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特開2023-135606液体組成物、インクジェット吐出用液体組成物、収容容器、電気化学素子の部材の製造装置、電気化学素子の製造装置、電気化学素子の部材の製造方法、電気化学素子の製造方法、及び電気化学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135606
(43)【公開日】2023-09-28
(54)【発明の名称】液体組成物、インクジェット吐出用液体組成物、収容容器、電気化学素子の部材の製造装置、電気化学素子の製造装置、電気化学素子の部材の製造方法、電気化学素子の製造方法、及び電気化学素子
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/139 20100101AFI20230921BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20230921BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20230921BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20230921BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230921BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20230921BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M10/0562
H01M10/052
H01B1/06 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022206669
(22)【出願日】2022-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2022039861
(32)【優先日】2022-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】大屋 彼野人
(72)【発明者】
【氏名】匂坂 俊也
(72)【発明者】
【氏名】野口 宗
(72)【発明者】
【氏名】中島 聡
(72)【発明者】
【氏名】栗山 博道
【テーマコード(参考)】
5G301
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5G301CD01
5H029AJ11
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM12
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029CJ30
5H029DJ08
5H029EJ12
5H029HJ01
5H029HJ10
5H029HJ14
5H050AA14
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050DA11
5H050DA18
5H050EA23
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA29
5H050HA01
5H050HA10
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】インクジェット印刷が可能な低い粘度でありながら、固形分濃度を高くすることができ、かつ得られるイオン伝導性材料含有層が優れたピール強度を有する電気化学素子の部材形成に用いられる液体組成物の提供。
【解決手段】電気化学素子の部材形成に用いられる液体組成物であって、イオン伝導性材料と、分散剤と、重合体と、溶媒とを含み、前記重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を含むガラス転移温度80℃以下の(メタ)アクリレート系重合体であり、前記重合体は、濃度10質量%で前記溶媒と混合したときの混合液の25℃における粘度が50mPa・s以下である液体組成物である。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学素子の部材形成に用いられる液体組成物であって、
イオン伝導性材料と、分散剤と、重合体と、溶媒とを含み、
前記重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を含むガラス転移温度80℃以下の(メタ)アクリレート系重合体であり、
前記重合体は、濃度10質量%で前記溶媒と混合したときの混合液の25℃における粘度が50mPa・s以下であることを特徴とする液体組成物。
【請求項2】
前記イオン伝導性材料が活物質であり、
前記液体組成物の25℃における粘度が20mPa・s超、200mPa・s未満である請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
固形分濃度が60質量%以上である請求項2に記載の液体組成物。
【請求項4】
前記イオン伝導性材料が固体電解質であり、
前記液体組成物の25℃における粘度が20mPa・s以下である請求項1に記載の液体組成物。
【請求項5】
固形分濃度が20質量%以上である請求項4に記載の液体組成物。
【請求項6】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体におけるアルキルの炭素数が2~4である請求項1から5のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項7】
前記重合体のガラス転移温度が40℃以下である請求項1から5のいずれかに記載の液体組成物。
【請求項8】
請求項1から5のいずれかに記載の液体組成物からなるインクジェット吐出用液体組成物。
【請求項9】
請求項1から5のいずれかに記載の液体組成物が収容されたことを特徴とする収容容器。
【請求項10】
請求項9に記載の収容容器と、
インクジェットヘッドを用いて前記収容容器に収容された液体組成物を吐出する吐出手段と、
を有することを特徴とする電気化学素子の部材の製造装置。
【請求項11】
請求項10に記載の電気化学素子の部材の製造装置により電気化学素子の部材を製造する電気化学素子の部材製造部を有することを特徴とする電気化学素子の製造装置。
【請求項12】
インクジェットヘッドを用いて請求項1から5のいずれかに記載の液体組成物を吐出する吐出工程を含むことを特徴とする電気化学素子の部材の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の電気化学素子の部材の製造方法により電気化学素子の部材を製造する工程を含むことを特徴とする電気化学素子の製造方法。
【請求項14】
集電体上に、イオン伝導性材料と、分散剤と、重合体とを少なくとも含む層を有する電気化学素子であって、
前記重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を含むガラス転移温度80℃以下の(メタ)アクリレート系重合体であり、
前記重合体は、濃度10質量%で溶媒と混合したときの混合液の25℃における粘度が50mPa・s以下であることを特徴とする電気化学素子。
【請求項15】
前記電気化学素子が二次電池である請求項14に記載の電気化学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体組成物、インクジェット吐出用液体組成物、収容容器、電気化学素子の部材の製造装置、電気化学素子の製造装置、電気化学素子の部材の製造方法、電気化学素子の製造方法、及び電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学素子、例えばリチウムイオン二次電池等の二次電池は、携帯機器、ハイブリット自動車、電気自動車等へ搭載され、需要が拡大している。また、各種ウェアラブル機器や医療用パッチに搭載する薄型電池に対するニーズが高まってきており、二次電池に対する要求が多様化している。
【0003】
電極合材層用液体組成物は、一般に、活物質、分散媒、そして得られる電極合材層の結着性を向上させるためのバインダーを含む。一般に、バインダーとしては重合体が使用されることに加え、生産性向上の観点から高い固形分濃度で調液されるため、電極合材層用液体組成物は粘度が10~10mPa・sと極めて高く、スラリー状である。そのため、従来、リチウムイオン二次電池を構成する電極の製造方法としては、ダイコーター、コンマコーター、リバースロールコーター等を用いて、電極合材層用液体組成物を塗布することにより、電極基体上に電極合材層を形成する方法が知られている。
【0004】
一方、近年では、材料コスト削減ならびに環境負荷低減の観点から、間欠塗工が容易であるインクジェット印刷を用いて電極合材層用液体組成物を塗布する製造方法が注目されている。しかしながら、インクジェット印刷は、一般に、低粘度な液体組成物の塗布を対象とした製造方法であり、高粘度タイプと謳われるものであっても液体組成物の粘度上限が200mPa・sと、従来のスラリー状電極合材層用液体組成物と比べて1/10~1/100倍も低い粘度水準が要求される。
【0005】
粘度の低い電極合材層用液体組成物としては、例えば、特許文献1の実施例には、1重量%水溶液の粘度が1~20mPa・sであるバインダーの含有量が0.01~0.5重量%であり、粘度が3.1~5.8mPa・sであるインクジェット印刷用電極合材層用組成物が記載されている。
【0006】
また、固形分濃度の高い電極合材層用液体組成物としては、例えば、特許文献2には、結着材及び有機溶媒を含む非水系二次電池電極用バインダー組成物であって、前記結着材が、重合体Aを含み、前記重合体Aが、エチレン性不飽和酸単量体単位を1.00質量%以上10.00質量%以下の割合で含み、前記重合体Aが、濃度8質量%で前記有機溶媒と混合して混合液を得た場合の、せん断速度0.1s-1における粘度が10,000mPa・s以下である、非水系二次電池電極用バインダー組成物を用いることによって、75重量%以上の高い固形分濃度の電極合材層用スラリー組成物が提供できることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、インクジェット印刷が可能な低い粘度でありながら、固形分濃度を高くすることができ、かつ得られるイオン伝導性材料含有層が優れたピール強度を有する電気化学素子の部材形成に用いられる液体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としての本発明の液体組成物は、電気化学素子の部材形成に用いられる液体組成物であって、イオン伝導性材料と、分散剤と、重合体と、溶媒とを含み、前記重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を含むガラス転移温度80℃以下の(メタ)アクリレート系重合体であり、前記重合体は、濃度10質量%で前記溶媒と混合したときの混合液の25℃における粘度が50mPa・s以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、インクジェット印刷が可能な低い粘度でありながら、固形分濃度を高くすることができ、かつ得られるイオン伝導性材料含有層が優れたピール強度を有する電気化学素子の部材形成に用いられる液体組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態の電気化学素子の部材の製造方法の一例を示す模式図である。
図2図2は、本実施形態の電気化学素子の部材の製造装置の一例を示す模式図である。
図3図3は、本実施形態の電気化学素子の部材の製造装置の他の一例を示す模式図である。
図4図4は、本実施形態の電極の製造方法の一例を示す模式図である。
図5図5は、液体吐出装置の変形例の一例を示す模式図である。
図6図6は、本実施形態の電極の製造方法の一例を示す模式図である。
図7図7は、液体吐出装置の変形例の一例を示す模式図である。
図8図8は、本実施形態の負極の一例を示す断面図である。
図9図9は、本実施形態の正極の一例を示す断面図である。
図10図10は、本実施形態の電気化学素子に用いる電極素子の一例を示す断面図である。
図11図11は、本実施形態の電気化学素子の一例を示す断面図である。
図12図12は、本実施形態の電気化学素子の一例である全固体電池を搭載した移動体の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(液体組成物)
本発明の液体組成物は、電気化学素子の部材形成に用いられる液体組成物であって、イオン伝導性材料と、分散剤と、重合体と、溶媒とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0012】
従来の特許文献1には、インクジェット印刷用電極合材層用組成物が記載されているものの、一般的な電極合材層用スラリー状液体組成物の固形分濃度が60質量%~70質量%であるのに対し、特許文献1のインクジェット印刷用電極合材層用組成物の固形分濃度は20質量%~40質量%ほどしかなく、生産性の点で改善の余地があった。
また、特許文献2のバインダー組成物を用いた電極合材層用スラリー組成物について、インクジェット印刷で使用できる粘度域とするためには、上記一般的な電極合材層用スラリー状液体組成物の固形分濃度よりも低い固形分濃度まで希釈する必要があった。
【0013】
また低粘度化のために安易に重合体の添加量を下げた場合には、得られる電極合材層や固体電解質層等のイオン伝導性材料含有層に充分に高い結着能をもたらすことができず、イオン伝導性材料含有層のピール強度が不十分であった。
したがって、従来のスラリー状二次電池用液体組成物と同程度の高い固形分濃度とインクジェット印刷可能な低い粘度、及び得られるイオン伝導性材料含有層の十分なピール強度のすべてを両立するためにはより一層の改善の余地があった。
【0014】
本発明の液体組成物は、電気化学素子の部材形成に用いられる液体組成物であり、例えば、二次電池の電極形成用、二次電池の固体電解質層形成用などとして用いることができる。また、前記二次電池の電極形成用液体組成物は、例えば、リチウムイオン二次電池等の非水系二次電池の電極を形成する際に用いることができる。また、前記二次電池の固体電解質層形成用液体組成物は、例えば、リチウムイオン二次電池等の非水系二次電池の固体電解質層を形成する際に用いることができる。
【0015】
<重合体>
前記重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を含むガラス転移温度80℃以下の(メタ)アクリレート系重合体である。また、前記重合体は、濃度10質量%で前記溶媒と混合したときの混合液の25℃における粘度が50mPa・s以下である。
【0016】
前記重合体は、前記溶媒に溶解する質量濃度範囲内で配合されることが好ましい。
前記重合体が前記溶媒に溶解する質量濃度範囲とは、前記溶媒に相溶性がある範囲のことをいう。より具体的には、温度25℃の前記溶媒に、(メタ)アクリレート系重合体を投入し、溶解させた後、10分間静置させた後に、目視にて沈降物又は上澄みが確認されない質量濃度の範囲である。なお、重合体を溶解させる際の条件としては、重合体が溶解する限り、特に制限はない。
【0017】
前記重合体は、前記液体組成物の粘度を過度に高めることがない成分である。また、前記重合体は、前記液体組成物を使用して、集電体上に電極合材層を形成することにより製造した電極において、電極合材層に含まれる成分が電極合材層から脱離しないように保持する(即ち、結着材として機能する)成分である。また、前記重合体は、前記液体組成物を使用して電極上に固体電解質層を形成することにより製造した積層体において、固体電解質層に含まれる成分が積層体から脱離しないように保持する成分である。
【0018】
[(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体]
前記重合体は、後述するイオン伝導性材料用分散剤と比べて、イオン伝導性材料に対して弱い吸着エネルギーを示す(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を含有しているので、イオン伝導性材料へのイオン伝導性材料用分散剤の吸着を阻害しにくい。したがって、本発明の液体組成物は、有機溶媒中でのイオン導電性材料の凝集が生じにくいことから、高い固形分濃度でありながら極めて低い粘度を有する。
なお、本発明において、「(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体の有無」は、H-NMRなどの核磁気共鳴(NMR)法を用いて測定することができる。
【0019】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体としては、直鎖状アルキル基を有するものと分岐鎖状アルキル基を有するものとが挙げられる。 例えば、(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、デシルアクリレート、ラウリルアクリレート、n-テトラデシルアクリレート、ステアリルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、デシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、n-テトラデシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらの中でも、ホモポリマーとしたときのガラス転移温度が低く柔軟性に富み、かつ、電解液へ難溶解性を有するという観点から、アルキルの炭素数が2~4であるものが好ましく、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0020】
[ガラス転移温度]
前記重合体のガラス転移温度としては、80℃以下であれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40℃以下であることが好ましく、15℃以下であることがより好ましい。前記重合体のガラス転移温度が上記上限値以下であれば、得られる電極合材層、または固体電解質層は柔軟性に富み、ピール強度を一層向上させることができる。
【0021】
前記重合体のガラス転移温度は、例えば、重合体の調製に用いる単量体組成物中において、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの種類及び/又は配合量を変更することや、その他の単量体の種類又は比率を変更することにより制御することができる。なお、重合体のガラス転移温度はJIS K7121に従って測定することができる。
【0022】
[粘度]
前記重合体は、濃度10質量%で前記溶媒と混合したときの混合液の、25℃における回転数100rpmでの粘度が50mPa・s以下である。前記溶媒は、前記液体組成物中に前記重合体と共に含有される溶媒である。かかる溶媒については後述する。
前記混合液の粘度が50mPa・s以下であれば、前記液体組成物を調製した際に、前記液体組成物の固形分濃度を十分に高めることができる。なお、粘度は、例えば、重合体の数平均分子量を調整すること、重合体の調製に用いる単量体組成物中において、架橋性単量体の配合量を調節することなどにより制御することができる。
【0023】
なお、本明細書において、液体組成物の「固形分濃度」とは、液体組成物の総質量に対する、溶媒を除く含有成分の質量の質量百分率である。前記溶媒を除く含有成分とは、120℃、真空下において、重量減少を生じない成分のことをいい、後述するイオン伝導性材料の他、分散剤などの粘弾性体も含まれる。
【0024】
また、本明細書において粘度とは、25℃における粘度を表す。
【0025】
前記混合液及び前記液体組成物の粘度の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばJIS Z 8803に準じて測定することができる。前記測定に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばTV25型粘度計(コーンプレート型粘度計、東機産業株式会社製)などが挙げられる。
【0026】
[含有量]
前記重合体は、前記液体組成物中において、前記溶媒に溶解する質量濃度範囲内で配合されることが好ましい。前記重合体の液体組成物における含有量が溶媒に溶解する質量濃度範囲内であれば、低粘度化が比較的容易であり、かつ、液体組成物において不溶分の重合体粒子がイオン伝導性材料等の顔料に結着しないため保管安定性及び再分散性に優れる。
【0027】
前記重合体の液体組成物における含有量としては、イオン伝導性材料に対して、上限値としては10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることがさらに好ましく、下限値としては1質量%以上であることが好ましい。前記重合体の含有量が前記好ましい範囲内であると、十分に固形分濃度が高く、かつ、得られる電極合材層または固体電解質層が十分に高いピール強度を有する液体組成物を得ることができる。
【0028】
<イオン伝導性材料>
本発明におけるイオン伝導性材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、正極活物質、負極活物質、固体電解質などが挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
[正極活物質]
正極活物質としては、アルカリ金属イオンを挿入又は放出することが可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルカリ金属含有遷移金属化合物を用いることができる。
【0030】
アルカリ金属含有遷移金属化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、クロム、鉄及びバナジウムからなる群より選択される1種以上の元素とリチウムとを含む複合酸化物等のリチウム含有遷移金属化合物などが挙げられる。
【0031】
リチウム含有遷移金属化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、リチウム含有コバルト酸化物(LiCoO)、マンガン酸リチウム(LiMn)、リチウム含有ニッケル酸化物(LiNiO)、Co-Ni-Mnのリチウム含有複合酸化物(Li(Co Mn Ni)O)、Ni-Mn-Alのリチウム含有複合酸化物、Ni-Co-Alのリチウム含有複合酸化物、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO)、オリビン型リン酸マンガンリチウム(LiMnPO)、LiMnO-LiNiO系固溶体、Li1+xMn2-x(0<X<2)で表されるリチウム過剰のスピネル化合物、Li[Ni0.17Li0.2Co0.07Mn0.56]O、LiNi0.5Mn1.5などの正極活物質が挙げられる。
【0032】
[負極活物質]
負極活物質としては、アルカリ金属イオンを挿入又は放出することが可能であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、黒鉛型結晶構造を有するグラファイトを含む炭素材料を用いることができる。
【0033】
炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)などが挙げられる。
【0034】
炭素材料以外の負極活物質としては、例えば、チタン酸リチウム、酸化チタンなどが挙げられる。
【0035】
また、非水電解質を用いた電気化学素子を用いる場合は、エネルギー密度の点から、負極活物質として、シリコン、スズ、シリコン合金、スズ合金、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化スズ等の高容量材料を用いることが好ましい。
【0036】
[活物質の最大粒子径]
本発明における活物質の最大粒子径としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクジェットヘッドのノズル径よりも小さいことが好ましく、インクジェット吐出性をより高めることができる点で、インクジェットヘッドのノズル径よりも十分小さいことが好ましい。具体的には、液体組成物に含まれる活物質の最大粒子径と、インクジェットヘッドのノズル径との比(液体組成物に含まれる活物質の最大粒子径/インクジェットヘッドのノズル径)が、0.8以下であることが好ましく、0.6以下であることがより好ましく、0.5以下であることが更に好ましい。活物質の最大粒子径がこれらの範囲内にあると、液体組成物の吐出安定性が向上する。例えば液滴観察装置(EV1000(株式会社リコー製))の場合、ノズル径は40μmであり、このとき、液体組成物に含まれる活物質の最大粒子径は32μm以下であることが好ましく、24μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましい。なお、最大粒子径とは、計測された前記液体組成物における活物質の粒度分布の中で分布の最大値である径である。
活物質の最大粒子径の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ISO 13320:2009に準じて測定することができる。前記測定に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザ回折式粒度分布測定装置マスターサイザー3000(マルバーン社製)などが挙げられる。
【0037】
[活物質のモード径]
本発明における活物質のモード径としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.5μm以上10μm以下が好ましく、3μm以上10μm以下がより好ましい。活物質のモード径が0.5μm以上10μm以下であると、液体組成物を液体吐出方法により吐出する場合に、吐出不良を起こしにくい。また、活物質のモード径が3μm以上10μm以下であると、よりよい電気特性の電極合材層が得られる。なお、モード径とは、計測された前記液体組成物における活物質の粒度分布の中で分布の極大値である径である。
活物質のモード径の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ISO 13320:2009に準じて測定することができる。前記測定に用いる装置としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、レーザ回折式粒度分布測定装置マスターサイザー3000(マルバーン社製)などが挙げられる。
【0038】
[固体電解質]
固体電解質としては、電子絶縁性を有し、イオン伝導性があるものであれば、特に制限はないが、イオン伝導率の観点で、組成式に硫黄を含む硫化物固体電解質、又はアニオンとして酸素のみを含む酸化物固体電解質が好ましく、イオン伝導性材料間の界面形成において、良好な界面を形成することができる、硫化物固体電解質がより好ましい。
【0039】
硫化物系無機固体電解質は、硫黄原子(S)を含有し、かつ、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。硫化物系無機固体電解質は、元素として少なくともLi、S及びPを含有し、リチウムイオン伝導性を有しているものが好ましいが、目的又は場合に応じて、Li、S及びP以外の他の元素を含んでもよい。
【0040】
例えば、下記式(1)で示される組成を満たすリチウムイオン伝導性無機固体電解質が挙げられる。
a1b1c1d1e1 ・・・ 式(1)
式(1)中、Lは、Li、Na、K、及びCaから選択される元素を示し、Liが好ましい。Mは、B、Zn、Sn、Si、Cu、Ga、Sb、Al、Ge、及びYから選択される元素を示す。Aは、I、Br、Cl、及びFから選択される元素を示す。a1~e1は各元素の組成比を示し、a1:b1:c1:d1:e1は、1~12:0~5:1:2~12:0~10を満たす。
【0041】
a1は、1~9が好ましく、1.5~7.5がより好ましい。
b1は、0~3が好ましく、0~1がより好ましい。
d1は、2.5~10が好ましく、3.0~8.5がより好ましい。
e1は、0~5が好ましく、0~3がより好ましい。
【0042】
各元素の組成比は、下記のように、硫化物系無機固体電解質を製造する際の原料化合物の配合比を調整することにより制御できる。硫化物系無機固体電解質は、非結晶(ガラス)であっても結晶化(ガラスセラミックス化)していてもよく、一部のみが結晶化していてもよい。例えば、Li、P及びSを含有するLi-P-S系ガラス、又はLi、P及びSを含有するLi-P-S系ガラスセラミックスを用いることができる。硫化物系無機固体電解質は、例えば硫化リチウム(LiS)、硫化リン(例えば五硫化二燐(P))、単体燐、単体硫黄、硫化ナトリウム、硫化水素、ハロゲン化リチウム(例えばLiI、LiBr、LiCl)及び上記Mであらわされる元素の硫化物(例えばSiS、SnS、GeS)の中の少なくとも2つ以上の原料の反応により製造することができる。
【0043】
Li-P-S系ガラス及びLi-P-S系ガラスセラミックスにおける、LiSとPとの比率は、LiS:Pのモル比で、好ましくは60:40~90:10、より好ましくは68:32~78:22である。LiSとPとの比率をこの範囲にすることにより、リチウムイオン伝導度を高いものとすることができる。具体的には、リチウムイオン伝導度を好ましくは1×10-4S/cm以上、より好ましくは1×10-3S/cm以上とすることができる。上限は特にないが、5×10-1S/cm以下であることが実際的である。
【0044】
具体的な硫化物系無機固体電解質の例として、原料の組み合わせ例を下記に示す。例えば、LiS-P、LiS-P-LiCl、LiS-P-HS、LiS-P-HS-LiCl、LiS-LiI-P、LiS-LiI-LiO-P、LiS-LiBr-P、LiS-LiO-P、LiS-LiPO-P、LiS-P-P、LiSP-SiS、LiS-P-SiS-LiCl、LiS-P-SnS、LiS-P-Al、LiS-GeS、LiS-GeS-ZnS、LiS-Ga、LiS-GeS-Ga、LiS-GeS-P、LiS-GeS-Sb、LiS-GeS-Al、LiS-SiS、LiS-Al、LiS-SiS-Al、LiSSiS-P、LiS-SiS-P-LiI、LiS-SiS-LiI、LiS-SiS-LiSiO、LiS-SiS-LiPO、Li10GeP12などが挙げられる。ただし、各原料の混合比は問わない。このような原料組成物を用いて硫化物系無機固体電解質材料を合成する方法としては、例えば非晶質化法を挙げることができる。非晶質化法としては、例えば、メカニカルミリング法、溶液法及び溶融急冷法を挙げられる。常温での処理が可能になり、製造工程の簡略化を図ることができるからである。
【0045】
酸化物系無機固体電解質は、酸素原子(O)を含有し、かつ、周期律表第1族又は第2族に属する金属のイオン伝導性を有し、かつ、電子絶縁性を有する化合物が好ましい。
具体的な化合物例としては、例えばLixaLayaTiO〔xa=0.3~0.7、ya=0.3~0.7〕(LLT)、LixbLaybZrzbMbbmbnb(MbbはAl、Mg、Ca、Sr、V、Nb、Ta、Ti、Ge、In、Snの少なくとも1種以上の元素でありxbは5≦xb≦10を満たし、ybは1≦yb≦4を満たし、zbは1≦zb≦4を満たし、mbは0≦mb≦2を満たし、nbは5≦nb≦20を満たす。)、LixcycMcczcnc(MccはC、S、Al、Si、Ga、Ge、In、Snの少なくとも1種以上の元素でありxcは0≦xc≦5を満たし、ycは0≦yc≦1を満たし、zcは0≦zc≦1を満たし、ncは0≦nc≦6を満たす。)、Lixd(Al,Ga)yd(Ti,Ge)zdSiadmdnd(ただし、1≦xd≦3、0≦yd≦1、0≦zd≦2、0≦ad≦1、1≦md≦7、3≦nd≦13)、Li(3-2xe)MeexeDeeO(xeは0以上0.1以下の数を表し、Meeは2価の金属原子を表す。Deeはハロゲン原子又は2種以上のハロゲン原子の組み合わせを表す。)、LixfSiyfzf(1≦xf≦5、0<yf≦3、1≦zf≦10)、Lixgygzg(1≦xg≦3、0<yg≦2、1≦zg≦10)、LiBO-LiSO、LiO-B-P、LiO-SiO、LiBaLaTa12、LiPO(4-3/2w)(wはw<1)、LISICON(Lithium super ionic conductor)型結晶構造を有するLi3.5Zn0.25GeO、ペロブスカイト型結晶構造を有するLa0.55Li0.35TiO、NASICON(Natrium super ionic conductor)型結晶構造を有するLiTi12、Li1+xh+yh(Al,Ga)xh(Ti,Ge)2-xhSiyh3-yh12(ただし、0≦xh≦1、0≦yh≦1)、ガーネット型結晶構造を有するLiLaZr12(LLZ)等が挙げられる。またLi、P及びOを含むリン化合物も望ましい。例えばリン酸リチウム(LiPO)、リン酸リチウムの酸素の一部を窒素で置換したLiPON、LiPOD1(D1は、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zr、Nb、Mo、Ru、Ag、Ta、W、Pt、Au等から選ばれた少なくとも1種)等が挙げられる。また、LiA1ON(A1は、Si、B、Ge、Al、C、Ga等から選ばれた少なくとも1種)等も好ましく用いることができる。
【0046】
本発明における固体電解質の最大粒子径としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、インクジェット印刷用途を想定した場合には、インクジェットヘッドのノズル径よりも小さいことが好ましく、インクジェット吐出性をより高めることができる点で、インクジェットヘッドのノズル径よりも十分小さいことが好ましい。具体的には、液体組成物に含まれる固体電解質の最大粒子径と、インクジェットヘッドのノズル径との比(液体組成物に含まれる固体電解質の最大粒子径/インクジェットヘッドのノズル径)が、0.8以下であることが好ましく、0.6以下であることがより好ましく、0.5以下であることが更に好ましい。固体電解質の最大粒子径がこれらの範囲内にあると、液体組成物の吐出安定性が向上する。例えば液滴観察装置(EV1000(株式会社リコー製))の場合、ノズル径は40μmであり、このとき、液体組成物に含まれる活物質の最大粒子径は32μm以下であることが好ましく、24μm以下であることがより好ましく、20μm以下であることが更に好ましい。なお、最大粒子径とは、計測された前記液体組成物における固体電解質の粒度分布の中で分布の最大値である径である。
固体電解質の最大粒子径の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した活物質の最大粒子径の測定方法と同様の方法などが挙げられる。
【0047】
本発明における固体電解質のモード径としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、0.1μm以上10μm以下が好ましく、0.5μm以上3μm以下がより好ましい。固体電解質のモード径が0.1μm以上10μm以下であると、液体組成物を液体吐出方法により吐出する場合に、吐出不良を起こしにくい。なお、モード径とは、計測された前記液体組成物における固体電解質の粒度分布の中で分布の極大値である径である。
固体電解質のモード径の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した活物質のモード径の測定方法と同様の方法などが挙げられる。
【0048】
<分散剤>
分散剤は、イオン伝導性材料及び/又は導電助剤を分散させるものである。
前記分散剤の中には、イオン伝導性材料と導電助剤の双方に対して分散剤として機能するものもある。このような分散剤は、イオン伝導性材料用分散剤と導電助剤用分散剤の両方に該当する。
【0049】
<<イオン伝導性材料用分散剤>>
本発明におけるイオン伝導性材料用分散剤としては、イオン伝導性材料と反応せず、かつ分散できるものであれば、特に制限はないが、分散性の観点でイオン性吸着基をもつ分散剤が好ましい。前記イオン伝導性材料用分散剤としては、従来公知ものもあるいは市販されているものが適宜使用できる。例えばポリエチレン系、ポリエチレンオキシド系、ポリプロピレンオキシド系、ポリカルボン酸系、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合系、ポリエチレングリコール系、ポリカルボン酸部分アルキルエステル系、ポリエーテル系、ポリアルキレンポリアミン系等の高分子分散剤、アルキルスルホン酸系、四級アンモニウム系高級アルコールアルキレンオキサイド系、多価アルコールエステル系、アルキルポリアミン系等の低分子分散剤、ポリリン酸塩分散剤等の無機分散剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0050】
前記イオン伝導性材料用分散剤の液体組成物における含有量としては、イオン伝導性材料に対して、上限値としては5質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、下限値としては0.1質量%以上であることが好ましい。前記イオン伝導性材料用分散剤の含有量が前記好ましい範囲内であると、イオン伝導性材料の表面機能を損なうことなくイオン伝導性材料の分散安定性を担保することができる。
【0051】
<<導電助剤用分散剤>>
導電助剤用分散剤としては、導電助剤と反応せず、かつ分散できるものであれば、特に制限はなく、従来公知ものもあるいは市販されているものが適宜使用できる。例えば、上記したイオン伝導性材料用分散剤と同様のものが挙げられる。
【0052】
前記導電助剤用分散剤の液体組成物における含有量としては、導電助剤に対して、上限値としては100質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましく、下限値としては15質量%以上であることが好ましい。前記導電助剤用分散剤の含有量が前記好ましい範囲内であると、導電助剤の表面機能を損なうことなく導電助剤の分散安定性を担保することができる。特に導電助剤用分散剤が前記イオン伝導性材料への吸着能を有する場合には、遊離分がイオン伝導性材料に吸着し、イオン伝導性材料の表面機能を損なうことを抑制することができる。
【0053】
<溶媒>
本発明における溶媒(「溶剤」と称することもある。)としては、前記重合体が溶解するものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸メチル、ヘプタン酸エチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸イソブチル、イソ酪酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸イソブチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)などのアミド系極性有機溶媒、トルエン、キシレン、アニソールなどの芳香族炭化水素類、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、イオン伝導性材料と反応しない非プロトン性有機溶媒としてエステル類、エーテル類、芳香族炭化水素類が好ましい。
また、液体組成物の粘度を低くすることができ、より分散性が優れる点で、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ヘキサン酸メチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸メチル、ヘプタン酸エチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸イソブチル、イソ酪酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、及びイソ吉草酸イソブチル等の非水溶性溶媒、N-メチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、及びN,N-ジメチルホルムアミド等の水溶性溶媒が好ましい。
また、固形分濃度が高い液体組成物の粘度を低くすることができ、より分散性が優れる点で、酪酸メチル、吉草酸メチル、ヘキサン酸メチル、ヘプタン酸メチル、デカン酸メチル、酪酸エチル、吉草酸エチル、ヘキサン酸エチル、ヘプタン酸エチル、デカン酸エチル、酪酸ブチル、イソ酪酸エチル、イソ酪酸イソブチル、イソ酪酸イソアミル、イソ吉草酸エチル、イソ吉草酸イソブチル、及びイソ吉草酸イソアミル等のカルボン酸エステルが好ましい。
【0054】
<その他の成分>
その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、導電助剤などが挙げられる。
【0055】
[導電助剤]
導電助剤としては、例えば、ファーネス法、アセチレン法、ガス化法等により製造されているカーボンブラックや、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン、黒鉛粒子等の炭素材料を用いることができる。炭素材料以外の導電助剤としては、例えば、アルミニウム等の金属粒子、金属繊維を用いることができる。なお、導電助剤は、予め活物質と複合化されていてもよい。
【0056】
活物質に対する導電助剤の質量比は、上限値としては、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましく、下限値としては、1質量%以上が好ましい。活物質に対する導電助剤の質量比が上記下限値以上である場合、得られる電極合材層の導電性がより向上する。活物質に対する導電助剤の質量比が上記上限値以下である場合、得られる電極合材層の導電性を損なわず、かつエネルギー密度をより向上することができる。
【0057】
<液体組成物の粘度及び固形分濃度>
前記液体組成物の粘度としては、液体吐出ヘッドから吐出することが可能な粘度であることが好ましく、上限値としては、200mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以下がより好ましく、50mPa・s以下が更に好ましい。また、下限値としては、10mPa・s以上であることが好ましく、30mPa・s以上であるとより好ましい。上記下限値以上の粘度とすることで、塗布した液体組成物を乾燥させる工程で流動が抑制され、乾燥による膜厚ムラ、及び、組成ムラが抑制される。
【0058】
前記液体組成物の固形分濃度としては、20質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることがさらに好ましい。上記下限値以上の固形分濃度とすることでチクソトロピー性が発現しやすくなり、塗布した液体組成物を乾燥させる工程で流動が抑制され、乾燥による膜厚ムラ、及び、組成ムラが抑制される。
【0059】
また、前記液体組成物が、イオン伝導性材料として活物質を含む場合、前記液体組成物の粘度としては、20mPa・s超、200mPa・s未満であることが好ましい。前記液体組成物が、イオン伝導性材料として活物質を含む場合、前記液体組成物における固形分濃度としては、60質量%以上であることが好ましい。
【0060】
また、前記液体組成物が、イオン伝導性材料として固体電解質を含む場合、前記液体組成物の粘度としては、20mPa・s以下であることが好ましい。前記液体組成物が、イオン伝導性材料として固体電解質を含む場合、前記液体組成物における固形分濃度としては、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。
【0061】
<液体組成物の製造方法>
液体組成物は、上記各成分を上記溶媒中に溶解又は分散させることにより製造することができる。
具体的には、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、フィルミックスなどの混合機を用いて上記各成分と上記溶媒とを混合することにより、液体組成物を調製することができる。
【0062】
前記液体組成物の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電気化学素子における電極合材層や固体電解質層等のイオン伝導性材料含有層を形成する材料として好適に用いることができる。
例えば、イオン伝導性材料として上述した正極活物質または負極活物質を少なくとも含む液体組成物は二次電池用の電極形成用液体組成物として、イオン伝導性材料として上述した固体電解質を少なくとも含む液体組成物は二次電池の固体電解質層形成用液体組成物として、好適に用いることができる。
【0063】
(インクジェット吐出用液体組成物)
本実施形態の液体組成物は、インクジェット吐出用液体組成物として好適に用いることができる。
【0064】
(電極)
本実施形態に関する電極(二次電池用の電極と称することもある。)は、電極基体と、電極基体上に形成された電極合材層と、を有する。前記電極合材層は、本実施形態の液体組成物を用いて形成されている。即ち、電極合材層には、少なくとも、前記イオン伝導性材料と、前記イオン伝導性材料用分散剤と、前記重合体が含有されている。なお、電極合材層中に含まれている各成分は、上記液体組成物中に含まれていたものであり、それら各成分の好適な存在比は、液体組成物中の各成分の好適な存在比と同じである。
本実施形態の電極では、本実施形態の液体組成物を使用しているので、ピール強度の高い電極合材層を集電体上に良好に形成することができる。
【0065】
<電極基体(集電体)>
電極基体を構成する材料としては、電気導電性を有し、かつ、電気化学的に耐久性のある材料が用いられる。具体的には、電極基体としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼、チタン、タンタル、金、白金などからなる電極基体を用い得る。なお、前記の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0066】
<電極の製造方法>
本実施形態の電極の製造方法は、本実施形態の液体組成物を、電極基体上に塗布する工程を含み、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0067】
液体組成物の塗布方法としては、特に制限はなく、例えば、インクジェット法やスプレーコート法、ディスペンサ法などの液体吐出方法や、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイアーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法などが挙げられる。これらの中でも、インクジェット法が特に好ましい。インクジェット法を用いると、電極を非接触、自由な形状で製造できる。その結果、電極の生産過程における型抜きによる活物質の損失が少ない等の効果がある。この際、液体組成物を集電体の片面だけに塗布してもよいし、両面に塗布してもよい。塗布後乾燥前の集電体上の液体組成物の厚みは、乾燥して得られる電極合材層の厚みに応じて適宜に設定しうる。
【0068】
集電体上の液体組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥法、真空乾燥法、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。このように集電体上の液体組成物を乾燥することで、集電体上に電極合材層を形成し、集電体と電極合材層とを備える電極を得ることができる。
【0069】
(固体電解質層と電極との積層体)
本実施形態に関する固体電解質層と電極との積層体は、電極と、電極上に形成された固体電解質層と、を有する。前記固体電解質層は、本実施形態の液体組成物を用いて形成されている。即ち、固体電解質層には、少なくとも、前記イオン伝導性材料と、前記イオン伝導性材料用分散剤と、前記重合体が含有されている。なお、固体電解質層中に含まれている各成分は、上記液体組成物中に含まれていたものであり、それら各成分の好適な存在比は、液体組成物中の各成分の好適な存在比と同じである。
本実施形態の積層体では、本実施形態の液体組成物を使用しているので、ピール強度の高い固体電解質層を電極上に良好に形成することができる。
なお、固体電解質層は、電極上に形成する以外は、上述した電極の製造方法と同様にして、形成することができる。
【0070】
(収容容器)
本発明の収容容器は、上記した本発明の液体組成物又はインクジェット吐出用液体組成物が収容された収容容器である。
前記収容容器の形状、構造、及び大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0071】
以下では特にインクジェット法による電気化学素子の部材の製造方法について説明する。
【0072】
(電気化学素子の部材の製造装置、電気化学素子の部材の製造方法)
本発明の電気化学素子の部材の製造装置は、上記した本発明の収容容器と、インクジェットヘッド(「液体吐出ヘッド」と称することもある。)を用いて前記収容容器に収容された液体組成物を吐出する吐出手段と、を含み、必要に応じて、更にその他の構成を含む。
本発明の電気化学素子の部材の製造方法は、インクジェットヘッドを用いて上記した本発明の液体組成物又はインクジェット吐出用液体組成物を吐出する吐出工程を含み、必要に応じて、更にその他の工程を含む。
前記電気化学素子の部材は、使用するイオン伝導性材料の種類に応じて、様々な部材とすることができ、例えば、電極合材層、固体電解質層などが挙げられる。
【0073】
<吐出手段、吐出工程>
前記吐出手段は、インクジェットヘッドを用いて前記収容容器に収容された液体組成物又はインクジェット吐出用液体組成物を吐出する手段である。
前記吐出工程は、インクジェットヘッドを用いて前記液体組成物又はインクジェット吐出用液体組成物を吐出する工程である。
前記吐出により、対象物上に液体組成物又はインクジェット吐出用液体組成物を付与して、液体組成物層を形成することができる。
前記対象物(以下、「吐出対象物」と称することがある。)としては、イオン伝導性材料含有層を形成する対象であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電極基体(「集電体」と称することもある。)、活物質層などが挙げられる。
【0074】
<その他の構成、その他の工程>
前記電気化学素子の部材の製造装置におけるその他の構成としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱手段などが挙げられる。
前記電気化学素子の部材の製造方法におけるその他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱工程などが挙げられる。
【0075】
-加熱手段、加熱工程-
前記加熱手段は、前記吐出手段により吐出された液体組成物又はインクジェット吐出用液体組成物を加熱する手段である。
前記加熱工程は、前記吐出工程で吐出された液体組成物又はインクジェット吐出用液体組成物を加熱する工程である。
前記加熱により、前記液体組成物層を乾燥させることができる。
【0076】
[基材に液体組成物を直接的に付与することで電気化学素子の部材を形成する実施形態] 図1は、本実施形態に係る電気化学素子の部材の製造方法の一例を示す模式図である。
液体組成物12Aは、液体吐出装置300のタンク307に貯蔵されており、タンク307からチューブ308を経由して液体吐出ヘッド306に供給される。なお、液体吐出装置の個数は、1個に限定されず、2個以上であってもよい。
電極を製造する際には、ステージ310上に、電極基体11を設置した後、液体吐出ヘッド306から、液体組成物12Aの液滴を電極基体11に吐出する。このとき、ステージ310が移動してもよく、液体吐出ヘッド306が移動してもよい。吐出された液体組成物12Aは電極合材層12となる。
また、液体吐出装置300は、液体組成物12Aが液体吐出ヘッド306から吐出されていない際に、乾燥を防ぐため、ノズルをキャップする機構が設けられていてもよい。
【0077】
図2は、本実施形態の電気化学素子の部材の製造方法を実現するための電気化学素子の部材の製造装置の一例を示す模式図である。
【0078】
図2の電気化学素子の部材の製造装置は、上記した液体組成物を用いて固体電解質層又は電極合材層を製造する装置である。電気化学素子の部材の製造装置は、吐出対象物を有する印刷基材4上に、液体組成物を付与して液体組成物層を形成する工程を含む吐出工程部10と、液体組成物層を加熱してイオン伝導性材料含有層を得る加熱工程を含む加熱工程部30を備える。電気化学素子の部材の製造装置は、印刷基材4を搬送する搬送部5を備え、搬送部5は、吐出工程部10、加熱工程部30の順に印刷基材4をあらかじめ設定された速度で搬送する。
前記電極基体や活物質層などの吐出対象物を有する印刷基剤4の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
【0079】
吐出工程部10は、印刷基材4上に液体組成物を付与する付与工程を実現する付与手段であるインクジェット印刷法に応じた任意の印刷装置1aと、液体組成物を収容する収容容器1bと、収容容器1bに貯留された液体組成物を印刷装置1aに供給する供給チューブ1cを備える。
【0080】
収容容器1bは液体組成物7を収容し、吐出工程部10は、印刷装置1aから液体組成物7を吐出して、印刷基材4上に液体組成物7を付与して液体組成物層を薄膜状に形成する。なお、収容容器1bは、電気化学素子の部材の製造装置と一体化した構成であってもよいが、電気化学素子の部材の製造装置から取り外し可能な構成であってもよい。また、電気化学素子の部材の製造装置と一体化した収容容器や電気化学素子の部材の製造装置から取り外し可能な収容容器に添加するために用いられる容器であってもよい。
【0081】
収容容器1bや供給チューブ1cは、液体組成物7を安定して貯蔵および供給できるものであれば任意に選択可能である。
【0082】
加熱工程部30は、図2に示すように、加熱装置3aを有し、液体組成物層に残存する溶媒を、加熱装置3aにより加熱して乾燥させて除去する溶媒除去工程を含む。これによりイオン伝導性材料含有層を形成することができる。加熱工程部30は、溶媒除去工程を減圧下で実施してもよい。
【0083】
前記加熱装置3aとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板加熱、IRヒーター、温風ヒーターなどが挙げられ、これらを組み合わせてもよい。
【0084】
また、加熱温度や時間に関しては、液体組成物7に含まれる溶媒の沸点や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
【0085】
図3は、本実施形態の電気化学素子の部材の製造方法を実現するための電気化学素子の部材の製造装置(液体吐出装置)の他の一例を示す模式図である。
【0086】
液体吐出装置300’は、ポンプ3101と、バルブ311、312を制御することにより、液体組成物が液体吐出ヘッド306、タンク307、チューブ308を循環することが可能である。
【0087】
また、液体吐出装置300’は、外部タンク313が設けられており、タンク307内の液体組成物が減少した際に、ポンプ3101と、バルブ311、312、314を制御することにより、外部タンク313からタンク307に液体組成物を供給することも可能である。
【0088】
前記電気化学素子の部材の製造装置を用いると、吐出対象物の狙ったところに液体組成物を吐出することができる。
【0089】
前記イオン伝導性材料含有層の一例である固体電解質層や電極合材層は、例えば、電気化学素子の構成の一部として、好適に用いることができる。前記電気化学素子における前記固体電解質層又は電極合材層以外の構成としては、特に制限はなく、公知のものを適宜選択することができ、例えば、正極、負極、セパレータなどが挙げられる。
【0090】
本実施形態の電極の製造方法の一例を図4に示す。
電極100の製造方法は、液体吐出装置300’を用いて、電極基体11上に、液体組成物12Aを、順次吐出する工程を含む。
【0091】
まず、細長状の電極基体11を準備する。そして、電極基体11を筒状の芯に巻き付け、電極合材層12を形成する側が、図中、上側になるように、送り出しローラ304と巻き取りローラ305にセットする。ここで、送り出しローラ304と巻き取りローラ305は、反時計回りに回転し、電極基体11は、図中、右から左の方向に搬送される。そして、送り出しローラ304と巻き取りローラ305の間の電極基体11の上方に設置されている液体吐出ヘッド306から、図1と同様にして、液体組成物12Aの液滴を、順次搬送される電極基体11上に吐出する。
【0092】
なお、液体吐出ヘッド306は、電極基体11の搬送方向に対して、略平行な方向又は略垂直な方向に、複数個設置されていてもよい。次に、液体組成物12Aの液滴が吐出された電極基体11は、送り出しローラ304と巻き取りローラ305によって、加熱機構309に搬送される。その結果、電極合材層12が形成され、電極100が得られる。その後、電極100は、打ち抜き加工等により、所望の大きさに切断される。
【0093】
加熱機構309は、電極基体11の上下の何れか一方に設置されてもよいし、複数個設置されていてもよい。
【0094】
加熱機構309としては、液体組成物12Aに直接接触しなければ、特に制限はなく、例えば、抵抗加熱ヒーター、赤外線ヒーター、ファンヒーター等が挙げられる。なお、加熱機構309は、複数個設置されていてもよい。また、重合のための紫外線による硬化装置が設置されていてもよい。
【0095】
また、電極基体11に吐出された液体組成物12Aは加熱されることが好ましく、加熱する際には、ステージにより加熱してもよいし、ステージ以外の加熱機構により加熱してもよい。加熱機構は、電極基体11の上下の何れか一方に設置されてもよいし、複数個設置されていてもよい。
【0096】
加熱温度は特に制限はない。加熱により液体組成物12Aが乾燥して電極合材層が形成される。
【0097】
また、図5のように、タンク307は、タンク307A、307Bに接続されたタンク313A、313Bからインクを供給してもよく、液体吐出ヘッド306は、複数のヘッド306A、306Bを有してもよい。
【0098】
[基材に液体組成物を間接的に付与することで電気化学素子の部材を形成する実施形態]
図6~7は、本実施形態の電気化学素子の部材の製造装置としての、付与手段としてインクジェット方式、及び転写方式を採用した印刷部の一例を示す構成図であり、図6は、ドラム状の中間転写体を用いた印刷部、図7は、無端ベルト状の中間転写体を用いた印刷部を示す構成図である。
図6に示した印刷部400’は、中間転写体4001を介して基材に液体組成物層乃至イオン伝導性材料含有層を転写することで基材上にイオン伝導性材料含有層を形成する、インクジェットプリンタである。
【0099】
印刷部400’は、インクジェット部420、転写ドラム4000、前処理ユニット4002、吸収ユニット4003、加熱ユニット4004および清掃ユニット4005を備える。
インクジェット部420は、複数のヘッド401を保持したヘッドモジュール422を備える。ヘッド401は、転写ドラム4000に支持された中間転写体4001に液体組成物を吐出し、中間転写体4001上に液体組成物層を形成する。各ヘッド401は、ラインヘッドであり、使用可能な最大サイズの基材の記録領域の幅をカバーする範囲にノズルが配列されている。ヘッド401は、その下面に、ノズルが形成されたノズル面を有しており、ノズル面は、微小間隙を介して中間転写体4001の表面と対向している。本実施形態の場合、中間転写体4001は円軌道上を循環移動する構成であるため、複数のヘッド401は、放射状に配置される。
【0100】
転写ドラム4000は、圧胴621と対向し、転写ニップ部を形成する。前処理ユニット4002は、ヘッド401による液体組成物の吐出前に、例えば、中間転写体4001上に、液体組成物の粘度を高めるための反応液を付与する。吸収ユニット4003は、転写前に、中間転写体4001上の液体組成物層から液体成分を吸収する。加熱ユニット4004は、転写前に、中間転写体4001上のインク層を加熱する。液体組成物層を加熱することで、乾燥させて、イオン伝導性材料含有層を形成する。また、有機溶媒が除去され、基材への転写性が向上する。清掃ユニット4005は、転写後に中間転写体4001上を清掃し、中間転写体4001上に残留したインクやごみ等の異物を除去する。
圧胴621の外周面は、中間転写体4001に圧接しており、圧胴621と中間転写体4001との転写ニップ部を基材が通過するときに、中間転写体4001上の液体組成物層乃至イオン伝導性材料含有層が基材に転写される。なお、圧胴621は、その外周面に基材の先端部を保持するグリップ機構を少なくとも1つ備えた構成としてもよい。
【0101】
図7に示した印刷部400’’は、中間転写ベルト4006を介して基材に液体組成物層乃至イオン伝導性材料含有層を転写することで基材上にイオン伝導性材料含有層を形成する、インクジェットプリンタである。
印刷部400’’は、インクジェット部420に設けた複数のヘッド401から液体組成物の液滴を吐出して、中間転写ベルト4006の外周表面上に液体組成物層を形成する。中間転写ベルト4006に形成された液体組成物層は、加熱ユニット4007によって加熱され、乾燥することでイオン伝導性材料含有層を形成し、中間転写ベルト4006上で膜化する。
【0102】
中間転写ベルト4006が転写ローラ622と対向する転写ニップ部において、中間転写ベルト4006上の膜化したイオン伝導性材料含有層は基材に転写される。転写後の中間転写ベルト4006の表面は、清掃ローラ4008によって清掃される。
中間転写ベルト4006は、駆動ローラ4009a、対向ローラ4009b、複数(本例では4つ)の形状維持ローラ4009c、4009d、4009e、4009f、および複数(本例では4つ)の支持ローラ4009gに架け渡され、図中矢印方向に移動する。ヘッド401に対向して設けられる支持ローラ4009gは、ヘッド401からインク滴が吐出される際の中間転写ベルト4006の引張状態を維持する。
【0103】
<負極>
図8に、本実施形態の負極の一例を示す。
負極101は、負極基体111の片面に、負極合材層121が形成されている。負極100の形状としては、特に制限はなく、例えば、平板状等が挙げられる。負極基体111を構成する材料としては、例えば、ステンレススチール、ニッケル、アルミニウム、銅などが挙げられる。
なお、負極合材層121は、負極基体111の両面に形成されていてもよい。
負極は上述した電気化学素子の部材の製造装置を用いて製造することができる。
【0104】
<正極>
図9に、本実施形態の正極の一例を示す。
正極20は、正極基体21の片面に、正極合材層22が形成されている。正極20の形状としては、特に制限はなく、例えば、平板状等が挙げられる。正極基体21を構成する材料としては、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、チタン、タンタル等が挙げられる。
なお、正極合材層22は、正極基体21の両面に形成されていてもよい。
正極は上述した電気化学素子の部材の製造装置を用いて製造することができる。
【0105】
(電気化学素子)
本発明の電気化学素子は、集電体上に、イオン伝導性材料と、イオン伝導性材料用分散剤と、重合体とを少なくとも含む層を有し、必要に応じて更にその他の構成を有する。前記イオン伝導性材料と、イオン伝導性材料用分散剤と、重合体とを少なくとも含む層は、集電体上に直接配されていてもよいし、他の層を介して配されていてもよい。
【0106】
前記電気化学素子は、正極と、負極と、固体電解質層又は電解液との他に、セパレータと、外装と、を有することができる。前記電気化学素子は、正極、負極、及び固体電解質層の少なくとも1つとして本発明の液体組成物を用いたものである。
なお、固体電解質又はゲル電解質を用いる場合は、セパレータは不要である。
【0107】
前記集電体は、上記した集電体(電極基体)と同様である。
【0108】
前記イオン伝導性材料、イオン伝導性材料用分散剤、及び重合体は、上記した液体組成物におけるイオン伝導性材料、イオン伝導性材料用分散剤、及び重合体と同様である。
【0109】
なお、本発明の電気化学素子は、本実施形態の電極を正極として用いたものであることが好ましい。また、以下では、電気化学素子の一例として、リチウムイオン二次電池である場合について説明するが、本発明は下記の一例に限定されるものではない。
【0110】
<電極>
前記二次電池に使用し得る、上述した本実施形態の電極以外の電極としては、特に限定されることなく、二次電池の製造に用いられている既知の電極を用いることができる。具体的には、既知の製造方法を用いて集電体上に電極合材層を形成してなる電極を用いることができる。
【0111】
<電解質>
前記二次電池に使用し得る、上述した本実施形態の固体電解質層以外の電解質としては、特に限定されることなく、二次電池の製造に用いられている既知の固体電解質または電解液を用いることができる。
【0112】
[電解液]
電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。リチウムイオン二次電池の支持電解質としては、例えば、リチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlCl、LiClO、CFSOLi、CSOLi、CFCOOLi、(CFCO)NLi、(CFSONLi、(CSO)NLiなどが挙げられる。これらのうち、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF、LiClO、CFSOLiが好ましく、LiPFがよりに好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
【0113】
電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等のカーボネート類;γ-ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが好適に用いられる。またこれらの溶媒の混合液を用いてもよい。これらのうち、誘電率が高く、安定な電位領域が広いので、カーボネート類を用いることが好ましく、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとの混合物を用いることが更に好ましい。
なお、電解液中の電解質の濃度は必要に応じて適宜調節することができる。また、電解液には、既知の添加剤、例えばビニレンカーボネートなどを添加することができる。
【0114】
<セパレータ>
セパレータとしては、特に限定されることなく、例えば、クラフト紙、ビニロン混抄紙、合成パルプ混抄紙等の紙、セロハン、ポリエチレングラフト膜、ポリプロピレンメルトブロー不織布等のポリオレフィン不織布、ポリアミド不織布、ガラス繊維不織布、マイクロポア膜等が挙げられる。
【0115】
<外装>
外装は、電極と、電解質と、セパレータまたは固体電解質またはゲル電解質とを封止することができれば特に制限はない。
【0116】
(電気化学素子の製造装置、電気化学素子の製造方法)
本発明の電気化学素子の製造装置は、上記した本発明の電気化学素子の部材の製造装置により電気化学素子の部材を製造する電気化学素子の部材製造部を含み、必要に応じて、更にその他の構成を含む。
本発明の電気化学素子の製造方法は、上記した本発明の電気化学素子の部材の製造方法により電気化学素子の部材を製造する工程を含み、必要に応じて、更にその他の構成を含む。
【0117】
本実施形態の電気化学素子の製造装置及び電気化学素子の製造方法は、上記した電気化学素子の部材製造部及び電気化学素子の部材を製造する工程を本発明のものとする以外は、公知の手段及び方法を適宜選択することができる。
【0118】
本実施形態の電気化学素子は、例えば、正極と、負極とを、セパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて電池形状に応じて巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することにより製造することができる。
【0119】
図10に、本実施形態に関する電気化学素子に用いる電極素子の一例を示す。
電極素子40は、負極15と正極25が、セパレータ30を介して、積層されている。ここで、正極25は、負極15の両側に積層されている。また、負極基体11には、引き出し線41が接続されており、正極基体21には、引き出し線42が接続されている。
固体電気化学素子である場合はセパレータ30を固体電解質またはゲル電解質に置き換えればよい。
【0120】
負極15は、負極基体11の両面に、負極合材層12が形成されている。
正極25は、正極基体21の両面に、正極合材層22が形成されている。
なお、電極素子40の負極15と正極25の積層数は、特に制限は無い。また、電極素子40の負極15の個数と正極25の個数は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0121】
<電気化学素子>
図11に、本実施形態に関する電気化学素子の一例を示す。
電気化学素子1が液系の電気化学素子である場合は、電極素子40に、電解質水溶液又は非水電解質を注入することにより、電解質層51が形成されており、外装52により封止されている。電気化学素子1において、引き出し線41及び42は、外装52の外部に引き出されている。
また電気化学素子1が固体電気化学素子である場合はセパレータ30Bを固体電解質またはゲル電解質に置き換えればよい。
【0122】
電気化学素子1の形状としては、特に制限はなく、例えば、ラミネートタイプ、シート電極及びセパレータをスパイラル状にしたシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを組み合わせたインサイドアウト構造のシリンダタイプ、ペレット電極及びセパレータを積層したコインタイプ等が挙げられる。
【0123】
<電気化学素子の用途>
電気化学素子の用途としては、特に制限はなく、例えば、車両等の移動体;スマートフォン、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドホンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、ストロボ、カメラ等の電気機器などが挙げられる。これらの中でも、車両、電気機器が特に好ましい。
前記移動体としては、例えば、普通自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車、トラック、大型自動二輪車、普通自動二輪車などが挙げられる。
【0124】
[移動体]
図12に、本実施形態の電気化学素子の一例である全固体電池を搭載した移動体の一例を示す。移動体550は、例えば電気自動車である。移動体550はモーター551と、電気化学素子552と、移動手段の一例としての車輪553を備える。電気化学素子552は、上述した本実施形態の電気化学素子である。電気化学素子552は、モーター551に電力を供給することでモーター551を駆動する。駆動されたモーター551は、車輪553を駆動させることができ、その結果、移動体550は移動することができる。
以上の構成によれば、ピール強度に優れる電気化学素子からの電力により駆動するので、安全に移動体を移動させることができる。
移動体550は電気自動車に限られず、PHEVやHEV、又はディーゼルエンジンと電気化学素子とを併用して走行可能な機関車やバイクであってもよい。又、移動体は、電気化学素子のみ、又はエンジンと電気化学素子とを併用して走行可能な、工場等で使用される搬送用ロボットであってもよい。また、移動体は、その物体全体が移動せず、一部のみが移動するもの、例えば、工場の製造ラインに配される、電気化学素子のみ、又はエンジンと電気化学素子とを併用してアーム等が動作可能な組立ロボットであってもよい。
【実施例0125】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0126】
以下の実施例及び比較例において、重合体濃度10質量%で溶媒と混合した混合液の粘度及び液体組成物の粘度は以下のようにして測定した。液体組成物のチクソトロピーインデックスは以下のようにして評価した。液体組成物の固形分濃度は以下のようにして算出した。液体組成物を用いて得られた電極合材層又は固体電解質層の膜厚のばらつき及び剥離ピール強度は以下のようにして測定、評価した。
【0127】
[重合体濃度10質量%で溶媒と混合した混合液の粘度及び液体組成物の粘度]
TV25型粘度計(コーンプレート型粘度計、東機産業株式会社製)を用いて、得られた混合液又は液体組成物の100rpmにおける粘度を、室温(25℃)で計測した。
なお、前記混合液における溶媒とは、前記液体組成物における溶媒のことをいう。
【0128】
[液体組成物のチクソトロピーインデックス]
TV25型粘度計(コーンプレート型粘度計、東機産業株式会社製)を用いて、得られた液体組成物の100rpm及び10rpmにおける粘度を、室温(25℃)で計測した。また、それらの比から以下の式によりチクソトロピーインデックス(TI)を算出し、以下の基準により評価した。
<式>
TI=(10rpmにおける粘度)/(100rpmにおける粘度)
<基準>
A : TI値が2.0以上
B : TI値が1.5以上2.0未満
C : TI値が1.5未満
【0129】
[液体組成物の固形分濃度]
液体組成物の固形分濃度は以下の式により算出した。なお、全固形分とは、120℃、真空下において、重量減少を生じない成分のことをいう。
<式>
固形分濃度={全固形分(質量部)/(全固形分(質量部)+溶媒(質量部))}×100(%)
【0130】
[電極合材層又は固体電解質層の膜厚のばらつき]
実施例、比較例で作製した二次電池用正極又は二次電池用固体電解質層/正極積層体を、長さ50mm、幅30mmの長方形に切り出して試験片とした。この試験片の膜厚を、短軸方向及び長軸方向に幅15mm間隔で計6点計測した。計測値から基材厚みを差し引いた値が正極合材層又は固体電解質層厚みである。なお、二次電池用正極の場合、基材はアルミニウム箔、二次電池用固体電解質/正極積層体の場合、基材は二次電池用正極である。6か所の正極合材層又は固体電解質層の厚みの平均値ならびに標準偏差を求め、以下の基準により評価した。厚みの平均値に対する標準偏差の割合が小さいほど、均一に塗布できていることを意味する。
<基準>
A : 厚みの平均値に対する標準偏差の割合が1%未満
B : 厚みの平均値に対する標準偏差の割合が1%以上、3%未満
C : 厚みの平均値に対する標準偏差の割合が3%以上、5%未満
D : 厚みの平均値に対する標準偏差の割合が5%以上
【0131】
[電極合材層又は固体電解質層の剥離ピール強度]
実施例、比較例で作製した二次電池用正極又は二次電池用固体電解質層/正極積層体を、長さ50mm、幅30mmの長方形に切り出して試験片とした。この試験片の正極合材層又は固体電解質層を有する面を上にしてセロハンテープ(JIS Z1522に準拠するもの)を貼り付け、集電体の一端を垂直方向に引張り速度30mm/分で引っ張って剥がしたときの応力を測定した。この応力を剥離ピール強度とし、以下の基準により評価した。下記の評価のA~Cが合格であるが、ピール強度の値が大きいほど、密着性に優れることを意味する。
A : 剥離ピール強度が100N/m以上
B : 剥離ピール強度が80N/m以上100N/m未満
C : 剥離ピール強度が60N/m以上80N/m未満
D : 剥離ピール強度が60N/m未満
【0132】
(実施例1)
<重合体濃度10質量%で溶媒と混合した混合液の調製>
重合体としてポリメタクリル酸ブチル(以下、「PBMA」と称することがある。シグマアルドリッチ社製)10質量%を溶媒としてのアニソールに溶解し、重合体濃度10質量%で溶媒と混合した混合液を得た。前記混合液の粘度は上述した手法により測定した。評価結果を表1に示す。
【0133】
<液体組成物の調製>
仕込計算上の固形分濃度が55質量%となるような質量比で、ニッケル系正極活物質(以下、「NCM」と称することがある。)(豊島製作所製)、イオン伝導性材料用分散剤として酸性分散剤(日油社製、SC-0708A、活物質に対して1質量%)、PBMA(活物質に対して3質量%)、溶媒としてのアニソールとを混合し、液体組成物を得た。前記液体組成物の粘度は上述した手法により測定した。評価結果を表1に示す。
【0134】
<二次電池用正極の製造>
上記に従って得られた液体組成物を、アプリケーターで、集電体である厚さ20μmのアルミニウム箔の上に、正極合材層の膜厚平均値が80μmとなるように塗布した。さらに温度120℃のオーブン内でアルミニウム箔上の液体組成物を乾燥させ、集電体上に正極合材層が形成された二次電池用正極を得た。二次電池用正極の膜厚のばらつき及び剥離ピール強度は上述した手法により評価した。評価結果を表1に示す。
【0135】
(実施例2)
重合体としてポリ(メタクリル酸ブチル-メタクリル酸メチル)共重合体(以下、「P(BMA-MMA)」と称することがある。シグマアルドリッチ社製)を使用した以外は、実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0136】
(実施例3)
重合体としてポリメタクリル酸エチル(以下、「PEMA」と称することがある。シグマアルドリッチ社製)を使用した以外は、実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0137】
(比較例1)
重合体としてポリ(メタクリル酸メチル-メタクリル酸)共重合体(以下、「P(MMA-MA)」と称することがある。シグマアルドリッチ社製)を使用した以外は、実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0138】
(比較例2)
重合体としてポリメタクリル酸メチル(以下、「PMMA」と称することがある。シグマアルドリッチ社製)を使用した以外は、実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0139】
(比較例3)
重合体の配合量を活物質に対して10質量%とした以外は、比較例2と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表2に示す。
【0140】
(実施例4)
液体組成物の固形分濃度を58質量%とした以外は、実施例1と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表3に示す。
【0141】
(実施例5)
イオン伝導性材料用分散剤として塩基性分散剤(S13940、ルーブリゾール社製)を使用した以外は、実施例4と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表3に示す。
【0142】
(実施例6~21)
溶媒として表3~7に記載の溶媒を使用した以外は、実施例4と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表3~7に示す。
【0143】
(実施例22)
その他添加成分として、導電助剤となるアセチレンブラック(以下、「AB」と称することがある。活物質に対して1質量%)(デンカ社製)、導電助剤用分散剤として塩基性分散剤(導電助剤に対して20質量%)(S13940、ルーブリゾール社製)を加えた以外は、実施例5と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表8に示す。
【0144】
(実施例23)
導電助剤の添加量を活物質に対して3質量%とし、導電助剤用分散剤の添加量を活物質に対して0.6質量%とした以外は、実施例22と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表8に示す。
【0145】
(実施例24)
導電助剤の添加量を活物質に対して5質量%とし、導電助剤用分散剤の添加量を活物質に対して1.0質量%とした以外は、実施例22と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表8に示す。
【0146】
(実施例25)
液体組成物の固形分濃度を70質量%とした以外は、実施例24と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表9に示す。
【0147】
(実施例26~42)
溶媒として表9~13に記載の溶媒を使用した以外は、実施例25と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表9~13に示す。
【0148】
(実施例43)
表13に記載の組成比になるように、固体電解質を追加し、また、固体電解質を分散させるためにイオン伝導性材料用分散剤の量を2.7質量%に変え、溶媒としてヘキサン酸メチルを使用した以外は、実施例25と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表13に示す。
【0149】
(実施例44)
溶媒をヘプタン酸メチルに代えた以外は、実施例43と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表13に示す。
【0150】
(実施例45)
<重合体濃度10質量%で溶媒と混合した混合液の調製>
重合体としてポリメタクリル酸ブチル(以下、「PBMA」と称することがある。シグマアルドリッチ社製)10質量%を溶媒としてのアニソールに溶解し、重合体濃度10質量%で溶媒と混合した混合液を得た。前記混合液の粘度は上述した手法により測定した。評価結果を表14に示す。
【0151】
<液体組成物の調製>
仕込計算上の固形分濃度が20質量%となるような質量比で、固体電解質(アルジロダイト型硫化物固体電解質LiPSCl(LPSC))、イオン伝導性材料用分散剤として酸性分散剤(S13940、ルーブリゾール社製、固体電解質に対して5質量%)、PBMA(固体電解質に対して3質量%)、溶媒としてのアニソールとを混合し、液体組成物を得た。前記液体組成物の粘度は上述した手法により測定した。評価結果を表14に示す。
なお、二次電池用固体電解質層/正極積層体は、以下のようにして製造した。
【0152】
<二次電池用固体電解質層/正極積層体の製造>
上記に従って得られた液体組成物を、アプリケーターで、実施例24で作製した厚み100μmの二次電池用正極(正極合材層80μm、アルミニウム箔20μm)上に、固体電解質層の膜厚平均値が10μmとなるように塗布した。さらに温度120℃のオーブン内で二次電池用正極上の液体組成物を乾燥させ、二次電池用正極上に固体電解質層が形成された二次電池用固体電解質層/正極積層体を得た。二次電池用固体電解質層の膜厚ばらつき及び剥離ピール強度は上述した手法により評価した。評価結果を表14に示す。
【0153】
(実施例46)
重合体としてポリ(メタクリル酸ブチル-メタクリル酸メチル)共重合体(以下、「P(BMA-MMA)」と称することがある。シグマアルドリッチ社製)を使用した以外は、実施例45と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表14に示す。
【0154】
(実施例47)
重合体としてポリメタクリル酸エチル(以下、「PEMA」と称することがある。シグマアルドリッチ社製)を使用した以外は、実施例45と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表14に示す。
【0155】
(比較例4)
重合体としてポリ(メタクリル酸メチル-メタクリル酸)共重合体(以下、「P(MMA-MA)」と称することがある。シグマアルドリッチ社製)を使用した以外は、実施例45と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表15に示す。
【0156】
(比較例5)
重合体としてポリメタクリル酸メチル(以下、「PMMA」と称することがある。シグマアルドリッチ社製)を使用した以外は、実施例45と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表15示す。
【0157】
(実施例48)
液体組成物の固形分濃度を15質量%とした以外は、実施例47と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表16示す。
【0158】
(実施例49)
液体組成物の固形分濃度を30質量%とした以外は、実施例47と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表16示す。
【0159】
(実施例50)
溶媒をキシレンに代えた以外は、実施例47と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表16に示す。
【0160】
(比較例6)
重合体としてポリフッ化ビニリデン(以下、「PVdF」と称することがある。シグマアルドリッチ社製)を使用した以外は、実施例23と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表17に示す。
【0161】
(比較例7)
重合体としてポリフッ化ビニリデンスチレンブタジエンラバー(以下、「SBR」と称することがある。シグマアルドリッチ社製)を使用した以外は、実施例23と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表17に示す。
【0162】
(比較例8)
重合体としてアクリロニトリルブタジエンラバー(以下、「NBR」と称することがある。シグマアルドリッチ社製)を使用した以外は、実施例23と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。結果を表17に示す。
【0163】
(比較例9)
特許文献2の実施例1を参考に、n-ブチルアクリレート(BA)-メチルメタクリレート(MMA)-メタクリル酸(MA)-アリルメタクリレート(AMA)共重合体を合成した。重合体として前記重合体、有機溶剤としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用いた以外は実施例7と同様にして、各種操作、測定、及び評価を行った。評価結果を表17に示す。
【0164】
表1~17中における略号は、下記を示す。
・ BMA : メタクリル酸ブチル
・ EMA : メタクリル酸エチル
・ MMA : メタクリル酸メチル
・ MA : メタクリル酸
・ PVdF : ポリフッ化ビニリデン
・ SBR : スチレンブタジエンラバー
・ NBR : アクリロニトリルブタジエンラバー
・ BA : n-ブチルアクリレート
・ AMA : アリルメタクリレート
・ NCM : ニッケル系正極活物質
・ SE : アルジロダイト型硫化物固体電解質
・ AB : アセチレンブラック
・ NMP : N-メチル-2-ピロリドン
・ GBL : γ-ブチロラクトン
・ DMSO : ジメチルスルホキシド
・ DMF : N,N-ジメチルホルムアミド
【0165】
【表1】
【0166】
【表2】
【0167】
【表3】
【0168】
【表4】
【0169】
【表5】
【0170】
【表6】
【0171】
【表7】
【0172】
【表8】
【0173】
【表9】
【0174】
【表10】
【0175】
【表11】
【0176】
【表12】
【0177】
【表13】
【0178】
【表14】
【0179】
【表15】
【0180】
【表16】
【0181】
【表17】
【0182】
表1~17より、イオン伝導性材料と、イオン伝導性材料用分散剤と、重合体と、溶媒とを含み、前記重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を含むガラス転移温度80℃以下の(メタ)アクリレート系重合体であり、前記重合体は、濃度10質量%で前記溶媒と混合したときの混合液の25℃における粘度が50mPa・s以下である液体組成物を用いた実施例1~3では、液体組成物中における固形分濃度を十分高めるとともに、極めて低い粘度を示し、かつピール強度に富む電極合材層が得られていることがわかる。
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を含むもののガラス転移温度が80℃より大きい(メタ)アクリレート系重合体を用いた比較例1~2では、実施例1~3のような良好なピール強度は得られなかった。ガラス転移温度が80℃より大きい(メタ)アクリレート系重合体を多量に含有させた比較例3でも、粘度上昇が起こるのみで、実施例1~3のような良好なピール強度は得られなかった。
液体組成物の粘度が20mPa・sより大きくなるように固形分濃度を調製した実施例4では、塗膜乾燥時の流動が抑制され、膜厚ばらつきが改善したことがわかる。
イオン伝導性材料用分散剤として塩基性分散剤を用いた実施例5では、実施例4と同じ効果が得られていることがわかる。
溶媒として種々の溶媒を用いた実施例6~21においても、実施例4と同じ効果が得られていることがわかる。
その他添加成分として導電助剤、及び導電助剤用分散剤を含有した実施例22~25では、固形分濃度が60質量%以上になることでチクソトロピー性が発現し、結果、膜厚ばらつきが著しく改善したことがわかる。特に溶媒として種々のカルボン酸エステルを用いた実施例26~42においては、実施例25と同じ効果が得られるだけでなく、さらなる低粘度・高固形分濃度化を成し得ていることがわかる。さらに、2種類以上のイオン伝導性材料を含有する実施例43~44においても、実施例25と同じ効果が得られていることがわかる。
イオン伝導性材料として硫化物固体電解質を用いて調液された液体組成物を用いた実施例45~47では、実施例1~24に示した二次電池電極用液体組成物を用いた場合と同じく、液体組成物の固形分濃度を十分高めるとともに、極めて低い粘度を実現し、かつピール強度に富む固体電解質層が得られていることがわかる。また固形分濃度が20質量%未満となるように調液された実施例48と比べると、固形分濃度が20質量%以上となるように調液された実施例47及び実施例49は膜厚ばらつきが著しく改善していることがわかる。
溶媒としてキシレンを用いた実施例50においても実施例47と同じ効果が得られていることがわかる。
イオン伝導性材料として固体電解質を用いて、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を含むもののガラス転移温度が80℃より大きい(メタ)アクリレート系重合体を用いた比較例4~5では、実施例45~47のような良好なピール強度は得られなかった。
重合体として従来よく使用される結晶性バインダー、又はラテックスバインダーを用いた比較例6~8では、高い固形分濃度と、低い粘度、及び優れたピール強度を両立することができなかったことがわかる。
重合体として(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を含みガラス転移温度が80℃以下である(メタ)アクリレート系重合体であるものの、濃度10質量%で前記溶媒と混合したときの混合液の25℃における粘度が50mPa・sより大きい、特許文献2にて公開されているn-ブチルアクリレート(BA)-メチルメタクリレート(MMA)-メタクリル酸(MA)-アリルメタクリレート(AMA)共重合体を用いた比較例9では、インクジェット印刷に適した粘度範囲を逸脱してしまっていることがわかる。
【0183】
本実施形態に係る態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 電気化学素子の部材形成に用いられる液体組成物であって、
イオン伝導性材料と、分散剤と、重合体と、溶媒とを含み、
前記重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を含むガラス転移温度80℃以下の(メタ)アクリレート系重合体であり、
前記重合体は、濃度10質量%で前記溶媒と混合したときの混合液の25℃における粘度が50mPa・s以下であることを特徴とする液体組成物である。
<2> 前記イオン伝導性材料が活物質であり、
前記液体組成物の25℃における粘度が20mPa・s超、200mPa・s未満である前記<1>に記載の液体組成物である。
<3> 固形分濃度が60質量%以上である前記<2>に記載の液体組成物である。
<4> 前記イオン伝導性材料が固体電解質であり、
前記液体組成物の25℃における粘度が20mPa・s以下である前記<1>に記載の液体組成物である。
<5> 固形分濃度が20質量%以上である前記<4>に記載の液体組成物である。
<6> 前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体におけるアルキルの炭素数が2~4である前記<1>から<5>のいずれかに記載の液体組成物である。
<7> 前記重合体のガラス転移温度が40℃以下である前記<1>から<6>のいずれかに記載の液体組成物である。
<8> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の液体組成物からなるインクジェット吐出用液体組成物である。
<9> 前記<1>から<7>のいずれかに記載の液体組成物又は前記<8>に記載のインクジェット吐出用液体組成物が収容されたことを特徴とする収容容器である。
<10> 前記<9>に記載の収容容器と、
インクジェットヘッドを用いて前記収容容器に収容された液体組成物を吐出する吐出手段と、
を有することを特徴とする電気化学素子の部材の製造装置である。
<11> 前記<10>に記載の電気化学素子の部材の製造装置により電気化学素子の部材を製造する電気化学素子の部材製造部を有することを特徴とする電気化学素子の製造装置である。
<12> インクジェットヘッドを用いて前記<1>から<7>のいずれかに記載の液体組成物又は前記<8>に記載のインクジェット吐出用液体組成物を吐出する吐出工程を含むことを特徴とする電気化学素子の部材の製造方法である。
<13> 前記<12>に記載の電気化学素子の部材の製造方法により電気化学素子の部材を製造する工程を含むことを特徴とする電気化学素子の製造方法である。
<14> 集電体上に、イオン伝導性材料と、分散剤と、重合体とを少なくとも含む層を有する電気化学素子であって、
前記重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体を含むガラス転移温度80℃以下の(メタ)アクリレート系重合体であり、
前記重合体は、濃度10質量%で溶媒と混合したときの混合液の25℃における粘度が50mPa・s以下であることを特徴とする電気化学素子である。
<15> 前記電気化学素子が二次電池である前記<14>に記載の電気化学素子である。
【0184】
前記<1>から<7>のいずれかに記載の液体組成物、前記<8>に記載のインクジェット吐出用液体組成物、前記<9>に記載の収容容器、前記<10>に記載の電気化学素子の部材の製造装置、前記<11>に記載の電気化学素子の製造装置、前記<12>に記載の電気化学素子の部材の製造方法、前記<13>に記載の電気化学素子の製造方法、又は前記<14>から<15>のいずれかに記載の電気化学素子によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0185】
1 電気化学素子
1a 印刷装置
1b 収容容器
1c 供給チューブ
3a 加熱装置
4 印刷基剤
5 搬送部
7 液体組成物
10 吐出工程部
11 電極基体
11B 負極基体
12 電極合材層
12A 液体組成物
12B 負極合材層
15 負極
20 正極
21 正極基体
22 正極合材層
25 正極
30 加熱工程部
30B セパレータ
40 電極素子
41 引き出し線
42 引き出し線
51 電解質層
52 外装
100 電極
101 負極
111 負極基体
121 負極合材層
300 液体吐出装置
300’ 液体吐出装置
304 送り出しローラ
305 巻き取りローラ
306 液体吐出ヘッド
307 タンク
308 チューブ
309 加熱機構
310 ステージ
311 バルブ
312 バルブ
313 外部タンク
314 バルブ
400’ 印刷部
400’’ 印刷部
401 ヘッド
420 インクジェット部
422 ヘッドモジュール
550 移動体
551 モーター
552 電気化学素子
553 車輪
621 圧胴
622 転写ローラ
3101 ポンプ
4000 転写ドラム
4001 中間転写体
4002 前処理ユニット
4003 吸収ユニット
4004 加熱ユニット
4005 清掃ユニット
4006 中間転写ベルト
4007 加熱ユニット
4008 清掃ローラ
4009a 駆動ローラ
4009b 対向ローラ
4009c 形状維持ローラ
4009d 形状維持ローラ
4009e 形状維持ローラ
4009f 形状維持ローラ
4009g 支持ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0186】
【特許文献1】特開2009-152180号公報
【特許文献2】国際公開第2019/044452号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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