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特開2023-134501硬化型クリアインク組成物、インクセット、収容容器、印刷方法、印刷物の製造方法、及び硬化物
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  • 特開-硬化型クリアインク組成物、インクセット、収容容器、印刷方法、印刷物の製造方法、及び硬化物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134501
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】硬化型クリアインク組成物、インクセット、収容容器、印刷方法、印刷物の製造方法、及び硬化物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20230920BHJP
   C09D 11/40 20140101ALI20230920BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230920BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230920BHJP
【FI】
C09D11/30
C09D11/40
B41M5/00 120
B41J2/01 501
B41J2/01 129
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102710
(22)【出願日】2023-06-22
(62)【分割の表示】P 2019008193の分割
【原出願日】2019-01-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 広紀
(72)【発明者】
【氏名】小島 智之
(72)【発明者】
【氏名】清水 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 慎
(72)【発明者】
【氏名】石嶋 有希子
(72)【発明者】
【氏名】松下 友樹
(57)【要約】
【課題】クリアコート層の平滑性、生産性及び吐出安定性に優れ、密着性及び硬化性に優れた硬化物が得られる硬化型クリアインク組成物の提供。
【解決手段】界面活性剤と、25℃での静的表面張力が33mN/m以下の単官能重合性化合物を10質量%以上30質量%以下と、重量平均分子量(Mw)が1,000以上であるオリゴマーと、アシルフォスフィンオキサイド重合開始剤を8質量%以上12質量%以下と、を含有する硬化型クリアインク組成物である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤と、
25℃での静的表面張力が33mN/m以下の単官能重合性化合物を10質量%以上30質量%以下と、
重量平均分子量(Mw)が1,000以上であるオリゴマーと、
アシルフォスフィンオキサイド重合開始剤を8質量%以上12質量%以下と、を含有することを特徴とする硬化型クリアインク組成物。
【請求項2】
色材を実質的に含まない請求項1に記載の硬化型クリアインク組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤がポリシロキサン界面活性剤である請求項1から2のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤の含有量が0.05質量%以上0.2質量%以下である請求項1から3のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物。
【請求項5】
25℃での静的表面張力が33mN/m以下の単官能重合性化合物が、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、及びイソノニル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種である請求項1から4のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物。
【請求項6】
25℃での静的表面張力が33mN/m以下の単官能重合性化合物が、イソボルニル(メタ)アクリレートである請求項5に記載の硬化型クリアインク組成物。
【請求項7】
活性エネルギー線硬化型クリアインク組成物である請求項1から6のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物。
【請求項8】
インクジェット用である請求項1から7のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物が容器中に収容されてなることを特徴とする収容容器。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物からなるクリアインクと、カラーインクと、を有することを特徴とするインクセット。
【請求項11】
前記カラーインクが、N-ビニル化合物及び界面活性剤を実質的に含まない請求項10に記載のインクセット。
【請求項12】
請求項1から8のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物を、10pL以上20pL以下の液滴サイズで吐出し、画像を印刷することを特徴とする印刷方法。
【請求項13】
印刷画像の同一部位に対して、8回以下のスキャン回数で印刷する請求項12に記載の印刷方法。
【請求項14】
吐出された硬化型クリアインク組成物が基材に着弾してから、活性エネルギー線が照射されるまでのレベリング時間が、15秒以上120秒以下である請求項12から13のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項15】
請求項12から14のいずれかに記載の印刷方法により印刷して得られたことを特徴とする印刷物。
【請求項16】
請求項1から8のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物を用いて形成されることを特徴とする硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化型クリアインク組成物、インクセット、収容容器、印刷方法、及び硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線等の活性エネルギー線の照射により硬化可能なインクジェットインク組成物(活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物)は、水系や溶剤系に比べ、乾燥時間が短く、環境に有害な蒸発物も出さず、画像がにじみにくいことから、種々の基材に印字できる点で優れた方式である。
【0003】
活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物としては、画像を形成するために必要なカラーインク(主にシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)、透明メディアに印刷する際に画像の発色性を高めるために必要なホワイトインク、表面保護や画像の光沢性を制御するためのクリアインクが主に必要とされる。
【0004】
前記クリアインクに求められる品質としては、高速印字対応による生産性、マルチパス印字時のクリアコート層の平滑性、硬度、密着性などが挙げられる。
【0005】
そこで、優れた画質と光沢性とを有し、良好な表面状態を与え、耐ブロッキング性、クリアインクコート層の光沢ムラを課題として、例えば、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤をカラーインクに対して、重量比で1倍超10倍以下含み、界面活性剤を含有するクリアインクが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、クリアコート層の平滑性、生産性及び吐出安定性に優れ、密着性及び硬化性に優れた硬化物が得られる硬化型クリアインク組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としての本発明の硬化型クリアインク組成物は、界面活性剤と、25℃での静的表面張力が33mN/m以下の単官能重合性化合物を10質量%以上30質量%以下と、重量平均分子量(Mw)が1,000以上であるオリゴマーと、アシルフォスフィンオキサイド重合開始剤を8質量%以上12質量%以下と、を含有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、クリアコート層の平滑性、生産性及び吐出安定性に優れ、密着性及び硬化性に優れた硬化物が得られる硬化型クリアインク組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、インクジェット吐出手段を備えた像形成装置の一例を示す概略図である。
図2図2は、別の像形成装置(3次元立体像の形成装置)の一例を示す概略図である
図3図3は、硬化型クリアインク組成物を用いて立体造形を行う方法の一例について説明する概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(硬化型クリアインク組成物)
本発明の硬化型クリアインク組成物は、界面活性剤と、25℃での静的表面張力が33mN/m以下の単官能重合性化合物を10質量%以上30質量%以下と、重量平均分子量(Mw)が1,000以上であるオリゴマーと、アシルフォスフィンオキサイド重合開始剤を8質量%以上12質量%以下と、を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0011】
従来技術では、アシルフォスフィンオキサイド系重合開始剤を12質量%以上含有する場合、クリアインクを高周波数で吐出した場合の吐出安定性が十分ではなく、クリアコート層の平滑性に優れ、高周波数で吐出した場合の吐出安定性に優れたクリアインクは、未だ得られていない。
【0012】
したがって、本発明においては、界面活性剤と、25℃での静的表面張力が33mN/m以下の単官能重合性化合物を10質量%以上30質量%以下と、重量平均分子量(Mw)が1,000以上であるオリゴマーと、アシルフォスフィンオキサイド重合開始剤を8質量%以上12質量%以下と、を含有することにより、クリアコート層の平滑性、生産性及び吐出安定性に優れ、密着性及び硬化性に優れた硬化物が得られる硬化型クリアインク組成物を提供することができる。
【0013】
本発明の硬化型クリアインク組成物としては、熱硬化型クリアインク組成物、活性エネルギー線硬化型クリアインク組成物などが挙げられるが、活性エネルギー線硬化型クリアインク組成物がより好適である。
【0014】
<重合性化合物>
本発明の硬化型クリアインク組成物は、重合性化合物を含有する。
前記重合性化合物としては、単官能重合性化合物を必須で含有し、単官能重合性化合物の含有量は、硬化型クリアインク組成物の全量に対して、50質量%以上90質量%以下が好ましく、70質量%以上90質量%以下がより好ましい。
【0015】
単官能重合性化合物としては、25℃における静的表面張力が33mN/m以下の単官能重合性化合物、25℃における静的表面張力が33mN/m超である単官能重合性化合物などが挙げられる。
【0016】
-25℃における静的表面張力が33mN/m以下の単官能重合性化合物-
25℃における静的表面張力が33mN/m以下の単官能重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート(25℃における静的表面張力:33mN/m)、ラウリル(メタ)アクリレート(25℃における静的表面張力:29mN/m)、イソデシル(メタ)アクリレート(25℃における静的表面張力:28mN/m)、イソオクチル(メタ)アクリレート(25℃における静的表面張力:28mN/m)、n-オクチル(メタ)アクリレート(25℃における静的表面張力:28mN/m)、イソブチル(メタ)アクリレート(25℃における静的表面張力:25mN/m)、イソノニル(メタ)アクリレート(25℃における静的表面張力:28mN/m)、オクチル/デシル(メタ)アクリレート(25℃における静的表面張力:29mN/m)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、塗膜の硬度を高める観点から、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましい。
25℃における静的表面張力が33mN/m以下の単官能重合性化合物の含有量は、硬化型クリアインク組成物の全量に対して、10質量%以上30質量%以下であり、15質量%以上25質量%以下が好ましい。前記含有量が10質量%以上30質量%以下であると、吐出安定性、及び塗膜硬度に優れるという利点がある。
前記静的表面張力は、例えば、静的表面張力測定装置により測定することができる。
【0017】
-25℃における静的表面張力が33mN/m超である単官能重合性化合物-
25℃における静的表面張力が33mN/m超である単官能重合性化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(メタ)アクリロイルモルホリン(25℃における静的表面張力:44mN/m)、N-ビニルカプロラクタム(25℃における静的表面張力:40mN/m)、フェノキシエチル(メタ)アクリレート(25℃における静的表面張力:40mN/m)、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート(25℃における静的表面張力:36mN/m)などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
25℃における静的表面張力が33mN/m超である単官能重合性化合物の含有量は、硬化型クリアインク組成物の全量に対して、50質量%以上70質量%以下が好ましい。
前記静的表面張力は、例えば、静的表面張力測定装置により測定することができる。
【0018】
-その他の重合性モノマー-
本発明の硬化型クリアインク組成物は、25℃における静的表面張力が33mN/m以下の単官能重合性化合物、及び25℃における静的表面張力が33mN/m超である単官能重合性化合物以外にも、その他の重合性モノマーを含有していてもよい。
その他の重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル類に代表される公知の重合性モノマーを適用でき、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
本発明の硬化型クリアインク組成物は、重量平均分子量(Mw)が1,000以上であるオリゴマーを含有する。重量平均分子量(Mw)が1,000以上であるオリゴマーを含有すると、塗膜の密着性、及び硬度に優れるという利点がある。
前記オリゴマーとしては、エチレン性不飽和二重結合を有する重合性オリゴマーであり、例えば、芳香族ウレタンオリゴマー、脂肪族ウレタンオリゴマー、エポキシアクリレートリゴマー、ポリエステルアクリレートリゴマー、その他の特殊オリゴマーなどが挙げられる。
重量平均分子量(Mw)が1,000以上であるオリゴマーとしては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、日本化学合成株式会社製のUV-2000B、UV-2750B、UV-3000B、UV-3010B、UV-3200B、UV-3300B、UV-3700B、UV-6640B、UV-8630B、UV-7000B、UV-7610B、UV-1700B、UV-7630B、UV-6300B、UV-6640B、UV-7550B、UV-7600B、UV-7605B、UV-7610B、UV-7630B、UV-7640B、UV-7650B、UT-5449、UT-5454、サートマー社製のCN902、CN902J75、CN929、CN940、CN944、CN944B85、CN959、CN961E75、CN961H81、CN962、CN963、CN963A80、CN963B80、CN963E75、CN963E80、CN963J85、CN964、CN965、CN965A80、CN966、CN966A80、CN966B85、CN966H90、CN966J75、CN968、CN969、CN970、CN970A60、CN970E60、CN971、CN971A80、CN971J75、CN972、CN973、CN973A80、CN973H85、CN973J75、CN975、CN977、CN977C70、CN978、CN980、CN981、CN981A75、CN981B88、CN982、CN982A75、CN982B88、CN982E75、CN983、CN984、CN985、CN985B88、CN986、CN989、CN991、CN992、CN994、CN996、CN997、CN999、CN9001、CN9002、CN9004、CN9005、CN9006、CN9007、CN9008、CN9009、CN9010、CN9011、CN9013、CN9018、CN9019、CN9024、CN9025、CN9026、CN9028、CN9029、CN9030、CN9060、CN9165、CN9167、CN9178、CN9290、CN9782、CN9783、CN9788、CN9893、ダイセル・サイテック社製のEBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL230、EBECRYL270、KRM8200、EBECRYL5129、EBECRYL8210、EBECRYL8301、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL9260、KRM7735、KRM8296、KRM8452、EBECRYL4858、EBECRYL8402、EBECRYL9270、EBECRYL8311、EBECRYL8701などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、サートマー社製のCN963、CN964、CN965、CN996が好ましい。
【0020】
前記オリゴマーの含有量は、硬化型クリアインク組成物の全量に対して、0.1質量%以上15質量%以下が好ましく、1質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0021】
<界面活性剤>
本発明において界面活性剤は、いわゆる「顔料分散剤」を除いた、界面活性能を持つ化合物であり、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ポリシロキサン界面活性剤などが挙げられる。これらの中でも、界面活性能力が大きい点から、ポリシロキサン界面活性剤が好ましい。
【0022】
前記ポリシロキサン界面活性剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン構造を有する化合物(シリコーン系化合物)の側鎖に親水性の基や親水性ポリマー鎖を有する化合物、ポリジメチルシロキサン等のポリシロキサン構造を有する化合物(シリコーン系化合物)のの末端に親水性の基や親水性ポリマー鎖を有する化合物が挙げられる。なお、前記ポリシロキサン界面活性剤とは、その構造中にポリシロキサン構造を有していればよく、ポリシロキサン系界面活性剤も含む意味である。
【0023】
前記親水性の基や前記親水性ポリマー鎖としては、例えば、ポリエーテル基(ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキンドやこれらの共重合体等)、ポリグリセリン(CΗO(CHCH(OH)CHO)-H等)、ピロリドン、ベタイン(CΗ(C-CHCOO等)、硫酸塩(CO(CO)-SONa等)、リン酸塩(CΗO(CO)-P(=O)OHONa等)、4級塩(C(CCl等)などが挙げられる。ただし、前記化学式中、nは1以上の整数を表わす。これらの中でも、ポリエーテル基を有することが好ましい。
また、末端に重合性ビニル基を有するポリジメチルシロキサン等と、共重合可能なその他のモノマー(前記モノマーの少なくとも一部には(メタ)アクリル酸、又はその塩などの親水性モノマーを用いることが好ましい)と、の共重合で得られる側鎖にポリジメチルシロキサンなどのシリコーン系化合物鎖を有するビニル系共重合体なども好適に挙げられる。
これらの中でも、ポリシロキサン構造を有する化合物であり、かつ親水性ポリマー鎖を有する化合物が好ましく、前記親水性ポリマー鎖としてポリエーテル基を含有することがより好ましく、ポリシロキサン界面活性剤が疎水基としてメチルポリシロキサンを有し、親水基としてポリオキシエチレンの構造を有する非イオン界面活性剤であることが特に好ましい。
【0024】
前記ポリシロキサン界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーン化合物、ポリオキシアルキレン基含有シリコーン化合物などが挙げられる。
【0025】
前記ポリシロキサン界面活性剤としては、市販品を用いることができ、前記市販品としては、例えば、TEGO WET270(エボニック社製)、BYK3150、BYK3151(ビックケミー株式会社製)、シルフェイスSAG005、シルフェイスSAG008(以上、日信化学工業株式会社製)、FZ2110、FZ2166、SH-3772M、L7001、SH-3773M(以上、東レ・ダウ株式会社製)、KF-945、KF-6017、KF-353(以上、信越化学工業株式会社製)、FormBan MS-575(Ultra Addives Inc.社製)などが挙げられる。
【0026】
前記界面活性剤の含有量は、硬化型クリアインク組成物の全量に対して、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.2質量%以下がより好ましい。
【0027】
<重合開始剤>
本発明の硬化型クリアインク組成物は、重合開始剤を含有していてもよい。なお、重合開始剤のことを単に開始剤とも称することがある。重合開始剤としては、熱重合開始剤と光重合開始剤とがある。
光重合開始剤としては、活性エネルギー線のエネルギーによって、ラジカルやカチオンなどの活性種を生成し、重合性化合物(モノマーやオリゴマー)の重合を開始させることが可能なものであればよい。光重合開始剤としては、公知のラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤、塩基発生剤等を、1種単独もしくは2種以上を組み合わせて用いることができ、これらの中でも、ラジカル重合開始剤が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、例えば、芳香族ケトン類、アシルフォスフィンオキサイド化合物、芳香族オニウム塩化合物、有機過酸化物、チオ化合物(チオキサントン化合物、チオフェニル基含有化合物など)、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、ケトオキシムエステル化合物、ボレート化合物、アジニウム化合物、メタロセン化合物、活性エステル化合物、炭素ハロゲン結合を有する化合物、アルキルアミン化合物などが挙げられる。
これらの中でも、アシルフォスフィンオキサイド重合開始剤が特に好ましい。
アシルフォスフィンオキサイド重合開始剤としては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、IGM社製のOmnirad 819、Omnirad TPOなどが挙げられる
アシルフォスフィンオキサイド重合開始剤の含有量は、硬化型組成物の全量に対して、8質量%以上12質量%以下である。アシルフォスフィンオキサイド重合開始剤の含有量が8質量%以上12質量%以下であると、LED光源を用いた際の硬化性及び吐出安定性の両立が可能であるという利点がある。
【0028】
上記重合開始剤に加え、重合促進剤(増感剤)を併用することもできる。重合促進剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p-ジエチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル、p-ジメチルアミノ安息香酸-2-エチルヘキシル、N,N-ジメチルベンジルアミン4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のアミン化合物などが挙げられる。
重合促進剤の含有量は、特に制限はなく、使用する重合開始剤及びその含有量に応じて適宜設定すればよい。
【0029】
本発明の硬化型クリアインク組成物は、色材を実質的に含まない。無色透明であってもよく、その場合には、例えば、画像を保護するためのオーバーコート層として好適である。
【0030】
<その他の成分>
本発明の硬化型クリアインク組成物は、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、有機溶媒、重合禁止剤、レベリング剤、消泡剤、蛍光増白剤、浸透促進剤、湿潤剤(保湿剤)、定着剤、粘度安定化剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、増粘剤などが挙げられる。
【0031】
-有機溶媒-
本発明の硬化型クリアインク組成物は、有機溶媒を含んでもよいが、可能であれば含まない方が好ましい。有機溶媒、特に揮発性の有機溶媒を含まない(VOC(Volatile Organic Compounds)フリー)組成物であれば、当該組成物を扱う場所の安全性がより高まり、環境汚染防止を図ることも可能となる。なお、「有機溶媒」とは、例えば、エーテル、ケトン、キシレン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、トルエンなどの一般的な非反応性の有機溶媒を意味するものであり、反応性モノマーとは区別すべきものである。また、有機溶媒を「含まない」とは、実質的に含まないことを意味し、0.1質量%未満であることが好ましい。
【0032】
なお、硬化型クリアインク組成物中の各成分について、重合性モノマーや重合開始剤などの低分子量成分はガスクロマトグラム質量分析法などで同定することが可能であり、ポリマー成分はメタノールなどの貧溶媒にて沈殿分離させて単離することで、赤外分光法や元素分析法により主骨格や塩素原子の含有量を同定することができる。
【0033】
<硬化型クリアインク組成物の調製>
本発明の硬化型クリアインク組成物は、上述した各種成分を用いて作製することができ、その調製手段や条件は特に限定されないが、例えば、重合性化合物、顔料、分散剤等をボールミル、キティーミル、ディスクミル、ピンミル、ダイノーミルなどの分散機に投入し、分散させて顔料分散液を調製し、当該顔料分散液に、更に重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、界面活性剤などを混合させることにより調製することができる。
【0034】
<粘度>
本発明の硬化型クリアインク組成物の粘度は、用途や適用手段に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、当該硬化型クリアインク組成物をノズルから吐出させるような吐出手段を適用する場合には、20℃から65℃の範囲における粘度、望ましくは25℃における粘度が60mPa・s以下であり、3mPa・s以上40mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上30mPa・s以下がより好ましく、5mPa・s以上15mPa・s以下が更に好ましく、6mPa・s以上12mPa・s以下が特に好ましい。
また、当該粘度範囲を、上記有機溶媒を含まずに満たしていることが特に好ましい。なお、上記粘度は、東機産業株式会社製コーンプレート型回転粘度計VISCOMETER TVE-22Lにより、コーンロータ(1°34’×R24)を使用し、回転数50rpm、恒温循環水の温度を20℃~65℃の範囲で適宜設定して測定することができる。循環水の温度調整にはVISCOMATE VM-150IIIを用いることができる。
【0035】
<硬化手段>
本発明の硬化型クリアインク組成物を硬化させる硬化手段としては、加熱硬化又は活性エネルギー線による硬化が挙げられ、これらの中でも活性エネルギー線による硬化が好ましい。
硬化型クリアインク組成物を硬化させるために用いる活性エネルギー線としては、紫外線の他、電子線、α線、β線、γ線、X線等の、組成物中の重合性成分の重合反応を進める上で必要なエネルギーを付与できるものであればよく、特に限定されない。特に高エネルギーな光源を使用する場合には、重合開始剤を使用しなくても重合反応を進めることができる。また、紫外線照射の場合、環境保護の観点から水銀フリー化が強く望まれており、GaN系半導体紫外発光デバイスへの置き換えは産業的、環境的にも非常に有用である。更に、紫外線発光ダイオード(UV-LED)及び紫外線レーザダイオード(UV-LD)は小型、高寿命、高効率、低コストであり、紫外線光源として好ましい。波長350nm以上450nm以下(特に波長350nm以上400nm以下)の発光ダイオードを用いることがより好ましい。
【0036】
(インクセット)
本発明のインクセットは、本発明の硬化型クリアインク組成物からなるクリアインクと、カラーインクと、を有する。これにより、前記インクセットは、優れたカラー画像上でのクリアコート層の平滑性を実現することができる。
前記カラーインクとしては、N-ビニル化合物及び界面活性剤を実質的に含まない以外は、特に制限はなく、目的に応じて公知のカラーインクを用いることができる。
カラーインクとしては、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクの少なくともいずれかが用いられる。
【0037】
<用途>
本発明の硬化型クリアインク組成物の用途は、一般に活性エネルギー線硬化型材料が用いられている分野であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、成形用樹脂、塗料、接着剤、絶縁材、離型剤、コーティング材、シーリング材、各種レジスト、各種光学材料などが挙げられる。
【0038】
本発明の硬化型クリアインク組成物は、インクとして用いて2次元の文字や画像、各種基材への意匠塗膜を形成するだけでなく、3次元の立体像(立体造形物)を形成するための立体造形用材料としても用いることができる。この立体造形用材料は、例えば、粉体層の硬化と積層を繰り返して立体造形を行う粉体積層法において用いる粉体粒子同士のバインダーとして用いてもよく、また、図2図3に示すような積層造形法(光造形法)において用いる立体構成材料(モデル材)や支持部材(サポート材)として用いてもよい。なお、図2は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物を所定領域に吐出し、活性エネルギー線を照射して硬化させたものを順次積層して立体造形を行う方法であり(詳細後述)、図3は、本発明の活性エネルギー線硬化型組成物5の貯留プール(収容部)1に活性エネルギー線4を照射して所定形状の硬化層6を可動ステージ3上に形成し、これを順次積層して立体造形を行う方法である。
本発明の硬化型クリアインク組成物を用いて立体造形物を造形するための立体造形装置としては、公知のものを使用することができ、特に限定されないが、例えば、該組成物の収容手段、供給手段、吐出手段や活性エネルギー線照射手段等を備えるものが挙げられる。
また、本発明は、硬化型組成物を硬化させて得られた硬化物や当該硬化物が基材上に形成された構造体を加工してなる成形加工品も含む。前記成形加工品は、例えば、シート状、フィルム状に形成された硬化物や構造体に対して、加熱延伸や打ち抜き加工等の成形加工を施したものであり、例えば、自動車、OA機器、電気・電子機器、カメラ等のメーターや操作部のパネルなど、表面を加飾後に成形することが必要な用途に好適に使用される。
上記基材としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス、又はこれらの複合材料などが挙げられ、加工性の観点からはプラスチック基材が好ましい。
【0039】
<収容容器>
本発明の収容容器は、本発明の硬化型クリアインク組成物が収容された状態の容器を意味し、上記のような用途に供する際に好適である。例えば、本発明の硬化型クリアインク組成物がインク用途である場合において、当該インクが収容された容器は、インクカートリッジやインクボトルとして使用することができ、これにより、インク搬送やインク交換等の作業において、インクに直接触れる必要がなくなり、手指や着衣の汚れを防ぐことができる。また、インクへのごみ等の異物の混入を防止することができる。また、容器それ自体の形状や大きさ、材質等は、用途や使い方に適したものとすればよく、特に限定されないが、その材質は光を透過しない遮光性材料であるか、又は容器が遮光性シート等で覆われていることが望ましい。
【0040】
(印刷方法)
本発明の印刷方法は、本発明の硬化型クリアインク組成物を、10pL以上20pL以下の液滴サイズで吐出し、画像を印刷する。
前記印刷方法においては、印刷画像の同一部位に対して、8回以下のスキャン回数で印刷することが好ましい。
吐出された硬化型クリアインク組成物が基材に着弾してから、活性エネルギー線が照射されるまでのレベリング時間が、15秒以上120秒以下であることが好ましい。
本発明においては、大滴で吐出できる組成のクリアインク組成物であるため、8パスで印字可能となり、8パス分の時間UV照射せずにクリアインク組成物をレベリングさせることができ、クリアインクに求められる高速印字対応による生産性、マルチパス印字時における優れたクリアコート層の平滑性、硬度、及び密着性を備えることができる。
【0041】
<像形成方法、像形成装置>
本発明に関する像の形成方法は、活性エネルギー線を用いてもよいし、加熱なども挙げられる。本発明の硬化型クリアインク組成物を活性エネルギー線で硬化させるためには、活性エネルギー線を照射する照射工程を有し、本発明の像の形成装置は、活性エネルギー線を照射するための照射手段と、本発明の硬化型クリアインク組成物を収容するための収容部と、を備え、該収容部には前記容器を収容してもよい。更に、本発明の硬化型クリアインク組成物を吐出する吐出工程、吐出手段を有していてもよい。吐出させる方法は特に限定されないが、連続噴射型、オンデマンド型等が挙げられる。オンデマンド型としてはピエゾ方式、サーマル方式、静電方式などが挙げられる。
【0042】
図1は、インクジェット吐出手段を備えた像形成装置の一例である。イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色活性エネルギー線硬化型インクのインクカートリッジと吐出ヘッドを備える各色印刷ユニット23a、23b、23c、23dにより、供給ロール21から供給された記録媒体22にインクが吐出される。その後、インクを硬化させるための光源24a、24b、24c、24dから、活性エネルギー線を照射して硬化させ、カラー画像を形成する。その後、記録媒体22は、加工ユニット25、印刷物巻取りロール26へと搬送される。各印刷ユニット23a、23b、23c、23dには、インク吐出部でインクが液状化するように、加温機構を設けてもよい。また必要に応じて、接触又は非接触により記録媒体を室温程度まで冷却する機構を設けてもよい。また、インクジェット記録方式としては、吐出ヘッド幅に応じて間欠的に移動する記録媒体に対し、ヘッドを移動させて記録媒体上にインクを吐出するシリアル方式や、連続的に記録媒体を移動させ、一定の位置に保持されたヘッドから記録媒体上にインクを吐出するライン方式のいずれであっても適用することができる。
記録媒体22は、特に限定されないが、紙、フィルム、金属、これらの複合材料等が挙げられ、シート状であってもよい。また片面印刷のみを可能とする構成であっても、両面印刷も可能とする構成であってもよい。
更に、光源24a、24b、24cからの活性エネルギー線照射を微弱にするか又は省略し、複数色を印刷した後に、光源24dから活性エネルギー線を照射してもよい。これにより、省エネルギー、低コスト化を図ることができる。
本発明で用いられるインクにより記録される記録物としては、通常の紙や樹脂フィルムなどの平滑面に印刷されたものだけでなく、凹凸を有する被印刷面に印刷されたものや、金属やセラミックなどの種々の材料からなる被印刷面に印刷されたものも含む。また、2次元の画像を積層することで、一部に立体感のある画像(2次元と3次元からなる像)や立体物を形成することもできる。
【0043】
図2は、本発明に係る別の像形成装置(3次元立体像の形成装置)の一例を示す概略図である。図2の像形成装置39は、インクジェットヘッドを配列したヘッドユニット(AB方向に可動)を用いて、造形物用吐出ヘッドユニット30から第一の硬化型組成物を、支持体用吐出ヘッドユニット31、32から第一の硬化型組成物を造形物用吐出ヘッドユニット30から吐出し、活性エネルギー線を照射して固化させて第一の造形物層を形成する工程を、積層回数に合わせて、上下方向に可動なステージ38を下げながら複数回繰り返すことで、支持体層と造形物層を積層して立体造形物35を製作する。その後、必要に応じて支持体積層部36は除去される。なお、図2では、造形物用吐出ヘッドユニット30は1つしか設けていないが、2つ以上設けることもできる。
【実施例0044】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0045】
(カラーインクの製造例1~2)
下記の表1に示す組成及び含有量を混合し、カラーインクとしてのマゼンタインク1~2を作製した。
【0046】
【表1】
【0047】
(実施例1~11及び比較例1~7)
表2~表5に示す各材料を、順次撹拌しながら添加した後、2時間撹拌して、実施例1~11及び比較例1~7の硬化型クリアインク組成物を調製した。
次に、得られた硬化型クリアインク組成物について、表2~表5に示す印刷条件で印刷を行い、硬化物を得た。
【0048】
次に、得られた硬化型クリアインク組成物及び硬化物について、以下のようにして、クリアコート層の平滑性、硬度、密着性、吐出安定性、硬化性、及び生産性を評価した。結果を表2~表5に示した。
【0049】
<クリアコート層の平滑性>
株式会社リコー製GEN5ヘッドにて、平均厚みが20μm程度となるように、各硬化型クリアインク組成物を吐出し、フォセオン社製のUV-LED照射機を用い、インク着弾からUV照射まで60秒間の待機時間を経た後、UVを照射し、クリアコート層を形成して、該クリアコート層を目視観察し、下記の基準で平滑性を評価した。
[評価基準]
A:目視にて凹凸がなく、実用上問題ないレベル
B:目視にて凹凸はあるが、実用上問題ないレベル
C:目視にて凹凸があり、実用上問題となるレベル
【0050】
<硬度>
得られた硬化物について、JIS K5600-5-4 引っかき硬度(鉛筆法)に準拠して鉛筆硬度を測定し、下記評価基準に基づいて、「硬度」を評価した。
[評価基準]
A:鉛筆硬度がH以上
B:鉛筆硬度がB以上F以下
C:鉛筆硬度が2B以下
【0051】
<密着性>
JIS K5600-5-6に示されるクロスカット法に準拠して、下記の評価基準で密着性を評価した。
[評価基準]
A:ランク0~1
B:ランク2~3
C:ランク4~5
【0052】
<吐出安定性>
株式会社リコー製GEN5ヘッドを有するインクジェット吐出装置を用いて、各組成物の飛翔速度が7m/s±1m/sとなる条件で、28kHzの周波数で1分間連続吐出した際の不吐出となるノズル数を測定し、下記基準に基づいて、吐出安定性を評価した。
[評価基準]
S:不吐出ノズル数が0個である
A:不吐出ノズル数が1個以上4個未満である
B:不吐出ノズル数が4個以上10個未満である
C:不吐出ノズル数が10個以上である
【0053】
<硬化性>
ワイヤーバー#8を用い、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に作製し
た各組成物の均一膜に対して、Phoseon社製FJ800(波長395nm)を用い
て、照度1W/cmでUVを照射した際に、指触タック性を感じなくなる積算光量を求
め、下記の基準に基づいて、硬化性を評価した。
[評価基準]
A:積算光量が800mJ/cm未満
B:積算光量が800mJ/cm以上1,200mJ/cm未満
C:積算光量が1,200mJ/cm以上
【0054】
<生産性>
株式会社リコー製GEN5ヘッドを使用した印刷機にて、インクの吐出周波数を28kHz、解像度を600dpi×600dpiにて、クリアコート層の平均厚みが20μm以上となる画像を印刷した際の印刷速度から、下記の基準に基づいて、生産性を評価した。なお、B以上が実使用可能なレベルである。
[評価基準]
S:印刷速度が12m/h以上
A:印刷速度が10m/h以上12m/h未満
B:印刷速度が10m/h未満
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
【表4】
【0058】
【表5】
*表5中の比較例7の「平滑性」、「硬度」、及び「密着性」における「-」は測定不能であることを意味する。
【0059】
(実施例12~13)
表6に示す各材料を、順次撹拌しながら添加した後、2時間撹拌して、実施例12~13の硬化型クリアインク組成物を調製した。
表6に示すように、カラーインクと硬化型クリアインク組成物とを組み合わせて、実施例12~13のインクセットとした。
得られた実施例12~13のインクセットを用いて、クリアコート層の平滑性、硬度、密着性、吐出安定性、硬化性、及び生産性を評価した。また、以下のようにして、インクセットのカラーインクを用いて形成したカラー画像上でのクリアコート層の平滑性を評価した。結果を表6に示した。
【0060】
<カラー画像上でのクリアコート層の平滑性>
株式会社リコー製GEN5ヘッドにて、平均厚みが10μm程度となるようにカラーインクを吐出し、フォセオン社製のUV-LED照射機を用い、UVを照射しカラーインク層を形成した後に、平均厚みが20μm程度となるように、各硬化型クリアインク組成物を吐出し、フォセオン社製のUV-LED照射機を用い、インク着弾からUV照射まで60秒間の待機時間を経た後、UVを照射し、クリアコート層を形成して、該クリアコート層を目視観察し、下記の基準に基づいて、カラー画像上でのクリアコート層の平滑性を評価した。
[評価基準]
A:目視にて凹凸がなく、実用上問題ないレベル
B:目視にて凹凸はあるが、実用上問題ないレベル
【0061】
【表6】
【0062】
表1~表6のカラーインクの製造例、実施例、及び比較例で用いた材料の詳細は、以下のとおりである。
【0063】
-25℃における静的表面張力が33mN/m以下の単官能重合性化合物-
・イソボルニルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、「IBXA」、25℃における静的表面張力:33mN/m)
【0064】
-25℃における静的表面張力が33mN/mを超える単官能重合性化合物-
・アクリロイルモルホリン(KJケミカルズ株式会社製、「ACMO」、25℃における静的表面張力:44mN/m)
・フェノキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、「PEA」、25℃における静的表面張力:40mN/m)
・環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製、「CTFA」、25℃における静的表面張力:36mN/m)
【0065】
-オリゴマー-
・CN963(ウレタンアクリレートオリゴマー、サートマー社製、重量平均分子量(Mw)=1,400)
【0066】
-重合禁止剤-
・TBH(tert-ブチルヒドロキノン、東京化成工業株式会社製)
・MEHQ(4-メトキシフェノール:メトキノン、精工化学株式会社製)
【0067】
-アシルフォスフィンオキサイド重合開始剤-
・Omnirad 819(フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、IGM社製)
・Omnirad TPO(2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル ホスフィンオキシド、IGM社製)
【0068】
-アシルフォスフィンオキサイド以外の重合開始剤-
・Omnirad 379(IGM社製)
・DAIDO UV Cure DETX(大同化成工業株式会社製)
【0069】
-界面活性剤-
・F-556(フッ素系界面活性剤、DIC株式会社製)
・TEGO WET270(ポリエーテル変性シロキサンコポリマー、エボニック・ジャパン社製)
【0070】
-N-ビニル化合物-
・V-CAP(Ashland社製)
【0071】
-顔料-
・ピグメントレッド122(“ホスタパーム”ピンクEBtransp.、クラリアント社製)
【0072】
-分散剤-
・BYK9151(BYK社製)
【0073】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 界面活性剤と、
25℃での静的表面張力が33mN/m以下の単官能重合性化合物を10質量%以上30質量%以下と、
重量平均分子量(Mw)が1,000以上であるオリゴマーと、
アシルフォスフィンオキサイド重合開始剤を8質量%以上12質量%以下と、
を含有することを特徴とする硬化型クリアインク組成物である。
<2> 色材を実質的に含まない前記<1>に記載の硬化型クリアインク組成物である。
<3> 前記界面活性剤がポリシロキサン界面活性剤である前記<1>から<2>のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物である。
<4> 前記界面活性剤の含有量が0.05質量%以上0.2質量%以下である前記<1>から<3>のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物である。
<5> 25℃での静的表面張力が33mN/m以下の単官能重合性化合物が、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、及びイソノニル(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種である前記<1>から<4>のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物である。
<6> 25℃での静的表面張力が33mN/m以下の単官能重合性化合物が、イソボルニル(メタ)アクリレートである前記<5>に記載の硬化型クリアインク組成物である。
<7> 活性エネルギー線硬化型クリアインク組成物である前記<1>から<6>のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物である。
<8> インクジェット用である前記<1>から<7>のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物である。
<9> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物が容器中に収容されてなることを特徴とする収容容器である。
<10> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物からなるクリアインクと、カラーインクと、を有することを特徴とするインクセットである。
<11> 前記カラーインクが、N-ビニル化合物及び界面活性剤を実質的に含まない前記<10>に記載のインクセットである。
<12> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物を、10pL以上20pL以下の液滴サイズで吐出し、画像を印刷することを特徴とする印刷方法である。
<13> 印刷画像の同一部位に対して、8回以下のスキャン回数で印刷する前記<12>に記載の印刷方法である。
<14> 吐出された硬化型クリアインク組成物が基材に着弾してから、活性エネルギー線が照射されるまでのレベリング時間が、15秒以上120秒以下である前記<12>から<13>のいずれかに記載の印刷方法である。
<15> 前記<12>から<14>のいずれかに記載の印刷方法により印刷して得られたことを特徴とする印刷物である。
<16> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物を収容する収容部と、
前記組成物を付与する付与手段と、
前記組成物を硬化させる硬化手段と、
を有することを特徴とする2次元又は3次元の像形成装置である。
<17> 前記硬化手段が、波長350nm以上450nm以下の発光ダイオード光源である前記<16>に記載の2次元又は3次元の像形成装置である。
<18> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物を付与する付与工程と、
前記組成物を硬化させる硬化工程と、
を含むことを特徴とする2次元又は3次元の像形成方法である。
<19> 前記硬化工程において、波長350nm以上450nm以下の発光ダイオード光源から照射する前記<18>に記載の2次元又は3次元の像形成方法である。
<20> 前記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物を用いて形成されることを特徴とする硬化物である。
<21> 前記<20>に記載の硬化物を延伸加工してなることを特徴とする成形加工品である。
<22> 基材上に前記<20>に記載の硬化物からなる表面加飾が施されてなることを特徴とする加飾体である。
【0074】
前記<1>から<8>のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物、前記<9>に記載の収容容器、前記<10>から<11>のいずれかに記載のインクセット、前記<12>から<14>のいずれかに記載の印刷方法、前記<15>に記載の印刷物、前記<16>から<17>のいずれかに記載の2次元又は3次元の像形成装置、前記<18>から<19>のいずれかに記載に2次元又は3次元の像形成装置、前記<20>に記載の硬化物、前記<21>に記載の成形加工品、及び前記<22>に記載の加飾体によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 貯留プール(収容部)
3 可動ステージ
4 活性エネルギー線
5 活性エネルギー線硬化型組成物
6 硬化層
21 供給ロール
22 記録媒体
23a、23b、23c、23d 印刷ユニット
24a、24b、24c、24d 光源
25 加工ユニット
26 印刷物巻取りロール
30 造形物用吐出ヘッドユニット
31、32 支持体用吐出ヘッドユニット
33、34 紫外線照射手段
35 立体造形物
36 支持体積層部
37 造形物支持基板
【先行技術文献】
【特許文献】
【0076】
【特許文献1】特開2013-067770号公報
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2023-07-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤と、
25℃での静的表面張力が33mN/m以下の単官能重合性化合物を10質量%以上30質量%以下と、
25℃での静的表面張力が33mN/m超である単官能重合性化合物と、
重量平均分子量(Mw)が1,000以上である2官能のウレタンアクリレートオリゴマーと、
アシルフォスフィンオキサイド重合開始剤を8質量%以上12質量%以下と、を含有し、
25℃での静的表面張力が33mN/m以下の単官能重合性化合物が、イソボルニル(メタ)アクリレートであることを特徴とする硬化型クリアインク組成物。
【請求項2】
前記界面活性剤がポリシロキサン界面活性剤である請求項1に記載の硬化型クリアインク組成物。
【請求項3】
前記界面活性剤の含有量が0.05質量%以上0.2質量%以下である請求項1からのいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物。
【請求項4】
25℃における静的表面張力が33mN/m超である単官能重合性化合物が、(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ビニルカプロラクタム、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、及び環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレートから選択される少なくとも1種である請求項1から3のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物。
【請求項5】
前記2官能のウレタンアクリレートオリゴマーの含有量が0.1質量%以上15質量%以下である請求項1から4のいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物。
【請求項6】
活性エネルギー線硬化型クリアインク組成物である請求項1からのいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物。
【請求項7】
インクジェット用である請求項1からのいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物。
【請求項8】
請求項1からのいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物が容器中に収容されてなることを特徴とする収容容器。
【請求項9】
請求項1からのいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物からなるクリアインクと、カラーインクと、を有することを特徴とするインクセット。
【請求項10】
前記カラーインクが、顔料及び重合性モノマーを含有する請求項9に記載のインクセット。
【請求項11】
請求項1からのいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物を、10pL以上20pL以下の液滴サイズで吐出し、画像を印刷することを特徴とする印刷方法。
【請求項12】
印刷画像の同一部位に対して、8回以下のスキャン回数で印刷する請求項11に記載の印刷方法。
【請求項13】
吐出された硬化型クリアインク組成物が基材に着弾してから、活性エネルギー線が照射されるまでのレベリング時間が、15秒以上120秒以下である請求項11から12のいずれかに記載の印刷方法。
【請求項14】
請求項11から13のいずれかに記載の印刷方法により印刷して得られたことを特徴とする印刷物の製造方法
【請求項15】
請求項1からのいずれかに記載の硬化型クリアインク組成物を用いて形成されることを特徴とする硬化物。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
本発明は、硬化型クリアインク組成物、インクセット、収容容器、印刷方法、印刷物の製造方法、及び硬化物に関する。