配置部材の灰吹炉からの搬出>
灰吹処理が終了した後、支持台35を灰吹炉外へ取り出し、元の位置(本体部13に隣接する位置)まで戻す。このようにして、キューペル内の融解した鉛ボタンを灰吹してビードを作製することができる。
【0041】
[効果]
本発明の実施形態に係る鉛ボタン処理装置によれば、灰吹炉内で予熱した複数のキューペルを炉外に取り出した上で、当該複数のキューペルに処理対象の鉛ボタンを一括挿入することができる。このため、灰吹炉内に一つずつ鉛ボタンを挿入する必要がなくなるため、灰吹炉前での作業の安全性が向上する。また、適切でないキューペルに鉛ボタンを置いてしまうことで生じる分析ミスの発生を抑制することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 鉛ボタン処理装置
11 鉛ボタン処理治具
12 アーム部
13 本体部
14 鉛ボタン配置部
15 板状部
16 鉛ボタン配置孔
17 引掛部
18 固定ピン
19 係合部
20 引掛棒
21 アーム部支持部
22 アーム部移動部
23 載置台
24 昇降軸
25 昇降ハンドル
26 スライド軸
27 スライドハンドル
28 キャスター
29 位置決め治具
30 固定部
31 ガイドレール
32 位置決めガイド部
34 キューペル配置部材
35 支持台
40 溝部
41 嵌め込み溝
42 鉛ボタン
43 キューペル
44 開口部