(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135189
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】撮影装置、および撮影方法
(51)【国際特許分類】
H04N 23/74 20230101AFI20230921BHJP
H04N 23/56 20230101ALI20230921BHJP
G03B 7/16 20210101ALI20230921BHJP
G03B 15/00 20210101ALI20230921BHJP
G03B 15/03 20210101ALI20230921BHJP
G03B 15/05 20210101ALI20230921BHJP
【FI】
H04N5/235 400
H04N5/225 600
G03B7/16
G03B15/00 V
G03B15/03 V
G03B15/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040276
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】菊地 太郎
(72)【発明者】
【氏名】高巣 修作
(72)【発明者】
【氏名】山中 祐治
(72)【発明者】
【氏名】澤田 圭人
【テーマコード(参考)】
2H002
2H053
5C122
【Fターム(参考)】
2H002CD04
2H002DB14
2H002FB27
2H002FB32
2H002FB38
2H053AA05
2H053AD06
2H053BA75
5C122EA12
5C122EA20
5C122FA18
5C122FD04
5C122FF01
5C122FF17
5C122FF21
5C122GA34
5C122GG01
5C122GG21
(57)【要約】
【課題】避難退避所を有する鉄道トンネルを撮影するにあたり、1度の撮影で標準断面および避難退避所ともに、白飛びおよび黒つぶれが無い撮影データを取得することができる撮影装置、および撮影方法を提供する。
【解決手段】本発明は、移動体に設置された状態で構造物を撮影する少なくとも1つの撮影部と、前記撮影部の撮影領域の明るさを調整する明るさ調整部と、前記撮影部により前記構造物を撮影する前に、前記撮影部と前記構造物との間の距離情報を測距する測距部と、前記測距部により測距された前記距離情報が変化した場合に、前記距離情報および前記明るさ調整部の特性情報を利用して、前記撮影部に対する露光を制御する露光制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設置された状態で構造物を撮影する少なくとも1つの撮影部と、
前記撮影部の撮影領域の明るさを調整する明るさ調整部と、
前記撮影部により前記構造物を撮影する前に、前記撮影部と前記構造物との間の距離情報を測距する測距部と、
前記測距部により測距された前記距離情報が変化した場合に、前記距離情報および前記明るさ調整部の特性情報を利用して、前記撮影部に対する露光を制御する露光制御部と、
を備える撮影装置。
【請求項2】
前記露光制御部は、前記撮影領域の中で、前記距離情報が大きく異なる箇所が存在する場合に、前記撮影部に対する露光を制御して、前記撮影部により撮影される画像の飽和を抑制する、請求項1に記載の撮影装置。
【請求項3】
前記露光制御部は、前記測距部により算出される前記距離情報に基づいて、前記明るさ調整部による前記撮影領域の明るさの追従速度を切り替える、請求項1または2に記載の撮影装置。
【請求項4】
前記撮影部は、イメージセンサを有し、
前記露光制御部は、前記イメージセンサを複数の分割領域に分割し、当該各分割領域の輝度値の測光結果に基づいて、前記撮影部に対する露光を制御する、請求項1から3のいずれか一項に記載の撮影装置。
【請求項5】
前記距離情報と前記撮影部に対する露光条件とを対応付けて記憶する距離露光条件記憶部をさらに備え、
前記露光制御部は、前記測距部により測距した前記距離情報が、前記距離露光条件記憶部に記憶されている前記距離情報と同じである場合には、前記距離情報と対応付けて記憶される前記露光条件を利用して、前記撮影部に対する露光を制御する、請求項1から4のいずれか一項に記載の撮影装置。
【請求項6】
撮影装置で実行される撮影方法であって、
撮影部が、移動体に設置された状態で構造物を撮影する工程と、
明るさ調整部が、前記撮影部の撮影領域の明るさを調整する工程と、
測距部が、前記撮影部により前記構造物を撮影する前に、前記撮影部と前記構造物との間の距離情報を測距する工程と、
露光制御部が、前記測距部により測距された前記距離情報が変化した場合に、前記距離情報および前記明るさ調整部の特性情報を利用して、前記撮影部に対する露光を制御する工程と、
を含む撮影方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮影装置、および撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル等の対象物の維持管理において、点検を効率化するために、撮影システム(撮影装置の一例)を搭載した車両等の移動体で走行しながらトンネルの壁面を撮影する方法が知られている。また、移動体の前方の所定距離以内に、明るさが所定量以上変化する光変化区間が存在するか否かを判定し、光変化区間が存在する場合に、光変化区間の走行中に生じる明るさの変化に合わせて車両が備える撮影システムの露光制御を行う技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、特許文献2には、被写体と撮影装置との距離を基に非常駐車帯を検出し、1回目の走行では非常駐車帯走行中に非常駐車帯用の最適露光条件を算出しつつ、非常駐車帯を抜けるときには露光条件を固定して、標準断面に影響を与えないような自動露光制御を実施することが開示されている。また、特許文献2には、2回目の走行では1回目の走行で計算した露光条件で固定して撮影を行うことで、非常駐車帯を白飛びおよび黒潰れなく撮影できることが開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、トンネル等の構造物全体を移動体が移動しながら撮影する際に、撮影の手間を簡素化することが望まれている。特許文献2では、撮影するための移動(走行)を2回行っており、より少ない撮影回数とするという観点での改善が望まれている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、避難退避所を有する鉄道トンネルを撮影するにあたり、1度の撮影で標準断面および避難退避所ともに、白飛びおよび黒つぶれが無い撮影データを取得することができる撮影装置、および撮影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、移動体に設置された状態で構造物を撮影する少なくとも1つの撮影部と、前記撮影部の撮影領域の明るさを調整する明るさ調整部と、前記撮影部により前記構造物を撮影する前に、前記移動体と前記構造物との間の距離情報を測距する測距部と、前記測距部により測距された前記距離情報が変化した場合に、前記距離情報および前記明るさ調整部の特性情報を利用して、前記撮影部に対する露光を制御する露光制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、避難退避所を有する鉄道トンネルを撮影するにあたり、1度の撮影で標準断面および避難退避所ともに、白飛びおよび黒つぶれが無い撮影データを取得することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施の形態にかかる撮影装置の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施の形態にかかる撮影装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、第1の実施の形態にかかる撮影装置が有する照明ユニットの特性テーブルの一例を示す図である。
【
図4】
図4は、第1の実施の形態にかかる撮影装置が有するセンサ制御ボードの機能構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、鉄道のトンネル内の避難退避所の一例を説明するための図である。
【
図6】
図6は、避難退避所を撮影車両が通過した際のTOFセンサにより計測される距離の変化の一例を説明するための図である。
【
図7】
図7は、第1の実施の形態にかかる撮影装置によるカメラおよび照明ユニットの自動露光制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、第2の実施の形態にかかる撮影装置が有するセンサ制御ボードの機能構成の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、第2の実施の形態にかかる撮影装置におけるカメラおよび照明ユニットの自動露光制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、撮影装置、および撮影方法の実施の形態を詳細に説明する。本実施の形態は、一度に全体を撮影することが不可能な大きな構造物の壁面を被写体として撮影する際の露光量の制御に関する技術である。また、本実施の形態は、車両等(移動体)に、距離計測部(測距部)、照明部、および撮影部を含む撮影装置全体を車両等の移動体に搭載して、当該移動体が移動しながら被写体となる構造物の壁面を撮影すること、および、外光の影響を受けないように、構造物の壁面を照明光で照射しながら撮影すること、を前提とする技術である。以下の説明では、撮影装置により撮影する被写体がトンネルであり、当該トンネルの壁面を撮影する際の露光量の制御の一例について説明する。
【0010】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態にかかる撮影装置の一例を示す図である。本実施の形態にかかる撮影装置1は、一般車両(移動体の一例)5のルーフに載せられた撮影ユニットを有し、車両5が走行しながら撮影ユニットによりトンネルの壁面6等の構造物を撮影する。撮影ユニットは、複数のカメラユニットを有するカメラユニット群11と、複数の照明ユニットを有する照明ユニット群12と、を有する。すなわち、カメラユニット群11が有するカメラユニットは、例えば、複数のイメージセンサ(撮像素子)を有するラインセンサ(ラインカメラ)であっても良く、車両5に設置された状態で構造物を撮影する少なくとも1つの撮影部の一例である。また、照明ユニット群12は、撮影ユニットの撮像領域Rの明るさを調整する明るさ調整部の一例である。
【0011】
カメラユニット群11の複数のカメラユニットは、それぞれ隣り合うカメラユニットの画角が一部重複するように設置されている。そして、カメラユニット群11の複数のカメラユニットは、カメラユニット群11全体でトンネルの壁面6の円周方向半分が画角に収まるように設置されている。照明ユニット群12が有する照明ユニットも、カメラユニット群11と同様に、それぞれ隣り合う照明ユニットと照射角が一部重複するように設置されている。そして、照明ユニット群12の複数の照明ユニットは、照射角がカメラユニット群11の画角全体をカバーするように設置されている。撮影装置1は、一つのトンネルを往復して撮影することでトンネル全体の壁面を撮影する。
【0012】
図2は、第1の実施の形態にかかる撮影装置のハードウェア構成の一例を示す図である。本実施の形態にかかる撮影装置1は、
図2に示すように、カメラ照明ユニット100、TOF(Time of Flight)センサ101、IMU(Inertial Measurement Unit)102、車速移動距離計103、センサ制御ボード104、メモリ105、および操作用PC(Personal Computer)106を有する。
【0013】
カメラ照明ユニット100は、カメラユニット群11および照明ユニット群12を有する。そして、カメラ照明ユニット100は、
図1に示すように、車両5のルーフに取り付けられる。また、カメラ照明ユニット100は、後述するセンサ制御ボード104によって、ONまたはOFF、露光条件の設定、明るさの制御等、全ての制御が実施される。なお、カメラ照明ユニット100が有するカメラユニットは、エリアカメラ(2次元センサ)でも、ラインセンサ(ラインカメラ)でもよい。カメラ照明ユニット100が有するカメラユニットがラインカメラの場合は、センサ方向がトンネルの壁面6の円周方向となり、後述する車速移動距離計103から所定の移動量で出力されるピッチパルスをトリガに撮影する。例えば、車速移動距離計103は、車両5が1mm動くごとにパルスを出力して、ラインカメラは、当該パルスをトリガに1mm毎にシャッターを切って撮影する。
【0014】
特に、ラインカメラの方が本実施の形態の効果が顕著となるため、本実施の形態では、カメラ照明ユニット100は、カメラユニットとして、ラインカメラを搭載することとする。ラインセンサは、2次元センサよりも撮影領域は狭いため、照明しながら撮影する場合、撮影領域内の照明ムラが生じ辛くなり、構造物を撮影する際の輝度値のムラが生じ辛いというメリットがある。
【0015】
TOFセンサ101は、カメラ照明ユニット100と同様に車両5のルーフに取り付けられる。TOFセンサ101は、カメラ照明ユニット100の撮影と同時に、TOFの撮影を行い、トンネルの壁面6と撮影装置(カメラ照明ユニット100)との距離の算出を行う。本実施の形態では、トンネル内の避難退避所を検出して、カメラ照明ユニット100が避難退避所に侵入するまでに、カメラ照明ユニット100の露光制御を実施しなければならない。そのため、TOFセンサ101は、車両5の進行方向において、カメラ照明ユニット100よりも物理的に前方に設けられていなければならない。すなわち、TOFセンサ101は、カメラユニット群11より構造物を撮影する前に、カメラユニット群11と構造物との間の距離を測距する測距部の一例である。
【0016】
TOFセンサ101により算出される距離は、以下の2つの用途で用いられる。
(1)TOFセンサ101により算出される距離は、カメラ照明ユニット100による撮影の幾何補正に利用可能である。IMU102および車速移動距離計103により得られる情報から、車両5の軌跡を算出することで、カメラ照明ユニット100の各カメラユニットがどのような姿勢で撮影を行ったかを求めることができる。これにより、カメラ照明ユニット100により撮影された画像が、トンネル中心から撮影された画像となるように各画素を補正すること可能となる。
(2)避難退避所等、被写体との距離が非連続に変化する箇所の検知に利用可能である。
なお、上記2つの用途で別々のTOFセンサを利用してもよい。本実施の形態では、上記(1)、(2)の用途で別々のTOFセンサ101を搭載しているものとする。
【0017】
IMU102は、加速度および角速度を測定可能なセンサであり、車両5の軌跡の算出に用いる。車速移動距離計103は、車両5の速度または移動量を測定するセンサであり、IMU102と同様に車両5の軌跡の算出に利用される。また、カメラ照明ユニット100が有するカメラがラインカメラの場合は、車速移動距離計103は、所定の移動量でパルスを出力し、ラインカメラに入力する役割を持つ。
【0018】
センサ制御ボード104は、上述の各センサ、カメラ、照明ユニットの制御を行うものである。具体的には、センサ制御ボード104は、カメラ照明ユニット100の自動露光制御も実施する。メモリ105は、各センサおよびカメラの画像を保存する。また、メモリ105は、後述する照明の特性情報も予め保存している。
【0019】
操作用PC106は、無線にてセンサ制御ボード104と接続され、センサ制御ボード104を制御する。具体的には、操作用PC106は、ノートPCおよびタブレット等のポータブルのものであっても良い。操作用PC106の使用シーンとしては、上述の各部100~105までを、車両5のルーフ部におき、実際に車両5が走行して撮影するときには、車両5の助手席に座っている人が操作用PC106を用いて、録画開始ボタンおよび停止ボタンだけを押すことで、カメラ,各センサ,照明が制御され、最終的に撮影画像とセンサ情報がメモリ105に格納されていることを想定する。
【0020】
図3は、第1の実施の形態にかかる撮影装置が有する照明ユニットの特性テーブルの一例を示す図である。カメラ照明ユニット100が有する照明ユニット群12の特性テーブル(特性情報の一例)は、照明ユニット群12の特性を表すテーブルである。この特性テーブルは、照明ユニット群12のある所定の電流値(本実施の形態では、最大電流値の時)での特性値である。具体的には、被写体からの距離情報に対応する明るさを事前に計測しておき、明るさの計測結果を、距離情報に対応付けてメモリ105(記憶部の一例)に記憶される特性テーブルに撮影前に保存しておく。照明ユニット群12の照明光の照射範囲で明るさが均一でないため、特性テーブルは、当該照射範囲の最大明るさと最低明るさを保有している。また、本実施の形態では、照明ユニット群12は、LED(Light Emitting Diode)であるため、照明ユニット群12の電流値を変更すれば、リニアに、照明ユニット群12の特性が変化する。
【0021】
例えば、
図3に示す特性テーブルの数値が、照明ユニット群12の電流値が3Aの場合の数値である場合、照明ユニット群12の電流値が1Aの場合は、照明ユニット群12の明るさは1/3となる。また、
図3に示す特性テーブルでは、被写体との距離が飛び飛びの数値(離散値)となっているが、スプライン補間等の適切な補間を実施することで、どのような距離でも明るさを求めることができる。
【0022】
本実施の形態では、トンネル内の避難退避所のように、被写体との距離が不連続に変化する場合に、センサ制御ボード104は、TOFセンサ101の距離情報と特性テーブルを利用して、白飛びおよび黒潰れしないように、カメラ照明ユニット100の自動露光制御を行う。
【0023】
図4は、第1の実施の形態にかかる撮影装置が有するセンサ制御ボードの機能構成の一例を示す図である。本実施の形態では、センサ制御ボード104は、
図4に示すように、露光制御部104aを有する。
【0024】
露光制御部104aは、TOFセンサ101により測距された距離情報が変化した場合に、当該距離情報および特性テーブルを利用して、カメラユニット群11に対する露光を制御する。これにより、トンネルの壁面等の構造物を適切な露光量で撮影することができる。すなわち、現在の撮影時の距離情報と、数フレーム後の撮影時の距離情報との間の非連続な変化を検知することが可能となり、現在の撮影時の距離情報と数フレーム後の撮影時の距離情報との間に非連続な変化があっても両者を適切な露光量で撮影することができる。その結果、避難退避所を有する鉄道等のトンネルを撮影するにあたり、1度の撮影で標準断面および避難退避所ともに、白飛びおよび黒つぶれが無い撮影データを取得することができる。本実施の形態では、露光制御部104aは、照明ユニット群12から照射される照明光の照度、およびカメラユニット群11の露光時間等を制御する。
【0025】
具体的には、避難退避場所のトンネルの壁面6と、避難退避場所以外の場所(通常の場所)のトンネルの壁面6と、の両方を適切な露光量で撮影するために、トンネルの壁面6までの距離情報を検知(測距)しながら、撮影を行うことができる。すなわち、トンネルの壁面6までの距離情報の変化を検知することで、通常の場所から避難退避場所、または避難退避場所から通常の場所へトンネルの壁面6が変化することを検知し、それぞれのトンネルの壁面6を適切な露光量で撮影できるように露光制御を切り替えることができる。
【0026】
さらに、非常駐車帯はトンネル周長方向に対して、非連続となっている部分はないが、避難退避所および避難坑では、標準断面に対して非連続に距離が変化する箇所である。そのため、標準断面用と避難退避所用で2回撮影しても、両方で撮影した画像の対象部を切り貼りして1枚の画像にするには、処理が煩雑になる。これに対して、本実施の形態では、露光制御部104aが、距離情報および特性テーブルに基づいて、カメラユニット群11の露光を制御することにより、非連続に距離情報が変化しても、適切な露光で撮影することが可能となる。
【0027】
また、露光制御部104aは、撮影領域の中で、距離情報が大きく異なる箇所(例えば、避難退避所)が存在する場合に、カメラユニット群11に対する露光を制御して、カメラユニット群11により撮影される画像の飽和(例えば、白飛びまたは黒つぶれ)を抑制する。これにより、標準断面と避難退避所の両方が1つのカメラユニットの撮影領域内に入っている場合でも、白飛びおよび黒つぶれすることなく撮影できるので、構造物のあらゆる箇所の損傷部を確認することができる。
【0028】
露光制御部104aは、TOFセンサ101により算出される距離情報に基づいて、照明ユニット群12による撮影領域の明るさの追従速度を切り替える。避難退避所への進入時および退出時に大きく露光条件が変わるが、一気にゲインおよび照明ユニット群12の明るさなどが変わると、その切り替わり部の画像が強いエッジとなり、画像の結合(例えば、パターンマッチングが誤る)および変状抽出(例えば、ひび割れだと間違える)に影響を与える。これに対して、露光制御部104aが、照明ユニット群12による撮影領域の明るさの追従速度を遅くする(例えば、滑らかに明るさを切り替える)ことにより、画像の結合および変状抽出等の副作用を低減することができる。
【0029】
一方、トンネルの出入り口等は明るさが大きく異なるため、照明ユニット群12による撮影領域の明るさの追従速度を上げる必要がある。露光制御部104aは、距離情報に基づいて、トンネルの出入り口なのか、避難退避所なのかを識別して、照明ユニット群12による撮影領域の明るさの追従速度を切り替えることが好ましい。
【0030】
図5は、鉄道のトンネル内の避難退避所の一例を説明するための図である。
図5(a)は、鉄道のトンネルおよび避難退避所を斜めから俯瞰した図である。
図5(b)は、鉄道のトンネルおよび避難退避所を中心にトンネルを上から見た図である。
【0031】
鉄道のトンネルの作られた時期、工法、サイズ等により避難退避所の形状、大きさ、設置間隔等は、バラバラであり、
図5に示す避難退避所はその一例である。鉄道の避難退避所は、道路のトンネルの非常駐車帯のように断面全体が異なるのではなく、トンネルの標準断面に対して、一部が穴のあいているような形状であることがある。これにより、下のカメラは、避難退避所と標準断面の両方が撮影範囲となるため、両方ともに飽和しない露光制御が必要となる。そこで、本実施の形態では、露光制御部104aは、TOFセンサ101により測距された距離情報が変化した場合に、当該距離情報および特性テーブルを利用して、カメラユニット群11に対する露光を制御する。
【0032】
図6は、避難退避所を撮影車両が通過した際のTOFセンサにより計測される距離の変化の一例を説明するための図である。
図6(a)は、撮影装置を搭載した車両5が避難退避所を通過する際の様子の一例を示す図である。
図6(b)は、TOFセンサ101による距離情報Lの計測結果の一例を示す図である。
図6(b)において、横軸は、車両5の進行方向の当該車両5の位置を示し、縦軸は、TOFセンサ101による距離情報Lの計測結果を示す。
【0033】
前述したように、TOFセンサ101は、車両5の進行方向において、カメラ照明ユニット100よりも前に取り付けられている必要がある。
図6(b)では説明しやすいように、TOFセンサ101により計測される距離情報は、1次元の情報としているが、2DLidarのようにトンネルの壁面6の円周方向全体を計測したり、3DLidarのようにトンネルの壁面6の円周方向全体でかつ、進行方向で±数十度程度計測したりするようにしてもよい。
図6(b)において、位置P1,P4の距離情報Lは、標準断面までの距離情報Lを表し、位置P2,P3の距離情報Lは、標準断面よりも遠い避難退避所までの距離情報Lを表している。特に、位置P2の距離情報Lは、TOFセンサ101が標準断面から避難退避所に進入した瞬間の距離情報Lであり、位置P3の距離情報Lは、避難退避所から標準断面に戻る瞬間の距離情報Lを表している。このように、TOFセンサ101により計測される距離情報Lは、トンネル内における車両5の走行位置によって変化する。そのため、本実施の形態では、露光制御部104aは、上述したように、当該距離情報Lおよび特性テーブルを利用して、カメラユニット群11に対する露光を制御する。
【0034】
図7は、第1の実施の形態にかかる撮影装置によるカメラおよび照明ユニットの自動露光制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0035】
車両5が標準断面の位置を走行している場合、露光制御部104aは、カメラ照明ユニット100を制御して、標準断面に対して自動露光制御を行い撮影する(ステップS701)。センサ制御ボード104は、カメラユニット群11の輝度値を検波する。そして、センサ制御ボード104は、その検波値と目標の輝度値の差分を埋めるために、ゲイン、シャッタースピード、照明の明るさ等を制御するフィードバック制御を行う。特にゲインを上げると、SNが劣化するため、センサ制御ボード104は、照明の明るさ、シャッタースピード、ゲインの優先順位で自動露光制御を行う。また、センサ制御ボード104は、カメラユニットが有する(1つ以上の)イメージセンサを複数の領域(以下、分割領域という)に分割し、その分割領域の輝度値を検波しても良い。
【0036】
TOFセンサ101により避難退避所が検出されかつカメラユニット群11では標準断面を撮影している場合、露光制御部104aは、避難退避所のコンクリートの壁面6の反射率が、当該避難退避所付近の標準断面のコンクリートの壁面6の反射率と同じであると仮定して、TOFセンサ101により測距される距離情報の増加(増大量)と
図3に示す特性テーブル情報を用いて、カメラユニット群11の明るさがどの程度低減するかを計算(予測)する(ステップS702)。
【0037】
例えば、避難退避所のために、TOFセンサ101により計測される距離情報が1000mmから1500mmに変化する場合、最大明るさで比較すると、最大明るさは120万ルクスから90万ルクスに減少する。そのため、避難退避所と標準断面が同じコンクリートの壁面6の反射率の場合は、単純に明るさが3/4になると計算できるため、避難退避所のコンクリートの壁面6を目標輝度にするには明るさを4/3倍する必要がある。ただし、トンネルの壁面6の円周方向におけるカメラユニット群11の撮影領域が標準断面と避難退避所の両方となっている場合は、露光制御部104aは、両方の明るさがダイナミックレンジ内に収まる露光条件を算出し、当該露光条件に従って自動露光制御を行う(ステップS702)。
【0038】
ここで、例えば、TOFセンサ101により計測される距離が1000mmと1500mmに変化する場合の自動露光制御について説明する。明るさがダイナミックレンジ内に収まるのはどの範囲の輝度値およびS/Nであるかは、事前に画像を確認する必要があるが、今回は、輝度値が30~230の範囲内であれば問題ないものとする。
【0039】
まず、露光制御部104aは、位置P1において、フィードバック制御を実施して、標準断面で狙いの輝度値:128となる、1000mmで平均の明るさ110万ルクスの時の露光条件を求める。次に避難退避所の距離:1500mmおよび最低明るさ25万ルクスでも、明るさをダイナミックレンジ内に収める必要がある。避難退避所と比較すると、避難退避所の明るさ3/11のため、輝度値はおおよそ29程度であるため、最低輝度値である30より下回っている。そのため、位置P1における露光条件から露光制御を行わないと、撮影した画像が黒つぶれとなってしまう。そこで、露光制御部104aは、最近傍である標準断面の最大明るさ:120万ルクスと、最遠方である避難退避所の最低明るさ:25万ルクスが輝度値:30~230に収まるように露光制御を行う。
【0040】
露光制御部104aは、120万ルクスと25万ルクスの平均値である72.5万ルクスが平均輝度値:128になるように、カメラユニット群11の露光を制御すれば、25万ルクスの箇所の輝度値が44、120万ルクスの箇所の輝度値が212とダイナミックレンジ内に収まるようになる。すなわち、当初、110万ルクスで平均輝度値:128になるように露光を制御していたため、約1.5倍程度の明るさにする。露光制御部104aは、この露光制御をTOFセンサ101が避難退避所を通過した時からカメラ照明ユニット100が避難退避所を撮影する間までに行う必要がある。
【0041】
基本は、画質優先で、照明の明るさ、シャッタースピード、ゲインの優先順位で明るさを調整する。しかし、例えば、照明ユニット群12の明るさ制御は、他に比べて時間がかかるため、車両の速度を車速移動距離計103で確認して、間に合わなそうであれば、優先順位を、シャッタースピード、ゲイン、照明ユニット群12の明るさと変える等の制御を行ってもよい。また、一気に、カメラユニット群110の露光条件を変えると、その前後のラインカメラ画像(カメラユニット群11により撮影された画像)の明るさが大きく変わってしまうため、滑らかに、カメラユニット群11の露光条件を変化させてもよい。これは一気に、カメラユニット群11の露光条件を変えると、ラインカメラ画像内のエッジ部分がひび割れと誤って検出されたり、複数のカメラ間のラインカメラ画像結合に悪影響を与えたりする可能性があるためである。
【0042】
例えば、ゲインを1倍から1.5倍に変える場合に、1ラインで1倍から1.5倍に変えるのではなく、500ライン程度で1.000倍、1.001倍、1.002倍、・・・1.498倍、1.499倍、1.500倍と変えるようにする。このように滑らかなゲインの追従を優先する場合は、車両の速度および分解能によっては、カメラ照明ユニット100の明るさではなく、シャッタースピードおよびゲインの優先順位を上げても良い。
【0043】
そして、本実施の形態では、カメラユニット群11の露光条件を設定した後は、標準断面に戻るまで露光条件を固定し、当該露光条件を設定する前の標準断面の露光条件はメモリ105に記憶しておくものとする(ステップS702)。
【0044】
次に、TOFセンサ101が避難退避所を検出し、かつカメラユニット群11が避難退避所を撮影している場合、TOFセンサ101が標準断面の距離を計測した瞬間に、露光制御部104aは、車速移動距離計103での移動量を計測開始する(ステップS703)。
【0045】
次に、カメラユニット群11が避難退避所を抜け、標準断面を撮影すると、露光制御部104aは、車速移動距離計103の計測値が、TOFセンサ101からカメラユニット群11間の設置距離に一致した瞬間に、メモリ105に保存された標準断面の露光条件に切り替えて、標準断面の自動露光制御を実施する(ステップS704)。計測誤差等で、避難退避所を撮影している際に標準断面の露光条件に戻ってしまうと、避難退避所が露光条件から外れてしまうため、少しマージンを設けたほうが良い。また、カメラユニット群11の露光条件を切り替える場合は、追従速度を遅くして滑らかに変化させてもよい。
【0046】
このように、第1の実施の形態にかかる撮影装置によれば、トンネルの壁面等の構造物を適切な露光量で撮影することができる。その結果、避難退避所を有する鉄道等のトンネルを撮影するにあたり、1度の撮影で標準断面および避難退避所ともに、白飛びおよび黒つぶれが無い撮影データを取得することができる。
【0047】
(第2の実施の形態)
本実施の形態は、分割領域の輝度値の測光結果に基づいて、カメラユニット群に対する露光を制御する例である。以下の説明では、第1の実施の形態と同様の構成については説明を省略する。
【0048】
図8は、第2の実施の形態にかかる撮影装置が有するセンサ制御ボードの機能構成の一例を示す図である。本実施の形態では、センサ制御ボード800は、
図8に示すように、露光制御部104a、および距離露光条件記憶部104bを有する。
【0049】
距離露光条件記憶部104bは、距離情報とカメラユニット群11の露光条件とを対応付けて記憶する。
【0050】
また、露光制御部104aは、分割領域の輝度値の測光結果に基づいて、カメラユニット群11に対する露光を制御することも可能である。距離情報および特性テーブルだけでは、避難退避所と標準断面のコンクリートの反射率の差および車両の移動速度等により、最適な露光制御が難しい場合がある。そのため、露光制御部104aが、分割領域の輝度値の測光結果を用いて、実際の明るさに対するフィードバック制御を行う。これにより、距離情報および特性テーブルだけでは、避難退避所と標準断面のコンクリートの反射率の差および車両の移動速度等により、最適な露光制御が難しい場合でも、最適な露光の制御を行うことができる。
【0051】
また、露光制御部104aは、距離情報が、距離露光条件記憶部104bに記憶されている距離情報と同じである場合には、距離情報と対応付けて記憶される露光条件を利用して、カメラユニット群11に対する露光を制御することも可能である。避難退避所は同じ形状のものがたくさん存在することが多い。そのため、一度、正確に撮影した結果を用いて、センサの誤差等に影響を受けない確実な露光制御が実施できる。
【0052】
図9は、第2の実施の形態にかかる撮影装置におけるカメラおよび照明ユニットの自動露光制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。以下の説明では、
図7に示す処理と同様の処理については説明を省略する。
【0053】
TOFセンサ101が避難退避所に進入し、ラインカメラ(カメラユニット群11)はまだ標準断面を撮影している場合、露光制御部104aは、TOFセンサ101の距離情報(測距情報)を基にメモリ105に記憶している避難退避所の露光条件があるか否かを判断する(ステップS901)。避難退避所の露光条件がメモリ105に記憶されている場合、露光制御部104aは、メモリ105に記憶している避難退避所の露光条件を呼び出して、呼び出した露光条件および分割測光の結果に基づいて、自動露光制御を続ける。ここで、分割測光は、分割領域毎に輝度値を測光することである。一方、避難退避所の露光条件がメモリ105に記憶されていない場合、露光制御部104aは、TOFセンサ101による計測された距離情報および特性テーブルを基に、避難退避所を含めた露光条件を算出する。そして、露光制御部104aは、算出した露光条件、および分割測光の結果に基づいて、自動露光制御を続ける。
【0054】
図7に示す自動露光制御では、避難退避所を含めた露光条件で露光を固定していたが、その場合は、測距誤差、照明の個体差、標準断面と避難退避所とのコンクリートの反射率の差等、あらゆる誤差でダイナミックレンジがギリギリの場合は対応が厳しくなってしまうことが考えられる。一方、本実施の形態では、露光制御部104aは、分割測光を行うことで、フィードバック制御を実施可能となり、あらゆる誤差でのダイナミックレンジがギリギリである場合における対応も可能となる。分割測光は、カメラユニット群11が有するイメージセンサを周長方向に複数の分割領域に分割し、その各分割領域の輝度値の平均輝度値を算出する。分割測光は、センサ制御ボード104の中でハードウェアとして実現しても良い。
【0055】
例えば、センサ(カメラユニット)の画素数が8192、センサの分割数が32とした場合、センサ制御ボード104は、256画素の平均値を32か所で算出することとなる。避難退避所に進入時は一番下のカメラの最下段の分割領域は必ず避難退避所であるため、露光制御部104aは、最上段の分割領域の輝度値が同じかどうかで、1つのカメラユニットの撮影領域内に避難退避所と標準断面が混在しているか否かを判断してもよい。また、露光制御部104aは、事前の図面情報と撮影装置の画角情報等で、1つのカメラユニットの撮影領域内に避難退避所と標準断面が混在しているか否かを判断してもよい。
【0056】
本実施の形態では、避難退避所と標準断面が混在している場合を考える。その場合は、露光制御部104aは、最下段の測光領域(分割領域)を避難退避所の輝度値、最上段の測光領域(分割領域)を標準断面の輝度値として、両者がダイナミックレンジに入るように、さらに、両者がダイナミックレンジに入っていたとしても、より余裕がある方向になるように、フィードバック制御を実施する。露光制御部104aは、より多くの測光領域を利用してもよい。
【0057】
次に、TOFセンサ101が避難退避所を検出、かつカメラユニット群11が避難退避所を撮影している場合、露光制御部104aは、避難退避所のTOFセンサ101の距離情報と避難退避所を検出した際の露光条件をメモリ105に記憶する(ステップS902)。これは次に同じサイズの避難退避所が現れた場合に、分割測光でフィードバック制御を実施した後の最適な露光条件を避難退避所の進入時から行えるためである。また、露光制御部104aは、分割測光によるフィードバック制御は続ける。
【0058】
次に、カメラユニット群11が避難退避所を抜け、標準断面を撮影した場合、露光制御部104aは、カメラユニット群11が避難退避所を抜けた瞬間に、分割測光の自動露光制御を止め、標準断面の露光条件を呼び出し、自動露光制御に切り替える(ステップS903)。また、別の実施方法としては、特に標準断面の露光条件を呼び出さなくても、分割測光ですでに全て標準断面に切り替わっているので、避難退避所から抜けた瞬間は最適な露光条件ではないが、ダイナミックレンジ内に収まる自動露光制御は可能である。
【0059】
このように、第2の実施の形態にかかる撮影装置によれば、距離情報および特性テーブルだけでは、避難退避所と標準断面のコンクリートの壁面6の反射率の差および車両5の移動速度等により、最適な露光制御が難しい場合でも、カメラユニット群11に対して最適な露光の制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0060】
1 撮影装置
5 車両
6 壁面
11 カメラユニット群
12 照明ユニット群
100 カメラ照明ユニット
101 TOFセンサ
102 IMU
103 車速移動距離計
104 センサ制御ボード
104a 露光制御部
104b 距離露光条件記憶部
105 メモリ
106 操作用PC
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開2010-239479号公報
【特許文献2】特開2020-198608号公報