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特開2023-134867電極製造装置、電極製造方法、電気化学素子の製造装置及び電気化学素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023134867
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】電極製造装置、電極製造方法、電気化学素子の製造装置及び電気化学素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20230921BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20230921BHJP
   B05C 11/00 20060101ALI20230921BHJP
   H01G 13/00 20130101ALI20230921BHJP
   H01G 11/86 20130101ALI20230921BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20230921BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
B05C11/10
B05C11/00
H01G13/00 381
H01G11/86
H01G13/00 371C
H01M4/139
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022039779
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】山澤 亞也
【テーマコード(参考)】
4F042
5E078
5E082
5H050
【Fターム(参考)】
4F042AA22
4F042AB00
4F042BA12
4F042BA27
4F042DB17
4F042DH09
5E078AA15
5E078AB02
5E078AB06
5E078BA04
5E078BA18
5E078BA26
5E078BA27
5E078BA30
5E078BA44
5E078BA49
5E078BA52
5E078BA53
5E078BA54
5E078BB33
5E078FA02
5E078FA04
5E078FA12
5E078FA13
5E082AB09
5E082BC38
5E082BC40
5E082EE04
5E082EE35
5E082MM19
5E082MM32
5H050AA19
5H050BA14
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA03
5H050CA05
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA11
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB16
5H050GA22
5H050GA28
5H050GA29
(57)【要約】
【課題】
本発明の電極製造装置では、液体組成物が付与された非付与対象の表面状態に対応した液体組成物の付与を行うことを目的としている。
【解決手段】
電極基体上または電極基体に設けられた機能層上に絶縁層を形成可能な液体組成物を付与する付与部と、前記付与部を制御する付与制御部と、前記付与された液体組成物または前記付与された液体組成物により形成された絶縁層の表面状態を検知する表面検知部を有し、前記付与制御部は、前記表面検知部により検知された前記表面状態に基づき、前記付与部を制御する。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極の製造装置であって、
電極基体上または電極基体に設けられた機能層上に絶縁層を形成可能な液体組成物を付与する付与部と、
前記付与部を制御する付与制御部と、
前記付与された液体組成物または前記付与された液体組成物により形成された絶縁層の表面状態を検知する表面検知部を有し、
前記付与制御部は、前記表面検知部により検知された前記表面状態に基づき、前記付与部を制御する
ことを特徴とする電極製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電極製造装置において、
前記絶縁層は樹脂層である
ことを特徴とする電極製造装置
【請求項3】
請求項1に記載の電極製造装置において、
前記絶縁層は無機層である
ことを特徴とする電極製造装置
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載の電極製造装置であって、
前記表面検知部が検知する前記表面状態に基づく情報は、欠陥に基づく情報であり、
前記付与制御部は、前記付与部から付与される前記液体組成物の量を増加させる
ことを特徴とする電極製造装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電極製造装置において、
前記欠陥に基づく情報は欠陥の位置に関する情報である
ことを特徴とする電極製造装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5に記載の電極製造装置であって、
前記付与制御部は、前記付与部から付与される前記液体組成物の量を段階的に増加させる
ことを特徴とする電極製造装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6に記載の電極製造装置であって、
前記液体組成物の量を増加させる手段は、印刷解像度の変更である
ことを特徴とする電極製造装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6に記載の電極製造装置であって、
前記液体組成物の量を増加させる手段は、付与パターンの変更である
ことを特徴とする電極製造装置。
【請求項9】
電極の製造方法であって、
電極基体上または電極基体に設けられた機能層上に絶縁層を形成可能な液体組成物を付与する付与ステップと、
前記付与部を制御する付与制御ステップと、
前記付与された液体組成物または前記付与された液体組成物により形成された絶縁層の表面状態を検知する表面検知ステップを有し、
前記付与制御ステップは、前記表面検知部により検知された前記表面状態に基づき、前記付与部を制御する
ことを特徴とする電極製造方法。
【請求項10】
電極を備える電気化学素子の製造装置であって、
電極基体上または電極基体に設けられた機能層上に絶縁層を形成可能な液体組成物を付与する付与部と、
前記付与部を制御する付与制御部と、
前記付与された液体組成物または前記付与された液体組成物により形成された絶縁層の表面状態を検知する表面検知部を有し、
前記付与制御部は、前記表面検知部により検知された前記表面状態に基づき、前記付与部を制御する
ことを特徴とする電極を備える電気化学素子製造装置。
【請求項11】
電極を備える電気化学素子の製造方法であって、
電極基体上または電極基体に設けられた機能層上に絶縁層を形成可能な液体組成物を付与する付与ステップと、
前記付与部を制御する付与制御ステップと、
前記付与された液体組成物または前記付与された液体組成物により形成された絶縁層の表面状態を検知する表面検知ステップを有し、
前記付与制御ステップは、前記表面検知部により検知された前記表面状態に基づき、前記付与部を制御する
ことを特徴とする電極を備える電気化学素子製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示内容は、電極製造装置、電極製造方法、電気化学素子の製造装置及び電気化学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学素子としては、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ、レドックスキャパシタ等が挙げられる。その中でも特に、充電・放電を繰り返し行うことができる二次電池は、その用途から安全性や信頼性に関する要求が強い。この安全性や信頼性に関する要求は、電気化学素子の電極についても求められている。発火等の問題が発生しないように至らないように、製造工程において厳しく製造品質を保つ必要がある。このため、電気化学素子の材料である電極についても同様に、製造品質を保つ必要がある。
【0003】
特許文献1では、組み立てに使用する電極材料の識別情報、および組み立てに使用する電極材料中の使用予定の部分の位置を取得する位置情報取得ステップと、取得した識別情報および位置に基づいて、電極材料中の使用予定の部分の品質情報を取得する品質情報取得ステップと、取得した品質情報に基づいて、電極材料において実際に組み立てに使用する部分を決定する使用部分決定ステップと、を含む二次電池の製造方法が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の電極製造装置では、液体組成物が付与された非付与対象の表面状態に対応した液体組成物の付与を行うことを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電極の製造装置は、電極基体上または電極基体に設けられた機能層上に絶縁層を形成可能な液体組成物を付与する付与部と、前記付与部を制御する付与制御部と、前記付与された液体組成物または前記付与された液体組成物により形成された絶縁層の表面状態を検知する表面検知部を有し、前記付与制御部は、前記表面検知部により検知された前記表面状態に基づき、前記付与部を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電極製造装置では、液体組成物が付与された非付与対象の表面状態に対応した液体組成物の付与を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る電極製造装置の全体構成図の一例である。
図2】電極製造装置及び電極製造装置制御部の機能ブロック図である。
図3】本実施形態に係る電極製造装置制御部のハードウェア構成図である。
図4】吐出量の制御処理の一例を示すフローチャートである。
図5】液体組成物の吐出による絶縁層の形成の概念図である。
図6】スジ状欠陥が発生する様子を表した電極製造装置の平面図である。
図7】本実施形態に係る電極製造装置の全体構成図のその他の例である。
図8】表面検知部の光学系の一例である。
図9】表面検知部の検知結果の一例である。
図10】欠陥検知のフローチャートである。
図11】欠陥箇所情報出力に基づく吐出量の調整のフローチャートである。
図12】吐出量の調整方法の一例である。
図13】段階的に吐出量を調整する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の電極製造装置は、電極の製造工程において、表面検知部が液体組成物の付与後の絶縁層の表面状態を検知し、その検知した表面状態に基づいて付与制御部は付与部を制御することができる。
【0009】
以下、図面を用いて、本発明の電極製造装置について詳細に説明する。
【0010】
<<電極製造装置1>>
(全体構成)
図1は、本実施形態に係る電極製造装置の全体構成図の一例である。
【0011】
図1に示されているように、本実施形態の電極製造装置1は、搬送機能を担う巻出部10、巻取部11、液体組成物の付与部の一例である吐出部5、硬化装置6、ヒーター7、表面検知部8、電極基体9、電極基体上に設けられた機能層12及びシステム制御部3によって構成されている。システム制御部3の詳細は別途記載する。
【0012】
図1は、被付与対象としての被吐出材である電極基体または電極基体の搬送方向Xと直行する方向Yから透視した電極製造装置1の内部を示している。
【0013】
表面検知部8は吐出部5により液体組成物が吐出された被吐出材が搬送される方向である搬送方向下流側に配置される。硬化装置6、ヒーター7に対する表面検知部8の配置順は問わない。
【0014】
この電極製造装置1は、樹脂層22または無機層23である絶縁層21を形成する材料である液体組成物24を用いて、電極基体9または電極基体上に設けられた機能層12の表面を覆うように樹脂層22または無機層23である絶縁層21を形成し、吐出部5より下流に設けられた表面検知部8にて樹脂層22または無機層23である絶縁層21の表面状態を検知するものである。
【0015】
(搬送)
電極製造装置1は巻出部10および巻取部11により被吐出材を搬送しながら、吐出部5は液体組成物24を被吐出材に吐出し、被吐出材上すなわち電極基体9または電極基体上に設けられた機能層12の表面を覆うように樹脂層22または無機層23である絶縁層21を形成する。
【0016】
本実施形態では、被吐出材の巻出手段には巻出部10を、被吐出材の巻取手段には巻取部11を用いる。巻出部10は、ロール状に収納された被吐出材を回転させることで、被吐出材を電極製造装置1の搬送経路に供給する。巻取部11は、液体組成物24が吐出されて絶縁層21が形成された被吐出材を巻き取ってロール状に収納する。他の工程にも関連するが、電極製造装置1における塗布速度としては、30[m/分]~100[m/分]であることが好ましい。これにより、高速の絶縁層21形成が求められる場合にも好適に用いることができる。
【0017】
被吐出材は、搬送方向Xに沿って連続する基材である。基材は本事例では電極基体9または電極基体上に設けられた機能層12である。電極製造装置1は、巻出部10と巻取部11の間の搬送経路に沿って被吐出材を搬送する。また被吐出材の搬送方向Xに沿う長さは、少なくとも巻出部10と巻取部11の間の搬送経路より長い。電極製造装置1は、搬送方向Xに沿って連続する被吐出材に対し、連続して絶縁層21形成を実行できるようになっている。
【0018】
(被吐出材)
実施形態に係る電極基体9は、平面性を有する導電性箔であって、一般に蓄電デバイスである2次電池、キャパシタ、なかでもリチウムイオン2次電池に好適に用いることができる。導電性箔としては、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔、チタニウム箔、及びそれらをエッチングして微細な穴を開けたエッチド箔や、リチウムイオンキャパシタに用いられる穴あき電極基体等が用いられる。この電極基体9には、燃料電池のような発電デバイスで用いられるカーボンペーパー繊維状の電極を不織又は織状で平面状にしたものや、上記穴あき電極基体のうち微細な穴を有するものが使用可能である。
【0019】
(電極基体上に設けられた機能層)
実施形態に係る電極基体上に設けられた機能層12は、活物質を含む層である。電極基体上に設けられた機能層12は、粉体状の活性物質や触媒組成物を液体中に分散及び又は溶解し、電極基体上に塗布、固定、乾燥することによって形成されている。
【0020】
電極基体上に設けられた機能層12を形成するには、スプレー、ディスペンサ、ダイコータや引き上げ塗工等が用いられ、塗布後に塗布された液体組成物を乾燥することで電極基体上に設けられた機能層12を形成する。電極基体上に設けられた機能層12は、粉体状の活性物質や触媒組成物を液体中に分散及び又は溶解し、かかる液を電極基体上に塗布、固定、乾燥することによって形成されている。
【0021】
正極活物質は、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。典型的には、アルカリ金属含有遷移金属化合物を正極用活物質として使用できる。例えばリチウム含有遷移金属化合物として、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄及びバナジウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素とリチウムとを含む複合酸化物が挙げられる。例えば、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム等のリチウム含有遷移金属酸化物、LiFePO4等のオリビン型リチウム塩、二硫化チタン、二硫化モリブデン等のカルコゲン化合物、二酸化マンガン等が挙げられる。リチウム含有遷移金属酸化物は、リチウムと遷移金属とを含む金属酸化物又は該金属酸化物中の遷移金属の一部が異種元素によって置換された金属酸化物である。異種元素としては、例えばNa、Mg、Se、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、B等が挙げられ、なかでもMn、Al、Co、Ni及びMgが好ましい。異種元素は、1種でもよく又は2種以上でもよい。これらの正極活物質は単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。ニッケル水素電池における上記活物質としては水酸化ニッケル等が挙げられる。
【0022】
負極活物質は、アルカリ金属イオンを可逆的に吸蔵及び放出できる材料であれば特に限定されない。典型的には、黒鉛型結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料を負極活物質として使用できる。そのような炭素材料としては、天然黒鉛、球状又は繊維状の人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)等が挙げられる。炭素材料以外の材料としては、チタン酸リチウムが挙げられる。また、リチウムイオン電池のエネルギー密度を高める観点から、シリコン、錫、シリコン合金、錫合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化錫等の高容量材料も負極活物質として好適に使用できる。ニッケル水素電池における上記活物質としては水素吸蔵合金としては、Zr-Ti-Mn-Fe-Ag-V-Al-WやTi15Zr21V15Ni29Cr5Co5Fe1Mn8等で代表されるAB2系或いはA2B系の水素吸蔵合金が例示される。
【0023】
正極又は負極の結着剤には、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチルエステル、ポリアクリル酸エチルエステル、ポリアクリル酸ヘキシルエステル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチルエステル、ポリメタクリル酸エチルエステル、ポリメタクリル酸ヘキシルエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース等が使用可能である。また、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、エチレン、プロピレン、ペンタフルオロプロピレン、フルオロメチルビニルエーテル、アクリル酸、ヘキサジエンより選択された2種以上の材料の共重合体を用いてもよい。また、これらのうちから選択された2種以上を混合して用いてもよい。
【0024】
電極に含ませる導電剤には、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛のグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維等の導電性繊維類、フッ化カーボン、アルミニウム等の金属粉末類、酸化亜鉛やチタン酸カリウム等の導電性ウィスカー類、酸化チタン等の導電性金属酸化物、フェニレン誘導体、グラフェン誘導体等の有機導電性材料等が用いられる。
燃料電池での活物質は、一般に、カソード電極やアノード電極の触媒として、白金、ルテニウム或いは白金合金等の金属微粒子をカーボン等の触媒担体に担持させたものを用いる。触媒担体の表面に触媒粒子を担持させるには、例えば触媒担体を水中に懸濁させ、触媒粒子の前駆体を添加、(塩化白金酸、ジニトロジアミノ白金、塩化第二白金、塩化第一白金、ビスアセチルアセトナート白金、ジクロロジアンミン白金、ジクロロテトラミン白金、硫酸第二白金塩化ルテニウム酸、塩化イリジウム酸、塩化ロジウム酸、塩化第二鉄、塩化コバルト、塩化クロム、塩化金、硝酸銀、硝酸ロジウム、塩化パラジウム、硝酸ニッケル、硫酸鉄、塩化銅等の合金成分を含むものを用い)懸濁液中に溶解させアルカリを加え金属の水酸化物を生成させると共に、触媒担体表面に担持させた触媒担体を得る。かかる触媒担体を電極上に塗布し、水素雰囲気下等で還元させることで、表面に触媒粒子(活物質)が塗布された電極を得る。
【0025】
(樹脂層又は無機層)
本実施形態では特に、電極基体上に設けられた機能層12に、吐出部5により液体組成物24を吐出することにより樹脂層22又は無機層23を形成する。液体組成物24は吐出部5により吐出可能な粘度や電極基体上に設けられた機能層12を形成可能な表面張力を備えるものであればよく、特に限定されない。
【0026】
(液体組成物の吐出部)
電極製造装置1は、図1に示すように、液体組成物24の吐出手段としての吐出部5を備えている。吐出部5は、被吐出材の幅方向(Y)に沿って複数のノズルが配列されたノズル列を複数有する。電極製造装置1は、ノズルからの液体組成物24の吐出方向が被吐出材に向くように液体組成物の吐出部5が設けられている。吐出部5において、液体組成物24に刺激を印加して液体組成物24を吐出させる手段としては、目的に応じて適宜選択でき、圧電素子を用いたピエゾ方式、ヒーターを用いたサーマル方式、加圧装置を用いたバルブ方式などのいずれでも構わない。
【0027】
吐出部5は、図1には図示していない液体組成物24の吐出ユニットを備える。液体組成物24の吐出ユニットは、吐出部5からの液体組成物24の吐出に関連する機能部品、機構の集合体である。液体組成物24の吐出ユニットは、供給機構、維持回復機構、液体吐出ヘッド移動機構の構成の少なくとも一つを吐出部5と組み合わせたもの等を含む。
【0028】
吐出部5の液体組成物24の吐出に関連した制御は図1に図示しているシステム制御部3内の付与制御部の一例である吐出制御部40により行われている。吐出制御部40では液体組成物24の吐出タイミングや、液体組成物24の液滴の吐出位置、各滴の滴サイズを制御している。
【0029】
(表面検知部)
表面検知部8は、被吐出材上に形成された絶縁層21(樹脂層22または無機層23)の表面状態を観察、出力する検知手段の一例である。電極製造装置1は、表面検知部8により出力される観察結果に基づいて被吐出材上に形成された絶縁層21(樹脂層22または無機層23)の品質情報を取得することができる。
【0030】
表面検知部8における検知方法の詳細については、別途を説明する。
【0031】
図2で示したように電極製造装置1は、システム制御部3を有している。システム制御部3は、電極製造装置1全体の動作を制御する。
【0032】
またシステム制御部3は、操作部34、記憶部35、記憶・読出部39,吐出制御部40を備えている。
【0033】
操作部34は、タッチパネル等により構成されており、電極製造装置1のユーザによる操作入力を受け付けるとともに、電極製造装置1の状態や設定を画面に表示する。
【0034】
吐出制御部40は、液体組成物24の吐出に関する吐出部5の制御を行う。
【0035】
(システム制御部)
図2に示すように電極製造装置1は、システム制御部3を含んでいる。
【0036】
システム制御部は、操作部34、記憶部35、記憶・読出部39、処理部36、表面検知画像取得部51,欠陥判定部52,吐出指示作成部53、結果出力部54、搬送制御部33及び吐出制御部40から構成される。各ブロックの機能については、別途記載する。
【0037】
ここでシステム制御部3は、電極製造装置1の内部又は外部の任意の位置に設置可能である。外部に設置した場合には、各種通信ネットワークにて制御信号やデータのやり取りを行う。通信ネットワークは、インターネット、移動体通信網、LAN(Local Area Network)等によって構築されている。通信ネットワークには、有線通信だけでなく、3G(3rd Generation)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)、LTE(Long Term Evolution)等の無線通信によるネットワークが含まれてもよい。また、電極製造装置1は、NFC(Near Field Communication)(登録商標)等の近距離通信技術によって通信可能である。
【0038】
<<ハードウェア構成>>
次に図3を用いて、システム制御部3のハードウェア構成を説明する。
【0039】
<システム制御部のハードウェア構成>
図3は、システム制御部のハードウェア構成図である。
【0040】
図3に示されているように、システム制御部3は、CPU(Central Processing Unit)301、ROM(Read Only Memory)302、RAM(Random Access Memory)303、HD(Hard Disk)304、HDD(Hard Disk Drive)305、メディア306、メディアI/F307、ディスプレイ308、ネットワークI/F309、キーボード311、マウス312、CD-RW(Compact Disc Rewritable)ドライブ314、及び、バスライン31
0を備えている。
【0041】
これらのうち、CPU301は、システム制御部3全体の動作を制御する。ROM302は、CPU301の駆動に用いられるプログラムを記憶する。RAM303は、CPU301のワークエリアとして使用される。HD304は、プログラム等の各種データを記憶する。HDD305は、CPU301の制御にしたがってHD304に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。メディアI/F307は、フラッシュメモリ等のメディア306に対するデータの読み出し又は書き込み(記憶)を制御する。ディスプレイ308は、カーソル、メニュー、ウィンドウ、文字、又は画像などの各種情報を表示する。ネットワークI/F309は、通信ネットワーク100を利用してデータ通信をするためのインターフェースである。キーボード311は、文字、数値、各種指示などの入力のための複数のキーを備えた入力手段の一種である。マウス312は、各種指示の選択や実行、処理対象の選択、カーソルの移動などを行う入力手段の一種である。CD-RWドライブ314は、着脱可能な記録媒体の一例としてのCD-RW(画像管理サーバ)313に対する各種データの読み出し又は書き込みを制御する。
【0042】
なお、CD-RWドライブ314ではなく、DVD-Rドライブ等であってもよい。また、システム制御部3は、各部(機能、手段、又は記憶部)を分割して任意に割り当てられた複数のコンピュータによって構築されていてもよい。
【0043】
<<システム制御部の構成、機能及び詳細動作>>
図2の電極製造装置1の機能ブロック図には、システム制御部3の機能ブロック図も示されている。以下、図2及び図3を用いてシステム制御部3の動作を説明する。
【0044】
図2に示されているように、システム制御部3は、操作部34、記憶部35、記憶・読出部39、処理部36、表面検知画像取得部51,欠陥判定部52、吐出指示作成部53、結果出力部、搬送制御部33及び吐出制御部40を有している。
【0045】
これら各部は、図3に示されている各構成要素のいずれかが、HD304からRAM303上に展開されたプログラムに従ったCPU301からの命令によって動作することで実現される機能、又は機能する手段である。また、システム制御部3は、図3に示されているRAM303及びHD304によって構築される記憶部35を有している。
【0046】
操作部34は、主に、図3に示されているCPU301からの命令によって実現され、利用者によって操作されたキーボード311又はマウス312から信号を受信することで、利用者の各種操作を受け付ける。またこのようにして受け付けられた操作は、図3に示されているCPU301からの命令によって実現され、操作部34上にあるディスプレイ308に各種画像や画面を表示させる。
【0047】
処理部36は、図3に示されているCPU301からの命令によって実現され、電極製造装置1の全体制御を行う。
【0048】
記憶・読出部39は、図3に示されているCPU301からの命令、並びに、HDD305、メディアI/F307、及びCD-RWドライブ314によって実行され、記憶部35、メディア306、及びCD-RW313に各種データを記憶したり、記憶部35、メディア306、及びCD-RW313から各種データを読み出したりする処理を行う。
【0049】
吐出制御部40は、電極製造装置1の制御のうち、主として表面検知部8が検知した情報に基づいて、吐出部5の制御を行う。また搬送制御部33は、巻出部10及び巻取部11の制御を行う。液体組成物24の吐出タイミングや吐出量を制御する。これらの機能は電気回路で実現されるほか、これらの機能の一部をソフトウエア(CPU;Central Processing Unit)によって実現することもできる。また複数の回路又は複数のソフトウエアによってこれらの機能が実現されてもよい。搬送制御部33は、巻出部10及び巻取部11による被吐出材の搬送の開始及び停止、あるいは搬送速度等を制御する。
【0050】
表面検知画像取得部51が表面検知部8から表面検知画像を取得すると、欠陥判定部52による欠陥判別が開始される。欠陥判定部52では欠陥を判別する。欠陥とは、スジ、ピンホール、ムラ、異物、膜厚不足など、機能層の材料特性値が下がる要因となる不良をさし、品質情報のうち欠陥とすべき項目、サイズなどのパラメータはあらかじめユーザが設定することができるものとする。後述する図6では、スジ状欠陥についてとりあげる。欠陥がない場合、吐出指示作成部53にて吐出量の変更が不要であったというログが作成され、結果出力部54が吐出制御部40へその旨を指示する。欠陥があった場合には、吐出指示作成部53にて吐出量を増加させる指示が作成され、結果出力部54より吐出制御部40へその旨を指示する。
【0051】
図4は、吐出量の制御処理の一例を示すフローチャートである。
【0052】
まず表面検知画像取得部51が表面検知部8から表面検知画像を取得する(S001)。
【0053】
その後、欠陥判定部52が、欠陥の有無の判別を開始する(S002)。
【0054】
欠陥判定部52は、スジ状欠陥の有無を判断し(S003)、欠陥がない場合には吐出量の変更は不要であるログを作成する(S004)。
【0055】
また欠陥があった場合には欠陥判定部5は吐出指示の作成を指示し(S005)、吐出指示作成部53が吐出量増加指示を作成する(S006)。
【0056】
最終的に結果出力部54から吐出制御部40へ決定した指示内容の結果が出力される(S007)。
【0057】
<電極製造装置1の詳細動作>
【0058】
(絶縁層の形成)
図5は、液体組成物の吐出による絶縁層の形成の概念図である。
【0059】
図5(a)及び図5(b)にて、第一の実施形態に係る電極製造装置1での絶縁層の形成プロセスについて説明する。
【0060】
図5(a)はY方向からみた電極製造装置1の側面図、図5(b)はZ方向側からみた電極製造装置1の平面図を示している。
【0061】
なお図2では、巻出部10、巻取部11、硬化装置6、ヒーター7の図示は省略している。
【0062】
電極製造装置1は絶縁層である樹脂層22または無機層23を形成する液体組成物24を用いて、電極基体9または電極基体上に設けられた機能層12の表面を覆うように絶縁層である樹脂層22または無機層23を形成し、吐出部5より下流に設けられた表面検知部8にて絶縁層である樹脂層22または無機層23の表面状態を検知する。ここで電極基体9または電極基体上に設けられた機能層12は、全面連続パターンに限らず、間欠塗工や自由形状でもよい。さらに形成される絶縁層21である樹脂層22または無機層23の印刷形状も全面連続パターンに限らず、間欠塗工や自由形状でもよい。
【0063】
図6は、スジ状欠陥が発生する様子を表した電極製造装置の平面図である。
【0064】
図6(a)から(c)を使い、絶縁層である樹脂層22または無機層23の吐出途中でスジ状欠陥59が発生する様子について説明する。
【0065】
図6(a)は、絶縁層である樹脂層22または無機層23の吐出途中でスジ状欠陥59が発生した状態を示している。吐出部5の吐出途中でスジ状欠陥59が発生し、スジ状欠陥59が表面検知部8に到達しない間は吐出部5のよる吐出量変更不要ログ(S004)のみが作成される。
【0066】
図6(b)は、絶縁層である樹脂層22または無機層23の吐出途中でスジ状欠陥が発生し、スジ状欠陥59が表面検知部8に到達した状態を表している。スジ状欠陥59が表面検知部8に到達すると、吐出指示作成部53にて吐出量増加指示が作成される(S006)。吐出量増加指示は吐出指示作成部53より結果出力部54を介して吐出制御部40へ送られ、吐出部5による液体組成物24の吐出量を増加させる。
【0067】
図6(c)は、吐出指示作成部53より吐出量増加指示が結果出力部54を介して吐出制御部40へ送られ、吐出部5による液体組成物24の吐出量を増加させた後の様子を表している。液体組成物24の吐出量を増やすことでスジ状欠陥59を埋めて、新たなスジ状欠陥の発生を抑制させることができる。
【0068】
(検査装置の位置について)
図7は、本実施形態に係る電極製造装置の全体構成図のその他の例である。
【0069】
図7(a)は、絶縁層21である樹脂層22または無機層23を形成する液体組成物24が硬化過程を要しないために、硬化装置6を用いない構成である電極製造装置1を表している。
【0070】
なお、図7(b)のように、ヒーター7よりも上流側に表面検知部8を設けてもよい。表面検知部8が液体組成物24の乾燥前の表面状態を検知できる場合には、後述の理由から表面検知部8は吐出部5の次工程として設けられることが好ましい。
【0071】
また、図7(c)のように硬化装置6が必要な場合であっても、表面検知部8が液体組成物24の乾燥前の表面状態を検知できる場合には、後述の理由から表面検知部8は吐出部5の次工程に設けられることが好ましい。
【0072】
この表面検知部8を吐出部5の直後、即ち次工程として設ける場合には、本発明ならではのメリットがある。本発明は主としてスジ状欠陥59の発生を抑制する効果があるが、図6(a)に示したスジ状欠陥59の発生から、図6(b)でスジ状欠陥59を検知し図6(c)でスジ状欠陥59を抑制するまでの間は不良品となってしまう。このため、欠陥を発生させる吐出部5の位置から、欠陥を検知する表面検知部8までの距離が短いほど不良率の低下に伴う生産性の向上を実現することができる。よって、欠陥をインク乾燥前に検知できる場合、表面検知部8は吐出部5の直後、即ち吐出部の次工程として設けられることが好ましい。
【0073】
一方で、ヒーター7による乾燥あるいは硬化装置6による硬化前の液体組成物24が例えば透明といった、正反射光式カメラ等で検知が困難である場合においては、ヒーター7あるいは硬化装置6より下流側に表面検知部8を設置する構成が好ましい。
【0074】
(表面検知部)
図8は、表面検知部8の光学系一例である。
【0075】
表面検知部8は、照明系として、被検知物64の上面に可視光を照射する可視光源62や紫外光または赤外光の少なくとも一方を照射するIR/UV光源63を有する。もちろんどちらか一方の光源でも良い。
【0076】
ここで表面検知部8の検知対象である被検知物64は、前述の絶縁層21である樹脂層22または無機層23が吐出された電極基体9または電極基体上に設けられた機能層12を指す。
【0077】
また、表面検知部8は、測定系として、可視光カメラ61を有する構成としているが、可視光カメラ61ではなく、IR/UV光カメラとしてもよい。IR/UV光カメラは図示していないが、可視光カメラと同様の配置となる。
【0078】
表面検知部8は、このような測定系において可視光カメラ61の出力信号、またはIR/UV光カメラの出力信号に基づいて、被検知物64に含まれるスジ状欠陥の検出を行う。
【0079】
図9(a)は、表面検知部8が検知し表面検知画像取得部51が取得した画像を操作部34へ表示した様子の一例を示している。
【0080】
本事例は、欠陥箇所画像72を表示するとともに、欠陥判定部52にて分析した結果である欠陥種類情報71、欠陥箇所ライン73及び欠陥出力信号グラフ74(出力は輝度値又は輝度比の変化を示すグラフ)も合わせて表示した一例である。
【0081】
このような欠陥箇所に関する情報を出力することにより、ユーザは発生した欠陥の内容を具体的に把握することができる。
【0082】
図9(b)及び(c)は、それぞれ輝度値が高い場合と低い場合を表している。このような輝度値の変化(増加又は減少)の類型と、異常の種類との対応関係は、実際に発生し得る異常の種類ごとに実験データを蓄積していくことで、欠陥の有無及び欠陥のレベルを精度よく識別することができる。
【0083】
図10は欠陥検知のフローチャートである。
【0084】
まず被検知物64が配置されていない状態において、検知系の調整が行われる(S301)。一例として青色の可視光源31を点灯させ、撮像装置4により可視光の撮影が行われる。この調整によって、可視光カメラ61に直接入射する光の輝度が、計測可能範囲の上限と同じか実質的に同じになるように調整がされる。
【0085】
次に、検知を開始する。被検知物64の撮影が行われ、その出力信号が表面検知画像取得部51に取り込まれる。この際に1ライン分(例えば4096画素)の信号に対しホワイトシェーディング処理が施され、輝度値が生成される(ステップS302)。
【0086】
その後、欠陥判定部52による異常箇所の検出及び判定が行われる。一例ではあるが、欠陥判定部52は、取得した画像から、輝度値が所定の閾値より大きい画素からなる領域(画素群)を検出し、当該領域の面積が所定値を超えていた場合に当該領域を「欠陥箇所」と判定する。ここでは欠陥の箇所(Y方向)及び欠陥を検出した搬送タイミングも取得する(S303)。
【0087】
この結果、欠陥が検出されたと判断した場合には、ステップS305へ進む。一方、欠陥が検出されなされた場合には、本ルーチンを終了する。(S304)
欠陥を検出した場合には、検出した欠陥の欠陥種別を判定し(S305)、この欠陥種別及び欠陥箇所情報を出力する(S306)。
【0088】
(吐出量の変更)
図11は、欠陥箇所情報出力に基づく吐出量の調整のフローチャートである。
【0089】
まず表面検知部8、表面検知画像取得部51及び欠陥判定部52が、欠陥箇所情報を検出する(S401)。
【0090】
さらに表面検知画像取得部51及び欠陥判定部52は、欠陥の位置(Y軸方向の位置)を特定する(S402)。
【0091】
その後、吐出指示作成部53は、欠陥に適正な吐出量(例えば吐出量を増加させる)及び、その吐出量を変化させる方法(例えば吐出パターンの変更や印刷解像度の変更など)を決定する(S403)。
【0092】
また、吐出指示作成部53は吐出に関する指示を作成し、結果出力部54はその指示を吐出制御部40へ出力する(S404)。
【0093】
そして吐出制御部40は、指示された特定の位置について指示された吐出量及び吐出方法により吐出を制御する(S405)。
【0094】
図12は、吐出量の変更方法の一例である。
【0095】
図12(a)から図12(b)へ印刷解像度を変更している。このように印刷解像度を変更することにより、液体組成物24の吐出量を増加させる一例である。
【0096】
本事例では、単位面積あたりの印刷解像度を図12(a)に示す3×3から、(b)に示す4×4へ変更している。印刷するドットの大きさを変えずに、印刷解像度を3×3から4×4へ変更することで、単位面積あたりの液体組成物の打ち込み総量を増やすことができる。
【0097】
図12(c)から図12(d)へ印字パターンを変更している。このように印字パターンを変更することにより、液体組成物24の吐出量を増加させる一例である。
【0098】
本事例では、単位面積あたりの印刷解像度は3×3と変更しないものの、印字率を(c)の約56%から(d)の100%へ変更することで、単位面積あたりの液体組成物の打ち込み総量を増やすことができる。
【0099】
もちろん、吐出量を変更する別の方法として、吐出部5のノズルの駆動源への投入エネルギーを上げてノズルから吐出する液体組成物24の体積自体を増やす一般的な方法がある。
【0100】
ここで吐出領域全面の吐出量を増やしてスジ状欠陥59を埋めてもいいが、スジ状欠陥59の領域の周辺のみ吐出量を増やしてもよい。表面検知画像取得部51及び欠陥判定部52はY方向の欠陥位置情報を取得し、吐出指示作成部53からの吐出指示作成時にY方向の欠陥位置情報を加える。この場合、スジ状欠陥領域以外の吐出量を変更しなくて済むため、全体の膜厚への影響が少なくて済む。
【0101】
なお、欠陥位置情報はY方向の位置情報に加え、搬送対象である電極基体9または電極基体上に設けられた機能層12の搬送情報(搬送速度及び時刻情報など)と合わせて判断することで、欠陥の搬送対象上での位置を特定できるのは、通常の製造ラインと同様である。
【0102】
(欠陥の段階的な修復)
図13は、段階的に吐出量を調整する方法のフローチャートを示している。
【0103】
図13のフローチャートに従い、段階的に吐出量を調整する動作を説明する。
【0104】
具体的にはまず、欠陥を検知し、かつ、欠陥(図6でのスジ状欠陥59)の位置を特定する。前述のようにY方向の位置及び搬送方向の搬送速度からスジ状欠陥59の電極基体9または電極基体上に設けられた機能層12上の位置を特定できる(S501)。
【0105】
次に、このように特定された欠陥位置への液体組成物の吐出量を一定量増加させる(S502)。この際、増加させると液体組成物24の量は少量でよい。むしろ少量のほうが、欠陥部分を補填する液体組成物24が多くなりすぎてしまうことを防ぐことができる。
【0106】
その吐出量を増加した欠陥部分(図6ではスジ状欠陥59)が搬送されて表面検知部8へ到達した際に、吐出量を増加した欠陥部分の再検知をする(S503)。
【0107】
その際には検知した欠陥が規定値以下か(欠陥として取り扱わなくても問題がないレベルか)を欠陥判定部52が判定する(S504)。
【0108】
欠陥が規定値以下でない場合、すなわち吐出量を増加したにも関わらず欠陥が修復していない場合には、欠陥判定部52は、吐出指示作成部53、結果出力部54及び吐出制御部40を介して再度、欠陥位置への液体組成物の吐出量を一定量増加させる(S502)。
【0109】
その後、それでも欠陥が改善しない場合には、これが繰り返される。(S504:NO)
欠陥が規定値以下となった場合(S504:YES)には、吐出量を増加した結果欠陥が修復したとみなし、吐出量の増加を中止する(S505)。
●まとめ
【0110】
本発明の一実施形態にかかる電極製造装置1は、電極基体9上または電極基体に設けられた機能層12上に液体組成物24の吐出により絶縁層21を形成する吐出部5と、吐出部5を制御する吐出制御部40と、吐出部5による液体組成物24の吐出後の絶縁層21の表面状態を検知する表面検知部8を有し、吐出制御部40は、表面検知部8により検知された表面状態に基づき、吐出部5を制御する。
【0111】
このような特徴により、表面検知部8が液体組成物24の吐出後の絶縁層21の表面状態を検知し、その検知した表面状態に基づいて吐出制御部40は吐出部5を制御するため、その後の絶縁層21の表面においては、検知された表面状態に対応した吐出制御ができる。
【0112】
本発明の一実施形態にかかる電極製造装置1の絶縁層21は樹脂層22である。
【0113】
このような特徴により、表面検知部8が液体組成物24の吐出後の樹脂層22の表面状態を検知し、その検知した表面状態に基づいて吐出制御部40は吐出部5を制御するため、その後の樹脂層22の表面においては、検知された表面状態に対応した樹脂層22の吐出制御ができる。
【0114】
本発明の一実施形態にかかる電極製造装置1の絶縁層21は無機層23である。
【0115】
このような特徴により、表面検知部8が液体組成物24の吐出後の無機層23の表面状態を検知し、その検知した表面状態に基づいて吐出制御部40は吐出部5を制御するため、その後の無機層23の表面においては、検知された表面状態に対応した無機層23の吐出制御ができる。
【0116】
本発明の一実施形態にかかる電極製造装置1では、表面検知部8が検知する表面状態に基づく情報が欠陥に基づく情報であり、吐出制御部40は欠陥が解消するように吐出部5から突出される液体組成物24の量を増加させる。
【0117】
このような特徴により、液体組成物24の吐出後の絶縁層21の表面の欠陥に基づく情報を検知した場合には、その対象となる欠陥が解消させるために液体組成物24の量を増加させ、その後の絶縁層21の表面においては欠陥を解消することができる。
【0118】
本発明の一実施形態にかかる電極製造装置1の欠陥に基づく情報は、欠陥の位置に関する情報である。
【0119】
このような特徴により、液体組成物24の吐出後の絶縁層21の表面の欠陥に基づく情報である、欠陥の位置に関する情報に基づいて、その対象となる欠陥が解消させるために液体組成物24の量を増加させることができる。このため、その後の絶縁層21の表面の欠陥がある箇所について効率的に欠陥を解消することができる。
【0120】
本発明の一実施形態にかかる電極製造装置1の吐出制御部40は、欠陥が段階的に解消するように吐出部5から突出される液体組成物24の量を段階的に増加させる。
【0121】
このような特徴により、液体組成物24の吐出後の絶縁層21の表面の欠陥を解消させるために液体組成物24の量を増加させる。その際に欠陥が段階的に解消するように、吐出部5から突出される液体組成物24の量を段階的に増加させるため、液体組成物24の吐出量が欠陥を補填する以上に多くなり過ぎることを防止することができる。
【0122】
本発明の一実施形態にかかる電極製造装置1が液体組成物24の量を増加させる手段は、印刷解像度の変更である。
【0123】
このような特徴により、印刷解像度を変更することで液体組成物24の吐出量を増加させるため、簡単な制御で絶縁層21の表面の欠陥を解消させることができる。
【0124】
本発明の一実施形態にかかる電極製造装置1の液体組成物24の量を増加させる手段は、吐出パターンの変更である。
【0125】
このような特徴により、吐出パターンを変更することで液体組成物24の吐出量を増加させるため、簡単な制御で絶縁層21の表面の欠陥を解消させることができる。
【符号の説明】
【0126】
1 電極製造装置
3 システム制御部
5 吐出部(付与部の一例)
6 硬化装置
7 ヒーター
8 表面検知部
9 電極基体
10 巻出部
11 巻取部
12 電極基体上に設けられた機能層
21 絶縁層
22 樹脂層
23 無機層
24 液体組成物
33 搬送制御部
34 操作部
35 記憶部
36 処理部
39 記憶・読出部
40 吐出制御部(付与制御部の一例)
51 表面検知画像取得部
52 欠陥判定部
53 吐出指示作成部
54 結果出力部
59 スジ状欠陥
61 可視光カメラ
62 可視光源
63 IR/UV光源
64 被検知物
71 欠陥種類情報
72 欠陥箇所画像
73 欠陥箇所ライン
74 欠陥出力信号グラフ
301 CPU
302 ROM
303 RAM
304 HD
305 HDD
306 メディア
307 メディアI/F
308 ディスプレイ
309 ネットワークI/F
310 バスライン
311 キーボード
312 マウス
313 CD-RW
314 CD-RWドライブ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0127】
【特許文献1】特開2009‐266739号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13