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特開2023-134857水処理プラントの装置構成の算定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134857
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】水処理プラントの装置構成の算定システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20230921BHJP
   C02F 1/00 20230101ALI20230921BHJP
【FI】
G06Q50/06
C02F1/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022034558
(22)【出願日】2022-03-07
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】丸山 克也
(72)【発明者】
【氏名】小川 浩
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼岡 佑介
(72)【発明者】
【氏名】大井 公介
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】 各種要求条件に基づき施工希望の水処理プラントの装置構成を短時間で提示することの可能な水処理プラントの装置構成の算定システムを提供する。
【解決手段】 水処理プラントの装置構成の算定システム1は、過去に施工した複数の施工済の水処理プラントの過去案件情報を記録した施工案件データベース2と、この施工案件データベース2の情報に対してアクセス可能な演算部3とからなる。この演算部3は、顧客Clから提供される要求条件及び要望条件に基づいて、施工案件データベース2の情報の選別・選択・類似度による並び替えを行い、この結果を装置構成算定結果として提供する。これら水処理プラントの装置構成の算定システム1は、携帯端末4などを介して、顧客Clの情報を入力するとともに装置構成算定結果を表示可能となっている。演算部3は、施工案件データベース2の情報に基づき、水処理プラントの装置構成の算定を行う。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の施工済の水処理プラントの処理種別、原水水質及び原水水量あるいは処理水水質及び処理水水量、並びに当該水処理プラントの装置構成を含む過去案件情報を記憶した施工案件データベースと、
施工希望の水処理プラントの処理種別、原水水質及び原水水量あるいは処理水水質及び処理水水量を含む要求条件と、前記施工案件データベースの過去案件情報とから施工希望の水処理プラントの装置構成を推算する演算部と、
を有する水処理プラントの装置構成の算定システムであって、
前記演算部は、施工希望の水処理プラントの要求条件に基づき、施工案件データベースの過去案件情報の中から処理種別が一致又は類似する一又は二以上の施工済の水処理プラント案件を抽出する抽出プロセスと、この処理種別が一致又は類似する一又は二以上の水処理プラント案件の装置構成で前記施工希望の水処理プラントの処理が可能か否かを判断して可能な案件を選別する判断プロセスと、前記判断プロセスで選択された案件の装置構成を施工希望の水処理プラントの装置構成候補とする選定プロセスとを行う、水処理プラントの装置構成の算定システム。
【請求項2】
前記判断プロセスは、
前記抽出プロセスで抽出された案件に対し、前記施工希望の水処理プラントの要求条件の原水水質又は処理水水質とする処理が可能か否かを判断し、可能な案件を選択する第一の判断工程と、
前記第一の判断工程で選択された案件に対し、要求条件に近似する順に類似順位付けを行う第二の判断工程と
からなる、請求項1に記載の水処理プラントの装置構成の算定システム。
【請求項3】
前記施工案件データベースには、さらに施工済の水処理プラントの初期コスト、運転コスト及び設置面積を含む施工関連情報が記憶されており、施工希望の水処理プラントが、初期コスト、運転コスト及び設置面積のいずれかを優先する場合には、前記演算部は、前記第二の判断工程で順位付けされた水処理プラントの装置構成に対して、この優先する初期コスト、運転コスト又は設置面積の条件に基づいて前記類似順位付けを変更する、請求項2に記載の水処理プラントの装置構成の算定システム。
【請求項4】
前記施工案件データベースと前記演算部とは、情報処理装置内に格納されており、該情報処理装置と情報交換可能な携帯型端末に前記要求条件を入力することで、施工希望の水処理プラントの装置構成を表示可能となっている、請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理プラントの装置構成の算定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理プラントの装置構成の算定システムに関し、特に施工希望の水処理プラントの各種条件に基づき水処理プラントの装置構成等を短時間で提示することの可能な、水処理プラントの装置構成の算定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水処理プラントを設計する際には、プラントを構成する各種装置の構成と配置などのフロー図を決定し、これに基づいて具体的なレイアウトを作成することが行われている。
【0003】
このような水処理プラントを構成する各種装置の構成や配置は、以下のようにして決定していた。すなわち、まず、顧客が施工を希望する水処理プラントの用水処理・排水処理などの処理の種別、原水の水質及び水量あるいは処理水の水質及び水量などの条件(以下、要求条件とする)と、顧客の要望する施工希望の水処理プラントの初期コスト、運転コスト、設置面積及び工期などの条件(以下、要望条件とする)から回答可能な情報を顧客からヒアリングする。次に、これらのヒアリングで得た条件を持ち帰って要求条件に基づいて処理プロセス(各種装置の構成)を検討し案を作成する。続いて、この検討された処理プロセスについて、初期コスト、運転コスト、設置面積及び工期などの要望条件の検討を行い、これらを満足するものを水処理プラントの装置構成の案として顧客に提示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の水処理プラントの装置構成の決定には、ヒアリングを行った後、ここで得られた条件を持ち帰って物質収支や安全率を考慮して水処理プラントの装置構成を検討していたので、ヒアリングから水処理プラントの装置構成の案を顧客に提示するまでかなりの時間を要し、場合によっては14~30日後となってしまう、という問題点があった。特に初期コスト、運転コスト、設置面積及び工期などの要望条件についても優先順位付けを行う必要がある場合には、さらに時間を要する。また、水処理プラントの装置構成の案を顧客に提示した後に、顧客の要求条件や要望条件が変更された場合には、検討をやり直す必要がある。さらに処理プロセスを検討する担当者によって、水処理プラントの装置構成に差異が生じることもあり、サービスサの均質性にも問題点があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、各種要求条件に基づき施工希望の水処理プラントの装置構成を短時間で提示することの可能な水処理プラントの装置構成の算定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的に鑑み本発明は、複数の施工済の水処理プラントの処理種別、原水水質及び原水水量あるいは処理水水質及び処理水水量、並びに当該水処理プラントの装置構成を含む過去案件情報を記憶した施工案件データベースと、施工希望の水処理プラントの処理種別、原水水質及び原水水量あるいは処理水水質及び処理水水量を含む要求条件と、前記施工案件データベースの過去案件情報とから施工希望の水処理プラントの装置構成を推算する演算部とを有する水処理プラントの装置構成の算定システムであって、前記演算部は、施工希望の水処理プラントの要求条件に基づき、施工案件データベースの過去案件情報の中から処理種別が一致又は類似する一又は二以上の施工済の水処理プラント案件を抽出する抽出プロセスと、この処理種別が一致又は類似する一又は二以上の水処理プラント案件の装置構成で前記施工希望の水処理プラントの処理が可能か否かを判断して可能な案件を選別する判断プロセスと、前記判断プロセスで選択された案件の装置構成を施工希望の水処理プラントの装置構成候補とする選定プロセスとを行う、水処理プラントの装置構成の算定システムを提供する(発明1)。
【0007】
特に上記発明(発明1)においては、前記判断プロセスは、前記抽出プロセスで抽出された案件に対し、前記施工希望の水処理プラントの要求条件の原水水質又は処理水水質とする処理が可能か否かを判断し、可能な案件を選択する第一の判断工程と、前記第一の判断工程で選択された案件に対し、要求条件に近似する順に類似順位付けを行う第二の判断工程とからなることが好ましい(発明2)。
【0008】
かかる発明(発明1,2)によれば、過去に施工した水処理プラントの処理種別、原水水質及び原水水量、処理水水質及び処理水水量をデータベースに記録しておき、施工希望の水処理プラントの処理種別、原水水質及び原水水量、あるいは処理水水質及び処理水水量の要求条件を入力するだけで、データベースから施工希望の水処理プラントと要求条件と条件が近似する案件を抽出し、その過去に施工した水処理プラントで施工希望の水処理プラントの処理が可能か判断して、処理可能な水処理プラントの装置構成を施工希望の水処理プラントの装置構成候補とすることで、施工希望の水処理プラントの最適な装置構成を即時に提示することができる。特にそれぞれの要求条件の条件に対して、例えばユークリッド距離などで順位付けすることで、顧客の要望に沿った装置構成候補を各要望条件に対して優先順位をつけて提案することができる。また、顧客の要求に変更があった場合も要求条件を変更して、同様に順位付けするだけで、最適な装置構成候補を提示することができる。しかも、過去案件情報に基づいて判断しているので、施工希望の水処理プラント装置構成候補のバラツキがなく、サービスの均質性を図ることができる。
【0009】
上記発明(発明2)においては、前記施工案件データベースには、さらに施工済の水処理プラントの初期コスト、運転コスト及び設置面積を含む施工関連情報が記憶されており、施工希望の水処理プラントが、初期コスト、運転コスト及び設置面積のいずれかを優先する場合には、前記演算部は、前記第二の判断工程で順位付けされた水処理プラントの装置構成に対して、この優先する初期コスト、運転コスト又は設置面積の条件に基づいて前記類似順位付けを変更することが好ましい(発明3)。
【0010】
上記発明(発明3)によれば、施工案件データベースにさらに複数の施工済の水処理プラントの初期コスト、運転コスト及び設置面積を含む施工関連情報を記憶しておき、施工希望の水処理プラントの初期コスト、運転コスト、設置面積のいずれかを優先する場合には、この優先する要望を基準として、類似順位付けを再度行うことで、類似順位付けを変更して提案することができる。
【0011】
また、上記発明(発明1~3)においては、前記施工案件データベースと前記演算部とは、情報処理装置内に格納されており、該情報処理装置と情報交換可能な携帯型端末に前記要求条件を入力することで、施工希望の水処理プラントの装置構成を表示可能となっていることが好ましい(発明4)。
【0012】
上記発明(発明4)によれば、顧客の要求条件及び要望条件をヒアリングしながら携帯型端末で入力したら、情報処理装置で顧客の要望に沿った装置構成候補を抽出し、これを携帯型端末で表示することで、顧客と打ち合わせをしながら即時に施工希望の水処理プラントの装置構成候補を種々提示することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の水処理プラントの装置構成の算定システムによれば、過去に施工した水処理プラントの処理種別、原水水質及び原水水量、処理水水質及び処理水水量をデータベースに記録しておき、施工希望の水処理プラントの処理種別、原水水質及び原水水量、あるいは処理水水質及び処理水水量の要求条件を入力するだけで、データベースから施工希望の水処理プラントと要求条件と条件が近似する案件を抽出し、その過去に施工した水処理プラントで施工希望の水処理プラントの処理が可能か判断して、処理可能な水処理プラントの装置構成を施工希望の水処理プラントの装置構成候補とすることで、施工希望の水処理プラントの最適な装置構成を即時に提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る水処理プラントの装置構成の算定システムを概念的に示す図である。
図2】前記実施形態における施工案件データベースの入力情報を示す図である。
図3】前記実施形態における水処理プラントの装置構成の算定プロセスを示すフローズである。
図4】前記実施形態における水処理プラントの装置構成の算定システムの抽出プロセスを示す図である。
図5】前記実施形態における水処理プラントの装置構成の算定システムの判断プロセスにおける第一の判断工程を示す図である。
図6】前記実施形態における水処理プラントの装置構成の算定システムの判断プロセスにおける第二の判断工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の水処理プラントの装置構成の算定システムの一実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態を示したものであり、本発明の範囲がこれらの実施形態に限定されることはない。
【0016】
[水処理プラントの装置構成の算定システム]
図1は、本実施形態の水処理プラントの装置構成の算定システムを概念的に示している。図1において、水処理プラントの装置構成の算定システム1は、過去に施工した複数の施工済の水処理プラントの情報(過去案件情報)を記録した施工案件データベース2と、この施工案件データベース2の情報に対してアクセス可能な演算部3とからなる。この演算部3は、顧客(クライアント:Cl)から提供される要求条件及び要望条件に基づいて、施工案件データベース2の情報の選別及び類似度による並び替えを行い、この結果を装置構成フローの算定結果として提供する。本実施形態の水処理プラントの装置構成の算定システム1は、携帯端末4などを介して、顧客Clの要求情報・要望情報などの情報を入力するとともに装置構成算定結果を表示可能となっている。
【0017】
(施工案件データベース)
施工案件データベース2には、例えば図2に示すように既設の水処理プラントを施工した客先名に対し、施工関連情報、水質・水量情報が紐づけて格納されている。例えば、以下の各項目を記録する。
【0018】
<施工関連情報>
(1)業種:半導体工場、液晶工場、食品工場など当該水処理プラントを設置した業種
(2)処理種別:用水処理、排水処理、排水回収など当該水処理プラントが行う処理の種別
(3)イニシャルコスト(IC):当該水処理プラントを構成する各装置のコストの合計、完成までの施工費などの施工完了までのコストの合計
(4)ランニングコスト(RC):当該水処理プラントを1年間運転した際の電力費用、メンテナンス費用などの運転コストの合計
(5)設置面積:当該水処理プラントを設置するのに必要な敷地面積
(6)工期:当該水処理プラントの施工開始から完成までに要した期間
(7)その他:安全率(当該水処理プラントの最大処理能力に対する想定最大使用量の比(%))などのその他の情報を入力してもよい。
【0019】
<水質・水量情報>
・原水
(1)水量、(2)導電率、(3)TOC濃度、(4)BOD濃度,(5)溶解シリカ濃度
優先度1:溶解シリカ濃度、優先度2:TOC濃度、優先度3:導電率、優先度4:溶解シリカ濃度 に設定
・処理水
(1)水量、(2)比抵抗値、(3)TOC濃度、(4)DO(溶存酸素)濃度,(5)シリカ濃度
優先度1:シリカ濃度、優先度2:TOC濃度、優先度3:比抵抗値、優先度4:DO濃度 に設定
【0020】
(水処理プラントの装置構成の算定方法)
演算部3は、上述した施工案件データベース2の情報に基づき、図3に示すような流れで水処理プラントの装置構成の算定を行う。以下、算定フローについて詳述する。
【0021】
<顧客の施工希望の水処理プラント情報のヒアリングと条件入力>
まず顧客CLから施工を希望する水処理プラントの業種、処理種別、原水水質及び原水水量、あるいは処理水水質及び処理水水量などの条件(要求条件)をヒアリングし、携帯端末4を介して入力する。次に、顧客CLがすでに施工希望の水処理プラントの初期コスト、運転コスト、設置面積及び工期の一又は二以上の条件(要望条件)が確定している場合には、この要望条件も携帯端末を介して入力する。このとき初期コスト、運転コストのいずれを重視するか、特に初期コスト、運転コストのいずれかが要求条件の条件よりも優先する場合には、特にこれらの優先順位をヒアリングして、これらの情報も入力することが好ましい。ただし、この要望条件については初期状態においては必ずしも必要ではない。
【0022】
本実施形態では、施工希望の水処理プラントは、要求条件が業種:半導体、処理種別:用水、処理水水量:300mh、比抵抗値:10MΩ・cm超、TOC:50μg/L未満、溶存酸素DO:30μg/L未満、シリカ:10μg/L未満であるものとし、要望条件が未定の場合を例に説明する。
【0023】
<抽出プロセス>
抽出プロセスでは、施工希望の水処理プラントの業種及び処理種別が一致している既設の水処理プラントの案件を施工案件データベース2の中から探索して抽出する。この結果、本実施形態では、図4に示すように10案件のデータが選択される。なお、ここで、業種及び処理種別が一致している案件がなかった場合には、フローは終了し、特殊案件として従来どおり設計者の手作業により、水処理プラントの装置構成を算定することになる。
【0024】
<判断プロセス>
判断プロセスは、本実施形態では以下の二段階の工程で行う。
【0025】
(1)第一の判断工程
第一の判断工程では、抽出プロセスで選択された10件の既設の水処理プラントの処理水質・水量データと、施工希望の水処理プラントの要求する処理水質・水量とを比較し、施工希望の水処理プラントの水処理が可能な案件、すなわち要求条件の水質・水量条件を全て満たす案件に絞り込む。この結果、本実施形態では、図5に示すように8案件のデータが選択される。なお、ここで水質・水量条件を全て満たす案件がなかった場合には、条件に対して差異が小さい(例えば条件に対して5%以下の差異)案件を近似案件として選定する。要求条件に対しての乖離が大きい案件しかない場合には、「類似案件なし」と判断して、フローは終了し、従来どおり設計者の手作業により、水処理プラントの装置構成を算定することになる。
【0026】
(2)第二の判断工程
第二の判断工程では、第一の判断工程で選択された8件の既設の水処理プラントの処理水質・水量データと、施工希望の水処理プラントの要求する処理水質との類似度を比較する。この類似度の比較は、例えば、要求する処理水質に対して標準化ユークリッド距離が近い(例えば10以内)ものを類似と判断し、優先度が高い条件を優先して順位付けを行えばよい。具体的には、本実施形態においては、優先度1:シリカ濃度、優先度2:TOC濃度、優先度3:比抵抗値、優先度4:DO濃度としているので、図6に示すようにシリカ濃度10μg/L未満の条件に最も近いシリカ:8μg/L未満のB社の案件を類似度1、次にシリカ濃度:5μg/L未満の案件のうち、優先度2のTOC濃度50μg/L未満に近い40μg/L未満のD社の案件を類似度2、TOC濃度10μg/L未満のA社の案件を類似度3、残りのTOC濃度5μg/L未満のC社の案件を類似度4として順位付けすればよい。そして、このようにして順位付けした各案件の装置構成を施工関連情報、水質・水量情報とともに携帯端末4を介して顧客に表示することで、顧客に即時に水処理プラントの装置構成を提示することができる。
【0027】
<要望条件に基づく調整>
本実施形態においては、客Clの要望条件が未定であるので、類似度が高い順に順位付けされた案件に基づいて、イニシャルコスト(IC)又はランニングコスト(RC)、設置面積及び工期などの要望条件を類推して、水処理プラントの装置構成、水質とともに表示する。
【0028】
また、この際、顧客の要望条件の優先度をヒアリングして調整してもよい。例えば、水処理プラントの装置構成を提示した後、顧客CLに対して、水質、イニシャルコスト(IC)又はランニングコスト(RC)のいずれを重視するかを確認し、以下のように対応すればよい。
【0029】
(1)顧客CLが水質を最も重視する場合
そのまま第二の判断工程で順位付けづけした案件を表示して、顧客がこれらの中から選択すればよい。
【0030】
(2)イニシャルコスト(IC)又はランニングコスト(RC)を最も重視する場合
イニシャルコスト(IC)又はランニングコスト(RC)の条件を優先度0として、再度「第二の判断工程」による類似判断を行って、順位付けを変更し、これらの案件の装置構成を携帯端末を介して顧客に表示すればよい。
【0031】
さらに、水質、イニシャルコスト(IC)又はランニングコスト(RC)などのそれぞれの条件項目を選択することで、この選択された条件項目を最優先として類似度を変更した結果を即時に判断して、表示を変更することができるようにしてもよい。
【0032】
上述したような水処理プラントの装置構成の算定システムは、施工案件データベース2に記録されている案件数が多い方が的確で豊富なバリエーションを提案できて好ましい。具体的には、各業種の各処理種別ごとに少なくとも10件以上、特に50件以上の施工案件データを有するのが好ましい。そして、新たな案件を施工したら、施工案件データベース2に順次追加することができるので、経時とともに算定システムの的確性を向上することができる、という効果を奏する。
【0033】
以上、本実施形態の水処理プラントの装置構成の算定システムについて説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されず、種々の変更実施が可能である。例えば、類似度の判断手法は特に限定されず、優先度に基づく標準化ユークリッド距離による判断に限らず、例えば、水質の各項目に基づき総合的に判断するなど各種判断基準を採用することができる。また、施工案件データにはその他のデータを入力してこれを判断に含めてもよい。さらに、本発明は、少なくとも実際の施工案件データを用いて、施工案件データベース2を構築していればよく、この施工案件データベース2の施工案件データに基づいて、人為的に計算した仮想の施工案件データを含んでいてもよい。例えば、施工案件データベース2の施工案件データがある程度増加したら、これらの施工案件データを参照して、水量や水質条件を変え、物質収支などを計算して、オリジナルな案件データを作成して、施工案件データベース2を補強してもよい。あるいは、施工案件データベース2の施工案件データがある程度増加したら、これらの施工案件データを教師案件データとして、AIなどを用いて機械学習することにより、オリジナルな案件データを作成して、施工案件データベース2を補強してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 水処理プラントの装置構成の算定システム
2 施工案件データベース
3 演算部
4 携帯端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の施工済の水処理プラントの処理種別、原水水質及び原水水量あるいは処理水水質及び処理水水量、並びに当該水処理プラントの装置構成を含む過去案件情報を記憶した施工案件データベースと、
施工希望の水処理プラントの処理種別、原水水質及び原水水量あるいは処理水水質及び処理水水量を含む要求条件と、前記施工案件データベースの過去案件情報とから施工希望の水処理プラントの装置構成を推算する演算部と、
を有する水処理プラントの装置構成の算定システムであって、
前記演算部は、施工希望の水処理プラントの要求条件に基づき、施工案件データベースの過去案件情報の中から処理種別が一致又は類似する一又は二以上の施工済の水処理プラント案件を抽出する抽出プロセスと、この処理種別が一致又は類似する一又は二以上の水処理プラント案件の装置構成で前記施工希望の水処理プラントの処理が可能か否かを判断して可能な案件を選別する判断プロセスと、前記判断プロセスで選択された案件の装置構成を施工希望の水処理プラントの装置構成候補とする選定プロセスとを行
前記判断プロセスは、
前記抽出プロセスで抽出された案件に対し、前記施工希望の水処理プラントの要求条件の原水水質又は処理水水質とする処理が可能か否かを判断し、可能な案件を選択する第一の判断工程と、
前記第一の判断工程で選択された案件に対し、前記要求条件の原水水質又は処理水水質に対して標準化ユークリッド距離に基づいて類似度を比較することにより、前記要求条件に類似する順に類似順位付けを行う第二の判断工程と
からなる、水処理プラントの装置構成の算定システム。
【請求項2】
前記施工案件データベースには、さらに施工済の水処理プラントの初期コスト、運転コスト及び設置面積を含む施工関連情報が記憶されており、施工希望の水処理プラントが、初期コスト、運転コスト及び設置面積のいずれかを優先する場合には、前記演算部は、前記第二の判断工程で順位付けされた水処理プラントの装置構成に対して、この優先する初期コスト、運転コスト又は設置面積の条件に基づいて前記類似順位付けを変更する、請求項に記載の水処理プラントの装置構成の算定システム。
【請求項3】
前記施工案件データベースと前記演算部とは、情報処理装置内に格納されており、該情報処理装置と情報交換可能な携帯型端末に前記要求条件を入力することで、施工希望の水処理プラントの装置構成を表示可能となっている、請求項1又は2に記載の水処理プラントの装置構成の算定システム。