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特開2023-135542燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システム、発電設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135542
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システム、発電設備
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/48 20060101AFI20230921BHJP
   C01C 1/04 20060101ALI20230921BHJP
   F23J 7/00 20060101ALI20230921BHJP
   F23G 7/06 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
C01B21/48 ZAB
C01C1/04
F23C99/00 317
F23G7/06 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040809
(22)【出願日】2022-03-15
(71)【出願人】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】秋保 広幸
(72)【発明者】
【氏名】池田 敦
(72)【発明者】
【氏名】岳田 彩花
(72)【発明者】
【氏名】野田 直希
(72)【発明者】
【氏名】伊崎 慶之
【テーマコード(参考)】
3K065
3K078
【Fターム(参考)】
3K065TA01
3K065TB04
3K065TC01
3K065TC08
3K065TC10
3K065TF08
3K065TL01
3K078AA06
3K078BA24
(57)【要約】
【課題】エネルギーを大幅に低減して反応性窒素を有効に利用(再利用)する。
【解決手段】NOの排出を伴う燃焼手段1と、燃焼手段1で排出されたNOを水溶性のNOに酸化する酸化手段2と、酸化されたNOを溶解、酸化してNO にする溶解・酸化手段3と、溶解、酸化されたNO を硝酸塩に変換して回収する第1変換手段4と、溶解、酸化されたNO を還元してNH にすると共に、還元されたNH をNHやアンモニウム塩に変換して回収する還元手段5、及び、NH変換手段6とを備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
NOの排出を伴う燃焼手段と、
前記燃焼手段で排出されたNOを水溶性のNOに酸化する酸化手段と、
前記酸化手段で酸化されたNOを溶解、酸化してNO にする溶解・酸化手段と、
前記溶解・酸化手段で溶解、酸化されたNO を硝酸塩に変換して回収する第1変換手段とを備えた
ことを特徴とする燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システム。
【請求項2】
NOの排出を伴う燃焼手段と、
前記燃焼手段で排出されたNOを水溶性のNOに酸化する酸化手段と、
前記酸化手段で酸化されたNOを溶解、酸化してNO にする溶解・酸化手段と、
前記溶解・酸化手段で溶解、酸化されたNO を、NHもしくはアンモニウム塩、または、NH及びアンモニウム塩に変換して回収する第2変換手段とを備えた
ことを特徴とする燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システム。
【請求項3】
NOの排出を伴う燃焼手段と、
前記燃焼手段で排出されたNOを水溶性のNOに酸化する酸化手段と、
前記酸化手段で酸化されたNOを溶解、酸化してNO にする溶解・酸化手段と、
前記溶解・酸化手段で溶解、酸化されたNO を硝酸塩に変換して回収する第1変換手段と、
前記溶解・酸化手段で溶解、酸化されたNO を、NHもしくはアンモニウム塩、または、NH及びアンモニウム塩に変換して回収する第2変換手段とを備えた
ことを特徴とする燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システム。
【請求項4】
請求項2もしくは請求項3に記載の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムにおいて、
前記第2変換手段は、
前記溶解・酸化手段で溶解、酸化されたNO を還元してNH にすると共に、還元されたNH をNHもしくはアンモニウム塩、または、NH及びアンモニウム塩に変換して回収する
ことを特徴とする燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システム。
【請求項5】
請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムにおいて、
前記第2変換手段で変換されたNHが、前記燃焼手段の燃料とされる
ことを特徴とする燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システム。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムにおいて、
前記燃焼手段は、燃料が燃焼されることで高圧流体を得るものである
ことを特徴とする燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システム。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムにおいて、
前記燃焼手段は、燃料が燃焼されることで動力を得る機関である
ことを特徴とする燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システム。
【請求項8】
NOの排出を伴う燃焼手段と、
前記燃焼手段の燃焼で得られた高圧流体を膨張して発電動力を得る膨張タービンと、
発電動力を得た後の排ガスを処理する排ガス処理手段とを備え、
前記排ガス処理手段は、
排ガス中のNOを水溶性のNOに酸化する酸化手段と、
前記酸化手段で酸化されたNOを溶解、酸化してNO にする溶解・酸化手段と、
前記溶解・酸化手段で溶解、酸化されたNO を硝酸塩に変換し硝酸塩を回収する第1変換手段とを有する
ことを特徴とする発電設備。
【請求項9】
NOの排出を伴う燃焼手段と、
前記燃焼手段の燃焼で得られた高圧流体を膨張して発電動力を得る膨張タービンと、
発電動力を得た後の排ガスを処理する排ガス処理手段とを備え、
前記排ガス処理手段は、
排ガス中のNOを水溶性のNOに酸化する酸化手段と、
前記酸化手段で酸化されたNOを溶解、酸化してNO にする溶解・酸化手段と、
前記溶解・酸化手段で溶解、酸化されたNO をNHもしくはアンモニウム塩、または、NH及びアンモニウム塩に変換して回収する第2変換手段とを有する
ことを特徴とする発電設備。
【請求項10】
NOの排出を伴う燃焼手段と、
前記燃焼手段の燃焼で得られた高圧流体を膨張して発電動力を得る膨張タービンと、
発電動力を得た後の排ガスを処理する排ガス処理手段とを備え、
前記排ガス処理手段は、
排ガス中のNOを水溶性のNOに酸化する酸化手段と、
前記酸化手段で酸化されたNOを溶解、酸化してNO にする溶解・酸化手段と、
前記溶解・酸化手段で溶解、酸化されたNO を硝酸塩に変換し硝酸塩を回収する第1変換手段と、
前記溶解・酸化手段で溶解、酸化されたNO をNHもしくはアンモニウム塩、または、NH及びアンモニウム塩に変換して回収する第2変換手段とを有する
ことを特徴とする発電設備。
【請求項11】
請求項9もしくは請求項10に記載の発電設備において、
前記第2変換手段は、
前記溶解・酸化手段で溶解、酸化されたNO を還元してNH にすると共に、還元されたNH をNHもしくはアンモニウム塩、または、NH及びアンモニウム塩に変換して回収する
ことを特徴とする発電設備。
【請求項12】
請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の発電設備において、
前記燃焼手段は、
燃料の一部もしくは全部がNHとされ、
前記燃焼手段には、
前記第2変換手段で回収されたNHが供給される
ことを特徴とする発電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼プロセスにおいて排出される窒素酸化物(NO)を有価な反応性窒素として回収する回収システム、及び、発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
窒素は生活に不可欠なものであり、アンモニア(NH)などの反応性窒素として、例えば、肥料などとして使用されている。また、燃焼用の燃料としての使用が検討されている。NHを燃焼用の燃料として使用することで、脱炭素社会の要望に応えることができると考えられている。使用後に排出される反応性窒素(窒素含有ガスや窒素含有排水)の大半はN(窒素分子)に無害化することができる(例えば、特許文献1)。
【0003】
NHを得るためには、外部のエネルギーを用いて、大気中のNと化石燃料から製造したH(水素分子)を反応させる。そして、例えば、燃焼排ガスに含まれるNOは、外部のエネルギーと、還元剤としてのNHを用いてNに分解して無害化(脱硝)されている。
【0004】
このように、NHなどの反応性窒素は、様々な分野で利用されているのが現状である。脱炭素社会の構築が重要になってきている状況で、NHなどの脱炭素燃料の需要は大幅に増加することが考えられている。このような状況において、エネルギーを用いて無害化していた反応性窒素に対し、エネルギーを大幅に低減して有効に利用できる技術の出現が望まれているのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-189719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、燃焼プロセスにおいて排出されるNOを反応性窒素として回収することで、エネルギーを大幅に低減して反応性窒素を有効に利用(再利用)することができる燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムを提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、燃焼プロセスにおいて排出されるNOを反応性窒素として回収することで、エネルギーを大幅に低減して反応性窒素を有効に利用(再利用)することができる排ガス処理手段を備えた発電設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムは、NOの排出を伴う燃焼手段と、前記燃焼手段で排出されたNO(主にNO)を水溶性のNOに酸化する酸化手段と、前記酸化手段で酸化されたNOを溶解、酸化してNO にする溶解・酸化手段と、前記溶解・酸化手段で溶解、酸化されたNO を硝酸塩に変換して回収する第1変換手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項1に係る本発明では、燃焼手段の排ガスのNOから硝酸塩を得て回収することができる。このため、NOを低減するための対策をする必要がない燃焼手段を用いることができる。例えば、二段燃焼の比率(二段燃焼率)を上げたり、空気比を下げたりして、NOの発生を抑制する必要がない。これにより、例えば、燃料として石炭を用いた場合、未燃炭素を減らす燃焼を行い、灰の品質を高めることができる。即ち、NOを排出する燃焼が可能になり、燃焼に対する制限を抑制することができ、排ガスにNHを投入して脱硝する必要がないので、配管の腐食などの発生を抑制することができる。
【0010】
また、上記目的を達成するための請求項2に係る本発明の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムは、NOの排出を伴う燃焼手段と、前記燃焼手段で排出されたNOを水溶性のNOに酸化する酸化手段と、前記酸化手段で酸化されたNOを溶解、酸化してNO にする溶解・酸化手段と、前記溶解・酸化手段で溶解、酸化されたNO を、NHもしくはアンモニウム塩、または、NH及びアンモニウム塩に変換して回収する第2変換手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項2に係る本発明では、燃焼手段の排ガスのNOからNHもしくはアンモニウム塩、または、NH及びアンモニウム塩を得て回収することができる。このため、NOを低減するための対策をする必要がない燃焼手段を用いることができる。例えば、二段燃焼の比率(二段燃焼率)を上げたり、空気比を下げたりして、NOの発生を抑制する必要がない。これにより、例えば、燃料として石炭を用いた場合、未燃炭素を減らす燃焼を行い、灰の品質を高めることができる。即ち、NOを排出する燃焼が可能になり、燃焼に対する制限を抑制することができ、排ガスにNHを投入して脱硝する必要がないので、配管の腐食などの発生を抑制することができる。
【0012】
また、上記目的を達成するための請求項3に係る本発明の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムは、NOの排出を伴う燃焼手段と、前記燃焼手段で排出されたNOを水溶性のNOに酸化する酸化手段と、前記酸化手段で酸化されたNOを溶解、酸化してNO にする溶解・酸化手段と、前記溶解・酸化手段で溶解、酸化されたNO を硝酸塩に変換して回収する第1変換手段と、前記溶解・酸化手段で溶解、酸化されたNO を、NHもしくはアンモニウム塩、または、NH及びアンモニウム塩に変換して回収する第2変換手段とを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項3に係る本発明では、燃焼手段の排ガスのNOから硝酸塩、NHもしくはアンモニウム塩、または、NH及びアンモニウム塩を得て回収することができる。このため、NOを低減するための対策をする必要がない燃焼手段を用いることができる。例えば、二段燃焼の比率(二段燃焼率)を上げたり、空気比を下げたりして、NOの発生を抑制する必要がない。これにより、例えば、燃料として石炭を用いた場合、未燃炭素を減らす燃焼を行い、灰の品質を高めることができる。即ち、NOを排出する燃焼が可能になり、燃焼に対する制限を抑制することができ、排ガスにNHを投入して脱硝する必要がないので、配管の腐食などの発生を抑制することができる。
【0014】
したがって、本発明の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムでは、燃焼プロセスにおいて排出されるNOを反応性窒素として回収することで、エネルギーを大幅に低減して反応性窒素を有効に利用(再利用)することが可能になる。
【0015】
また、請求項4に係る本発明の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムは、請求項2もしくは請求項3に記載の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムにおいて、前記第2変換手段は、前記溶解・酸化手段で溶解、酸化されたNO を還元してNH にすると共に、還元されたNH をNHもしくはアンモニウム塩、または、NH及びアンモニウム塩に変換して回収することを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る本発明では、溶解・酸化されたNO が還元されてNH にされ、還元されたNH がNHもしくはアンモニウム塩、または、NH及びアンモニウム塩に変換される。
【0017】
また、請求項5に係る本発明の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムは、請求項2から請求項4のいずれか一項に記載の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムにおいて、前記第2変換手段で変換されたNHが、前記燃焼手段の燃料(全部もしくは一部)とされることを特徴とする。
【0018】
請求項5に係る本発明では、燃焼手段の排ガスのNOから得られたNHを燃焼手段の燃料として利用することができる(窒素の循環利用)。流出するNOをほぼなくすことができ、無害化するためのエネルギーを削減することができる。
【0019】
また、請求項6に係る本発明の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムは、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムにおいて、前記燃焼手段は、燃料が燃焼されることで高圧流体を得るものであることを特徴とする。
【0020】
請求項6に係る本発明では、燃焼手段として蒸気タービンの駆動用の蒸気を得るボイラ、ガスタービンの駆動用の燃焼ガスを得る燃焼器を適用することができる。
【0021】
また、請求項7に係る本発明の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムは、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムにおいて、前記燃焼手段は、燃料が燃焼されることで動力を得る機関であることを特徴とする。
【0022】
請求項7に係る本発明では、燃焼手段として、燃焼室を有する内燃機関など(大型車両、船舶などのディーゼルエンジンなど)を適用することができる。
【0023】
上記目的を達成するための請求項8に係る本発明の発電設備は、NOの排出を伴う燃焼手段と、前記燃焼手段の燃焼で得られた高圧流体を膨張して発電動力を得る膨張タービンと、発電動力を得た後の排ガスを処理する排ガス処理手段とを備え、前記排ガス処理手段は、排ガス中のNOを水溶性のNOに酸化する酸化手段と、前記酸化手段で酸化されたNOを溶解、酸化してNO にする溶解・酸化手段と、前記溶解・酸化手段で溶解、酸化されたNO を硝酸塩に変換し硝酸塩を回収する第1変換手段とを有することを特徴とする。
【0024】
請求項8に係る本発明では、発電動力を得た後の排ガス(ボイラの排ガス、ガスタービンの排ガス)のNOから硝酸塩を得て回収することができる。このため、NOを低減するための対策をする必要がない燃焼手段を用いることができる。例えば、二段燃焼の比率を上げたり、空気比を下げたりして、NOの発生を抑制する必要がない。これにより、例えば、燃料として石炭を用いた場合、未燃炭素を減らす燃焼を行い、灰の品質を高めることができる。即ち、NOを排出する燃焼が可能になり、燃焼に対する制限を抑制することができ、排ガスにNHを投入して脱硝する必要がないので、配管の腐食などの発生を抑制することができる。
【0025】
また、上記目的を達成するための請求項9に係る本発明の発電設備は、NOの排出を伴う燃焼手段と、前記燃焼手段の燃焼で得られた高圧流体を膨張して発電動力を得る膨張タービンと、発電動力を得た後の排ガスを処理する排ガス処理手段とを備え、前記排ガス処理手段は、排ガス中のNOを水溶性のNOに酸化する酸化手段と、前記酸化手段で酸化されたNOを溶解、酸化してNO にする溶解・酸化手段と、前記溶解・酸化手段で溶解、酸化されたNO をNHもしくはアンモニウム塩、または、NH及びアンモニウム塩に変換して回収する第2変換手段とを有することを特徴とする。
【0026】
請求項9に係る本発明では、発電動力を得た後の排ガス(ボイラの排ガス、ガスタービンの排ガス)のNOからNHもしくはアンモニウム塩、または、NH及びアンモニウム塩を得て回収することができる。このため、NOを低減するための対策をする必要がない燃焼手段を用いることができる。例えば、二段燃焼の比率(二段燃焼率)を上げたり、空気比を下げたりして、NOの発生を抑制する必要がない。これにより、例えば、燃料として石炭を用いた場合、未燃炭素を減らす燃焼を行い、灰の品質を高めることができる。即ち、NOを排出する燃焼が可能になり、燃焼に対する制限を抑制することができ、排ガスにNHを投入して脱硝する必要がないので、配管の腐食などの発生を抑制することができる。
【0027】
また、上記目的を達成するための請求項10に係る本発明の発電設備は、NOの排出を伴う燃焼手段と、前記燃焼手段の燃焼で得られた高圧流体を膨張して発電動力を得る膨張タービンと、発電動力を得た後の排ガスを処理する排ガス処理手段とを備え、前記排ガス処理手段は、排ガス中のNOを水溶性のNOに酸化する酸化手段と、前記酸化手段で酸化されたNOを溶解、酸化してNO にする溶解・酸化手段と、前記溶解・酸化手段で溶解、酸化されたNO を硝酸塩に変換し硝酸塩を回収する第1変換手段と、前記溶解・酸化手段で溶解、酸化されたNO をNHもしくはアンモニウム塩、または、NH及びアンモニウム塩に変換して回収する第2変換手段とを有することを特徴とする。
【0028】
請求項10に係る本発明では、発電動力を得た後の排ガス(ボイラの排ガス、ガスタービンの排ガス)のNOから硝酸塩、NHもしくはアンモニウム塩、または、NH及びアンモニウム塩を得て回収することができる。このため、NOを低減するための対策をする必要がない燃焼手段を用いることができる。例えば、二段燃焼の比率(二段燃焼率)を上げたり、空気比を下げたりして、NOの発生を抑制する必要がない。これにより、例えば、燃料として石炭を用いた場合、未燃炭素を減らす燃焼を行い、灰の品質を高めることができる。即ち、NOを排出する燃焼が可能になり、燃焼に対する制限を抑制することができ、排ガスにNHを投入して脱硝する必要がないので、配管の腐食などの発生を抑制することができる。
【0029】
したがって、本発明の発電設備では、燃焼プロセスにおいて排出されるNOを反応性窒素として回収することで、エネルギーを大幅に低減して反応性窒素を有効に利用(再利用)することができる排ガス処理手段を備えた発電設備とすることが可能になる。
【0030】
そして、請求項11に係る本発明の発電設備は、請求項9もしくは請求項10に記載の発電設備において、前記第2変換手段は、前記溶解・酸化手段で溶解、酸化されたNO を還元してNH にすると共に、還元されたNH をNHもしくはアンモニウム塩、または、NH及びアンモニウム塩に変換して回収することを特徴とする。
【0031】
請求項11に係る本発明では、溶解・酸化されたNO が還元されてNH にされ、還元されたNH がNHもしくはアンモニウム塩、または、NH及びアンモニウム塩に変換される。
【0032】
また、請求項12に係る本発明の発電設備は、請求項9から請求項11のいずれか一項に記載の発電設備において、前記燃焼手段は、燃料の一部もしくは全部がNHとされ、前記燃焼手段には、前記第2変換手段で回収されたNHが供給されることを特徴とする。
【0033】
請求項12に係る本発明では、膨張タービンの排ガスのNOから得られたNHを燃焼手段の燃料として利用することができる(窒素の循環利用)。流出するNOをほぼなくすことができ、無害化するためのエネルギーを削減することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムは、燃焼プロセスにおいて排出されるNOを反応性窒素として回収することで、エネルギーを大幅に低減して反応性窒素を有効に利用(再利用)することが可能になる。
【0035】
また、本発明の発電設備は、燃焼プロセスにおいて排出されるNOを反応性窒素として回収することで、エネルギーを大幅に低減して反応性窒素を有効に利用(再利用)することができる排ガス処理手段を備えた発電設備とすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一実施例に係る燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムのブロック構成図である。
図2】本発明の一実施例に係る発電設備の概略系統図である。
図3】二段燃焼率とNO濃度及び未燃炭素割合との関係を表すグラフである。
図4】本発明の他の実施例に係る発電設備の概略系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1には本発明の一実施例に係る燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムの全体の概略を説明するブロック構成を示してある。
【0038】
図に示すように、本発明の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムは、NOの排出を伴う燃焼手段1を備えている。燃焼手段1は、石炭やNHなど、窒素を含む燃料が用いられ、NO(主にフューエルNO)が排出される。また、天然ガスや水素などの窒素を含まない燃料が用いられても、燃焼用空気に含まれるNにより、NO(サーマルNO)が排出される。
【0039】
燃焼手段1からの排ガスのNO(燃焼手段から排出されるNO)は、酸化手段2により水溶性のNOに酸化される。
【0040】
尚、燃焼手段1、酸化手段2を省略し、燃焼でNOが発生する「燃焼機器」を用いることも可能である。この場合、「燃焼機器」が請求項1に記載した「燃焼手段」「酸化手段」に相当することになる。
【0041】
酸化された、NOは溶解・酸化手段3で溶解、酸化されてNO にされる。溶解、酸化されたNO は、第1変換手段4で硝酸塩に変換されて(例えば、晶析)回収される。回収された硝酸塩は、農業用の肥料として利用される(NOの窒素の再利用:窒素循環)。
【0042】
尚、酸化手段2、溶解・酸化手段3を省略し、別途、「溶解・酸化機器」を設け、「溶解・酸化機器」に、NOをNOにすると共に、NOをNO にする機能を持たせることができる。この場合、「溶解・酸化機器」が請求項1に記載した「酸化手段」「溶解・酸化手段」に相当することになる。
【0043】
一方、溶解・酸化手段3で溶解、酸化されたNO は、例えば、生物反応や電極反応による還元を行う還元手段5(第2変換手段)により還元されてNH にされる。そして、還元手段5により還元されたNH は、例えば、ストリッピングによる変換手段(第2変換手段)6によりNHに変換されて回収される。回収されたNHは、燃焼手段1の燃料(その他の燃焼手段の燃料)、外部の排煙処理用(脱硝用)の還元剤などとして利用される(NOの窒素の再利用:窒素循環)。
【0044】
尚、変換手段6では、NH をアンモニウム塩に変換することもできる。また、NH及びアンモニウム塩に変換することができる。
【0045】
回収されたNHを燃焼手段1の燃料として利用することで、流出するNOをほぼなくすことができ、無害化するためのエネルギーを削減することができ、窒素の循環利用が達成される。
【0046】
上記構成の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムでは、燃焼手段1の排出ガスのNOから硝酸塩、NH(アンモニウム塩)を得て回収することができる(NOの窒素の再利用:窒素循環)。燃焼プロセスにおいて排出されるNOを反応性窒素として回収することで、エネルギーを用いてNに無害化することなく、反応性窒素を有効に利用(再利用)し、エネルギーを大幅に低減して反応性窒素の循環利用が可能になる。
【0047】
本発明の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムは、還元手段5、変換手段6を省略し、溶解・酸化手段3で溶解、酸化されたNO を第1変換手段4で硝酸塩に変換して回収するだけの構成とすることも可能である。また、第1変換手段4を省略し、溶解・酸化手段3で溶解、酸化されたNO を還元手段5、変換手段6でNH(アンモニウム塩)に変換して回収するだけの構成とすることも可能である。
【0048】
また、溶解・酸化手段3で溶解、酸化されたNO をNH に還元し、還元されたNH をNHに変換して回収した構成となっているが、NO をNH(アンモニウム塩)に変換する構成であれば、還元されたNH をNHに変換する構成に限定されるものではない。
【0049】
図2図3に基づいて、燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムを適用した発電設備の一例を説明する。
【0050】
図2には上記構成の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムを適用した発電設備の全体の概略系統、図3には二段燃焼率とNO濃度及び未燃炭素割合との関係を示してある。
【0051】
図2に示すように、発電設備(火力発電設備)11は、石炭、及び、NHを燃料として高温・高圧流体(高圧流体)である高圧蒸気を得るボイラ12を備え、ボイラ12で生成された高圧蒸気が膨張タービンである蒸気タービン13で膨張されて駆動され、蒸気タービン13の駆動により発電が実施される。そして、ボイラ12の排ガス(発電動力を得た後の排ガス)を処理する排ガス処理手段14が備えられている。
【0052】
排ガス処理手段14には、図1に示したシステムが備えられている。即ち、排ガス中のNOを水溶性のNOに酸化する酸化手段2が備えられ、酸化手段2で酸化されたNOを溶解、酸化してNO にする溶解・酸化手段3が備えられている。溶解・酸化手段3で溶解、酸化されたNO を硝酸塩に変換し硝酸塩を、例えば、肥料として回収する第1変換手段4が備えられている。
【0053】
そして、溶解・酸化手段3で溶解、酸化されたNO を還元してNH にすると共に(還元手段5)、還元されたNH をNH(アンモニウム塩)に変換して回収する変換手段6が備えられている。変換手段6でアンモニウム塩が回収された場合、回収されたアンモニウム塩は、例えば、肥料として回収される。
【0054】
ボイラ12は、燃料の一部(もしくは全部)がNHとされ、変換手段6で回収されたNHが供給される。燃料に硫黄が含まれる場合、溶解・酸化手段3では、排ガス中のSOが同時に吸収される。排ガス処理手段14には、煤塵除去を行う装置や、不純物を除去する装置が適宜備えられている。
【0055】
排ガス処理手段14を備えることで、NOを低減するための手当てをする必要がないボイラ12を用いることができる。即ち、二段燃焼率を高くすると、図3に実線で示すように、NO濃度が低くなる一方、図3に点線で示すように、未燃炭素の割合が高くなる。逆に、二段燃焼率を低くすると、図3に実線で示すように、NO濃度が高くなる一方、図3に点線で示すように、未燃炭素の割合が低くなる。
【0056】
排ガス処理手段14を備えることで(図1に示したシステムを用いることで)、二段燃焼率を高くしたり、空気比を下げたりして、NOを低減する必要がなく、NOを排出する燃焼が可能になり、燃焼に対する制限を抑制することができる。また、未燃炭素を減らす燃焼を行うことができ、灰の品質を高めることができ、灰の利用を促進することができる。
【0057】
更に、排ガスにNHを投入して脱硝する必要がないので、配管の腐食などの発生を抑制することができる。排ガスにNHを投入しないため、煤塵除去を行う装置に集められた塵などへのNHの付着がない。
【0058】
図4に基づいて、燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムを適用した発電設備の他の実施例を説明する。
【0059】
図4には上記構成の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムを適用した発電設備の全体の概略系統を示してある。
【0060】
図4に示すように、発電設備(火力発電設備)21は、NHを燃料として燃焼ガスを得る燃焼器22が備えられ、燃焼器22には圧縮機23からの圧縮空気が供給される。燃焼器22の高温・高圧の燃焼ガス(高圧流体)は膨張タービン24で膨張されて駆動され、膨張タービン24の駆動により発電が実施される。そして、膨張タービン24で仕事を終えた排ガス(発電動力を得た後の排ガス)を処理する排ガス処理手段25が備えられている。
【0061】
排ガス処理手段25には、図2に示した発電設備と同様に、図1に示したシステムが備えられている。即ち、排ガス中のNOを水溶性のNOに酸化する酸化手段2が備えられ、酸化手段2で酸化されたNOを溶解、酸化してNO にする溶解・酸化手段3が備えられている。溶解・酸化手段3で溶解、酸化されたNO を硝酸塩に変換し硝酸塩を回収する第1変換手段4が備えられている。
【0062】
そして、溶解・酸化手段3で溶解、酸化されたNO を還元してNH にすると共に(還元手段5)、還元されたNH をNH(アンモニウム塩)に変換して回収する変換手段6が備えられている。変換手段6でアンモニウム塩が回収された場合、回収されたアンモニウム塩は、例えば、肥料として回収される。
【0063】
燃焼器22は、燃料の一部(もしくは全部)がNHとされ、変換手段6で回収されたNHが供給される。燃料に硫黄が含まれる場合、溶解・酸化手段3では、排ガス中のSOが同時に吸収される。
【0064】
本発明の燃焼プロセスにおける反応性窒素の回収システムは、発電動力の系統の他に、大型車両、船舶などのディーゼルエンジンの排気系に備えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、燃焼プロセスにおいて排出される窒素酸化物(NO)を有価な反応性窒素として回収する回収システム、及び、発電設備の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 燃焼手段
2 酸化手段
3 溶解・酸化手段
4 第1変換手段
5 還元手段
6 変換手段
11、21 発電設備
12 ボイラ
13 蒸気タービン
14、25 排ガス処理手段
22 燃焼器
23 圧縮機
24 膨張タービン
図1
図2
図3
図4