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  • 特開-エリスロポエチン産生促進用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134550
(43)【公開日】2023-09-27
(54)【発明の名称】エリスロポエチン産生促進用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/744 20150101AFI20230920BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230920BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20230920BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20230920BHJP
   A23K 10/16 20160101ALI20230920BHJP
【FI】
A61K35/744
A61P7/06
A23L33/135
C12N1/20 E
A23K10/16
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023109206
(22)【出願日】2023-07-03
(62)【分割の表示】P 2019027011の分割
【原出願日】2019-02-19
(71)【出願人】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 忠昭
(72)【発明者】
【氏名】三好 雅也
(72)【発明者】
【氏名】關 敬弘
(57)【要約】      (修正有)
【課題】新規なエリスロポエチン産生促進用組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】リューコノストック(Leuconostoc)属およびペディオコッカス(Pediococcus)属に属する菌の菌体を有効成分とすることにより、エリスロポエチン産生促進作用を有する飲食品および飼料を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リューコノストック(Leuconostoc)属またはペディオコッカス(Pediococcus)属に属する菌の菌体を有効成分とするエリスロポエチン産生促進用組成物。
【請求項2】
リューコノストック(Leuconostoc)属またはペディオコッカス(Pediococcus)属に属する菌が、リューコノストック メセンテロイデス サブスピーシーズ クレモリス(Leuconostoc mesenteroides subsp. cremoris)、リューコノストック シュードメセンテロイデス(Leuconostoc pseudomesenteroides)、ペディオコッカス ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)から選択されるひとつ以上であることを特徴とする請求項1に記載のエリスロポエチン産生促進用組成物。
【請求項3】
リューコノストック(Leuconostoc)属またはペディオコッカス(Pediococcus)属に属する菌が、リューコノストック メセンテロイデス サブスピーシーズ クレモリス(Leuconostoc mesenteroides subsp.cremoris)SBT1395(NITE P-02809)、リューコノストック シュードメセンテロイデス(Leuconostoc pseudomesenteroides)SBT0835(NITE P-02810)、ペディオコッカス ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)SBT3316(NITE P-02804)から選択されるひとつ以上であることを特徴とする請求項2に記載のエリスロポエチン産生促進用組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のエリスロポエチン産生促進用組成物を含む、エリスロポエチン産生促進用飼料組成物、エリスロポエチン産生促進用医薬組成物、又はエリスロポエチン産生促進用食品組成物。
【請求項5】
新規乳酸菌リューコノストック メセンテロイデス サブスピーシーズ クレモリス(
Leuconostoc mesenteroides subsp.cremoris)SBT1395。
【請求項6】
新規乳酸菌リューコノストック シュードメセンテロイデス(Leuconostoc pseudomesenteroides)SBT0835。
【請求項7】
新規乳酸菌ペディオコッカス ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)SBT3316。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌の菌体を有効成分とするエリスロポエチン産生促進用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エリスロポエチンは赤血球の産生を促進する造血因子の一つである。腎性貧血の治療薬として遺伝子組み換えエリスロポエチンが上市されており、2017年度の売り上げは800億円を超える。
【0003】
貧血気味の高齢者にエリスロポエチン製剤を投与することで、疲労感の改善ができることが報告されている(非特許文献1)。
【0004】
一方で、エリスロポエチンは赤血球を増加させることで血中ヘモグロビン濃度が上昇するため、持久運動能力の向上に効果がある。そのため、エリスロポエチンの投与はスポーツ選手におけるドーピングのひとつとして問題視されている。
【0005】
そこで、エリスロポエチンを投与することなく、体内のエリスロポエチンの産生を促進することができれば、ドーピングに該当しない持久力改善や疲労感軽減が達成できると考えられる。特許文献1では転写因子GATAの阻害によるエリスロポエチンの発現阻害解除によってエリスロポエチンの産生を誘導する化合物が示されている。
【0006】
しかしながら、手軽に摂取できる食品で体内のエリスロポエチンの産生を誘導する事例はこれまでに報告されていない。
【0007】
ところで、乳酸菌およびビフィズス菌は、古来より発酵食品の製造に使用される細菌であるが、近年の研究で様々な健康機能の増進に寄与することが明らかとなりつつある。乳酸菌が獣乳を分解することにより産生されるペプチドが、筋力増強および疲労感の軽減に効果があることが特許文献2で示されている。しかしながら、乳酸菌の菌体そのものがエリスロポエチンの産生促進に関与するか否かは、いずれの文献にも開示も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2017-223518号
【特許文献2】特許5888701号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Journal of the American Geriatrics Society(2007)、55、1557-65
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、新規なエリスロポエチン産生促進用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討した結果、エリスロポエチン産生促進作用を有する乳酸菌を見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は乳酸菌を有効成分とする新規のエリスロポエチン産生促進用組成物を提供するものである。また、本発明は産業上利用可能な新規の乳酸菌株を提供するものである。
したがって、本発明は以下の構成を有する。
<1>ラクトバチルス(Lactobacillus)属、リューコノストック(Leuconostoc)属またはペディオコッカス(Pediococcus)属に属する菌の菌体を有効成分とするエリスロポエチン産生促進用組成物、
<2>Lactobacillus属、Leuconostoc属またはPediococcus属に属する菌が、ラクトバチルス ムコサエ(Lactobacillus mucosae)、ラクトバチルス パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス バギナリス(Lactobacillus vaginalis)、リューコノストック メセンテロイデス サブスピーシーズ クレモリス(Leuconostoc mesenteroides subsp. cremoris)、リューコノストック シュードメセンテロイデス(Leuconostoc pseudomesenteroides)、ペディオコッカス ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)から選択されるひとつ以上であることを特徴とする<1>に記載のエリスロポエチン産生促進用組成物、
<3>Lactobacillus属、Leuconostoc属またはPediococcus属に属する菌が、Lactobacillus mucosae SBT2958(NITE P-02803)、Lactobacillus paracasei SBT0228(NITE P-02805)、Lactobacillus plantarum SBT0092(NITE P-02806)、Lactobacillus rhamnosus SBT2490(NITE P-02807)、Lactobacillus vaginalis SBT0337(NITE P-02808)、Leuconostoc mesenteroides subsp. cremoris SBT1395(NITE P-02809)、Leuconostoc pseudomesenteroides SBT0835(NITE P-02810)、Pediococcus pentosaceus SBT3316(NITE P-02804)から選択されるひとつ以上であることを特徴とする<2>に記載のエリスロポエチン産生促進用組成物、
<4><1>~<3>のいずれかに記載のエリスロポエチン産生促進用組成物を含む、エリスロポエチン産生促進用飼料組成物、エリスロポエチン産生促進用医薬組成物、又はエリスロポエチン産生促進用食品組成物、
<5>新規乳酸菌ラクトバチルス ムコサエ SBT2958、
<6>新規乳酸菌ラクトバチルス パラカゼイ SBT0228、
<7>新規乳酸菌ラクトバチルス プランタラム SBT0092、
<8>新規乳酸菌ラクトバチルス ラムノーサス SBT2490、
<9>新規乳酸菌ラクトバチルス バギナリス SBT0337、
<10>新規乳酸菌リューコノストック メセンテロイデス サブスピーシーズ クレモリス SBT1395、
<11>新規乳酸菌リューコノストック シュードメセンテロイデス SBT0835、並びに
<12>新規乳酸菌ペディオコッカス ペントサセウス SBT3316。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、リューコノストック(Leuconostoc)属およびペディオコッカス(Pediococcus)属に属する乳酸菌の菌体を有効成分とするエリスロポエチン産生促進用組成物を提供することができる。また、本発明によれば、産業上利用可能な新規の乳酸菌株を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ヒト肝臓癌由来細胞株HEP-3Bに、様々な乳酸菌加熱死菌体を添加して48時間培養後の培養上清中エリスロポエチン量を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(乳酸菌)
本発明の乳酸菌は、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、リューコノストック(Leuconostoc)属およびペディオコッカス(Pediococcus)属に分類される乳酸菌であればどのようなものでも用いることができる。
具体的には、ラクトバチルス ムコサエ(Lactobacillus mucosae)、ラクトバチルス パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス ラムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス バギナリス(Lactobacillus vaginalis)、リューコノストック メセンテロイデス サブスピーシーズ クレモリス(Leuconostoc mesenteroides subsp. cremoris)、リューコノストック シュードメセンテロイデス(Leuconostoc pseudomesenteroides)、ペディオコッカス ペントサセウス(Pediococcus pentosaceus)等を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
本発明の乳酸菌は、Lactobacillus mucosae SBT2958(NITE P-02803)、Lactobacillus paracasei SBT0228(NITE P-02805)、Lactobacillus plantarum SBT0092(NITE P-02806)、Lactobacillus rhamnosus SBT2490(NITE P-02807)、Lactobacillus vaginalis SBT0337(NITE P-02808)、Leuconostoc mesenteroides subsp. cremoris SBT1395(NITE P-02809)、Leuconostoc pseudomesenteroides SBT0835(NITE P-02810)、Pediococcus pentosaceus SBT3316(NITE P-02804)であることが好ましい。
【0016】
(乳酸菌の調製)
乳酸菌は、各菌の培養の常法に従って培養し、所望の量を調製すればよい。調製の一例を以下に示す。MRS培地(Difco)を用いて培養し、得られた培養物を遠心分離により集菌することにより菌体を得る。得られた菌体をそのまま用いてもよいし、濃縮、乾燥、凍結乾燥処理に供した菌体を用いることもできる。菌体は死菌体にしたものを用いることもできる。死菌体は、例えば、加熱乾燥、酸処理、超音波破砕等により調製することができる。
【0017】
(新規乳酸菌株)
本発明は、新規乳酸菌株に関するものである。これらの新規乳酸菌株とはLactobacillus mucosae SBT2958(NITE P-02803)、Lactobacillus paracasei SBT0228(NITE P-02805)、Lactobacillus plantarum SBT0092(NITE P-02806)、Lactobacillus rhamnosus SBT2490(NITE P-02807)、Lactobacillus vaginalis SBT0337(NITE P-02808)、Leuconostoc mesenteroides subsp. cremoris SBT1395(NITE P-02809)、Leuconostoc pseudomesenteroides SBT0835(NITE P-02810)、Pediococcus pentosaceus SBT3316(NITE P-02804)である。以下、同乳酸菌株を「本発明の乳酸菌」、「本発明の乳酸菌株」、又は単にSBT2958、SBT0228、SBT0092、SBT2490、SBT0337、SBT1395、SBT0835、SBT3316株と記載することがある。
本発明の乳酸菌であるSBT2958、SBT0337はヒト糞便を、SBT0228はアルコール飲料を、SBT0092、SBT2490、SBT1395、SBT0835は発酵乳を、SBT3316は発酵食品を分離源として分離された。これらの乳酸菌株は、2018年10月31日に、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(郵便番号292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に、SBT2958はNITE P-02803、SBT0228はNITE P-02805、SBT0092はNITE P-02806、SBT2490はNITE P-02807、SBT0337はNITE P-02808、SBT1395はNITE P-02809、SBT0835はNITE P-02810、SBT3316はNITE P-02804の受託番号で寄託されている。
本発明の乳酸菌は、上記寄託乳酸菌株に制限されず、これらの寄託乳酸菌株と実質的に同等の乳酸菌株であってもよい。実質的に同等の乳酸菌株とは、ラクトバチルス ムコサエ、ラクトバチルス パラカゼイ、ラクトバチルス プランタラム、ラクトバチルス ラムノーサス、ラクトバチルス バギナリス、リューコノストック メセンテロイデス サブスピーシーズ クレモリス、リューコノストック シュードメセンテロイデス、ペディオコッカス ペントサセウスに属する乳酸菌株であって、寄託乳酸菌株と同程度の高いエリスロポエチン産生促進作用を有する乳酸菌株を言う。「寄託乳酸菌株と同程度の高いエリスロポエチン産生促進作用を有する乳酸菌株」とは、例えば、以下の手順1)~4)により測定したエリスロポエチン量が、各々の寄託乳酸菌株におけるエリスロポエチン量と有意差がない乳酸菌株を意味する。
1) 10%FBS、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma)を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Sigma)に、ヒト肝臓癌由来細胞株HEP-3Bを6×10 cells/wellで播種し24時間培養する。
2) 培地を取り除き、各種乳酸菌加熱死菌体を50μg/mlで懸濁した培地150μlを細胞に添加して、48時間培養し、培養上清を回収し、12,000×g、4℃で10分間遠心して細胞の破片などを取り除く。
3) 前記2)で得られた細胞培養上清50μl原液をHuman Erythropoietin DuoSet(登録商標) ELISA(R&D Systems)により測定する。具体的には、発色試薬としてQuantaBluTM Fluorogenic Peroxidase Substrate Kit(Thermo)を使用して、前記2)で得られた細胞培養上清50μl中のエリスロポエチンタンパク質を発色させる。
4)発色後の溶液をCorningTM 96-Well Solid White Polystyrene Microplates(Corning)に移してプレートリーダー(Biotek)にてEx.325nm、Em.420nmで蛍光強度を測定する。
本発明の乳酸菌は、前記手順1)~4)によりエリスロポエチン産生促進機能の評価を行った場合に、好ましくは、測定したエリスロポエチン量が、乳酸菌株を添加していないコントロールにおけるエリスロポエチン量よりも1.5倍以上多いものである。本発明の乳酸菌は、前記手順1)~4)によりエリスロポエチン産生促進機能の評価を行った場合に、測定されたエリスロポエチン量が、乳酸菌株を添加していないコントロールにおけるエリスロポエチン量よりも、好ましくは5mIU/mL、より好ましくは10mIU/mL、さらに好ましくは15mIU/mL以上多いものである。
なお、上記の評価方法に限定されず、当業者に公知であるエリスロポエチン産生促進作用評価方法を採用して、エリスロポエチン産生促進作用を評価可能であることは言うまでもない。
また、実質的に同等の乳酸菌株は、さらに、その16S rRNA遺伝子の塩基配列が、上記寄託乳酸菌株の16S rRNA遺伝子の塩基配列と98%以上、好ましくは99%以上、より好ましくは100%の相同性を有し、且つ、好ましくは上記寄託乳酸菌株と同一の菌学的性質を有する。さらに、本発明の乳酸菌は、本発明の効果が損なわれない限り、寄託乳酸菌株、又はそれと実質的に同等の乳酸菌株から、変異処理、遺伝子組換え、自然変異株の選択等によって育種された乳酸菌株であってもよい。
【0018】
(利用方法)
上記のとおり、本発明の組成物は濃縮、乾燥、凍結乾燥処理に供した菌体、有効成分とすることができることから、製剤、飲食品、飼料の原料として広く用いることができる。死菌体は、例えば、加熱乾燥、酸処理、超音波破砕等により調製することができる。
本発明の組成物の投与対象は特に限定されず、ヒトに対して投与することができるが、投与対象はヒト以外の動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ又はウサギ等)であっても良い。投与対象がヒトである場合は、20歳未満の未成年、成人、男女、又は65歳以上の高齢者などに投与することができる。
本発明の組成物の摂取量は、投与対象者の症状、年齢、及び性別などを考慮してそれぞれ個別に決定されるが、通常成人の場合、一日当たりの菌体の摂取量として、0.5-5000mgであればよく、0.5-500mgが望ましく、0.5-50mgが最も望ましい。
【0019】
本発明の組成物は、腎性貧血及び貧血の予防又は改善の目的で対象に投与することができる。本発明の組成物は、既に腎性貧血及び貧血を罹患している対象に投与してもよく、未だ罹患していない健康な対象に、腎性貧血及び貧血の予防のために投与することもできる。
本発明の組成物は、疲労感の改善、持久運動能力向上、及び/又は筋力増強のために対象に投与することができる。投与タイミングとしては、運動を行う前、運動をしている最中、及び/又は運動の後に投与することができる。運動としては、例えば、ウオーキング、ランニング、サッカー、バスケットボール、バレーボール、水泳、自転車競技及びテニス等が挙げられる。
【0020】
(エリスロポエチン産生促進)
「エリスロポエチン産生促進」は、例えば、前記手順1)~4)によりエリスロポエチン産生促進機能の評価を行った場合に、測定されたエリスロポエチン量が、コントロールにおけるエリスロポエチン量と比較して有意に多い場合を意味し、好ましくは、測定したエリスロポエチン量が乳酸菌株を添加していないコントロールにおけるエリスロポエチン量よりも1.5倍以上多いことを意味する。
【0021】
(エリスロポエチン産生促進能の評価方法)
実施例に記載の方法で評価が可能である。すなわち、前記手順1)~4)により評価が可能である。
【0022】
以下、本発明の実施例をもとにさらに詳細に説明するが、本発明は係る実施例に限定して解釈されるものではない。なお、特に説明のない場合、%は重量%を示す。
【実施例0023】
(実施例品1)乳酸菌加熱死菌体
下記(1)の各供試菌を、ラクトバチルス属、リューコノストック属、ペディオコッカス属に属する乳酸菌はMRS培地(Difco)を用いて、ラクトコッカス属、ストレプトコッカス属に属する乳酸菌はM17培地(Difco)、ビフィドバクテリウム属に属するビフィズス菌は、1%グルコース含有GAMブイヨン(日水)を用いてそれぞれ培養した。培養物を、生理食塩水にて2回、滅菌水にて1回洗浄し、洗浄菌体を得た。この洗浄菌体を凍結乾燥処理して菌体粉末を得た。菌体粉末を10mg/mlになるように滅菌PBS(-)で懸濁し、80℃にて30分間加熱して加熱死菌体を得た。加熱死菌体は50μg/mlとなるように10%FBS(Gibco)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma)を含むDMEM(Sigma)で希釈した。
【0024】
(1)供試菌
ラクトバチルス(Lactobacillus)属、リューコノストック(Leuconostoc)属、ペディオコッカス(Pediococcus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属、の下記11株を供試菌とした。
Lactobacillus mucosae SBT2958(NITE P-02803)、Lactobacillus paracasei SBT0228(NITE P-02805)、Lactobacillus plantarum SBT0092(NITE P-02806)、Lactobacillus rhamnosus SBT2490(NITE P-02807)、Lactobacillus vaginalis SBT0337(NITE P-02808)、Leuconostoc mesenteroides subsp. cremoris SBT1395(NITE P-02809)、Leuconostoc pseudomesenteroides SBT0835(NITE P-02810)、Pediococcus pentosaseus SBT3316(NITE P-02804)、Lactococcus lactis subsp. lactisJCM5805T、Streptococcus thermophilus JCM17834T、Bifidobacterium longum subsp. longumJCM1217T。
【0025】
[試験例1]
乳酸菌によるエリスロポエチン産生促進効果に関する試験
実施例品1を以下の試験に供した。
48 well plate(BD)に、ヒト肝臓癌由来細胞株HEP-3Bを6×10 cells/wellで播種し、10%FBS(Gibco)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Sigma)を含むDMEM(Sigma)で24時間培養した。培地を取り除いた後、試験群には各種菌体を50μg/mlで懸濁した培地を、コントロール群には菌体を含まない培地を150μl添加して、48時間培養した。ポジティブコントロールとして、塩化コバルト(CoCl、Sigma)を終濃度50μMで同様に添加した。その後、培養上清を回収し、12,000×g、4℃で10分間遠心して細胞の破片などを取り除いた。
【0026】
細胞培養上清中のエリスロポエチンタンパク質は、Human Erythropoietin DuoSet(登録商標) ELISA(R&D Systems)により測定した。培養上清50μl原液を測定サンプルとして使用した。発色試薬にQuantaBluTM Fluorogenic Peroxidase Substrate Kit(Thermo)を使用した。発色後の溶液をCorningTM 96-Well Solid White Polystyrene Microplates(Corning)に移してプレートリーダー(Biotek)にてEx.325nm、Em.420nmで蛍光強度を測定した。
【0027】
(試験結果)
HEP-3B細胞に、乳酸菌11株のいずれかを添加して48時間培養した時の、培養上清中へのエリスロポエチンタンパク質産生量を図1に示した。その結果、8株の乳酸菌(SBT2958、SBT0228、SBT0092、SBT2490、SBT0337、SBT1395、SBT0835、SBT3316)がエリスロポエチン産生を亢進した。一方、3株の乳酸菌基準株(JCM5805T、JCM17834T、JCM1217T)はエリスロポエチン産生を亢進しなかった。
これらの結果から、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、リューコノストック(Leuconostoc)属およびペディオコッカス(Pediococcus)属に属する乳酸菌がエリスロポエチンの産生を亢進することが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
ラクトバチルス(Lactobacillus)属、リューコノストック(Leuconostoc)属およびペディオコッカス(Pediococcus)属に属する菌の菌体を有効成分とする、エリスロポエチン産生促進用組成物を提供することができる。
【受託番号】
【0029】
<寄託生物材料への言及>
(1)ラクトバチルス ムコサエ SBT2958
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター
日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室(郵便番号292-0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
2018年10月31日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE P-02803
(2)ラクトバチルス パラカゼイ SBT0228
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター
日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室(郵便番号292-0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
2018年10月31日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE P-02805
(3)ラクトバチルス プランタラム SBT0092
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター
日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室(郵便番号292-0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
2018年10月31日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE P-02806
(4)ラクトバチルス ラムノーサス SBT2490
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター
日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室(郵便番号292-0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
2018年10月31日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE P-02807
(5)ラクトバチルス バギナリス SBT0337
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター
日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室(郵便番号292-0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
2018年10月31日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE P-02808
(6)リューコノストック メセンテロイデス サブスピーシーズ クレモリス SBT1395
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター
日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室(郵便番号292-0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
2018年10月31日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE P-02809
(7)リューコノストック シュードメセンテロイデス SBT0835
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター
日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室(郵便番号292-0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
2018年10月31日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE P-02810
(8)ペディオコッカス ペントサセウス SBT3316
イ 当該生物材料を寄託した寄託機関の名称及び住所
独立行政法人 製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター
日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室(郵便番号292-0818)
ロ イの寄託機関に生物材料を寄託した日付
2018年10月31日
ハ イの寄託機関が寄託について付した受託番号
NITE P-02804
図1