(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135298
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】工作機械のスピンドルユニット及びそれを用いたシステム
(51)【国際特許分類】
B23B 19/02 20060101AFI20230921BHJP
B24B 41/04 20060101ALI20230921BHJP
B24B 45/00 20060101ALI20230921BHJP
B24B 49/16 20060101ALI20230921BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20230921BHJP
F16C 19/06 20060101ALI20230921BHJP
F16C 19/10 20060101ALI20230921BHJP
F16C 35/12 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
B23B19/02 A
B24B41/04
B24B45/00 Z
B24B49/16
B23Q17/00 A
F16C19/06
F16C19/10
F16C35/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040436
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100163533
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 義信
(74)【代理人】
【識別番号】100199842
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 祥平
(72)【発明者】
【氏名】津留 太良
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C045
3J701
【Fターム(参考)】
3C029EE02
3C034AA20
3C034BB02
3C034BB06
3C034BB75
3C034BB92
3C034CA16
3C034DD20
3C045FD03
3C045FD12
3J701AA02
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA54
3J701AA62
3J701AA82
3J701AA83
3J701BA77
3J701GA31
(57)【要約】 (修正有)
【課題】スピンドルユニットに掛かる加工応力をダイナミックに計測し、加工精度向上(品質・歩留まり向上)、異常検知、砥石や工具刃の使用寿命が向上してコスト低減等を実現できる工作機械のスピンドルユニット及びそれを用いたシステムを得る。
【解決手段】工作機械のスピンドルユニット1において、主軸の軸方向を長手方向として円周に複数配置された径方向永久磁石16と、主軸の軸と垂直方向に配置された軸方向永久磁石21-1、21-2と、径方向永久磁石16の変位を検出する径方向応力検知部Aと、軸方向永久磁石21-1、21-2の変位を検出する軸方向応力検知部Bと、径方向応力検知部A及び軸方向応力検知部Bの出力を無線で送信する無線ユニット22と、無線ユニット22への供給電源23と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に工具ホルダが取り付けられ、径方向がラジアル軸受で支持され、軸方向がスラスト軸受で支持され、他端部がモータの回転軸と結合された主軸を有する工作機械のスピンドルユニットにおいて、
前記主軸の前記軸方向を長手方向として円周に複数配置された径方向永久磁石と、
前記主軸の軸と垂直方向に配置された軸方向永久磁石と、
前記径方向永久磁石の変位を検出する径方向応力検知部と、
前記軸方向永久磁石の変位を検出する軸方向応力検知部と、
前記径方向応力検知部及び前記軸方向応力検知部の出力を無線で送信する無線ユニットと、
前記無線ユニットへの供給電源と、
を備えたことを特徴とする工作機械のスピンドルユニット。
【請求項2】
前記径方向応力検知部は、
前記径方向永久磁石の外周に半径方向に所定の隙間を隔てて、かつ前記径方向永久磁石と対向して設置された径方向電磁石と、
前記径方向電磁石に対向して設置された径方向ひずみセンサと、
を備え、前記径方向ひずみセンサは、前記径方向永久磁石と前記径方向電磁石との同じ極性同士による斥力を検知することを特徴とする請求項1に記載の工作機械のスピンドルユニット。
【請求項3】
前記径方向永久磁石の磁極は半径方向に着磁され、前記径方向電磁石は前記径方向永久磁石と対向して半径方向に通電され、前記径方向永久磁石と前記径方向電磁石とは同極同士が対向していることを特徴とする請求項2に記載の工作機械のスピンドルユニット。
【請求項4】
前記径方向永久磁石の磁極は円周方向に着磁され、前記径方向電磁石は前記径方向永久磁石と対向して半径方向に通電されていることを特徴とする請求項2に記載の工作機械のスピンドルユニット。
【請求項5】
前記軸方向応力検知部は、
前記軸方向永久磁石と前記軸方向に所定の隙間を隔てて、かつ面対向して設置された軸方向電磁石と、
前記軸方向電磁石に対向して設置された軸方向ひずみセンサと、
を備え、前記軸方向ひずみセンサは、前記軸方向永久磁石と前記軸方向電磁石との同じ極性同士による斥力を検知することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の工作機械のスピンドルユニット。
【請求項6】
前記軸方向応力検知部は、
前記軸方向永久磁石と前記軸方向に所定の隙間を隔てて、かつ面対向して設置された軸方向電磁石と、
前記軸方向永久磁石と前記軸方向電磁石との同じ極性同士による斥力を検知する圧電センサと、
を備えたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の工作機械のスピンドルユニット。
【請求項7】
前記主軸の前記先端部に差し込んで固定された先端永久磁石と、
前記主軸の前記他端部に差し込んで固定された他端永久磁石と、
前記先端永久磁石に対向する位置に半径方向に所定の間隙を隔てて、かつ円周方向に取り付けられた先端コイルと、
前記他端永久磁石に対向する位置に半径方向に所定の間隙を隔てて、かつ円周方向に取り付けられた他端コイルと、
を有し、前記主軸に掛かるねじれ応力を前記先端コイルと前記他端コイルに生じる誘導起電力による電圧の位相差で検知するねじれ応力検知部を備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の工作機械のスピンドルユニット。
【請求項8】
前記径方向応力検知部は、
前記径方向永久磁石の外周に半径方向に所定の隙間を隔てて、かつ前記径方向永久磁石と対向して設置された径方向コイル、を備え、前記径方向コイルに生じる誘導起電力による電圧により、前記径方向永久磁石の変位を検出することを特徴とする請求項1に記載の工作機械のスピンドルユニット。
【請求項9】
前記軸方向応力検知部は、
前記軸方向永久磁石と前記軸方向に所定の隙間を隔てて、かつ面対向して設置された軸方向コイルと、を備え、前記軸方向コイルに生じる誘導起電力による電圧により、前記軸方向永久磁石の変位を検出することを特徴とする請求項8に記載の工作機械のスピンドルユニット。
【請求項10】
先端部に工具ホルダが取り付けられ、径方向がラジアル軸受で支持され、軸方向がスラスト軸受で支持され、他端部がモータの回転軸と結合された主軸を有する工作機械のスピンドルユニットを用いたシステムであって、
前記スピンドルユニットは、
前記主軸の前記軸方向を長手方向として円周に複数配置された径方向永久磁石と、
前記主軸の軸と垂直方向に配置された軸方向永久磁石と、
前記径方向永久磁石の変位を検出する径方向応力検知部と、
前記軸方向永久磁石の変位を検出する軸方向応力検知部と、
前記径方向応力検知部及び前記軸方向応力検知部の出力を無線で送信する無線ユニットと、
前記無線ユニットへの供給電源と、
を備え、前記出力に基づいて加工条件をリアルタイムに前記工作機械の加工制御へフィードバック制御することを特徴とする工作機械のスピンドルユニットを用いたシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削等の加工中にスピンドルユニットに掛かる応力を測定し、フィードバック制御可能な工作機械のスピンドルユニット及びそれを用いたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
研削等の加工条件は、工具の回転数や、送り速度によって決められている。しかしながら、工作機械は、切削加工における切り込み量、加工応力の変化等によって振動が発生したり、砥石や工具が劣化したりして加工精度(品質・歩留まり)を悪化することがある。その対策として、切削荷重を検知する技術が知られているが、回転するタイプの工作機械は、工具や回転軸に作用する荷重を検出することが困難であった。そこで、従来は、加工中のびびり振動等の振動抑制を目的して、スピンドルユニットの主軸やワーク回転モータの負荷(電流値等)のモニタリングを行ったり、工具保持装置部に防振機能が備えられていたりしていた。
【0003】
特許文献1は、スピンドルユニットの主軸先端部に軸受型センサを配設し、工作機械の主軸に掛かる荷重を検出することを記載している。この軸受型センサは、ハウジングと主軸間に転がり軸受を配置し、外輪外周に貼付したひずみゲージによって、軸受の転動体がひずみゲージの位置を通過する度に発生するひずみを検出して主軸に加わる荷重の大きさを検出している。
【0004】
また、特許文献2は、加工精度の向上のため、スピンドルユニットの主軸のアキシャル荷重を新たなパラメータとして考慮することを記載している。アキシャル荷重は、一対のアンギュラ玉軸受の外周面に、被検出面の特性が円周方向に交互に変化するエンコーダ、被検出面に対向配置されるセンサを設けて測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-159260号公報
【特許文献2】特開2014-238415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術において、実際に工具やワークに掛かっている力の大きさや方向を知ることは、工具回転軸やワーク回転軸等のモータの負荷(電流値等)からでは困難であり、正確で効果的な加工条件をフィードバック制御することが出来なかった。また、特許文献1に記載のものは、精度よく荷重を検出することが困難であった。さらに、スピンドルユニットの軸長は、長くなるばかりでなく、センサ設置のための専用スペースを必要としていた。
【0007】
特許文献2に記載のものは、アキシャル荷重のみ測定するものであり、工具やワークに掛かっている力の大きさや方向をダイナミックに知ることは出来ず、正確で効果的な加工条件をフィードバック制御することが困難であった。
【0008】
本発明の目的は、上記従来技術の課題を解決し、スピンドルユニットに掛かる加工応力を状況に応じて、柔軟性を持って動的に、つまり、ダイナミックに計測する。そして、逐次、加工条件をフィードバック制御(リアルタイム制御)し、加工精度向上(品質・歩留まり向上)、異常検知、砥石や工具刃の使用寿命が向上してコスト低減等を実現できる工作機械のスピンドルユニット及びそれを用いたシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、先端部に工具ホルダが取り付けられ、径方向がラジアル軸受で支持され、軸方向がスラスト軸受で支持され、他端部がモータの回転軸と結合された主軸を有する工作機械のスピンドルユニットにおいて、前記主軸の前記軸方向を長手方向として円周に複数配置された径方向永久磁石と、前記主軸の軸と垂直方向に配置された軸方向永久磁石と、前記径方向永久磁石の変位を検出する径方向応力検知部と、前記軸方向永久磁石の変位を検出する軸方向応力検知部と、前記径方向応力検知部及び前記軸方向応力検知部の出力を無線で送信する無線ユニットと、前記無線ユニットへの供給電源と、を備えたものである。
【0010】
また、上記の工作機械のスピンドルユニットにおいて、前記径方向応力検知部は、前記径方向永久磁石の外周に半径方向に所定の隙間を隔てて、かつ前記径方向永久磁石と対向して設置された径方向電磁石と、前記径方向電磁石に対向して設置された径方向ひずみセンサと、を備え、前記径方向ひずみセンサは、前記径方向永久磁石と前記径方向電磁石との同じ極性同士による斥力を検知することが好ましい。
【0011】
さらに、上記の工作機械のスピンドルユニットにおいて、前記径方向永久磁石の磁極は半径方向に着磁され、前記径方向電磁石は前記径方向永久磁石と対向して半径方向に通電され、前記径方向永久磁石と前記径方向電磁石とは同極同士が対向していることが好ましい。
【0012】
さらに、上記の工作機械のスピンドルユニットにおいて、前記径方向永久磁石の磁極は円周方向に着磁され、前記径方向電磁石は前記径方向永久磁石と対向して半径方向に通電されていることが好ましい。
【0013】
さらに、上記の工作機械のスピンドルユニットにおいて、前記軸方向応力検知部は、前記軸方向永久磁石と前記軸方向に所定の隙間を隔てて、かつ面対向して設置された軸方向電磁石と、前記軸方向電磁石に対向して設置された軸方向ひずみセンサと、を備え、前記軸方向ひずみセンサは、前記軸方向永久磁石と前記軸方向電磁石との同じ極性同士による斥力を検知することが好ましい。
【0014】
さらに、上記の工作機械のスピンドルユニットにおいて、前記軸方向応力検知部は、前記軸方向永久磁石と前記軸方向に所定の隙間を隔てて、かつ面対向して設置された軸方向電磁石と、前記軸方向永久磁石と前記軸方向電磁石との同じ極性同士による斥力を検知する圧電センサと、を備えたことが好ましい。
【0015】
さらに、上記の工作機械のスピンドルユニットにおいて、前記主軸の前記先端部に差し込んで固定された先端永久磁石と、前記主軸の前記他端部に差し込んで固定された他端永久磁石と、前記先端永久磁石に対向する位置に半径方向に所定の間隙を隔てて、かつ円周方向に取り付けられた先端コイルと、前記他端永久磁石に対向する位置に半径方向に所定の間隙を隔てて、かつ円周方向に取り付けられた他端コイルと、を有し、前記主軸に掛かるねじれ応力を前記先端コイルと前記他端コイルに生じる誘導起電力による電圧の位相差で検知するねじれ応力検知部を備えたことが好ましい。
【0016】
さらに、上記の工作機械のスピンドルユニットにおいて、前記径方向応力検知部は、前記径方向永久磁石の外周に半径方向に所定の隙間を隔てて、かつ前記径方向永久磁石と対向して設置された径方向コイル、を備え、前記径方向コイルに生じる誘導起電力による電圧により、前記径方向永久磁石の変位を検出することが好ましい。
【0017】
さらに、上記の工作機械のスピンドルユニットにおいて、前記軸方向応力検知部は、前記軸方向永久磁石と前記軸方向に所定の隙間を隔てて、かつ面対向して設置された軸方向コイルと、を備え、前記軸方向コイルに生じる誘導起電力による電圧により、前記軸方向永久磁石の変位を検出することが好ましい。
【0018】
さらに、本発明は、先端部に工具ホルダが取り付けられ、径方向がラジアル軸受で支持され、軸方向がスラスト軸受で支持され、他端部がモータの回転軸と結合された主軸を有する工作機械のスピンドルユニットを用いたシステムであって、前記スピンドルユニットは、前記主軸の軸方向を長手方向として円周に複数配置された径方向永久磁石と、前記主軸の軸と垂直方向に配置された軸方向永久磁石と、前記径方向永久磁石の変位を検出する径方向応力検知部と、前記軸方向永久磁石の変位を検出する軸方向応力検知部と、前記径方向の応力検知部及び前記軸方向応力検知部の出力を無線で送信する無線ユニットと、前記無線ユニットへの供給電源と、を備え、前記出力に基づいて加工条件をリアルタイムに前記工作機械の加工制御へフィードバック制御するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スピンドルユニットの主軸の軸方向を長手方向として円周に複数配置された径方向永久磁石と、主軸の軸と垂直方向に配置された軸方向永久磁石と、径方向永久磁石の変位を検出する径方向応力検知部と、軸方向永久磁石の変位を検出する軸方向応力検知部とを備えるので、加工応力をダイナミックに検出できる。そして、その出力に基づいて加工条件をリアルタイムに工作機械の加工制御へフィードバック制御できる。したがって、加工精度向上(品質・歩留まり向上)、異常検知、砥石や工具刃の使用寿命を向上してコスト低減等を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態によるシステム構成を示す概要図
【
図2】一実施形態による工作機械のスピンドルユニットの構成を示す断面図
【
図6】他の実施形態による径方向応力検知部の説明図
【
図7】一実施形態による軸方向応力検知部を示す斜視図
【
図8】
図2で示した実施形態に対してねじれ応力検知部を付加した図
【
図10】
図2で示した一実施形態をコイル検出型とした他の実施形態を示すスピンドルユニットの構成を示す断面図
【
図12】
図11における径方向応力検知部におけるX方向の誘導起電力検出回路
【
図14】
図10で示した他の実施形態の軸方向応力検知部における誘導起電力検出回路
【
図15】
図13で示した軸方向永久磁石側と軸方向永久磁石側とを合わせた誘導起電力検出回路
【
図16】
図15で示した実施形態に対して結線と軸方向コイル、軸方向コイルの巻く向きを逆に変えた誘導起電力検出回路
【
図17】
図16示した実施形態に対して軸方向永久磁石42-1、42-2を重ねた誘導起電力検出回路
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施形態によるシステム構成を示す概要図、
図2は、一実施形態による工作機械のスピンドルユニット1の構成を示す断面図である。システム構成は、主にスピンドルユニット1と制御部2とで構成される。スピンドルユニット1は、主軸10の先端部(
図2で左端部)がハウジング11から所定長さ突出し、先端に工具ホルダ12が取り付けられている。主軸10は、ラジアル軸受13、14で適切な予圧を持って中心線に対し垂直な径方向に掛かる荷重が支持されている。
【0022】
主軸10の軸方向に掛かる荷重は、スラスト軸受15で支持されている。主軸10の他端部(
図2で右端部)はモータ側であり、高速回転するモータの回転軸(図示せず)と結合されている。なお、ラジアル軸受13、14、スラスト軸受15は、流体軸受、エアベアリング等を用いても良い。
【0023】
図2のA部は、xy方向における径方向応力検知部、B部はZ方向における軸方向応力検知部であり、
図3はA部の断面図、
図4はB部の断面図である。A部において、主軸10の外周は、径方向永久磁石16が複数(
図3では4個)、軸方向を長手方向として円周に等間隔で配置されている。ハウジング11に取り付けられた円環リング11-1は、径方向永久磁石16の外周の周囲に半径方向に所定の隙間を隔てて、かつ径方向永久磁石16と対向して径方向電磁石17が複数(
図3では4個)設置されている。
【0024】
径方向ひずみセンサ18は、円環リング11-1の径方向電磁石17の外周に面した部分に取り付けられている。なお、円環リング11-1はハウジング11の一部として一体化しても良い。また、径方向ひずみセンサ18は、薄い電気絶縁物のベースの上に格子上の抵抗線又はフォトエッチング加工した抵抗箔が形成された径方向ひずみセンサ、又は圧電効果を利用したピエゾ素子による圧電センサ等を用いる。
【0025】
図3は、径方向応力検知部の径方向永久磁石16と径方向電磁石17との配置を示している。径方向永久磁石16の磁極は、
図3では中心から半径方向に向かってSNと着磁されている。径方向電磁石17は、円環リング11-1に取り付けられ、径方向永久磁石16と対向して中心から半径方向に向かってNSとなるように通電されている。径方向ひずみセンサ18は、径方向電磁石17の取り付けられた位置で、その外周の円環リング11-1に接着して設置されている。
【0026】
なお、径方向ひずみセンサ18は、径方向永久磁石16と径方向電磁石17との同じ極性同士による斥力、つまり反発力による円環リング11-1、あるいは円環リング11-1をハウジング11と一体化した場合は、円環リング11-1に代わるハウジング11の一部に加わる応力を検知すれば良い。そして、磁極は反対、つまり
図3でNSをSNとして同極同士を対向させれば良い。また、径方向電磁石17は永久磁石と異なり、磁力を調整可能なので、磁力が強すぎて主軸10の回転を阻害しないように調整することができる。
【0027】
図4は、z方向の応力を検知する軸方向永久磁石21-2と軸方向電磁石19-2との配置を示している。B部において、主軸10に、Z方向用の円環状の軸方向永久磁石21-2が軸と垂直方向に配置されている。軸方向電磁石19-2はそれぞれ、軸方向永久磁石21-2と面対向して複数(
図4では4個)設置されている。軸方向応力検知部である軸方向ひずみセンサ20-2は、軸方向電磁石19-2のそれぞれハウジング11に取り付けられた円環リング11-2のつば状部の外周に軸方向電磁石19-2と対向して接着して設置されている。なお、上記は、軸方向永久磁石21-1と軸方向電磁石19-1との関係においても同様である。
【0028】
なお、軸方向電磁石19-2の取り付けられる部分は、
図2では円環リング11-2と一体化されている。つまり、円環リング11-2をハウジング11の一部とした場合は、ハウジング11につば状部を設ければ良い。
【0029】
無線ユニット22は、xy方向における径方向応力検知部の径方向ひずみセンサ18及び軸方向応力検知部である軸方向ひずみセンサ20-1、20-2の出力を無線等で送信する。無線ユニット22及び無線ユニット22への供給電源23は、主軸10の他端(
図2で右端部)に設けられている。制御部2は、応力計算部2-2、データ出力部(表示部)2-3、制御用電源2-1を有している。
【0030】
図5は、径方向応力検知部の説明図である。
図5(a)は工具ホルダ12に取り付けられた工具24に矢印のような力が加わったことを示し、
図5(b)は、その時、主軸10が偏位した様子を示している。主軸10は、応力が掛かると変位し、それに取り付けられた径方向永久磁石16も
図5(b)に示す如く変位する。そして、変位がない状態でバランスしていた径方向永久磁石16と17との斥力は、変化して円環リング11-1に応力が発生し、径方向ひずみセンサ18によって検知される。
【0031】
径方向ひずみセンサ18による検知は、ブリッジ回路の二辺にひずみゲージが、他の二辺に固定抵抗が接続される2ゲージ法でxy方向と図示された軸方向応力に対応した出力電圧を得る。加工中の主軸10に掛かる応力の計測は、予め出力電圧と応力の関係を校正して置けば良い。径方向ひずみセンサ18を接着する母材となる円環リング11-1の材質は、熱の影響と応力対ひずみ特性を考慮してジュラルミンを選定することが好ましい。
【0032】
また、径方向ひずみセンサ18の金属抵抗体との線膨張係数とハウジング11との線膨張係数の差を金属抵抗体の温度抵抗係数で相殺するようにした自己温度補償型の径方向ひずみセンサ18とすることも良い。さらに、熱によるドリフト対策として積極的な排熱が必要な場合は、ペルチェ素子での冷却、水冷ユニット(銅管)設置等の対策も良く、自己温度補償型の径方向ひずみセンサ18はブリッジ回路の構成でキャンセルできる。
【0033】
図6は、他の実施形態による径方向応力検知部の説明図であり、応力を検知するA部の径方向永久磁石16と径方向電磁石17との配置を示している。径方向永久磁石16の磁極は、
図6では円周方向、反時計回りにSNと着磁されている。径方向電磁石17は、径方向永久磁石16と対向して中心から半径方向に向かってNSとなる磁束Bを生じるように通電されている。
【0034】
径方向ひずみセンサ18は、径方向電磁石17の取り付けられた位置で、その外周のハウジング11に接着して設置されている。径方向永久磁石16と径方向電磁石17との斥力は、
図3と同様に生じるので、径方向ひずみセンサ18は、斥力によるハウジング11に加わる応力を検知すれば良い。
【0035】
図7(a)は、z方向における軸方向応力検知部の軸方向永久磁石21-1側を示す斜視図である。軸方向電磁石19-1は軸方向永久磁石21-1と面対向して複数(図では4個)で円周方向に等分割して設置されている。軸方向ひずみセンサ20-1は、円環リング11-2の外周に、軸方向であるz方向に抵抗値が変化するように接着されている。軸方向永久磁石21-2側は同様である。軸方向電磁石19-1の磁束Bの向きが矢印のようにz方向の場合は、軸方向電磁石19-1と軸方向永久磁石21-1との間で斥力が生じる。
【0036】
主軸10は、z方向に応力が掛かると変位し、斥力が変化して円環リング11-2の応力が軸方向ひずみセンサ20-1によって検知される。軸方向ひずみセンサ20-1による検知は、ブリッジ回路の一辺にひずみゲージが、他の三辺に固定抵抗が接続される1ゲージ3線法でz方向の応力に対応した出力電圧を得る。
【0037】
図7(b)は、軸方向応力検知部の軸方向ひずみセンサ20-1を圧電センサ20'-1に代えた実施形態を示す。圧電センサ20'-1は、図で上側の構造体となる円環リング11-2と軸方向永久磁石21-1との間に挟まれる。他は
図7(a)と同様であり、軸方向永久磁石21-1と軸方向電磁石19-1との同じ極性同士による斥力は、圧電センサ20'-1による圧電効果、つまり圧力に応じて生じる電圧によって検知される。
【0038】
図8は、
図2で示した実施形態に対して主軸10のねじれ応力検知部を付加した図である。
図8(a)は、スピンドルユニット1の構成を示す断面図であり、
図2と同様の部分は、符号及び説明を省略する。先端永久磁石30は円柱状であり、主軸10の工具ホルダ12部側の先端に差し込んで固定されている。誘導起電力を検出する先端コイル31は、ハウジング11の先端永久磁石30に対向する位置に半径方向に所定の間隙を隔てて、かつ円周方向に2箇所取り付けられている。
図8(b)は、工具ホルダ12部の斜視図を示している。
【0039】
他端永久磁石32は、円柱状であり、主軸10の他端(
図8で右端部)のモータ側に差し込んで固定されている。誘導起電力を検出する他端コイル33は、ハウジング11の他端永久磁石32に対向する位置に半径方向に所定の間隙を隔てて、かつ円周方向に2箇所取り付けられている。
図8(c)は、取り付け部の斜視図を示している。
【0040】
図9は、
図8で示した実施形態の誘導起電力検出回路を示している。先端コイル31、同様に他端コイル33に矢印で示すように電流を流せば、先端永久磁石30、同様に他端永久磁石32の回転でレンツの法則により誘電起電力が発生する。したがって、主軸10に掛かるねじれ応力は、先端コイル31と他端コイル33に生じる誘導起電力による電圧の位相差を検出することで検知する。
【0041】
図10は、
図2で示した実施形態がひずみ検出型であるのに対してコイル検出型とした他の実施形態を示すスピンドルユニット1の構成を示す断面図である。
図10(a)は、
図8に対してA部のxy方向の径方向応力検知部、B部のZ方向における軸方向応力検知部が異なるので、同様の部分は符号及び説明を省略する。
図10(b)は、径方向応力検知部の斜視図を示している。ただし、
図10(b)は、径方向永久磁石40を省略して簡易的に図示しており、
図2の径方向永久磁石16と同様で良い。
【0042】
図11は、A部の断面図であり、径方向永久磁石40に対する径方向コイル41-1の配置を示している。径方向永久磁石40は円柱状であり、主軸10の径方向に差し込んで固定されている。A部において、主軸10の外周は、径方向永久磁石40が複数(
図11では4個)、軸方向を長手方向として円周方向に等間隔で配置されている。径方向永久磁石40の磁極は、中心から半径方向に向かってSN又はNSと着磁されている。ハウジング11に取り付けられた円環リング11-1は、径方向永久磁石40の外周の周囲に半径方向に所定の隙間を隔てて、かつ径方向永久磁石40と対向して径方向コイル41-1、41-2、41-3、41-4が複数(
図11では4個)設置されている。
【0043】
誘導起電力を検出する径方向コイル41-1、41-2、41-3、41-4は、ハウジング11に取り付けられた円環リング11-1の径方向永久磁石40に対向する位置に半径方向に所定の間隙を隔てて、かつ円周方向に4箇所取り付けられる。また、径方向コイル41-1、41-2、41-3、41-4は、y1、y2、x1、x2と符号されているように、180°の対向ペアとなっている。径方向コイル41-1、41-2はY方向の応力を検知し、径方向コイル41-3、41-4はX方向の応力を検知する。
【0044】
図12は、
図11における径方向応力検知部におけるX方向の誘導起電力検出回路を示している。径方向コイル41-1側のX1回路は、矢印Qで示すように電流を流せば、径方向永久磁石40の回転で誘電起電力による電圧X1が生じる。なお、径方向コイル41-1、41-2を巻く向きは、X1回路、及び、X2回路の双方でで同じである。径方向コイル41-2側のX2回路も同様にX2の電圧を生じ、両者の差を検出すればx方向の応力を検知することができる。また、径方向コイル41-1、41-2を巻く向きは、
図12では反時計回りに図示しているが、時計回りとしても同様である。また、y方向の応力検知は同様であり、電圧Y1とY2の差によりy方向の応力を検知することができる。
【0045】
図13(a)は、
図10のB部のZ方向における軸方向応力検知部の斜視図を示している。
図13(b)は軸方向永久磁石42-1、42-2の着磁例を示している。B部において、主軸10にZ方向用の円環状の軸方向永久磁石42-1、42-2が2箇所、軸と垂直方向に配置されている。軸方向コイル43-1、43-2、43-3、43-4は、それぞれ軸方向永久磁石42-1と面対向して複数(
図13では4個)ハウジング11に取り付けられた円環リング11-2のつば状部に設置されている。
【0046】
軸方向コイル43-5、43-6、43-7、43-8は、同様にそれぞれ軸方向永久磁石42-2と面対向して複数(
図13では4個)円環リング11-2に設置されている。軸方向永久磁石42-1、42-2は、
図13(b)に示すように、円周方向に等分割、例えば2分割してNS、又は4分割してNS交互に着磁されている。
【0047】
図14は、軸方向応力検知部における誘導起電力検出回路(軸方向永久磁石42-1側)を示している。
図14(a)は無加工における空回転時、
図14(b)は加工を行っている応力負荷時である。
図14(a)はX方向の誘導起電力検出回路であり、軸方向コイル43-1と軸方向コイル43-2とがそれぞれZ
-X1回路、Z
-X2回路として交流の誘導起電力が発生して電圧が検知される。軸方向永久磁石42-1は回転することにより、S→N→Sと軸方向コイル43-1、43-2を周期的に通過する。交流の周期は、加工時に加工応力が主軸10に掛かると変化する。
【0048】
主軸10は、加工時に加工応力が掛かると、変位して軸方向永久磁石42-1が傾く。これにより、軸方向コイル43-1、43-2を貫く磁束密度は変化し、この変化を打ち消す向きに誘導起電力が発生する。
図14(b)でZ
-X2回路は、S極が近づくので反対向きに磁束を増加させる向きに誘導起電力が発生する。
【0049】
逆に、Z
-X1回路は、N極が離れるのでこの向きに磁束を増加させようと誘導起電力が発生する。したがって、例えば、Z
-X1回路の電圧とZ
-X2回路の電圧の差により、X方向の傾きを判別は、
図14(a)の空回転時と
図14(b)の応力負荷時との電圧の差を検知すれば良い。Y方向は、軸方向コイル43-3、43-4とをそれぞれZ
-Y1回路、Z
-Y2回路とすれば同様である。
【0050】
図15は、
図13で示した軸方向永久磁石42-1側と軸方向永久磁石42-2側とを合わせた誘導起電力検出回路を示している。
図15(a)は無加工における空回転時、
図15(b)は加工を行っている応力負荷時である。
図15(a)(b)はX方向の誘導起電力検出回路であり、軸方向コイル43-1と軸方向コイル43-2とがそれぞれZup
-X1回路及びZup
-X2回路、軸方向コイル43-5と軸方向コイル43-6とがそれぞれZdn
-X1回路及びZdn
-X2回路として交流の誘導起電力が発生し、電圧が検知される。
【0051】
図15による交流の誘導起電力による電圧は、
図14で説明した場合と同様であるが、Zup
-X1回路とZdn
-X1回路とでそれぞれ2倍の出力が得られる。したがって、ノイズは等価的に低減したことになる。Y方向は、軸方向コイル43-3、43-4とをそれぞれZup
-Y1回路、Zup
-Y2回路、軸方向コイル43-6、43-7とをそれぞれZdn
-Y1回路、Zdn
-Y2回路とすれば同様である。
【0052】
図16は、
図15で示した実施形態に対して結線と軸方向コイル43-5、軸方向コイル43-6の巻く向きを逆に変えた誘導起電力検出回路を示している。
図16(a)は無加工における空回転時、
図16(b)は加工を行っている応力負荷時である。
図16(a)(b)はX方向の誘導起電力検出回路であり、軸方向コイル43-1と軸方向コイル43-5とを結線してZ
-X1回路、軸方向コイル43-2、軸方向コイル43-6とを結線してZ
-X2回路としている。
【0053】
また、軸方向コイル43-1と軸方向コイル43-5との巻く向きは一方を時計回りとしたら他方を反時計方向としている。軸方向コイル43-2と軸方向コイル43-6とについても同様である。
図16による交流の誘導起電力による電圧は、
図15で説明した場合と同様であるが、Z
-X1回路とZ
-X2回路とでそれぞれ2倍の出力が得られる。Y方向は、軸方向コイル43-3、43-7とを結線してそれぞれZ
-Y1回路、軸方向コイル43-4、43-8とを結線してZ
-Y2回路とすれば同様である。
【0054】
図17は、
図16示した実施形態に対して軸方向永久磁石42-1、42-2を重ねた誘導起電力検出回路を示している。
図17(a)は無加工における空回転時、
図17(b)は加工を行っている応力負荷時である。軸方向永久磁石42-1は、
図13(b)で示した同様に円周方向に等分割、例えば2分割してNS、又は4分割してNS交互に着磁されている。軸方向永久磁石42-2は、軸方向永久磁石42-1のNSに対してSNとなるように着磁されている。NSは、逆になっても良い。
【0055】
図17(a)(b)はX方向の誘導起電力検出回路であり、軸方向コイル43-1と軸方向コイル43-5とを結線してZ
-X1回路、軸方向コイル43-2、軸方向コイル43-6とを結線してZ
-X2回路としている。
【0056】
また、軸方向コイル43-1と軸方向コイル43-5との巻く向きは一方を時計回りとしたら他方を反時計方向としている。軸方向コイル43-2と軸方向コイル43-6とについても同様である。
図17による交流の誘導起電力による電圧は、
図16で説明した場合と同様であるが、Z
-X1回路とZ
-X2回路とでそれぞれ2倍の出力が得られる。
【0057】
以上説明した実施形態は、径方向及び軸方向応力検知部をひずみ検出型あるいはコイル検出型のいずれにした場合であっても、各センサ(ひずみセンサ、圧電センサ、コイル)を主軸10の円周方向に配置しているので、応力の方向(力の方向)も3次元で検出できる。また、各センサからの出力を周期的に捉えるので主軸10の回転方向の力及び回転むら等も分析が可能となり、効果的な工作機械の加工制御に適用することができる。
【0058】
上記で説明した各実施形態によれば、径方向応力検知部及び軸方向応力検知部の出力に基づいて加工条件をリアルタイムに工作機械の加工制御へフィードバック制御できるスピンドルユニット1を用いたシステムを構築できる。したがって、このシステムによれば、工作機械は、加工条件として工具24の回転数や、送り速度、切削加工における切り込み量、等が最適に制御される。
【0059】
それにより、システムによる加工は、加工精度向上(品質・歩留まり向上)、異常検知、砥石や工具刃の使用寿命の向上、コスト低減が可能となる。なお、誘導起電力を検出するコイル検出型は、熱による径方向、圧電センサ20'-1のドリフト、主軸10とラジアル軸受13、14、スラスト軸受15の変位による影響に対しては優位である。
【符号の説明】
【0060】
1…スピンドルユニット
2…制御部
2-1…制御用電源
2-2…応力計算部
2-3…データ出力部
10…主軸
11…ハウジング
11-1、11-2…円環リング
12…工具ホルダ
13、14…ラジアル軸受
15…スラスト軸受
16、40…径方向永久磁石
17…径方向電磁石
18…径方向ひずみセンサ
19-1、19-2…軸方向電磁石
20-1…軸方向ひずみセンサ
20'-1…圧電センサ
21-1、21-2、42-1、42-2…軸方向永久磁石
22…無線ユニット
23…供給電源
24…工具
30…先端永久磁石
31…先端コイル
32…他端永久磁石
33…他端コイル
41-1、41-2、41-3、41-4…径方向コイル
43-1、43-2、43-3、43-4、43-5、43-6、43-7、43-8…軸方向コイル