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特開2023-135692固化不溶化中性改質材及び当該改質材を用いた低流動化泥土改質工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023135692
(43)【公開日】2023-09-29
(54)【発明の名称】固化不溶化中性改質材及び当該改質材を用いた低流動化泥土改質工法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/02 20060101AFI20230922BHJP
   C09K 17/06 20060101ALI20230922BHJP
   C09K 17/08 20060101ALI20230922BHJP
   C09K 17/18 20060101ALI20230922BHJP
   C09K 17/42 20060101ALI20230922BHJP
   C09K 17/48 20060101ALI20230922BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20230922BHJP
   B09B 3/20 20220101ALI20230922BHJP
   B09C 1/02 20060101ALI20230922BHJP
   B09C 1/08 20060101ALI20230922BHJP
【FI】
C09K17/02 P
C09K17/06 P
C09K17/08 P
C09K17/18 P
C09K17/42 P
C09K17/48 P
C09K3/00 S
B09B3/00 301E
B09B3/00 304K
B09C1/08 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022040898
(22)【出願日】2022-03-16
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(72)【発明者】
【氏名】林 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】國西 健史
(72)【発明者】
【氏名】中村 丞吾
【テーマコード(参考)】
4D004
4H026
【Fターム(参考)】
4D004AA32
4D004AA41
4D004AB03
4D004BA02
4D004CA15
4D004CA34
4D004CA35
4D004CA45
4D004CB21
4D004CC11
4D004CC15
4D004DA03
4D004DA10
4D004DA20
4H026CB03
4H026CB05
4H026CB08
4H026CC02
4H026CC05
(57)【要約】
【課題】
特に、高含水や起泡剤の影響で流動性が高い浚渫土やシールド発生土等の泥土に有機高分子エマルジョンである加泥材を配合して低流動化させた低流動化泥土が、再泥化することなく、土壌から溶出する重金属等を不溶化することができ、処理土壌の強度を向上させて改質する固化性能とともに、建設発生土のpHを中性領域に改質することができる、新規な固化不溶化中性改質材及び当該改質材を用いた低流動化泥土改質工法を提供する。
【解決手段】
本発明の固化不溶化中性改質材は、酸化マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、炭酸カルシウム及び/又は多孔質火山灰土、並びに高分子凝集剤を必須含有成分とし、酸化マグネシウムを0.1~20質量%、硫酸アルミニウムを3質量%以上25質量%未満、硫酸第一鉄を10質量%以下、炭酸カルシウム及び/又は多孔質火山灰土を50質量%以上、高分子凝集剤を0.1~10質量%の割合で含有し、硫酸第一鉄は硫酸アルミニウムの含有量より少なく、硫酸アルミニウムと硫酸第一鉄の合計量が3質量%を超え25質量%以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、炭酸カルシウム及び/又は多孔質火山灰土、並びに高分子凝集剤を必須含有成分とし、酸化マグネシウムを0.1~20質量%、硫酸アルミニウムを3質量%以上25質量%未満、硫酸第一鉄を10質量%以下、炭酸カルシウム及び/又は多孔質火山灰土を50質量%以上、高分子凝集剤を0.1~10質量%の割合で含有し、硫酸第一鉄は硫酸アルミニウムの含有量より少なく、硫酸アルミニウムと硫酸第一鉄の合計量が3質量%を超え25質量%以下であることを特徴とする、固化不溶化中性改質材。
【請求項2】
請求項1記載の固化不溶化中性改質材において、高分子凝集剤は、ポリアクリルアミドを主成分とし、0.25%水溶液とした際の粘度が400mPa・s以上であることを特徴とする、固化不溶化中性改質材。
【請求項3】
請求項1又は2記載の固化不溶化中性改質材は、粉末形態であることを特徴とする、固化不溶化中性改質材。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかの項記載の固化不溶化中性改質材は、有機高分子エマルジョンを主成分とする加泥材を含む低流動化させた泥土に用いる改質材であって、加泥材の主成分である有機高分子エマルジョンは、ポリアクリルアミド系エマルジョンであることを特徴とする、固化不溶化中性改質材。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかの項記載の固化不溶化中性改質材を、有機高分子エマルジョンを主成分とする加泥材を含む低流動化泥土と混合して用いることを特徴とする、低流動化泥土改質工法。
【請求項6】
請求項5記載の低流動化泥土改質工法において、前記固化不溶化中性改質材を前記泥土と混合処理した処理土壌のpHが5.8~8.6で砒素の溶出量が0.01mg/L以下でコーン指数が200kN/m以上とすることを特徴とする、低流動化泥土改質工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固化不溶化中性改質材及び当該改質材を用いた低流動化泥土改質工法に関し、特に低流動化泥土用の固化不溶化中性改質材及び当該改質材を用いた低流動化泥土改質工法に関するものであり、高含水浚渫土やシールド発生土等の泥土を有機高分子エマルジョン型の泥土改質材や噴発防止剤等で低流動化させた土壌に対して添加することにより、砒素等の重金属等を不溶化・吸着することで溶出を低減させ、土壌pHを中性領域とすることができ、締め固めた土壌のコーン指数等の強度を向上することができる土壌改質性能を有する、固化不溶化中性改質材及び当該改質材を用いた低流動化泥土改質工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は、浚渫土やシールド発生土等の泥土は含水比が高く、また起泡剤の影響で流動性が高いため、仮置き等の脱水乾燥等の処理を行い、所定の強度を有さなければ場外搬出が困難であった。したがって、搬出に時間がかかるケースが多く発生していた。
また、これらの泥土は、自然由来の低濃度の砒素や鉛などの重金属等が溶出するものが多く存在しており、これらの土壌を盛土等に有効活用するには、所定の強度が出るよう改質するだけではなく、重金属等を溶出量基準値以下に不溶化することや、植生や水生生物への影響を低減するために改質土を中性領域に維持する必要がある。
【0003】
これらの浚渫土やシールド発生土等の高含水泥土について、短時間で取扱を向上させて低流動化させるために、一般的には、有機高分子を含むエマルジョンを主成分とする加泥材を添加して処理することがある。なお、「加泥材」は泥土改質材や噴発防止剤とも称されている(以下、「加泥材」と称す)。
加泥材により、高含水泥土を団粒化させて、ある程度の強度を有するように改質することは可能であるが、多量に添加すると水生生物への影響を与える場合があり、また公知の加泥材は重金属等を不溶化する性能やpHを調整する性能は乏しく、強度発現のための固化性能や重金属等の不溶化については、さらに固化材や不溶化材を添加して所定の性能を満足させなければならなかった。
【0004】
従来の固化材としては、セメント系固化材やMgO(酸化マグネシウム)系の固化材または生石灰や高炉スラグ系材料が知られているが、セメントや生石灰等は、土壌のpHを強アルカリ性とする影響があるため降雨等により強アルカリ性の地下水が周辺環境へ流れ出てしまい、植生への影響が考えられ好ましくない。また重金属不溶化能力が低いため、中性領域では溶出していなかった重金属類が溶出する問題がある。
また、改質土を中性に保つ石膏系の固化材も存在するが、セメント系固化材や酸化マグネシウム系固化材と比較して、固化性能が劣る傾向がある。
【0005】
また、従来の不溶化材としては、MgO系不溶化材、半焼成ドロマイト系不溶化材、鉄系不溶化材やアルミニウム系不溶化材が知られている。
しかし、MgO系不溶化材は、土壌改質後、土壌のpHが10以上とアルカリ性が強く、不溶化土壌のpHが長期的に高い状態が続き、高pHの地下水が周辺環境へ流れ出てしまい、植生への影響が懸念されている。
半焼成ドロマイトはpHが9~10のアルカリ性であり、鉄系不溶化材は主に鉄塩の形態を有して酸性を呈し、アルミニウム系不溶化材としてポリ塩化アルミニウムや硫酸アルミニウム等があり酸性を呈するものである。
【0006】
従来の固化材と不溶化材とを組み合わせて、改質土壌が中性域になるようなMgO系不溶化材をベース材料として用いたものが多く提案されており、例えば、特許第6936003号公報(特許文献1)には、(A)金属硫酸塩と金属塩化物のいずれか一方または両方からなる金属塩100質量部、(B)酸化マグネシウム、生石灰または消石灰からなる固化不溶化材5~50質量部、(C)増粘用材料10~100質量部、および、(D)助材500~600質量部を含み、上記(C)増粘用材料が、グアガム、メチルセルロース、およびポリアクリルアミド・アクリル酸ナトリウム共重合物の中から選ばれる1種以上であり、上記(D)助材が、半水石膏、炭酸カルシウム、ベントナイト、および活性白土の中から選ばれる1種以上である土壌用改質材が記載されている。
【0007】
また、特許第6021706号公報(特許文献2)には、石膏が21~39重量%、酸化マグネシウムが14~35重量%、硫酸アルミニウムが15~25重量%、高炉スラグが21~39重量%の割合で含まれていることを特徴とする土壌固化剤が、特開2021-134320号公報(特許文献3)には、酸化マグネシウムと、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄及び石膏のうち少なくとも一種の硫酸塩と、アクリルアミドユニットとアクリル酸ナトリウムユニットとを有する高分子凝集剤とを含み、前記高分子凝集剤を構成するアクリルアミドユニットの組成比が55~90mol%である、中性固化材が開示されている。
【0008】
更に特許第6503812号公報(特許文献4)には、軽焼酸化マグネシウム15~55質量%、硫酸アルミニウム35~80質量%及び硫酸第一鉄3~20質量%からなる無機質粉末組成物と、瓦とを含み、前記無機質粉末組成物100質量部に対して、瓦を1~12質量部含むことを特徴とする中性固化材が開示されている。
【0009】
上記従来の材料は、アルカリ性のMgO系材料により土壌固化による強度向上や不溶化性能を向上させ、酸性の硫酸第一鉄や硫酸アルミニウム等の酸性資材と所定の配合比で組み合わせることで砒素等を不溶化し、さらに他の含有成分や助材で固化性能を高めることで、土壌のpHを中性化しつつ固化不溶化性能を発揮しようとするものである。
【0010】
しかし、これらの中性固化材は、有機高分子を含むエマルジョンを主成分とする加泥材を添加して低流動化させた土壌に対しては、強度発現性能を阻害するという問題がある。
これらの加泥材の主成分は有機高分子であるポリアクリルアミド系のエマルジョンであり、水生毒性への影響を避けるため主に負に帯電したアニオン性が支配的なものが使用されており、これらの有機高分子が泥土に含まれる正に帯電した土粒子に吸着し架橋が進行し、土壌中の間隙水を取り込みながら団粒化することで、泥土を低流動化させることができるものである。この状態で、酸性物質や多価陽イオン、特に三価の陽イオンが溶出する鉄やアルミニウムの水溶性材料を大量に添加すると、高分子と反応して電荷が中和されて有機高分子の架橋構造が切断されて乱され、有機高分子が抱えていた間隙水が流出し、土壌が再泥化し強度が低下するという問題を有している。特に強度発現性付与のためにMgOを多く含む中性固化材は、中和のために酸性の硫酸第一鉄や硫酸アルミニウムを多く配合させる必要があり、そうすると加泥材中の有機高分子が保持していた間隙水を流出させてしまって強度発現性を弱めることになり、長期的な強度低下のリスクを有することとなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第6936003号公報
【特許文献2】特許第6021706号公報
【特許文献3】特開2021-134320号公報
【特許文献4】特許第6503812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上記課題を解決し、特に高含水や起泡剤の影響で流動性が高い浚渫土やシールド発生土等の泥土に有機高分子エマルジョンである加泥材を配合して低流動化させた低流動化泥土が、再泥化することなく、土壌から溶出する重金属等を不溶化することができ、処理土壌の強度を向上させて改質する固化性能とともに、建設発生土のpHを中性領域に改質することができる、新規な固化不溶化中性改質材を提供することである。
【0013】
また、本発明の他の目的は、特に高含水や起泡剤の影響で流動性が高い浚渫土やシールド発生土等の泥土に有機高分子エマルジョンである加泥材を配合して低流動化させた低流動化泥土に対して、上記本発明の固化不溶化中性改質材を適用して重金属等を不溶化するとともに、処理土壌の固化による強度向上及びpHを中性化するという土壌改質性能を発揮することができる、上記本発明の固化不溶化中性改質材を用いた低流動化泥土改質工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、特定の材料を必須含有材料とし、特定の配合割合で含むこと等により、上記課題が解決できることを見出し、本発明に到ったものである。
【0015】
(1)本発明の固化不溶化中性改質材は、酸化マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、炭酸カルシウム及び/又は多孔質火山灰土、並びに高分子凝集剤を必須含有成分とし、酸化マグネシウムを0.1~20質量%、硫酸アルミニウムを3質量%以上25質量%未満、硫酸第一鉄を10質量%以下、炭酸カルシウム及び/又は多孔質火山灰土を50質量%以上、高分子凝集剤を0.1~10質量%の割合で含有し、硫酸第一鉄は硫酸アルミニウムの含有量より少なく、硫酸アルミニウムと硫酸第一鉄の合計量が3質量%を超え25質量%以下であることを特徴とする、固化不溶化中性改質材である。
【0016】
(2)上記(1)の固化不溶化中性改質材において、高分子凝集剤は、ポリアクリルアミドを主成分とし、0.25%水溶液とした際の粘度が400mPa・s以上であることを特徴とする、固化不溶化中性改質材である。
【0017】
(3)上記(1)又は(2)の固化不溶化中性改質材は、粉末形態であることを特徴とする、固化不溶化中性改質材である。
(4)上記(1)~(3)いずれかの項記載の固化不溶化中性改質材は、有機高分子エマルジョンを主成分とする加泥材を含む低流動化させた泥土に用いる改質材であって、加泥材の主成分である有機高分子エマルジョンは、ポリアクリルアミド系エマルジョンであることを特徴とする、固化不溶化中性改質材である。
【0018】
(5)本発明の低流動化泥土改質工法は、上記(1)~(4)いずれかの項記載の固化不溶化中性改質材を、有機高分子エマルジョンを主成分とする加泥材を含む低流動化泥土と混合して用いることを特徴とする、低流動化泥土改質工法である。
【0019】
(6)上記(5)記載の低流動化泥土改質工法において、前記固化不溶化中性改質材を前記泥土と混合処理した処理土壌のpHが5.8~8.6で砒素の溶出量が0.01mg/L以下でコーン指数が200kN/m以上とすること特徴とする、低流動化泥土改質工法である。
【0020】
なお、本発明において、「低流動化泥土」とは、国土交通省の「発生土利用基準について」に示される泥土に対して、公知の加泥材を添加配合して泥土の流動性を低減させた土壌を意味するものであり、具体的に例えば、高含水浚渫土やシールド発生土等の泥土に、有機高分子エマルジョン等の公知の加泥材を添加配合してコーン指数が50~約400kN/mとなる泥土の流動性を低減させた土壌を意味する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の固化不溶化中性改質材は、高含水浚渫土やシールド発生土等の泥土や軟弱土壌、特に有機高分子エマルジョン型の加泥材等で低流動化処理した土壌に対して添加することにより、加泥材等の水分固定化・低流動化性能を阻害することなく(再泥化することがなく)、また砒素等の重金属等を長期に不溶化・吸着することで重金属等の溶出を低減させることができるとともに、改質後の土壌のpHを中性域に維持し、締め固めた土壌のコーン指数等の強度性能を向上させることが可能となる等の土壌改質性能を有する、優れた効果を発現することができる。
また、本発明の低流動化泥土改質工法は、前記本発明の固化不溶化中性改質材を高含水浚渫土やシールド発生土等の泥土や軟弱土壌、特に有機高分子エマルジョン型の加泥材等で低流動化処理した土壌と混合することで、加泥材等の水分固定化・低流動化性能を阻害することなく(再泥化することがなく)、また砒素等の重金属等を長期に不溶化・吸着することで重金属等の溶出を低減させることができるとともに、改質後の土壌のpHを中性域に維持し、締め固めた土壌のコーン指数等の強度性能を向上させることができ、したがって、高含水浚渫土やシールド発生土等の泥土を有効に改質処理することが可能となる。
なお、本発明において、「中性領域」とは、環境省の一律排水基準にて規定される中性領域であるpH5.8~8.6であることを意味するものである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を以下の好適な形態により説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明の固化不溶化中性改質材は、酸化マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、炭酸カルシウム及び/又は多孔質火山灰土、並びに高分子凝集剤を必須含有成分とし、酸化マグネシウムを0.1~20質量%、硫酸アルミニウムを3質量%以上25質量%未満、硫酸第一鉄を10質量%以下、炭酸カルシウム及び/又は多孔質火山灰土を50質量%以上、高分子凝集剤を0.1~10質量%の割合で含有し、硫酸第一鉄は硫酸アルミニウムの含有量より少なく、硫酸アルミニウムと硫酸第一鉄の合計量が3質量%を超えて25質量%以下である、固化不溶化中性改質材である。
【0023】
本発明の固化不溶化中性改質材は、好ましくは、浚渫土やシールド発生土等の高含水の泥土に有機高分子エマルジョン等の加泥材を加えて流動化を低減させた低流動化泥土に適用することが望ましい。
加泥材としては、公知の加泥材を用いることができ、例えば有機高分子エマルジョン型、例えばポリアクリルアミド系エマルジョンを主成分とする加泥材を好適に用いることができる。
かかる加泥材の添加により高含水の泥土をある程度の強度に改質することは可能であるが、得られた低流動化泥土は、かかる低流動化泥土上をトラック等の重機で走行するにはまだ十分な強度ではない程度の強度であって、コーン指数が約50~約400kN/mの低流動化した泥土であり、本発明の固化不溶化中性改質材を適用する対象となる土壌は、好適にはかかる低流動化泥土である。
かかる土壌に、本発明の固化不溶化中性改質材を適用することで、高含水泥土中の水分が加泥材中の高分子に間隙水として保持されている当該間隙水を流出することなく、したがって再泥化をすることなく、上記効果を有することが可能となる。
【0024】
本発明の固化不溶化中性改質材は、好ましくは粉末形態である。粉末形態とすることで、施工現場での取扱や施工性が容易となり、また、低流動化泥土と混合した際に、土壌中に分散する重金属等を効率的に吸着して不溶化することができる。
さらに、本発明の固化不溶化中性改質材を粉末形態とすることで、土壌中の水分と接触して水和物を生成させて土壌を団粒化しやすくなることにより土壌の強度を向上することができ、効率的に土壌を改質することが可能となる。
【0025】
ここで、重金属等は、重金属やハロゲンを意味するものである。重金属としては、例えば、マンガン、クロム、銅、カドミウム、水銀、セレン、鉛、砒素、カドミウム等の1種若しくは2種以上のもので、かつ重金属単体及びその化合物が例示でき、またハロゲンとしてはフッ素、塩素等の単体及びその化合物が例示できるが、これらの重金属やハロゲンに限定されるものではない。さらにこれらに加え土壌汚染対策法に規定される第2種特定有害物質(環水大土発第1703313号:環境省)に含まれるホウ素単体及びその化合物を例示することができる。
【0026】
本発明においては、固化不溶化中性改質材の必須含有材料として、酸化マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、炭酸カルシウム及び/又は多孔質火山灰土、並びに高分子凝集剤を含有し、これらの各含有量を上記範囲内の量とすることで、重金属等を有効に不溶化することができるとともに、低流動化泥土について保持している間隙水を流出させることなく処理土の強度を向上させて固化性能を向上させることにより土壌を改質でき、処理土のpHを中性領域に保持する等の上記効果を同時に奏することが可能となる。
【0027】
本発明の固化不溶化中性改質材に含まれる酸化マグネシウムは、主に、強度発現性能と重金属不溶化性能を発現し、低流動化泥土中の水分と反応して水酸化マグネシウムとなって、水分を固定させて見かけの含水比を低下させることができ、また水酸化マグネシウム上に砒素やフッ素等の重金属等の吸着や、難溶性化合物を析出させることで、重金属等を吸着する不溶化作用を有する。
酸化マグネシウムは、酸化マグネシウム含有物質を使用して本発明の固化不溶化中性改質材に含有させることができ、例えば半焼成ドロマイト(MgO・CaCO)等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
酸化マグネシウムは、固化不溶化中性改質材中に0.1~20質量%、好ましくは0.5~15質量%、より好ましくは1~12質量%で含有される。
上記範囲であると、特に、固化性能に優れ強度発現性が良好で、重金属を有効に固化不溶化することが可能となる。0.1質量%未満であると、固化性能が劣り強度発現性や重金属不溶化性能が低下し、20質量%を超えると、土壌のpHが強アルカリ性となりやすくなり、また中和のための酸性物質配合量が増えることで、加泥材の水分固定能力を低下させて強度低下を招く恐れがあり望ましくない。
【0029】
また、本発明の固化不溶化中性改質材に含まれる硫酸アルミニウムは、主に強度と不溶化性能を発現し、低流動化泥土中の水分と反応してアルミニウム水和物を析出させ水分を固定化させて見かけ含水比を低下させることができ、また、表面に重金属を吸着させる不溶化作用を有する。
硫酸アルミニウムは、無水物及び/又は水和物の双方を適用することが可能である。
【0030】
硫酸アルミニウムは、固化不溶化中性改質材中に、3質量%以上25質量%未満、好ましくは5~22質量%、より好ましくは8~20質量%で含有される。
上記範囲であると、特に、固化性能に優れ強度発現性が良好で、重金属を有効に固化不溶化することが可能となる。3質量%未満であると、固化性能が劣り強度発現性や重金属不溶化性能が低下し、25質量%以上であると、加泥材の水分固定能力を阻害して強度低下を招く恐れがあり望ましくない。
【0031】
更に、本発明の固化不溶化中性改質材に含まれる硫酸第一鉄は、その高い還元作用によって、砒素や六価クロム等の重金属等に対して、水和により析出した水酸化鉄への砒素吸着や、難溶性である砒酸鉄等の析出による不溶化作用を有するとともに、酸性であるため、他の必須含有材料の配合比率を調整することで、本発明の固化不溶化中性改質材を用いて処理した土壌を中性領域に保持することを可能とする。
また、硫酸第一鉄は無機凝集剤としての効果があると推測され、土中の細粒分を電気的に凝集させて団粒化しやすくするため、本発明の固化不溶化中性改質材に含まれることによって、土壌を締め固めやすくする効果を有することも考えられる。
【0032】
硫酸第一鉄は、固化不溶化中性改質材中に0質量%より多く10質量%以下、好ましくは1~8質量%、より好ましくは2~6質量%で含有される。
前記含有量を超える含有量では、低流動化泥土中に含まれている加泥材との反応により加泥材が抱え込んでいた水分が放出され再泥化してしまい、強度の低下を招く恐れがあり望ましくない。
【0033】
また、硫酸アルミニウムの含有量は、硫酸第一鉄の含有量より多く含まれ、両者の含有量の合計は3質量%を超え25質量%以下である。
このような合計含有量とすることで、酸やアルミニウムイオンを大量に放出する硫酸アルミニウムにより、上記効果を有効に発現することが可能となる。アルミニウムイオンは水和により短時間で水酸化アルミニウムに変わるため、硫酸第一鉄と異なり長期的に加泥材から間隙水を流出させるリスクが低いため、硫酸第一鉄より多く配合する。
【0034】
更に、本発明の固化不溶化中性改質材に含まれる炭酸カルシウム及び/又は多孔質火山灰土は、主に固化性能及びpH中性化機能を発現することができ、特に炭酸カルシウムは、炭酸-重炭酸緩衝作用によりpH緩衝作用を有し、処理土壌のpHが長期的に中性を維持することが可能となる。また、炭酸カルシウムは、硫酸アルミニウムと反応して二水石膏を析出させ水分を固定することで土の含水比を低下させることが可能である。
炭酸カルシウム及び/又は多孔質火山灰土は、固化不溶化中性改質材中、50質量%以上、好ましくは60~85質量%、より好ましくは70~80質量%で含有される。
50質量%未満であると、充分な強度発現性を得ることができず望ましくない。
【0035】
多孔質火山灰土としては、例えば鹿沼土を例示できる。鹿沼土は主に栃木県で天然かつ大量に産出する多孔質火山灰土で、それ自身が弱酸性であることからpH中性化機能を有するだけでなく、細孔内に水分を固定することで土壌中の間隙水を低減させることができ、早期な土壌改質性能を発現することができる。好適なものは含水比20%以下の乾燥したもので最大粒度は3mm以下、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下であることが望ましく、より細かいものを使用することで他の成分との混合性能が高まり、上記効果をより有効に奏することができる。また、このような市販の製品として使用されない細かい鹿沼土を使用することで鹿沼土の有効活用が可能となる。
炭酸カルシウムと鹿沼土は、単独で使用してもよいし併用することも可能である。
【0036】
更に、本発明の固化不溶化中性改質材に含まれる高分子凝集剤は、土壌中の水分と反応し、土壌の細粒分を凝集させて土壌を締め固めやすくする。また、粘度が高いため鉄イオンと反応しても粘度が下がりにくいため、土壌の強度発現性を有する。
当該高分子凝集剤の性状としては、冷水に溶けやすいこと、水溶液のpHが中性領域であること、種々の低流動化土壌に対応するために有効pH領域が中性領域をカバーすること、水に溶けると粘性が高くなること等を備えるものが好ましい。
【0037】
高分子凝集剤としては、土中の水分と反応して細粒分を凝集させて土壌を締め固めやすくする作用等を有する有機高分子凝集剤を好適に使用でき、当該有機高分子凝集剤の種類としてはアニオン系高分子凝集剤、ノニオン系高分子凝集剤、カチオン系高分子凝集剤及び両性高分子凝集剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を好適に使用することができ、特に好適なものは溶液pHが中性であり、有効pH領域が中性域を含み、粘度が高いアニオン系高分子凝集剤である。
【0038】
前記有機高分子凝集剤としては、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリアミジン、ポリアクリル酸ソーダ、ポリエチレンオキサイド、アクリル酸ソーダ-アクリルアミド共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種を使用することができ、特に、例えば0.25%水溶液の粘度が400mPa・s以上となるものが望ましい。
【0039】
含有される有機高分子凝集剤の粒度については、強度発現性においてはより細かい方が水との反応性が速いため即効性があるが、硫酸第一鉄等により水分固定能力に影響を受けて改質性能が低下することがないように、時間差で反応させるために酸性硫酸塩の反応後に遅れて高分子凝集剤が水に溶けるよう、下記含有量とするとともに、粒度は最大粒径2mm以下とすることが望ましく、好適には0.05mm~1mm、さらに好適なものは0.1mm~0.5mmであることが望ましい。
【0040】
高分子凝集剤の含有量は、固化不溶化中性改質材中、0.1~10質量%、好ましくは1~8質量%、より好ましくは3~6質量%で含有される。
0.1質量%未満では、充分な強度発現性を得ることができず、また10質量%を超えるとコストが高くなり経済的ではなく望ましくない。
【0041】
本発明の固化不溶化中性改質材は、上記酸化マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、炭酸カルシウム及び/又は多孔質火山灰土、並びに高分子凝集剤の必須含有材料を、上記割合で配合することで、環境庁告示46号(平成3年8月23日公布)に準拠した方法で調製した検液中の砒素等の重金属濃度をJIS K 0102『工場排水試験方法』に準拠して測定して0.01mg/L以下とし、当該検液のpHをJIS Z8802:2011「pH測定方法」に準拠して測定して中性領域(環境省の一律排水基準である(5.8~8.6))とすることができ、また再泥化することなくコーン指数を国土交通省の「発生土利用基準について」の土質区分基準の第4種建設発生土に規定される200kN/m以上、より好ましくは第3種建設発生土である400kN/m以上、さらに好ましくは第2種建設発生土である800kN/m以上に改質することが可能となる。
【0042】
また、本発明の固化不溶化中性改質材の上記効果に影響を与えない範囲で、上記材料以外にも、補助添加材を配合することが可能である。補助添加材としては、例えば強度発現性を付与するために酸化カルシウム、石膏、ゼオライト、ベントナイト等が挙げられる。
【0043】
本発明の固化不溶化中性改質材は、上記酸化マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、炭酸カルシウム及び/又は多孔質火山灰土、並びに高分子凝集剤、必要に応じて含有される補助添加材を均一に混合することができれば、配合順序は問わず、一度に配合することもでき、また任意の方法を用いてこれらの材料を混合して調製することができる。
【0044】
このようにして調製された本発明の固化不溶化中性改質材は、特に加泥材で処理した低流動化泥土に対して添加して混合することで、土壌中の重金属等を効果的かつ長期的に不溶化することができ、再泥化することなく、処理土壌の固化による強度向上という土壌の改質性能を有するとともに、処理土壌のpHを中性領域に保持することができることとなる。
具体的には本発明の固化不溶化中性改質材を前記低流動化泥土に対して、例えば、10~200kg/m添加混合し、材齢1~7日で土壌pHを中性(5.8~8.6)とし、砒素などの重金属等を上記したような溶出量基準値以下に不溶化し、土壌強度として締め固めた土のコーン指数を、発生土利用基準に定められた第4種建設発生土である200kN/m以上、より好ましくは第3種建設発生土である400kN/m以上、さらに好ましくは第2種建設発生土である800kN/m以上に改質することが可能となる。
【0045】
本発明の低流動化泥土改質工法は、本発明の固化不溶化中性改質材と低流動化泥土とを混合する工法であるが、その混合方法については特に限定されず、例えば、前記低流動化泥土の表層に本発明の固化不溶化中性改質材を散布し、表面改質混合性能を有する重機による改良や、土壌との混合設備での混合など、従来の粉末不溶化材と同様の土壌混合設備を適用した混合方法用いることができる。このように、本発明の低流動化泥土改質工法を土壌に適用することで、土壌のpHを中性領域(5.8~8.6)とすることができる。
【0046】
特に、本発明の固化不溶化中性改質材は、粉末の形態が望ましく用いられ、また、低流動化土壌との混合装置としては、バックホウ、深層混合処理機、定置式ミキサー、パワーブレンダ等を用いて混合することが可能であり、処理土壌に対する固化不溶化中性改質材の配合量は、土壌の含水比や、要求される処理土の固化強度等により変動し、任意に設計することができる。具体的な例としては、貯泥槽で加泥材添加混合後に散布して重機で混合することや、土壌改質設備等の従来の土壌混合設備を利用して混合することも可能である。
【0047】
このように、本発明の固化不溶化中性改質材を、特に高含水や起泡剤の影響で流動性が高い浚渫土やシールド発生土等の泥土に加泥材を添加した低流動化泥土(重金属等を含む)と接触させることにより、当該土壌中の加泥材に捕獲されていた間隙水が流出することなく、重金属等を不溶化するとともに、土壌の固化性能を向上させ、かつ処理土壌のpHを中性領域に保持することが可能となる。
例えば、土壌中の重金属等の溶出量は土壌汚染対策法に基づき測定した溶出量がすべて土壌溶出量基準以内となるとともに、環境庁告示46号(平成3年8月23日公布)に準拠した方法で調製した検液のpHは、例えば材齢7日後には、環境省の一律排水基準に規定される5.8~8.6の範囲となる環境基準を満足でき、更に、コーン指数は国土交通省の「発生土利用基準について」の土質区分基準の第4種建設発生土に規定される200kN/m以上、より好ましくは第3種建設発生土である400kN/m以上、さらに好ましくは第2種建設発生土である800kN/m以上に改質することが可能となり、トラック等重機の走行が可能となるように設計することができる。
【実施例0048】
本発明を次の実施例及び比較例により説明する。
【0049】
(試験土壌)
砒素が溶出する下記表1に示す物性を有する泥土に、ポリアクリルアミド系エマルジョンを主成分とした加泥材を3kg/mの量で添加し、ソイルミキサーにて低速で90秒混合し、次いでソイルミキサーの容器とパドルに付着した土壌を掻き落としたのち、再度低速で90秒混合して、試験土壌を調製した。
【0050】
泥土の含水比、湿潤密度、粒径が75μm未満の細粒分、砒素溶出量及び溶出液pHと、泥土(加泥材添加前)及び試験土壌(加泥材添加後)のコーン指数について、表1に示す。
なお、砒素の溶出量及びコーン指数は、下記試験例1及び試験例2に記載した方法に準拠して測定したものである。
【0051】
【表1】
【0052】
(使用原材料)
固化不溶化中性改質材を調製するにあたり、以下の材料を用いた。
・酸化マグネシウム:微粉末(試薬、関東化学株式会社製)
・硫酸アルミニウム:粉末(試薬、14~18水和物、関東化学株式会社製)
・炭酸カルシウム:粉末(栃木県葛生産)
・多孔質火山灰土:鹿沼土(栃木県産、105℃乾燥後1mm以下分級)
・硫酸第一鉄:硫酸第一鉄水和物微粉末(堺化学工業株式会社製)
・高分子凝集剤:アニオン系高分子凝集剤(三洋化成工業株式会社製)(0.25%水溶液、粘度420mPa/s、最大粒度1mm)
【0053】
(固化不溶化中性改質材)
実施例1~8、比較例1~7
上記各使用原材料を用いて、下記表2に示す配合割合で各原材料を配合混合して、各固化不溶化中性改質材を調製した。
なお、各原材料の混合順序は特に制限されないが、各原材料を同時に混合して、各固化不溶化中性改質材を調製した。
【0054】
【表2】
【0055】
(試験例)
試験例1:改質試験(不溶化試験及び中性化確認試験)
上記表1の試験土壌1mに対して、表2に示す各固化不溶化中性改質材50kgを添加し、ソイルミキサーにて低速で90秒練り混ぜた後、ソイルミキサーの容器とパドルに付着した土壌を掻き落とし、再度低速で90秒間練り混ぜて、各処理土壌を調製した。
各処理土壌を調製後、20℃で材齢7日間、密封養生した後、材齢7日の各処理土壌について、環境庁告示46号(平成3年8月23日公布)に準拠した方法で検液(溶出液)を作製し、当該溶出液(検液)のpHと、溶出液(検液)中の砒素の濃度をJIS K 0102『工場排水試験方法』に準拠して砒素溶出量とを測定した。
その結果を下記表3に示す。
【0056】
試験例2:土壌の強度試験
上記表1の試験土壌1mに対して、表2に示す各固化不溶化中性改質材50kgを添加し、ソイルミキサーにて低速で90秒練り混ぜた後、ソイルミキサーの容器とパドルに付着した土壌を掻き落とし、再度低速で90秒間練り混ぜて、処理土壌を調製した。
各処理土壌を調製し20℃で材齢7日間、密封養生した後、当該各処理土壌をJIS A 1210:2009「突固めによる土の締固め試験方法」に規定される10cmモールドに3層に分けて充填し、JIS A 1228「締固めた土のコーン指数試験方法」に準拠して材齢7日のコーン指数を測定した。
その結果を下記表3に示す。
【0057】
なお、参考例として、上記表1の土壌に固化不溶化中性改質材を混合しない試験土壌についても同様にして、検液pH及び砒素溶出量、コーン指数を測定し、その結果を表3に示す。
【0058】
試験の合格基準:
コーン指数は、国土交通省の「発生土利用基準について」の土質区分基準の第3種建設発生土に規定される400kN/m以上であるものを合格とした。
砒素の溶出量は土壌汚染対策法に基づく土壌溶出量基準0.01mg/L以下であるものを合格とした。
また、溶出液検液pHは、環境省の一律排水基準にて規定される5.8~8.6の範囲となるものを中性領域として合格とした。
【0059】
【表3】
【0060】
上記表3より、酸化マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、炭酸カルシウム及び/又は多孔質火山灰土、及び高分子凝集剤を必須含有成分として、本発明の特定範囲内で含有する実施例(E1~E8)の固化不溶化中性改質材は、高含水の流動化泥土に加泥材を配合して低流動化させた土壌について、材齢7日の処理土壌中の砒素の溶出量がすべて土壌溶出量基準以内となるとともに、土壌溶出液のpHが一律排水基準範囲内となり、かつ材齢7日のコーン指数が400kN/m以上となり、本発明の上記効果を有効に発現できるものであることが明らかとなった。
【0061】
比較例1の、酸化マグネシウムの含有量が過剰で炭酸カルシウム及び/又は多孔質火山灰土の含有量が不足した固化不溶化中性改質材C1については、コーン指数や砒素溶出量基準は満たされるが、土壌溶出液pHが中性領域ではなく、環境的に問題がある。
また、比較例2の硫酸アルミニウム含有量が過剰の固化不溶化中性改質材C2は、砒素溶出量基準は満たされたが、土壌溶出液pHが酸性領域であり、また試験土壌と比べてコーン指数は増加したが、コーン指数は400kN/m未満であり、固化性能が十分ではない。
【0062】
比較例3の硫酸アルミニウムを含まない固化不溶化中性改質材C3は、土壌溶出液のpHが中性領域であるが、砒素溶出量基準を超過し、試験土壌と比べてコーン指数は増加したが、コーン指数は400kN/m未満であり、固化性能が十分ではない。
また、比較例4の硫酸第一鉄含有量が過剰の固化不溶化中性改質材C4については、砒素溶出量基準は満たされ土壌溶出液pHも中性領域であり、試験土壌と比べてコーン指数は増加したが、コーン指数は400kN/m未満であり、固化性能が十分ではない。
【0063】
比較例5の硫酸第一鉄を含まない固化不溶化中性改質材C5については、コーン指数は満たすともに土壌溶出液pHも中性領域であるが、砒素溶出量基準を満たすことができない。
比較例6の硫酸アルミニウムと硫酸第一鉄の合計量が25%を超え過剰に含む固化不溶化中性改質材C6については、砒素溶出量基準は満たされ土壌溶出液pHも中性領域であるが、試験土壌と比べてコーン指数は増加したが、コーン指数は400kN/m未満であり、固化性能が十分ではない。
【0064】
比較例7の高分子凝集剤を含まない固化不溶化中性改質材C7については、砒素溶出量基準は満たされ土壌溶出液pHも中性領域であるが、試験土壌と比べてコーン指数は増加したが、コーン指数は400kN/m未満であり、固化性能が十分ではない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明の固化不溶化中性改質材及び当該改質材を用いた低流動化泥土改質工法は、特に加泥材により低流動化処理した泥土に対し、含まれる重金属やハロゲンを効率よく不溶化できるとともに、処理土を中性領域付近に保持しながら土壌を固化して強度を向上することができるため、加泥材を含有する低流動化土壌に対して有効に利用することができ、例えば、トンネルやダム等の掘削工事や建設工事等によって大量に発生する高含水の流動性を有する泥土中の重金属等の処理に有効に適用することができるとともに、改質土を有効利用しやすくすることが可能となる。